(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055358
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】昇圧整流器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
H02M7/12 P
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021157191
(22)【出願日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】17/034,446
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504162361
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ヨンテク
(72)【発明者】
【氏名】クマール、ミシャ
(72)【発明者】
【氏名】サディレック、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】バルボサ、ピーター
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC01
5H006CC02
5H006CC08
5H006DA04
5H006DB01
5H006DB05
5H006DC02
5H006DC05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】単相入力電圧で動作する昇圧整流器及び非線形補償信号に応じて動作する制御回路を提供する。
【解決手段】単相入力電圧で動作する昇圧整流器300は、入力段305と、スイッチングコンバータ段310と、出力段320と、デカップリング段315と、制御回路350と、を備える。入力段は、第1端子及び第2端子と、第1入力フィルタコンデンサC
1及び第2入力フィルタコンデンサC
2と、を備える。スイッチングコンバータ段は、入力端子と、第1相端子及び第2相端子と、ダイオードD
1、D
2、D
3、D
4を含む整流回路と、昇圧インダクタL
1、L
2からなるインダクタ回路と、第1スイッチS
1及び第2スイッチS
2と、相出力コンデンサC
Rと、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相入力電圧で動作するように構成された昇圧整流器であって、
入力段と、スイッチングコンバータ段と、出力段と、デカップリング段と、制御回路とを備え、
前記入力段は、(i)前記単相入力電圧を受ける前記第1及び第2端子と、(ii)第1及び第2入力フィルタコンデンサとを備え、
前記スイッチングコンバータ段は、(a)前記入力段の前記第1及び第2端子に結合された入力端子と、(b)第1及び第2相端子とを有し、
前記スイッチングコンバータ段は、
(i)前記入力端子と前記第1及び第2相端子との間に結合された整流回路と、
(ii)前記入力端子と前記第1及び第2相端子との間に結合された第1及び第2昇圧インダクタを備えるインダクタ回路と、
(iii)直列接続された第1及び第2スイッチと、
(iv)前記第1及び第2相端子との間に接続された相出力コンデンサとを有し、
前記スイッチングコンバータ段の前記第1及び第2スイッチは、前記第1及び第2スイッチの間にコモン端子を備えており、前記コモン端子は、前記入力段の前記第1及び第2入力フィルタコンデンサによって、それぞれ前記入力段の前記第1及び第2端子に結合されており、
前記出力段は、前記相出力コンデンサに蓄積されたエネルギーを出力負荷へ伝達するように構成され、
前記デカップリング段は、前記スイッチングコンバータ段と前記出力段との間を高インピーダンスでデカップリングするように構成され、
前記制御回路は、(i)前記単相入力電圧の大きさと、(ii)前記出力負荷にかかる電圧、又は、前記出力負荷に流れる電流と、から得られる非線形補償信号に応じて前記第1及び第2スイッチを動作させるように構成される、昇圧整流器。
【請求項2】
請求項1に記載の昇圧整流器であって、
前記整流回路は、フルブリッジ構成で接続された第1、第2、第3、及び第4ダイオードで構成される、昇圧整流器。
【請求項3】
請求項1に記載の昇圧整流器であって、
前記第1及び第2昇圧インダクタは、それぞれ前記入力段の前記第1及び第2端子を前記整流回路へ接続する、昇圧整流器。
【請求項4】
請求項1に記載の昇圧整流器であって、
前記整流回路は、それぞれ前記入力段の前記第1及び第2端子を前記第1及び第2昇圧インダクタへ接続する、昇圧整流器。
【請求項5】
請求項1に記載の昇圧整流器であって、
前記出力段は、直列接続された第1及び第2出力コンデンサを備え、
前記第1及び第2出力コンデンサは、前記第1及び第2出力コンデンサの間にコモン端子を有し、
前記出力段の前記第1及び第2出力コンデンサの間の前記コモン端子と、前記スイッチングコンバータ段の前記第1及び第2スイッチの間の前記コモン端子とが接続される、昇圧整流器。
【請求項6】
請求項5に記載の昇圧整流器であって、
ブロッキングコンデンサを更に備え、
前記出力段の前記第1及び第2出力コンデンサの間の前記コモン端子と、前記スイッチングコンバータ段の前記第1及び第2スイッチの間の前記コモン端子とが、前記ブロッキングコンデンサによって接続される、昇圧整流器。
【請求項7】
請求項1に記載の昇圧整流器であって、
前記デカップリング段は結合インダクタを備える、昇圧整流器。
【請求項8】
請求項1に記載の昇圧整流器であって、
前記デカップリング段は、センタータップ付きの1次巻線を有するトランスを備え、
前記デカップリング段の前記1次巻線は、前記スイッチングコンバータ段の前記第1及びと第2スイッチとの間の前記コモン端子に接続されている、昇圧整流器。
【請求項9】
請求項1に記載の昇圧整流器であって、
前記デカップリング段は、1次巻線を有するトランスを備え、
前記デカップリング段の前記1次巻線は、前記スイッチングコンバータ段の前記第1及び第2相端子へ、共振型回路によって接続されている、昇圧整流器。
【請求項10】
請求項9に記載の昇圧整流器であって、
前記共振型回路は、1つ以上の共振型インダクタと1つ以上の共振型コンデンサを備える、昇圧整流器。
【請求項11】
請求項10に記載の昇圧整流器であって、
前記共振型回路は、前記スイッチングコンバータ段の前記第1及び第2相端子間に接続された直列接続された共振コンデンサを備え、前記直列接続された共振コンデンサは、前記トランスの前記1次巻線に結合されたコモン端子を有する、昇圧整流器。
