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特開2022-55490液体吐出装置、液体吐出方法、および液体吐出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055490
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出方法、および液体吐出プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20220401BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162946
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 美喜雄
(72)【発明者】
【氏名】森 政貴
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EB30
2C056EB58
2C056EC07
2C056EC42
2C056FA04
2C056FA10
2C057AF23
2C057AG44
2C057AL24
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA14
2C057CA01
(57)【要約】
【課題】画質の低下を抑制することができる液体吐出装置、液体吐出方法、および液体吐出プログラムを提供する。
【解決手段】液体吐出装置は、画像データに基づきドットデータを生成するドットデータ生成部と、ドットデータにおける第1吐出ドット情報と第2吐出ドット情報との間隔である吐出間隔に配置される非吐出ドット情報の数である非吐出頻度を変更する頻度変更部とを有する制御装置を備え、頻度変更部は、非吐出頻度を変更する際に、主走査方向における全画素のうち所定数の画素を、第1吐出ドット情報を基準として主走査方向に読み出し、第2吐出ドット情報を読み出す前に、非吐出頻度を変更した頻度変更ドットデータを生成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルと、
前記ノズルに連通した圧力室と、
前記圧力室の液体に圧力を付与するアクチュエータと、
前記アクチュエータを駆動するための駆動信号を生成する波形生成回路と、
制御装置と、を備え、
前記駆動信号は、前記ノズルから液滴を吐出させるように前記圧力室の前記液体に圧力を付与する吐出駆動信号、前記ノズルから前記液滴を吐出させず前記ノズルのメニスカスを振動させるように前記圧力室の前記液体に圧力を付与する非吐出駆動信号、および、前記ノズルのメニスカスを振動させない非振動信号を含み、
前記制御装置は、
画像データに基づき、主走査方向における複数の画素に配置される、前記吐出駆動信号に対応する第1吐出ドット情報、前記第1吐出ドット情報と異なる第2吐出ドット情報、前記非吐出駆動信号に対応する非吐出ドット情報、および、前記非振動信号に対応する吐出ドット無情報を含むドットデータを生成するドットデータ生成部と、
前記ドットデータにおける前記第1吐出ドット情報と前記第2吐出ドット情報との間隔である吐出間隔に配置される前記非吐出ドット情報の数である非吐出頻度を変更する頻度変更部と、を有しており、
前記頻度変更部は、前記非吐出頻度を変更する際に、前記主走査方向における全画素のうち所定数の画素を、前記第1吐出ドット情報を基準として前記主走査方向に読み出し、前記第2吐出ドット情報を読み出す前に、前記非吐出頻度を変更した頻度変更ドットデータを生成する、液体吐出装置。
【請求項2】
前記頻度変更部は、前記第1吐出ドット情報の後に前記吐出ドット無情報が配置されている場合に、前記非吐出ドット情報を配置し、前記吐出間隔に前記非吐出ドット情報を配置する数が多くなるほど前記吐出ドット無情報を前記非吐出ドット情報に書き換えてなる前記頻度変更ドットデータを生成する、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
雰囲気温度を検知する温度検知部をさらに備え、
前記頻度変更部は、前記温度検知部により検知された検知温度又は当該検知温度を補正した補正温度が所定温度範囲よりも低い場合には、前記検知温度又は前記補正温度が前記所定温度範囲に収まるときに比べて、前記吐出ドット無情報を書き換える前記非吐出ドット情報の数を増やす、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記頻度変更部は、前記温度検知部により検知された検知温度又は当該検知温度を補正した補正温度が所定温度範囲よりも低い場合には、前記検知温度又は前記補正温度が前記所定温度範囲に収まるときに比べて、前記非吐出駆動信号を形成するパルスの幅を大きくする、請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記頻度変更部は、前記温度検知部により検知された検知温度又は当該検知温度を補正した補正温度が所定温度範囲よりも低い場合には、前記検知温度又は前記補正温度が前記所定温度範囲に収まるときに比べて、前記非吐出駆動信号を形成するパルスの数を増加させる、請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記頻度変更部は、前記温度検知部により検知された検知温度又は当該検知温度を補正した補正温度が所定温度範囲よりも高い場合には、前記検知温度又は前記補正温度が前記所定温度範囲に収まるときに比べて、前記吐出ドット無情報を書き換える前記非吐出ドット情報の数を減らす、請求項3乃至5の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記頻度変更部は、前記温度検知部により検知された検知温度又は当該検知温度を補正した補正温度が所定温度範囲よりも高い場合には、前記検知温度又は前記補正温度が前記所定温度範囲に収まるときに比べて、前記非吐出駆動信号を形成するパルスの幅を小さくする、請求項4乃至6の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記頻度変更部は、前記温度検知部により検知された検知温度又は当該検知温度を補正した補正温度が所定温度範囲よりも高い場合には、前記検知温度又は前記補正温度が前記所定温度範囲に収まるときに比べて、前記非吐出駆動信号を形成するパルスの数を減少させる、請求項5乃至7の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記非吐出ドット情報を前記吐出ドット無情報に変更する吐出ドット無情報変更部をさらに備えた、請求項1乃至8の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記第1および第2吐出ドット情報は、前記液滴として小玉を吐出するための小ドット情報および前記液滴として大玉を吐出するための大ドット情報を含み、
