(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055283
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220331BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/30 101
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015904
(22)【出願日】2021-02-03
(62)【分割の表示】P 2020162648の分割
【原出願日】2020-09-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐川 浩一
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA01C
4F100AB24C
4F100AK15A
4F100AK15B
4F100AK15J
4F100AK22A
4F100AK22J
4F100AK25C
4F100AL01A
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100EH462
4F100EH46C
4F100EJ05C
4F100EJ53
4F100EJ54
4F100GB07
4F100HB00A
4F100HB31A
4F100JC00
4F100YY00C
(57)【要約】 (修正有)
【課題】銀系無機抗菌剤・抗ウイルス剤により抗菌・抗ウイルス性能が付与され、しかも変色などの問題を起こすことがないポリ塩化ビニル製の化粧シートを提供する。
【解決手段】ポリ塩化ビニル樹脂層40の一方の面に模様層30が積層され、他方の面に表面保護層50が積層されてなり、表面保護層50は、無機物により担持された銀系添加剤60が添加され、且つ塩素を含む成分が添加されずに構成され、無機物により担持された銀系添加剤の平均粒径(μm)を「D50」とし、前記表面保護層の最表層の1平方m当たりの塗布量(g/m
2)を「Dsurf」としたときに、下記の式(1)の関係が成立する化粧シート10。D50≦Dsurf<3×D50・・・式(1)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル樹脂層の一方の面には、模様層が積層され、
前記ポリ塩化ビニル樹脂層の他方の面には、表面保護層が積層された化粧シートにおいて、
前記表面保護層は、銀を含む銀成分が添加され、且つ塩素を含む成分が添加されずに構成され、
前記銀成分は、無機物で担持され、
前記無機物により担持された銀系添加剤の平均粒径(μm)を「D50」とし、前記表面保護層の最表層の1平方m当たりの塗布量(g/m2)を「Dsurf」としたときに、下記の式(1)の関係が成立していることを特徴とする化粧シート。
D50≦Dsurf<3×D50 ・・・式(1)
【請求項2】
前記表面保護層は、架橋構造を有していることを特徴とする、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記表面保護層の前記架橋構造は、紫外線を用いて形成していることを特徴とする、請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記表面保護層の前記架橋構造は、電子線を用いて形成していることを特徴とする、請求項2に記載の化粧シート。
【請求項5】
表面保護層の最表層において、銀系添加剤成分の固形分濃度(質量%)を「A」とし、前記銀系添加剤中の銀の割合(質量%)を「B」とし、1平方m当たりの塗布量(g)を「C」としたときに、下記の式(2)の関係が成立することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の化粧シート。
A×B×C≧10 ・・・式(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば一般建具などの建装材に用いられる化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
