(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055270
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】睡眠促進装置
(51)【国際特許分類】
A61M 21/02 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
A61M21/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020174254
(22)【出願日】2020-09-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】518060723
【氏名又は名称】株式会社モノプロダイム
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 亨
(57)【要約】 (修正有)
【課題】睡眠促進システムと睡眠促進方法を提供する。
【解決手段】人に振動または電気刺激装置により振動または電気刺激を与え皮膚温度11を上昇させる刺激工程と、刺激工程後、皮膚温度を降下させる降下工程と、を有し、人が睡眠時に、深度温度10によりその人の睡眠リズムの位相をとらえて、深部体温と皮膚温度の温度差12が、通常時の温度差となっている睡眠促進方法を用いる。人に接して振動または電気刺激を与える刺激部と、振動または電気刺激を制御する制御部と、人の皮膚温度を測定する測定部と、を有する睡眠促進装置を用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人に刺激装置により振動または電気刺激を与え体幹部動脈の血流量を増加させながら皮膚温度を上昇させる刺激工程と、
前記刺激工程後、前記皮膚温度を降下させる降下工程と、を有し、
前記人が睡眠時に、深度温度と前記皮膚温度の温度差が、通常時の温度差となっている睡眠促進方法。
【請求項2】
前記刺激工程と前記降下工程とを、日々の習慣として、同時刻、同じ刺激量に制御する請求項1記載の睡眠促進方法。
【請求項3】
前記刺激工程では、振動または電気刺激を前記人の両脇腹にあてる請求項1又は2記載の睡眠促進方法。
【請求項4】
前記刺激工程では、振動または電気刺激を与える時間は、20分~30分である請求項1~3のいずれか1項に記載の睡眠促進方法。
【請求項5】
前記振動または電気刺激の周波数が10,000Hz以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の睡眠促進方法。
【請求項6】
前記振動または電気刺激の周波数は、1~1,200Hzの低周波と、10,000Hz以上の高周波とを交互である請求項1~5のいずれか1項に記載の睡眠促進方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の振動または刺激工程において、
前記人に振動または電気刺激を与える睡眠促進装置。
【請求項8】
人に接して前記振動または電気刺激を与える刺激部と、
前記振動または電気刺激を制御する制御部と、
前記人の皮膚温度を測定する測定部と、を有する睡眠促進装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記測定部により前記皮膚温度を測定し、所定の温度になるまで刺激部を振動または電気刺激させる、請求項8記載の振動または電気刺激睡眠促進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠促進方法と睡眠促進装置とに関する。特に、振動または電気刺激による睡眠促進方法と睡眠促進装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、就寝時刻と起床時刻とから、人の生活リズムを想定し、環境温度を制御するものがあった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記方法では、睡眠を促進することは十分ではなかった。
【0005】
よって、本願の課題は、睡眠促進方法と睡眠促進装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、人に振動または電気刺激装置により振動または電気刺激を与え皮膚温度を上昇させる刺激工程と、上記刺激工程後、上記皮膚温度を降下させる降下工程と、を有し、上記人が睡眠時に、深部体温と皮膚温度の温度差が、通常時の温度差となっている睡眠促進方法を用いる。
また、人に接して上記振動または電気刺激を与える刺激部と、上記振動または電気刺激を制御する制御部と、上記人の皮膚温度を測定する測定部と、を有する睡眠促進装置を用いる。
