(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055395
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】吊支持プレートおよび建物内設備支持構造
(51)【国際特許分類】
F16B 9/02 20060101AFI20220401BHJP
F16B 1/00 20060101ALI20220401BHJP
E04B 9/00 20060101ALN20220401BHJP
【FI】
F16B9/02 C
F16B1/00 A
E04B9/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162803
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正則
【テーマコード(参考)】
3J023
【Fターム(参考)】
3J023AA01
3J023AA05
3J023BA01
3J023BB01
3J023CA10
3J023DA06
3J023FA02
3J023GA02
(57)【要約】
【課題】建物内設備の配置位置の調整の自由度が高い吊支持プレートおよび建物内設備支持構造を提供する。
【解決手段】吊支持プレート1は、複数の第1吊部材3がそれぞれ挿通されて係止されるように周囲側凹板部1bに形成された複数の第1長孔部11と、下側板2の下板部2bに形成され、第2吊部材4が挿通されて係止される第2長孔部22とを有しており、上記第1長孔部11の長手方向と上記第2長孔部22の長手方向とが交差する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1吊部材がそれぞれ挿通されて係止されるように周囲側に形成された複数の第1長孔部と、
中央側であって上記複数の第1長孔部で挟まれる或いは囲われる領域内に位置し、第2吊部材が挿通されて係止される第2長孔部と、
を有し、
上記第1長孔部の長手方向と上記第2長孔部の長手方向とが交差することを特徴とする吊支持プレート。
【請求項2】
請求項1に記載の吊支持プレートにおいて、上記中央側の上面よりも低い位置に設けられた下板部に上記第2長孔部が形成されおり、上記下板部の上側に位置する上記上面には、上記第2吊部材を挿通し当該第2吊部材における上記第2長孔部の長手方向の移動を許容する許容孔部が形成されていることを特徴とする吊支持プレート。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の吊支持プレートにおいて、上記周囲側に上記中央側の上面よりも低くされた下段部に上記第1長孔部が形成されていることを特徴とする吊支持プレート。
【請求項4】
請求項3に記載の吊支持プレートにおいて、上記下段部の縁側に立上部が形成されており、上記立上部と当該立上部に対向する上記下段部の壁部とにより、ナットの空回りを規制する幅を有するナット保持部が形成されることを特徴とする吊支持プレート。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の吊支持プレートにおいて、上記中央側の非中心位置に、当該吊支持プレートの厚み方向に貫通する貫通孔を有することを特徴とする吊支持プレート。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の吊支持プレートの上記第2長孔部に、建物側で支持された上記第2吊部材が挿通されており、上記吊支持プレートの上記複数の第1長孔部に挿通された上記第1吊部材によって、建物内設備が吊られた建物内設備支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物内設備を支持する吊支持プレートおよび建物内設備支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、隣り合う梁の下側フランジに掛け渡される横架材と、上記横架材の端部を上記下側フランジに着脱可能に固定する端部固定具と、上記横架材に移動可能に装着されるとともに任意の位置で上記横架材に固定される吊り棒支持部と、上記吊り棒支持部に支持される吊り棒部と、を備えた吊り支持具が開示されている。この吊り支持具であれば、梁に下地木材を取り付ける必要がなく、梁と梁の間で吊り棒部を位置調整可能に垂下固定させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、レンジフード等の建物内設備をどのように吊り支持するかは具体的に開示されていない。
【0005】