無機物質に銀イオンを担持させた銀系無機抗菌剤・抗ウイルス剤は、有機系抗菌剤と比較して安全性が高く、抗菌性を長期間持続でき、耐熱性が高いという特徴があるが、反面変色をおこしやすいという問題が指摘されている(特許文献1の段落[0002]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に塩素を含む材料と併用する場合は、変色が顕著に起こることが知られている。
変色のメカニズムは様々なものがあるが、塩素系材料との併用の場合は、銀イオンと塩素イオンの反応による白色の塩化銀の生成が知られている。
建材の表層加飾に用いられる化粧シートには、ポリ塩化ビニル製、ポリエチレンテレフタレート製、ポリオレフィン製、紙製、及びこれらの複合によるものなどが使われているが、不燃性が必要な用途や高い後加工性が要求される用途などにおいては、ポリ塩化ビニル製の化粧シートが使用される。
【0005】
しかし、ポリ塩化ビニル製化粧シートに抗菌・抗ウイルス性を付与するために銀系の添加剤を添加した場合に、変色などの問題を起こすことがあり、技術的課題となっていた。
本発明はかかる課題の解決のために検討されたものであり、抗菌・抗ウイルス性能が付与されたポリ塩化ビニル製の化粧シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る化粧シートは、ポリ塩化ビニル樹脂層、模様層、表面保護層を少なくとも有する化粧シートにおいて、前記表面保護層には銀を含む銀成分が添加されており、且つ塩素を含む成分が添加されていないことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様に係る化粧シートは、前記表面保護層は複数層の積層により形成されており、前記複数層から形成される前記表面保護層の一部の層にのみ前記銀成分が添加されていることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記複数層からなる前記表面保護層の前記ポリ塩化ビニル樹脂層と隣接する層には前記銀成分が添加されていないことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記銀成分が、無機物で担持されていることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記表面保護層が、架橋構造を有していることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記表面保護層の前記架橋構造を、紫外線を用いて形成していることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記表面保護層の前記架橋構造を、電子線を用いて形成していることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記無機物により担持された銀系添加剤の平均粒径(μm)を「D50」とし、前記表面保護層の最表層の1平方m当たりの塗布量(g/m2)を「Dsurf」としたときに、下記の式(1)の関係が成立していることを特徴とする。
D50≦Dsurf<3×D50 ・・・式(1)
【0010】
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記表面保護層の最表層において、銀系添加剤成分の固形分濃度(質量%)を「A」とし、前記銀系添加剤中の銀の割合(質量%)を「B」とし、1平方m当たりの塗布量(g)を「C」としたときに、下記の式(2)の関係が成立することを特徴とする。
A×B×C≧10 ・・・式(2)
【0011】