【請求項12】
請求項1に記載の昇圧整流器であって、
前記スイッチングコンバータ段に直列接続された第3及び第4スイッチを更に備え、
前記第3及び第4スイッチは、前記第3及び第4スイッチの間にコモン端子を有し、
前記デカップリング段は、1次巻線を有するトランスを有し、
前記デカップリング段の前記1次巻線は、前記スイッチングコンバータ段の前記第1及び第2スイッチの間の前記コモン端子と、前記スイッチングコンバータ段の前記第3及び第4スイッチの間の前記コモン端子との間に接続されている、昇圧整流器。
【請求項13】
請求項12に記載の昇圧整流器であって、
共振型回路を更に備え、
前記共振型回路は、前記トランスの前記1次巻線に結合され、且つ、前記スイッチングコンバータ段の前記第1及び第2スイッチとの間の前記コモン端子と、前記スイッチングコンバータ段の前記第3及び第4スイッチとの間の前記コモン端子との間に結合される、昇圧整流器。
【請求項14】
請求項1に記載の昇圧整流器であって、
前記デカップリング段は、前記出力段の仮想グランドとなるセンタータップ付きの2次巻線を有するトランスを備える、昇圧整流器。
【請求項15】
請求項1に記載の昇圧整流器であって、
前記単相入力電圧の大きさは、前記単相入力電圧の2乗平均平方根の値を含む、昇圧整流器。
【請求項16】
請求項1に記載の昇圧整流器であって、
前記制御回路は、前記非線形補償信号に基づいて、前記第1及び第2スイッチの共通のスイッチング周期を決定する、昇圧整流器。
【請求項17】
請求項16に記載の昇圧整流器であって、
前記スイッチング周期は、前記非線形補償信号に基づいて電圧制御発振器を駆動する制御信号によって調整される、昇圧整流器。
【請求項18】
請求項17に記載の昇圧整流器であって、
前記制御信号は、前記非線形補償信号と、前記出力負荷にかかる前記電圧又は前記出力負荷に流れる前記電流に基づくフィードバック信号との積である、昇圧整流器。
【請求項19】
請求項1に記載の昇圧整流器であって、
前記制御回路は、前記昇圧整流器の入出力電圧から得られるフィードフォワード信号と、出力電圧フィードバック制御信号とを合成する、昇圧整流器。
【請求項20】
請求項1に記載の昇圧整流器であって、
非線形補償回路を更に備え、
前記非線形補償回路は、前記第1及び第2スイッチを動作させるために用いられる出力信号を生成するように、前記昇圧整流器の入出力電圧の両方から得られるフィードフォワード信号と、出力電圧フィードバック制御信号とを合成する、昇圧整流器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力率改善(PFC)を備えたフロントエンド整流器に関するものである。より具体的には、本発明は、ソフトスイッチングを備えた単相PFC整流器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空業界では、電力負荷と電源特性は、DO-160規格(https://www.rtca.org/content/publications)で規制されており、航空機用電力機器に対する厳しい高調波規制を規定している。さらに、最新の航空機用配電システムでは、搭載されている発電機の性能を向上させたり、搭載されている受動素子(例えば、トランスやフィルタ)を小型化したりするために、最大800Hzのライン周波数が使用されている。例えば、非特許文献1~3を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Technology for the more and all electric aircraft of the future, by P. Wheeler, published in 2016 IEEE International Conference on Automatica (ICA-ACCA), Curico, 2016, pp. 1-5
【非特許文献2】Advances in AC-DC power conversion topologies for More Electric Aircraft, by B. Sarlioglu, published in 2012 IEEE Transportation Electrification Conference and Expo (ITEC), Dearborn, MI, 2012, pp. 1-6
【非特許文献3】Recent Advances of Power Electronics Applications in More Electric Aircrafts, by J. He et al., published in AIAA/IEEE Electric Aircraft Technologies Symposium (EATS), Cincinnati, OH, 2018, pp. 1-8
【非特許文献4】A Simple Digital DCM Control Scheme for Boost PFC Operating in Both CCM and DCM, by S. F. Lim et alius, published in IEEE Transactions on Industry Applications, vol. 47, no. 4, pp. 1802-1812, July-Aug. 2011
【非特許文献5】Digital control for improved efficiency and reduced harmonic distortion over wide load range in boost PFC rectifiers, by F. Chen et alius, published in IEEE Trans. Power Electron., vol. 25, no. 10, pp. 2683-2692, Oct. 2010
【非特許文献6】Dynamic Strategy for Efficiency Estimation in a CCM-Operated Front-End PFC Converter for Electric Vehicle Onboard Charger, by J. Lu et al., published in IEEE Transactions on Transportation Electrification, vol. 3, no. 3, pp. 545-553, Sept. 2017