前記吐出ドット無情報変更部は、前記小ドット情報の1つ前に前記非吐出ドット情報が配置されている場合に、前記非吐出ドット情報を前記吐出ドット無情報に変更する、請求項9に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記第1および第2吐出ドット情報、前記非吐出ドット情報、および、前記吐出ドット無情報の何れか1つが入力される第1駆動周期と、前記第1駆動周期の後に隣接する駆動周期である第2駆動周期と、を有し、
前記制御装置は、前記頻度変更ドットデータにおいて前記大ドット情報が前記第1駆動周期に入力され、前記大ドット情報又は前記小ドット情報の何れかが前記第2駆動周期に入力される場合に、前記第1駆動周期に前記吐出駆動信号をキャンセルするためのキャンセルパルスを追加するキャンセルパルス生成部をさらに備えた、請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記キャンセルパルスは、直前の前記非吐出ドット情報に対応する前記非吐出駆動信号から1アコースティックレングス遅れた信号である、請求項11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
ノズルと、前記ノズルに連通した圧力室と、前記圧力室の液体に圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動するための駆動信号を生成する波形生成回路とを備えた液体吐出装置による液体吐出方法であって、
前記駆動信号は、前記ノズルから液滴を吐出させるように前記圧力室の前記液体に圧力を付与する吐出駆動信号、前記ノズルから前記液滴を吐出させず前記ノズルのメニスカスを振動させるように前記圧力室の前記液体に圧力を付与する非吐出駆動信号、および、前記ノズルのメニスカスを振動させない非振動信号を含み、
画像データに基づき、主走査方向における複数の画素に配置される、前記吐出駆動信号に対応する第1吐出ドット情報、前記第1吐出ドット情報と異なる第2吐出ドット情報、前記非吐出駆動信号に対応する非吐出ドット情報、および、前記非振動信号に対応する吐出ドット無情報を含むドットデータを生成するドットデータ生成工程と、
前記ドットデータにおける前記第1吐出ドット情報と前記第2吐出ドット情報との間隔である吐出間隔に配置される前記非吐出ドット情報の数である非吐出頻度を変更する頻度変更工程と、を有しており、
前記頻度変更工程は、前記非吐出頻度を変更する際に、前記主走査方向における全画素のうち所定数の画素を、前記第1吐出ドット情報を基準として前記主走査方向に読み出し、前記第2吐出ドット情報を読み出す前に、前記非吐出頻度を変更した頻度変更ドットデータを生成する工程である、液体吐出方法。
【請求項14】
ノズルと、前記ノズルに連通した圧力室と、前記圧力室の液体に圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動するための駆動信号を生成する波形生成回路と、制御装置とを備えた液体吐出装置におけるコンピュータに実行させる液体吐出プログラムであって、
前記駆動信号は、前記ノズルから液滴を吐出させるように前記圧力室の前記液体に圧力を付与する吐出駆動信号、前記ノズルから前記液滴を吐出させず前記ノズルのメニスカスを振動させるように前記圧力室の前記液体に圧力を付与する非吐出駆動信号、および、前記ノズルのメニスカスを振動させない非振動信号を含み、
前記コンピュータを、
画像データに基づき、主走査方向における複数の画素に配置される、前記吐出駆動信号に対応する第1吐出ドット情報、前記第1吐出ドット情報と異なる第2吐出ドット情報、前記非吐出駆動信号に対応する非吐出ドット情報、および、前記非振動信号に対応する吐出ドット無情報を含むドットデータを生成するドットデータ生成手段、
前記ドットデータにおける前記第1吐出ドット情報と前記第2吐出ドット情報との間隔である吐出間隔に配置される前記非吐出ドット情報の数である非吐出頻度を変更する頻度変更手段、として機能させ、
前記頻度変更手段に、前記非吐出頻度を変更させる際に、前記主走査方向における全画素のうち所定数の画素を、前記第1吐出ドット情報を基準として前記主走査方向に読み出させ、前記第2吐出ドット情報を読み出させる前に、前記非吐出頻度を変更した頻度変更ドットデータを生成させる、液体吐出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットプリンタ等の画像記録装置に用いられる液体吐出装置、液体吐出方法、および液体吐出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には吐出量変更手段を備えた液体吐出装置が開示されている。この液体吐出装置においては、吐出量変更手段によって、非吐出期間が所定期間以上である場合に、当該非吐出期間経過後の少なくとも初回の吐出動作で吐出するインクドットのサイズが印字データで規定されたサイズよりも大きいサイズになるように設定される。これによって、インク溶媒の蒸発等によりノズル開口近傍のインク粘度が上昇していたとしても、インク滴が増量されることでインク粘度の上昇に起因するドットの形状や位置のばらつきを少なくすることができるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4484293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、初回の吐出動作で吐出するインクドットのサイズが印字データで規定されたサイズよりも大きいため、つまりサイズが必要以上に大きいため、画質の低下を招いてしまうという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、画質の低下を抑制することができる液体吐出装置、液体吐出方法、および液体吐出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、ノズルと、前記ノズルに連通した圧力室と、前記圧力室の液体に圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動するための駆動信号を生成する波形生成回路と、制御装置と、を備え、前記駆動信号は、前記ノズルから液滴を吐出させるように前記圧力室の前記液体に圧力を付与する吐出駆動信号、前記ノズルから前記液滴を吐出させず前記ノズルのメニスカスを