この発明は、建物内設備の配置位置の調整の自由度が高い吊支持プレートおよび建物内設備支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の吊支持プレートは、複数の第1吊部材がそれぞれ挿通されて係止されるように周囲側に形成された複数の第1長孔部と、中央側であって上記複数の第1長孔部で挟まれる或いは囲われる領域内に位置し、第2吊部材が挿通されて係止される第2長孔部と、を有し、上記第1長孔部の長手方向と上記第2長孔部の長手方向とが交差することを特徴とする。
【0007】
上記の構成であれば、上記複数の第1長孔部に挿通された複数の第1吊部材によって建物内設備を吊り支持することができる。この吊り支持状態の吊支持プレートは、上記第2長孔部に挿通された第2吊部材によって建物側に固定された部材によって吊り支持される。そして、上記第1長孔部の長手範囲内で、当該吊支持プレートに対する上記建物内設備の位置調整が行える。また、上記第2長孔部の長手範囲内で、当該吊支持プレート自体の位置調整が行える。上記第1長孔部の長手方向と上記第2長孔部の長手方向とが交差するため、上記建物内設備の配置位置の調整の自由度が向上する。また、このように、当該吊支持プレートを介して建物内設備が複数の第1吊部材によって吊り支持されるので、重量のある建物内設備でも容易且つ安定的に吊り支持することができる。
【0008】
上記中央側の上面よりも低い位置に設けられた下板部に上記第2長孔部が形成されており、上記下板部の上側に位置する上記上面には、上記第2吊部材を挿通し当該第2吊部材における上記第2長孔部の長手方向の移動を許容する許容孔部が形成されていてもよい。これによれば、当該吊支持プレートの上記中央側の上面ではなく上記下板部上にナットを配置できるため、当該吊支持プレートを天井板に当接させることができる。
【0009】
上記周囲側に上記中央側の上面よりも低くされた下段部に上記第1長孔部が形成されてもよい。これによれば、上記第1長孔部に挿通される第1吊部材に装着されるナットが上記中央側の上面よりも上側に出ないようにして、当該吊支持プレートを天井板に当接させることが可能になる。
【0010】
上記下段部の縁側に立上部が形成されており、上記立上部と当該立上部に対向する上記下段部の壁部とにより、ナットの空回りを規制する幅を有するナット保持部が形成されてもよい。これによれば、ナットの空回りを規制する別部材を用意する必要がなく、低コスト化が図れる。
【0011】
上記中央側の非中心位置に、当該吊支持プレートの厚み方向に貫通する貫通孔を有してもよい。これによれば、先鋭部材を上記貫通孔から天井面材に差し込むことで、当該吊支持プレートの水平回転を規制することができ、建物内設備の取り付け作業を円滑に行うことができる。
【0012】
また、この発明の建物内設備支持構造は、上記吊支持プレートの上記第2長孔部に、建物側で支持された上記第2吊部材が挿通されており、上記吊支持プレートの上記複数の第1長孔部に挿通された上記第1吊部材によって、建物内設備が吊られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明であれば、建物内設備の配置位置の調整の自由度が向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】同図(A)、(B)、(C)は、実施形態の吊支持プレートの平面図、側面図、正面図である。
【
図2】同図(A)は、
図1の吊支持プレートを上側から見た斜視図であり、同図(B)は、
図1の吊支持プレートを下側から見た斜視図である。
【
図3】
図1の吊支持プレートを示すとともに第1吊部材および第2吊部材の装着状態を示した説明図である。
【
図4】
図1の吊支持プレートによってセンターフードを吊り下げた状態を示した斜視図である。
【
図5】同図(A)は、
図1の吊支持プレートと建物側の部材とセンターフードとの関係を示した平面視の説明図であり、同図(B)は、同側面視の説明図である。
【
図6】同図(A)、(B)、(C)は、他の実施形態の吊支持プレートの平面図、側面図、正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1(A)、
図1(B)、
図1(C)および
図2(A)、
図2(B)に示すように、実施形態の吊支持プレート1は、略方形状の外形を有し、中央側に位置する中央側板部1aと、周囲側に位置して補強部となる2個の周囲側凹板部1bと、同様に周囲側に位置して補強部となる2個の周囲側板部1cとを有する。上記2個の周囲側凹板部1bおよび上記2個の周囲側板部1cは、それぞれ中央側板部1aを挟んで対向して位置する。
【0016】
