(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055322
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】遠心分離器ボウル及び血液遠心分離システム
(51)【国際特許分類】
B04B 7/08 20060101AFI20220331BHJP
B04B 1/02 20060101ALI20220331BHJP
B04B 11/02 20060101ALI20220331BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20220331BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B04B7/08
B04B1/02
B04B11/02
G01N33/48 C
G01N1/10 H
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021143816
(22)【出願日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】63/083,866
(32)【優先日】2020-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】110103693
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】515348699
【氏名又は名称】笙特科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】梁 振盛
(72)【発明者】
【氏名】梁 道
(72)【発明者】
【氏名】柯 新泰
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
4D057
【Fターム(参考)】
2G045BA08
2G045BB10
2G052AA30
2G052DA15
2G052DA22
2G052ED17
2G052JA06
4D057AA03
4D057AB01
4D057AC01
4D057AD01
4D057AE02
4D057AF03
4D057BA01
4D057BC11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた分離効果を得ることができる遠心分離器ボウル及び血液遠心分離システムを提供する。
【解決手段】遠心分離器ボウルは、試料中の第1成分と第2成分を分離するように構成されている。遠心分離器ボウルは、殻110と、芯部120と、分離キャビティ130と、ステータヘッド140とを含む。殻は、上殻部分、中殻部分、下殻部分、及び底殻部分を含む。芯部は、殻の中に配置されている。分離キャビティは、下殻部と芯部との間に配置されている。ステータヘッドは、殻上に配置され、入力管141と出力管142を含む。試料は、入力管を介して分離キャビティに入る。殻部と芯部が回転軸Rを中心に回転すると、分離キャビティ内の試料は慣性力の大きさに応じて第1成分と第2成分に分離される。さらに、上記の遠心分離器ボウルを含む血液遠心分離システムを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の第1成分と第2成分を分離するように構成された遠心分離器ボウルであって、
上殻部、中殻部、下殻部、及び底殻部を有し、前記中殻部は前記上殻部と下殻部を連結し、前記下殻部は前記中殻部と前記底殻部を連結する殻と、、
前記殻の中に配置された芯部と、
前記下殻部分と前記芯部の間に配置された分離キャビティと
前記殻上に配置され、入力管と出力管を有するステータヘッドと、
を備え、
前記試料が入力管を介して前記分離キャビティに入り、
前記殻と前記芯部が前記回転軸を中心に回転すると、前記試料は、前記分離キャビティ内において慣性力の大きさに応じて前記第1成分と前記第2成分に分離される、
遠心分離器ボウル。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心分離器ボウルであって、前記分離キャビティは、前記芯部、前記中殻部、前記下殻部、及び前記底殻部によって囲まれるように定義されている、。
【請求項3】
請求項1に記載の遠心分離器ボウルであって、前記第1成分の第1慣性力が前記第2成分の第2慣性力よりも大きいとき、前記の分離された第1成分は前記芯部から離れ、前記の分離された第2成分は前記芯部に隣接する、遠心分離器ボウル。