【発明の効果】
【0007】
睡眠促進方法と睡眠促進装置によれば、睡眠を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態の深部温度と皮膚温度の時刻での変化の1例を示す図
【
図2】
図1で深部温度と皮膚温度との温度差を徐々に小さくすることを示す図
【
図4】実施の形態の睡眠促進方法での制御部と振動または電気刺激部とのやり取りを示す図
【
図5】実施の形態での非日常と通常時の深部温度と皮膚温度の時刻での変化を示す図
【
図6】実施の形態での通常時の深部温度と皮膚温度の時刻での変化を示す図
【
図7】実施の形態での通常時の入浴時の深部温度と皮膚温度の時刻での変化を示す図
【
図8】実施の形態での振動または電気刺激部の位置を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下で実施の形態を説明するが、発明の1つの例示であり、これに発明は限定されない。
(実施の形態)
人は、概日性リズムと呼ばれる、約24時間の周期を有する。つまり、人は、約一日リズムで眠気を催し、眠気を催して脳が寝る準備をする際に、脳など体幹部の深部体温を下げる。このことで、人は、実際の眠りに入ることが知られている。
脳は自分の深部体温を下げるために、体表部特に手足などの皮膚の毛細管を拡張し、血流量を増やして熱を体表部に移動放散させて脳の温度を下げていることも知られる。
そのため、熱放散のために皮膚温度も眠気の発現とともに皮膚体温は変化し、生活リズムに基づいている。
図1に、その変化の1例を示す。深部温度とは、体の内部の温度である。皮膚温度とは、体の表面の温度である。皮膚体温は眠気準備活動による放熱のほか、食餌や運動、さらには入浴によっても変動するが、眠気に関しては深部体温と両方をモニターする。このことで、眠気によって、時間差が生じて、放熱が比較的顕著にとらえることができる。
この例では、深部温度10は、夕方18時ごろ最大となる。一方、皮膚温度11は、夕方18時ごろ最小となる。この深部温度10と皮膚温度11との差が小さくなれば、眠気による睡眠準備ができていることになり、眠たくなる。
【0010】
この深部温度10は、従来、外科手術中など医学処置をしている間の生体観測のために直腸や鼻腔からの食道温度などで特殊な体温計によって測定されてきた。このために、医師の指導が必要であり、睡眠という日々の活動をモニターするのは困難であった。
【0011】
しかし、最近、アフォードセンス社のVitalGramとよぶ活動量計によって、皮膚温度11と深部温度10とが同時に測定できるようになった。このセンサーは、深部温度10を検出する深度温度測定部と皮膚温度11を検出する皮膚温度測定部を有する。
この実施の形態では、対象の人の皮膚温度11を一度上げ、降下させることで、皮膚温度11と深部温度10との温度差12を早く、小さくし、自然に睡眠へ入れるようにする。
【0012】
人ごとに理想の生活リズム(
図1)は異なる。ただし、たとえば、夕方、飲み会や運動などで、生活のリズムが狂う時がある。なお、理想のデータは、通常は、日常の生活を送っている時のデータである。つまり、過去の平常時の平均のデータでもある。
【0013】
図2は、
図1の例から生活リズムがずれた場合である。例えば、18時から、懇親会があり、
図2のように理想の点線から生活リズムがずれている。21時に帰宅する。そのままであると、実線のように温度差12が広いままで、睡眠しにくい。
この実施の形態では、後で説明するが、振動または電気の刺激装置で人に振動または電気刺激を与え、睡眠予定時刻の24時の温度差12(平常時の24時での温度差12)になるようにする。
【0014】
<睡眠促進方法>
図3と
図4で、睡眠促進方法を説明する。人19は、椅子に座って作業をしている。人19は、刺激装置21を付けている。なお、テレビなどを見ながら刺激装置21を使用してもよい。
刺激装置21は、低周波治療器、高周波治療器など人19に振動または電気刺激を与えるものがよい。人19に振動または電気刺激を与えることで、血流が促進され、皮膚温度11はあがり、深部温度10は下がる。刺激装置21は、制御部22と、人19に付着される刺激部20とを有する。刺激装置21は、人19に振動と電気刺激の両方を与えてもよい。また、振動、電気刺激以外の刺激、例えば、衝撃、冷熱などを人19に与えてもよい。
【0015】