【非特許文献7】Performance Evaluation of Bridgeless PFC Boost Rectifier s, by L. Huber, et al., in IEEE Transactions on Power Electronics, vol. 23, no. 3, pp. 1381-1390, May 2008
【非特許文献8】Review of GaN totem-pole bridgeless PFC, by Q. Huang et alius, published in CPSS Transactions on Power Electronics and Applications, vol. 2, no. 3, pp. 187-196, Sept. 2017
【非特許文献9】Design of GaN-Based MHz Totem-Pole PFC Rectifier, by Z. Liu et al., published in IEEE Journal of Emerging and Selected Topics in Power Electronics, vol. 4, no. 3, pp. 799-807, Sept. 2016
【非特許文献10】Application of GaN devices for 1 kW server power supply with integrated magnetics, by F. C. Lee et al., published in CPSS Transactions on Power Electronics and Applications, vol. 1, no. 1, pp. 3-12, Dec. 2016
【非特許文献11】GaN-based high frequency totem-pole bridgeless PFC design with digital implementation, by L. Xue et al., published in 2015 IEEE Applied Power Electronics Conference and Exposition (APEC), Charlotte, NC, 2015, pp. 759-766
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8687388号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0229225号明細書
【0005】
図1は、従来の電流連続モード(CCM)で動作するPFC昇圧整流器を示している。このPFC昇圧整流器は、約3~5kHzの帯域幅と低い全高調波歪(THD)を持つ能動入力電流成形制御方式により、50または60Hzのライン周波数に最適化されている。800Hzのライン周波数で同様の電流成形性能を達成するためには、電流成形制御の帯域幅を約50kHzにする必要がある。しかしながら、ハードスイッチングのCCMPFC昇圧整流器では、要求効率や熱性能を満たすように、スイッチング周波数が100kHz以下で動作するように設計されているものが多く、このような広帯域の電流成形制御方式を実現することは難しい。非特許文献4~7を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2は、従来のトーテムポール型ブリッジレスPFC整流器に、電流臨界モードで動作するワイドバンドギャップ(WBG)デバイスを搭載したものを示している。そのようなPFC整流器の例が非特許文献8~10に開示されている。
【0007】
PFC昇圧整流器で低THDを実現するためには、昇圧インダクタ電流とライン入力電圧の両方のゼロクロッシングを、大幅な遅延なく適切に検出する必要がある。しかしながら、既存の電流検出技術では、伝播遅延のある市販のゲートドライバや処理速度の限られたデジタルコントローラに適用した場合、ライン周波数800HzでTHD5%以下の性能を実現することはできない。非特許文献11を参照されたい。
【0008】
特許文献1(発明者Y. Jang et al. タイトル"Three-phase soft-switched PFC rectifier" 2014年4月1日登録)では、3相入力電圧アプリケーションで動作するPFC整流器を開示している。Jang氏の整流器は、広帯域で能動電流成形制御方式を追加することなく、高いライン周波数においても、3相入力電圧に対して良好な力率と低THDを実現している。このようなPFC整流器では、3相入力源のニュートラルラインがPFC整流器から絶縁されていると、3相入力接続部から電力を供給できても、入力電流に含まれるトリプレン高調波(3次高調波と3次高調波の奇数倍)が3相入力接続部を流れることができない。その結果、PFC整流器のトリプレン高調波電流は、入力フィルタコンデンサを循環し、入力ポートに反射しないため、PFC整流器に良好な力率が得られる。しかしながら、単相システムで動作する場合、ニュートラル接続部がなければ電力を供給することができない。従って、PFC整流器のトリプレン高調波電流が単相入力ポートのニュートラルラインを流れるため、単相システムの力率が悪くなる。
【0009】
本開示は、単相入力電圧で動作する昇圧整流器と、非線形補償信号に応じて動作する制御回路を提供する。昇圧整流器は、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)を行い、フィードフォワード信号を入力してスイッチング周波数を調整することで、低入力電流の全高調波歪(THD)を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、単相入力電圧で動作するように構成された昇圧整流器であって、入力段と、スイッチングコンバータ段と、出力段と、デカップリング段と、制御回路とを備え、前記入力段は、(i)前記単相入力電圧を受ける前記第1及び第2端子と、(ii)第1及び第2入力フィルタコンデンサとを備え、前記スイッチングコンバータ段は、(a)前記入力段の前記第1及び第2端子に結合された入力端子と、(b)第1及び第2相端子とを有し、前記スイッチングコンバータ段は、(i)前記入力端子と前記第1及び第2相端子との間に結合された整流回路と、(ii)前記入力端子と前記第1及び第2相端子との間に結合された第1及び第2昇圧インダクタを備えるインダクタ回路と、(iii)直列接続された第1及び第2スイッチと、(iv)前記第1及び第2相端子との間に接続された相出力コンデンサとを有し、前記スイッチングコンバータ段の前記第1及び第2スイッチは、前記第1及び第2スイッチの間にコモン端子を備えており、前記コモン端子は、前記入力段の前記第1及び第2入力フィルタコンデンサによって、それぞれ前記入力段の前記第1及び第2端子に結合されており、前記出力段は、前記相出力コンデンサに蓄積されたエネルギーを出力負荷へ伝達するように構成され、前記デカップリング段は、前記スイッチングコンバータ段と前記出力段との間を高インピーダンスでデカップリングするように構成され、前記制御回路は、(i)前記単相入力電圧の大きさと、(ii)前記出力負荷にかかる電圧、又は、前記出力負荷に流れる電流と、から得られる非線形補償信号に応じて前記第1及び第2スイッチを動作させるように構成される、昇圧整流器が提供される。