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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055309
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20220331BHJP
   E06B 7/23 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/23 A
E06B7/23 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121949
(22)【出願日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2020162327
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021041428
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
(72)【発明者】
【氏名】中島 厚二
(72)【発明者】
【氏名】水原 一也
(72)【発明者】
【氏名】廣長 遼太
(72)【発明者】
【氏名】神田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】長峰 大輔
(72)【発明者】
【氏名】三浦 美依
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA00
2E036CA01
2E036DA03
2E036DA14
2E036EB02
2E036EC05
2E036GA02
2E036HA02
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】扉が存在しない開口部であっても当該開口部を塞いで水の通過を防止でき、扉が開閉可能に取付けられた扉枠の内側開口(開口部)を塞ぐように設置される際には、扉枠を損傷させ難く、かつ、扉本来の機能を損なわせ難いようにできる止水装置を提供する。
【解決手段】本発明の止水装置1は、左面12と右面13と下面14とを有した開口部(扉枠10の内側開口11)を塞いで当該開口部を介した水の通過を防止するための止水装置であって、止水壁2と、止水壁2の左端面22と開口部の左面12との間の水密を維持する左側の水密維持手段3と、止水壁2の右端面23と開口部の右面13との間の水密を維持する右側の水密維持手段4と、止水壁2の下端面24と開口部の下面14との間の水密を維持する下側の水密維持手段5と、を備えた構成とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左面と右面と下面とを有した開口部を塞いで当該開口部を介した水の通過を防止するための止水装置であって、
止水壁と、
前記止水壁の左端面と前記開口部の左面との間の水密を維持するために、前記止水壁の左端面及び前記開口部の左面のうちの少なくとも一方に設けられた左側の水密維持手段と、
前記止水壁の右端面と前記開口部の右面との間の水密を維持するために、前記止水壁の右端面及び前記開口部の右面のうちの少なくとも一方に設けられた右側の水密維持手段と、
前記止水壁の下端面と前記開口部の下面との間の水密を維持するために、前記止水壁の下端面及び前記開口部の下面のうちの少なくとも一方に設けられた下側の水密維持手段と、
を備えたことを特徴とする止水装置。
【請求項2】
前記開口部が建築構造物に設けられた扉枠の内側開口であって、
前記止水壁の左端面より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の左側の戸当り面に係止する左側係止部と、
前記止水壁の右端面より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の右側の戸当り面に係止する右側係止部と、
前記止水壁の下端面より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の下側の戸当り面に係止する下側係止部とを備え、
前記左側係止部が前記左側の戸当り面に係止するとともに、前記止水壁の左端面に設けられた前記左側の水密維持手段が前記扉枠の内側開口の左面との間の水密を維持し、
前記右側係止部が前記右側の戸当り面に係止するとともに、前記止水壁の右端面に設けられた前記右側の水密維持手段が前記扉枠の内側開口の右面との間の水密を維持し、
前記下側係止部が前記下側の戸当り面に係止するとともに、前記止水壁の下端面に設けられた前記下側の水密維持手段が前記扉枠の内側開口の下面との間の水密を維持することを特徴とする請求項1に記載の止水装置。
【請求項3】
前記水密維持手段は、被取付面である前記止水壁の左端面、前記止水壁の右端面、前記止水壁の下端面に取付けられたシール材により構成され、
前記シール材は、
前記止水壁を前記開口部に挿入する際の先端から末端に向けて、シール材が取付けられた前記被取付面からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の止水装置。
【請求項4】
前記水密維持手段は、板ばねとシール材とが組み合わされて構成され、
前記板ばねは、前記止水壁の被取付面である前記止水壁の左端面、前記止水壁の右端面、前記止水壁の下端面に取付けられた取付部と、当該取付部より延長するように設けられた弾発部とを備え、
前記シール材は、前記弾発部に取付けられており、
前記止水壁を前記開口部に挿入した場合に、前記板ばねの弾発部が前記開口部の面からの力を受けて変形した後の弾発力により前記シール材が前記開口部の面に押し付けられて当該開口部の面と前記シール材との間の水密が維持されるように構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の止水装置。
【請求項5】
前記水密維持手段は、シール材と水膨潤性能を有したシール材とを用いて構成され、
前記シール材は、前記止水壁を前記開口部に挿入した場合に、前記開口部の面との間に隙間が生じる状態に、前記止水壁の被取付面である前記止水壁の左端面、前記止水壁の右端面、前記止水壁の下端面に取付けられており、
前記開口部に挿入された前記止水壁の被取付面に取付けられている前記シール材と前記開口部の面との間の隙間に、前記水膨潤性能を有したシール材が充填されたことにより、前記シール材と前記開口部の面との間の水密が維持されるように構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の止水装置。
【請求項6】
前記水密維持手段は、シール材と水膨潤性能を有したシール材とを用いて構成され、
前記シール材は、前記止水壁が前記開口部に挿入された場合に、前記止水壁の被取付面である前記止水壁の左端面、前記止水壁の右端面、前記止水壁の下端面と前記開口部の面との間において、前記挿入の方向とは反対側である前側に偏って位置されるように、前記止水壁の被取付面に取付けられており、
前記開口部に挿入された前記止水壁の前記被取付面と前記開口部の面との間の隙間に、後側から前記水膨潤性能を有したシール材が充填されたことにより、前記止水壁の前記被取付面と前記開口部の面との間の水密が維持されるように構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の止水装置。
【請求項7】
前記水密維持手段は、
前記止水壁の被取付面に取付けられた取付面を有した取付部と、当該取付部より延長するとともに折り返されて前記開口部の面と対向する外面を有した折返部とを有して、互いに対向する前記取付部の対向面及び前記折返部の対向面とこれら対向面より延長する前記取付部と前記折返部との境界部分の面とで囲まれた溝を備えた構成とし、
さらに、
前記溝内に嵌入されて前記折返部の外面を前記開口部の面に押し付ける押圧手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の止水装置。
【請求項8】
前記止水壁の上部における左右のうちの少なくとも一方側に、前記止水壁を前記開口部の左右の面に支持させるための支持機構を備え、
前記支持機構は、
前記開口部の左右の面に対して直交する方向に移動可能に設けられた押圧体と、
前記押圧体が前記開口部の左面又は右面を押圧した際の反力を止水壁に伝達する反力伝達手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の止水装置。
【請求項9】
前記止水壁の上部に連結された支持機構を備え、
前記支持機構は、
前記止水壁を前記開口部の左右の面に支持させるための水平方向支持機構と、
前記止水壁を前記開口部の下面に支持させるための垂直方向支持機構とを備え、
前記水平方向支持機構は、
前記開口部の左右の面に対して直交する方向に長さを伸縮可能な伸縮自在部材と、反力伝達手段とを備え、
前記伸縮自在部材は、
一端が前記開口部の左面又は右面のいずれか一方に接触するように設けられた固定長部材と、
前記固定長部材の他端側に設けられて前記開口部の左右の面に対して直交する方向に移動可能な押圧体を有した押圧機構とを備え、
前記反力伝達手段は、前記押圧機構の押圧体が前記開口部の左面又は右面のいずれか他方を押圧した際の反力を止水壁に伝達するように機能し、
前記垂直方向支持機構は、
前記開口部の左右の面に突っ張るように取付けられた前記伸縮自在部材と、
当該伸縮自在部材の前記固定長部材に対して垂直方向に移動可能に設けられた押圧体とを備え、
前記伸縮自在部材が前記開口部の左右の面に突っ張るように作動した場合に、前記止水壁の左側の水密維持手段及び右側の水密維持手段のうち前記開口部の面に押し付けられない水密維持手段は、
止水壁の面に取付けられた取付面を有した取付部と、当該取付部より延長して折り返されて前記開口部の面と対向する外面を有した折返部とを有して、互いに対向する前記取付部の対向面及び前記折返部の対向面とこれら対向面より延長する前記取付部と前記折返部との境界部分の面とで囲まれた溝を備えた構成とし、
さらに、
前記溝内に嵌入されて前記折返部の外面を前記開口部の面に押し付ける押圧手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の止水装置。
【請求項10】
前記止水壁は、左右に分割された左側止水壁と右側止水壁とを備えて構成され、
さらに、
前記左側止水壁の右端側部分と前記右側止水壁の左端側部分とを結合する結合手段を備え、
前記結合手段は、前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分の互いに対向する面にそれぞれ左右方向の力を付与して、前記左側止水壁の左側の水密維持手段、及び、前記右側止水壁の右側の水密維持手段を、対向する前記開口部の面に押し付けることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の止水装置。
【請求項11】
前記止水壁は、左右に分割された左側止水壁と右側止水壁とを備えて構成され、
さらに、
前記左側止水壁の右端側部分と前記右側止水壁の左端側部分とを結合する結合手段を備え、
前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分のうちの一方が、前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分のうちの他方の前後方向の面を前後から挟み込む前後の壁板を備え、
前記結合手段は、
前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分に左右方向の力を付与して、右側止水壁の右側水密維持手段、及び、左側止水壁の左側水密維持手段を、対向する前記開口部の面に押し付ける左右の結合手段と、
前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分のうちの一方に設けられた前後の壁板のうちの一方の壁板と、当該一方の壁板と対向する前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分のうちの他方に設けられた前後方向の面のうちの一方の面とに、前後方向の力を付与して、前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分を前後方向で結合する前後の結合手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の止水装置。
【請求項12】
前記結合手段は、前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分における互いに対向する面のうちのいずれか一方の面に固定された固定楔と、当該固定楔と前記互いに対向する面のうちの他方の面との間に嵌入された嵌入楔とで構成されたことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の止水装置。
【請求項13】
前記開口部が建築構造物に設けられた扉枠の内側開口であって、
前記止水壁は、
壁板部と、
前記壁板部における扉側に位置される壁面の左端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の左側の戸当り面に係止する左側係止部と、
前記壁面の右端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の右側の戸当り面に係止する右側係止部と、
前記壁面の下端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の下側の戸当り面に係止する下側係止部とを備え、
前記壁面の左端から左側係止部までの長さ、前記壁面の右端から右側係止部までの長さ、前記壁面の下端から下側係止部までの長さが同じ長さに形成され、
前記壁面の各端面から各係止部までの長さが、閉じられた状態の扉の屋内側の面より突出する突出物の突出長さよりも長いことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の止水装置。
【請求項14】
前記開口部が建築構造物に設けられた扉枠の内側開口であって、
前記止水壁は、
壁板部と、
前記壁板部における扉側に位置される壁面の左端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の左側の戸当り面に係止する左側係止部と、
前記壁面の右端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の右側の戸当り面に係止する右側係止部と、
前記壁面の下端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の下側の戸当り面に係止する下側係止部とを備え、
前記開口部の左面と対向する前記止水壁の左端面における少なくとも左側係止部近傍位置、及び、前記開口部の右面と対向する前記止水壁の右端面における少なくとも右側係止部近傍位置、及び、前記開口部の下面と対向する前記止水壁の下端面における少なくとも下側係止部近傍位置に、前記水密維持手段が設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の止水装置。
【請求項15】
前記扉枠において、扉の開閉側の枠周囲に形成された周溝には、前記扉と前記扉枠とを直接接触させないようにし、かつ、前記扉の内側面の周囲と前記扉枠との密着性を確保するためのクッション材が設けられており、
前記各係止部近傍位置に設けられた前記水密維持手段と前記各係止部との間には、前記扉を閉じた際に変形した前記クッション材の一部と前記水密維持手段との干渉を防止するための干渉除け隙間が設けられたことを特徴する請求項14に記載の止水装置。
【請求項16】
前記開口部が建築構造物に設けられた扉枠の内側開口であって、
前記止水壁は、
壁板部と、
前記壁板部における扉側に位置される壁面の左端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の左側の戸当り面に係止する左側係止部と、
前記壁面の右端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の右側の戸当り面に係止する右側係止部と、
前記壁面の下端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の下側の戸当り面に係止する下側係止部とを備え、
前記壁面の左端から左側係止部までの左板部における前記開口部の左面と対向する板面には左側の水密性維持部材が設けられ、
前記壁面の右端から右側係止部までの右板部における前記開口部の右面と対向する板面には右側の水密性維持部材が設けられ、
前記壁面の下端から下側係止部までの下板部における前記開口部の下面と対向する板面には下側の水密性維持部材が設けられ、
かつ、前記壁面には、
左板部を扉枠の左面に向けて押圧するための押圧機構と、
右板部を扉枠の右面に向けて押圧するための押圧機構とを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の止水装置。
【請求項17】
前記開口部が建築構造物に設けられた扉枠の内側開口であって、
前記止水壁は、
壁板部と、
前記壁板部における扉側に位置される壁面の左端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の左側の戸当り面に係止する左側係止部と、
前記壁面の右端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の右側の戸当り面に係止する右側係止部と、
前記壁面の下端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の下側の戸当り面に係止する下側係止部とを備え、
前記壁面の下端から下側係止部まで下板部の上面には、止水装置の設置作業を支援するための設置作業支援部を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の止水装置。
【請求項18】
前記止水壁は、壁板部を備え、当該壁板部は、複数の形材を組み合わせて形成された中空構造の壁板部により構成されたことを特徴する請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の止水装置。
【請求項19】
前記止水壁の上端部には、閉じた状態の扉の内面よりも屋内側に突出する突出物との干渉を回避するための機構を有した取っ手を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項18のいずれか一項に記載の止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左面と右面と下面とを有した開口部を塞いで当該開口部を介した水の通過を防止するための止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物に設けられた扉枠の内側開口(開口部)を塞いで水の通過を防止するための止水装置が知られている(特許文献1,2参照)。
