(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055284
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】マルチバー経編生地およびその編み方法
(51)【国際特許分類】
D04B 21/00 20060101AFI20220331BHJP
D04B 21/18 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
D04B21/00 A
D04B21/18
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021016487
(22)【出願日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】202011045851.X
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519452116
【氏名又は名称】▲広▼州市天▲海▼花▲邊▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】沈 ▲寧▼一
(72)【発明者】
【氏名】▲曾▼ ▲憲▼忠
(72)【発明者】
【氏名】付 利霞
【テーマコード(参考)】
4L002
【Fターム(参考)】
4L002AA05
4L002AC01
4L002AC06
4L002AC07
4L002CA00
4L002CA03
4L002CA04
4L002CB02
4L002EA00
4L002EA06
4L002FA01
(57)【要約】
【課題】マルチバー経編生地およびその編み方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、マルチバー経編生地およびその編み方法を開示している。該生地は、地組織と、織目と、少なくとも一群の弾性糸とを含み、弾性糸の各群は2本の弾性糸で構成されている、該生地において、各群の2本の弾性糸が地組織の1つの同じ畝内のループの少なくとも90%上で反対方向にインレイされることを特徴とする。生地は、柔らかく快適な手触りおよび生地の全体的な物性を維持することに加えて、弾性糸は色落ちし易くなく、飛び出し易くなく、生地はより低い仕上げ密度で使用されることが可能であり、それにより製造コストを削減することができることを含む、優れた特性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地組織と、織目と、少なくとも一群の弾性糸とを含み、弾性糸の各群は2本の弾性糸で構成されている、マルチバー経編生地において、各群の前記2本の弾性糸が、前記地組織の1つの同じ畝内のループの少なくとも90%上で反対方向にインレイされることを特徴とする、マルチバー経編生地。
【請求項2】
一群の弾性糸が前記地組織の各畝内の前記ループの少なくとも90%上で反対方向にインレイされることを特徴とする、請求項1に記載のマルチバー経編生地。
【請求項3】
各群の前記2本の弾性糸は反対方向に対称にインレイされ、絡み合わせ様のまたは絡み合わされたロープ様の構造を形成することを特徴とする、請求項1に記載のマルチバー経編生地。
【請求項4】
前記弾性糸はスパンデックスを含むことを特徴とする、請求項1に記載のマルチバー経編生地。
【請求項5】
前記弾性糸は1000デニール以下の細さを有することを特徴とする、請求項1に記載のマルチバー経編生地。
【請求項6】
少なくとも一群の弾性糸を設けるステップであり、弾性糸の各群は2本の弾性糸で構成されている、設けるステップと、各群の前記2本の弾性糸を地組織の1つの同じ畝内のループの少なくとも90%上で反対方向にインレイするステップとを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のマルチバー経編生地を編む方法。
【請求項7】
各群の前記2本の弾性糸を対称に反対方向にインレイして、絡み合わせ様のまたは絡み合わされたロープ様の構造を形成するステップを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチバー経編生地、およびマルチバー編機上でのその編み方法に関し、詳細には、全体的な地組織内に弾性糸が反対方向にインレイされる(are inlaid)マルチバー経編生地に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ生地、ヨガウェア生地等のプレミアムエンドの(premium-end)機能的レース生地は、一般に、装着過程中の着脱により有益で、より良好な保形を有する良好な弾性伸張を必要とする。そのような特徴を有するレース生地の開発コストは比較的高い。
