(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055374
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】水系分散体、この水分散体を含む塗液、この塗液を利用する生分解性樹脂フィルムの製造方法、同じく食品包装用積層シートの製造方法、同じく包装用袋の製造方法、この水分散体に含まれる分散質
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220401BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20220401BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20220401BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20220401BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20220401BHJP
C09D 167/04 20060101ALI20220401BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220401BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220401BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20220401BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/29 ZBP
C08L67/04
C08L29/04 D
C08L79/00 Z
C09D167/04
C09D7/65
C09D7/63
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162758
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】596000154
【氏名又は名称】中京油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】平松 弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】安倍 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】河村 尚吾
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AB041
4J002AB045
4J002AE035
4J002AE055
4J002BC075
4J002BE022
4J002CF031
4J002CF034
4J002CF061
4J002CF071
4J002CF181
4J002CF191
4J002CF194
4J002CM053
4J002CP035
4J002DD078
4J002DE058
4J002DE078
4J002DE088
4J002DE238
4J002DF008
4J002DJ008
4J002DJ038
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4J002DJ058
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4J002EG038
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4J002EH047
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4J002EH147
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4J200CA03
4J200CA04
4J200DA17
4J200DA19
4J200EA04
4J200EA21
(57)【要約】
【課題】生分解性樹脂水系分散体のゲル化を抑制しつつ、その経時的安定性を向上させる。
【解決手段】生分解性樹脂とカルボジイミド化合物とを含む固形の分散質を水系の分散媒へ分散させてなる水系分散体であって、カルボジイミド化合物は、カルボジイミド変性イソシアネート化合物であり、分散質において前記生分解性樹脂に対して0.6~5.5重量%含まれており、分散媒は水と該水に溶解した分散剤とを含む、水系分散体を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂とカルボジイミド化合物とを含む分散質を水系の分散媒へ分散させてなる水系分散体であって、
前記カルボジイミド化合物は、カルボジイミド変性イソシアネート化合物であり、前記分散質において前記生分解性樹脂に対して0.6~5.5重量%含まれており、
前記分散媒は水と該水に溶解した分散剤とを含む、水系分散体。
【請求項2】
前記カルボジイミド化合物は、下記一般式(1)で表されるカルボジイミド変性イソシアネート化合物である、請求項1に記載の水分散体。
【化1】
但し、nは2~20の整数。
【請求項3】
前記分散質に含まれる前記生分解性樹脂はポリ乳酸を含む、請求項1又は2に記載の水分散体。
【請求項4】
前記分散質に含まれる前記生分解性樹脂は20重量%以上のポリ乳酸と残部の他の生分解性樹脂とからなる、請求項1又は2に記載の水分散体。
【請求項5】
前記分散質には可塑剤及びその他の助剤が更に含まれる、請求項1~4のいずれかに記載の水分散体。
【請求項6】