特許文献1には、扉枠に開閉可能に設けられた扉の下部側に取付けられた止水板を備えた止水装置であって、止水板は、板材と、板材の側端部及び下端部に沿って設けられたシールとを備え、止水板が扉の内側に取付けられて、扉が閉じた状態において、止水板の板材の下端部と当該下端部に設けられた下部シールとが扉枠の下部戸当りと扉との間に挟持され、かつ、止水板の板材の側端部と当該側端部に設けられた側部シールとが扉枠の縦戸当りと扉との間に挟持されるように構成された止水装置が開示されている。
また、特許文献2には、第一の部分を備えた止水部材を備え、扉枠に設置する場合に、第一の部分が、扉枠の各戸当りと扉との間に形成される第一の隙間に挿入され、第一の部分と各戸当りとの間にパッキン(シール材)が設けられた構成の止水装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5992864号公報
【特許文献2】特開2020-128699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された止水装置では、止水板を取付けるための扉の存在が不可欠であり、扉が存在しない開口部を塞いで水の通過を防止することができない。
また、特許文献2に開示された止水装置は、止水部材の幅を、扉枠の開口幅より僅かに大きくして、止水部材を扉枠に設置する場合には、止水部材を僅かに幅方向に圧縮させながら圧入状態で扉枠に設置するようにし、また、止水部材の幅を扉枠の開口幅と同等または開口幅より小さくして、止水部材を設置する場合には、止水部材の第一の部分を扉と扉枠の戸当りとで挟み込むようにして設置するようにしている。
しかしながら、特許文献2に開示された止水装置において、止水部材を僅かに幅方向に圧縮させながら圧入状態で扉枠に設置する場合は、扉枠や止水部材が損傷する可能性がある。また、止水部材の第一の部分を、扉と扉枠の戸当りとで挟み込むようにして設置する場合には、止水板を支えるための扉の存在が不可欠であり、扉が存在しない開口部を塞いで水の通過を防止することができない。
さらに、特許文献1に開示された止水装置では、止水板の板面と扉枠の戸当りとの間に水密維持手段(シール)が設けられた構成であり、また、特許文献2に開示された止水装置では、第一の部分と各戸当りとの間に水密維持手段(パッキン(シール材))が設けられた構成であるため、これら特許文献1,2に開示された止水装置においては、扉枠の戸当りの外側には、本来存在することがない水密維持手段及び板材の2つの部材が存在することになるため、扉を本来の閉状態にできなくなって、扉の開閉動作や施錠動作等の扉本来の機能に支障を来してしまう虞がある。
即ち、特許文献1,2に開示された止水装置によれば、扉が存在しない開口部を塞いで水の通過を防止することができなかったり、扉本来の機能に支障を来たしてしまう虞があるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解消すべく、扉が存在しない開口部であっても当該開口部を塞いで水の通過を防止でき、扉が開閉可能に取付けられた扉枠の内側開口(開口部)を塞ぐように設置される際には、扉枠を損傷させ難く、かつ、扉本来の機能を損なわせ難いようにできる止水装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る止水装置は、左面と右面と下面とを有した開口部を塞いで当該開口部を介した水の通過を防止するための止水装置であって、止水壁と、前記止水壁の左端面と前記開口部の左面との間の水密を維持するために、前記止水壁の左端面及び前記開口部の左面のうちの少なくとも一方に設けられた左側の水密維持手段と、前記止水壁の右端面と前記開口部の右面との間の水密を維持するために、前記止水壁の右端面及び前記開口部の右面のうちの少なくとも一方に設けられた右側の水密維持手段と、前記止水壁の下端面と前記開口部の下面との間の水密を維持するために、前記止水壁の下端面及び前記開口部の下面のうちの少なくとも一方に設けられた下側の水密維持手段と、を備えたことを特徴とするので、扉が存在しない開口部であっても当該開口部を塞いで水の通過を防止でき、扉が開閉可能に取付けられた扉枠の内側開口を塞ぐように設置される際には、扉枠を損傷させ難く、かつ、扉本来の機能を損なわせ難いようにできる止水装置を提供できるようになった。
また、前記開口部が建築構造物に設けられた扉枠の内側開口であって、前記止水壁の左端面より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の左側の戸当り面に係止する左側係止部と、前記止水壁の右端面より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の右側の戸当り面に係止する右側係止部と、前記止水壁の下端面より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の下側の戸当り面に係止する下側係止部とを備え、前記左側係止部が前記左側の戸当り面に係止するとともに、前記止水壁の左端面に設けられた前記左側の水密維持手段が前記扉枠の内側開口の左面との間の水密を維持し、前記右側係止部が前記右側の戸当り面に係止するとともに、前記止水壁の右端面に設けられた前記右側の水密維持手段が前記扉枠の内側開口の右面との間の水密を維持し、前記下側係止部が前記下側の戸当り面に係止するとともに、前記止水壁の下端面に設けられた前記下側の水密維持手段が前記扉枠の内側開口の下面との間の水密を維持することを特徴とするので、止水壁の壁板部が例えば屋外側からの水圧を受けた場合、左側係止部,右側係止部,下側係止部が扉枠の戸当り面に係止するため、止水装置の例えば屋内側への倒れ込みを抑制できる。
また、前記水密維持手段は、被取付面である前記止水壁の左端面、前記止水壁の右端面、前記止水壁の下端面に取付けられたシール材により構成され、前記シール材は、前記止水壁を前記開口部に挿入する際の先端から末端に向けて、シール材が取付けられた前記被取付面からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように形成されたことを特徴とするので、開口部に対する着脱動作が容易になるとともに、止水装置が開口部に取付けられた状態での水密維持機能及び支持機能が向上する。即ち、水密維持機能及び支持機能に優れた止水装置を提供できる。
また、前記水密維持手段は、板ばねとシール材とが組み合わされて構成され、前記板ばねは、前記止水壁の被取付面である前記止水壁の左端面、前記止水壁の右端面、前記止水壁の下端面に取付けられた取付部と、当該取付部より延長するように設けられた弾発部とを備え、前記シール材は、前記弾発部に取付けられており、前記止水壁を前記開口部に挿入した場合に、前記板ばねの弾発部が前記開口部の面からの力を受けて変形した後の弾発力により前記シール材が前記開口部の面に押し付けられて当該開口部の面と前記シール材との間の水密が維持されるように構成されたことを特徴とするので、止水装置を開口部に挿入するという簡単な取付動作によって、水密維持機能及び支持機能に優れた止水装置が得られる。
また、前記水密維持手段は、シール材と水膨潤性能を有したシール材とを用いて構成され、前記シール材は、前記止水壁を前記開口部に挿入した場合に、前記開口部の面との間に隙間が生じる状態に、前記止水壁の被取付面である前記止水壁の左端面、前記止水壁の右端面、前記止水壁の下端面に取付けられており、前記開口部に挿入された前記止水壁の被取付面に取付けられている前記シール材と前記開口部の面との間の隙間に、前記水膨潤性能を有したシール材が充填されたことにより、前記シール材と前記開口部の面との間の水密が維持されるように構成されたことを特徴とするので、止水装置を開口部に挿入した後に、止水壁の被取付面に取付られているシール材と開口部の面との間に生じている隙間に、水膨潤性能を有したシール材を充填するという簡単な取付動作によって、水密維持機能及び支持機能に優れた止水装置が得られる。
また、前記水密維持手段は、シール材と水膨潤性能を有したシール材とを用いて構成され、前記シール材は、前記止水壁が前記開口部に挿入された場合に、前記止水壁の被取付面である前記止水壁の左端面、前記止水壁の右端面、前記止水壁の下端面と前記開口部の面との間において、前記挿入の方向とは反対側である前側に偏って位置されるように、前記止水壁の被取付面に取付けられており、前記開口部に挿入された前記止水壁の前記被取付面と前記開口部の面との間の隙間に、後側から前記水膨潤性能を有したシール材が充填されたことにより、前記止水壁の前記被取付面と前記開口部の面との間の水密が維持されるように構成されたことを特徴とするので、止水壁が開口部に挿入されて止水壁の被取付面と開口部の面との間の前側にシール材が配置された後、開口部に挿入された止水壁の被取付面と開口部の面との間の隙間に、後側から前記水膨潤性能を有したシール材を充填するという簡単な取付動作によって、水密維持機能び支持機能に優れた止水装置が得られる。
また、前記水密維持手段は、前記止水壁の被取付面に取付けられた取付面を有した取付部と、当該取付部より延長するとともに折り返されて前記開口部の面と対向する外面を有した折返部とを有して、互いに対向する前記取付部の対向面及び前記折返部の対向面とこれら対向面より延長する前記取付部と前記折返部との境界部分の面とで囲まれた溝を備えた構成とし、さらに、前記溝内に嵌入されて前記折返部の外面を前記開口部の面に押し付ける押圧手段を備えたことを特徴とするので、開口部に対する着脱動作が容易になるとともに、止水装置が開口部に取付けられた状態での水密維持機能及び支持機能が向上する。
また、前記止水壁の上部における左右のうちの少なくとも一方側に、前記止水壁を前記開口部の左右の面に支持させるための支持機構を備え、前記支持機構は、前記開口部の左右の面に対して直交する方向に移動可能に設けられた押圧体と、前記押圧体が前記開口部の左面又は右面を押圧した際の反力を止水壁に伝達する反力伝達手段とを備えたことを特徴とするので、止水装置が開口部に取付けられた状態での支持機能を向上させることができる。
また、前記止水壁の上部に連結された支持機構を備え、前記支持機構は、前記止水壁を前記開口部の左右の面に支持させるための水平方向支持機構と、前記止水壁を前記開口部の下面に支持させるための垂直方向支持機構とを備え、前記水平方向支持機構は、前記開口部の左右の面に対して直交する方向に長さを伸縮可能な伸縮自在部材と、反力伝達手段とを備え、前記伸縮自在部材は、一端が前記開口部の左面又は右面のいずれか一方に接触するように設けられた固定長部材と、前記固定長部材の他端側に設けられて前記開口部の左右の面に対して直交する方向に移動可能な押圧体を有した押圧機構とを備え、前記反力伝達手段は、前記押圧機構の押圧体が前記開口部の左面又は右面のいずれか他方を押圧した際の反力を止水壁に伝達するように機能し、前記垂直方向支持機構は、前記開口部の左右の面に突っ張るように取付けられた前記伸縮自在部材と、当該伸縮自在部材の前記固定長部材に対して垂直方向に移動可能に設けられた押圧体とを備え、前記伸縮自在部材が前記開口部の左右の面に突っ張るように作動した場合に、前記止水壁の左側の水密維持手段及び右側の水密維持手段のうち前記開口部の面に押し付けられない水密維持手段は、止水壁の面に取付けられた取付面を有した取付部と、当該取付部より延長して折り返されて前記開口部の面と対向する外面を有した折返部とを有して、互いに対向する前記取付部の対向面及び前記折返部の対向面とこれら対向面より延長する前記取付部と前記折返部との境界部分の面とで囲まれた溝を備えた構成とし、さらに、前記溝内に嵌入されて前記折返部の外面を前記開口部の面に押し付ける押圧手段を備えたことを特徴とするので、開口部に対する着脱動作が容易になるとともに、止水装置が開口部に取付けられた状態での水密維持機能及び支持機能が向上する。特に、垂直方向支持機構を備えたので、止水装置に対する開口部の下面の支持機能を向上させることができ、止水装置をより強固に開口部に固定できるようになる。
また、前記止水壁は、左右に分割された左側止水壁と右側止水壁とを備えて構成され、さらに、前記左側止水壁の右端側部分と前記右側止水壁の左端側部分とを結合する結合手段を備え、前記結合手段は、前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分の互いに対向する面にそれぞれ左右方向の力を付与して、前記左側止水壁の左側の水密維持手段、及び、前記右側止水壁の右側の水密維持手段を、対向する前記開口部の面に押し付けることを特徴とする。
また、前記止水壁は、左右に分割された左側止水壁と右側止水壁とを備えて構成され、さらに、前記左側止水壁の右端側部分と前記右側止水壁の左端側部分とを結合する結合手段を備え、前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分のうちの一方が、前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分のうちの他方の前後方向の面を前後から挟み込む前後の壁板を備え、前記結合手段は、前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分に左右方向の力を付与して、右側止水壁の右側水密維持手段、及び、左側止水壁の左側水密維持手段を、対向する前記開口部の面に押し付ける左右の結合手段と、前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分のうちの一方に設けられた前後の壁板のうちの一方の壁板と、当該一方の壁板と対向する前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分のうちの他方に設けられた前後方向の面のうちの一方の面とに、前後方向の力を付与して、前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分を前後方向で結合する前後の結合手段とを備えたことを特徴とする。
このように、左右に分割された左側止水壁と右側止水壁とを備えた構成とすれば、各止水壁をコンパクトにできて、かつ、左右の開口幅が比較的大きい開口にも適用可能な止水装置を提供できるようになる。また、開口部に対する着脱動作が容易になるとともに、止水装置が開口部に取付けられた状態での水密維持機能及び支持機能が向上する。
また、前記結合手段は、前記左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分における互いに対向する面のうちのいずれか一方の面に固定された固定楔と、当該固定楔と前記互いに対向する面のうちの他方の面との間に嵌入された嵌入楔とで構成されたことを特徴とするので、嵌入楔を嵌入するという簡単な操作で、止水装置を開口部に固定状態に取付けることができるとともに、嵌入楔を嵌入するという簡単な操作で、止水装置を開口部に固定状態に取付けることができて、かつ、止水装置が開口部に取付けられた状態での水密維持機能及び支持機能が向上する。また、嵌入楔を取り外すだけで、止水装置を開口部から簡単に取り外すことができるようになる。つまり、結合手段が固定楔と嵌入楔とで構成された場合、開口部に対する着脱動作がより容易になるとともに、止水装置が開口部に取付けられた状態での水密維持機能及び支持機能が向上する。
また、前記開口部が建築構造物に設けられた扉枠の内側開口であって、前記止水壁は、壁板部と、前記壁板部における扉側に位置される壁面の左端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の左側の戸当り面に係止する左側係止部と、前記壁面の右端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の右側の戸当り面に係止する右側係止部と、前記壁面の下端より延長するように設けられて前記扉枠の内側開口の下側の戸当り面に係止する下側係止部とを備え、前記壁面の左端から左側係止部までの長さ、前記壁面の右端から右側係止部までの長さ、前記壁面の下端から下側係止部までの長さが同じ長さに形成され、前記壁面の各端面から各係止部までの長さが、閉じられた状態の扉の屋内側の面より突出する突出物の突出長さよりも長いことを特徴とするので、閉じられた状態の扉の屋内側の面より突出する突出物と止水板の壁板部の壁面との干渉を防止できる。
また、前記開口部の左面と対向する前記止水壁の左端面における少なくとも左側係止部近傍位置、及び、前記開口部の右面と対向する前記止水壁の右端面における少なくとも右側係止部近傍位置、及び、前記開口部の下面と対向する前記止水壁の下端面における少なくとも下側係止部近傍位置に、前記水密維持手段が設けられたことを特徴とするので、止水壁の左端面,右端面,下端面の前後方向の長さが、扉枠の左面,右面,下面の前後方向の長さよりも長くなる場合においても、水密維持手段により、止水壁の左端面,右端面,下端面と扉枠の左面,右面,下面との水密性能を維持できる止水装置を提供できる。
また、前記扉枠において、扉の開閉側の枠周囲に形成された周溝には、前記扉と前記扉枠とを直接接触させないようにし、かつ、前記扉の内側面の周囲と前記扉枠との密着性を確保するためのクッション材が設けられており、前記各係止部近傍位置に設けられた前記水密維持手段と前記各係止部との間には、前記扉を閉じた際に変形した前記クッション材の一部と前記水密維持手段との干渉を防止するための干渉除け隙間が設けられたことを特徴するので、扉を閉じた際の扉枠のクッション材と止水装置の水密維持手段との干渉を防止でき、水密性能が損なわれてしまうような事態を回避できるようになる。
また、前記止水壁の壁面には、左板部を扉枠の左面に向けて押圧するための押圧機構と、右板部を扉枠の右面に向けて押圧するための押圧機構とを備えたことを特徴とするので、扉枠,止水装置の公差によって、左の水密維持手段と扉枠の左面との間、又は、右の水密維持手段と扉枠の右面との間に隙間が発生してしまうような場合であっても、押圧機構により、左板部を扉枠の左面に向けて押圧したり、右板部を扉枠の右面に向けて押圧することによって、左の水密維持手段と扉枠の左面との密着性、又は、右の水密維持手段と扉枠の右面との密着性を向上させることができるようになる。
また、前記止水壁の壁面の下端から下側係止部まで下板部の上面には、止水装置の設置作業を支援するための設置作業支援部を備えたことを特徴とするので、止水装置の内側開口への正確な設置作業を容易に行えるようになる。
また、前記止水壁は、壁板部を備え、当該壁板部は、複数の形材を組み合わせて形成された中空構造の壁板部により構成されたことを特徴するので、止水壁の壁板部の強度が向上するとともに、止水壁の壁板部の軽量化が図れるため、取扱性の良好な止水装置を提供できるようになる。