本発明の一態様に係る化粧シートの製造方法は、印刷基材の表面に模様層を積層し、前記模様層の表面に透明のポリ塩化ビニルを積層し、前記ポリ塩化ビニル樹脂層の表面に透明の表面保護層を積層し、前記表面保護層は、下塗り層と上塗り層とから構成し、前記ポリ塩化ビニル樹脂層の表面に、銀を含む銀成分が添加されていない樹脂を下塗りし、硬化させて前記下塗り層を形成する第1ステップと、前記下塗り層の表層に、前記銀成分が添加され、且つ塩素を含む成分が添加されていない樹脂を上塗りし、硬化時に架橋させ、前記上塗り層を形成する第2ステップと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、塩素と銀との接触による変色を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1に係わる化粧シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
本発明の実施形態1について、以下に図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
(化粧シート10)
図1中、10は、化粧シートであり、化粧シート10は、例えば一般建具などの建装材に用いられる。
化粧シート10は、次の層が順次積層されている。
なお、次の各層については、後述する。
(1)印刷基材20
(2)模様層30
(3)ポリ塩化ビニル樹脂層40
(4)表面保護層50
なお、化粧シート10は、上記した(1)~(4)の層に限定されず、図示しないが、例えば表面保護層50の表面に、模様層30に同調させたエンボスなどの凹凸部を形成しても良い。
【0016】
(印刷基材20)
印刷基材20は、本発明の化粧シート10の支持体となるものであって、具体的には、例えばポリ塩化ビニル製の着色シートを使用し、厚みは、例えば70μmである。
なお、印刷基材20として、ポリ塩化ビニル製の着色シートを例示したが、これに限定されず、例えば紙類を使用しても良い。また、着色シートの厚みとして、70μmを例示したが、70μmに限定されない。
【0017】
(模様層30)
模様層30は、印刷基材20の表面に、印刷方法を用いて形成され、目的の化粧シート10に意匠性を付与する目的で設けられるものである。
印刷方法としては、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷方法、凸版印刷方法、フレキソ印刷方法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等の各種の印刷方法の適用により形成される。なお、印刷方法は、上記例示した印刷方法に限定されず、例えば手描き法、墨流し法や、転写法、写真法、電子写真法、感光性樹脂法、真空蒸着法、化学腐蝕法、感熱発色法、放電破壊法等、従来公知の任意の画像形成手段を適用することができる。
【0018】
模様層30の模様の種類は、使用目的や使用者の嗜好等により任意であり、例えば木目柄、石目柄、抽象柄等が一般的である。模様の種類は、上記例示した種類に限定されず、例えば全面ベタ印刷等であっても良い。
印刷方法に用いられる印刷インキとしては、例えば塩酢ビ系インキ(シアン、マゼンタ、イエロー)用いている。
【0019】
なお、印刷インキとしては、塩酢ビ系インキを例示したが、これに限定されず、例えば有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤を、体質顔料、充填材、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、乾燥剤等の適宜の添加剤や、溶剤又は希釈剤等と共に、合成樹脂等からなる結着剤中に分散してなるものである。
【0020】
(ポリ塩化ビニル樹脂層40)
ポリ塩化ビニル樹脂層40は、模様層30の表面に積層され、透明であり、ポリ塩化ビニル樹脂層40の表面から模様層30が透けて見える。
具体的には、ポリ塩化ビニル樹脂層40は、熱ラミネーション方式で、透明ポリ塩化ビニルを積層して形成した。また、透明ポリ塩化ビニルの厚さは、例えば100μmであるが、厚さは100μmに限定されない。
【0021】
(表面保護層50)
表面保護層50は、化粧シート10の表面に耐磨耗性や耐水性等の表面物性を付与する目的で設けられるものである。
これに加え、表面保護層50は、銀を含む銀成分が添加された銀系添加剤60が添加され、抗ウイルス性を付与している。
