(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055415
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】磁界検出素子
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20220401BHJP
H01L 43/00 20060101ALI20220401BHJP
H01L 43/02 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
G01R33/02 D
H01L43/00
H01L43/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162826
(22)【出願日】2020-09-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】713000630
【氏名又は名称】マグネデザイン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 晋平
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 義信
【テーマコード(参考)】
2G017
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AD62
2G017AD63
2G017AD65
2G017BA03
2G017BA05
5F092AA02
5F092AA12
5F092AA15
5F092AB01
5F092AC01
5F092BD03
5F092BD19
5F092BD20
5F092DA04
5F092EA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】超高感度マイクロ磁気センサ用の磁界検出素子において、出力特性歪によるセンサの性能を損なわないようにする。
【解決手段】1本の磁性ワイヤ12は、中央部と両端部に3個のワイヤ端子(12Cおよび12Lと12R)および中央部用電極12CEと端部用電極12SEを備え、検出コイル13は磁性ワイヤの中央部の左右に配置する2個の検出コイル(左検出コイル13L、右検出コイル13R)とそれぞれの端部に4個のコイル端子(13LL、13LR、13RL、13RR)および出力用電極(13LE、13RE)を備えて、磁性ワイヤ12および検出コイル13はそれぞれ端子間、端子と電極の間を配線により連結されている。励磁パルス電流が、パルス入力電極(12CE)からグランド電極(12SE)に通電されると、磁性ワイヤ12の中央部端子12Cを中点として、左と右とでは励磁パルス電流が発生する円周方向磁界が反対方向となる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極配線基板上に感磁体である1本の磁性ワイヤとその周りに巻回した検出コイルおよび外部の集積回路と連結するための2個の磁性ワイヤ通電用電極と2個のコイル出力電極を備え、
前記磁性ワイヤは、前記磁性ワイヤの中央部に磁性ワイヤ中央部端子と両端部にそれぞれ磁性ワイヤ端部端子(ワイヤ左端子、ワイヤ右端子という。)とを備えてなり、かつ、前記磁性ワイヤ中央部端子は配線を介して前記磁性ワイヤ通電用電極の一方と連結するとともに前記ワイヤ左端子と前記ワイヤ右端子はそれぞれ配線を介して前記磁性ワイヤ通電用電極の他方と連結し、2個の前記磁性ワイヤ通電用電極の一方をパルス入力電極とし、他方をグランド電極として、
前記検出コイルは、前記磁性ワイヤ中央部端子に対して、左右に左検出コイルと右検出コイルが配置され、前記左検出コイルは前記磁性ワイヤ中央部端子と前記ワイヤ左端子との間に配置され、前記右検出コイルは前記磁性ワイヤ中央部端子と前記ワイヤ右端子との間に配置され、前記左検出コイルと前記右検出コイルはそれぞれ端部に左コイル端子と右コイル端子を備えてなり、かつ、前記左検出コイルの前記右コイル端子と前記右検出コイルの前記左コイル端子は配線を介して連結され、前記左検出コイルの前記左コイル端子と右検出コイルの前記右コイル端子はそれぞれ配線を介して2個の前記コイル出力電極に連結し、
励磁パルス電流が、前記パルス入力電極から前記グランド電極に通電されたとき、前記磁性ワイヤ中央部端子と前記ワイヤ左端子の間と、前記磁性ワイヤ中央部端子と前記ワイヤ右端子の間とで、前記励磁パルス電流が発生する円周方向磁界が反対方向となることを特徴とする磁界検出素子。
【請求項2】
請求項1の磁界検出素子において、
前記磁性ワイヤは、CoFe合金組成を持つアモルファスワイヤにて直径は5~30μmで、
前記検出コイルは、コイルピッチは1~50μmで、コイルの内径は5~50μmで、