【0003】
経編生地のための良好な経糸方向の弾性を得るために、所望の経糸方向の収縮は、一般に、1本の弾性糸を地組織内にインレイ(inlay)することにより達成される。理論上、経糸方向の収縮が大きいほど、経糸方向の弾性が良好である。しかし、経糸方向の収縮率があるレベルに達すると、地組織のループがより緩み、弾性糸上の結合力が小さくなる。繰り返される装着と洗濯の過程で、弾性糸は曲がり易くなり、地組織から変形するかまたはさらには突出し、専門的に、例えばスパンデックスの、飛出しおよび色落ちと呼ばれる。これは、洗濯要件を満たさないばかりか、衣類の等級を低下させる。
【0004】
現在、前述の技術的問題を解決する唯一の方法は、完成品の経糸方向密度、織機ピック数(pick count)等を高める/増加させることであり、それにより布地の弾性が犠牲にされ、製品開発コストがかなり増大する。レース生地の弾性を高めかつコストを削減するという要求が市場に存在し続けるので、それはイノベーションによってのみ達成され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つのガイドバーにより1本の針でインレイされる1本だけの弾性糸を用いる従来のマルチバー経編生地では、スパンデックスが飛び出し易く、色落ちし易いという問題を解決するために、本発明によれば、群内の2本の弾性糸が各畝内で常に反対方向にインレイされる(即ち、反対側にインレイされる)。群内の該2本の弾性糸が反対方向に対称にインレイされ、絡み合わせ様のまたは絡み合わされたロープ様の構造を形成することが好ましい。そのような構造のループは、一定の角度の絡み合わせにより、分散させることがより困難であり、それにより、引張試験または洗濯試験中に弾性糸が布地から飛び出すことが効果的に防止され得る。布地の全畝内の全てのループまたは90%より多くのループ内の弾性糸が本方法に従って反対方向にインレイされることが好ましく、それにより、スパンデックスの飛出しまたは巻き出ること(winding out)の問題が回避され得る。本方法に従って編まれた布地は、完成品の密度が非常に低い場合でも、洗濯要件を十分に満たし、同時にコストを削減することができる。
【0006】
本発明によれば、前述の目的は、マルチバー経編生地、および弾性糸が反対方向にインレイされるその編み方法により達成される。該布地は、地組織と、織目と、少なくとも一群の弾性糸とを含み、弾性糸の各群が2本の弾性糸で構成されており、各群の該2本の弾性糸は、地組織の1つの同じ畝内のループの少なくとも90%に反対方向にインレイされる。
【0007】
各群内の2本の弾性糸は、独立して制御され得る2本のインレイバー内にそれぞれ通されることが好ましい。
【0008】
2本の弾性糸が2本のインレイバーにより反対方向にインレイされる場合、該インレイバーの基本構造は単独で設計され得ることが好ましい。
【0009】
各群内の2本の弾性糸は反対方向に対称にインレイされて、絡み合わせ様のまたは絡み合わされたロープ様の構造を形成することが好ましい。
【0010】
弾性糸はスパンデックスを含むことが好ましい。
【0011】
弾性糸は1000デニール以下の細さを有することが好ましい。
【0012】
例示的実施形態として、より拡張的な設計が採用される:2本の弾性糸が、2本のインレイバーにより、対称に、1本針でインレイされ、インレイは次の通り示される:
弾性糸インレイバー1: 1-1/0-0//
弾性糸インレイバー2: 0-0/1-1//。
またはインレイは次の通り示される:
弾性糸インレイバー1: 2-2/0-0//
弾性糸インレイバー2: 0-0/2-2//。
【0013】
2本の弾性糸インレイバーにより反対方向に対称にインレイされた2本の弾性糸を用いた布地の技術的特徴は:鎖編の各畝内で、地組織のループは2本の弾性糸により反対方向に巻き付かれ、該地組織の該ループをある程度絡み合わせ、したがって弾性糸上の地糸ループの結合力をかなり増大させる。完成品の密度が低いとしても、弾性糸が布地から外へ飛び出すことは難しい。
【0014】
本発明では、2本の弾性糸インレイバーが、畝のループ上で反対方向に弾性糸のインレイを実施するために、従来のマルチバー経編機上に配置されている。本発明の編み方法を用いると、より安定した地組織を得ることが可能であり、該方法の飛出し防止性能は通常の地組織により達成され得ず、該方法は製品の経糸方向密度をかなり低下させることができる。例えば、前段の例示的実施形態の場合と同様に、2本の弾性糸インレイバーにより反対方向に弾性糸のインレイを実施する過程では、群内の2本の弾性糸が、常に、鎖編の各畝内で反対方向にインレイされ、その結果、2本の弾性糸は地組織ループ内で相互に巻き付けられ、安定した構造を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の例示的実施形態による、対称に反対方向にインレイされる2本の弾性糸のラッピング図(lapping diagram)である。