また、前記止水壁の上端部には、閉じた状態の扉の内面よりも屋内側に突出する突出物との干渉を回避するための機構を有した取っ手を備えたことを特徴とするので、止水装置が扉枠の内側開口を塞ぐように設置され、かつ、扉を閉じた状態において、扉の内面よりも屋内側に突出する突出物と取っ手との干渉を回避できる止水装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】止水装置が扉枠の内側開口(開口部)を塞ぐように設置された状態を扉枠の前側(屋外側)から見た正面図(実施形態1)。
図2】止水装置と扉枠の内側開口との関係を示す斜視図(実施形態1)。
図3】(a)は止水装置が扉枠の内側開口に設置された状態を示す横断面図、(b)は止水装置が扉枠の内側開口に設置された状態を示す縦断面図(実施形態1)。
図4】(a)は止水装置の下側の水密維持手段と扉枠との関係を示す説明図、(b)は止水装置の右側の水密維持手段と扉枠との関係を示す説明図、(c)は止水装置の下側の水密維持手段と扉枠との関係を示す説明図、(d)は止水装置の右側の水密維持手段と扉枠との関係を示す説明図(実施形態3)。
図5】止水装置と押圧手段との関係を示す斜視図(実施形態4)。
図6】支持機構を備えた止水装置を示す斜視図(実施形態5)。
図7】(a)は扉枠に取付けられた止水装置を扉枠の後側(屋内側)から見た正面図、(b)は水密維持手段と押圧手段との関係を示す断面図(実施形態6)。
図8】(a)は右側止水壁と左側止水壁と結合手段との関係を示す分解斜視図、(b)は右側止水壁と左側止水壁と結合手段との関係を示す横断面図(実施形態7)。
図9】(a)は右側止水壁と左側止水壁と結合手段との関係を示す分解斜視図、(b)は右側止水壁と左側止水壁と結合手段との関係を示す横断面図(実施形態8)。
図10】止水装置の右側の水密維持手段と扉枠との関係を示す動作説明図であり、(a)は水密処理前の状態、(b)は水密処理後の状態を示す図(実施形態9)。
図11】止水装置の右側の水密維持手段と扉枠との関係を示す動作説明図であり、(a)は水密処理前の状態、(b)は水密処理後の状態を示す図(実施形態10)。
図12】止水装置の右側の水密維持手段と扉枠との関係を示す動作説明図であり、(a)は水密処理前の状態、(b)は水密処理後の状態を示す図(実施形態11)。
図13】止水装置の右側の水密維持手段と扉枠との関係を示す動作説明図であり、(a)は水密処理前の状態、(b)は水密処理後の状態を示す図(実施形態12)。
図14】(a)は止水装置の下側の水密維持手段と扉枠との関係を示す説明図、(b)は止水装置の左側の水密維持手段と扉枠との関係を示す説明図(実施形態14)。
図15】(a)は止水装置の下側の水密維持手段と扉枠との関係を示す説明図、(b)は止水装置の左側の水密維持手段と扉枠との関係を示す説明図(実施形態15)。
図16】(a)は止水装置を構成する止水壁の平面図、(b)は止水壁の正面図、(c)は(b)における止水壁のA-A断面図(実施形態16乃至実施形態22)。
図17】(a)は止水装置を構成する止水壁を前側から見た斜視図、(b)は止水装置を構成する止水壁を前側から見た斜視図(実施形態16乃至実施形態22)。
図18】扉枠の内側開口に設置された止水装置を屋内側(後側)から見た正面図(実施形態16乃至実施形態24)。
図19】閉じた状態の扉の内面よりも屋内側に突出する突出物との干渉を防ぐ機構を有した取っ手(ハンドル)の種類を例示した図(実施形態18)。
図20】可倒式の取っ手の一例を示す斜視図(実施形態18)。
図21】上下移動式の取っ手の一例を示す斜視図(実施形態18)。
図22】回転式の取っ手の一例を示す斜視図(実施形態18)。
図23図18のB-B断面拡大図(実施形態16乃至実施形態22)。
図24図18のD-D断面拡大図(実施形態16乃至実施形態22)。
図25】押圧機構を備えた止水壁を示す斜視図(実施形態23)。
図26】押圧機構を備えた止水装置を示す横断面図(実施形態23)。
図27】押圧機構の別例を示す正面図(実施形態23)。
図28】設置作業支援部を備えた止水壁を示す斜視図(実施形態24)。
図29】設置作業支援部を備えた止水装置を示し、(a)は縦断面図、(b)は横断面図、(c)は設置作業支援部の設置例の別例を示す横断面図(実施形態24)。
図30】設置作業支援部を備えた止水装置の効果を説明する説明図(実施形態24)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態1
図1乃至図3に基づいて、実施形態1に係る止水装置1について説明する。
尚、本明細書においては、上、下、左、右、前、後は、図1乃至図9の各図に示した方向と定義して説明する。
また、開口部の前側は「屋内側及び屋外側のうちのいずれか」、開口部の後側は「屋内側及び屋外側のうちのいずれか」であるが、各実施形態においては、開口部の前側が屋外側、開口部の後側が屋内側である場合を例にして説明する。
また、「建築構造物」とは、一戸建て、マンション、ビル、倉庫、工場などの所謂建物や、車庫、カーポート、門、塀などの外構、トンネルや地下街などの建造物等をいう。
即ち、各実施形態では、建築構造物に設けられた扉枠の内側開口を止水装置で塞ぐ場合を例示するが、本発明の止水装置は、扉及び扉枠が存在しない開口部、例えばシャッター装置の左右のガイドレール間の開口部、門や塀等の出入口を構成する開口部、その他の開口部を塞いで水の通過を防止することも可能な止水装置である。つまり、本発明の止水装置により塞がれて水の通過を防止できる開口部は、左面と右面と下面とを有した開口部であればよい。
【0009】
実施形態1に係る止水装置1は、左面と右面と下面とを有した開口部を塞いで当該開口部を介した水の通過を防止するための止水装置である。
例えば図1乃至図3に示すように、開口部が建築構造物に設けられた扉枠10の内側開口11である場合においては、止水装置1は、止水壁2と、左側の水密維持手段3と、右側の水密維持手段4と、水密維持手段5とを備えて構成される。
左側の水密維持手段3は、止水壁2の左端面22に設けられ、右側の水密維持手段4は、止水壁2の右端面23に設けられ、下側の水密維持手段5は、止水壁2の下端面24に設けられる。
【0010】
扉枠10には扉9がヒンジ91を介して開閉可能に取付けられている。ここでは、扉枠10の右側部(右枠)にヒンジ91を介して取付けられて、当該ヒンジ91を回転中心として前側に回動可能に構成された扉9を例示した(図1図3参照)。
扉枠10の左側の戸当り面16は、扉枠10の左面12の前端縁より左方向に延長する面により形成される。
扉枠10の右側の戸当り面17は、扉枠10の右面13の前端縁より右方向に延長する面により形成される。
扉枠10の下側の戸当り面18は、扉枠10の下面14の前端縁より下方向に延長する面により形成される。
扉枠10の上側の戸当り面19は、扉枠10の上面15の前端縁より上方向に延長する面により形成される(図1図3(b)参照)。
扉枠10の内側開口11を形成する左面12,右面13,下面14,上面15は、前後方向と平行又はほぼ平行な面により形成される。
そして、扉枠10の左側の戸当り面16は、左面12と直交する面又はほぼ直交する面により形成され、扉枠10の右側の戸当り面17は、右面13と直交する面又はほぼ直交する面により形成され、扉枠10の下側の戸当り面18は、下面14と直交する面又はほぼ直交する面により形成され、扉枠10の上側の戸当り面19は、上面15と直交する面又はほぼ直交する面により形成される。
【0011】
止水壁2は、図2に示すように、例えば、壁板部2aと、左板部2bと、右板部2cと、下板部2dと、上板部2eと、左側係止部6と、右側係止部7と、下側係止部8とを備えた前側開口後側閉塞の箱状に形成された構成とした。
壁板部2aは、前後方向と直交する板面又はほぼ直交する板面を有した四角形状の平板により形成され、当該壁板部2aの壁面21a,21bとなる板面の左右幅寸法は、扉枠10の内側開口11の左面12と右面13との間の寸法よりも若干小さい寸法に形成され、当該板面(壁面21a,21b)の上下幅寸法は、扉枠10の内側開口11の下面14と上面15との間の寸法よりも小さい寸法、例えば、下面14と上面15との間の寸法の1/4~1/2程度に形成される。
左板部2bは、壁板部2aの左端縁より前側に延長するように設けられた平板により形成される。
右板部2cは、壁板部2aの右端縁より前側に延長するように設けられた平板により形成される。
下板部2dは、壁板部2aの下端縁より前側に延長するように設けられた平板により形成される。
上板部2eは、壁板部2aの上端縁より前側に延長するように設けられた平板により形成される。
即ち、止水壁2は、壁板部2aと左板部2bと右板部2cと下板部2dと上板部2eとで囲まれた前側開口の四角い箱状空間Bを備えた構成である。
【0012】
左側係止部6は、左端面22より延長するように設けられる。つまり、左側係止部6は、左板部2bの前端縁より左側に延長するように設けられた平板により形成されて扉枠10の左側の戸当り面16に係止する部分である。
右側係止部7は、右端面23より延長するように設けられる。つまり、右側係止部7は、右板部2cの前端縁より右側に延長するように設けられた平板により形成されて扉枠10の右側の戸当り面17に係止する部分である。
下側係止部8は、下端面24より延長するように設けられる。つまり、下側係止部8は、下板部2dの前端縁より下側に延長するように設けられた平板により形成されて扉枠10の下側の戸当り面18に係止する部分である。
【0013】
尚、止水壁2は、例えば、壁板部2aの壁面21a,21bと左板部2b、右板部2c、下板部2d、上板部2eの板面とが直交又はほぼ直交するとともに、左板部2bの板面と左側係止部6の板面とが直交又はほぼ直交し、右板部2cの板面と右側係止部7の板面とが直交又はほぼ直交し、下板部2dの板面と下側係止部8の板面とが直交又はほぼ直交するように形成される。
【0014】
止水壁2は、例えば、鋼板やアルミニウム板等の金属板、合成樹脂製板等により形成される。
止水壁2の製造方法は、特に限定されないが、例えば、壁板部2a、前端側に折曲げられた左側係止部6を有した左板部2b、前端側に折曲げられた右側係止部7を有した右板部2c、前端側に折曲げられた下側係止部8を有した下板部2d、上板部2eを、別々に用意して、これらを溶接やその他の接合手段での接合処理を行って製造したり、あるいは、当該接合処理後の接合処理部分にシーリング剤等の充填材を充填する充填処理S(図6参照)を行って製造する。
また、これら各部を展開した板を形成した後に、各部の境界を折り曲げて製造するようにしてもよい。この場合、少なくとも、下板部2dと左板部2bとの境界部、下板部2dと右板部2cとの境界部は、溶接やその他の接合手段での接合処理を行ったり、あるいは、シーリング剤等の充填材を充填する充填処理S(図6参照)を行ったり、あるいは、接合処理後の接合処理部分に充填処理Sを行う。
【0015】
左側の水密維持手段3は、止水壁2の左端面22に設けられて扉枠10の内側開口11の左面12と接触して当該左面12との間の水密を維持する部材である。
右側の水密維持手段4は、止水壁2の右端面23に設けられて扉枠10の内側開口11の右面13と接触して当該右面13との間の水密を維持する部材である。
下側の水密維持手段5は、止水壁2の下端面24に設けられて扉枠10の内側開口11の下面14と接触して当該下面14との間の水密を維持する部材である。
【0016】
左側の水密維持手段3が取付けられる被取付面となる止水壁2の左端面22は、左板部2bの外側板面により形成され、例えば当該左端面22の大きさより若干小さい大きさの取付面となる板面を有した平板状の左側の水密維持手段3の当該取付面が、被取付面となる止水壁2の左端面22に接着剤などで取付けられている。
右側の水密維持手段4が取付けられる被取付面となる止水壁2の右端面23は、右板部2cの外側板面により形成され、例えば当該右端面23の大きさより若干小さい大きさの取付面となる板面を有した平板状の右側の水密維持手段4の当該取付面が、被取付面となる止水壁2の右端面23に接着剤などで取付けられている。
下側の水密維持手段5が取付けられる被取付面となる止水壁2の下端面24は、下板部2dの外側板面により形成され、例えば当該下端面24の大きさより若干小さい大きさの取付面となる板面を有した平板状の下側の水密維持手段5の当該取付面が、被取付面となる止水壁2の下端面24に接着剤などで取付けられている。
【0017】
尚、左側の水密維持手段3の下端面と右側の水密維持手段4の下端面とが扉枠10の内側開口11の下面14と接触して当該下面14との間の水密性能を維持するように構成されるとともに、下側の水密維持手段5の左の端面と左側の水密維持手段3とが密着するように設けられて、かつ、下側の水密維持手段5の右の端面と右側の水密維持手段4とが密着するように設けられている。
あるいは、下側の水密維持手段5の下端面が扉枠10の内側開口11の下面14と接触して当該下面14との間の水密性能を維持するように構成されるとともに、左側の水密維持手段3の下端面と下側の水密維持手段5とが密着するように設けられて、かつ、右側の水密維持手段4の下端面と下側の水密維持手段5とが密着するように設けられている。
【0018】
水密維持手段3,4,5としては、例えば、EPDMゴムスポンジ(エチレンプロピレンゴム)等のゴム製のシール材や水膨潤性能を有したシール材等を用いればよいが、その他の材料により形成されたシール材を用いてもかまわない。
【0019】
実施形態1に係る止水装置1は、左側係止部6が左側の戸当り面16に係止するとともに、止水壁2の左端面22に設けられた左側の水密維持手段3が扉枠10の左面12との間の水密を維持し、また、右側係止部7が右側の戸当り面17に係止するとともに、止水壁2の右端面23に設けられた右側の水密維持手段4が扉枠10の右面13との間の水密を維持するとともに、さらに、下側係止部8が下側の戸当り面18に係止するとともに、止水壁2の下端面24に設けられた下側の水密維持手段5が扉枠10の下面14との間の水密を維持するように設置される。
尚、実施形態1で例示した扉枠10においては、扉枠10の内側開口11の左面12,右面13,下面14,上面15は、戸当り面16,17,18,19よりも後側(屋内側)の面である。
【0020】
実施形態1に係る止水装置1によれば、止水装置1の左右幅、即ち、止水壁2の左端面22に設けられた左側の水密維持手段3の左外面(外側板面)と止水壁2の右端面23に設けられた右側の水密維持手段4の右外面(外側板面)との間の間隔の寸法が、扉枠10の開口の左右幅、即ち、扉枠10の内側開口11の左面12と右面13との間の間隔の寸法よりも、僅かに大きくなるように形成して、止水壁2の左端面22に設けられた左側の水密維持手段3の左外面と扉枠10の左面12とを密着させるとともに、止水壁2の右端面23に設けられた右側の水密維持手段4の右外面と扉枠10の右面13とを密着させ、かつ、止水壁2の下端面24に設けられた下側の水密維持手段5の下外面と扉枠10の下面14とを密着させることにより、止水装置1が扉枠10の内側開口11の左面12,右面13,下面14,上面15に固定された状態に取付けられる。
従って、扉枠10に固定状態に取付けられた止水装置1の前側(屋外側)から水Wが押し寄せた場合、水密維持手段3,4,5により、止水装置1の後側(屋内側)への水Wの侵入を防止できるようになる。
【0021】
また、止水壁2の壁板部2aが止水装置1の前側(屋外側)からの水圧を受けた場合、左側係止部6,右側係止部7,下側係止部8が扉枠10の戸当り面16,17,18に係止するため、止水装置1の後側(屋内側)への倒れ込みを抑制できるようになる。
尚、図3(b)に示すように、止水装置1が扉枠10の内側開口11に固定状態に取付けられた後、扉9が閉じられた状態において、扉9の下端面9aと当該下端面9aと対向する扉枠10の下面14の前側に位置する水切り面14Fとの間の隙間Lを介して水Wが止水壁2の箱状空間B内に侵入可能である。実施形態1に係る止水装置1においては、浸水時などにおいて、水Wの流れは、扉9の前側(屋外側)の水頭高さと止水壁2の箱状空間B内の水頭高さが同じになった時点で停止する。この場合、扉9は水中に浸かっている場合と同じ状態になり、容易に扉9を開くことができるので、扉9を開いて屋外に移動することが可能になる。
【0022】
また、水密維持手段3,4,5として、水膨潤性能を有したシール材を用いた場合には、止水装置1を扉枠10に取付けた後、これら水密維持手段3,4,5を構成する水膨潤性能を有したシール材に水分を付与することで、当該シール材が膨張するので、扉枠10の内側開口11の左面12,右面13,下面14との間の水密性能を向上できる。
【0023】
実施形態1に係る止水装置1によれば、扉9が開閉可能に取付けられた扉枠10の内側開口(開口部)11を塞ぐように取付けられることによって、水密維持手段3,4,5が止水装置1の後側(屋内側)への水の侵入を防止する。
また、止水装置1が扉枠10の内側開口11に取付けられる場合、弾力性を有したシール材により構成された水密維持手段3,4,5が扉枠10の内側開口11の左面12,右面13,下面14と接触するので、扉枠10を損傷させ難い。
また、左側係止部6,右側係止部7,下側係止部8と扉枠10の戸当り面16,17,18とが直接接触し、左側係止部6、左側係止部6,右側係止部7,下側係止部8と扉枠10の戸当り面16,17,18との間に部材が存在しないため、扉9を本来の閉状態にできなくなってしまって、扉9の開閉動作や施錠動作等の扉本来の機能に支障を来してしまう虞が少なくなり、扉9の本来の機能を損なわせ難い止水装置1を提供できる。
また、扉9が存在しない開口部であっても、止水装置1の水密維持手段3,4,5と当該開口部の左面12,右面13,下面14との間の水密を維持させるように取付けることにより、当該開口部を塞いで水の通過を防止できる止水装置1を提供できる。
【0024】
実施形態2
実施形態1では、別体で構成された左側の水密維持手段3と右側の水密維持手段4と下側の水密維持手段5とが止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24に取付けられた構成の止水装置1を例示したが、左側の水密維持手段3と右側の水密維持手段4と下側の水密維持手段5とが一体で形成された水密維持手段を、止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24に取付けた構成の止水装置1であってもよい。
尚、後述する各実施形態においても同様に、左側の水密維持手段3、右側の水密維持手段4、下側の水密維持手段5は、別体で構成されたものを用いてもよいし、一体で構成されたものを用いてもよい。
【0025】
実施形態3