振動させるように前記圧力室の前記液体に圧力を付与する非吐出駆動信号、および、前記ノズルのメニスカスを振動させない非振動信号を含み、前記制御装置は、画像データに基づき、主走査方向における複数の画素に配置される、前記吐出駆動信号に対応する第1吐出ドット情報、前記第1吐出ドット情報と異なる第2吐出ドット情報、前記非吐出駆動信号に対応する非吐出ドット情報、および、前記非振動信号に対応する吐出ドット無情報を含むドットデータを生成するドットデータ生成部と、前記ドットデータにおける前記第1吐出ドット情報と前記第2吐出ドット情報との間隔である吐出間隔に配置される前記非吐出ドット情報の数である非吐出頻度を変更する頻度変更部と、を有しており、前記頻度変更部は、前記非吐出頻度を変更する際に、前記主走査方向における全画素のうち所定数の画素を、前記第1吐出ドット情報を基準として前記主走査方向に読み出し、前記第2吐出ドット情報を読み出す前に、前記非吐出頻度を変更した頻度変更ドットデータを生成するものである。
【0007】
本発明に従えば、ドットデータにおいて第1吐出ドット情報を基準として非吐出頻度が変更される。これにより、吐出から長時間が経過することに起因したノズル近傍のインクの増粘を抑制するためのフラッシングを行うことができると共に、従来のように大ドットの液滴を吐出する処理を行う必要がないため、画質の低下を抑制することができる。また、頻度変更部により非吐出頻度を変更する際に、主走査方向における全画素を読み出すのではなく、主走査方向における全画素のうち所定数の画素が、第1吐出ドット情報を基準として主走査方向に読み出され、第2吐出ドット情報が読み出される前に上記非吐出頻度が変更される。これによってメモリの使用量を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画質の低下を抑制することができる液体吐出装置、液体吐出方法、および液体吐出プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置の概略構成を示す平面図である。
図2図1の吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
図3図1の液体吐出装置を備えた画像記録装置の構成を示すブロック図である。
図4】(a)はドットデータの一例を示す説明図であり、(b)は第1マスクデータの一例を示す説明図であり、(c)は(a)のドットデータに(b)の第1マスクデータを適用したドットデータを示す説明図であり、(d)は第2マスクデータの一例を示す説明図であり、(e)は(c)のドットデータに(d)の第2マスクデータを適用して生成した頻度変更ドットデータを示す説明図である。
図5】非吐出頻度テーブルの一例を示す説明図である。
図6】(a)は非吐出頻度の変更前のドットデータに対応する駆動信号を示す図であり、(b)は非吐出頻度が変更された頻度変更ドットデータに対応する駆動信号を示す図である。
図7】液体吐出方法を説明するためのフローチャートである。
図8】(a)は頻度変更ドットデータを示す説明図であり、(b)は空白データの一例を示す説明図であり、(c)は(a)の頻度変更ドットデータに(b)の空白データを適用したドットデータを示す説明図であり、(d)はキャンセルパルスにより吐出駆動信号をキャンセルすることをドットデータ形式で示した説明図であり、(e)は(c)のドットデータに(d)のキャンセルパルスを適用したドットデータの説明図である。
図9】(a)はキャンセルパルスを追加する前のドットデータに対応する駆動信号を示す図であり、(b)はキャンセルパルスが追加されたドットデータに対応する駆動信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る液体吐出装置、液体吐出方法、および液体吐出プログラムについて図面を参照しながら説明する。以下に説明する液体吐出装置、液体吐出方法、および液体吐出プログラムは本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の液体吐出装置10は、液体の一例としてインクを吐出するものであって、貯留タンク12、キャリッジ16、吐出ヘッド20、一対の搬送ローラ15、一対のガイドレール17、およびサブタンク18を備えている。なお、液体吐出装置10において図略のプラテン上に用紙14が配置される。
【0012】
キャリッジ16には吐出ヘッド20が搭載されている。キャリッジ16は、用紙14の搬送方向に直交する主走査方向に延在する一対のガイドレール17に支持され、当該ガイドレール17に沿って主走査方向に往復動する。これにより、吐出ヘッド20は主走査方向に往復動する。また、キャリッジ16には、例えば4つのサブタンク18が搭載されている。各サブタンク18はチューブを介して対応する貯留タンク12にそれぞれ接続されている。
【0013】
一対の搬送ローラ15は主走査方向に沿って互いに平行に配置されている。搬送ローラ15は図略の搬送モータが駆動されると回転し、これによりプラテン上の用紙14が搬送方向に搬送されるようになっている。
【0014】
貯留タンク12にはインクが貯留されている。貯留タンク12は、吐出ヘッド20にインクを供給すべくインク流路を介して吐出ヘッド20に接続されている。また、貯留タンク12は、インクの種類ごとに設けられている。貯留タンク12は、例えば4つ設けられ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクがそれぞれ貯留されている。
【0015】
吐出ヘッド20は搬送方向に直交する主走査方向に移動する。図2に示すように、吐出ヘッド20はインクを吐出する複数のノズル21を有する。吐出ヘッド20は流路形成体と容積変更部の積層体を有している。流路形成体には、その内部に液体流路が形成され、その下面である吐出面40aに複数のノズル孔21aが開口して設けられている。また、上記の容積変更部は、駆動されて液体流路の容積を変更する。このとき、ノズル孔21aではメニスカスが振動してインクが吐出される。以下、吐出ヘッド20の構成について詳細に説明する。
【0016】
図2に示すように、吐出ヘッド20の上述の流路形成体は複数のプレートの積層体であり、容積変更部は振動板55およびアクチュエータ(圧電素子)60を含む。振動板55の上には絶縁膜56が接続されており、当該絶縁膜56の上には後述の共通電極61が接続されている。
【0017】
複数のプレートは、下から順に、ノズルプレート46、スペーサプレート47、第1流路プレート48、第2流路プレート49、第3流路プレート50、第4流路プレート51、第5流路プレート52、第6流路プレート53、および第7流路プレート54を含んで積層されている。上記の第1流路プレート48、第2流路プレート49、第3流路プレート50、第4流路プレート51、および第5流路プレート52がマニホールド用プレート44を構成する。
