(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055516
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】養殖用水殺菌具
(51)【国際特許分類】
A01K 63/04 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
A01K63/04 F
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162982
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】597016170
【氏名又は名称】和光技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 晟男
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 昌澄
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104AA05
2B104CA01
2B104EF11
(57)【要約】
【課題】例えば海上の養殖生け簀に適する養殖用水殺菌具を迅速かつ安価に製造すること。
【解決手段】網目に形成された可撓性の一つの長尺袋と、この長尺袋の中に該長尺袋の長手方向に沿って少なくとも一列に押し込まれた2個乃至50個の水処理具と、各水処理具が前記可撓性の長尺袋内でそれぞれ長手方向に略位置変位しないように可撓性の長尺袋の外側から各水処理具の先端部側と後端部側を、それぞれ締付手段を介して袋のネズミ状に閉じ、各水処理具の外観形状は、袋のネズミ状態で、略球体状、略紡錘状、略ソーセージ形状、茄子形状のいずれかであり、水処理具は、少なくとも銅又は亜鉛又は銅と亜鉛の合金のいずれかの金属繊維であり、金属繊維は長尺状包装体に内装されている、養殖用水殺菌具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網目に形成された可撓性の一つの長尺袋と、この長尺袋の中に該長尺袋の長手方向に沿って少なくとも一列に押し込まれた2個乃至50個の水処理具と、前記各水処理具が前記可撓性の長尺袋内でそれぞれ長手方向に略位置変位しないように前記可撓性の長尺袋の外側から前記各水処理具の先端部側と後端部側を、それぞれ締付手段を介して袋のネズミ状に閉じ、前記各水処理具の外観形状は、前記袋のネズミ状態で、略球体状、略紡錘状、略ソーセージ形状、略茄子形状のいずれかであり、前記水処理具は、少なくとも銅又は亜鉛又は銅と亜鉛の合金のいずれかの金属繊維であり、前記金属繊維は長尺状包装体に内装されている、養殖用水殺菌具。
【請求項2】
請求項1の養殖用水殺菌具に於いて、前記可撓性の長尺袋の網目はメッシュ状であり、また前記水処理具の長尺状包装体は、透水性の不織布で形成されていることを特徴とする養殖用水殺菌具。
【請求項3】
請求項1の養殖用水殺菌具に於いて、前記長尺状包装体の長さは、10cmから150cmまでであり、その幅は10cmから30cmまでであることを特徴とする養殖用水殺菌具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖用水殺菌具に関し、特に海上に於ける養殖生け簀に適する養殖用水殺菌具に関する。
【背景技術】
【0002】
まず特許文献1には、上水の残留塩素及び水中に発生する藻類や細菌の除去目的として、不織布や織布で銅繊維や銅ファイバーの塊を包装した袋体を使用する水の浄化用パックが記載され、前記銅繊維や銅ファイバーは、糸条の太さとして60ミクロンから90ミクロンまであることが記載されている。また水の浄化用パックは、可塑性を有するので、折り曲げたり丸めたりして使用できることもできることが記載されている。
【0003】