前記分散媒に含まれる分散剤は部分ケン化型ポリビニルアルコールであり、水に対する配合割合は重量比で4.0~13.0%である、請求項1~5に記載の水分散体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の水分散体を含む、生分解性樹脂フィルム用の塗液。
【請求項8】
請求項7に記載の前記生分解性樹脂フィルム用塗液を準備するステップと、
該塗液を基体に塗工するステップと、
該塗液を乾燥するステップと、を含む、生分解性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項6に記載の水分散体を準備するステップと、
該水分散体を基体に塗工するステップと、
該水分散体を乾燥するステップと、を備える食品包装用積層シートの製造方法。
【請求項10】
請求項3又は4に記載の水分散体を準備するステップと、
該水分散体を基体に塗工するステップと、
該水分散体を乾燥するステップと、を実行して第1及び第2包装用積層シートを準備し、
前記第1包装用積層シートと前記第2包装用積層シートとを各生分解性樹脂層層が対向するように重ね、その一部を加熱してヒートシールを行うステップと、
を含む包装用袋の製造方法。
【請求項11】
水系の分散媒へ分散される生分解性樹脂を含む分散質であって、
生分解性樹脂とカルボジイミド変性イソシアネート化合物とを含み、前記生分解性樹脂に対してカルボジイミド変性イソシアネート化合物が0.6~5.5重量%含まれている、水系分散体に分散される分散質。
【請求項12】
前記カルボジイミド化合物は、下記一般式(1)で表されるカルボジイミド変性イソシアネート化合物である、請求項11に記載の分散質。
【化2】
但し、nは2~20の整数。
【請求項13】
前記生分解性樹脂はポリ乳酸を含む、請求項11又は12に記載の分散質。
【請求項14】
前記生分解性樹脂は20重量%以上のポリ乳酸と残部の他の生分解性樹脂とからなる、請求項11又は12に記載の分散質。
【請求項15】
可塑剤及びその他の助剤が更に含まれる、請求項11~14のいずれかに記載の分散質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生分解性樹脂を分散質とする水系分散体の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の包装フィルムには、袋や容器に加工するために、優れたヒートシール性が求められる。かかる機能はプラスチックフィルムを用いることで満たすものの、昨今のプラスチックによる環境汚染問題のため、プラスチックを紙に代替することが提案されているが、紙を袋や容器に加工する際には、ヒートシール剤として、ポリエチレンやポリプロピレンが多量に紙基体上にラミネートされて使用される。これらプラスチックのラミネート量は、商品コンセプトによって様々だが、概ね20~50g/m2であり、300g/m2と多量になる場合もある。従って、プラスチックを紙に代替した包装容器においても、依然としてプラスチックの使用量は十分に低減されないという問題があり、直接的にプラスチックの使用を低減する手段が求められている。
そこで、生分解性樹脂水分散体を塗工、乾燥させることで、ヒートシール層を紙基体上に形成させる検討が進んでいる。しかしながら、生分解性樹脂水分散体においては、生分解性樹脂が分散質として水系の分散媒に分散されているため、生分解性樹脂と水が直接接触する上、接触面積が大きいため、射出成型物等と比較し、生分解性樹脂の加水分解が速やかに進行する。そのため、工業的に生分解性樹脂水分散体をヒートシール剤として用いる場合、ヒートシール剤の貯蔵安定性、すなわち、加水分解に対する生分解性樹脂の安定性(経時的安定性)が求められる。
【0003】
特許文献1に記載の生分解性樹脂水系分散体は、これを紙製の基体へ塗工することで生分解性の樹脂フィルムの層を紙製の基体上に形成することができる。
この生分解性樹脂水系分散体では、生分解性樹脂を分散する水系分散媒に水溶性のカルボジイミド化合物が溶解されている。
カルボジイミド化合物が生分解性樹脂の経時的安定性に寄与することは、特許文献2に示されているとおり周知である。
特許文献1によれば、カルボジイミド化合物を生分解性樹脂自体のみに添加した分散体(比較例)に比べて、カルボジイミド化合物を水系分散媒に溶解した分散体(実施例)の方が優れた経時的安定性を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4077670号公報
【特許文献2】特許3776578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の生分解性樹脂水系分散体は、分散された生分解性樹脂の加水分解に対する安定性(経時的安定性)が向上するものの、水系分散体自体の粘度が時間と共に高くなり紙製基体へ塗工できなくなるため、貯蔵安定性が問題となる。これは水溶性カルボジイミドと生分解性樹脂(例えばポリ乳酸)及び水溶性カルボジイミド同士が架橋反応することで、ゲル化が生じるためと考えられる。
また、本発明者らの検討によれば、水溶性カルボジイミドの添加量を少量にすることでゲル化が抑制できるものの、分散された生分解性樹脂の経時的安定性の向上は限定的となる。そのため、ゲル化の抑制と生分解性樹脂の耐加水分解性(経時的安定性)の両立が課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきた。その結果、特定のカルボジイミド化合物を選択して、これを生分解性樹脂と混合することにより、かかる混合物を分散質として水系分散媒に分散させたとき、分散質の生分解性樹脂に優れた経時的安定性を与えつつ、かつ水分散体としても塗工に好適な流動性を確保できることに気が付いた。