実施形態1に係る止水装置1では、被取付面である止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24に、平板状のシール材により構成された水密維持手段3,4,5を取付けた構成を例示したが、実施形態3に係る止水装置1では、図4に示すように、水密維持手段3,4,5は、被取付面である止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24に取付けられたシール材により構成され、当該水密維持手段3,4,5を構成するシール材は、止水壁2を前側(屋外側)から内側開口(開口部)11に挿入する際の先端側から末端側に向けて、シール材が取付けられた止水壁2の被取付面からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように形成された構成とした。
尚、図4に示すように、実施形態3で述べる先端側は開口部の後側(屋内側)となり、末端側は開口部の前側(屋外側)となる。
【0026】
例えば、水密維持手段3,4,5を構成するシール材は、止水壁2を前側(屋外側)から内側開口(開口部)11に挿入する際の先端側から末端側に向けて、水密維持手段3,4,5を構成するシール材が取付けられた被取付面となる左端面22,右端面23,下端面24からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように、扉枠10の内側開口11の左面12,右面13,下面14と接触する面が傾斜面に形成された構成とした。
図4(a)は、上述した先端側から末端側に向けて、被取付面である止水壁2の下端面24からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように、扉枠10の内側開口11の下面14と接触する面が傾斜面5aに形成された水密維持手段5を示したものである。
図4(b)は、上述した先端側から末端側に向けて、被取付面である止水壁2の左端面22からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように、扉枠10の内側開口11の左面12と接触する面が傾斜面3aに形成された左側の水密維持手段3を示したものである。
図示しないが、同様に、右側の水密維持手段4は、上述した先端側から末端側に向けて、被取付面である止水壁2の右端面23からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように、扉枠10の内側開口11の右面13と接触する面が傾斜面に形成される。
【0027】
また、図4(c),(d)に示すように、水密維持手段3,4,5を構成するシール材は、止水壁2を前側(屋外側)から内側開口(開口部)11に挿入する際の先端側から末端側に向けて、水密維持手段3,4,5を構成するシール材が取付けられた被取付面となる左端面22,右端面23,下端面24からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように、被取付面に取付けられる平面状の取付面と平行な対向面となる平面から斜め後方側(末端側)に突出する断面鎌形のような突片を前後方向(先末方向)に沿って間隔を隔てて複数個設け、後側(末端側)に設けられた突片ほど突出量及び大きさが大きいように形成された構成とした。
図4(c)は、上述した先端側から末端側に向けて、水密維持手段5が取付けられた被取付面となる下端面24からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように、当該下端面24に取付けられる平面状の取付面5bと平行な対向面5cとなる平面から斜め後方側(末端側)に突出する断面鎌形のような突片5dを前後方向(先末方向)に沿って間隔を隔てて複数個設け、後側(末端側)に設けられた突片5dほど突出量及び大きさが大きいように形成された構成の左側の水密維持手段5を示したものである。
図4(d)は、上述した先端側から末端側に向けて、水密維持手段3が取付けられた被取付面となる左端面22からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように、当該左端面22に取付けられる平面状の取付面3bと平行な対向面3cとなる平面から斜め後方側(末端側)に突出する断面鎌形のような突片3dを前後方向(先末方向)に沿って間隔を隔てて複数個設け、後側(末端側)に設けられた突片3dほど突出量及び大きさが大きいように形成された構成の下側の水密維持手段3を示したものである。
【0028】
被取付面からの厚さ寸法が上述した先端側から末端側に向けて徐々に厚くなるように形成された構成の水密維持手段3,4,5を備えた実施形態3に係る止水装置1によれば、扉枠10の内側開口11に対する着脱動作が容易になるとともに、止水装置1が扉枠10に取付けられた状態での水密維持機能及び支持機能が向上する。即ち、水密維持機能及び支持機能に優れた止水装置1を提供できる。
【0029】
実施形態4
図5に示すように、実施形態3に係る止水装置1においては、水密維持手段3,4,5を構成するシール材は、止水壁2の被取付面(左端面22,右端面23,下端面24)に取付けられた取付面30aを有した取付部30Aと、当該取付部30Aより延長するとともに折り返されて扉枠10の内側開口11の面(左面12,右面13,下面14)と対向する外面30bを有した折返部30Bとを有して、互いに対向する取付部30Aの対向面30c及び折返部30Bの対向面30dとこれら対向面30c,30dより延長する取付部30Aと折返部30Bとの境界部分の面30eとで囲まれて形成された溝30を備えた構成とした。
そして、さらに、水密維持手段の溝30内に嵌入されて水密維持手段3,4,5の折返部30Bの外面30bを扉枠10の内側開口11の面に押し付ける押圧手段31を備えた構成とした。
【0030】
押圧手段31は、断面形状が水密維持手段3,4,5の溝30の断面形状よりも大きい形状に形成されて、取付部30Aの対向面30cと接触する基準面32と、折返部30Bの対向面30dと接触して当折返部30Bの外面30bを扉枠10の内側開口11の面に押し付ける押圧面33とを備えた構成のもの、例えば、溝30内に嵌入される楔のような嵌入部材であればよい。
【0031】
実施形態4に係る止水装置1によれば、水密維持手段3,4,5の外面と扉枠10の内側開口11の各面(左面12,右端面13,下端面14)と対向するように止水装置1を設置し、係止部6,7,8と戸当り面16,17,18とを接触させた状態で、押圧手段31を水密維持手段3,4,5の溝30内に嵌入することにより、水密維持手段3,4,5の折返部30Bの外面30bが扉枠10の内側開口11の各面に押し付けられて、止水装置1が扉枠10の内側開口11の各面に支持されるとともに、水密維持手段3,4,5と内側開口11の各面との間の水密が良好に維持された構成となる。
【0032】
図5では、左側の水密維持手段3と右側の水密維持手段4と下側の水密維持手段5とが一体で形成された水密維持手段を、止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24に取付け、かつ、押圧手段31として、溝30が一直線状に延長する部分用の直線状溝対応押圧手段31Aと溝30がL字状に延長する部分用の角部溝対応押圧手段31Bとを用いた例を示した。
このように、一体の水密維持手段を用いるとともに、押圧手段31として直線状溝対応押圧手段31Aと角部溝対応押圧手段31Bとを用いた構成の場合、角部溝対応押圧手段31Bを用いることによって、扉枠10の左面12と下面14との境界である内隅部分と水密維持手段との間の水密性能や、扉枠10の右面13と下面14との境界である内隅部分と水密維持手段との間の水密を良好に維持できるようになる。
【0033】
実施形態4においては、別体の、左側の水密維持手段3と、右側の水密維持手段4と、下側の水密維持手段5とを用いた構成としてもよい。この場合、押圧手段としては、直線状溝対応押圧手段31Aを用いればよく、角部溝対応押圧手段31Bを用いる必要がなくなる。
尚、押圧手段31は、図5に示した直線状溝対応押圧手段31Aのように、持手部34を備えることが好ましく、持手部34を備えた場合、持手部34を持って押圧手段31を水密維持手段3,4,5の溝30から取外すことができるようになり、取外作業を容易に行えるようになる。また、図5では、持手部34を備えない角部溝対応押圧手段31Bを図示したが、角部溝対応押圧手段31Bも持手部34を備えることが好ましい。
【0034】
実施形態4に係る止水装置1によれば、扉枠10の内側開口11に対する着脱動作が容易になるとともに、止水装置1が扉枠10に取付けられた状態での水密維持機能及び支持機能が向上する。即ち、水密維持機能及び支持機能に優れた止水装置1を提供できる。
【0035】
実施形態5
図6に示すように、実施形態5に係る止水装置1は、実施形態1乃至実施形態4の止水装置1における止水壁2の上部における左右の少なくとも一方側に、止水壁2を扉枠10の内側開口11の左右の面12,13に支持させるための支持機構40を備えた構成とした。
【0036】
例えば、図6に示すように、支持機構40は、扉枠の内側開口の左右の面12,13に対して直交する方向に移動可能に設けられた押圧体41と、扉枠10の内側開口11の左右の面12,13に対して直交する方向に押圧体41を移動させるための移送手段42と、押圧体41が扉枠10の内側開口11の左面12又は右面13を押圧した際の反力を止水壁2に伝達する反力伝達手段43とを備えた構成とした。
【0037】
移送手段42は、止水壁2の上板部2eの左端部より上方に延長するように設けられた支持片44に形成された雌ねじ孔45と、当該雌ねじ孔45に螺合されて左右方向に移動可能に構成されたねじ46とで構成され、当該雌ねじ孔45に螺合されたねじ46の先端となる左端に押圧体41が設けられるとともに、当該雌ねじ孔45に螺合されたねじ46の末端となる右端に操作ハンドル46aが設けられた構成とした。
押圧体41は、止水壁2の左側と同様に、左板部47aと左側係止部47bとを有した板部47と、左板部47aの外面に設けられた支持体48とを備えて構成される。
当該支持体48としては、上述したシール材よりも硬質の材料、例えば、硬質ゴムのように、比較的に剛性が大きく、かつ、面に傷を付けにくい材料により形成されたものとすることが好ましい。
反力伝達手段43は、上述したねじ46及び止水壁2より延長するように設けられて当該ねじ46が螺合された雌ねじ孔45を備えた支持片44により構成される。
【0038】
実施形態5に係る止水装置1によれば、操作ハンドル46aを操作して、押圧体41が扉枠10の内側開口11の左面12を押圧するとともに、押圧体41が扉枠10の内側開口11の左面12を押圧した際の反力により止水壁2の右側の水密維持手段4が扉枠10の内側開口11の右面13に押し付けられるか、あるいは、押圧体41が扉枠10の内側開口11の右面13を押圧するとともに、押圧体41が扉枠10の内側開口11の右面13を押圧した際の反力により止水壁2の左側の水密維持手段3が扉枠10の内側開口11の左面12に押し付けられることにより、止水壁2が扉枠10の内側開口11の左右の面12,13に支持されることになるので、止水壁2を支持する支持機能が向上する。即ち、止水装置1が扉枠10の内側開口11に取付けられた状態での支持機能が向上する。つまり、支持機能に優れた止水装置1を提供できる。
【0039】
実施形態5に係る止水装置1は、止水壁2の上部における左側及び右側にそれぞれ上述した支持機構40を備えた構成としてもよい。
この場合、止水壁2が左右の押圧体41,41を介して扉枠10の内側開口11の左右の面12,13に支持されることになる。
【0040】
実施形態6
実施形態5に係る止水装置1の場合、止水壁2を支持するための支持機能を高めるために、支持機構40の押圧体41で扉枠10の内側開口11の面を押圧し過ぎた場合、水密維持手段3,4と扉枠10の内側開口11の左右の面12,13との間の水密性能を維持できないようになる可能性がある。
そこで、実施形態6に係る止水装置1では、止水壁2を支持するための支持機能を向上できるとともに、水密性能維持機能も向上できる構成の止水装置1とした。
【0041】
即ち、実施形態6に係る止水装置1は、図7に示すように、止水壁2の上部に連結された支持機構50を備え、当該支持機構50は、止水壁2を扉枠10の内側開口11の左右の面12,13に支持させるための水平方向支持機構50Aと、止水壁を扉枠の内側開口の下面に支持させるための垂直方向支持機構50Bとを備えた構成とした。さらに、止水壁2が水平方向支持機構50Aにより扉枠10の内側開口11の左右の面12,13に支持された場合に、止水壁2の左側の水密維持手段3及び右側の水密維持手段4のうち扉枠10の内側開口11の面に押し付けられない水密維持手段、例えば、図7(a)の左側の水密維持手段3は、実施形態4(図5)で説明した構成と同様の構成とした。
つまり、止水壁2が水平方向支持機構50Aにより扉枠10の内側開口11の左右の面12,13に支持された場合に、止水壁2の左側の水密維持手段3及び右側の水密維持手段4のうち、扉枠10の内側開口11の面に押し付けられない水密維持手段は、例えば図5の水密維持手段3,4,5と同じように、止水壁2の被取付面(左端面22,右端面23,下端面24)に取付けられた取付面30aを有した取付部30Aと、当該取付部30Aより延長するとともに折り返されて扉枠10の内側開口11の面と対向する外面30bを有した折返部30Bとを有して、互いに対向する取付部30Aの対向面30c及び折返部30Bの対向面30dとこれら対向面30c,30dより延長する取付部30Aと折返部30Bとの境界部分の面30eとで囲まれて形成された溝30を備えた構成とした。
また、水密維持手段の溝30内に嵌入されて水密維持手段の折返部30Bの外面30bを扉枠10の内側開口11の面に押し付ける上述した直線状溝対応押圧手段31Aと同様な構成の押圧手段31C(図7(b)参照)を備えた構成とした。
【0042】
尚、止水壁2が水平方向支持機構50Aにより扉枠10の内側開口11の左右の面12,13に支持された場合に、止水壁2の左側の水密維持手段3及び右側の水密維持手段4のうち扉枠10の内側開口11の面に押し付けられない水密維持手段が、例えば、図7(a)に示す左側の水密維持手段3である場合、図7(b)に示すように、溝30が、断面V字状や断面U字状の板ばね35による断面V字状や断面U字状の溝30により形成された構成としてもよい。
即ち、水密維持手段3及び右側の水密維持手段4のうち扉枠10の内側開口11の面に押し付けられない水密維持手段は、板ばね35とシール材36とが組み合わされた構成の水密維持手段としてもよい。
尚、図7(b)において、図5で説明した部分と同一部分又は相当部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
この場合、取付部30Aが、止水壁2の面に取付けられた取付面30aを有した板ばね35のV字やU字の一方の板部35aにより構成され、折返部30Bが、当該取付部30Aより延長して折り返された板ばね35のV字やU字の他方の板部35bと、当該他方の板部35bの外板面に取付けられて扉枠10の内側開口11の面と対向する外面30bを有したシール材36とで構成される。
シール材36は、例えば実施形態1で説明した水密維持手段3,4,5と同じシール材を用いればよい。
また、板ばね35は、例えば金属、合成樹脂等により形成され、V字やU字の一方側の板部と他方側の板部とに力が加わった場合に、V字やU字の一方側の板部と他方側の板部との境界部分である屈曲部分の弾性により、V字やU字の一方側の板部と他方側の板部とが離反する方向に付勢されるよう構成されたものである。
【0043】
水平方向支持機構50Aは、扉枠10の内側開口11の左右の面12,13に対して直交する方向の長さを伸縮できるように構成された伸縮自在部材51と、反力伝達手段52とを備えた構成とした。
【0044】
この場合、伸縮自在部材51は、例えば、一端が扉枠10の内側開口11の左面12又は右面13のいずれか一方に接触するように設けられた固定長部材51Aと、扉枠10の内側開口11の左右の面12,13に対して直交する方向に移動可能となるように固定長部材51Aの他端側に設けられた押圧機構51Bとを備えた構成とした。
固定長部材51Aは、例えば断面四角形状の金属管などの管材により形成される。
押圧機構51Bは、上述した支持機構40と同様な構成とした。
例えば、図7(a)に示すように、押圧機構51Bは、固定長部材51Aの他端側より上方に延長するように設けられた支持片51aと、当該支持片51aに形成された雌ねじ孔51bと、当該雌ねじ孔51bに螺合されて左右方向に移動可能に構成されたねじ51cと、当該雌ねじ孔51bに螺合されたねじ51cの先端に設けられて扉枠10の内側開口11の左右の面12,13のいずれか一方に接触する押圧体51dとを備えた構成とした。
押圧体51dとしては、シール材よりも硬質の材料、例えば、硬質ゴムのように、比較的に剛性が大きく、かつ、面に傷を付けにくい材料により形成されたものとすることが好ましい。
また、固定長部材51Aの両端のうち、少なくとも押圧機構51Bが設けられている側とは反対側の端部には、扉枠10の内側開口11の左右の面12,13の他方に接触する当て部51fが設けられ、当該当て部51fは、押圧体51dと同様に、シール材よりも硬質の材料、例えば、硬質ゴムのように、比較的に剛性が大きく、かつ、面に傷を付けにくい材料により形成されたものとすることが好ましい。
【0045】
反力伝達手段52は、押圧体51dが扉枠10の内側開口11の左面12又は右面13のいずれか一方を押圧した際の反力を止水壁2に伝達するように機能する手段であり、例えば、伸縮自在部材51と止水壁2の上板部2eとを固定状態に連結するボルト53及びナット54により構成される。
【0046】
垂直方向支持機構50Bは、扉枠10の内側開口11の左右の面12,13に突っ張るように取付けられた前述の伸縮自在部材51と、当該伸縮自在部材51の固定長部材51Aに対して垂直方向に移動可能に設けられた押圧機構55とを備えた構成である。
例えば、図7(a)に示すように、押圧機構55は、前述の伸縮自在部材51の固定長部材51Aに形成された雌ねじ孔55aと、当該雌ねじ孔55aに螺合されて上下方向に移動可能に構成されたねじ55bと、雌ねじ孔55aに螺合されたねじ55bの先端である下端に設けられて止水壁2の上板部2eの上面に接触する押圧体55cとを備えて構成される。
【0047】
実施形態6に係る止水装置1によれば、水密維持手段3,4,5の外面と扉枠10の内側開口11の各面とが対向するように止水装置1を設置した後、まず、水平方向支持機構50Aを作動させる。例えば、図7(a)に示した水平方向支持機構50Aを作動させることにより、伸縮自在部材51を扉枠10の内側開口11の左右の面12,13に突っ張らせて、止水壁2を扉枠10の内側開口11の左右の面12,13に支持させる。
尚、水平方向支持機構50Aを作動させる際には、反力伝達手段52を構成するボルト53及びナット54を締結して、伸縮自在部材51と止水壁2とを連結して固定した状態にしておく。
次に、ボルト53及びナット54を緩めた状態にして、垂直方向支持機構50Bを作動させる。つまり、ねじ55bを回して押圧体55cを下方に移動させて止水壁2を下方に押圧して移動させることによって、止水壁2を扉枠10の内側開口11の下面14に支持させる。