前記励磁パルス電流は、0.5~4.0GHzの周波数であることを特徴とする磁界検出素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2の磁界検出素子において、
前記電極配線基板は、特定用途向け集積回路(ASIC)とし、その上面に直接前記磁界検出素子を形成することを特徴とする磁界検出素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性ワイヤを感磁体に使用してパルス電流によって駆動するタイプの超高感度マイクロ磁気センサにおいて、検出コイルに発生する誘導電圧から外部磁界に対して比例的な成分のみ(出力電圧)を検知することによって磁界検出能力を高めることを可能とする超高感度マイクロ磁気センサ用の磁界検出素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高感度マイクロ磁気センサは、アモルファス磁性ワイヤを感磁体として、それにパルス電流を通電した際に生じる磁化の変化を、磁性ワイヤの周りに巻回した検出コイルに生ずる誘導電圧によって検知するものである。フラックスゲートセンサ(以下、FGセンサという。)、磁気インピーダンスセンサ(以下、MIセンサという。)およびGHz-Spin-Rotation効果型センサ(以下、GSRセンサという。)などのタイプがある。
【0003】
これらの磁気センサは、tMRセンサ、MRセンサ、ホールセンサなどの半導体型のセンサに比較して、より優れた磁界検出力と耐環境性を有している。ホールセンサなどの半導体磁気センサに代わる高感度マイクロ磁気センサとして期待されており、性能向上を目指した研究開発が活発に行われている。
【0004】
上記研究開発は、励磁パルス、感磁体、検出コイルの3つの重要な要因において取り組まれてきた。
【0005】
先ず、励磁パルスについては、パルス周波数を高くするほど検出コイルの誘導電圧が増加し、検出力が高くなる。そのため、高周波化による検出力アップの研究開発が進んできた。FGセンサは30kHz(特許文献1参照)や500kHz(特許文献2参照)のパルスを採用している。MIセンサは30MHz(特許文献3参照)や500MHz(特許文献4参照)のパルスを採用している。GSRセンサは周波数1GHzから4GHzのパルスをベースに研究が進められている。
【0006】
次に、感磁体については、パーマロイワイヤ、パーマロイ薄膜、アモルファス薄帯、アモルファス磁性ワイヤなどが使用されている。磁気センサの出力特性を決める心臓部であり、上記励磁パルスの高周波化にも感磁体の選択が重要となる。アモルファス磁性ワイヤは、表面近傍に円周方向に向いたスピンからなる表面磁区と、軸方向にスピンが向いたコア磁区、およびその界面である90度磁壁からなっており、高周波パルスによる円周方向磁界励磁によって高い感度を得られることが特徴である。MHz帯のパルス電流を活用して90度磁壁の移動に着目したMIセンサや、GHz帯のパルス電流を活用して表面磁区内スピンのみに着目したGSRセンサなどで使用されている。
【0007】
そして、検出コイル(以下、コイルという。)については、コイルの微細化と単位長さ当たりの巻数の増加が取り組まれている。アモルファス磁性ワイヤを感磁体として用いるタイプとしては、コイル直径3mm、巻線ピッチ30μm(1999年に開発。)、コイル直径30μm、巻線ピッチ30μm(2006年に開発。)、コイル直径15μm、巻線ピッチ5μm(2015年に開発。)と、研究開発が進んでいる。
【0008】
励磁パルスが高周波化するほど磁化変化は高速化するものの、その反面表皮効果によって感磁体の磁化変化は磁性ワイヤ表面近傍のみとなり、磁化変化量の絶対値は小さくなる。そのため、コイルの内径を小さくし、さらに単位長さ当たりのコイル巻数を増加して、コイルとの電磁結合の強さを強めることが必要である。
【0009】
超高感度マイクロ磁気センサは、アモルファス磁性ワイヤを感磁体として、パルス周波数GHzの励磁パルスと微細コイルとを組み合わせて検出力向上を実現する方向で研究が進んでいる。
しかし、外部磁界ゼロのときのコイル誘導電圧(
図13)が増加して大きなノイズ源となり、検出力改善の大きな障害となっている。
図13は、パルス電流51を流したときに検知されるコイル出力電圧52の磁化変化を外部磁界の強さ53が、+3G、0G、-3Gの場合について示している。0Gにおいて大きなコイル誘導電圧が発生していることが分かる。
【0010】
MI素子のデザインについては、非特許文献1で詳述されている。1本の磁性ワイヤにコイルを巻きつけて、コイル電極をコイルの両端から取り出したタイプやコイル電極をコイルの中央部から取り出したタイプおよび2本の磁性ワイヤに2個のコイルを巻きつけて磁界出力が同相になるようにコイル接続したタイプなどが開発されているが、いずれも上記の外部磁界ゼロで生ずるコイル誘導電圧への対策は講じられていない。