【0018】
各プレートには、大小種々の孔および溝が形成されている。各プレートが積層された流路形成体の内部では孔および溝が組み合わされて、複数のノズル21、複数の個別流路64およびマニホールド22が液体流路として形成されている。
【0019】
ノズル21はノズルプレート46を積層方向に貫通し形成されている。ノズルプレート46の吐出面40aには、ノズル21の先端である複数のノズル孔21aが配列方向に複数並んでノズル列を形成している。上記の配列方向は積層方向に直交する方向である。
【0020】
マニホールド22は、液体の吐出圧力が付与される後述の圧力室28に対して液体を供給する。マニホールド22は、配列方向に延在しており、複数の個別流路64の各一端にそれぞれ接続されている。すなわち、マニホールド22は液体の共通流路として機能する。マニホールド22は、第1流路プレート48~第4流路プレート51を積層方向に貫通した貫通孔および第5流路プレート52の下面から窪んだ窪みが積層方向に重なって形成されている。
【0021】
ノズルプレート46はスペーサプレート47の下方に配置されている。そのスペーサプレート47は例えばステンレス鋼材で形成される。スペーサプレート47は、例えばハーフエッチングによりノズルプレート46側の面からスペーサプレート47の厚み方向に凹むことで、ダンパ部47aを成す薄肉部分とダンパ空間47bとが形成される凹部45を有している。このような構成により、マニホールド22とノズルプレート46との間には、バッファー空間としてのダンパ空間47bが形成される。
【0022】
マニホールド22には供給ポート22aが連通している。供給ポート22aは例えば筒状に形成され、配列方向(マニホールド22の長手方向)の一方端に設けられている。なお、マニホールド22と供給ポート22aとは、第5流路プレート52の上側部分、第6流路プレート53、および第7流路プレート54をそれぞれ貫通して設けられた図略の流路により繋がっている。
【0023】
複数の個別流路64はマニホールド22にそれぞれ接続されている。個別流路64は、その上流端がマニホールド22に接続され、その下流端がノズル21の基端に接続されている。個別流路64は、第1連通孔25、個別絞り路である供給絞り路26、第2連通孔27、圧力室28、およびディセンダ29で構成されており、これらの構成要素はこの順で配置される。
【0024】
第1連通孔25は、その下端がマニホールド22の上端に接続し、マニホールド22から積層方向の上方に延び、第5流路プレート52における上側部分を積層方向に貫通している。
【0025】
供給絞り路26の上流端は第1連通孔25の上端に接続されている。供給絞り路26は、例えばハーフエッチングにより形成され、第6流路プレート53の下面から窪んだ溝により構成されている。また、第2連通孔27は、その上流端が供給絞り路26の下流端に接続され、供給絞り路26から積層方向の上方に延び、第6流路プレート53を積層方向に貫通して形成されている。
【0026】
圧力室28は、その上流端が第2連通孔27の下流端に接続されている。圧力室28は、第7流路プレート54を積層方向に貫通して形成されている。
【0027】
ディセンダ29は、スペーサプレート47、第1流路プレート48、第2流路プレート49、第3流路プレート50、第4流路プレート51、第5流路プレート52、および第6流路プレート53を積層方向に貫通して形成され、幅方向においてマニホールド22よりも図2において左側に配置されている。ディセンダ29は、その上流端が圧力室28の下流端に接続され、下流端がノズル21の基端に接続されている。ノズル21は、例えば積層方向においてディセンダ29に重なり、当該積層方向に直交する方向(幅方向)においてディセンダ29の中央に配置されている。
【0028】
振動板55は、第7流路プレート54の上に積層されており、圧力室28の上端開口を覆っている。
【0029】
アクチュエータ60は、共通電極61、圧電層62および個別電極63を含み、これらはこの順で配置されている。共通電極61は、絶縁膜56を介して振動板55の全面を覆っている。圧電層62は、圧力室28ごとに設けられ、当該圧力室28に重なるように共通電極61上に配置されている。個別電極63は、圧力室28ごとに設けられ、圧電層62上に配置されている。1つの個別電極63、共通電極61および両電極で挟まれた部分の圧電層62により1つのアクチュエータ60が構成される。
【0030】
個別電極63はドライバICに電気的に接続されている。このドライバICは、図略の制御部から制御信号を受けて、駆動信号(電圧信号)を生成し、個別電極63に印加する。これに対し、共通電極61は常にグランド電位に保持されている。このような構成において、駆動信号に応じて、圧電層62の活性部が、2つの電極61,63と共に面方向に伸縮する。これに応じて、振動板55が協働して変形し、圧力室28の容積を増減する方向に変化する。これにより、液体をノズル21から吐出させる吐出圧力が圧力室28に付与される。
【0031】
以上のような吐出ヘッド20において、供給ポート22aは配管を介してサブタンク18に接続されている。配管に設けられた加圧ポンプが駆動すると、液体はサブタンク18から配管を通り、供給ポート22aを介してマニホールド22に流入する。そして、液体はマニホールド22から第1連通孔25を介して供給絞り路26に流入し、供給絞り路26から第2連通孔27を介して圧力室28に流入する。そして、液体はディセンダ29を流れ、ノズル21に流入する。ここで、アクチュエータ60により圧力室28に吐出圧力が付与されると、液体はノズル孔21aから吐出される。
【0032】
次いで、本実施形態の液体吐出装置10を備える、例えばインクジェットプリンタ等の画像記録装置1について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図3に示すように、画像記録装置1は、上記の液体吐出装置10の他に、ネットワークインターフェース(I/F)70、CPU等で構成される制御装置71、RAM72、ROM73、ヘッドドライバIC74、温度センサ75、波形生成回路76、記録媒体読取り装置77、モータドライバIC30,32、搬送モータ31、およびキャリッジモータ33を備えている。
【0034】