次に特許文献2には、銅又は亜鉛又は銅と亜鉛の合金のいずれかの金属繊維を、円筒形状の包装体に充填することが記載されている。また前記金属繊維、糸条の太さとして100ミクロンであることが記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の水の浄化用パック及び特許文献2に記載の水殺菌用のカートリッジは、いずれも単体で使用される水処理具であり、例えば海上で魚を養殖する養殖用水殺菌具には適さない。
【0005】
何故ならば、例えばマグロを海上の養殖生け簀で養殖する場合には、普通一般に前記養殖生け簀は27メートルから30メートルの深さである。また、アワビ、サザエ等の貝類を養殖する場合には、前記養殖生け簀は、例えば5メートルから15メートルの深さである。さらに、ヒラメ、鯛などの魚をする場合には、普通一般に前記養殖生け簀は3メートルから15メートルの深さである。このように海上の養殖生け簀は、養殖対象の魚や貝類如何によって、その深さが異なることから、パック式やカートリッジ式の単体水処理具だけでは、海上の養殖生け簀には適しない。
【0006】
そこで、現在、簡単に製造でき、取り扱いや運搬が容易であると共に、例えば海上の深さに対応した設けられた養殖生け簀に適する養殖用水殺菌具の出現が要望されている。
【0007】
ところで、特許文献3には、水質処理部材が、その上部に浮き機構を有し、一方、その下部に錘機構を有し、浄化対象水域の水中に懸垂状態に保持可能な水質処理部材なので、例えばゴルフ場の非常に浅い養殖池に適するものである。
【0008】
しかしながら、該水質処理部材の包体は、一つの網体なので、例えば4メートル乃至30メートルの海水や同様の深さがある供給水中(養殖池、養殖タンク等)に配設される養殖用水殺菌具には適しない。
【0009】
なお、上記特許文献1乃至特許文献3のいずれにも、浄化対象水域の水中に金属繊維を充填した包装体を上下方向に一列状に繋げることは記載され、示唆されていない。また、例えば浄化対象水域の一つである海に於いて、海上の養殖生け簀の浮枠に金属繊維を充填した包装体を2個以上下方向に一列状に繋げた状態で使用することは周知技術でもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許請求第312547号公報
【特許文献2】実開昭63-73199号公報(全文)
【特許文献3】特開2008-229573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の主たる課題は、例えば海上の養殖生け簀に適する養殖用水殺菌具を迅速かつ安価に製作することである。具体的には、各水処理具の一個、一個の軽量化を図ることにより、製造が容易であり、しかも取り扱いが容易であると共に、運搬の際には嵩張らないように折ることができ、一方、深さのある養殖生け簀で使用する時は、養殖生け簀の深さに対応して金属繊維を充填した包装体の数を増減して垂下することができる養殖用水殺菌具を提案することである。
【0012】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の養殖用水殺菌具は、網目に形成された可撓性の一つの長尺袋と、この長尺袋の中に該長尺袋の長手方向に沿って少なくとも一列に押し込まれた2個乃至50個の水処理具と、前記各水処理具が前記可撓性の長尺袋内でそれぞれ長手方向に略位置変位しないように前記可撓性の長尺袋の外側から前記各水処理具の先端部側と後端部側を、それぞれ締付手段を介して袋のネズミ状に閉じ、前記各水処理具の外観形状は、前記袋のネズミ状態で、略球体状、略紡錘状、略ソーセージ形状、略茄子形状のいずれかであり、前記水処理具は、少なくとも銅又は亜鉛又は銅と亜鉛の合金のいずれかの金属繊維であり、前記金属繊維は長尺状包装体に内装されていることを特徴とする。
【0014】
上記構成に於いて、実施形態では、前記長尺状包装体の長さは、10cmから150cmまでであり、その幅は10cmから30cmまでである。
【0015】