その後、押圧手段31Cを、例えば図7に示した左側の水密維持手段3の溝30内に嵌入することにより、水密維持手段3の折返部30Bの外面30bが扉枠10の内側開口11の左面12に押し付けられる(図7(b)参照)。
以上により、止水装置1が扉枠10の内側開口11の各面12,13,14に支持されるとともに、水密維持手段3,4,5と内側開口11の各面12,13,14との間の水密性能が維持された構成となる。
【0048】
つまり、実施形態6に係る止水装置1においては、実施形態5の支持機構40の代わりに、水平方向支持機構50Aと垂直方向押圧機構50Bとを有した支持機構50を備えるとともに、水密維持部材と面との水密性能が弱くなる側の水密維持部材として実施形態4で示した水密維持手段と同様な構成の水密維持手段を設け、かつ当該水密維持手段の溝30に嵌入されて折返部30Bの外面30bを扉枠10の内側開口11の面に押し付ける押圧手段31Cを備えた構成としたので、扉枠10の内側開口11に対する着脱動作が容易になるとともに、止水装置1が扉枠10に取付けられた状態での水密維持機能及び支持機能がさらに向上する。即ち、水密維持機能及び支持機能に優れた止水装置1を提供できる。
特に、垂直方向支持機構50Bを備えたので、止水装置1に対する扉枠10の内側開口11の下面14の支持機能を向上させることができ、止水装置1をより強固に扉枠10の内側開口11に固定できるようになる。
【0049】
実施形態7
図8に示すように、実施形態7に係る止水装置1は、止水壁2を、左右に分割された左側止水壁2Aと右側止水壁2Bとを備えた構成とし、かつ、左側止水壁2Aの右端側部分と右側止水壁2Bの左端側部分とを結合する結合手段60を備えた構成とした。
【0050】
右側止水壁2Bは、例えば図8(a)に示すように、例えば、実施形態1の図2に示した止水壁2と比べて左右幅が短く、かつ、左側係止部6及び左側の水密維持手段3を備えず、右側の水密維持手段4と下側の水密維持手段5bを備えた構成とした。下側の水密維持手段5bは、上述した下側の水密維持手段5と同様の構成である。
【0051】
左側止水壁2Aは、右側止水壁2Bの左端面22Aと対向する対向面70を有した平板により形成された対向板部71と、当該対向板部71の前端縁より左側に延長するように設けられた平板により形成された左側係止部6と、対向板部71の後端縁より右側に延長するように設けられた平板により形成されて右側止水壁2Bの壁板部2aの後側の壁面21bと対向する対向面72を有した後板部73とを備えた、上下方向に延長する壁である。
そして、対向面72のほぼ全面に平板状のシール材等で形成された後側の水密維持手段75が取付けられるとともに、対向板部71の対向面70とは反対側の面である左端面70aのほぼ全面に左側の水密維持手段3が設けられ、かつ、例えば、対向板部71、後板部73、後側の水密維持手段75、左側の水密維持手段3の下端面を覆うように、これら下端面に、下側の水密維持手段5と同様の水密維持手段5aが取付けられている。即ち、対向板部71の左端面70aは、実施形態1の止水壁2の左端面22として機能する。
【0052】
結合手段60は、左側止水壁2Aの右端側部分及び右側止水壁2Bの左端側部分の互いに対向する面22A,70にそれぞれ左右方向の力を付与して、左側止水壁2Aの左側の水密維持手段3、及び、右側止水壁2Bの右側の水密維持手段4を、対向する扉枠10の内側開口11の面12,13に押し付ける手段である。
結合手段60は、例えば、図8に示すように、右側止水壁2Bの左端面22Aに固定された固定楔61と、当該右側止水壁2Bの左端面22Aと対向する左側止水壁2Aの対向板部71の対向面70と固定楔61との間に嵌入された嵌入楔62とで構成される。
嵌入楔62は、紛失防止のため、連結紐63で止水壁2に連結しておくことが好ましい。
【0053】
実施形態7に係る止水装置1によれば、まず、右側止水壁2Bの右側の水密維持手段4の外面を扉枠10の内側開口11の右面13と対向させるとともに、左側止水壁2Aの左側の水密維持手段3の外面を扉枠10の内側開口11の左面12と対向させる。そして、右側止水壁2Bの壁板部2aの後側の壁面21bと左側止水壁2Aの後側の水密維持手段75とを密着させるとともに、左側止水壁2Aと右側止水壁2Bとを下方に押圧して、左側止水壁2Aの下側の水密維持手段5aの下面と右側止水壁2Bの下側の水密維持手段5bの下面とを扉枠10の内側開口11の下面14に密着させた状態とした後、右側止水壁2Bの左端面22Aに固定された固定楔61と左側止水壁2Aの対向面70との間に嵌入楔62を嵌入する。
以上により、図8(b)に示すように、右側止水壁2Bの壁板部2aの後側の壁面21bと左側止水壁2Aの後側の水密維持手段75との間の水密が維持されるとともに、右側止水壁2Bの右側の水密維持手段4と扉枠10の内側開口11の右面13との間の水密、左側止水壁2Aの左側の水密維持手段3と扉枠10の内側開口11の左面12との間の水密,左側止水壁2Aの下側の水密維持手段5a及び右側止水壁2Bの下側の水密維持手段5bと扉枠10の内側開口11の下面14との間の水密が維持され、さらに、左右に分割された左側止水壁2Aと右側止水壁2Bとが、扉枠10の内側開口11の面12,13に支持された止水装置1が得られる。
【0054】
実施形態8
図9に示すように、実施形態8に係る止水装置1は、止水壁2を、左右に分割された左側止水壁2Cと右側止水壁2Dとを備えた構成とし、かつ、左側止水壁2Cの右端側部分と右側止水壁2Dの左端側部分とを結合する左右の結合手段60Aと前後の結合手段60Bとを備えた構成とした。
【0055】
右側止水壁2Dは、例えば図9(a)に示すように、実施形態1の図2に示した止水壁2と比べて左右幅が短く、かつ、右側係止部7及び左側の水密維持手段3を備えず、右側の水密維持手段4と下側の水密維持手段5bを備えた構成とした。下側の水密維持手段5bは、上述した下側の水密維持手段5と同様の構成である。換言すれば、右側止水壁2Dは、上述した右側止水壁2Bの右側係止部7を備えない構成とした。
【0056】
左側止水壁2Cは、右側止水壁2Dの左端面22Aと対向する対向面80を有した平板により形成された対向板部81と、当該対向板部81の後端縁より右側に延長するように設けられた平板により形成されて右側止水壁2Dの壁板部2aの後側の壁面21bと対向する対向面82を有した後壁板部83と、対向板部81の前端縁より右側に延長するように設けられた平板により形成されて右側止水壁2Dの左板部の前端面、右側止水壁2Dの下板部2dの左側の前端面、右側止水壁2Dの上板部2eの左側の前端面と対向する対向面84を有した前壁板部85とを備えた、上下方向に延長する断面凹状の壁である。
即ち、左側止水壁2Cの右端側部分が、右側止水壁2Dの左端面22Aと対向する対向板部81と、右側止水壁2Dの左端側部分の前後方向の面を前後から挟み込む前後の壁板としての後壁板部83と前壁板部85とを備えた構成とした。
そして、後板部の対向面84のほぼ全面に平板状のシール材等で形成された前側の水密維持手段86が取付けられるとともに、対向板部81の対向面80とは反対側の面である左端面80aのほぼ全面に左側の水密維持手段3が取付けられ、かつ、対向板部81、後壁板部83、前壁板部85、前側の水密維持手段86、左側の水密維持手段3の下端面を覆うように、これら下端面に、下側の水密維持手段5aが取付けられている。即ち、対向板部81の左端面80aは、実施形態1の止水壁2の左端面22として機能する。
【0057】
左右の結合手段60Aは、左側止水壁2Cの右端側部分及び右側止水壁2Dの左端側部分に左右方向の力を付与して、左側止水壁2Cの左側の水密維持手段3、及び、右側止水壁2Dの右側水密維持手段4を、対向する扉枠10の内側開口11の面12,13に押し付ける手段である。
左右の結合手段60Aは、例えば、図9に示すように、右側止水壁2Dの左端面22Aに固定された固定楔61Aと、当該右側止水壁2Dの左端面22Aと対向する左側止水壁2Cの対向板部81の対向面80と固定楔61Aとの間に嵌入された嵌入楔62Aとで構成される。
【0058】
前後の結合手段60Bは、左側止水壁2Cの右端側部分及び右側止水壁2Dの左端側部分のうちの一方に設けられた前後の壁板(例えば後壁板部83、前壁板部85)のうちの一方の壁板と、当該一方の壁板と対向する前記左側止水壁2Cの右端側部分及び前記右側止水壁2Dの左端側部分のうちの他方に設けられた前後方向の面(例えば右側止水壁2Dの後側の壁面21bにおける左側部分の面、右側止水壁2Dの前側における左側部分の端面)のうちの一方の面とに、前後方向の力を付与して、左側止水壁2Cの右端側部分及び右側止水壁2Dの左端側部分を前後方向で結合する結合手段である。
前後の結合手段60Bは、例えば、図9に示すように、右側止水壁2Dの後側の壁面21bにおける左側部分の面に固定された固定楔61Bと、当該右側止水壁2Dの後側の壁面21bにおける左側部分の面と対向する左側止水壁2Cの後壁板部83の対向面82と固定楔61Bとの間に嵌入された嵌入楔62Bとで構成される。
尚、嵌入楔62A,62Bは、紛失防止のため、連結紐63で止水壁2に連結しておくことが好ましい。
【0059】
実施形態8に係る止水装置1によれば、まず、右側止水壁2Dの右側の水密維持手段4の外面を扉枠10の内側開口11の右面13と対向させるとともに、左側止水壁2Cの左側の水密維持手段3の外面を扉枠10の内側開口11の左面12と対向させ、かつ、左側止水壁2Cの対向面80と右側止水壁2Dの左端面22Aとを対向させ、左側止水壁2Cの対向面82と右側止水壁2Dの後側の壁面21bにおける左端側の面と対向させ、左側止水壁2Cの対向面84と右側止水壁2Dの前側における左端側の端面と対向させる。
そして、左側止水壁2Cと右側止水壁2Dとを下方に押圧して、左側止水壁2Cの下側の水密維持手段5aの下面と右側止水壁2Dの下側の水密維持手段5bの下面とを扉枠10の内側開口11の下面14に密着させた状態とした後、右側止水壁2Dの左端面22Aに固定された固定楔61Aと左側止水壁2Cの対向面80との間に嵌入楔62Aを嵌入する。
さらに、右側止水壁2Dの後側の壁面21bにおける左端側の面に固定された固定楔61Bと左側止水壁2Aの対向面82との間に嵌入楔62Bを嵌入する。
以上により、右側止水壁2Dの左側の前端面と左側止水壁2Cの前側の水密維持手段86との間の水密が維持されるとともに、右側止水壁2Dの右側の水密維持手段4と扉枠10の内側開口11の右面13との間の水密、左側止水壁2Cの左側の水密維持手段3と扉枠10の内側開口11の左面12との間の水密、左側止水壁2Cの下側の水密維持手段5a及び右側止水壁2Dの下側の水密維持手段5bと扉枠10の内側開口11の下面14との間の水密が維持され、さらに、左右に分割された左側止水壁2Cと右側止水壁2Dとが、扉枠10の内側開口11の面12,13に支持された止水装置1が得られる。
【0060】
即ち、実施形態7,8に係る止水装置1によれば、左右に分割された左側止水壁2Aと右側止水壁2Bとを備えた構成としたため、各止水壁をコンパクトにできて、かつ、左右の開口幅が比較的大きい開口にも適用可能な止水装置1を提供できるようになる。
また、扉枠10の内側開口11に対する着脱動作が容易になるとともに、止水装置1が扉枠10に取付けられた状態での水密維持機能及び支持機能がさらに向上する。即ち、水密維持機能及び支持機能に優れた止水装置1を提供できる。
【0061】
また、実施形態7,8に係る止水装置1によれば、結合手段を、固定楔と嵌入楔とで構成したので、嵌入楔を嵌入するという簡単な操作で、止水装置1を扉枠10の内側開口11に固定状態に取付けることができるとともに、嵌入楔を嵌入するという簡単な操作で、止水装置1を扉枠10の内側開口11に固定状態に取付けることができて、かつ、止水装置1が扉枠10の内側開口11に取付けられた状態での水密維持機能及び支持機能が向上する。また、嵌入楔を取り外すだけで、止水装置1を扉枠10の内側開口11から簡単に取り外すことができるようになる。
つまり、結合手段が固定楔と嵌入楔とで構成された場合、扉枠10の内側開口11に対する着脱動作がより容易になるとともに、止水装置が扉枠10の内側開口11に取付けられた状態での水密維持機能及び支持機能が向上する。
【0062】
尚、実施形態7,8においては、左側止水壁の構成を右側止水壁に適用し、右側止水壁の構成を左側止水壁に適用してもかまわない。
【0063】
実施形態8においては、左側止水壁の右端側部分及び右側止水壁の左端側部分のうちの一方が、左側止水壁の右端側部分及び前記右側止水壁の左端側部分のうちの他方の前後方向の面を前後から挟み込む前後の壁板を備えた構成とすればよい。
【0064】
また、実施形態7(図8)においては、各係止部を備えない構成の止水装置1としてもよい。
また、実施形態8(図9)においては、各係止部を備えた構成の止水装置1としてもよい。
実施形態7及び実施形態8において、各係止部を備えない構成の止水装置1とすることで、上述したように、例えば、シャッター装置の左右のガイドレール間の開口部、門や塀等の出入口を構成する開口部等の開口部に適用可能な止水装置1となる。
【0065】
実施形態9
実施形態9に係る止水装置1は、図10に示すように、板ばね100とシール材110とが組み合わされた水密維持手段3,4,5を備えた構成とした。尚、図10では水密維持手段3を例示した。
【0066】
板ばね100は、止水壁2の被取付面である止水壁2の左端面22、止水壁2の右端面23、止水壁2の下端面24に取付けられた取付部101と、当該取付部101より延長するように設けられた弾発部102とを備えた構成の例えば断面V字状や断面U字状の長尺材を用い、V字やU字の一方側の板部を取付部101として機能させ、V字やU字の他方側の板部を弾発部102として機能させる。そして、取付部101と弾発部102との境界、即ち、屈曲部分103が、止水壁2を扉枠10の内側開口11に挿入する際の先端側に位置されるように、止水壁2の被取付面である左端面22、右端面23、下端面24と取付部101の外面104とが接着剤などで接着される。
シール材110は、例えば板状に形成され、当該板状のシール材110の板面と弾発部102の外面105のほぼ全面とが接着剤などで接着される。
尚、板ばね100は、例えば金属、合成樹脂等により形成され、V字やU字の一方側の板部と他方側の板部とに力が加わった場合に、V字やU字の一方側の板部と他方側の板部との境界部分である屈曲部分の弾性により、V字やU字の一方側の板部と他方側の板部とが離反する方向に付勢されるよう構成されたものである。
また、シール材110は、例えば実施形態1で説明した水密維持手段3,4,5と同じシール材を用いればよい。
【0067】
図10に基づいて、実施形態9に係る止水装置1における水密維持手段3による水密処理を説明する。
まず、図10(a)に示すように、止水装置1を前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入する際、水密維持手段3を構成する板ばね100の屈曲部分103を挿入方向の先端側に位置させてから、止水装置1を前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入する。この挿入時において、水密維持手段3を構成するシール材110が内側開口11の左面12に接触して押圧される際、板ばね100の弾発部102が、内側開口11の左面12からの力を受けて屈曲部分103を回転中心として取付部101に近づく方向に変形する。そして、図10(b)に示すように、弾発部102が変形した後の弾発力によりシール材110が内側開口11の左面12に押し付けられて当該内側開口11の左面12とシール材110との間の水密が維持されるように構成される。
尚、水密維持手段4,5も、上述した水密維持手段3と同様に構成され、同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0068】
実施形態9に係る止水装置1によれば、止水装置1を前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入するという簡単な取付動作によって、水密維持機能及び支持機能に優れた止水装置1が得られる。
【0069】
実施形態10
実施形態10に係る止水装置1は、図11に示すように、シール材120と水膨潤性能を有したシール材130とを用いた水密維持手段3,4,5を備えた構成とした。尚、図11では水密維持手段3を例示した。
【0070】
図11(a)に示すように、シール材120は、止水装置1を前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入した場合に、内側開口11の左面12との間に隙間Rが生じる状態に、止水壁2の被取付面である左端面22、右端面23、下端面24に取付けられている。
そして、後側(屋内側)から、図11(b)に示すように、扉枠10の内側開口11に挿入された止水壁2の被取付面に取付られているシール材120と扉枠10の内側開口11の面との間の隙間Rに、水膨潤性能を有したシール材130が充填されたことにより、シール材120と扉枠10の内側開口11の面との間の水密が維持されるように構成される。
尚、水膨潤性能を有したシール材130としては、例えば断面円形状の長尺な防食性水膨潤ゴム等を用いればよい。
また、シール材120は、例えば実施形態1で説明した水密維持手段3,4,5と同じシール材を用いればよい。
【0071】
図11に基づいて、実施形態10に係る止水装置1における水密維持手段3による水密処理を説明する。
まず、図11(a)に示すように、止水装置1を前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入する。この際、止水壁2の左端面22に取付られているシール材120と内側開口11の左面12との間に隙間Rが生じる。
その後、後側(屋内側)から前記隙間Rに、図11(b)に示すように、水膨潤性能を有したシール材130を充填することにより、シール材120と扉枠10の内側開口11の左面12との間の水密が維持される。
尚、水密維持手段4,5も、上述した水密維持手段3と同様に構成され、同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0072】
実施形態10に係る止水装置1によれば、止水装置1を前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入した後に、止水壁2の被取付面に取付られているシール材120と扉枠10の内側開口11の面との間に生じている隙間Rに、後側(屋内側)から水膨潤性能を有したシール材130を充填するという簡単な取付動作によって、水密維持機能及び支持機能に優れた止水装置1が得られる。
【0073】
実施形態11
実施形態11に係る止水装置1は、図12に示すように、シール材120と水膨潤性能を有したシール材130とを用いた水密維持手段3,4,5を備えた構成として、実施形態10と比べてシール材120と水膨潤性能を有したシール材130との配置を異ならせた構成としたものである。尚、図12では水密維持手段3を例示した。