【0011】
本発明は、アモルファス磁性ワイヤに励磁パルス電流を流し、その際の磁化変化を検出コイルで検出する磁界検出素子において、コイル誘導電圧から外部磁界に比例的な成分のみ(出力電圧)を検出することを目指したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第2,856,581号明細書
【特許文献2】特許第2617498号公報
【特許文献3】特許第3645116号公報
【特許文献4】特許第4655247号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「新しい磁気センサとその応用」:トリケップス社、毛利佳年雄著、2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、超高感度マイクロ磁気センサの磁界検出素子のコイル出力電圧を高めると同時に、外部磁界がゼロの時のコイル誘導電圧のような性能向上の障害を解消することである。
【0015】
図1に外部磁界がゼロの時のコイル誘導電圧の波形を示す。コイルに誘導電圧が発生するメカニズムは、パルス電流を磁性ワイヤに通電した際に生ずる円周方向磁界によりワイヤ表層の磁化が円周方向に回転、長手方向の磁化が変化し、これがコイル電圧を誘導すると言うものである。よって、外部磁界がゼロの場合にはコイル誘導電圧もゼロとなるべきであるが、実際には大きな電圧が発生してしまっていることが分かる。さらに、
図2に外部磁界を-1G、0G、+1Gとした時のコイル誘導電圧波形を示す。0Gでの波形を-1Gと+1Gそれぞれの波形から差し引いてみると、外部磁界が+方向か-方向かによってその出力に差があり、外部磁界に対して非対称性があることが分かる。
【0016】
図3に感度性能が最大となる時間における、出力電圧の磁場依存性を示す。全体が外部磁界+方向に偏っており、外部磁界ゼロの点での出力電圧も大きい。また、最大値と最小値の絶対値を比較すれば、最大値の方が大きくなっている。また、一般によく用いられる較正として、ゼロ点での値をオフセットとして全体から差し引いた場合を
図4に示す。このように単純な方法では非対称性を解決することはできないし、元々の外部磁界ゼロでのコイル誘導電圧が大きいことの解決とはならない。
【0017】
これらの現象の原因についてはいくつかの仮説が考えられる。仮説としては、検出コイルとワイヤとの間隙が非常に小さいことによって生じる容量性結合によるとするものや、あるいはコイル巻線と円周方向磁界との鎖交成分によって誘導されるとするもの、ワイヤのひねり応力による磁区構造の乱れに起因するとするものなどがあるが、明確にはなっていない。
【0018】
さらに、こうした現象は励磁パルスの高周波化やコイルの微細化と巻数の増加と言った高感度化を試みる中でより顕著に出現し、大きな障害となっている。これらの障害を解消し磁気信号だけを取り出す技術を開発することによってセンサの性能を大きく向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、感磁体としたアモルファス磁性ワイヤに通電する励磁パルス電流の向きを+方向、-方向と変えてコイル誘導電圧波形に変化があるかを調べた。アモルファス磁性ワイヤはその表面に円周方向磁区を持ち、その磁区構造は、右回り磁区、左回り磁区、右回り磁区と互い違いに並ぶバンブー構造を取っている。励磁パルス電流の方向を変えることで、発生する円周方向磁界を右回りにするか左回りにするかを選択することができるが、その際に生ずる磁性ワイヤの磁化変化の差について報告がなされたことは無い。
【0020】
実験の結果、外部磁界ゼロの時には
図5に示すようにコイル誘導電圧波形が反転することを確認した。さらに、
図6に示すように、外部磁界1Gとした時のコイルの誘導電圧波形は、
図5で示した波形のそれぞれに同程度の大きさの電圧を加算したものとなっていることも確認した。このことは、コイル誘導電圧がパルス電流の向きによって反転する成分と反転しない成分によって構成されていることを示している。つまり、パルス電流を+方向から流した時のコイル誘導電圧V
+と-方向から流した時のコイル誘導電圧V
-について、次の式が成り立つと考えられる。
【0021】
【0022】
電圧VHは外部磁界に対して比例的な特性を持つ、取り出すべき出力電圧成分であり、電圧Voは特性歪みをもたらす取り除くべき成分と言える。
【0023】
図7に感度性能が最大となる時間における、出力電圧の磁場依存性を示す。パルス電流を+方向とした場合の特性曲線に対して、パルス電流を-方向とした場合の特性曲線は図中の左下方向に平行移動したかのような形となっている。数式1より、V