ここで「長手方向に略位置変位しないように」とは、垂直に吊り下げた場合に於いて、各水処理具が全く移動しない場合の他、発明の課題を考慮し、各水処理具が袋のネズミ状態に収納されたまま自重で若干下方に摺動した場合も含まれることをいう。また、「少なくとも一列」とは、例えば二列、三列、四列など、発明の課題を考慮して一つの長尺袋に多数の水処理具を複数列に構成しても良いことをいう。
【発明の効果】
【0016】
(a)深さのある養殖生け簀で使用する時は、養殖生け簀の深さに対応して垂下することができる。付言すると、魚の育成に害のない濃度の銅イオンを、ある程度深さ、好ましくは2メートル以上の深さがある海上の養殖生け簀の海水や飼育槽の水中に溶解分散させることにより、飼育水(海水や真水)そのものが、一定濃度の銅イオン水となり殺菌力をもつ。
したがって、ある程度深さがある養殖生け簀や飼育槽に病魚が入ってきても水中に浮遊する病原菌や寄生虫、ウイルスなどが殺菌または活性をなくすことで、感染の恐れが少なくなり、飼育魚(例えば鯛、マクロなど)の疾病を予防することができる。また各水処理具の一個、一個が、袋のネズミ状態で、しかも略球体状、略紡錘状、略ソーセージ形状、略茄子形状のいずれかであることから、製造の容易化を図ることができるのみならず、取り扱いが容易であると共に、運搬の際には嵩張らないように折ることができる。また網目に形成された可撓性の一つの長尺袋に多数の水処理具を列状に内装し、かつ、袋のネズミ状態にするので、迅速かつ安価に製作することができる。
(b)請求項2に記載の発明は、可撓性の長尺袋の網目はメッシュ状なので、例えば4個以上の水処理具を、該長尺袋の中に該長尺袋の長手方向に沿って容易に一列状態に押し込むことができる(
図1参照)。また前記水処理具の長尺状包装体は、透水性の不織布で形成されているので、害のない濃度の銅イオンを、スムースに水中に溶解分散させることができる。
(c)請求項3に記載の発明は、前記長尺状包装体の長さは、10cmから150cmまでであり、その幅は、例えば10cmから30cmまでであることを特徴とするから、本発明の主たる課題を達成することができる。
(d)その他、金属繊維が棒状体の銅又は棒状体の亜鉛又は銅と亜鉛の棒状体の合金のいずれかから、60ミクロンから90ミクロンまでの太さに削り出した繊維状のものであることから、取り扱いが容易であると共に、金属繊維の各糸条の太さの表面積を増やすことができる、金属繊維が容易に絡まない、金属繊維を包装体に容易に充填することができる、各糸条の先端部が容易に包装体に刺さらない等の優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1乃至
図7は本発明の第1実施形態を示す各説明図、
図8乃至
図10は本発明の他の実施形態を示す各説明図である。
【
図1】第1実施形態の使用状態を示す概略説明図(一部省略)。
【
図2】一部を省略した養殖用水殺菌具Xの概略斜視図(略ソーセージ形状タイプ)。
【
図3】
図4に於ける3-3線拡大断面図(金属繊維は便宜的に示してある)。
【
図4】少なくとも一端開口の長尺袋の中に、該長尺袋の長手方向に沿って4個以上の水処理具を一列に押し込んだ状態の説明図(なお、長尺袋を所要の長さに切断した後に複数個の水処理具を列状に押し込んでも良い)。
【
図5】略ソーセージ形状の水処理具を、締付手段を介して袋のネズミ状態にする場合の説明図。
【
図7】水処理具の構成を示す説明図(金属繊維は便宜的に示してあり、水処理具内に密閉状態に充填される)。
【
図8】本発明の第2実施形態の
図2と同様の概略斜視図。
【
図9】本発明の第3実施形態の
図2と同様の概略斜視図。
【
図10】本発明の第4実施形態の
図2と同様の概略斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、
図1乃至
図7を参照にして、本発明の第1実施形態を説明する。この第1実施形態の養殖用水殺菌具Xは、網目に形成された可撓性の一つの長尺袋1と、この長尺袋の中に該長尺袋の長手方向に沿って、例えば一列に押し込まれた4個乃至50個(
図1、
図2では、一部省略しいているが、例えば合計30個)の水処理具2と、前記各水処理具2が前記可撓性の長尺袋1内でそれぞれ長手方向に略移動しないように前記可撓性の長尺袋1の外側から前記各水処理具2の先端部側と後端部側を、それぞれ締付手段5を介して袋のネズミ状に閉じている。