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、非線形補償回路を備えたPFC電流不連続モード(DCM)昇圧整流器は、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)と5%以下の入力電流THDの両立を可能にする。非線形補償回路は、PFC DCM昇圧整流器の入力電圧と出力電圧の両方から得られるフィードフォワード信号と、出力電圧のフィードバック制御信号を合成したものである。広帯域で能動電流成形制御方式を追加することなく低THDが実現できるため、本発明のPFC昇圧整流器は、高周波ライン電圧アプリケーション(例えば、航空産業)に適している。結果として得られる効率は、高い力率(HPF)に繋がる。また、本発明のPFCDCM昇圧整流器は、コモンモードノイズが低減されている。
【0012】
本発明は、以下の詳細な説明と添付図面とを合わせて検討すれば、より理解される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、従来の電流連続モード(CCM)で動作するPFC昇圧整流器を示している。このPFC昇圧整流器は、約3~5kHzの帯域幅と低い全高調波歪(THD)を持つ能動入力電流成形制御方式により、50または60Hzのライン周波数に最適化されている。
【
図2】
図2は、従来のトーテムポール型ブリッジレスPFC整流器に、電流臨界モードで動作するワイドバンドギャップ(WBG)デバイスを搭載したものを示している。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態における、ZVSで動作する昇圧整流器300を示している。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態における、昇圧整流器300の動作を説明するための回路
図400を示している。
【
図5A】
図5Aは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2の共通のスイッチング周期の様々な区分における回路
図400の位相段を示している。
【
図5B】
図5Bは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2の共通のスイッチング周期の様々な区分における回路
図400の位相段を示している。
【
図5C】
図5Cは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2の共通のスイッチング周期の様々な区分における回路
図400の位相段を示している。
【
図5D】
図5Dは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2の共通のスイッチング周期の様々な区分における回路
図400の位相段を示している。
【
図5E】
図5Eは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2の共通のスイッチング周期の様々な区分における回路
図400の位相段を示している。
【
図5F】
図5Fは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2の共通のスイッチング周期の様々な区分における回路
図400の位相段を示している。
【
図5G】
図5Gは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2の共通のスイッチング周期の様々な区分における回路
図400の位相段を示している。
【
図5H】
図5Hは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2の共通のスイッチング周期の様々な区分における回路
図400の位相段を示している。
【
図5I】
図5Iは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2の共通のスイッチング周期の様々な区分における回路
図400の位相段を示している。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態における、
図5A~
図5Iのスイッチング周期中の様々な電力段の主要な波形を示している。
【
図7】
図7は、非線形補償信号が適用されていない(すなわち、乗算器364で非線形補償項2V
CR-V
AC,RMSsinωtを1に設定する)場合の、入力ライン電圧V
ACの正の半周期にわたる、(i)昇圧整流器300のピーク入力電流701および平均入力電流702、ならびに(ii)対応するスイッチング周波数f
Sを示している。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態における、非線形補償信号(すなわち、乗算器364で信号Gに非線形補償項2V
CR-V
AC,RMSsinωtを乗算する)を適用した場合の、入力ライン電圧V
ACの正の半周期にわたる、(i)昇圧整流器300のピーク入力電流703および平均入力電流704、ならびに(ii)対応するスイッチング周波数f
Sを示している。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態における、昇圧整流器900を示しており、この昇圧整流器900は、直列接続されたスイッチS
1とS
2との間のコモンノードNと、直列接続された出力コンデンサC
O1とC
O2との間の別のコモンノードとの間にブロッキングコンデンサC
Bを有する点で、
図3の昇圧整流器300とは異なる。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態における、昇圧整流器1000を示しており、この昇圧整流器1000は、フルブリッジ構成のダイオードD
1~D
4を含む整流回路の下流に昇圧インダクタL
1およびL
2を有する点で、