【0074】
図12(a)に示すように、シール材120は、止水装置1が前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入された状態において、内側開口11の面(左面12、右面13、下面14)と止水壁2の被取付面である左端面22、右端面23、下端面24との間の前側には、隙間が生じない状態となるよう、止水壁2の被取付面に取付けられている。しかしながら、内側開口11の面と止水壁2の被取付面との間の後側には、隙間が生じる状態となっている。
そして、止水装置1が前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入された後に、図12(b)に示すように、シール材120の後方に形成される内側開口11の面と止水壁2の被取付面との間の隙間に、後側(屋内側)から、水膨潤性能を有したシール材130が充填されたことにより、止水壁2の被取付面と扉枠10の内側開口11の面との間の水密が維持されるように構成される。
即ち、実施形態11に係る止水装置1においては、シール材120は、止水壁2が前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入された場合に、止水壁2の被取付面と内側開口11の面との間において、止水装置1の挿入の方向とは反対側である前側に偏って位置されるように、止水壁2の被取付面に取付けられている。そして、扉枠10の内側開口11に挿入された止水壁2の被取付面と内側開口11の面との間の隙間に、後側(屋内側)から水膨潤性能を有したシール材130が充填されたことにより、止水壁2の被取付面と内側開口11の面との間の水密が維持されるように構成される。
【0075】
図12に基づいて、実施形態11に係る止水装置1における水密維持手段3による水密処理を説明する。
まず、図12(a)に示すように、止水装置1を前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入する。この際、内側開口11の左面12と止水壁2の左端面22との間の前側に、当該内側開口11の左面12と止水壁2の左端面22との間の水密を維持するようシール材120が配置される。
その後、後側(屋内側)から、シール材120の後方に形成される内側開口11の左面12と止水壁2の左端面22との間の隙間に、図12(b)に示すように、水膨潤性能を有したシール材130が充填されたことにより、内側開口11の左面12と止水壁2の左端面22との間の前後でシール材120と水膨潤性能を有したシール材130とによる水密性能が発揮され、内側開口11の左面12と止水壁2の左端面22との間の水密が良好に維持される。
尚、水密維持手段4,5も、上述した水密維持手段3と同様に構成され、同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0076】
実施形態11に係る止水装置1によれば、止水装置1を前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入して、内側開口11の面と止水壁2の面との間の前側に、当該内側開口11の面と止水壁2の面との間の水密を維持するようシール材120が配置された後、当該シール材120の後方に形成される内側開口11の面と止水壁2の面との間の隙間に、後側(屋内側)から、水膨潤性能を有したシール材130を充填するという簡単な取付動作によって、水密維持機能び支持機能に優れた止水装置1が得られる。
【0077】
実施形態12
上述した実施形態3に係る止水装置1では、図4に示すように、水密維持手段3,4,5を構成するシール材が、止水壁2を前側(屋外側)から内側開口11に挿入する際の先端側から末端側に向けて、シール材が取付けられた止水壁2の被取付面からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように形成された構成として、シール材における、扉枠10の内側開口11の左面12,右面13,下面14と接触する面が傾斜面に形成された構成を例示した。
これに対して、実施形態12に係る止水装置1では、図13に示すように、止水壁2の左端面22、右端面23、下端面24が、止水壁2を前側(屋外側)から内側開口11に挿入する際の先端側から末端側に向けて、扉枠10の内側開口11の左面12,右面13,下面14に徐々に近づく傾斜面に形成された構成とした。
さらに、止水壁2を前側(屋外側)から内側開口11に挿入した後に、当該止水壁2の傾斜面と扉枠10の内側開口11の左面12,右面13,下面14との間の隙間に、後側(屋内側)から、水膨潤性能を有したシール材130、あるいは、シール材120が充填されることによって、止水壁2の傾斜面(左端面22、右端面23、下端面24)と扉枠10の内側開口11の面(左面12,右面13,下面14)との間の水密が維持されるように構成された止水装置1とした。尚、図13では水密維持手段3を例示した。
【0078】
図13に基づいて、実施形態12に係る止水装置1における水密維持手段3による水密処理を説明する。
まず、図13(a)に示すように、止水装置1を前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入する。この際、内側開口11の左面12と止水壁2の傾斜面に形成された左端面22との間に、断面三角形状、あるいは、断面台形形状の隙間が形成される。尚、当該隙間は、前側に近付くほど断面幅が狭小となった隙間である。
その後、後側(屋内側)から、図13(b)に示すように、内側開口11の左面12と止水壁2の傾斜面に形成された左端面22との間の隙間に、水膨潤性能を有したシール材130、あるいは、シール材120が充填されたことにより、内側開口11の左面12と止水壁2の傾斜面である左端面22との間の水密が良好に維持される。この場合、後側(屋内側)から当該隙間に充填されたシール材130等は、当該隙間の前側の狭小な部分を形成する面に押し潰されて当該狭小空間に強固に充填されるため、内側開口11の左面12と止水壁2の左端面22との間の水密性能がより向上する。
尚、水密維持手段4,5も、上述した水密維持手段3と同様に構成され、同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0079】
実施形態12に係る止水装置1によれば、止水装置1を前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入した後、内側開口11の面と止水壁2の傾斜面との間に形成された前端側狭小な隙間に、後側(屋内側)から、水膨潤性能を有したシール材130等を充填するという簡単な取付動作によって、水密維持機能及び支持機能に優れた止水装置1が得られる。
【0080】
実施形態13
実施形態13に係る止水装置1は、実施形態9(図10)で説明した板ばね100とシール材110とが組み合わされた構成の水密維持手段3,4,5の代わりに、止水壁2の被取付面である止水壁2の左端面22、止水壁2の右端面23、止水壁2の下端面24に取付けられた取付部と、当該取付部より延長するように設けられた弾発部とを備えた例えば断面V字状や断面U字状の長尺な弾性シール材を備えた構成とした。
尚、当該弾性シール材は、V字やU字の一方側の板部と他方側の板部とに力が加わった場合に、V字やU字の一方側の板部と他方側の板部との境界部分である屈曲部分の弾性により、V字やU字の一方側の板部と他方側の板部とが離反する方向に付勢されるよう構成されたものである。
また、当該弾性シール材は、実施形態9(図10)で説明した板ばね100と同じように、取付部と弾発部との境界部分である屈曲部分が、止水壁2を扉枠10の内側開口11に挿入する際の先端側に位置されるように、当該弾性シール材の取付部の外面と止水壁2の被取付面である左端面22、右端面23、下端面24とが接着剤などで接着された構成とした。
当該弾性シール材は、例えばゴムやその他のシール材のみで形成された単材構成のもの、あるいは、シール材以外で形成された心材と当該心材の周囲を覆うように設けられたシール材とで構成された複合材構成のものなどであればよい。当該複合材構成の弾性シール材は、例えば2色成形やその他の製造方法にて製造されたものを使用すればよい。例えば、複合材構成の弾性シール材として、金属や合成樹脂等で形成された板ばねを心材として当該板ばねの周囲がシール材で覆われた構成の弾性シール材を用いればよい。
【0081】
実施形態13に係る止水装置1によれば、実施形態9(図10)と同様に、止水装置1を前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入するという簡単な取付動作によって、水密維持機能及び支持機能に優れた止水装置1が得られる。
【0082】
実施形態14
図14に示すように、実施形態14に係る止水装置1は、実施形態3(図4(a),(b))で説明したように、水密維持手段3,4,5を構成するシール材が、止水壁2を前側(屋外側)から内側開口(開口部)11に挿入する際の先端側から末端側に向けて、水密維持手段3,4,5を構成するシール材が取付けられた被取付面となる左端面22,右端面23,下端面24からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように、扉枠10の内側開口11の左面12,右面13,下面14と接触する面として形成された傾斜面に、突片を備える構成とした。
【0083】
図14(a)は、上述した先端側から末端側に向けて、被取付面である止水壁2の下端面24からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように、扉枠10の内側開口11の下面14と接触する面として形成された傾斜面5aに、複数の突片5dを備えるように水密維持手段5を示したものである。
図14(b)は、上述した先端側から末端側に向けて、被取付面である止水壁2の左端面22からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように、扉枠10の内側開口11の左面12と接触する面として形成された傾斜面3aに、複数の突片3dを備えるように左側の水密維持手段3を示したものである。
図示しないが、同様に、右側の水密維持手段4は、上述した先端側から末端側に向けて、被取付面である止水壁2の右端面23からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように、扉枠10の内側開口11の右面13と接触する面としての傾斜面に、複数の突片が形成される。
【0084】
図14(a),(b)に示すように、突片3d,5dは、各傾斜面3a,5aにおいて前後方向(先末方向)に沿って間隔を隔てて複数個設けられ、各傾斜面3a,5aの法線方向に延長するように形成される。各傾斜面3a,5aに設けられる複数の突片3d,5dは、断面視において例えば、突出量が同じ直線状に形成される。なお、突片の断面視における形状及び突出量は、例えば、実施形態3の図4(c),(d)に示すように、傾斜面から斜め後方側(末端側)に突出する断面鎌形とし、後側(末端側)に設けられた突片ほど突出量及び大きさが大きいように形成してもよく、その形状や突出量は適宜変更すればよい。
【0085】
実施形態14に係る止水装置1によれば、止水装置1を前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入したときに、扉枠10の左面12,右面13,下面14に対向する止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24の設計上の平行度が維持されない場合であっても、水密維持手段3,4,5に設けられた突片が、左面12と左端面22との隙間、右面13と右端面23との隙間、下面14と下端面24との隙間の寸法変化を吸収することができ、扉枠10の内側開口11への止水装置1の前側(屋外側)からの挿入を容易にしつつ、水密維持機能及び支持機能に優れた止水装置1が得られる。設計上の平行度が維持されない場合とは、加工公差の範囲で製造された扉枠10及び止水壁2を組み合わせたときに、例えば、左面12と左端面22との隙間の延長方向に、隙間の狭い部分や広い部分が生じることを言う。
【0086】
なお、実施形態14では、実施形態3(図4(a),(b))に突片を形成するものとして説明したが、実施形態3(図4(c),(d))を除く、前述の各実施形態においても、扉枠10の左面12,右面13,下面14に対向し、接触する水密維持手段3,4,5の面に設けても実施形態14と同様の効果を得ることができる。
【0087】
実施形態15
実施形態1乃至実施形態3等に係る止水装置1では、水密維持手段3,4,5を構成するシール材が止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24に取付けられる構成を例示したが、実施形態15に係る止水装置1では、図15に示すように、水密維持手段3,4,5は、被取付面である止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24に加え、壁板部2aの屋内側の壁面21bに回り込むようにシール材が形成された構成とした。
図15に示すように、実施形態15に係るシール材は、実施形態3(図4(a),(b))を用いて説明すると、止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24に取付けられる部分が、止水壁2を前側(屋外側)から内側開口(開口部)11に挿入する際の先端側から末端側に向けて、止水壁2の被取付面からの厚さ寸法が徐々に厚くなるように形成されるとともに、この先端側に連続し、壁板部2aの屋内側の壁面21bに沿って延長する平板状の延長片を備えるように形成される。つまり、シール材は、図14に示すように断面視において概略L字状に構成される。
【0088】
図15(a)は、上述した先端側から末端側に向けて、被取付面である止水壁2の下端面24から屋内側の壁面21bに沿って延長する延長片5Zが壁面21bに取り付けられるように形成した水密維持手段5を示したものである。
図15(b)は、上述した先端側から末端側に向けて、被取付面である止水壁2の左端面22から屋内側の壁面21bに沿って延長する延長片3Zが壁面21bに取り付けられるように形成した左側の水密維持手段3を示したものである。
図示しないが、同様に、右側の水密維持手段4は、上述した先端側から末端側に向けて、被取付面である止水壁2の右端面23から屋内側の壁面21bに沿って延長する延長片が壁面21bに取り付けられるように形成される。
【0089】
実施形態15に係る止水装置1によれば、延長片が壁面21bに取り付けられることにより、止水装置1を前側(屋外側)から扉枠10の内側開口11に挿入するときに、扉枠10の左面12,右面13,下面14との摩擦によって水密維持手段3,4,5のはがれを防止することができる。即ち、実施形態1乃至実施形態3で説明したように、水密維持手段3,4,5を止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24のみに取り付けた場合、扉枠10との摩擦による力が左端面22,右端面23,下端面24と平行に働いて、水密維持手段3,4,5を左端面22,右端面23,下端面24から引きはがすように作用するが、延長片が壁面21bに取り付けられることにより、この引きはがす力に対抗することができ、止水装置1の繰り返し使用において安定した水密性を得ることができる。
【0090】
尚、本発明の止水装置1における実施形態1乃至実施形態15の技術的思想は以下の通りである。
実施形態1,2(図1乃至図3)は、止水壁の面(左端面,右端面,下端面)に水密維持手段を設けて、止水壁の面と開口部の面(左面,右面,下面)との間の水密及び止水壁を支持する開口部の支持機能を維持するようにした技術的思想。
実施形態3(図4)は、水密維持手段の形状を、止水壁を開口部に挿入する際の先端から末端に向けて徐々に厚くなるように工夫したことにより、止水壁の面と開口部の面との間の水密及び止水壁を支持する開口部の支持機能を維持するとともに、開口部に対する止水壁の着脱動作が容易になるようにした技術的思想。
実施形態4(図5)は、溝を備えた水密維持手段を用いて、止水壁を開口部に挿入した後に、水密維持手段の溝内に押圧手段を嵌入して水密維持手段を開口部の面に押し付ける構成としたことで、止水壁の面と開口部の面との間の水密及び止水壁を支持する開口部の支持機能を維持するとともに、開口部に対する止水壁の着脱動作が容易になるようにした技術的思想。
実施形態5(図6)は、止水壁に支持機構を設けることによって、止水壁を支持する開口部の支持機能を向上させるようにした技術的思想。
実施形態6(図7)は、止水壁に水平垂直方向の支持機構を設けることによって、止水壁を支持する開口部の支持機能を向上させるようにするとともに、左右の水密維持手段のうち開口部の面に押し付けられなくなる水密維持手段として、溝を備えた水密維持手段を使用し、止水壁を開口部に設置した後に、水密維持手段の溝内に押圧手段を嵌入して水密維持手段を開口部の面に押し付ける構成としたことで、止水壁を支持する開口部の支持機能を向上させるとともに、止水壁の面と開口部の面との間の水密を維持するようにした技術的思想。
実施形態7(図8)、実施形態8(図9)は、止水壁を左右に分割された左側止水壁と右側止水壁とで構成することにより、各止水壁をコンパクトにできて、かつ、左右の開口幅が比較的大きい開口にも適用容易な止水装置とした技術的思想。
実施形態9(図10)は、水密維持手段を、板ばねとシール材とが組み合わされた構成とすることで、止水壁の開口部への取付動作を簡単にできるとともに、板ばねの弾発力を利用して止水壁の面と開口部の面との間の水密を維持するようにした技術的思想。
実施形態10(図11)、実施形態11(図12)は、水密維持手段を、シール材と水膨潤性能を有したシール材とを用いて構成し、シール材を止水壁の面(左端面,右端面,下端面)に取付けておいて、止水壁を開口部に挿入した後に、シール材と開口部の面(左面,右面,下面)との間、又は、止水壁の面と開口部の面との間に、水膨潤性能を有したシール材を充填することにより、止水壁の面と開口部の面との間の水密を維持するようにした技術的思想。
実施形態12(図13)は、止水壁を開口部に挿入した場合に、止水壁の面(左端面,右端面,下端面)が、止水壁を開口部に挿入する際の先端側から末端側に向けて、開口部の面に徐々に近づくような傾斜面に形成しておくとともに、止水壁を開口部に挿入した後に、当該止水壁の傾斜面と開口部の面との間に、シール材を充填することにより、止水壁の傾斜面と開口部の面との間の水密を維持するようにした技術的思想。