特に、周波数が1~1,200Hzと低いものを低周波、周波数が10,000Hz以上の高いものを高周波という。高周波は、低周波では届きにくい筋肉の奥深い部分まで作用して、痛みやコリを緩和する。高周波では、痛みの伝達を即効的にブロックする効果に優れており、急性の痛みに有効である。その反面、治療後の効果の持続性は低周波に比べてやや劣る。この振動または電気の刺激装置21は、低周波と高周波の両方を交互に発することができるため、装置刺激装置21における高い周波数の刺激は体幹部動脈付近にまで達し、動脈血流量を増やし、低い周波数は体表部の毛細管の拡張を促す。これらが交互に刺激されることで眠気の放熱促進に有効である。一方、低周波のみの装置であれば皮膚表面の毛細管程度を刺激するのみで血流量を増やすことができない。
体幹部動脈とは、人の頭と胴体(手足以外の本体)に存在する動脈である。
【0016】
刺激装置21の吸盤(パッド)である刺激部20を人19の脇腹などに固定し、振動または電気刺激を人19に与える。この振動または電気刺激により、人19の血行がよくなり、温度差が小さくなり、いつもの温度差になる。
人19は、刺激部20を身に着け、作業や生活をするのが好ましい。
【0017】
<プロセス:非日常の場合>
図5でプロセスを説明する。
図5で、点線は、非日常、通常時の深度温度10、皮膚温度11の変化を示す。通常は、普段の生活時の平均値である。非日常は、飲み会、懇親会、運動などの事件である。この例では、夕方に事件が起こり、深度温度10、皮膚温度11が、通常時と異なり、非日常の変化をしている。
このままでは、深度温度10と皮膚温度11との温度差12が大きく、眠りにくい。
【0018】
そこで、点線の時刻から振動または電気刺激を人に与え(刺激工程)、深度温度10と皮膚温度11を上昇させる。その後、深度温度10と皮膚温度11を下がり(降下工程)、その温度差12はより下がる。
深部温度10は、上昇の反動が、皮膚温度11より大きく、より下がりやすい。1.5度から5度程度上昇する温度である。皮膚温度を上昇させるのがよい。
なお、刺激工程、降下工程は、日々の習慣とするのが好ましい。同じ時刻に、同じ刺激量に制御するのが好ましい。
【0019】
<プロセス:通常の場合>
図6でプロセスを説明する。
図6で、点線は、通常(日常)の深度温度10と皮膚温度11の変化を示す。通常は、普段の生活時の平均値である。この場合に、
図5同様に、振動または電気刺激を人に与えると(刺激工程)、
図5同様に、深度温度10と皮膚温度11を上昇させる。その後、深度温度10と皮膚温度11を下がり(降下工程)、その温度差12はより下がる。
結果、通常よりより早い時刻に、深度温度10と皮膚温度11の温度差12が小さくなり、睡眠しやすくなる。
【0020】
<入浴などとの関係>
図7で説明する。
図7は、
図6にさらに入浴した場合を実践で示す。入浴の場合、時間、強度などを制御できないので、いろいろなパターンとなってしまい、制御できない。上記振動または電気刺激で制御よく体を温めるのが好ましい。
他の運動、事件より、振動または電気刺激により温度上昇を与えた方が、降下工程を制御できる。
【0021】
<刺激部20の位置>
刺激部20は、脇腹にあてるのが好ましい。
図8に示している。この理由は、血流を体幹部の動脈と皮膚の毛細管との両方を交互に電気刺激するためである。実際に実施すると、睡眠に陥る者が多い。首の周りでもよい。首の周りだと、それこそ心臓と体幹部に近いためである。
刺激部20を胸あるいは脇腹部と、大腿部と、をペアでつなぐ、それを右側と左側と両方のペアで接続する、としてもよい。
【0022】
<時間>
振動または電気刺激を与える時間は、20分~30分が好ましい。脂肪燃焼のための運動と同様に、全体に振動または電気刺激の影響が行き渡るために20分~30分は必要である。20分より短いと、全身の温度が上がらない。
【0023】
<時間帯>
夕食後の眠りへの準備時間帯、具体的には22:30前後あたりの概日性リズムに基づく、自然な眠気を感じる一日の時間帯に、この電気刺激を与えると入眠に効果がある。21:30~23:30がよい、22:00~23:00が好ましい。
日々の習慣として、時間帯、使用時間、刺激を一定とするのが好ましい。
【0024】
<応用>
(1)理学療法士など専門家が自施設内で施術として実施することができる。この場合は、専門家などが機器を購入して人19に実施する。はりきゅうみたいな感じである。
(2)個人が自宅で実施することもできる。購入者が機器を購入し、パッド(刺激部20)の装着など画像ビデオで提供して、セルフで実施する。
【0025】
<温度計測部23>
図9は、刺激装置21の別例を示す。刺激装置21は、人19に接して振動または刺激部20と、振動または電気刺激を制御する制御部22と、人19の皮膚温度11を測定する測定部23と、を有する。制御部22は、測定部23により人19の皮膚温度11を測定し、所定の温度になるまで刺激部20を振動または電気刺激させる。
所定の温度とは、