制御装置71は、その機能的構成として、温度補正部71a、ドットデータ生成部71b、頻度変更部71c、吐出ドット無情報変更部71d、キャンセルパルス生成部71e、および印字データ生成部71fを有している。制御装置71が所定のプログラムを実行することによって、上記の温度補正部71a、ドットデータ生成部71b、頻度変更部71c、吐出ドット無情報変更部71d、キャンセルパルス生成部71e、および印字データ生成部71fが機能的に実現されるようになっている。なお、ドットデータ生成部71bはドットデータ生成手段に相当し、頻度変更部71cは頻度変更手段に相当する。
【0035】
温度センサ75はキャリッジ16上に設けられる。温度センサ75はキャリッジ16付近の雰囲気温度を検知する。なお、温度センサ75は温度検知部に相当する。
【0036】
波形生成回路76はアクチュエータ60を駆動するための駆動信号を生成する。本実施形態において、この駆動信号には、ノズル21から液滴を吐出させるように圧力室28の液体に圧力を付与する吐出駆動信号、ノズル21から液滴を吐出させずノズル21のメニスカスを振動させるように圧力室28の液体に圧力を付与する非吐出駆動信号、およびノズル21のメニスカスを振動させない非振動信号が含まれる。
【0037】
制御装置71の温度補正部71aは、温度センサ75による検知結果が液体の実際の温度と同値又は近似値となるように当該検知結果を補正する。これにより、液体の実際の温度を直接検知せずとも液体の実際の温度と同値又は近似値を得ることができる。
【0038】
ドットデータ生成部71bは、外部装置であるコンピュータ200等から送信される画像データに基づき、図4(a),(c)に示すように、主走査方向における複数の画素pxに配置される第1吐出ドット情報I1、第2吐出ドット情報I2、非吐出ドット情報Ih、および吐出ドット無情報Imを含むドットデータDd2を生成する。第1吐出ドット情報I1は吐出駆動信号に対応し、第2吐出ドット情報I2は吐出駆動信号に対応すると共に第1吐出ドット情報I1とは異なるものである。非吐出ドット情報Ihは非吐出駆動信号に対応する。吐出ドット無情報Imは非振動信号に対応し、図4(a),(c),(e)の各データの中において空白とした部分(「00」,「01」,「11」以外の部分)である。また、第1吐出ドット情報I1は液滴として例えば小玉を吐出するための小ドット情報Isであり、第2吐出ドット情報I2は液滴として例えば大玉を吐出するための大ドット情報Ibである。なお、図4(a)~(e)の各データの詳細については後述する。
【0039】
頻度変更部71cは、図4(c)のドットデータDd2における第1吐出ドット情報I1と第2吐出ドット情報I2との間隔である吐出間隔ITに配置される非吐出ドット情報Ihの数である非吐出頻度を変更する。なお、頻度変更部71cの機能については後で詳細に説明する。
【0040】
吐出ドット無情報変更部71dは、非吐出ドット情報Ihを吐出ドット無情報Imに変更する。なお、吐出ドット無情報変更部71dの機能については、後で詳細に説明する。
【0041】
キャンセルパルス生成部71eは、図4(e)の頻度変更ドットデータDdhにおいて大ドット情報Ibが第1駆動周期に入力され、大ドット情報Ib又は小ドット情報Isの何れかが第2駆動周期に入力される場合に、第1駆動周期に吐出駆動信号をキャンセルするためのキャンセルパルスを追加する。なお、キャンセルパルス生成部71eの機能については、後で詳細に説明する。また、印字データ生成部71fは印字データを生成する。
【0042】
RAM72は、外部のパーソナルコンピュータ等のコンピュータ200からネットワークインターフェース70を介して受信した印刷ジョブを一時的に記憶する。また、RAM72は吐出データ等を一時的に記憶する。
【0043】
ROM73は、本実施形態の液体吐出プログラムや各種データ処理を行うための制御プログラムを記憶する。
【0044】
ヘッドドライバIC74は制御装置71からの指示を受けて吐出ヘッド20に液滴を吐出させる。同様に、モータドライバIC30は制御装置71からの指示を受けて搬送モータ31の駆動制御を行う。搬送モータ31は、搬送ローラ15を動作させることで用紙14を搬送方向に搬送する。また、モータドライバIC32は制御装置71からの指示を受けてキャリッジモータ33の駆動制御を行う。キャリッジモータ33は、キャリッジ16を動作させることで吐出ヘッド20を主走査方向に移動させる。
【0045】
記録媒体読取り装置77は、例えば、フレキシブルディスク、CD(CD-ROM,CD-R,CD-RW等)、DVD(DVD-ROM,DVD-RAM,DVD-R,DVD+R,DVD-RW,DVD+RW等)、ブルーレイディスク、磁気ディスク、光ディスク、および光磁気ディスク等のコンピュータ読取可能な記録媒体KBから液体吐出プログラムを読み出す装置である。この記録媒体読取り装置77は、例えばUSBフラッシュメモリ等の記録媒体から液体吐出プログラムを読み出す装置であってもよい。読み出された液体吐出プログラムはROM73に保存され、制御装置71により実行される。なお、本実施形態の液体吐出プログラムは、外部のコンピュータ200からネットワークインターフェース70を介してROM73に保存してもよいし、或いはインターネットからダウンロードしてROM73に保存してもよい。
【0046】
続いて、頻度変更部71cの機能について、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0047】
図4(a)に示すように、ドットデータ生成部71bにより生成され、主走査方向における複数の画素pxに配置された第1吐出ドット情報I1、第2吐出ドット情報I2、第3吐出ドット情報I3および吐出ドット無情報Imを含むドットデータDd1があるとする。頻度変更部71cによって、ドットデータDd1に対して、所定の非吐出頻度を有する図4(b)のマスクデータDm1が適用されると、図4(c)のドットデータDd2となる。このようなマスクデータDm1の適用によって、図4(c)のドットデータDd2において吐出間隔ITに配置される非吐出ドット情報Ihの数は1つ(便宜的一例)となる。なお、マスクデータDm1および後記のマスクデータDm2を含む複数のマスクデータはROM73等に記憶される。
【0048】
なお、図4(c)に示すように、マスクデータDm1において、ドットデータDd1の第3吐出ドット情報I3と主走査方向における同位置に非吐出ドット情報Ihが存在する場合には、当該非吐出ドット情報Ihを第3吐出ドット情報I3に適用しない。これにより、図4(c)のドットデータDd2において第3吐出ドット情報I3が残るようになっている。なお、第3吐出ドット情報I3を大ドット情報Ibとする。
【0049】