即ち、この発明の第1の局面は次のように規定される。
生分解性樹脂とカルボジイミド化合物とを含む固形の分散質を水系の分散媒へ分散させてなる水系分散体であって、
前記カルボジイミド化合物は、カルボジイミド変性イソシアネート化合物であり、前記分散質において前記生分解性樹脂に対して0.6~5.5重量%含まれており、
前記分散媒は水と該水に溶解した分散剤とを含む、水系分散体。
【0007】
この発明の第1の局面の水分散体によれば、カルボジイミド化合物としてカルボジイミド変性イソシアネート化合物を採用する。そしてその配合量を生分解性樹脂に対して0.6重量%以上配合することにより、紙製基体へ塗工するときに求められる好適な流動性 (貯蔵安定性)と、分散された生分解性樹脂の経時的安定性が得られる。
【0008】
上記において、生分解性樹脂とは、微生物によって完全に消費され自然的副産物のみを生じる材料である。
かかる生分解性樹脂として次のものが挙げられる。
ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリ乳酸類、ポリカプロラクトン、カプロラクトンとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリカプロラクトン類、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、熱可塑性デンプン、ポリマレート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリブチレンテレフタレートサクシネート、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシヘキサノエート、ポリエチレンフラノエート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0009】
水系分散体から得られた生分解性樹脂フィルム層が食品包装用に用いられるとき、好適な生分解性樹脂として、ポリ乳酸が挙げられる(第3の局面)。
ポリ乳酸を選択したのは、工業的に実用化が進んでおり、その他生分解性樹脂と比較し、安価で食品包装用として好ましいためである。
紙製基体に積層された生分解性樹脂フィルム層をヒートシール層として適用する場合、L型とD型のポリ乳酸の配合比は6:94~94:6とすることが好ましい。
この範囲において優れたヒートシール性が得られる。他方、この範囲を外れると結晶化度と融点が上昇するため、低温でヒートシール性を発揮することが困難となるおそれがある。
また、生分解性樹脂フィルム層は、優れた耐水性及び耐油性を有しており、紙製基体に積層することで、耐水紙及び耐油紙として活用することができる。
【0010】
カルボジイミド変性イソシアネートとは、イソシアネート化合物の一部をカルボジイミド化させたものであり、この発明で用いるカルボジイミド変性イソシアネート化合物としては、次に挙げるイソシアネートをカルボジイミド化したものの重合物を用いることができる。
即ち、イソシアネートとして、フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルビフェニレンジイソシアネート、ジメトキシビフェニレンジイソシアネート、テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0011】
かかるカルボジイミド変性イソシアネート化合物の中でも下記式1に示されるものが好ましい(第2の局面)
【化1】
[但し、nは2~20の整数]。
カルボジイミド変性イソシアネート化合物の重合度は、軟化温度及び粘度の観点から2~20、更に好ましくは2~15である。
nが2未満になると、分散質から当該化合物が水媒体へ溶出し、生分解性樹脂の経時的安定性が低下するおそれがある。加えて、当該化合物が水媒体へ溶出する事で水系分散体自身がゲル化するなど貯蔵安定性が問題となるおそれもある。他方、nが20を超えると粘度が高くなりすぎて、分散質内において均等に分散させることが困難になる。
【0012】
分散質における生分解性樹脂とカルボジイミド変性イソシアネート化合物との配合比は前者に対して、後者を0.6~5.5重量%とする。更に好ましい配合比は0.6~2.6重量%である。
上記配合比が0.6重量%未満となると、生分解性樹脂に対する経時的安定性が十分に発揮されないおそれがある。他方、5.5重量%を超えても使用量に見合う効果は得られず、経済的でない。
【0013】
分散質には、上記生分解性樹脂とカルボジイミド変性イソシアネート化合物の他に、可塑剤及びその他の助剤を配合することができる。
可塑剤とは、生分解性樹脂樹脂を軟化させる助剤であり、軟化させることで、低温でのヒートシール性を容易にすることができる。
可塑剤として次のものが挙げられる。
クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸誘導体、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート等のエーテルエステル誘導体、グリセリントリアセテート、グリセリントリプロピオネート、グリセリントリブチレート等のグリセリン誘導体、エチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸誘導体、アジピン酸2-(2-メトキシエトキシ)エタノール及びベンジルアルコールの反応生成物、アジピン酸と1,4-ブタンジオールとの縮合体等のアジピン酸誘導体、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン等のポリヒドロキシカルボン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用して用いることができる。