【請求項4】
請求項1に記載の遠心分離器ボウルであって、
第1角度が前記芯部の外側側面と前記回転軸に平行な第1方向との間に第1存在し、
第2角度が前記下殻部の外側表面と前記第1方向との間に存在し、
前記第2角度は前記第1角度よりも大きい、
遠心分離器ボウル。
【請求項5】
請求項4に記載の遠心分離器ボウルであって、
前記第1角度は90度未満で、
前記第2角度は90度未満である、
遠心分離器ボウル。
【請求項6】
請求項4に記載の遠心分離器ボウルであって、
第3角度が前記底部殻部の内面と前記第1方向との間に存在し、
前記第3角度が90度より大きい、
遠心分離器ボウル。
【請求項7】
請求項4に記載の遠心分離器ボウルであって、
前記中殻部の外周面と前記第1方向との間に第4角度が存在し、
前記第4角度は90度未満で、
前記第4角度は前記第2角度よりも大きい、
遠心分離器ボウル。
【請求項8】
請求項1に記載の遠心分離器ボウルであって、
前記分離キャビティは凹部領域を有し、
前記凹部領域は、前記下部殻部と前記下殻部との接続時に形成される輪郭によって画定される、
遠心分離器ボウル。
【請求項9】
請求項1に記載の遠心分離器ボウルであって、
前記試料は血液で、
前記第1成分は赤血球を含み、
前記第2成分は血小板及び血漿を含む、
遠心分離器ボウル。
【請求項10】
請求項1に記載の遠心分離器ボウルを備える血液遠心分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心分離器ボウル及び血液遠心システムに関し、特に、血液を自動的に分離する、すなわちより優れた分離効果を得ることができる遠心分離器ボウル及び血液遠心システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液から血漿を実質的に分離する方法は、以下のステップを含む。8~10mlの血液試料が採取され、実験室の試験管に加えられる。次に、遠心分離が実験用遠心分離機内で行われ、血漿、血小板、赤血球が試験管内の上層と下層に分離される。遠心分離後、上層の血漿・血小板は医療従事者によって手作業で採取される。具体的には、採取作業が完全に手作業であるため、採取した血小板の濃度及び採取量を管理することができず、血液が外部から汚染されることを防ぐことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、血液を自動的に分離する、すなわちより優れた分離効果を得ることができる遠心分離器ボウル及び血液遠心分離システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示による遠心分離器ボウルは、試料中の第1成分と第2成分とを分離するように構成される。当該遠心分離器ボウルは、殻と、芯部と、分離キャビティと、ステータヘッドとを含む。前記殻は、上殻部と、中殻部と、下殻部と、底殻部とを含む。前記中殻部は、前記上殻部と前記下殻部とを連結し、前記下殻部は、前記中殻部と前記底殻部とを連結する。前記芯部は、前記殻の中に配置されている。前記分離キャビティは、前記下殻部と前記芯部の間に配置されている。前記ステーターッドは、前記殻上に配置され、入力管と出力管をステーターッドは、前記入力管を介して前記分離キャビティに入る。前記殻と前記芯部が回転軸を中心に回転すると,前記分離キャビティ内の前記試料は、慣性力の大きさに応じて、前記第1成分と前記第2成分に分離される。
【0005】
本開示の一実施形態では、分離キャビティは、前記芯部、前記中殻部、前記下殻部、及び前記底殻部によって囲まれていると定義される。
【0006】
本開示の一実施形態では、前記第1成分の第1慣性力が前記第2成分の第2慣性力よりも大きい場合、前記の分離した第1成分は前記芯部から離れ、前記の分離した第2成分は前記芯部に隣接する。
【0007】
本開示の一実施形態では、前記芯部の外周側面と前記回転軸に平行な第1方向との間に第1角度が存在し、前記下殻部の外周側面と前記第1方向との間に第2角度が存在し、前記第2角度は前記第1角度よりも大きい。
【0008】
本開示の一実施形態では、前記第1角度は90度未満であり、前記第2角度は90度未満である。
【0009】
本開示の一実施形態では、前記底殻部の内面と前記第1方向との間に第3角度が存在し、前記第3角度は90度よりも大きい。
【0010】
本開示の一実施形態では、前記中殻部の外周面と前記第1方向との間に第4角度が存在し、前記第4角度は90度未満であり、前記第4角度は前記第2角度よりも大きい。
【0011】