表面保護層50は、それと同時に、塩素を含む成分が添加されていない。これは、銀系添加剤60の銀成分と、塩素との接触による変色を防止するためである。
【0022】
(複数層の表面保護層50)
表面保護層50は、グラビアコート法を用いて、複数層、例えば3層からなるアクリル系材料からなる第1~第3表面保護層51~53を設けている。
なお、表面保護層50として、3層を例示したが、これに限定されず、複数層であれば良く、図示しないが、例えば2層或いは4層以上でも良い。
【0023】
第1~第3表面保護層51~53の一部の層にのみ、例えば最表層に位置する第1表面保護層51にのみ銀を含む銀成分が添加された銀系添加剤60が添加さている。
なお、「一部の層」として、第1表面保護層51を例示したが、これに限定されず、図示しないが、中間に位置する第2表面保護層52を加えても良い。
【0024】
また、第1~第3表面保護層51~53のうち、ポリ塩化ビニル樹脂層40と隣接する層、例えば第3表面保護層53には、銀を含む銀成分が添加された銀系添加剤60が添加されていない。
なお、「ポリ塩化ビニル樹脂層40と隣接する層」として、第3表面保護層53を例示したが、これに限定されず、図示しないが、中間に位置する第2表面保護層52を加えても良い。
【0025】
これらのように、複数層から形成される表面保護層50の一部の層にのみ銀成分が添加し、又、表面保護層50のポリ塩化ビニル樹脂層40と隣接する層に、銀成分が添加されていないことで、積層界面での塩素と銀との接触を遮断することで、変色の原因を完全に断つことができる。
【0026】
(第1~第3表面保護層51~53)
第1~第3表面保護層51~53のうち、第1表面保護層51は、最表層に位置し、第3表面保護層53はポリ塩化ビニル樹脂層40に隣接し、第2表面保護層52は第1表面保護層51と第3表面保護層53との間に位置する。
第1表面保護層51は、銀系添加剤60が添加され、抗ウイルス性を付与している。
第2表面保護層52及び第3表面保護層53は、銀系添加剤60が添加しても良いし、或いは銀系添加剤60が添加しなくとも良い。
【0027】
例えば、第2表面保護層52及び第3表面保護層53において、銀系添加剤60を添加しない場合には、第3表面保護層53においては、銀系添加剤60の銀成分と、塩素との接触による変色の影響が無く、第3表面保護層53の材質の選択の自由度を向上できる。この場合には、第3表面保護層53の材質は、アクリル系材料に限らず、例えば、塩素を含む成分を含む、塩ビ-酢ビ系ポリマーも使用可能である。
【0028】
(銀系添加剤60)
銀系添加剤60は、銀を含む銀成分が添加され、抗ウイルス性を付与している。
銀成分は、無機物で担持されている。
ここで、「無機材料」としては、「ガラス」を使用するが、「無機材料」はガラスに限定されない。
銀を無機物に担持させることで、経時での銀成分の脱落や、ポリ塩化ビニル層への転移を防ぐことができる。
【0029】
(架橋構造)
表面保護層50は、架橋構造を有している。
表面保護層50を架橋することで、銀成分の転移をブロックすることが可能となる。
架橋構造は、紫外線や、或いは電子線等の高エネルギーで架橋させることで、架橋度を上げ、銀の転移をさらに抑制できる。
【0030】
例えば、電離放射線硬化型樹脂を使用可能であり、電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
【0031】
(銀系添加剤60の平均粒径、塗布量の関係)
無機物により担持された銀系添加剤60の平均粒径、すなわち銀と無機物の混合物の平均粒径(μm)を「D50」とし、表面保護層50の最表層の1平方m当たりの塗布量(g/m2)を「Dsurf」としたときに、下記の式(1)の関係が成立する。
D50≦Dsurf<3×D50 ・・・式(1)
【0032】
ここで、「平均粒径」は、銀と無機物の混合物の平均粒径をいう。すなわち、上記式(1)は、「D50」(μm)と「Dsurf」(g/m2)との数値における関係式を表している。
上記「式(1)」の関係が成立することで、銀の担持体の一部が表面保護層50から突起するため、抗菌・抗ウイルス効果が高まる。
【0033】
(銀系添加剤成分の固形分濃度、銀の割合、塗布量の関係)