+とV
-を加算すれば、電圧V
Hのみを取り出すことができると考えられる。
【0024】
【0025】
図8に数式2より求めた電圧V
HとGSRセンサとして期待される正弦波特性曲線を示す。
実測値から求められた出力電圧V
Hが理想的な正弦波(sine)とよく一致していることが分かる。また、外部磁界ゼロにおける誘導電圧も解消されている。
【0026】
つまり、本発明者は、励磁パルス電流の方向を+方向、-方向と変えることによりコイル誘導電圧が変化すること、両者のコイル誘導電圧波形を足し合わせることにより、外部磁界に対して比例的な特性を持つ電圧成分のみを出力電圧として取り出せることを発見した。また、コイル誘導電圧の磁界に対する特性の歪み方より、主な原因はコイルと磁性ワイヤの電磁的結合と言うよりも、ひねり応力による磁区構造の乱れであることを発見した。
【0027】
以上の発見を基礎として、対向通電式磁界検出素子を考案した。
磁界検出素子は、
電極配線基板上に感磁体である1本の磁性ワイヤとその周りに巻回した検出コイルおよび外部の集積回路と連結するための2個の磁性ワイヤ通電用電極と2個のコイル出力電極を備え、
前記磁性ワイヤは、前記磁性ワイヤの中央部に磁性ワイヤ中央部端子と両端部にそれぞれ磁性ワイヤ端部端子(ワイヤ左端子、ワイヤ右端子という。)とを備えてなり、かつ、前記磁性ワイヤ中央部端子は配線を介して前記磁性ワイヤ通電用電極の一方と連結するとともに前記ワイヤ左端子と前記ワイヤ右端子はそれぞれ配線を介して前記磁性ワイヤ通電用電極の他方と連結し、2個の前記磁性ワイヤ通電用電極の一方をパルス入力電極とし、他方をグランドグランド電極として、
前記検出コイルは、前記磁性ワイヤ中央部端子に対して、左右に左検出コイルと右検出コイルが配置され、前記左検出コイルは前記磁性ワイヤ中央部端子と前記ワイヤ左端子との間に配置され、前記右検出コイルは前記磁性ワイヤ中央部端子と前記ワイヤ右端子との間に配置され、前記左検出コイルと前記右検出コイルはそれぞれ端部に左コイル端子と右コイル端子を備えてなり、かつ、前記左検出コイルの前記右コイル端子と前記右検出コイルの前記左コイル端子は配線を介して連結され、前記左検出コイルの前記左コイル端子と右検出コイルの前記右コイル端子はそれぞれ配線を介して前記2個のコイル出力電極に連結し、
励磁パルス電流が、前記パルス入力電極から前記グランド電極に通電されたとき、前記磁性ワイヤ中央部端子と前記ワイヤ左端子の間と、前記ワイヤ中央端子と前記ワイヤ右端子の間とで、前記励磁パルス電流が発生する円周方向磁界が反対方向となることを特徴とする。
【0028】
すなわち、磁性ワイヤの磁性ワイヤ中央部端子を中点として、磁性ワイヤの両端に向かって励磁パルス電流を通電することにより左検出コイルと右検出コイルに発生する誘導電圧は、それぞれ数式1の電圧V+及び電圧V-に対応し、両検出コイルを連結することによって、検出コイル出力電圧として外部磁界に比例的な特性の電圧が得られるという対向通電式磁界検出素子である。
【0029】
また、磁性ワイヤは、CoFe合金組成を持つアモルファス磁性ワイヤにて直径5~30μmで、検出コイルは、コイルピッチは1~50μmで、コイルの内径は5~50μmである。磁性ワイヤに通電するパルス電流は、0.5~4.0GHzの周波数である。
検出コイルの出力電圧は、外部磁界のみに依存し、外部磁界に対して正弦関数関係となる。
なお、0.5GHzより低い周波数においても、数式1及び数式2より、コイル誘導電圧から外部磁界に対して比例的な電圧成分のみを取り出す効果は同じである。
【0030】
さらに、磁界検出素子の基板は特定用途向け集積回路(ASIC)とし、その上面に直接前記磁界検出素子を形成する。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、磁界に比例したコイル出力電圧を損なうことなく、パルス電流およびひねり応力に起因する誘導電圧を最大出力コイル電圧の1%以下に抑制できる。さらに、磁界とコイル電圧との関係について、理想的な正弦関数関係を実現して、非直線性は0.5%以下を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】外部磁界ゼロのときのコイル誘導電圧波形を示す。
【
図2】外部磁界を-1G、0G、+1Gとした時のコイル誘導電圧波形を示す。
【
図3】感度性能が最大となる時刻におけるコイル出力電圧の磁場依存性を表す曲線を示す。
【
図4】
図3に示したコイル出力電圧の磁場依存性グラフについて、ゼロ点での値をオフセットとして較正した場合を示す。
【
図5】外部磁界ゼロのとき、励磁パルス電流の向きを+方向とした場合のコイル誘導電圧波形と、励磁パルス電流の向きを-方向とした場合のコイル誘導電圧波形を示す。