図3の昇圧整流器300とは異なる。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態における、絶縁された出力段にトランスTRを有する昇圧整流器1100を示している。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態における、フルブリッジ構成のスイッチS
1~S
4によって動作する昇圧整流器1200を示している。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態における、共振インダクタL
Rと共振コンデンサC
R1及びC
R2を備えたハーフブリッジの共振型回路において、スイッチS
1及びS
2によって動作する昇圧整流器1300を示している。
【
図14】
図14は、本発明の一実施形態における、共振インダクタL
Rと共振コンデンサC
Rを備えたフルブリッジの共振型回路において、スイッチS
1およびS
4によって動作する昇圧整流器1400を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施形態を参照しながら本発明をより具体的に説明する。以下の本発明の好ましい実施形態の説明は、例示及び説明のみを目的として本明細書に提示されることに留意されたい。網羅的であること、又は開示された正確な形式に限定されることは意図されていない。
【0015】
図3は、本発明の一実施形態における、ZVSで動作する昇圧整流器300を示している。
図3に示すように、昇圧整流器300は、入力段305、スイッチングコンバータ段310、デカップリング段315、制御回路350、出力段320を含む。入力段305は、単相入力電圧源V
ACと入力フィルタコンデンサC
1、C
2を含む。スイッチングコンバータ段310は、入力電圧源V
ACの一方の端子と整流回路の一方の入力端子との間にそれぞれ結合された昇圧インダクタL
1およびL
2を含む。本実施形態では、整流回路は、フルブリッジ整流器としてフルブリッジ構成で接続されたダイオードD
1、D
2、D
3、D
4を含む。また、スイッチングコンバータ段310は、フライングコンデンサC
R(本明細書では「相出力コンデンサ」とも呼ぶ)と、それらの間にコモン端子(電気的にはコモンノードN)を有する直列接続のスイッチS
1およびS
2を含む。フライングコンデンサC
Rと直列接続されたスイッチS
1およびS
2の両方が、スイッチングコンバータ段310の相端子(ここでは整流回路の出力端子)の両端に接続されている。入力フィルタコンデンサC
1及びC
2は、それぞれ入力電圧源V
ACの一方の端子と、スイッチS
1およびS
2との間のコモンノードNとの間に接続されている。デカップリング段315は、スイッチングコンバータ段310の出力端子のコモンモードノイズ、すなわちコンデンサC
Rの両端のコモンモードノイズを出力段320から分離する結合インダクタL
Cを含む。出力段320は、直列接続された出力フィルタコンデンサC
O1及びC
O2を含み、それらの間のコモン端子はノードNに電気的に接続されている。直列接続された出力フィルタコンデンサC
O1及びC
O2の間のコモンノードは、入力フィルタコンデンサC
1及びC
2の間のコモンノードに結合される。
図3では、整流器300の出力電圧V
Oが、抵抗Rで表される抵抗出力負荷の両端に印加されている。本実施形態では、昇圧整流器300は、PFC DCMの昇圧整流器である。
【0016】
入力フィルタコンデンサC1及びC2は、入力電圧源VACのピークと谷との間の中間電圧(例えば、入力電圧源VACの振幅の1/2)をコモンノードNに供給する。この構成では、コモンポイントNの電圧は、昇圧インダクタL1およびL2の2つの電流を分離する。すなわち、インダクタL1の電流は、コンデンサC1の両端にかかる相電圧VANにのみ依存し、インダクタL2の電流は、コンデンサC2の両端にかかる相電圧VBNにのみ依存する。本実施形態では、相電圧VANおよびVBNは、実質的に等しい大きさであるが、極性は反対である。具体的には、入力電圧源VACの正の半周期の間にスイッチS1を閉じると、入力フィルタコンデンサC1は、直列接続されたインダクタL1とスイッチS1に電流を流す。同様に、入力電圧源VACの負の半周期の間にスイッチS2を閉じると、入力フィルタコンデンサC2は、直列接続されたインダクタL2とスイッチS2に電流を流す。スイッチS1を開くと、インダクタL1に蓄えられたエネルギーがフライングコンデンサCRへ送られる。同様に、スイッチS2を開くと、インダクタL2に蓄えられたエネルギーがフライングコンデンサCRへ送られる。
【0017】
各スイッチング周期の関連部分にわたって、コモンノードNの端子とフライングコンデンサCRの各端子との間の急激な電圧変化(すなわち、大きな電圧変化率(dV/dt))から生じる許容できないコモンモード電磁干渉(EMI)ノイズを低減するように、結合インダクタLCは,フライングコンデンサCRを出力段320から分離する。この構成では、出力コモンモードノイズは、スイッチS1、S2とフライングコンデンサCRを含む比較的小さな回路またはループに含まれるため、非常に低くなる。さらに、結合インダクタLCが出力段320とスイッチS1,S2との間のインピーダンスを提供することにより、複数の並列整流器の間での並列化やインターリーブ動作が可能となる(すなわち、複数のスイッチングコンバータ段を同一の出力段にデカップリング段で並列結合することができる)。
【0018】
図3は、フィードフォワード信号と出力電圧フィードバック制御信号を組み合わせた制御回路350のブロック図である。フィードフォワード信号は、PFC DCM昇圧整流器300の入力電圧と出力電圧の両方から得られる。フィードフォワード信号は、出力負荷とは無関係に、所定の方法で制御システムを操縦するように応答する。一方、フィードバック制御信号は、出力負荷に応じて制御システムを応答させる。一実施形態では、制御回路350は、(i)単相入力電圧の大きさ、及び、(ii)出力負荷にかかる電圧、又は、出力負荷に流れる電流から得られる非線形補償信号に応じて、スイッチS
1及びS
2を動作させるコントローラ及びゲートドライバ回路を含む。
【0019】
図3に示すように、制御回路350は、非線形補償回路355を含み、この非線形補償回路355は、スケーリングされた整流電圧k||V
AC||を提供するように、スケール及び整流回路361で入力電圧V
ACを受け取り、整流し、スケーリングする。そして、スケールされた整流電圧k||V
AC||は、出力電圧V
Oとスケール回路362からの出力から得られるスケールされた出力電圧2kV
Oから加算器363で減算される。加算器363は、電圧差k(2V