表面保護層50の最表層において、銀系添加剤成分の固形分濃度(質量%)を「A」とし、銀系添加剤60中の銀の割合(質量%)を「B」とし、1平方m当たりの塗布量(g)を「C」としたときに、下記の式(2)の関係が成立する。
A×B×C≧10 ・・・式(2)
【0034】
ここで、「銀系添加剤成分」は、「銀成分」及び「無機担持体」(銀成分+無機担持体)をいう。すなわち、上記式(1)は、A:銀系添加剤の濃度(%)、B:銀系添加剤中の銀(有効成分)の濃度(%)、C:塗布量≠目付量(単位面積当たりの銀添加量より、「A×B×C」がある一定数量(本発明では、「10」以上)でないと、抗ウイルス性能が発現しない、という意味である。
【0035】
上記「式(2)」の関係が成立することで、銀系添加剤60の成分量、銀系添加剤60中の銀の担持量、塗布量の積が有効成分濃度に相当し、これが「10」以上であれば、抗ウイルス活性値「3」以上(ウイルスの99.9%減少)が実現できる。
【0036】
(製造方法)
上記した構成を有する化粧シート10の製造方法は、次の通りである。
印刷基材20に、厚み70μmの着色シート(ポリ塩化ビニル製)を使用し、印刷基材20の表面に、塩酢ビ系インキ(シアン、マゼンタ、イエロー)をグラビア印刷し、模様層30を形成する。
模様層30の表面に、熱ラミネーション方式で厚さ100μmの透明ポリ塩化ビニルを積層し、ポリ塩化ビニル樹脂層40を形成する。
【0037】
ポリ塩化ビニル樹脂層40の表層に、グラビアコート法を用いて、3層からなるアクリル系材料からなる表面保護層5を形成し、化粧シート10を作製した。
表面保護層50は、第1~第3表面保護層51~53の3層であるが、ここでは大別して「下塗り」(例えば第3表面保護層53、以下「下塗り」、或いは「下塗り層」ともいう。)と、「上塗り」(例えば第1表面保護層51、以下「上塗り」、或いは「下塗り層」ともいう。)に分けた。
第2表面保護層52は、「下塗り層」、或いは「上塗り層」と一致させる。
【0038】
具体的には、表面保護層50は、下塗り層(例えば第3表面保護層53)と上塗り層(例えば第1表面保護層51)とから構成する。
次のステップを含む。
(1)第1ステップ
第1ステップは、ポリ塩化ビニル樹脂層40の表面に、銀を含む銀成分(例えば銀系添加剤60)が添加されていない樹脂を下塗りし、硬化させて下塗り層(例えば第3表面保護層53)を形成するステップである。
【0039】
(2)第2ステップ
第2ステップは、下塗り層(例えば第3表面保護層53)の表層に、銀成分(例えば銀系添加剤60)が添加され、且つ塩素を含む成分が添加されていない樹脂を上塗りし、硬化時に架橋させ、上塗り層(例えば第1表面保護層51)を形成するステップである。
【0040】
(下塗り層)
下塗り層(例えば第3表面保護層53)、或いは下塗りのベース材料は、次のいずれか一種類を使用する。
(1)コート剤品名:UCクリヤー、硬化剤W325N=100/10、熱硬化型樹脂、DICグラフィックス製(以下「UCクリヤー」ともいう。)
材質:アクリル+イソシアネート
【0041】
(2)コート剤品名:UVTクリヤー、UV硬化型樹脂、DICグラフィックス製(以下「UVTクリヤー」ともいう。)
材質:アクリル
(3)コート剤品名:EBTクリヤー、EB硬化型樹脂、DICグラフィックス製(以下「EBTクリヤー」ともいう。)
材質:アクリル
下塗りにおいては、例えば銀系添加剤60(以下「抗ウイルス剤」ともいう。)を使用しない。なお、下塗りにおいて、銀系添加剤60(抗ウイルス剤)を使用することも可能である。
【0042】
(上塗り層)
上塗り層(例えば第1表面保護層51)、或いは上塗りのベース材料は、下塗りと同じである。
上塗りの銀系添加剤60(抗ウイルス剤)については、次のいずれか一種類を使用する。
(1)「抗ウイルス剤」の品名:PTC-NT ANV添加剤(ST)、大日精化製、銀担持量3%、平均粒径(D50)3μm(以下「PTC-NT ANV添加剤(ST)」ともいう。)
「PTC-NT ANV添加剤(ST)」の添加量(DRY換算)は、例えば1wt%~5wt%である。