以上を前提として、本実施形態において、頻度変更部71cにより非吐出頻度が変更される処理について、以下具体的に説明する。頻度変更部71cは、非吐出頻度を変更する際に、図4(c)のドットデータDd2において、主走査方向における全画素pxのうち、第1吐出ドット情報I1を基準として所定数(例えば図4では4つ)の画素(画素群)px1を主走査方向に読み出す。このとき、頻度変更部71cは、第1吐出ドット情報I1を基準として全画素を読み出すことはせずに、第1吐出ドット情報I1を基準として主走査方向に次々とリアルタイムで各画素pxを読み出す。本例では、頻度変更部71cに読み出された4つの画素(画素群)を上記のpx1とする。
【0050】
頻度変更部71cは、上述の通り画素px1を読み出した後、かつ、第2吐出ドット情報I2を読み出す前に、非吐出頻度を変更する。すなわち、頻度変更部71cは、主走査方向に次々と読み出していく中で、第1吐出ドット情報I1と第2吐出ドット情報I2との間において、ドット情報が存在しない画素px(本例では4つの画素px1)が存在することをリアルタイムで認識する。
【0051】
そして、頻度変更部71cは、上記認識の後に、隣り合う非吐出ドット情報Ih同士の間隔が上述のマスクデータDm1よりも短い図4(d)のマスクデータDm2を図4(c)のドットデータDd2に対して適用する。これにより、頻度変更部71cによって、印字データとしての図4(e)の頻度変更ドットデータDdhが生成される。頻度変更ドットデータDdhは印字データとしてヘッドドライバIC74に送信される。以上のように、第1吐出ドット情報I1の後に吐出ドット無情報Imが配置されている場合に、吐出間隔ITに非吐出ドット情報Ihを配置する数が多くなるほど吐出ドット無情報Imが非吐出ドット情報Ihに書き換えられる。本例において、頻度変更部71cは、図5に示すような非吐出頻度テーブルThを用いることができる。非吐出頻度テーブルThはROM73等に記憶され、吐出間隔ITに応じて非吐出頻度を規定したテーブルである。頻度変更部71cはこの非吐出頻度テーブルThに基づき、適用すべきマスクデータDm2を選択する。
【0052】
ドットデータDd2に対してマスクデータDm2を適用する際には、頻度変更部71cは、複数の非吐出ドット情報Ihの主走査方向における連続配置を避けるために、図4(d)のマスクデータDm2における非吐出ドット情報Ih1についてはドットデータDd2に適用しない。また、頻度変更部71cは、吐出直後はフラッシングを実行する意義が小さいことに鑑み、図4(d)のマスクデータDm2における非吐出ドット情報Ih2についてはドットデータDd2に適用しない。
【0053】
以上のように生成された頻度変更ドットデータDdhでは、第1吐出ドット情報I1と第2吐出ドット情報I2との間の複数の画素pxにおいて2つの非吐出ドット情報Ihが配置される。このようにマスクデータDm2の適用によって、図4(e)の頻度変更ドットデータDdhの吐出間隔ITに配置される非吐出ドット情報Ihの数は2つとなる。これにより、図4(e)の頻度変更ドットデータDdhにおいて、図4(c)のドットデータDd2よりも非吐出頻度を高くすることができる。
【0054】
次に、非吐出頻度が変更される前のドットデータDd2に対応する駆動信号、および当該非吐出頻度が変更された頻度変更ドットデータDdhに対応する駆動信号について、図面を参照しながら説明する。
【0055】
図6(a)に示すように、波形生成回路76は、ドットデータDd2を実現する駆動波形として、第1吐出ドット情報I1に対応するパルスである吐出駆動信号Snと第2吐出ドット情報I2に対応するパルスである吐出駆動信号Smとの間に、吐出間隔ITにおける非吐出ドット情報Ihに対応するパルスである非吐出駆動信号Saを配置した駆動波形を生成する。同図においてパルスでない部分は、吐出ドット無情報Imに対応する非振動信号Shである。吐出駆動信号Snの駆動周期はknであり、非吐出駆動信号Saの駆動周期は駆動周期knよりも大きな整数であるkaであり、吐出駆動信号Smの駆動周期は駆動周期kaよりも大きな整数であるkmである。
【0056】
一方、図6(b)に示すように、波形生成回路76は、頻度変更ドットデータDdhを実現する駆動波形として、図6(a)の駆動波形における非吐出駆動信号Saと吐出駆動信号Smとの間に、吐出間隔ITにおける他の非吐出ドット情報Ihに対応するパルスである非吐出駆動信号Sbを配置した駆動波形を生成する。非吐出駆動信号Sbの駆動周期は駆動周期kaよりも大きな整数であるkbとする。
【0057】
以下、本実施形態における頻度変更部71cの他の機能について説明する。頻度変更部71cは、温度センサ75により検知された検知温度又は当該検知温度が温度補正部71aにより補正された補正温度が所定温度範囲よりも低い場合には、検知温度又は補正温度が所定温度範囲(例えば常温範囲。以下同じ)に収まるときに比べて、吐出ドット無情報Imを書き換える非吐出ドット情報Ihの数を増やす。これは、低温環境におけるインクの高粘性化を抑制するための処理である。詳細には、低温環境下では、インクの粘度が上がり、所定温度範囲環境下のときと同じ吐出駆動信号を使用しても、所定温度範囲環境下のときと同じような体積のインク滴が吐出されない。このため、濃度の低い画像になってしまう。そこで、上記の通り非吐出駆動信号をもってして非吐出ドット情報Ihの数を増やすことでインクにエネルギーを与え、それ故インクの粘度を下げることによって、所定温度範囲環境下のときと同じ体積のインク滴が吐出されるようにすることができる。また、低温環境下では、湿度も低下する傾向にあるため、ノズル近傍のインクから水分が蒸発し、当該インクの粘度が上がり易い状態にある。そこで、上記の通り非吐出駆動信号の数を増やすことで、ノズル近傍のインクとノズルから離れたインクとを混ぜることにより、ノズル近傍のインクの粘度が上がらないようにすることが可能となる。
【0058】
これに対して、頻度変更部71cは、検知温度又は補正温度が所定温度範囲よりも高い場合には、検知温度又は補正温度が所定温度範囲に収まるときに比べて、吐出ドット無情報Imを書き換える非吐出ドット情報Ihの数を減らす。これは、高温環境におけるインクの低粘性化を考慮した処理である。詳細には、高温環境下では、インクの粘度が下がり、所定温度範囲環境下のときと同じ吐出駆動信号を使用しても、所定温度範囲環境下のときと同じような体積のインク滴が吐出されず、より大きな体積のインク滴が吐出される。このため、濃度の高い画像になってしまう。そこで、非吐出駆動信号をもってして非吐出ドット情報Ihの数を減らすことでインクに与えるエネルギーを減らし、それ故インクの粘度が下がるのを抑制して、所定温度範囲環境下のときと同じ体積のインク滴が吐出されるようにすることができる。
【0059】