上記周囲側凹板部1bは、上記中央側板部1aの上面よりも低くされた下段部(底部)1b-1を有する。また、この下段部1b-1の縁側に立上部1b-2が形成されており、上記立上部1b-2と当該立上部1b-2に対向する上記下段部1b-1の壁部1b-3とによって凹形状が形成される。
【0017】
そして、各周囲側凹板部1bの上記下段部(底部)1b-1に、第1長孔部11がそれぞれ2個ずつ形成されており、合計4個の第1長孔部11は、略方形状の吊支持プレート1の四隅近傍に位置する。
【0018】
各第1長孔部11には、
図3に示すように、第1吊部材3が装着される。各第1吊部材3は、両切りボルト31および当該両切りボルト31に螺合される複数のナット32を備える。
【0019】
上記第1長孔部11は、
図1(A)に示したように、広孔部11aおよび狭長孔部11bを有する。広孔部11aは、第1吊部材3における上記ナット32を挿通できる大きさを有する。狭長孔部11bは、上記ナット32の幅よりも狭く上記両切りボルト31の直径よりも広い幅を有する。上記広孔部11aは、各周囲側凹板部1bの中央側寄りに位置している。上記第1吊部材3は、上記狭長孔部11bの範囲において上記第1長孔部11に係止される。
【0020】
また、各周囲側凹板部1bは、上記立上部1b-2と当該立上部1b-2に対向する上記壁部1b-3の間隔が、上記ナット32の多角辺における互いに対向する平行辺の間隔よりもわずかに広く、上記ナット32の空回りを規制する幅を有するナット保持部として機能する。
【0021】
上記中央側板部1aの中央下面側には、下側板2が設けられている。この下側板2は、断面が逆ハット形状を有しており、両側に位置する立上片部2a・2aが溶接等により上記中央側板部1aの下面に固定されている。また、上記下側板2は、上記立上片部2a・2a間に、上記中央側板部1aから離間して位置する下板部2bを有する。
【0022】
上記下板部2bに第2長孔部22が形成されている。当該第2長孔部22は、上記4個の第1長孔部11で囲われる領域内であって吊支持プレート1の重量中心近傍に位置する。
【0023】
そして、上記第1長孔部11の長手方向と上記第2長孔部22の長手方向は互いに交差している。
【0024】
上記第2長孔部22には、
図3に示したように、第2吊部材4が挿通される。この第2吊部材4は、例えば、両切りボルト41および当該両切りボルト41に螺合される複数のナット42を備える。
【0025】
上記第2長孔部22は、第2吊部材4における上記ナット42を挿通できる略円形の広孔部221および、上記ナット42の幅よりも狭く上記両切りボルト41よりも広い狭長孔部222を有する。上記第2吊部材4は、上記狭長孔部222の範囲において上記第2長孔部22に係止される。なお、上記中央側板部1aに形成される中央側板部長孔部(許容孔部)12は、上記ナット42の挿通を許容する幅の長孔部のみからなる。
【0026】
上記中央側板部1aと上記下板部2bとの間隔は、上記ナット42の高さよりも高くなっている。この実施形態では、
図3に示したように、上記下板部2bの上側に位置する上記両切りボルト41の部分に1個のナット42を螺合させ、上記下板部2bの下側に突き出る上記両切りボルト41の部分に2個のナット42を螺合して、これらナット42の締め付けで上記両切りボルト41を上記下板部2bに固定する。上記2個のナット42の螺合(ダブルナット)に限らず、ワッシャを用いてシングルナット締結を行ってもよい。
【0027】
また、上記中央側板部1aの非中心位置に、当該吊支持プレート1の厚み方向に貫通する貫通孔14が4か所形成されている。
【0028】
図4は、上記吊支持プレート1を用いた建物内設備支持構造例を示している。この例示構造では、建物内設備として、センターフード(マントルフード)5が、上記吊支持プレート1によって吊り支持される。上記センターフード5の角筒部51の上端部には、下片部と上片部とこれらを繋ぐ立片部からなる略コ字状の係止金具52が溶接固定されている。そして、上記上片部に形成されているボルト挿通部に上記第1吊部材3の両切りボルト31が挿通され、この両切りボルト31に螺合された複数のナット32が上記上片部を上下から挟んで締め付けられる。
【0029】
また、
図5(A)、