本開示の一実施形態では、前記分離キャビティは凹部領域を有し、前記凹部領域は、前記下殻部と前記底殻部との接続時に形成される輪郭によって画定される。
【0012】
本開示の一実施形態では、前記試料は血液であり、前記第1成分は赤血球を含み、前記第2成分は血小板及び血漿を含む。
【0013】
本開示による血液遠心分離システムは上記遠心分離器ボウルを含む。
【発明の効果】
【0014】
以上のことから、本開示の一実施形態に係る遠心分離器ボウル及び血液遠心分離装置では、前記試料中の前記第1成分と前記第2成分の最初の力の大きさの違いにより、前記殻と前記芯部が前記回転軸上を回転する際に、前記慣性力の大きさに応じて、前記試料は前記分離キャビティ内で前記試料を第1成分と前記試料を第2成分に自動的に分離され得る。したがって、本開示の一実施形態に係る遠心分離器ボウル及び血液遠心分離装置は、血液を自動的に分離するという効果を得ることができる。
【0015】
前述の内容をより理解しやすくするために、図面と共にいくつかの実施形態を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の一実施形態による遠心分離器ボウルの概略断面図である。
【
図2】A~Dは、
図1の遠心分離器ボウルを用いた試料の分離を示す模式的な断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る血液遠心分離装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本開示の一実施形態に係る遠心分離器ボウルの概略断面図である。
図2A~
図2Dは、
図1の遠心分離器ボウルを用いた試料の分離を示す概略断面図である。まず
図1を参照すると、本実施形態による遠心分離器ボウル100は、殻110と、芯部120と、分離キャビティ130と、ステータヘッド140とを含む。芯部120は、殻110の中に配置され、分離キャビティ130は、殻110と芯部120との間に配置され、ステータヘッド140は、殻110の上に配置される。
【0018】
具体的には、本実施形態では、殻110は、上殻部111、中殻部112、下殻部113、底殻部114、開口115、及び内部空間116を含む。中殻部112は上殻部111と下殻部113とを連結し、下殻部113は中殻部112と底殻部114とを連結している。中殻部112は、上殻部111との接合部から、例えば、回転軸Rから実質的に離れる方向に外側に延びて、下殻部113にさらに接続してもよい。回転軸Rは、殻110の中心に位置する仮想回転中心であり、遠心分離器ボウル100の遠心分離中に、殻110と芯部120とが回転軸R上で一緒に回転できるようになっている。したがって、殻110と芯部120は、遠心分離器ボウル100内の移動体とみなすことができる。
【0019】
また、本実施形態では、殻110の形状は、例えば、ベル型であってもよいが、これに限定されない。開口115は、殻110の上部に配置され、上殻部111によって囲まれている。内部空間116は、上殻部111、中殻部112、下殻部113、及び底殻部114によって囲まれ、中空部を形成している。開口115は、内部空間116と連通していてもよい。
【0020】
本実施形態では、芯部120は、殻110の内部空間116に配置されている。芯部120は、外側側面部121と、外側底面部122と、中央スリーブ123とを有する。中央スリーブ123は、芯部120を貫通している。開口115から離れた中央スリーブ123の一端は、芯部120の外底面122を貫通しており、その端部は殻110の底殻部114に近づけることができる。中央スリーブ123は、底殻部114に接触しない。本実施形態では、芯部120の外側側面部121と、回転軸Rに平行な第1方向Yとの間の含まれる角度は、第1角度θ1である。第1角度θ1は、例えば、0度よりも大きくて90度よりも小さいが、これに限定されない。
【0021】
また、本実施形態では、芯部120と殻110との間に複数の空洞が存在しており、これらの空洞は、分離キャビティ130、第1流路131、及び第2流路132を少なくとも含んでいる。分離キャビティ130は、殻110の下殻部113と芯部120との間に配置されている。一部の実施形態では、分離キャビティ130は、芯部120、中殻部112、下殻部113、及び下殻部114によって囲まれていると定義されてもよい。本実施形態では、分離キャビティ130は、凹部領域130aを有する。凹部領域130aは、芯部120から離れており、下殻部113に隣接している。凹部領域130aは、下殻部113と底殻部114との接続時に形成される輪郭によって画定されてもよい。本実施形態では、第1流路131は、芯部120の外底面122と底殻部114の内面114aとの間に配置されている。また、第2流路132は、芯部120と殻110の中殻部112との間に配置されている。第1流路131は分離キャビティ130と連通しており、第2流路132も分離キャビティ130と連通している。