可塑剤の配合量はこの水系分散体の用途等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、分散質に対して5.0~15.0重量%とすることができる。
【0014】
助剤として次のものが挙げられる。
pH緩衝剤として、特に限定されないが、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、その他の無機塩、アミン類等が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、 シュウ酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、塩基性乳酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、アンモニア,メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミンが挙げられる。なお、中和には、1種類の塩基性化合物を単独で用いてもよいし、二種類以上の塩基性化合物を併用してもよい。
pH緩衝材を使用することで、生分解性樹脂中の残留酸モノマー及び、生分解性樹脂が加水分解する際に発生する酸性分解物を中和することができる。酸性物質は加水分解の触媒として作用するため、pH緩衝材は生分解性樹脂の加水分解抑制に有用である。
助剤の配合量はこの水系分散体の用途等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば分散質に対して0.1~1.0重量%とすることができる。
【0015】
生分解性樹脂フィルムの耐油性向上助剤として、スチレン-アクリル共重合体、デンプン、ワックスが挙げられる。
スチレン-アクリル共重合体のスチレン系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、α-エチルスチレン、α-ブチルスチレン、4-メトキシスチレン、ビニルトルエン等を挙げることができる。アクリル系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、3-エトキシプロピルアクリレート、3-エトキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸アリールエステル類及びアクリル酸アラルキルエステル類、ジエチレ ングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンのような多価アルコールのモノアクリル酸エステル類等を挙げることができる。
デンプンとしては、トウモロコシデンプン、ポテトデンプン、タピオカデンプン、酸化デンプン、リン酸デンプン、エーテル化デンプン、ジアルデヒド化デンプン、エステル化デンプン等の変性デンプン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用して用いることができる。
ワックスとしては、天然ワックス、合成ワックス等のワックス類を使用することができる。天然ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ろう、ホホバ固体ろう等の植物系天然ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系天然ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系天然ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムワックス等の石油系天然ワックス等が挙げられる。また合成ワックスとしては、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素類、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス、硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等の水素化ワックス、12-ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用して用いることができる。
耐油性向上助剤の配合量はこの水系分散体の用途等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば分散質に対して0.1~10.0重量%とすることができる。
【0016】
生分解性樹脂フィルムの耐水性向上助剤として、天然ワックス、合成ワックス等のワックス類が挙げられる。
天然ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ろう、ホホバ固体ろう等の植物系天然ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系天然ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系天然ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムワックス等の石油系天然ワックス等が挙げられる。また合成ワックスとしては、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素類、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス、硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等の水素化ワックス、12-ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用して用いることができる。