図5(B)に示すように、上記吊支持プレート1の上記第2長孔部22に、上記第2吊部材4が挿通される。上記第2吊部材4は、建物側の横架材6に固定された支持具61における上記横架材6から張り出した部分に形成された長孔部61aを通して支持される。この長孔部61aの長手方向は上記第1長孔部11の長手方向と平行である。また、この実施形態では、上記第2吊部材4は、上記中央側板部1aに形成される中央側板部長孔部12から、上記下板部2bに形成される上記第2長孔部22の広孔部221に通すことができる。そして、上記第2吊部材4の上記両切りボルト41は、上記第2長孔部22の狭長孔部222に通されて当該狭長孔部222において係止される。上記第2吊部材4に螺合されている複数のナット42について、例えば、1個のナット42を上記下板部2b上に位置させ、2個のナットを上記下板部2b下に位置させ、高さ調整した後に上記ナット42を締め付ける。この高さ調整では、上記吊支持プレート1を天井板7に当接させている。
【0030】
また、上記センターフード5の角筒部51の上部から突出する排気管51aにダクト51bを接続する。このダクト51bは、2本の上記第1吊部材3間に通される。また、この実施形態では、上記ダクト51bを下り天井部71によって囲うようにしている。
【0031】
上記の吊支持プレート1であれば、上記複数の第1長孔部11に挿通された複数の第1吊部材3によって建物内設備であるセンターフード5等を吊り支持することができる。この吊り支持状態の吊支持プレート1は、上記第2長孔部22に挿通された第2吊部材4によって建物側に固定された横架材6によって吊り支持される。そして、上記第1長孔部11の長手範囲内で、当該吊支持プレート1に対する上記センターフード5等の位置調整が行える。また、上記第2長孔部22の長手範囲内で、当該吊支持プレート1自体の位置調整が行える。上記第1長孔部11の長手方向と上記第2長孔部22の長手方向とが交差するので、上記センターフード5等の配置位置の調整の自由度が向上する。また、このように、当該吊支持プレート1を介して建物内設備が複数の第1吊部材3によって吊り支持されるので、重量のある建物内設備でも容易且つ安定的に吊り支持することができる。
【0032】
上記中央側板部1aの上面よりも低い位置に設けられた下板部2bに上記第2長孔部22が形成されていると、当該吊支持プレート1の上記中央側板部1aの上面ではなく上記下板部2b上にナット42を配置できるため、当該吊支持プレート1を天井板7に当接させることができる。
【0033】
各周囲側凹板部1bの下段部(底部)1b-1に上記第1長孔部11が形成されていると、上記第1長孔部11に挿通される第1吊部材3に螺合されるナット32が上記中央側板部1aの上面よりも上側に出ないようにして、当該吊支持プレート1を天井板7に当接させることが可能になる。
【0034】
各周囲側凹板部1bがナットの空回りを規制する幅を有するナット保持部として機能すると、ナット32の空回りを規制する別部材を用意する必要がなく、低コスト化が図れる。
【0035】
上記中央側板部1aの非中心位置に、当該吊支持プレート1の厚み方向に貫通する貫通孔14を有すると、先鋭部材を上記貫通孔14から天井板7に差し込むことで、当該吊支持プレート1の水平回転を規制することができ、上記センターフード5等の取り付け作業を円滑に行うことができる。
【0036】
上記実施形態では、上記周囲側凹板部1bがナットの空回りを規制する幅を有するナット保持部として機能したが、これに限らない。
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)に示すように、上記周囲側凹板部1bの凹形の幅が、上記ナット32の空回りが生じる幅であってもよい。この場合、当該周囲側凹板部1b内で空回りしない横幅を有し且つ上記ナット32が嵌る受け部を有する付属部品を用いることで、上記ナット32の空回りを防止できる。
【0037】
また、上記吊支持プレート1は、建物内設備として重量物であるセンターフード5を吊る構成としたが、このようなセンターフード5に限らず、建物内設備として同様に重量物である照明器具等を吊る構成とすることができる。また、第1吊部材3が4本配置される構成としたが、3本或いは2本配置される構成としてもよい。なお、第1吊部材3を2本配置する構成では、この2本の第1吊部材3で挟まれる領域に第2吊部材4を位置させる。
【0038】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 :吊支持プレート
1a :中央側板部
1b :周囲側凹板部
1c :周囲側板部
2 :下側板
2a :立上片部
2b :下板部
3 :第1吊部材
4 :第2吊部材
5 :センターフード
6 :横架材
7 :天井板
11 :第1長孔部
11a :広孔部
11b :狭長孔部
12 :中央側板部長孔部(許容孔部)
14 :貫通孔
22 :第2長孔部
31 :両切りボルト
32 :ナット
41 :両切りボルト
42 :ナット
51 :角筒部
51a :排気管
51b :ダクト
52 :係止金具
61 :支持具
71 :天井部
221 :広孔部
222 :狭長孔部