【0022】
さらに、本実施形態では、下殻部113の外周面113aと第1方向Yとの間の含まれる角度は、第2角度θ2である。第2角度θ2は、例えば、0度よりも大きくて90度よりも小さいが、これに限定されない。また、第2角度θ2は、例えば、第1角度θ1よりも大きいが、これに限定されない。本実施形態では、底殻部114の内周面114aと第1方向Yとの間の含まれる角度は、第3角度θ3である。第3角度θ3は、例えば、90度よりも大きくて180度よりも小さいが、これに限定されない。本実施形態では、中殻部112の外周面112aと第1方向Yとの間の含まれる角度は、第4角度θ4である。第4角度θ4は、例えば、0度よりも大きく90度よりも小さいが、これに限定されない。また、第4角度θ4は、例えば、第2角度θ2よりも大きい。
【0023】
本実施形態では、ステータヘッド140は、殻110の上殻部分111に配置されている。遠心分離器ボウルステータヘッド離中、ステータヘッド140は、回転軸R上で回転せずに静止しており、ステータヘッド140は、入力管141、出力管142、シールガスケット143、殻カバー144、及び第3流路145を含んでいる。具体的には、入力管141は、殻110の開口115を通過して、芯部120の中央スリーブ123に延びて接続されてもよい。出力管142は、入力管141に巻き付けられ、殻110の開口115を通過して、第3流路145に接続される。なお、第3流路145は、第2流路132に接続されていてもよい。シールガスケット143は、上殻部111に接触するように配置され、出力管142によって露出した開口115の一部を覆う。殻カバー144は、シールガスケット143の周囲に巻き付けられている。
【0024】
以上、本実施形態の遠心分離器ボウル100の構造設計について説明した。次に、
図1と
図2A~
図2Dとを同時に参照しながら、本実施形態の遠心分離器ボウル100を用いて、試料200中の第1成分210と第2成分220とを自動的に分離する様子を説明する。
【0025】
まず、
図2Aを参照すると、試料200が入力管141を介して投入されることで、試料200が中央スリーブ123及び第1流路131を通過して、分離キャビティ130に入ることができる。本実施形態では、試料200は、例えば、血液等の液体試料であるが、これに限定されない。また、試料200が血液である場合、試料200に含まれる第1成分210は、例えば赤血球を含んでいてもよく、第2成分220は、例えば血小板や血漿を含んでいてもよいが、本開示はこれに限定されない。
【0026】
次に、
図2Bを参照すると、遠心分離器ボウル100の遠心分離が行われるので、殻110及び芯部120は回転軸R上を回転してもよく、このとき、分離キャビティ130内の試料200は、慣性力の大きさに応じて、第1成分210と第2成分220とに分離され得る。第1成分210の第1慣性力が第2成分220の第2慣性力よりも大きい場合、分離された第1成分210は芯部120から遠ざかり、分離された第2成分220は芯部120に隣接してもよい。
【0027】
具体的には、遠心分離器ボウル100の遠心分離中に、遠心力によって試料200中の第1成分210と第2成分220とに異なる慣性力が発生し、その結果、慣性力の方向に応じて第1成分210と第2成分220とが沈降・分離し得る。具体的には、遠心力の方向及び慣性力の方向は、回転軸R(または第1方向Y)に対して実質的に垂直であり、
図2Bにおける右側の分離キャビティ130については、遠心力の方向及び慣性力の方向は、例えば、第1方向Yに対して垂直な第2方向Xである。そして、第1成分210の密度が第2成分220の密度よりも大きいので、第1成分210の第1慣性力が第2成分220の第2慣性力よりも大きくなり、第1成分210の第1沈降速度が第2成分220の第2沈降速度よりも大きくなってもよい。さらに、第1構成要素210の第1慣性力は、第2構成要素220の第2慣性力よりも大きくてもよい(または、第1構成要素210の第1沈降速度は、第2構成要素220の第2沈降速度よりも大きくてもよい)ので。試料200中の第1成分210及び第2成分220は、分離キャビティ130内で自動的に2つの層に分離されてもよく、それにより、分離された第1成分210(第1層)は、芯部120から離れていてもよく(または、下殻部113に隣接していてもよい)、分離された第2成分220(第2層)は、芯部120に隣接していてもよい(または、下殻部113から離れていてもよい)。一部の実施形態では、分離された第1成分210は、分離キャビティ130の凹部領域130aに実質的に集中していてもよいが、これに限定されない。