耐水性向上助剤の配合量はこの水系分散体の用途等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば分散質に対して0.1~10.0重量%とすることができる。
【0017】
生分解性樹脂フィルムのアンチブロッキング性向上助剤として、次のものが挙げられる。
ワックス類、シリコーン樹脂、シリコーンオイル等の有機物、珪藻土、合成シリカ、タルク、セラミック球体 、雲母、カオリンなどの粘土、炭酸カルシウムなどの無機物が挙げられる。特に、アンチブロッキング剤としてワックス類が好ましく、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ろう、ホホバ固体ろう等の植物系天然ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系天然ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系天然ワックス、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス、硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等の水素化ワックス、12-ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等が挙げられる。
アンチブロッキング性向上助剤の配合量はこの水系分散体の用途等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば分散質に対して0.1~10.0重量%とすることができる。
【0018】
水系分散媒とは、水を主体とした分散媒であり、
この水系分散媒には、分散剤を溶解することができる。
この分散剤は分散質が水中において凝集することを防止するものである。
かかる分散剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高分子界面活性剤、カチオン性高分子化合物、アニオン性高分子化合物から、1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
水系分散体から得られた生分解性樹脂フィルムが食品包装用に用いられるとき、好適な分散剤として、ポリビニルアルコールやエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロックポリマーの一種又は混合体を用いることができる。食品安全性が周知されているからである。中でも部分ケン化型ポリビニルアルコールの採用が好ましく、ケン化度は90%以下とすることが好ましい。ケン化度をこの範囲とすることで、ポリビニルアルコールの生分解性を高めることができる。
かかる分散剤の配合量は、水系分散体の使用方法、保管条件、得られる生分解性樹脂フィルムの用途等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば水に対して4.0~13.0重量%とすることができる。
4.0重量%未満であると、分散質が凝集しやすくなり、13.0重量%を超えるとヒートシール性が低下するため、それぞれ好ましくない。
【0019】
水系分散媒には、上記分散剤に加えて、次の増粘剤を配合することができる。
増粘剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、カチオン化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉誘導体、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム等の植物ガム、カゼイン、キトサン、キチン等の動物性高分子等、ポリエチレングリコール等のポリアルコキシド系高分子、が挙げられる。
増粘剤の配合量はこの水系分散体の用途等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば生分解性樹脂水分散体に対して0.1~1.0重量%とすることができる。
【0020】
<分散質の調製>
生分解性樹脂とカルボジイミド化合物をミキサーにて溶融撹拌後、組成物を取り出し、粉砕機により、粉末状態にした。
<水系分散媒の調製>
ホモディスパーを用いて、ポリビニルアルコールを水に溶解させた。
<水系分散媒に対する分散質の分散方法>
混合物の微粒子を得る方法としては、転相乳化法が好ましく、転相乳化で微粒子を得る場合、大きなせん断力が必要となるため、公知な機械乳化法である、コロイドミル、ホモミキサー、ホモジナイザー、各種押出機、ニーダールーダー、3軸遊星分散機等の使用が挙げられる。
【0021】
このようにして得られた水系分散体は次のようにして紙製基体の表面に塗工され、そこに生分解性樹脂フィルムを形成する。
水系分散体を紙製基体(日本製紙株式会社製:NPI上質)に塗工量10g/m2(乾燥重量)となるようバーコーターを用いて片面塗工し、130℃で180秒間乾燥することでヒートシール層を基体シート上に作製した。
【0022】
このようにして得られた紙製基体と生分解性樹脂フィルムとの積層体を、フィルムどうしを対向させて、基体側から熱を与えることでフィルムを融解し、ヒートシールをすることができる。
ヒートシールに要する温度及び時間は、生分解性樹脂の融点に応じて適宜選択される。
ポリ乳酸を選択した場合は、100~120℃で1~2秒の加熱を行う。