「PTC-NT ANV添加剤(ST)」の塗布量は、1g/m2~3g/m2である。
【0043】
(2)「抗ウイルス剤」の品名:PTC-NT ANV添加剤(S1)、大日精化製、銀担持量2%、平均粒径(D50)1μm(以下「PTC-NT ANV添加剤(S1)」ともいう。)
「PTC-NT ANV添加剤(S1)」の添加量(DRY換算)は、「PTC-NT ANV添加剤(ST)」と同じである。
「PTC-NT ANV添加剤(S1)」の塗布量は、「PTC-NT ANV添加剤(ST)」と同じである。
【0044】
(3)「抗ウイルス剤」の品名:ビオサイド TB-B100、タイショーテクノス製、銀担持量1%、平均粒径(D50)5μm(以下「ビオサイド TB-B100」ともいう。)
「ビオサイド TB-B100」の添加量(DRY換算)は、例えば5wt%である。
「ビオサイド TB-B100」の塗布量は、「PTC-NT ANV添加剤(ST)」と同じである。
【0045】
(実施形態の作用・効果)
実施形態の作用・効果は、次の通りである。
(1)本実施形態によれば、ポリ塩化ビニル樹脂層40、模様層30、表面保護層50を少なくとも有する化粧シート10において、表面保護層50には銀を含む銀成分(例えば銀系添加剤60)が添加されており、且つ塩素を含む成分が添加されていないことで、塩素と銀との接触による変色を防止することができる。
【0046】
(2)本実施形態によれば、表面保護層50は複数層の積層により形成されており、複数層から形成される表面保護層50の一部の層にのみ銀成分(例えば銀系添加剤60)が添加され、又、複数層からなる表面保護層50のポリ塩化ビニル樹脂層40と隣接する層には銀成分(例えば銀系添加剤60)が添加しないことで、積層界面での塩素と銀との接触を遮断し、変色の原因を完全に断つことができる。
【0047】
(3)本実施形態によれば、銀を無機物に担持させることで、経時での銀成分の脱落や、ポリ塩化ビニル層への転移を防ぐことができる。
(4)本実施形態によれば、表面保護層50を架橋することで、銀成分の転移をブロックすることが可能となる。
(5)本実施形態によれば、紫外線や、或いは電子線等の高エネルギーで架橋をさせることで、架橋度を上げ、銀の転移をさらに抑制できる。
【0048】
(6)本実施形態によれば、無機物により担持された銀系添加剤60の平均粒径(μm)を「D50」とし、表面保護層50の最表層の1平方m当たりの塗布量(g/m2)を「Dsurf」とし、「D50≦Dsurf<3×D50」(式(1))の関係が成立することで、銀の担持体の一部が表面保護層50から突起するため、抗菌・抗ウイルス効果が高まる。
【0049】
(7)本実施形態によれば、表面保護層50の最表層において、銀系添加剤成分の固形分濃度(質量%)を「A」とし、銀系添加剤60中の銀の割合(質量%)を「B」)とし、1平方m当たりの塗布量(g)を「C」としたときに、「A×B×C≧10」(式(2))の関係が成立することで、銀系添加剤60の成分量、銀系添加剤60中の銀の担持量、塗布量の積が有効成分濃度に相当し、これが「10」以上であれば、抗ウイルス活性値「3」以上(ウイルスの99.9%減少)が実現できる。
【0050】
(8)本実施形態によれば、印刷基材20の表面に模様層30を積層し、模様層30の表面に透明のポリ塩化ビニル40を積層し、ポリ塩化ビニル樹脂層40の表面に透明の表面保護層50を積層し、表面保護層50は、下塗り層(例えば第3表面保護層53)と上塗り層(例えば第1表面保護層51)とから構成し、ポリ塩化ビニル樹脂層40の表面に、銀を含む銀成分(例えば銀系添加剤60)が添加されていない樹脂を下塗りし、硬化させて下塗り層(例えば第3表面保護層53)を形成する第1ステップと、下塗り層(例えば第3表面保護層53)の表層に、銀成分(例えば銀系添加剤60)が添加され、且つ塩素を含む成分が添加されていない樹脂を上塗りし、硬化時に架橋させ、上塗り層(例えば第1表面保護層51)を形成する第2ステップと、を備えているので、銀成分の転移をブロックすることができる。
【実施例0051】