【
図6】外部磁界+1Gのとき、励磁パルス電流の向きを+方向とした場合のコイル誘導電圧波形と、励磁パルス電流の向きを-方向とした場合のコイル誘導電圧波形を示す。
【
図7】感度性能が最大となる時刻における、励磁パルス電流の向きを+方向とした場合のコイル出力電圧の磁場依存性曲線と、励磁パルス電流の向きを-方向とした場合のコイル出力電圧の磁場依存性曲線を示す。
【
図8】
図7で示した両曲線を加算した出力電圧VHの磁場依存性曲線と、理想の磁場依存性を表す正弦波曲線を示す。
【
図10】
図9の磁界検出素子のA1-A2線の断面図を示す。
【
図11】配線基板をASICとして、磁界検出素子と集積回路を一体化した場合の断面図を示す。
【
図13】従来のコイル出力電圧の波形に及ぼす外部磁界の影響を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の実施形態について、
図9~
図12を用いて以下に説明する。
第1の実施形態の磁界検出素子は、電極配線基板上に、感磁体である1本の磁性ワイヤとその周りに巻回した検出コイルおよび外部の集積回路と連結するための2個の磁性ワイヤ通電用電極と2個のコイル出力電極を備える。
(1)磁性ワイヤは、3個の端子が形成されている。磁性ワイヤの中央部には磁性ワイヤ中央部端子、磁性ワイヤの両端部にはそれぞれ磁性ワイヤ端部端子(ワイヤ左端子、ワイヤ右端子という)を形成している。磁性ワイヤの電極は、2個の磁性ワイヤ通電用電極を形成し、一方を磁性ワイヤ中央部用電極とし、他方を磁性ワイヤ端部用電極とする。
磁性ワイヤの端子と磁性ワイヤの電極との配線は、次のように形成する。
磁性ワイヤ中央部端子は磁性ワイヤ中央部用電極と連結し、ワイヤ左端子およびワイヤ右端子はそれぞれ磁性ワイヤ端部用電極と連結する。
そして、2個の磁性ワイヤ通電用電極は、一方をパルス入力電極として他方をグランド電極とする。
(2)検出コイルは、2個の検出コイルが形成されている。磁性ワイヤの磁性ワイヤ中央部端子の左右に左検出コイルと右検出コイルが配置される。左検出コイルは磁性ワイヤ中央部端子とワイヤ左端子との間に配置され、右検出コイルは磁性ワイヤ中央部端子とワイヤ右端子との間に配置される。左検出コイルと右検出コイルはそれぞれ端部に左コイル端子と右コイル端子が形成される。
検出コイルの電極は、2個の出力電極からなる。
検出コイル間の配線および検出コイルの端子と出力電極との配線は、次のように形成する。
左検出コイルの右コイル端子は、右検出コイルの左コイル端子と連結する。左検出コイルの左コイル端子は、左検出コイル側の出力電極と連結し、右検出コイルの右コイル端子は、右検出コイル側の出力電極と連結する。
(3)励磁パルス電流が、磁性ワイヤのパルス入力電極からグランド電極に通電されたとき、磁性ワイヤ中央部端子とワイヤ左端子の間と、磁性ワイヤ中央部端子とワイヤ右端子の間とで、励磁パルス電流が発生する円周方向磁界が反対方向となる。
【0034】
<磁界検出素子の構造>
磁界検出素子1の構造は、次の通りである。
電極配線基板11上に、感磁体である1本の磁性ワイヤ12とその周りに巻回した左検出コイルと右検出コイル(13L、13R)を配置してそれを連結した検出コイル13を備えている。さらに、外部の集積回路と連結するための、2個のワイヤ通電用電極(12CE、12SE)と2個のコイル出力電極(13LE、13RE)とを備えている(
図9)。
【0035】
感磁体として磁性ワイヤを1本とすることにより、磁性ワイヤのひねり応力による磁区構造の乱れは、左検出コイルの内部と右検出コイルの内部で同等となり、その誘導電圧も同等のものとなる。つまり、それぞれ数式1の電圧V+及びV-として扱うことができ、数式1が成立する。これにより、数式2のように両者を加算することで特性歪みの原因となる誘導電圧成分を打ち消すことができる。
【0036】
磁性ワイヤの周りに巻回する2個の検出コイル(13L、13R)は、コイルの形状、大きさ、巻数、巻方向(磁界に対して右巻き、左巻き)などの構造・機能が完全同一であり、連結して検出コイル13を構成する。これにより、2個の検出コイルの誘導電圧に対して数式1を適用することができる。
【0037】
<磁性ワイヤ>
磁性ワイヤ12の両端部の端子2個(ワイヤ左端子12L、ワイヤ右端子12Rという)に加えて、磁性ワイヤの中央部に端子1個(ワイヤ中央端子12Cという)からなる端子3個を配置する。
【0038】
磁性ワイヤ12に通電するための電極として、2個のワイヤ通電用電極(12CE、12SE)を配置し、一方の電極をパルス入力電極とし、他方の電極をグランド電極とする。磁性ワイヤの端子と磁性ワイヤ通電用電極との配線は次に示す。