【実施例0023】
以下、この発明の実施例の説明をする。
(実施例1)
ポリ乳酸(トタルコービオン製PLA LX930 D型乳酸:L型乳酸=10:90)47.7重量部とカルボジイミド変性イソシアネート化合物(日清紡ケミカル株式会社:LA-1)0.3重量部を溶融撹拌後、粉砕した粉末を、ポリビニルアルコール(ケン化度86%、数平均分子量200,000g/mol)4.0重量部を水48.0重量部に溶解させた水溶液に混合し、一般的な転相乳化法により前者を固体分散質とし、水系分散媒としての後者に分散させて、実施例1の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0024】
(実施例2)
ポリ乳酸(トタルコービオン製PLA LX930 D型乳酸:L型乳酸=10:90)を47.7重量部から46.8重量部へ、カルボジイミド変性イソシアネート化合物(日清紡ケミカル株式会社:LA-1)を0.3重量部から1.2重量部へ変更した点以外は、実施例1と同様にして実施例2の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0025】
(実施例3)
ポリ乳酸(トタルコービオン製PLA LX930 D型乳酸:L型乳酸=10:90)を47.7重量部から45.5重量部へ、カルボジイミド変性イソシアネート化合物(日清紡ケミカル株式会社:LA-1)を0.3重量部から2.5重量部へ変更した点以外は、実施例1と同様にして実施例3の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0026】
(実施例4)
生分解性樹脂(トタルコービオン製PLA LX930 D型乳酸:L型乳酸=10:90)20wt%とポリカプロラクトン(Ingevity製PCL Capa 6400)80wt%の混合物)46.8重量部とカルボジイミド変性イソシアネート化合物(日清紡ケミカル株式会社:LA-1)1.2重量部を溶融撹拌後、粉砕した粉末を、ポリビニルアルコール(ケン化度86%、数平均分子量200,000g/mol)4.0重量部を水48.0重量部に溶解させた水溶液に混合し、一般的な撹拌機を用いて転相乳化させることで実施例4の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0027】
(実施例5)
生分解性樹脂をポリ乳酸(トタルコービオン製PLA LX930 D型乳酸:L型乳酸=10:90)20wt%とポリカプロラクトン(Ingevity製PCL Capa 6400)80wt%の混合物からポリ乳酸(トタルコービオン製PLA LX930 D型乳酸:L型乳酸=10:90)50wt%とポリカプロラクトン(Ingevity製 Capa 6400)50wt%の混合物へ変更した点以外は、実施例4と同様にして実施例5の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0028】
(実施例6)
生分解性樹脂をポリ乳酸(トタルコービオン製PLA LX930 D型乳酸:L型乳酸=10:90)20wt%とポリカプロラクトン(Ingevity製PCL Capa 6400)80wt%の混合物からポリ乳酸(トタルコービオン製PLA LX930 D型乳酸:L型乳酸=10:90)70wt%とポリカプロラクトン(Ingevity製 Capa 6400)30wt%の混合物へ変更した点以外は、実施例4と同様にして実施例6の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0029】
(実施例7)
ポリ乳酸(トタルコービオン製PLA LX930 D型乳酸:L型乳酸=10:90)42.8重量部とカルボジイミド変性イソシアネート化合物(日清紡ケミカル株式会社:LA-1)1.2重量部と混基二塩基酸エステル(大八化学工業株式会社:DAIFATTY-101)4.0重量部を溶融撹拌後、粉砕した粉末を、ポリビニルアルコール(ケン化度86%、数平均分子量200,000g/mol)4.0重量部を水48.0重量部に溶解させた水溶液に混合し、一般的な撹拌機を用いて転相乳化させることで実施例7の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0030】
(実施例8)
ポリ乳酸(トタルコービオン製PLA LX930 D型乳酸:L型乳酸=10:90)42.8重量部とカルボジイミド変性イソシアネート化合物(日清紡ケミカル株式会社:LA-1)1.2重量部とポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社:PEG1000)4.0重量部を溶融撹拌後、粉砕した粉末を、ポリビニルアルコール(ケン化度86%、数平均分子量200,000g/mol)4.0重量部を水48.0重量部に溶解させた水溶液に混合し、一般的な撹拌機を用いて転相乳化させることで実施例8の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0031】
(実施例9)
ポリビニルアルコール(ケン化度86%、数平均分子量200,000g/mol)4.0重量部から2.0重量部へ、水を48.0重量部から50.0重量部へ変更した点以外は、実施例2と同様にして実施例9の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0032】
(実施例10)
ポリビニルアルコール(ケン化度86%、数平均分子量200,000g/mol)4.0重量部から6.0重量部へ、水を48.0重量部から46.0重量部へ変更した点以外は、実施例2と同様にして実施例10の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0033】