また、頻度変更部71cは、上記検知温度又は上記補正温度が所定温度範囲よりも低い場合には、検知温度又は補正温度が所定温度範囲に収まるときに比べて、非吐出駆動信号Saを形成するパルスの幅ph(図6(b))を大きくする。これは、低温環境におけるインクの高粘性化を抑制するための処理である。詳細には、パルス幅を大きくすると、メニスカスがより大きく揺れるので、ノズル近傍のインクとノズルから離れたインクとを効率的に混ぜることができ、それ故ノズル近傍のインクの粘度が上がらないようにすることができる。これに対して、頻度変更部71cは、検知温度又は補正温度が所定温度範囲よりも高い場合には、検知温度又は補正温度が所定温度範囲に収まるときに比べて、非吐出駆動信号Saを形成するパルスの幅phを小さくする。これは、高温環境におけるインクの低粘性化を考慮した処理である。詳細には、パルス幅を小さくすると、メニスカスがより小さく揺れるので、ノズル近傍のインクとノズルから離れたインクとを混ぜる効率を低下させることができ、それ故ノズル近傍のインクの粘度が下がり過ぎないようにすることができる。また、余計なエネルギーをインクに与えることに起因してインクの粘度がより下がってしまったり、より大きな体積のインク滴が吐出されてしまったりすることを抑制することができる。
【0060】
さらに、頻度変更部71cは、検知温度又は補正温度が所定温度範囲よりも低い場合には、検知温度又は補正温度が所定温度範囲に収まるときに比べて、非吐出駆動信号Sa,Sbを形成するパルスの数を増加させる。これは、低温環境におけるインクの高粘性化を抑制するための処理である。詳細には、非吐出駆動信号を構成するパルス数を増やすことで、1つの非吐出駆動振動をもってしてインクにより多くのエネルギーを与えて、インクの粘度を下げることができる。このため、所定温度範囲環境下のときと同じ体積のインク滴が吐出されるようにすることができる。これに対して、頻度変更部71cは、検知温度又は補正温度が所定温度範囲よりも高い場合には、検知温度又は補正温度が所定温度範囲に収まるときに比べて、非吐出駆動信号Sa,Sbを形成するパルスの数を減少させる。これは、高温環境におけるインクの低粘性化を考慮した処理である。詳細には、非吐出駆動信号を構成するパルス数を減らすことで、1つの非吐出駆動振動に従ってインクに与えるエネルギーを小さくすることができる。このため、インクの粘度が上がることを抑制することができる。そして、所定温度範囲環境下のときと同じ体積のインク滴が吐出されるようにすることができる。
【0061】
次に、以上説明した処理を含む液体吐出方法について、フローチャートを参照しつつ簡単に説明する。
【0062】
図7に示すように、制御装置71のドットデータ生成部71bによるドットデータ生成工程が実行される(ステップS1)。次に、頻度変更部71cによる吐出間隔ITを取得する処理が実行された後(ステップS2)、頻度変更部71cによる温度センサ75からの検知温度を取得する処理が実行される(ステップS3)。
【0063】
続いて、頻度変更部71cによる非吐出頻度を変更する処理が実行される(ステップS4)。その後、波形生成回路76による駆動波形を生成する処理が実行され(ステップS5)、制御装置71の指示に基づきヘッドドライバIC74による吐出ヘッド20の吐出制御が実行される(ステップS6)。
【0064】
次いで、本実施形態において、上述した頻度変更ドットデータDdhに対してさらに以下の処理を行うことができる。
【0065】
図8(a)に示す頻度変更ドットデータDdhは、上述の図4(e)の頻度変更ドットデータDdhと同じである。図8(a)の頻度変更ドットデータDdhにおいては、小ドット情報Isである第1吐出ドット情報I1の1つ前(主走査方向の1つ前)に非吐出ドット情報Ihが配置されており、大ドット情報Ibである第2吐出ドット情報I2の1つ前に非吐出ドット情報Ihが配置されている。
【0066】
上記の場合に、吐出ドット無情報変更部71dは、非吐出ドット情報Ihに対応する圧力付与に起因する振動を抑制する観点で、非吐出ドット情報Ihを吐出ドット無情報Imに変更する。詳細には、吐出ドット無情報変更部71dは、図8(a)の頻度変更ドットデータDdhに対して、図8(b)の空白データDsを生成しこれを適用することで、印字データとしてのドットデータDc1を生成する。この場合、図8(a)の一方の非吐出ドット情報Ihに図8(b)の一方の空白情報Ikが適用されることで、ドットデータDc1においては吐出ドット無情報Imとなる。また、図8(a)の他方の非吐出ドット情報Ihに図8(b)の他方の空白情報Ikが適用されることで、図8(c)のドットデータDc1においては吐出ドット無情報Imとなる。
【0067】
また、上記のドットデータDc1に対して、さらに以下の処理を行うことができる。図8(c)のドットデータDc1においては、大ドット情報Ibである第2吐出ドット情報I2と、同じく大ドット情報Ibである第3吐出ドット情報I3とが主走査方向に連続して配置されている。このような場合に、キャンセルパルス生成部71eは、図9(b)に示すように、ドットデータDc1の第2吐出ドット情報I2に対応する吐出駆動信号SnをキャンセルするためのキャンセルパルスScaを駆動波形に追加する。この処理をドットデータで説明すると、図8(c)のドットデータDc1に対して、図8(d)の取り消しデータDcaを適用する。このことによって、図8(e)に示すように第2吐出ドット情報I2を実現する大玉の吐出は実行するが、その後即時に当該第2吐出ドット情報I2に対応する吐出駆動信号SnがキャンセルされるドットデータDc2が印字データ生成部71fにより生成される。
【0068】
上記キャンセルパルスScaは、直前の非吐出ドット情報Ihに対応する非吐出駆動信号Saから1アコースティックレングス(1AL)遅れた信号である。アコースティックレングスとは、個別流路の固有振動周期の半分の時間として表され、「AL」と表記される。なお、図9(a),(b)においてkn1は吐出駆動信号Snの駆動周期(第1駆動周期に対応)であり、km1は駆動周期kn1の後に隣接する駆動周期であって、駆動周期kn1よりも大きな整数である吐出駆動信号Smの駆動周期(第2駆動周期に対応)である。第1駆動周期である駆動周期kn1には、第1吐出ドット情報I1および第2吐出ドット情報I2、非吐出ドット情報Ih、および吐出ドット無情報Imの何れか1つが入力される。
【0069】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置10によれば、ドットデータDd2における第1吐出ドット情報I1を基準として非吐出頻度が変更された頻度変更ドットデータDdhが生成される。これにより、吐出から長時間が経過することに起因したノズル21近傍の液体の増粘を抑制するためのフラッシングを行うことができると共に、従来のように大ドットの液滴を吐出する処理を行う必要がないため、画質の低下を抑制することができる。また、頻度変更部71cにより非吐出頻度を変更する際に、主走査方向における全画素を読み出すのではなく、主走査方向における全画素のうち所定数の画素px1が、第1吐出ドット情報I1を基準として主走査方向に読み出され、第2吐出ドット情報I2が読み出される前に上記非吐出頻度が変更される。これによってメモリの使用量を小さくすることができる。