実施形態13は、水密維持手段として、例えば断面V字状や断面U字状の長尺な弾性シール材を使用し、当該弾性シール材の取付部と弾発部との境界部分である屈曲部分が、止水壁を開口部に挿入する際の先端側に位置されるように、当該弾性シール材を止水壁の面(左端面,右端面,下端面)に取付けた構成とすることで、止水壁の開口部への取付動作を簡単にできるとともに、当該弾性シール材の弾発力を利用して止水壁の面と開口部の面との間の水密を維持するようにした技術的思想。
尚、実施形態13において、例えばゴムやその他のシール材のみで形成された単材構成の弾性シール材を用いる形態は、実施形態3(図4)のように、水密維持手段の形状を、止水壁を開口部に挿入する際の先端から末端に向けて徐々に厚くした構成にも該当するため、当該単材構成の弾性シール材を用いる形態は、実施形態3の技術的思想も併せ持つ形態である。
実施形態14(図14)は、水密維持手段が突片を備えることにより、左面と左端面との隙間、右面と右端面との隙間、下面と下端面との隙間の寸法変化を吸収することができ、扉枠の内側開口への止水装置1の前側(屋外側)からの挿入を容易にして、開口部に対する止水壁の着脱動作が容易になるようにした技術的思想。
実施形態15(図15)は、水密維持手段が延長片を備え、該延長片が止水壁の壁面に取り付けられることにより、止水装置を扉枠に挿入するときに、扉枠の左面,右面,下面との摩擦によって水密維持手段のはがれを防止するようにした技術的思想。
【0091】
また、本発明の止水装置1は、実施形態1乃至実施形態15の構成を、適宜、2形態以上組み合わせた構成としてもよい。例えば、実施形態4(図5)に示した水密維持手段3,4,5の構成と実施形態5(図6)に示した支持機構40の構成とを組み合わせた止水装置1とすれば、水密維持機能及び支持機能にさらに優れた止水装置1を得ることができる。
また、実施形態1乃至実施形態13の構成を、適宜、入れ換えた構成としてもよい。例えば、実施形態4(図5)に示した水密維持手段3,4,5の構成を実施形態6(図7(b))に示した水密維持手段の構成に変更してもよい。
【0092】
尚、実施形態1乃至実施形態6,実施形態9乃至実施形態13では、壁板部2aと、左板部2bと、右板部2cと、下板部2dと、上板部2eと、左側係止部6と、右側係止部7と、下側係止部8とを備えた前側開口後側閉塞の箱状に形成された止水壁2を例示したが、止水壁は、左側係止部6、右側係止部7、下側係止部8を備えない、平板状の止水壁であってもよい。
即ち、本発明の止水装置は、例えば平板状の止水壁の左端面と右端面と下端面とにそれぞれ水密性能維持部材を備えて構成された止水装置であってもよく、当該止水装置であっても、左面と右面と下面とを有した開口部、例えば、シャッター装置の左右のガイドレール間の開口部、門や塀等の出入口を構成する開口部等の開口部を塞いで当該開口部を介した水の通過を防止できるからである。
即ち、当該止水装置であっても、止水壁の左端面に設けられた左側の水密維持手段が開口部の左面との間の水密を維持するように、止水壁の右端面に設けられた右側の水密維持手段が開口部の右面との間の水密を維持するように、止水壁の下端面に設けられた下側の水密維持手段が開口部の下面との間の水密を維持するように、当該止水装置を当該開口部に設置することによって、当該開口部を塞いで当該開口部を介した水の通過を防止できる。
【0093】
また、各実施形態では、止水壁の面(左端面,右端面,下端面)と扉枠の内側開口等の開口部の面(左面,右面,下面)との間の水密を維持するために、水密維持手段を止水壁の面(左端面,右端面,下端面)側に設けた例を示したが、各実施形態の態様の水密維持手段を開口部の面(左面,右面,下面)側に設けた構成としたり、あるいは、水密維持手段を止水壁の面(左端面,右端面,下端面)及び開口部の面(左面,右面,下面)の両方側に設けた構成としてもよい。
即ち、本発明に係る止水装置は、少なくとも、止水壁と、止水壁の左端面と開口部の左面との間の水密を維持するために、止水壁の左端面及び開口部の左面のうちの少なくとも一方に設けられた左側の水密維持手段と、止水壁の右端面と開口部の右面との間の水密を維持するために、止水壁の右端面及び開口部の右面のうちの少なくとも一方に設けられた右側の水密維持手段と、止水壁の下端面と開口部の下面との間の水密を維持するために、止水壁の下端面及び開口部の下面のうちの少なくとも一方に設けられた下側の水密維持手段と、を備えていればよい。
【0094】
また、実施形態1の説明において、水密維持手段3,4,5を別体として構成し、左側の水密維持手段3の下端面と右側の水密維持手段4の下端面とが扉枠10の内側開口11の下面14と接触して当該下面14との間の水密性能を維持するように構成されるとともに、下側の水密維持手段5の左の端面と左側の水密維持手段3とが密着するように設けられて、かつ、下側の水密維持手段5の右の端面と右側の水密維持手段4とが密着するように設けられているとして説明したが、下側の水密維持手段5が扉枠10の内側開口11の下面と接触して当該下面14との間の水密性能を維持するように構成されるとともに、下側の水密維持手段5の左の端面と左側の水密維持手段3とが扉枠10の内側開口11の左面12と接触して当該左面との間の水密性能を維持するように設けられて、かつ、下側の水密維持手段5の右の端面と右側の水密維持手段4とが扉枠10の内側開口11の右面13と接触して当該右面と13の間の水密性能を維持するように設けられるようにしても良い。
【0095】
また、実施形態1,3等で示したように、水密維持手段3,4,5を別体として構成する場合、水密維持手段3,4,5は、同じ材料により形成されたシール材を用いることに限定されない。例えば、図1等に示すように、止水壁2と水密維持手段3,4,5とが一体化された止水装置1を扉枠10の内側開口11に挿入する場合、止水装置1の、扉枠10の内側開口11への挿入は、水密維持手段5を下面14に押し付けながら左右の水密維持手段3;4を扉枠10の内側開口11に摺動させながら押し込むことが想定される。このとき水密維持手段3と左面12及び水密維持手段4と右面13の摩擦は、水密維持手段5と下面14との摩擦よりも大きくなる。また、別体又は一体的に構成された水密維持手段3,4,5を扉枠10側に設けても良く、扉枠10側と止水壁2側との両方に設けても良い。
【0096】
このような場合、水密維持手段3,4,5は、水密維持手段3及び水密維持手段4には非発泡系のゴムにより形成したものを、水密維持手段5には発泡系のゴムにより形成したものを用いると良い。例えば、水密維持手段3,4,5を発泡系のゴムを素材として形成した場合、左面12及び右面13の摩擦が大きくなり、押し込みにくくなる虞があるとともに、無理に押し込もうとすると水密維持手段3,4が損傷する虞がある。そこで、左右の水密維持手段3,4に非発泡系のゴムを用いることで、嵌め込み易さを得つつ、損傷を防ぐことができる。
【0097】
また、水密維持手段5に、発泡系のゴムを用いることにより、押し込み時に生じやすい止水壁2の浮き上がりに追従し、水密維持手段5と下面14との水密状態を維持し、止水装置1の着脱時の止水性が得易くなる。
【0098】
以下、図16乃至図30に基づいて、実施形態16乃至実施形態24に係る止水装置1について説明する。
尚、図16図17図25図28においては、止水装置1を構成する止水壁2の形状を明確にするため、止水壁2のみを図示した。
即ち、実施形態1等で説明した止水壁2と同様に、実施形態16乃至実施形態24に係る止水装置1は、図23図24図26図29に示すように、当該止水壁2と水密維持手段3,4,5とを備えて構成されるものである。
尚、図16乃至図30において、上述した実施形態1乃至実施形態15の図1乃至図15で示した部位と同一部分又は相当部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
また、図16乃至図30中の断面図におけるハッチングは省略した。
【0099】
実施形態16
上述した各実施形態1乃至実施形態15で説明した止水壁2では、壁板部2aが、四角形状の平板により形成された構成のものを例示したが、当該壁板部2aは、例えば図16(c)に示すように、複数のアルミ押出形材等の形材2m,2m…を組み合わせて形成された中空構造の壁板部2aにより構成されたものであってもよい。例えば、複数の形材2m,2m…を上下に組み合わせて構成された壁板部2aを備えた止水壁とした。
即ち、図16図17図18図23図24に示すように、止水壁2が、複数の形材2m,2m…を上下に組み合わせて構成された中空構造(板状中空箱体)の壁板部2aと、壁板部2aにおける扉9側に位置される壁面21aの左端より延長するように設けられて扉枠10の内側開口11の左側の戸当り面16に係止する左側係止部6と、壁面21aの右端より延長するように設けられて扉枠10の内側開口11の右側の戸当り面17に係止する右側係止部7と、壁面21aの下端より延長するように設けられて扉枠10の内側開口11の下側の戸当り面18に係止する下側係止部8とを備えた構成の止水装置1とした。
尚、実施形態16の止水壁2では、壁板部2aの上板(壁板部2aの最上部を構成する形材2mの上板)上板2tが、止水壁2の上端部として機能し、後述するように当該上板2tに取っ手2H等が設けられる。
換言すれば、実施形態16の止水壁2では、壁板部2aの上板2tが止水壁2の上端部として機能するため、当該上板2tが、実施形態1乃至実施形態15で説明した止水壁2の上端部として機能する上板部2eに相当する部位となる。
【0100】
上述した実施形態1乃至実施形態15のように、壁板部2aを平板により構成した場合においては、壁板部2aの強度を上げるためには、板厚の厚い平板を用いることが好ましいが、板厚の厚い平板を用いた場合、止水装置1の重量が嵩んで、設置作業、撤去作業、運搬作業等の作業において、作業性(取扱性)の悪い止水装置1となってしまう可能性がある。
一方、実施形態16のように、形材2m,2m…を組み合わせて構成された中空の壁板部2aとすれば、壁板部2aの強度が向上するとともに、軽量な壁板部2aを備えた止水壁2を構成できるようになる。即ち、止水壁2の壁板部2aの強度が向上するとともに、取扱性の良好な止水装置1を提供できるようになる。
例えば、図18に示すような両開き扉9の内側開口11に対応させた止水装置1を構成した場合、壁板部2aの大きさが大きくなるため、壁板部2aとして板厚の厚い平板を用いた場合には、壁板部2aが大きくてかつ重いものとなり、作業性(取扱性)の悪い止水装置1となってしまう可能性がある。
一方、実施形態16のように、複数の形材2m,2m…を組み合わせて構成された中空の壁板部2aを備えた構成とすれば、壁板部2aの大きさが大きくなる場合であっても、止水壁2の壁板部2aの強度が向上するとともに、止水壁2の壁板部2aの軽量化が図れるため、作業性(取扱性)の良い止水装置1を提供できるようになる。
【0101】
実施形態17
止水壁2の上端部、即ち、実施形態16の止水壁2における壁板部2aの上板(壁板部2aの最上部を構成する形材2mの上板)2t、あるいは、実施形態1~15の上板部2eに、図16乃至図18に示すような、取っ手(ハンドル)2Hを設けた構成とした。
このような取っ手2Hを備えた止水装置1によれば、人が取っ手2Hを持った状態で、止水装置1の設置作業、撤去作業、運搬作業等の作業を容易に行えるようになるため、作業性(取扱性)の良い止水装置1を提供できるようになる。
【0102】
実施形態18
止水装置1における止水壁2の上端部に取っ手2Hを設けた場合、止水装置1が扉枠10の内側開口11に所定の状態に設置された後に、扉9を閉じる際、又は、扉9が閉じられた状態から扉9を開く際において、扉9の内面よりも屋内側に突出している突出物が当該取っ手2Hと干渉する可能性がある。
尚、当該扉9の内面よりも屋内側に突出している突出物は、閉じた状態の扉9の内面より突出して止水壁2の上端部の上方に位置される部品であり、例えば、扉9の取っ手9N(レバーハンドル)(図18参照)、サムターン、プッシュプル錠等の可動部品、あるいは、シリンダー等の固定部品である。
そこで、扉9の内面よりも屋内側に突出している突出物との干渉を回避できるように構成された取っ手2Hを備えた止水装置1とした。
即ち、止水壁2の上端部に、閉じた状態の扉9の内面よりも屋内側に突出する突出物との干渉を回避するための機構を有した取っ手2Hとして、例えば、図19(a)に示すような可倒式の取っ手2H、あるいは、図19(b)に示すような上下移動式の取っ手2H、あるいは、図19(c)に示すような回転式の取っ手2Hを備えた止水装置1とした。
【0103】
可倒式の取っ手2Hとしては、例えば図20に示すような構成の取っ手2Hを設ける。
当該可倒式の取っ手2Hは、取っ手2Hが取付ベース2HB,2HBを介して止水壁2の上端部としての例えば上板2tに取付けられた構成とした。
取っ手2Hは例えば門型に形成されており、取っ手2Hの両方の端部4a,4aが、それぞれ、取付ベース2HB,2HBを介して止水壁2の上板2tに対して起倒可能に取付けられた構成とした。
取付ベース2HBは、図外の取付ねじ等により上板2tに固定されている。そして、取っ手2の両方の端部4a,4aが、取付ベース2HB,2HBに、回転中心2Rを形成する回転中心軸4cを介して回転可能に取付けられた構成となっている。
取付ベース2HB,2HBは、取っ手2を、上板2tの上方に垂直な起立状態に維持するための規制面4b(図20(a)参照)と、取っ手2を、後側(屋内側)に倒伏状態に維持するための規制面4f(図20(b)参照)とを備えた構成となっている。例えば、規制面4bは、上板2tの平坦な上面に対して垂直な面により構成され、規制面4fは、上板2tの平坦な上面に対して平行な面により構成される。
従って、取っ手2Hを使用する場合には、図20(a)に示すように、取っ手2Hを起立状態に設定して使用する。
また、扉9の内面よりも屋内側に突出している突出物と取っ手2Hとが干渉する場合には、図20(b)に示すように、取っ手2Hを倒伏状態に設定することにより、突出物との干渉を回避できる。
【0104】
上下移動式の取っ手2Hとしては、例えば図21に示すような取っ手2Hを設ける。
当該上下移動式の取っ手2Hは、上板2tに、取っ手2の両方の端部4a,4aを貫通させるための貫通孔2g,2gが形成され、取っ手2の両方の端部4a,4aの先端側には、取っ手2の端部4aが貫通孔2gから抜けないようにするための抜け止め4gが設けられた構成となっている。
従って、取っ手2Hを使用する場合には、図21(a),(b)に示すように、抜け止め4g,4gが上板2tの内面(下面)に衝突するまで、取っ手2Hを上方に移動させるようにして使用する。
また、取っ手2Hを使用しない場合には、図21(c),(d)に示すように、取っ手2Hが自重により下降し、扉9の内面よりも屋内側に突出している突出物との干渉を回避できる状態に設定される。
尚、取っ手2の両方の端部4a,4aの先端側にねじ部4tを形成しておけば、抜け止め4gをナットのような部材で構成することができ、当該抜け止め4gの位置を調整して、取っ手2Hの上下移動幅を調整できる。
【0105】
回転式の取っ手2Hとしては、例えば図22に示すような取っ手2Hを設ける。
当該回転式の取っ手2Hは、取っ手2の両方の端部4a,4aのうちの一方の端部4aが、上板2tに回転可能に取付けられて、壁板部2aには、他方の端部4aが出入り可能となる端部出入溝2hが形成された構成とした。当該端部出入溝2hは、壁板部2aの上板2tと壁面(屋内側に面する壁面)21bとに跨るように形成されている。
一方の端部4aの先端側には、一方の端部4aの先端側に形成されたねじ部4tに螺着されて上板2tの上方に位置される上ナット4iと、ねじ部4tに挿着されて上板2tの下方に位置されるワッシャ4jと、ねじ部4tに挿着されてワッシャ4jの下方に位置される下ナット4kとを備える。
そして、上板2tに対する上ナット4iの締結を緩めることで、取っ手2Hが、一方の端部4aの中心軸を回転中心2Rとして回転可能な状態に設定される。
また、上板2tに対して上ナット4iを締結することで、取っ手2Hが、一方の端部4aの中心軸を回転中心2Rとして回転不能な状態に設定される。
従って、取っ手2Hを使用する場合、図22(a)に示すように、他方の端部4aを端部出入溝2h内に位置させた状態で、上ナット4iを締結することによって、取っ手2Hを回転不能な状態に設定してから使用する。
そして、扉9の内面よりも屋内側に突出している突出物と取っ手2Hとが干渉する場合には、上ナット4iの締結を緩めて、一方の端部4aの中心軸を回転中心2Rとして回転させて、他方の端部4aを端部出入溝2h内から屋内側(後側)に移動させることにより、突出物との干渉を回避できる状態に設定される。
【0106】
以上、実施形態18のように、可倒式、あるいは、上下移動式、あるいは、回転式の取っ手2Hを備えた止水装置1とすれば、例えば、止水装置1が扉枠10の内側開口11を塞ぐように設置され、かつ、扉9を閉じた状態において、扉9の内面よりも屋内側に突出する突出物と取っ手2Hとの干渉を防ぐことができるようになる。
従って、例えば、止水装置1の高さ寸法を、扉9の内面に設けられたドア取っ手(レバーハンドル)9Nの直下位置までの高さ寸法に設定可能となるとともに、ドア取っ手9Nの操作時においてドア取っ手9Nと取っ手2Hとの干渉を防止できる止水装置1を提供できるようになる。例えば、図18において、止水装置1の高さ寸法を、さらに、ドア取っ手9Nの直下位置まで高くすることが可能となる。
尚、取っ手2Hは、閉じた状態の扉9の内面よりも屋内側に突出する突出物との干渉を防ぐことができる構成であれば、上述したような、可倒式、上下移動式、回転式以外の構成のものであってもよい。
例えば、上板2tの左右方向に移動可能なように上板2tに取付けられた構成の取っ手2H、上板2tに対して着脱可能に構成された取っ手2H等であってもよい。
【0107】
実施形態19
止水壁2における上端部、例えば、上述した止水壁2における壁板部2aの上板2t、あるいは、実施形態1~15の上板部2eに、図16乃至図18に示すような、引っ掛け部2Fを設けた構成とした。
このよう引っ掛け部2Fを備えた止水装置1によれば、例えば壁面に設けられた壁掛けフック等に引っ掛け部2Fを引っ掛けて止水装置1を壁面に吊るした状態で保管しておくことが可能となり、床置き保管を回避できるので、専用の保管用床スペースを設ける必要がなくなる。
【0108】
実施形態16乃至実施形態19の構成を備えて、内側開口11に設置された止水装置1の一例を図18に示す。
当該止水装置1は、止水壁2の壁板部2aを、アルミ押出形材等の複数の形材2m,2mを組み合わせて形成した板状中空箱体により構成するとともに、壁板部2aの上端部に、取っ手2H、及び、引っ掛け部2Fを取付けた構成とした。
取っ手2H、及び、引っ掛け部2Fは、壁板部2aの上板2tの左右に1つずつ設けることが好ましい。
【0109】
実施形態20
止水装置1が扉枠10の内側開口11の左面12,右面13,下面14,上面15に固定された状態に取付けられ、かつ、扉9が閉じられた状態において、止水壁2の壁板部2aの壁面(屋外側に面する壁面)21aと扉9の屋内側の面より突出する突出物とが干渉しない構成とした。