磁性ワイヤ中央部端子12Cは、配線12HCを介して磁性ワイヤ中央部用電極12CEに連結され、ワイヤ左端子12Lとワイヤ右端子12Rはそれぞれ配線(12HL、12HR)を介して磁性ワイヤ端部用電極12SEに連結する。2個の電極(12CE、12SE)の一方をパルス入力電極として他方をグランド電極とする。
磁性ワイヤ中央部用電極12CEをパルス入力電極として、ワイヤ通電用電極12SEをグランド電極としても、または反対にワイヤ通電用電極12CEをグランド電極として、ワイヤ通電用電極12SEをパルス入力電極としてもよい。
【0039】
これにより、磁性ワイヤ中央部用電極をパルス入力電極として磁性ワイヤ端部用電極をグランド電極としてパルス電流を通電すると、パルス電流は磁性ワイヤ中央部電極からワイヤ中央端子に流れ、ワイヤ中央端子にて左右に分かれて、すなわち磁性ワイヤの左側と右側で反対方向に電流が流れる。そして、左右のワイヤ端子から磁性ワイヤ端部用電極であるグランド電極に電流が流れて、グランド電極にて合流する。
【0040】
よって、パルス電流はワイヤ中央端子から反対方向に分かれて流れるために、それぞれの電流が発生する円周方向磁界は反対方向となる。左検出コイルには、左回りの円周方向磁界により磁性ワイヤに生ずる磁化変化に対応した誘導電圧が発生し、及び右検出コイルには、右回りの円周方向磁界により磁性ワイヤに生ずる磁化変化に対応した誘導電圧が発生する。なお、円周方向右回り及び左回りとは、ワイヤ左側から右側を見た場合の向きとする。両検出コイルを連結することで得られるコイル出力電圧は、
図8に示したような正弦関数の出力特性となる。
【0041】
<検出コイル>
検出コイル13は、磁性ワイヤ中央部端子12Cの両側に、磁性ワイヤ中央部端子12Cとワイヤ左端子12Lとの間に1個の検出コイル(左検出コイル13Lという。)およびワイヤ磁性中央部端子12Cとワイヤ右端子12Rとの間に1個の検出コイル(右検出コイル13Rという。)を形成する。
各検出コイルには両端部にコイル端子が各1個配置されている。左検出コイル13Lには左コイル端子13LLと右コイル端子13LRが配置され、同様に右検出コイル13Rにも左コイル端子13RLと右コイル端子13RRが配置されている。
【0042】
次に、端子間および端子と電極との間の配線を次に示す。
まず、左検出コイル13Lの右コイル端子13LRと、右検出コイル13Rの左コイル端子13RLとは、配線13HTを介して連結される。左検出コイル13Lの左コイル端子13LLは、配線13HLを介して左検出コイル電極13LEに連結され、右検出コイル13Rの右コイル端子13RRは、配線13HRを介して右検出コイル電極13REに連結される。
【0043】
これにより、左検出コイル電極13LEから、配線13HL、左検出コイル13Lの左コイル端子13LL、左検出コイル13L、左検出コイル13Lの右コイル端子13LR、配線13HT、右検出コイル13Rの左コイル端子13RL、右検出コイル13R、右検出コイル13Rの右コイル端子13RR、配線13HR、右コイル電極13REへと連結されて、左検出コイル13Lの出力電圧と右検出コイル13Rの出力電圧は加算される。
【0044】
左検出コイル電極13LEをコイル出力+側電極として右検出コイル電極をコイル出力-側電極とすることにより、または左検出コイル電極13LEをコイル出力-側電極として右検出コイル電極をコイル出力+側電極とすることにより、検出コイル13の出力電圧を得ることが出来る。
【0045】
<励磁パルス電流>
励磁パルス電流は、磁性ワイヤ中央部用電極12CEをパルス入力電極とし、磁性ワイヤ端部用電極12SEをグランド電極として通電されると、ワイヤ中央端子12Cから左右のワイヤ端子(12L、12R)に向かって、すなわち反対方向に磁性ワイヤ12を流れ、または左右のワイヤ端子(12L、12R)からワイヤ中央端子12C)に向かって、すなわち反対方向に磁性ワイヤ12を流れる。または、励磁パルス電流は、磁性ワイヤ中央部用電極12CEをグランド電極とし、磁性ワイヤ端部用電極12SEをパルス入力電極として通電されると、ワイヤ左端子12Lおよびワイヤ右端子12Rから磁性ワイヤ中央部端子12Cに向かって、すなわち反対方向に磁性ワイヤ12を流れる。
【0046】
よって、励磁パルス電流は磁性ワイヤ中央部端子からワイヤ左端子及びワイヤ右端子に向かってそれぞれ反対方向に流れるために、左検出コイル13Lの誘導電圧と右検出コイル13Rの誘導電圧は、それぞれ反対方向の円周方向磁界によって磁性ワイヤに生ずる磁化変化に対応したものとなる。これにより、
図8に示したような正弦関数の出力特性が得られる。
【0047】
第2の実施形態は、第1の実施形態の磁界検出素子において、磁性ワイヤは、CoFe合金組成を持つアモルファスワイヤにて直径は5~30μmで、検出コイルは、コイルピッチは1~50μmで、コイルの内径は5~50μmである。