(実施例11)
ポリビニルアルコール(ケン化度86%、数平均分子量200,000g/mol)をポロキサマー188へ変更した点以外は、実施例2と同様にして実施例11の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0034】
(比較例1)
ポリ乳酸(トタルコービオン製PLA LX930 D型乳酸:L型乳酸=10:90)48.0重量部を、ポリビニルアルコール(ケン化度86%、数平均分子量200,000g/mol)4.0重量部を水48.0重量部に溶解させた水溶液に混合し、一般的な撹拌機を用いて転相乳化させることで比較例1の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0035】
(比較例2)
ポリ乳酸(トタルコービオン製PLA LX930 D型乳酸:L型乳酸=10:90)を47.7重量部から47.9重量部へ、カルボジイミド変性イソシアネート化合物(日清紡ケミカル株式会社:LA-1)を0.3重量部から0.1重量部へ変更した点以外は、実施例2と同様にして比較例2の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0036】
(比較例3)
ポリ乳酸(トタルコービオン製PLA LX930 D型乳酸:L型乳酸=10:90)を47.7重量部から45.0重量部へ、カルボジイミド変性イソシアネート化合物(日清紡ケミカル株式会社:LA-1)を0.3重量部から3.0重量部へ変更した点以外は、実施例2と同様にして比較例3の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0037】
(比較例4)
カルボジイミド変性イソシアネート化合物(日清紡ケミカル株式会社:LA-1)を芳香族カルボジイミド化合物(ランクセスAG:Stabaxol P)へ変更した点以外は、実施例2と同様にして比較例4の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0038】
(比較例5)
ポリ乳酸(トタルコービオン製PLA LX930 D型乳酸:L型乳酸=10:90)46.8重量部を、ポリビニルアルコール(ケン化度86%、数平均分子量200,000g/mol)4.0重量部と水溶性多価カルボジイミド化合物A(日清紡ケミカル株式会社:V-02-L2)1.2重量部を水48.0重量部に溶解させた水溶液に混合し、一般的な撹拌機を用いて転相乳化させることで比較例5の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0039】
(比較例6)
水溶性多価カルボジイミド化合物A(日清紡ケミカル株式会社:V-02-L2)を水溶性多価カルボジイミド化合物B(日清紡ケミカル株式会社:V-10)へ変更した点以外は、比較例5と同様にして比較例6の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0040】
実施例1から11及び比較例1から6の組成を表1に示す。なお、表1において、各名称は以下成分を示す。
ポリ乳酸:LX930
カルボジイミド変性イソシアネート化合物:LA-1
芳香族カルボジイミド化合物:Stabaxol P
水溶性多価カルボジイミド化合物A:V-02-L2
水溶性多価カルボジイミド化合物B:V-10
混基二塩基酸エステル:DAIFATTY-101
ポリエチレングリコール:PEG1000
分散剤A:ポリビニルアルコール
分散剤B:ポロキサマー188
【0041】
このようにして得られた各実施例、各比較例の配合を表1にまとめた。
【表1】
【0042】
各実施例及び各比較例の経時的安定性及びヒートシール性を表2にまとめた
【表2】
【表3】
【0043】
<酸価数測定による生分解性樹脂水分散体の経時安定性評価>
生分解性樹脂水分散体の経時安定性を評価するために、生分解性樹脂水分散体を30℃及び40℃に保管し、製造直後、3カ月後、6カ月後の酸価数を電位差自動滴定装置(京都電子工業株式会社製 AT-710)により測定した。生分解性樹脂が分解した場合、酸性分解物が生じるため、酸価数が高いほど加水分解が進行していることを示しており、経時安定性が悪い。評価結果を表2に示す。
【0044】
<ヒートシール性評価>
紙製基体のヒートシール層同士を110℃のヒートシーラによりヒートシールし、ヒートシール性評価サンプルを作製した。なお、ヒートシール時のプレス圧は0.2MPa、プレス時間は1秒とした。ヒートシール性評価は、引張試験機にて実施し、下記基準に基づき、ヒートシール性を評価した。評価結果を表3に示す。なお、引張速度は300mm/min、剥離条件は180度剥離とした。
〇:上質紙が材破する程度の密着力がある。
×:密着力が乏しいため、上質紙が材破せず。
【0045】
表2の結果から次のことがわかる。
実施例1、2、3及び比較例2、3より、生分解性樹脂に対するカルボジイミド変性イソシアネート化合物の添加量は0.6重量%以上、5.5重量%以下とすることが好ましいことがわかる。その比が0.6重量%未満の場合、経時安定性向上の効果が乏しく、5.5重量%を超える場合、経時安定性向上効果は十分に得られるものの、製造時に樹脂粘度が増加するため、製造時の生分解性樹脂(分散質)の微粒子化が困難となる。また、実施例2及び比較例4、5、6より、カルボジイミド化合物の中で、カルボジイミド変性イソシアネート化合物による経時安定性向上効果が最も高いことがわかる。
【0046】
この発明は、上記発明の実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。