【0028】
また、遠心分離器ボウル100の遠心分離時には、第3角度θ
3が90度よりも大きくてもよいので、第1流路131から分離キャビティ130に流れる試料200も、実質的に第1方向Yに向かって流れる第1流速を有してもよい。
図2Bに示すように、下殻部113に隣接する第1成分210の第1沈降速度(または第1慣性力)が第1流速よりも大きいため、分離された第1成分210は、第1沈降速度の方向(すなわち、第1慣性力の方向)に沈降して凹部領域130aに集中し、第2流路132には容易に進入しない。逆に、芯部120に隣接する第2成分220の第2沈降速度(又は第2慣性力)は第1流速よりも小さいため、分離した第2成分220は第2流速の方向に流れて第2流路132に入る。
【0029】
なお、本実施形態では、第1成分210が下殻部113に隣接し、第2角度θ2が第1角度θ1よりも大きくなっている場合があるため、第1成分210自体の第2流速が試料200の流れの第1流速よりもさらに小さく、第1沈降速度(または第1慣性力)が第2流速よりもさらに大きくなっていると考えられる。したがって、分離された第1成分210は、第1沈降速度の方向(すなわち、第1慣性力の方向)に沈降して凹部領域130aに集中しやすくなり、第2流路132に入りにくくすることができる。つまり、第2角度θ2が第1角度θ1よりも大きくてもよいので、下殻部113に隣接する第1成分210が第2流路132に向かって流れる第2流速がさらに低下し、それにより、第1成分210が凹部領域130aに集中しやすくなると考えられる。したがって、上記設計により、第1成分210と第2成分220とのより良好な分離効果を得ることができる。
【0030】
次に、
図2Cを参照して、遠心分離器ボウル100の遠心分離中に、試料200の投入が継続されるので、分離された第2成分220は、第2流路132に入り、第3流路145及び出力管142を通過して出力され、回収され得る。第1角度θ
1は0度より大きく90度より小さくてもよいので、分離された第2成分220はほとんど第2流路132に入ることができる。また、第4角度θ
4は、第2角度θ
2よりも大きく、90度未満であってもよいので、中殻部112に第2流路132を形成することができ、第2成分220が第2流路132に入ることに対する抵抗を低減することができる。
【0031】
次に、
図2Dを参照して、第2成分220の採取が完了するか、または、第1成分210が出力管142に流れることが検出されると、試料200の投入が停止され、遠心分離が停止されてもよい。
【0032】
以下、他の実施形態について説明する。なお、本明細書では、前述の実施形態の参照数字及び内容の一部が以下の実施形態に適用されることに留意して欲しい。また、同一の参照数字を用いて同一または類似の要素を表し、同一の技術内容の説明は省略する。省略した部分の説明については、前記実施形態を参照することができるので、以下の実施形態では繰り返さないものとする。
【0033】
図3は、本開示の一実施形態に係る血液遠心分離システムの概略断面図である。
図3を参照すると、本実施形態の血液遠心分離システム10は、第1容器310と、第1管路320と、ポンプ330と、第2管路340と、遠心分離器ボウル100と、第3管路350と、ベント360と、第2容器370とを含む。第1管路320は、第1容器310とポンプ330の入口側の端部とを接続している。第2管路340は、ポンプ330の出口端と、遠心分離器ボウル100の投入管とを接続する。 第3管路350は、遠心分離器ボウル100と第2容器370とを接続する。第1容器310は、60~100ミリリットル(ml)の血液230を保持するように構成されていてもよく、血液230は、赤血球231及び血小板を含む血漿232を含んでいてもよい。第2容器370は、血小板を含む血漿232を10~50ml採取するように構成されていてもよい。
【0034】