【0048】
<磁性ワイヤ>
磁性ワイヤは、CoFe系合金組成のゼロ磁歪または負磁歪特性を持つガラス被覆付きアモルファスワイヤで、直径は5~30μmで、透磁率μは1,000~30,000であり、磁区構造として最表面に円周方向磁区を持つ。なお、合金組成は、FeCo系でもよい。また、アモルファスワイヤの被覆は、絶縁性を有する材料であればガラス材料に限らない。
これにより、磁界検出素子はGSR効果、つまりコイル電圧と磁界強度の間に正弦関数関係を実現できる。
磁界検出素子に使用された磁性ワイヤの長さは、0.1mm~3mmである。その長さは、センサの用途によって使い分けられる。
なお、磁性ワイヤの抵抗は、1Ω~50Ω程度である。
【0049】
磁性ワイヤに通電するパルス電流の周波数は、0.5~4.0GHzである。0.5GHz未満の周波数であると、GSRセンサの正弦関数関係が得られず、また4.0GHzを超えても正弦関数関係が得られないからである。
なお、0.5GHzより低い周波数においても、数式1及び数式2より、コイル誘導電圧から外部磁界に対して比例的な電圧成分のみを取り出す効果は同じである。
【0050】
<検出コイル>
検出コイルは、そのコイルピッチを1~50μmとする。好ましくは、2.5~10μmである。コイル内径は5~50μmで、好ましくは7~20μmである。
コイルピッチは、小さいほど好ましいので50μm以下とするが、1μm未満にすることは技術的に困難である。
コイル内径は、可能な限り磁性ワイヤの直径に近づけて小さくする方が好ましいので50μm以下とする。しかし、5μm未満とするのは技術的に困難である。
なお、コイル抵抗は、10Ω~2kΩ程度である。
【0051】
第3の実施形態は、第1または第2のいずれかの実施形態の磁界検出素子において、
電極配線基板は、特定用途向け集積回路(ASIC)とし、その上面に直接磁界検出素子を形成する(
図11)。シリコンウエハからなる基板の代わりに、ASICの上面に直接素子を形成することにより、磁界検出素子とASICとを連結する配線が短くなり、感度が大幅に向上するので好ましい。また、磁界検出素子を搭載する磁界検出装置(GSRセンサ)の小型化を図るうえでも好ましい。
ASICの上面に直接磁界検出素子を形成するとは、ASIC31のASIC絶縁保護被膜311の上面に基板に相当するレジスト34を塗布し、レジスト34に磁性ワイヤ32を配置して磁界検出素子を形成することも含まれる。
【0052】
本発明の磁界検出素子の性能評価においては、次の構成からなる電子回路(
図12)を使用する。
電子回路4は、パルス発振器41、磁界検出素子42、入力側回路43、パルス対応型バッファー回路44(以下、バッファー回路44という。)、出力側回路45、電子スイッチ46とコンデンサー47からなるサンプルホールド回路および増幅器48からなっている。
パルス発振器41は0.1~5GHzのパルス周波数をもつパルスを発振し、それを磁界検出素子42の磁性ワイヤに通電し、検出コイルに誘起される電圧をバッファー回路44で検出し、バッファー回路44で電流増幅した後にサンプルホールドする。検波のタイミングは検波タイミング調整回路にてコイル出力電圧がピーク値を取る時間とした。サンプルホールドされた電圧を増幅器で増幅することもできる。
【0053】
コイル出力電圧を測定した結果、実施形態の磁界検出素子では、外部磁界がゼロの場合に生じる誘導電圧が0.02V以下として、最大出力電圧の2%以下とできることを確認した。また、磁場依存性は良好な正弦関数特性を示し、その結果、非直線性0.5%F.S.以下の優れた直線性を得ることができる。
【0054】
本発明の磁界検出素子の磁界検出感度は、磁性ワイヤの長さ及び検出コイルの巻数により、10mV/G~1.5V/Gである。出力特性の歪の原因となる電圧成分を除去することにより、磁界検出素子と電子回路を組み合わせた磁界検出装置(GSRセンサ)の磁気ノイズは、1KHz以下の帯域において、磁界検出素子の長さが3mmの場合には1nT、磁界検出素子の長さが0.2mmの場合には100nTを示す。
【実施例0055】
実施例は、
図9~12を用いて説明する。
磁界検出素子1は、基板11(
図11ではレジスト34)上に周波数1.5GHzのパルス電流を流す1本の磁性ワイヤ12に左検出コイル及び右検出コイル(13L、13R)を巻き付けて連結し、出力電圧は両検出コイルの誘導電圧を加算したものとなるように配線している。
【0056】
磁性ワイヤ12には、ワイヤ中心部にワイヤ中央端子12C、ワイヤ両端部に左ワイヤ端子と右ワイヤ端子の合計3個の端子を取り付けて、ワイヤ中央端子は配線12HCを介して磁性ワイヤ中央部用電極12CEに接続されてパルス入力電極として、左ワイヤ端子12Lおよび右ワイヤ端子12Rはそれぞれ配線(12HL、12HR)を介して磁性ワイヤ端部用電極12SEに接続されてグランド電極とする。磁性ワイヤの抵抗は、ワイヤ中央端子12Cとワイヤ左端子12Lの間と、ワイヤ中央端子12Cとワイヤ右端子12Rの間とで、それぞれ10Ωで同一である。