【0070】
また、本実施形態では、頻度変更部71cは、吐出間隔ITに非吐出ドット情報Ihを配置する数が多くなるほど吐出ドット無情報Imを非吐出ドット情報Ihに書き換える。これによって、インク粘度の上昇に起因するドットの形状や位置のばらつきをより少なくすることができる。このため、画質の低下をより抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、頻度変更部71cは、温度センサ75により検知された検知温度又は当該検知温度が温度補正部71aにより補正された補正温度が所定温度範囲よりも低い場合には、検知温度又は補正温度が所定温度範囲(例えば常温範囲)に収まるときに比べて、吐出ドット無情報Imを書き換える非吐出ドット情報Ihの数を増やす。これにより、低温環境におけるインクの高粘性化を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態では、頻度変更部71cは、上記検知温度又は上記補正温度が所定温度範囲よりも低い場合には、検知温度又は補正温度が所定温度範囲に収まるときに比べて、非吐出駆動信号Saを形成するパルスの幅phを大きくする。これにより、低温環境におけるインクの高粘性化を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、頻度変更部71cは、検知温度又は補正温度が所定温度範囲よりも低い場合には、検知温度又は補正温度が所定温度範囲に収まるときに比べて、非吐出駆動信号Sa,Sbを形成するパルスの数を増加させる。これにより、低温環境におけるインクの高粘性化を抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態では、頻度変更部71cは、検知温度又は補正温度が所定温度範囲よりも高い場合には、検知温度又は補正温度が所定温度範囲に収まるときに比べて、吐出ドット無情報Imを書き換える非吐出ドット情報Ihの数を減らす。これにより、高温環境におけるインクの低粘性化を考慮して余分な非吐出ドット情報Ihを減少させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、頻度変更部71cは、検知温度又は補正温度が所定温度範囲よりも高い場合には、検知温度又は補正温度が所定温度範囲に収まるときに比べて、非吐出駆動信号Saを形成するパルスの幅phを小さくする。これにより、高温環境におけるインクの低粘性化を考慮して上記パルスの幅phを不必要に大きくすることを避けることができる。
【0076】
また、本実施形態では、頻度変更部71cは、検知温度又は補正温度が所定温度範囲よりも高い場合には、検知温度又は補正温度が所定温度範囲に収まるときに比べて、非吐出駆動信号Sa,Sbを形成するパルスの数を減少させる。これにより、高温環境におけるインクの低粘性化を考慮して上記パルスの数を不必要に増やすことを避けることができる。
【0077】
また、本実施形態では、小ドット情報Isである第1吐出ドット情報I1の1つ前に非吐出ドット情報Ihが配置され、大ドット情報Ibである第2吐出ドット情報I2の1つ前に非吐出ドット情報Ihが配置されている場合に、吐出ドット無情報変更部71dは非吐出ドット情報Ihを吐出ドット無情報Imに変更する。これによって、非吐出ドット情報Ihに対応する圧力付与に起因する振動を抑制することができる。このため、第1吐出ドット情報I1および第2吐出ドット情報I2に対応する各液滴の吐出への振動の影響を抑制又は防止することができる。
【0078】
また、本実施形態では、キャンセルパルス生成部71eは、大ドット情報Ibである第2吐出ドット情報I2と、同じく大ドット情報Ibである第3吐出ドット情報I3とが主走査方向に連続して配置されている場合にキャンセルパルスScaを駆動波形に追加する。これにより、第3吐出ドット情報I3に対応する液滴の吐出への振動の影響を抑制又は防止することができる。
【0079】
さらに、本実施形態では、キャンセルパルスScaは直前の非吐出ドット情報Ihに対応する非吐出駆動信号Saから1アコースティックレングス遅れた信号となっている。これにより、非吐出駆動信号Saに起因する振動のキャンセルパルスScaへの影響を抑制又は防止することができる。
【0080】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0081】
上記実施形態では、温度センサ75による検知結果を温度補正部71aで補正した補正値を用いたが、これに限らず、温度センサ75による検知結果を直接用いてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、頻度変更部71cが読み出す所定数の画素px1を4画素としたが、所定数の画素px1は任意数である。
【0083】
さらに、上記実施形態では、小ドット情報Isである第1吐出ドット情報I1の1つ前に非吐出ドット情報Ihが配置され、大ドット情報Ibである第2吐出ドット情報I2の1つ前に非吐出ドット情報Ihが配置されている場合に、吐出ドット無情報変更部71dは非吐出ドット情報Ihを吐出ドット無情報Imに変更するようにした。しかし、これに限定されるものではなく、中ドット情報がありその1つ前に非吐出ドット情報Ihが配置される場合にも、非吐出ドット情報Ihを吐出ドット無情報Imに変更してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 画像記録装置
10 液体吐出装置
20 吐出ヘッド
21 ノズル
28 圧力室
60 アクチュエータ
71 制御装置
71a 温度補正部
71b ドットデータ生成部
71c 頻度変更部
71d 吐出ドット無情報変更部
71e キャンセルパルス生成部
75 温度センサ
76 波形生成回路
Dc1,Dc2,Dd1,Dd2 ドットデータ
Ddh 頻度変更ドットデータ
I1 第1吐出ドット情報
I2 第2吐出ドット情報
Ib 大ドット情報
Ih 非吐出ドット情報
Im 吐出ドット無情報
Is 小ドット情報
IT 吐出間隔
px 画素
px1 所定数の画素
Sa,Sb 非吐出駆動信号
Sca キャンセルパルス
Sh 非振動信号
Sm,Sn 吐出駆動信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9