具体的には、例えば、血液遠心分離装置10は、以下のステップにより、血液230から血小板を含む血漿232を分離するように構成されている。 まず、ポンプ330を用いて、第1容器310内の血液230を、第1管路320及び第2管路340を介して、遠心分離器ボウル100に投入する。次に、遠心分離器ボウル100の遠心分離を2800~4500RPM(回転/分)で行い、血液230中の赤血球231と血小板を含む血漿232とを分離する。最後に、分離された血小板を含む血漿232は、第3管路350を介して第2容器370に出力される。
【0035】
また、本実施形態では、遠心分離器ボウル100が、血液230中の赤血球231と血小板を含む血漿232とを自動的に分離することができるので、本実施形態の血液遠心分離装置10は、第2容器370中の血小板を含む血漿232の濃度及び採取量を完全に自動制御することができる。また、遠心分離器ボウル100は、血液230中の赤血球231と血小板を含む血漿232とを自動的に分離することができるので、遠心分離器ボウル100を完全密閉型の遠心分離キットとして設計することができ、これにより、血液230が外部から汚染されることを防止することができる。回収された血小板を含む血漿232は、例えば、眼科疾患の治療に適用することができるが、これに限定されるものではない。
【0036】
以下、実験例を説明して、目的を達成するために本開示が採用する技術手段を説明する。なお、以下の例では、試料を血液としているが、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当業者であれば、本実施形態に開示された内容に基づいて、試料を他の液体試料に容易に置き換えることができる。
【0037】
[実験例]
【0038】
遠心分離器ボウルは、血液中の血漿を含む血小板を自動的に分離するのに用いられた。以下の表1に示すように、異なる容量、異なるヘマトクリット(HCT)の血液試料から、異なる遠心回転速度で血小板を含む血漿を分離することができる。また、表1には、採取した血漿(血小板を含む)の量と、血漿(血小板を含む)中の血小板の濃度の割合を示している。なお、割合とは、血液中の血小板濃度に対する採取した血漿(血小板含有)中の血小板濃度の比率を意味する。
【0039】
【0040】
表1の結果によると、遠心回転速度が4000±5%RPMの場合に比べて、遠心回転速度が3000±5%RPMの場合は、採取した血漿(血小板を含む)中の血小板濃度の割合が高くなっている。
【0041】
以上をまとめると、本開示の一実施形態に係る遠心分離器ボウル及び血液遠心分離装置では、試料中の第1成分と第2成分の初期力の大きさの違いにより、殻と芯部が回転軸上を回転する際に、慣性力の大きさに応じて、試料は分離キャビティ内で第1成分と第2成分に自動的に分離され得る。したがって、本開示の一実施形態に係る遠心分離器ボウル及び血液遠心分離装置は、血液を自動的に分離するという効果を得ることができる。また、第2角度が第1角度よりも大きくてもよいので、第2流路に向かって流れる第1成分の第2流速をさらに低下させることができ、第1成分が凹部に集中しやすくなると考えられる。したがって、第1成分と第2成分とのより良好な分離効果を得ることができる。
【0042】
本開示の範囲や精神から逸脱することなく、開示された実施形態に様々な修正や変形を加えることができることは、当業者には明らかであろう。前述の観点から、本開示は、以下の請求項及びその等価物の範囲内に入ることを条件に、修正及び変形を網羅することを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の遠心分離器ボウル及び血液遠心システムは、血漿成分の採取に適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10:血液遠心分離装置
100:遠心分離器ボウル
110:殻
111:上殻部
112:中殻部
112a:外周部
113:下殻部
113a:外面
114:底殻部
114a:内側表面
115:開口
116:内部空間
120:芯部
121:外周側表面
122:外底面
123:セントラル・スリーブ
130:分離キャビティ
130a:凹部領域
131:第1流路
132:第2流路
140:ステータヘッド
141:入力管
142:出力管
143:シーリングガスケット
144:殻カバー
145:第3流路
200:試料
210: 第1成分
220:第2成分
310:第1容器
320: 第1管路
330:ポンプ
340:第1管路
350:第3管路
360:ベント
370: 第2容器
R:回転軸
X:第2方向
Y: 第1方向
θ1:第1角度
θ2:第2角度
θ3:第3角度
θ4:第4角度
【外国語明細書】