【0057】
励磁パルス電流は、パルス入力電極であるワイヤ中央部用電極12CEから配線12HCを介してワイヤ中央端子12Cにパルス電流を通電し、ワイヤ中央端子12Cから左右に分かれて左ワイヤ端子12L及び右ワイヤ端子12Rへと流れる。そして、左ワイヤ端子12L及び右ワイヤ端子12Rから配線(12HL、12HR)を介して、グランド電極の磁性ワイヤ端部電極12SEへ流れる。
【0058】
検出コイル13は、同一形状の左検出コイル13Lと右検出コイル13Rとからなる。
ワイヤ中央端子12Cを中心として、ワイヤ中央端子12Cとワイヤ左端子12Lとの間に左検出コイル13L、およびワイヤ中央端子12Cとワイヤ右端子12Rとの間に右検出コイル13Rが形成されている。また両検出コイル(13L、13R)の位置は、ワイヤ中央端子12Cを中心に対称となるように配置されている。
【0059】
各検出コイルには両端部にコイル端子が各1個配置されている。左検出コイル13Lには左コイル端子13LLと右コイル端子13LRが配置され、同様に右検出コイル13Rにも左コイル端子13RLと右コイル端子13RRが配置されている。
そして、端子間および端子と電極との間の配線を次に示す。
まず、左検出コイル13Lの右コイル端子13LRと右検出コイル13Rの左コイル端子13REは、配線13HTを介して連結されている。次に、左検出コイル13Lの左コイル端子13LLは、配線13HLを介して左検出コイル電極13LEに連結され、右検出コイル13Rの右コイル端子13RRは、配線13HRを介して右検出コイル電極13REに連結されている。
【0060】
なお、磁界検出素子1はASIC31上に配置されていることから、
図11に示すように磁性ワイヤ32のワイヤ端子321から配線323を介してワイヤ電極322(パルス入力電極、グランド電極)に接続され、そしてスルーホール313を介してASIC側電極に接続されている。これにより、ASICから磁性ワイヤに励磁パルス電流が流れることになる。
また、検出コイル用の2個のコイル電極もASICと直接接続して、ASICに信号が取り出されている(図示省略)。
【0061】
ここで、磁性ワイヤおよび検出コイルの構成について説明する。
磁性ワイヤ12(32)は、CoFe系合金組成のゼロ磁歪を持つガラス被覆付きのアモルファスワイヤで、直径は10μm、透磁率は3,000、ワイヤ抵抗は32Ωである。磁性ワイヤの長さは、2mmである。本実施例は生体磁気検出に適した仕様である。
【0062】
検出コイル13は、左検出コイル13Lおよび右検出コイル13Rの両者ともに、右巻き(磁界の向きに対して)にて、コイルの長さは0.8mm、コイルピッチは5.0μm、コイル内径は18μmである。コイル抵抗は、それぞれのコイルが100Ωである。
【0063】
本発明の磁界検出素子の性能評価においては、次の構成からなる電子回路を使用する。
電子回路4は、パルス発振器41、磁界検出素子42、入力側回路43、パルス対応型バッファー回路44、出力側回路45、電子スイッチ46とコンデンサー47からなるサンプルホールド回路および増幅器48からなっている。パルス発振器41は1.5GHzのパルス周波数をもつパルスを発振し、それを磁界検出素子42の磁性ワイヤに通電し、検出コイルに誘起される電圧をバッファー回路44で検出し、バッファー回路44で電流増幅した後にサンプルホールドする。検波のタイミングは検波タイミング調整回路にてコイル出力電圧がピーク値を取る時間とした。ピークホルドされた電圧を増幅器48で増幅できる。
【0064】
コイル出力電圧を測定した結果、外部磁界がゼロの場合に生じる誘導電圧は0.02V以下で最大出力電圧の2%以下とすることができた。また、出力電圧の磁場依存性は良好な正弦関数特性を示し、その結果、非直線性は0.4%F.S.程度であった。
【0065】
本発明の磁界検出素子の磁界検出感度は、800mV/Gであった。出力特性の歪の原因となる電圧成分を除去することにより、磁界検出素子と電子回路を組み合わせたGSRセンサの磁気ノイズは、1KHz以下の帯域において、1nTを示した。
超高感度マイクロ磁気センサは、地磁気を測定して活用する電子コンパス、磁気ジャイロ等の3次元方位計およびリアルタイム三次元方位計の高精度化や、生体の微弱な磁気信号を検出する心磁図や脳磁図と言った医療診断装置等の小型・高性能化に必要なものである。特に、本発明の対向通電式磁界検出素子は、これまで性能向上の障害となっていた出力特性の歪みを解消したことで、磁気センサの一層の高性能化に大きく資することができるものである。