O-||V
AC||)を表す非線形補償項を提供する。そして、この非線形補償項は、乗算器364で、増幅器及び補償器360からの補償信号Gと乗算される。信号Gは、出力電圧V
Oに基づいてフィードバック制御信号から得られる。補償信号Gと非線形補償項の積(非線形制御信号)により、電圧制御発振器V
COが駆動され、スイッチS
1、S
2を制御するゲート信号が生成される。スイッチS
1とS
2のゲート信号は、非線形制御信号と、電圧制御発振器V
COの実質的に一定の利得との積に比例するスイッチング周期T
Sを持つ、デューティサイクルが約50%の交互の重なり合わないパルスである。このようにして、制御回路350は、PFC DCM昇圧整流器300において、能動電流成形制御方式を用いずに、低THDと望ましいHPFの両方を提供することができる。本実施形態では、非線形補償回路355は、制御回路350の一部であるコントローラに統合されている。一実施形態では、非線形補償回路355は、昇圧整流器300の入力電圧および出力電圧の両方から得られるフィードフォワード信号を出力電圧フィードバック制御信号と組み合わせて、出力信号を生成するように適合され、制御回路350は、非線形補償回路355の出力信号に応じて、スイッチS
1およびS
2を動作させるように適合されている。いくつかの実施形態では、非線形補償回路355は、コントローラに組み込まれていてもよいし、制御回路350の一部として組み込まれていてもよい。他のいくつかの実施形態では、非線形補償回路355と制御回路350を別々に設けてもよい。
【0020】
図4は、本発明の一実施形態における、PFC DCM昇圧整流器300の動作を説明するための回路
図400を示している。スイッチS
1とS
2は、ライン周波数よりもかなり高い共通のスイッチング周波数を持っているので、入力フィルタコンデンサC
1とC
2、フライングコンデンサC
R、および出力フィルタコンデンサC
O1とC
O2のリップル電圧は無視できると考えられ、これらにかかる電圧は、それぞれ一定の電圧V
AN、V
BN、V
CR、V
O1、V
O2で表すことができる。
図4では、導体状態において、半導体スイッチS
1とS
2は、この分析ではその出力容量が無視されていないにもかかわらず、実質的に抵抗がゼロであるとみなされる(すなわち、短絡とみなされる)。さらに、
図4では、結合インダクタL
Cを、磁化インダクタンスL
MとリークインダクタンスL
LK1、L
LK2を持つ2巻線理想トランスとしてモデル化している。コンデンサC
Rの両端の平均電圧は、電圧V
O1とV
O2の和である出力電圧V
Oに実質的に等しいため、コンデンサC
Rは定電圧源V
CRとしてモデル化されている。
図4では、電流と電圧の基準方向は、V
AC>0、V
AN>0、V
BN<0の半周期区間に対応している。
【0021】
図5A~5Iは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2の共通のスイッチング周期の様々な区分における回路
図400の位相段を示している。
図6は、本発明の一実施形態における、
図5A~
図5Iのスイッチング周期中の様々な電力段の主要な波形を示している。
図6では、スイッチS
1及びS
2のゲート信号がそれぞれS
1、S
2というラベル付けがされている。同様に、定数L
1とL
2も、それぞれ昇圧インダクタL
1とL
2のインダクタンス値を表している。V
S1、V
S2、V
LCは、それぞれ第1スイッチS
1、第2スイッチS
2、結合インダクタL
Cの電圧を表している。i
S1とi
S2は、それぞれ第1スイッチS
1と第2スイッチS
2を流れる電流を表している。
【0022】
図6に示すように、スイッチS
1とS
2のゲート信号は重なり合わず、互いに実質的に180°オフセットしており、一方のスイッチが開いてから他方のスイッチが閉じるまでの間(例えば、時刻T
1とT
3の間)に短いデッドタイムがあることで、スイッチS
1とS
2の両方でZVSを実現することができる。本発明のPFC DCM昇圧整流器では、入出力電圧の範囲が変化してもZVSを維持できるように、可変スイッチング周波数制御方式を採用している。このように、可変スイッチング周波数制御方式では、スイッチング周波数が低いほど負荷が高い、または入力電圧が低いことに対応し、スイッチング周波数が高いほど負荷が軽い、または入力電圧が高いことに対応している。本発明のPFC DCM昇圧整流器は、不必要な高周波動作を避けるために、非常に軽い負荷やゼロ負荷では、制御されたバーストモードやパルススキップモードで動作してもよい。
【0023】
図5Aおよび
図6に示すように、時刻T
0とT
1の間の期間、スイッチS
2が開いている間、および閉じたスイッチS
1が時刻T
1で開く直前に、昇圧インダクタL
1のインダクタ電流i
L1は、V
AN/L
1で実質的に与えられる速度でスイッチS
1を通って流れ、時刻T
1でピーク値I
L1pkに達し、式1のように近似される。ここでV
ANは入力フィルタコンデンサC
1の両端の相電圧、T
Sは共通のスイッチング周期である。時刻T
1でスイッチS
1が開き、時刻T
2でスイッチS
2が閉じるまでのデッドタイムは、スイッチング周期T
Sに比べて短いため、式1はT
1とT
2の間の時間を考慮していない。時刻T
0とT
1の間、リークインダクタンスL
LK1に起因する出力電流i
O1は式2で表される速度で減少し、リークインダクタンスL
LK2に起因する出力電流i
O2は式3で表される速度で増加する。ここで、V
CRはフライングコンデンサC
Rの両端の電圧である。磁化インダクタンスL
Mに印加される磁化電流i
Mは、出力電流i
O1とi
O2の差で与えられる。この実施形態では、磁化インダクタL
Mは十分に大きいので、結合インダクタL
Cのリップル電流は、PFC DCMの動作に有意な方法で影響を及ぼさない。
【0024】
【0025】
図4に示すように、結合インダクタL
Cの2つの巻線は、出力電流i
O1とi
O2のそれぞれの差動電流による磁束を相殺するので、磁化インダクタンスL
Mはコアの小さなギャップで飽和することなく供給される。
【0026】
図5Bは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2のスイッチング周期の時刻T
1およびT
2の間における回路
図400の位相段を示している。時刻T
1にスイッチS
1が開くと、昇圧インダクタL
1のインダクタ電流i
L1がスイッチS
1の出力容量C
OSS1を充電し始める。スイッチS
1とS
2の両端の電圧の和がフライングコンデンサC
Rの電圧V