以下、実施例1~実施例19及び比較例1を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例1~実施例19に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
実施例1は、印刷基材20に、厚み70μmの着色シート(ポリ塩化ビニル製)を使用し、印刷基材20の表面に、塩酢ビ系インキ(シアン、マゼンタ、イエロー)をグラビア印刷し、模様層30を形成する。
【0053】
模様層30の表面に、熱ラミネーション方式で厚さ100μmの透明ポリ塩化ビニルを積層し、ポリ塩化ビニル樹脂層40を形成する。
ポリ塩化ビニル樹脂層40の表層に、グラビアコート法を用いて、3層からなるアクリル系材料からなる表面保護層50を形成し、実施例2の化粧シート10を作製した。
表面保護層50の処方は、次の表1の通りである。
【0054】
【0055】
すなわち、表面保護層50の「下塗り」の「ベース材料」は、表1の通り、コート剤「UCクリヤー」、材料「アクリル」である。「下塗り」の「抗ウイルス剤」は、品名「PTC-NT ANV添加剤(ST)」、添加量(DRY換算)「5wt%」、塗布量は、「3g/m2」である。
「上塗り」の「ベース材料」は、「下塗り」と同様である。「上塗り」の「抗ウイルス剤」は、「下塗り」と同様である。
【0056】
(実施例2)
実施例2は、「下塗り」の「抗ウイルス剤」は、「なし」とし、他は実施例1と同じ条件で、実施例2の化粧シートを得た。
(実施例3)
実施例3は、表1の通り、「下塗り」の「ベース材料」が、コート剤「UCクリヤー、硬化剤W325N=100/10」とし、材質「アクリル+イソシアネート」とし、「抗ウイルス剤」は、「なし」とし、「上塗り」の「ベース材料」は、コート剤「UCクリヤー、硬化剤W325N=100/10」とし、材質「アクリル+イソシアネート」とし、他は実施例1と同じ条件で、実施例3の化粧シートを得た。
【0057】
(実施例4)
実施例4は、表1の通り、「下塗り」の「ベース材料」が、コート剤「UVTクリヤー」とし、材質「アクリル」とし、「抗ウイルス剤」は、「なし」とし、「上塗り」の「ベース材料」は、コート剤「UVTクリヤー」とし、材質「アクリル」とし、他は実施例1と同じ条件で、実施例4の化粧シートを得た。
【0058】
(実施例5)
実施例5は、表1の通り、「下塗り」の「ベース材料」が、コート剤「EBTクリヤー」とし、材質「アクリル」とし、「抗ウイルス剤」は、「なし」とし、「上塗り」の「ベース材料」は、コート剤「EBTクリヤー」とし、材質「アクリル」とし、他は実施例1と同じ条件で、実施例5の化粧シートを得た。
【0059】
(実施例6)
実施例6の表面保護層50の処方は、次の表2の通りである。
【0060】
【0061】
すなわち、表面保護層50の「上塗り」の「抗ウイルス剤」は、表2の通り、実施例3の添加量(DRY換算)「5wt%」を、「3wt%」とし、他は実施例3と同じ条件で、実施例6の化粧シートを得た。
【0062】
(実施例7)
実施例7は、表2の通り、「上塗り」の「抗ウイルス剤」の添加量(DRY換算)「2wt%」とし、他は実施例3と同じ条件で、実施例7の化粧シートを得た。
(実施例8)
実施例8は、表2の通り、「上塗り」の「抗ウイルス剤」の添加量(DRY換算)「1wt%」とし、他は実施例3と同じ条件で、実施例8の化粧シートを得た。
【0063】
(実施例9)
実施例9は、表2の通り、「上塗り」の「抗ウイルス剤」の塗布量「2g/m2」とし、他は実施例3と同じ条件で、実施例9の化粧シートを得た。
(実施例10)
実施例10は、表2の通り、「上塗り」の「抗ウイルス剤」の塗布量「1g/m2」とし、他は実施例3と同じ条件で、実施例10の化粧シートを得た。
【0064】
(実施例11)
実施例11は、表2の通り、「上塗り」の「抗ウイルス剤」の品名「PTC-NT ANV添加剤(S1)」とし、他は実施例3と同じ条件で、実施例11の化粧シートを得た。
(実施例12)
実施例12は、表2の通り、「上塗り」の「抗ウイルス剤」の品名「PTC-NT ANV添加剤(S1)」とし、添加量(DRY換算)「3wt%」とし、他は実施例3と同じ条件で、実施例12の化粧シートを得た。
【0065】
(実施例13)