尚、止水装置1が扉枠10の内側開口11に設置され、かつ、扉9が閉じられた状態において、扉9の屋内側の面より突出して止水壁2の壁板部2aの壁面21aと接触する可能性のある突出物は、例えば、両開き扉9における一方の扉9Lと他方の扉9Rとの召合せ部、扉9の取っ手9N(レバーハンドル)、シリンダー、サムターン、プッシュプル錠等がある。
【0110】
即ち、止水壁2が、上述した、壁板部2aと、左側係止部6と、右側係止部7と、下側係止部8とを備え、壁板部2aの壁面21aの左端から左側係止部6までの長さ、壁面21aの右端から右側係止部7までの長さ、壁面21aの下端から下側係止部8までの長さが同じ長さに形成され、壁面21aの各端面から各係止部までの長さが、閉じられた状態の扉9の屋内側の面より突出する突出物の突出長さよりも長い構成の止水装置1とした。
換言すれば、図23図24に示すように、壁板部2aの壁面21aの左端縁より前側に左側係止部6まで延長するように設けられた左板部2b、壁板部2aの壁面21aの右端縁より前側に右側係止部7まで延長するように設けられた右板部2c、壁板部2aの壁面21aの下端縁より前側に下側係止部8まで延長するように設けられた下板部2dの前後方向の長さを、適切な長さに設定したことによって、扉枠10の内側開口11を塞ぐように設置された止水装置1の壁板部2aの壁面21aが、閉じられた状態の扉9の屋内側の面より突出する突出物と接触しない構成の止水壁2を備えた止水装置1とした。
【0111】
実施形態20によれば、左板部2b,右板部2c,下板部2dの前後方向の長さを長くし、壁板部2aの屋外側(前側)に面する壁面21aから、左側係止部6,右側係止部7,下側係止部8までの寸法(換言すれば、凹部底面となる壁面21aと左板部2bと右板部2cと下板部2dとで囲まれた凹部の深さ寸法)が、閉じられた状態の扉9の屋内側の面より突出する突出物の突出長さよりも十分に長くなるように構成された止水壁2を有した止水装置1としたので、止水装置1が扉枠10の内側開口11に取付けられ、かつ、扉9が閉じられた状態において、止水壁2の壁板部2aの壁面21aと扉9の屋内側の面より突出する突出物との干渉を回避できる。
【0112】
実施形態21
実施形態20で説明したように、止水壁2の前後方向の幅寸法を長くした場合、止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24の前後方向の幅寸法(以下、幅寸法Aという)が長くなる。
このように、止水壁2の幅寸法Aを長くした場合、当該止水壁2の幅寸法Aの長さが、扉枠10の左面12,右面13,下面14の前後方向の幅寸法(以下、幅寸法Bという)の長さよりも長くなる場合がある。即ち、図23図24においては、上述した幅寸法Aの長さが幅寸法Bの長さよりも短い場合を図示しているが、幅寸法Aの長さが幅寸法Bの長さよりも長い場合がある。
このような幅寸法Aよりも短い幅寸法Bに形成された扉枠10の内側開口11に設置する止水装置1としては、止水装置1が扉枠10の内側開口11に設置された状態において、扉枠10の左面12,右面13,下面14と対向する止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24の表面に水密維持手段3,4,5を存在させる必要がある。
【0113】
そこで、実施形態21においては、このように幅寸法Aの長さが幅寸法Bの長さよりも長い場合においても対応できるようにして、止水装置1の止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24と扉枠10の内側開口11の左面12,右面13,下面14との水密性能を維持できるようにするために、以下のような止水装置1とした。
即ち、水密維持手段3,4,5を、止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24における左側係止部6,右側係止部7,下側係止部8の近傍位置まで延在させた構成の止水装置1とした。
あるいは、水密維持手段3,4,5を、このような扉枠10の内側開口11の左面12,右面13,下面14と対向する止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24における左側係止部6,右側係止部7,下側係止部8の近傍位置にのみ設けた構成の止水装置1とした。
つまり、止水壁2が、壁板部2aと、左側係止部6と、右側係止部7と、下側係止部8とを備え、扉枠10の内側開口11の左面12と対向する止水壁2の左端面22における少なくとも左側係止部6の近傍位置、及び、扉枠10の内側開口11の右面13と対向する止水壁2の右端面23における少なくとも右側係止部7の近傍位置、及び、扉枠10の内側開口11の下面14と対向する止水壁2の下端面24における少なくとも下側係止部8の近傍位置に、それぞれ、水密維持手段3,4,5が設けられた止水装置1とした。
【0114】
また、この場合、水密性能をより向上させるために、止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24における左側係止部6,右側係止部7,下側係止部8の近傍位置に設ける水密維持手段3,4,5としては、例えば,図4(a),図4(b),図15に示した水密性能向上手段としての傾斜面3a,4a,5aを持つ形状の水密維持手段としたり、図4(c),図4(d),図14図24に示した水密性能向上手段としての突片3a,4a,5aを持つ形状の水密維持手段とすることが好ましい。
【0115】
以上説明したように、実施形態21によれば、幅寸法Aの長さが幅寸法Bの長さよりも長い場合においても対応できて、水密維持手段3,4,5により、止水壁2の左端面22,右端面23,下端面24と扉枠10の左面12,右面13,下面14との水密性能を維持できる止水装置1を提供できる。
【0116】
実施形態22
例えば、図23図24に示すように、扉枠10において、扉9の開閉側(つまり扉枠10の前側)の枠周囲に形成された周溝10aには、通常、扉9と扉枠10とを直接接触させないようにし、かつ、扉9の内側面の周囲と扉枠10との密着性を確保するために、「エアタイトゴム」等と呼称されるクッション材10bが設けられている。
このため、水密維持手段3,4,5の前端3e,4e,5eと左側係止部6,右側係止部7,下側係止部8とを接触させたり、水密維持手段3,4,5の前端3e,4e,5eと左側係止部6,右側係止部7,下側係止部8との間に適切な空間を設けない場合には、扉9を閉じた際に、クッション材10bが潰れて、クッション材10bの一部が、戸当り面16,17,18を乗り越えて水密維持手段3,4,5の前端3e,4e,5eと接触する可能性がある。このように、クッション材10bの一部と水密維持手段3,4,5とが接触した場合、接触したクッション材10bの一部と水密維持手段3,4,5との間に水路となる隙間が形成されて、水密維持手段3,4,5による水密性能が損なわれる可能性がある。
そこで、図23図24に示すように、水密維持手段3,4,5の前端3e,4e,5eと左側係止部6,右側係止部7,下側係止部8との間に、適切な隙間、即ち、干渉除け隙間3s,4s,5sを設けた構成とした。
即ち、水密維持手段3,4,5における左側係止部6,右側係止部7,下側係止部8側の一端である前端3e,4e,5eと、左側係止部6,右側係止部7,下側係止部8との間に、水密維持手段3,4,5とクッション材10bとの干渉を防止するための干渉除け隙間3s,4s,5sを設けた構成とした。
つまり、扉枠10が、扉9の開閉側の枠周囲に形成された周溝10aに、扉9と扉枠10とを直接接触させないようにし、かつ、扉9の内側面の周囲と扉枠10との密着性を確保するためのクッション材10bを備えている場合においては、各係止部6,7,8の近傍位置に設けられた水密維持手段3,4,5と各係止部6,7,8との間には、扉9を閉じた際に変形したクッション材10bの一部と水密維持手段3,4,5との干渉を防止するための干渉除け隙間3s,4s,5sが設けられた構成の止水装置1とした。
実施形態22に係る止水装置1によれば、扉9を閉じた際の扉枠10のクッション材10bと止水装置1の水密維持手段3,4,5との干渉を防止でき、水密性能が損なわれてしまうような事態を回避できるようになる。
【0117】
実施形態23
扉枠10,止水装置1の製造誤差、即ち、公差によって、左の水密維持手段3と扉枠10の左面12との間、又は、右の水密維持手段4と扉枠10の右面13との間に、隙間が発生して、左の水密維持手段3と扉枠10の左面12との水密性能、又は、右の水密維持手段4と扉枠10の右面13との水密性能が十分に維持されないとともに、扉枠10の左面12と右面13とに挟み込まれて固定された状態となるように止水装置1を内側開口11に確実に設置することができない可能性がある。
そこで、図25図26図27に示すように、左板部2bを扉枠10の内側開口11の左面12に向けて押圧するため、又は、右板部2cを扉枠10の内側開口11の右面13に向けて押圧するために、押圧機構6A,6Aを備えた構成の止水装置1とした。
即ち、止水壁2が、壁板部2aと、左側係止部6と、右側係止部7と、下側係止部8とを備え、壁板部2aの壁面21aの左端から左側係止部6までの左板部2bにおいて扉枠10の内側開口11の左面12と対向する板面である左端面22には左側の水密性維持部材3が設けられ、壁板部2aの壁面21aの右端から右側係止部7までの右板部2cにおいて扉枠10の内側開口11の右面13と対向する板面である右端面23には右側の水密性維持部材4が設けられ、壁板部2aの壁面21aの下端から下側係止部8までの下板部2dにおいて扉枠10の内側開口11の下面14と対向する板面である下端面24には下側の水密性維持部材5が設けられた構成の止水装置1において、止水壁2の扉側に位置される壁面21aに、左板部2cを扉枠10の左面12に向けて押圧するための押圧機構6Aと、右板部2cを扉枠10の右面13に向けて押圧するための押圧機構6Aとを備えた構成の止水装置1とした。
【0118】
右板部2cを扉枠10の右面13に向けて押圧するための押圧機構6Aは、図26図27に示すように、取付ベース6aと押圧部材とを備えて構成される。
取付ベース6aは、例えばL字アングルブラケットにより構成され、L字の一方の平板の板面と右板部2cの板面とが平行に対向するように、L字の他方の平板が壁面21aにねじ等の固定部材6bで固定される。
押圧部材は、L字アングルブラケットの一方の平板を貫通するように形成された図外のボルト通し孔と、ボルト6cとナット6dとを備えて構成される。ナット6dは、当該ナット6dのねじ孔が、左面12と平行に対向するL字アングルブラケットの一方の平板の板面に形成されたボルト貫通孔と連続するように、当該一方の平板の板面に溶接等の固定手段により固定されている。
そして、ボルト6cが図外のボルト貫通孔及びナット6dのねじ孔を貫通して、ボルト6cの先端により形成された押圧端6eが、右板部2cに近付く方向、及び、右板部2cから離れる方向に進退可能にように構成されている。
尚、左板部2cを扉枠10の左面12に向けて押圧するための押圧機構6Aは、取付ベース6aを構成するL字アングルブラケットのL字の一方の平板の板面と左板部2bの板面とが平行に対向するように、L字の他方の平板が壁面21aにねじ等の固定部材6bで固定される。そして、ボルト6cが図外のボルト貫通孔及びナット6dのねじ孔を貫通して、ボルト6cの先端により形成された押圧端6eが、左板部2bに近付く方向、及び、左板部2bから離れる方向に進退可能にように構成されている。
また、図25に示すように、押圧機構6Aは、左板部2bや右板部2cの上下方向に沿って所定の間隔を隔てて複数個設けるようにすることが好ましい。当該構成とすれば、複数の押圧機構6A,6A…を用いて、左板部2bの全体や右板部2cの全体をほぼ均等に押圧することができるようになるので、好ましい。
【0119】
実施形態23に係る止水装置1によれば、扉枠10,止水壁1の公差によって、左の水密維持手段3と扉枠10の左面12との間、又は、右の水密維持手段4と扉枠10の右面12との間に隙間が発生してしまうような場合であっても、押圧機構6Aにより、左板部2bを扉枠10の左面12に向けて押圧したり、右板部2cを扉枠10の左面12に向けて押圧することによって、左の水密維持手段3と扉枠10の左面12との密着性、又は、右の水密維持手段4と扉枠10の右面13との密着性を向上させることができるようになる。
従って、扉枠10,止水壁1の公差に対応できて、左の水密維持手段3と扉枠10の左面12との水密性能、及び、右の水密維持手段4と扉枠10の右面13との水密性能を十分に維持できるようになり、扉枠10の左面12と右面13とに挟み込まれて固定された状態となるように内側開口11に確実に設置できる止水装置1を提供できるようになる。
つまり、実施形態23によれば、扉枠10,止水壁1の公差に対応して、水密性能維持効果、及び、設置確実性を向上できる止水装置1を提供できるようになる。
また、水密維持手段3,4の経年劣化による水密性能維持効果の低下の影響を軽減できるという効果も得られる。
【0120】
尚、図27に示すように、ボルト6cの先端側に、ボルト6cの先端により形成された押圧端6eの面積よりも大径の押圧端(押圧面)6eを有した面圧部材6fを設けるようにすれば、押圧端(押圧面)6eにより、左板部2bの全体、又は、右板部2cの全体を、一様に押圧しやすい構造となるため、水密性能維持効果、及び、設置確実性をより向上できるようになる。
【0121】
また、当該面圧部材6fを備えた構成においては、ボルト6cを取付ベース6aに固定した状態として、当該面圧部材6f自体が、左板部2bや右板部2cに近付く方向、及び、左板部2bや右板部2cから離れる方向に進退可能となるように、ボルト6cの先端側に当該面圧部材6fが取付けられた構成としてもよい。
【0122】
実施形態24
図28図29に示すように、止水装置1の設置作業において正確かつ確実な設置作業を支援するための支援部、及び、下側係止部8及び下板部2dを補強する補強装置としても機能する設置作業支援部99を備えた構成の止水装置1とした。
即ち、止水壁2が、壁板部2aと、左側係止部6と、右側係止部7と、下側係止部8とを備え、かつ、壁板部2aの壁面21aの下端から下側係止部8まで下板部2dの上面には、止水装置1の設置作業を支援するための設置作業支援部99を備えた構成の止水装置1とした。
【0123】
設置作業支援部99は、例えば、硬質ポリ塩化ビニール(H-PVC)等の合成樹脂、ゴム等を用いて形成される。
設置作業支援部99は、下板部2dの上面において、図28図29(b)に示すように、左板部2bと右板部2cとの間の左右方向の全長に亘って設けられたり、図29(c)に示すように、左板部2bと右板部2cとの間の左右方向に沿って間欠的に設けられた構成とすればよい。
設置作業支援部99は、例えば、下板部2dの上面と対向する下面99aと、当該下面99aの後端縁より立ち上がるように延長して壁板部2aの前側の壁面21aと対向する背面99bと、当該背面99bの上端縁と下面99aの前端縁とを繋ぐ傾斜面99sとを備えた断面直角三角形状の左右方向に長い棒状部材により構成される。
傾斜面99sは、例えば、傾斜方向に沿って凹凸を繰り返す凹凸面により形成される。
そして、設置作業支援部99は、例えば、対向する下面99aと下板部2dの上面とが接着剤等で接着されるとともに、対向する背面99bと壁板部2aの前側の壁面21aとが接着剤等で接着されたことにより、止水壁2と一体となった構成となっている。尚、対向する下面99aと下板部2dの上面とだけを接着剤等で接着してもよいし、対向する背面99bと壁板部2aの前側の壁面21aとだけを接着剤等で接着するようにしてもよい。
【0124】
設置作業支援部99を備えない構成の止水装置1の場合、当該止水装置1を内側開口11に設置する際には、左の水密維持手段3と扉枠10の左面12との密着性、及び、右の水密維持手段4と扉枠10の右面13との密着性が高いような場合、止水装置1を手で押下するだけでは、図30(a)に示すように、力Fが下方に効果的に加わり難く、当該止水装置1の下端側が所定の位置に正確に設置されない可能性がある。例えば、止水装置1の下側の水密維持手段5と扉枠10の下面15とが密着していない状態に設置され、水密性能を維持できない可能性がある。
一方、実施形態24に係る設置作業支援部99を備えた構成の止水装置1によれば、当該止水装置1を内側開口11に設置する際に、作業者が、図30(b)の白抜き矢印Fで示すように、設置作業支援部99を足で踏み込むことによって、当該止水装置1を押し下げる力が当該止水装置1に対して確実に伝わるようになるため、当該止水装置1の下端側が所定の位置に正確に設置されるようになる。即ち、止水装置1の下側の水密維持手段5と扉枠10の下面15とが密着した状態に設置され、水密性能を十分に発揮できるようになる。
つまり、実施形態24に係る止水装置1によれば、扉枠1の内側開口11に対する止水装置1の正確な設置作業を、確実かつ容易に行えるようになる。
【0125】
また、設置作業支援部99を備えない構成の止水装置1の場合、図30(c)の矢印Dで示すように、当該止水装置1を何らかの原因に基づいて、地面、床面、置台の面等の面S上に落下させてしまった場合、下側係止部8及び下板部2dが曲がってしまったりして損傷を受けてしまう可能性がある。
一方、実施形態24に係る設置作業支援部99を備えた構成の止水装置1によれば、図30(d)の矢印Dで示すように、当該止水装置1を面S上に落下させてしまった場合、設置作業支援部99が下側係止部8及び下板部2dの補強部として機能するので、下側係止部8及び下板部2dが損傷を受け難い止水装置1を提供できるようになる。
【0126】
尚、本発明に係る止水装置1においては、上述した各実施形態1乃至実施形態24の構成を2つ以上組み合わせて構成された止水装置1としてもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0127】
1 止水装置、2 止水壁、2a 壁板部、2t 上板(止水壁の上端部)、
2m 形材、2A;2C 左側止水壁、2B;2D 右側止水壁、2H 取っ手、
3,4,5 水密維持手段、3s,4s,5s 干渉除け隙間、6,7,8 係止部、
6A 押圧機構、10 扉枠、10a 周溝、10b クッション材、
11 扉枠の内側開口(開口部)、12 内側開口の左面、13 内側開口の左面、
14 内側開口の下面、16,17,18 戸当り面、22 止水壁の左端面、
23 止水壁の右端面、24 止水壁の下端面、31 押圧手段、
40;50 支持機構、60 結合手段、61 固定楔、62 嵌入楔、
99 設置作業支援部。
図1
図2
図3
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図5
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図28
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