CRに拘束されるため、スイッチS
1とS
2の出力容量C
OSS1とC
OSS2は、それぞれほぼ同じ速度で充放電する。時刻T
2で、スイッチS
2の出力容量C
OSS2が完全に放電されるので、スイッチS
2の反平行ダイオードが導通し始める。
【0027】
図5Cは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2のスイッチング周期の時刻T
2およびT
3の間における回路
図400の位相段を示している。
図6に示すように、時刻T
2で、スイッチS
2のボディダイオードが順方向バイアスされると、インダクタ電流i
L2は直線的に大きさが増し始める。時刻T
3では、スイッチS
2がZVSで閉じ、スイッチS
2にはインダクタ電流i
L2が流れ始める。
【0028】
図5Dは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2のスイッチング周期の時刻T
3およびT
4の間における回路
図400の位相段を示している。スイッチS
2には、インダクタ電流i
L2が流れ続ける。昇圧インダクタL
1の電流i
L1は、時刻T
4でゼロに減少する。
【0029】
DCM動作を維持するために、時刻T3とT4の期間は、スイッチング周期TSの1/2以下に保たれており、その結果、インダクタ電流iL1は、下降するよりも遅い速度で上昇する。このスイッチング方式では、フライングコンデンサCRの両端の最低電圧VCRminは、最低値VOminとなることから、式4で表される。ここで、VANPKは、入力フィルタコンデンサC1の両端のピーク相電圧を表し、VAC,RMSは入力電圧VACの2乗平均平方根(RMS)値である。時刻T2からT4の間は、インダクタ電流iL1とiL2が逆方向に流れるため、スイッチS2を流れる平均電流は個々の電流よりも小さくなり、結果的に電力損失が減少する。
【0030】
【0031】
図5Eは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2のスイッチング周期の時刻T
4およびT
5の間における回路
図400の位相段を示している。時刻T
4とT
5の間で、インダクタ電流i
L2がスイッチS
2を流れ続け、V
BN/L
2の速度で増加し、時刻T
5でピーク値I
L2pkに達し、それはおよそ式5で表される。ここで、V
BNは、入力フィルタコンデンサC
2の両端の相電圧である。式1と式5から、インダクタのインダクタンスL
1とL
2が実質的に等しい場合、インダクタ電流i
L1とi
L2のピーク値は、それぞれ対応する相電圧に比例することがわかる。
【0032】
【0033】
図5Fは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2のスイッチング周期の時刻T
5およびT
6の間における回路
図400の位相段を示している。時刻T
5で、スイッチS
2が開くので、インダクタ電流i
L2がスイッチS
2の出力容量C
OSS2の充電と、スイッチS
1の出力容量C
OSS1の放電が開始される。
【0034】
図5Gは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2のスイッチング周期の時刻T
6およびT
7の間における回路
図400の位相段を示している。時刻T
6で、スイッチS
1の出力容量C
OSS1が完全に放電され、その反平行ダイオードが導通し始める。それと同時に、スイッチS
1がZVSで閉じることがある。
図6に示すように、時刻T
7でスイッチS
1が閉じる。
【0035】
図5Hは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2のスイッチング周期の時刻T
7およびT
8の間における回路
図400の位相段を示している。スイッチS
1が閉じると、増加しているインダクタ電流i
L1が、インダクタ電流i
L2と逆方向にスイッチS
1を流れ、インダクタ電流i
L1とi
L2の差に実質的に等しい電流がスイッチS
1を流れる。
【0036】
図5Iは、本発明の一実施形態における、スイッチS
1およびS
2のスイッチング周期の時刻T
8およびT
9の間における回路
図400の位相段を示している。時刻T
8で、インダクタ電流i
L2はゼロになる。新たなスイッチング周期は、スイッチS
1が開く時刻T
9に開始される。
【0037】
図6に示すように、スイッチS
1またはS
2が閉じると、それに伴う相電圧が、フルブリッジ整流器の導通ダイオードを介して、接続された昇圧インダクタL
1またはL
2に印加される。逆に、スイッチS
1またはS
2が開くと、フライングコンデンサC
Rにかかる電圧V
CRよりも低い相電圧が、接続されている昇圧インダクタL
1またはL
2に印加され、その昇圧インダクタに流れる電流i
L1またはi
L2がゼロになるまで、その相電圧が維持される。したがって、スイッチング周期T
Sでの平均インダクタ電流<I
AVG>
TSは、式6で与えられる。ここで、Lは昇圧インダクタL
1とL
2の実質的に等しいインダクタンスで、ωはライン電圧の角周波数である。PFCを実現するためには、スイッチング周期T
Sが2V
CR-V
AC,RMSsinωt、または、式7に比例することが好ましい。ここでKは定数である。このようなスイッチング周波数では、式6は、式8になる。
【0038】
【0039】
スイッチング周期TSにおけるインダクタンスLと、フライングコンデンサCRの両端にかかる電圧VCRは、ともに実質的に一定であるため、平均インダクタ電流<IAVG>TSは、入力電圧に比例する(式9)。
【0040】
【0041】
図3に戻ると、加算器363からの出力信号は、実質的に式7の非線形補償項2V
CR-V
AC,RMSsinωtである。そのため、スイッチS
1およびS
2のゲート信号は、式7の非線形補償項2V
CR-V
AC,RMSsinωtに比例したスイッチング周期T
Sを持つ。これにより、PFC DCM昇圧整流器300は、能動電流成形制御方式がなくても、自動的にPFCを実現する。
【0042】
図7は、非線形補償信号が適用されていない場合(すなわち、乗算器364で非線形補償項2V
CR-V
AC,RMSsinωtを1に設定する場合)の、入力ライン電圧V
ACの正の半周期にわたる、(i)PFC DCM昇圧整流器300のピーク入力電流701および平均入力電流702、ならびに(ii)対応するスイッチング周波数f
Sを示している。スイッチング周波数f
Sは1/T
Sに等しい。
【0043】
図8は、本発明の一実施形態における、非線形補償信号を適用した場合(すなわち、乗算器364で信号Gに非線形補償項2V