図6で示すように、1.5度から5度程度上昇する温度である。その後、振動または電気刺激を止めると、
図6のような温度変化をする。
【0026】
(全体として)
なお、各要素は組み合わせできる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本願の睡眠促進システムと睡眠促進方法は、個人だけでなく、病院、宿舎、会社などの施設でも使用できる。
【符号の説明】
【0028】
10 深部温度、11 皮膚温度、12 温度差、19 人、20 刺激部、21 刺激装置、22 制御部、23 測定部
【手続補正書】
【提出日】2021-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人に接して前記振動または電気刺激を与える刺激部と、
前記振動または電気刺激を制御する制御部と、
前記人の皮膚温度を測定する測定部と、を有する睡眠促進装置であり、
前記振動または電気刺激の周波数は、1~1,200Hzの低周波と、10,000Hz以上の高周波とを交互である睡眠促進装置。
【請求項2】
前記刺激部は、前記人の両脇腹にあてられ、前記振動または電気刺激を前記人の両脇腹に与える請求項1に記載の睡眠促進装置。
【請求項3】
制御部は、前記刺激部により、前記振動または電気刺激を与える時間を、20分~30分とする請求項1または2に項に記載の睡眠促進装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記刺激部により、人に、前記振動または電気刺激を与え体幹部動脈の血流量を増加させながら前記皮膚温度を上昇させ、その後、前記皮膚温度を降下させ、結果、前記人が睡眠時に、深度温度と前記皮膚温度の温度差が、通常時の温度差となっているように制御する請求項1~3のいずれか1項に記載の睡眠促進装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記刺激部により、人に、前記振動または電気刺激を、日々の習慣として、同時刻、同じ刺激量に制御し与える請求項4に記載の睡眠促進装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記測定部により前記皮膚温度を測定し、所定の温度になるまで刺激部を振動または電気刺激させる睡眠促進装置であり、
前記所定の温度とは、1.5度から5度上昇する温度であり、その後、振動または電気刺激を止め、深度温度と前記皮膚温度とを下げ、通常より早い時刻に、前記深度温度と前記皮膚温度との温度差を小さ
くし、睡眠させる睡眠促進装置。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人に接して振動または電気刺激を与える刺激部と、
前記振動または電気刺激を制御する制御部と、
前記人の皮膚温度を測定する測定部と、を有する睡眠促進装置であり、
前記振動または電気刺激の周波数は、1~1,200Hzの低周波と、10,000Hz以上の高周波とを交互である睡眠促進装置であり、
前記刺激部は、前記1~1,200Hzの低周波と、前記10,000Hz以上の高周波とを発し、
前記制御部は、前記低周波と前記高周波と交互に発するように前記刺激部を制御し、
前記制御部は、前記刺激部により、前記振動または電気刺激を与える時間を、20分~30分とする睡眠促進装置。
【請求項2】
人に接して振動または電気刺激を与える刺激部と、
前記振動または電気刺激を制御する制御部と、
前記人の皮膚温度を測定する測定部と、を有する睡眠促進装置であり、
前記振動または電気刺激の周波数は、1~1,200Hzの低周波と、10,000Hz以上の高周波とを交互である睡眠促進装置であり、
前記刺激部は、前記1~1,200Hzの低周波と、前記10,000Hz以上の高周波とを発し、
前記制御部は、前記低周波と前記高周波と交互に発するように前記刺激部を制御し、
前記制御部は、前記測定部により前記皮膚温度を測定し、所定の温度になるまで前記刺激部を前記振動または前記電気刺激させ、
前記所定の温度とは、1.5度から5度上昇する温度であり、その後、前記振動または前記電気刺激を止め、深度温度と前記皮膚温度とを下げ、通常より早い時刻に、前記深度温度と前記皮膚温度との温度差を小さくし、睡眠させる睡眠促進装置。
【請求項3】
前記刺激部は、前記人の両脇腹にあてられ、前記振動または電気刺激を前記人の両脇腹に与える請求項1又は2に記載の睡眠促進装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記刺激部により、前記人に、前記振動または電気刺激を、日々の習慣として、同時刻、同じ刺激量に制御し与える請求項1~3のいずれか1項に記載の睡眠促進装置。