【
図2】先行技術のマルチバー経編機のガイドバーの装置の図である。
【
図3】本発明の例示的実施形態によるマルチバー経編機のガイドバーの装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、1-第1の弾性糸;2-第2の弾性糸;3-地組織のループ;11-地ガイドバー;12-パターンガイドバー;13-ジャガードガイドバー;14-第1の弾性糸インレイガイドバー;15-第2の弾性糸インレイガイドバー、である。
【0017】
本発明の例示的実施形態における技術的解決策は、本発明の図面を参照して、以下に明確に完全に記載される。明らかに、記載されている実施形態は実施形態の全てでなく、本発明の例示的実施形態に過ぎない。本発明の該例示的実施形態に基づき、創造的な仕事を伴わずに当業者により得られる全ての他の実施形態が本発明の保護範囲内に入るものとする。
【0018】
本発明では、2本の弾性糸が、
図3に参照番号14、15を伴って示されている通り、2本の弾性糸インレイバーを備えた、即ち従来のマルチバー経編機にもう1本のインレイバーを追加している、特定のマルチバー経編機を使用することにより、反対方向にインレイされる(好ましくは2本の弾性糸が反対方向に対称にインレイされる)。さまざまなタイプのインレイに従って、機械制御ファイルが生成され、設計システム内のパターン要件および網目要件に従って、システム内の機械対応パターンファイルが生成される。
【0019】
結果として得られる布地は、一般的なマルチバー経編生地の生産工程および仕上工程に従って処理される。
実施例:
図1に示されている通り
【0020】
弾性糸インレイバーにより対称に反対方向に弾性糸をインレイする編み方法を、本発明による特定のマルチバー経編機上で実施し、マルチバー経編生地は、地組織と、織目と、反対方向にインレイされる弾性糸とを含み、インレイの指示、糸通し方法、および機械ゲージを次の通り表す:
第1の弾性糸インレイバー1: 1-1/0-0//、完全に通される、24E
第2の弾性糸インレイバー2: 0-0/1-1//、完全に通される、24E
または次の通り表される:
第1の弾性糸インレイバー1: 2-2/0-0//、完全に通される、24E
第2の弾性糸インレイバー2: 0-0/2-2//、完全に通される、24E。
【0021】
本発明では、2本の弾性糸インレイバーにより反対方向に対称にインレイされる2本の弾性糸を用いた経編布地は、事実上、反対方向にインレイされる2本の弾性糸が中でループと一緒に絡み合わされる鎖編のループの形状を変える。そのような構造は、弾性糸上の鎖編のループの結合力をかなり増強し、地組織をより安定させかつ容易に分散しないようにする。より低い完成品密度の場合でも、該経編布地は飛出し試験および洗濯試験をパスすることができる。
【0022】
次の表は、本発明による布地と先行技術のHN305Eパターン布地との間の洗濯試験の比較を示す。比較例としてのHN305Eパターン布地は、地組織と織目とを有し、地組織の鎖編の各畝内にインレイされる弾性糸(即ち、スパンデックス糸)が1本だけ存在する。規格ISO6330 4M F5 Cyclesに従って、該洗濯試験を実施し、5回洗濯することにより、洗濯過程をシミュレートした。
【0023】
【0024】
本発明の布地の構造は、洗濯時の布地の毛羽立ちおよび引っ掛けという問題を効果的に解決する。
【0025】
本発明は、経編機の一連の研究開発に関する。弾性糸ガイドバーの動作ラインが再配置されている。該機械の研究開発形態は限定されず、本明細書において詳細に記載されない。しかし、マルチバー経編機上で2本のインレイバーにより反対方向にインレイされた2本の弾性糸を含有するいかなる形態の布地も、本発明の保護範囲内に入る。
【0026】
前述は本願の例示的実施形態に過ぎず、本発明を限定しないものとする。本願の精神および原理の範囲内で施された、構造または過程に対する任意の修正、同等の置換、改善等が、または本発明を他の関連技術分野に直接もしくは間接的に適用することが、本発明の保護範囲内に包含される。
【符号の説明】
【0027】
1 第1の弾性糸
2 第2の弾性糸
3 地組織のループ
11 地ガイドバー
12 パターンガイドバー
13 ジャガードガイドバー
14 第1の弾性糸インレイガイドバー
15 第2の弾性糸インレイガイドバー
【外国語明細書】