CR-V
AC,RMSsinωtを乗算する場合)の、入力ライン電圧V
ACの正の半周期にわたる、(i)PFC DCM昇圧整流器300のピーク入力電流703および平均入力電流704、ならびに(ii)対応するスイッチング周波数f
Sを示している。
図8に示すように、スイッチング周波数f
Sは、式7の非線形補償項に応じて、入力電圧V
ACと出力電圧V
Oによって変化する。
【0044】
本発明の範囲内であれば、多くの変形や変更が可能である。例えば、
図9は本発明のPFC DCM昇圧整流器900を示しているが、
図3のPFC DCM昇圧整流器300との違いは、直列接続されたスイッチS
1およびS
2との間のコモンノードNと、直列接続された出力フィルタコンデンサC
O1およびC
O2との間のコモンノードとの間にブロッキングコンデンサC
Bを有する点である。本実施形態では、出力段320の直列接続された出力フィルタコンデンサC
O1及びC
O2との間のコモン端子と、スイッチングコンバータ段310の直列接続されたスイッチS
1及びS
2との間のコモン端子が、ブロッキングコンデンサCBで接続されている。ブロッキングコンデンサC
Bは、コモンノードNと、出力フィルタコンデンサC
O1及びC
O2との間のコモンノードを流れる低周波電流を大幅に減衰させる。ブロッキングコンデンサC
Bは、出力フィルタコンデンサC
O1およびC
O2のそれぞれよりも相対的にはるかに小さい容量を持つことができる。
【0045】
図10は、本発明のPFC DCM昇圧整流器1000を示しているが、
図3のPFC DCM昇圧整流器300との違いは、昇圧インダクタL
1及びL
2がダイオードD
1~D
4のフルブリッジ整流器の下流にある点である。
【0046】
図11は、本発明の一実施形態における、その絶縁された出力段にTRを有するPFC DCM昇圧整流器1100を示している。
図11に示すように、トランスTRは、スイッチングコンバータ段の第1スイッチS
1と第2スイッチS
2との間のコモン端子に接続されたセンタータップ付きの1次巻線を含む。PFC DCM昇圧整流器1100は、
図3のPFC DCM昇圧整流器300の結合インダクタLCを、1次巻線と2次巻線のそれぞれに仮想グランドを設けるようにセンタータップされたTRに置き換えたものである。ブロッキングコンデンサC
B1、C
B2は、1次巻線の各端子とスイッチングコンバータ段の相端子を接続する。整流器D
O1とD
O2は、仮想グランドを設けるようにセンタータップされたトランスTRの2次巻線と直列接続される。本実施形態の出力段は、更に出力LCフィルタを含んでいてもよく、この出力LCフィルタは、
図11に示すように、整流器D
O1およびD
O2と出力抵抗負荷Rとの間に結合された、出力インダクタL
Oおよび出力コンデンサC
Oを含んでいてもよい。
【0047】
図12は、本発明の一実施形態における、フルブリッジ構成のスイッチS
1~S
4によって動作するPFC DCM昇圧整流器1200を示している。PFC DCM昇圧整流器1200では、絶縁トランスTRの1次巻線とブロッキングコンデンサC
Bを含む直列回路が、スイッチS
1とS
2との間のコモンノードと、スイッチS
3とS
4との間のコモンノードをそれぞれ接続している。
図3のPFC DCM昇圧整流器300と比較して、スイッチS
3、S
4を追加してスイッチS
1、S
2とフルブリッジ構成にすることで、より高い電力変換を実現している。
【0048】
図13は、本発明の一実施形態における、共振インダクタL
Rと共振コンデンサC
R1、C
R2を備えたハーフブリッジの共振型回路において、スイッチS
1、S
2によって動作するPFC DCM昇圧整流器1300を示している。PFC DCM昇圧整流器1300では,絶縁トランスTRの1次巻線が、コモンノードNとスイッチングコンバータ段の各相端子との間にLC回路を形成するように、コモンノードNと直列接続された共振コンデンサC
R1,C
R2との間のコモンノードとの間で、インダクタL
Rと直列接続されている。本実施形態において、共振型回路によってスイッチングコンバータ段の相端子に接続される1次巻線を持つトランスTRはデカップリング段を形成する。一般に、このような共振型回路は、1つまたは複数の共振インダクタと1つまたは複数の共振コンデンサを含むことができる。この共振型回路は,
図13に示すように、スイッチングコンバータ段の相端子、直列接続された共振コンデンサC
R1とC
R2のコモン端子、およびトランスTRの1次巻線に接続された直列接続の共振コンデンサC
R1とC
R2を含む。したがって、
図13の例に示すように、トランスTRは、その1次巻線が共振型回路を介して相端子に接続されており、この回路は、1つ以上の共振インダクタと1つ以上の共振コンデンサを含んでいてもよい。
【0049】
図14は、本発明の一実施形態における、共振インダクタL
Rと共振コンデンサC
Rを備えたフルブリッジの共振型回路において、スイッチS
1、S
2、S
3、S
4によって動作するPFC DCM昇圧整流器1400を示している。PFC DCM昇圧整流器1400では、絶縁トランスTRの1次巻線が、コモンノードNとスイッチングコンバータ段の各相端子との間にLC回路を形成するように、絶縁トランスTRの1次巻線が,コモンノードNと直列接続されたスイッチS
3,S
4との間のコモンノードとの間で,インダクタL
Rおよび共振コンデンサC
Rと直列接続されている。
【0050】
本発明のPFC DCM整流整流器は、直列、並列、LLC、LCCまたはLLCC共振回路として、または任意の適切な組み合わせであるかどうかにかかわらず、任意の共振型タンク回路で動作することができる。
【0051】
したがって、この詳細な説明によれば、本発明の昇圧整流器は、非線形補償項を組み込んだフィードフォワード信号を出力電圧フィードバック制御信号に組み込むことにより、ゼロ電圧スイッチング、5%以下の入力電流全高調波歪,および調整されたスイッチング周波数を実現することができる。広帯域で能動電流成形制御方式を追加することなく、低THDが実現できるため、HPFの効率化が図られる。少なくとも1つの実施形態では、非線形補償項は、入力電圧と出力電圧の両方から得られる。さらに、本開示のPFC DCM昇圧整流器は、コモンモードノイズが低減されている。
【0052】
上記詳細な説明は、本発明の特定の実施形態を説明するために提供されるものであり、限定することを意図していない。本発明は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【外国語明細書】