実施例13は、表2の通り、「上塗り」の「抗ウイルス剤」の品名「PTC-NT ANV添加剤(S1)」とし、添加量(DRY換算)「2wt%」とし、他は実施例3と同じ条件で、実施例13の化粧シートを得た。
(実施例14)
実施例14は、表2の通り、「上塗り」の「抗ウイルス剤」の品名「PTC-NT ANV添加剤(S1)」とし、添加量(DRY換算)「1wt%」とし、他は実施例3と同じ条件で、実施例14の化粧シートを得た。
【0066】
(実施例15)
実施例15は、表2の通り、「上塗り」の「抗ウイルス剤」の品名「PTC-NT ANV添加剤(S1)」とし、塗布量「2g/m2」とし、他は実施例3と同じ条件で、実施例15の化粧シートを得た。
(実施例16)
実施例16は、表2の通り、「上塗り」の「抗ウイルス剤」の品名「PTC-NT ANV添加剤(S1)」とし、塗布量「1g/m2」とし、他は実施例3と同じ条件で、実施例16の化粧シートを得た。
【0067】
(実施例17)
実施例17は、表2の通り、「上塗り」の「抗ウイルス剤」の品名「ビオサイド TB-B100」とし、他は実施例3と同じ条件で、実施例17の化粧シートを得た。
(実施例18)
実施例18は、表2の通り、「上塗り」の「抗ウイルス剤」の品名「ビオサイド TB-B100」とし、塗布量「2g/m2」とし、他は実施例3と同じ条件で、実施例18の化粧シートを得た。
【0068】
(実施例19)
実施例19は、表2の通り、「上塗り」の「抗ウイルス剤」の品名「ビオサイド TB-B100」とし、塗布量「1g/m2」とし、他は実施例3と同じ条件で、実施例19の化粧シートを得た。
【0069】
(比較例1)
比較例1は、表1の通り、表面保護層50の「下塗り」及び「上塗り」のベース材料に、コート材品名「ソルバイン CL」(日信化学工業製)、材質「塩酢ビ樹脂」を用いた他は実施例1と同じ方法で、比較例1の化粧シートを作製した。
【0070】
(参考例)
参考例は、表1の通り、表面保護層50の「下塗り」及び「上塗り」において、抗ウイルス剤を添加しない他は実施例1と同じ方法を用いて、参考例の化粧シートを作製した。
【0071】
(評価基準1)
作成した実施例1~5及び比較例1の化粧シートに対して、参考例の化粧シートとの間で色差ΔE(00)を測定した。
ΔE(00)は、国際照明委員会(CIE)にて2000年に定義された方法によるものである。
さらに、実施例1~実施例5、比較例1、参考例の化粧シートをそれぞれ80℃のオーブンで10日加熱し、色差ΔE(2000)を測定した。
【0072】
(評価結果1)
結果を表3に示す。
【0073】
【0074】
比較例と比べて実施例1~実施例5の化粧シートは、80℃の加熱後の色変化が小さいことがわかる。
ここで、「色差」が大きい程、色変化(変色)が大きい。
実施例1は、表面保護層50の「下塗り」に、抗ウイルス剤を添加しているのに対し、実施例2~実施例5は「下塗り」に、抗ウイルス剤を添加していないことから、実施例1において、「色差」が大きくなったものと推測できる。
【0075】
(評価基準2)
作成した実施例3及び実施例6~実施例19に対して、ISO21702に準じた方法で、インフルエンザウイルスの抗ウイルス性能を評価した。
「抗ウイルス活性値」は、下記の式(3)で求めた。
V = ( 10 × C × D × N ) / A ・・・式(3)
V : 試料1cm2当たりのウイルス感染価(PFU/cm2)
C : 計測したプラーク数
D : プラークを計測したウェルの希釈系列
N : 中和液量
A : 試料とウイルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
【0076】
(評価結果2)
結果を表4に示す。
【0077】
【0078】
銀系添加剤の成分の固形分濃度A(質量%)、銀系添加剤中の銀の割合B(質量%)、1平方m当たりの塗布量をC(g)の積(A×B×C)が、「10」以上(A×B×C≧10)の範囲内にあるものは、特に優秀な抗ウイルス活性値が得られることがわかった。
すなわち、「10」以上の場合に、抗ウイルス活性値「3」以上(ウイルスの99.9%減少)が実現できる。