【0019】
前記各水処理具2の外観形状は、例えば前記袋のネズミ状態で、略球体状、略紡錘状、略ソーセージ形状、略茄子形状のいずれかである。
【0020】
前記水処理具2の数は、水中の深さを考慮して任意に決めることができる。例えば
図1で示すように海上の養殖生け簀11は、図示しない魚を囲む網本体12、網本体の上端部に略水平状態に位置する浮き枠、固定枠等の吊り下げ杆13等を備えているが、前記吊り下げ杆13にロープ状連結手段(例えば一般的なロープ)14を介して養殖用水殺菌具Xを吊り下げる。この場合に於いて、海上の養殖生け簀11の養殖対象がマグロである場合、すなわち、マグロを養殖する場合には、普通一般に海水の深さは27メートル乃至30メートル程度なので、養殖用水殺菌具Xの水処理具2の数は、27個乃至30個が望ましい。したがって、養殖対象如何によって、水処理具2の数を、4個乃至50個の範囲で任意に決めることができる。
【0021】
なお、前記ロープ状連結手段14の上端部は前記吊り下げ杆13に適宜に縛り付け、一方、その下端部は養殖用水殺菌具Xの先細り状の突出上端部に適宜に縛り付ける。また
図1に於いて、符号15は網本体12の下端部に取り付けた多数の錘である。養殖生け簀11の構成は本発明の特定要件ではない。
【0022】
ところで、特許文献1、特許文献2等で周知の技術であるが、前記水処理具2は、少なくとも銅又は亜鉛又は銅と亜鉛の合金のいずれかの金属繊維4であり、前記金属繊維4は長尺状包装体3に内装されている。金属繊維4の形態は特に問わないが、好ましくは糸条の直径は、銅の丸棒から80ミクロン(0.08mm)極紐にけずりだす。
【0023】
付言すると、可撓性の一つの長尺袋1の網目は、いわゆるメッシュ状である。また前記水処理具2の長尺状包装体3は、透水性の不織布で形成されている。さらに、前記金属繊維4は、棒状体の銅又は棒状体の亜鉛又は銅と亜鉛の棒状体の合金のいずれかから、60ミクロンから90ミクロンまでの太さに削り出した繊維状のものである。
また前記金属繊維4を包む前記長尺状包装体3の長さは、80cmから150cmまでであり、好ましくは90cmから130cmまでであり、さらに最適な長さは略100cmである。
【0024】
また金属繊維4の各糸条のその幅は15cmから30cmまでである。好ましく18cmから25cmまでであり、さらに最適な太さは略20cmである。
【0025】
図4は、少なくとも一端開口1aの長尺袋1の中に、該一端開口1aから該長尺袋の長手方向に沿って4個以上の水処理具を一列に押し込んだ状態の説明図である。この場合、長尺袋1は、例えばロール状かつメッシュの巻物から所要量引き出して、ハサミ、カッター等の切断手段を用いて適宜に切断する。もちろん、
図4で示すように、ロール状のものから所要量引き出し、その状態で一端開口1aの長尺袋1の中に、該一端開口1aから該長尺袋の長手方向に沿ってどんどん押し込んでも良い。
【0026】
付言すると、切断された可撓性の一つの長尺袋1に、例えば5個の水処理具2を列状に入れ、それぞれ袋のネズミ状態にする場合には、締付手段5の数と箇所を考慮し、余裕を持った長さに切断する。なお、締付手段5は、一か所に複数本用いても良い。
【0027】
であるから、切断された可撓性の一つの長尺袋1は、
図6で示すように両端開口1aとなる。
図5は略ソーセージ形状の水処理具2を、所要長さの紐、線体等の締付手段5(実施形態では紐)を介して袋のネズミ状態にする場合の説明図である。
図6は一つの長尺袋1と一個の水処理具3を示す分解斜視図である。そして、
図7は水処理具2の構成を示す概略説明図である。
【0028】
次に
図8は、本発明の第2実施形態の
図2と同様の概略斜視図で、養殖用水殺菌具X1の各水処理具2Aの外観形状は、略紡錘状タイプである。また
図9は本発明の第3実施形態の
図2と同様の概略斜視図で、養殖用水殺菌具X2の各水処理具2Bの外観形状は略茄子形状タイプである。次に
図10は本発明の第4実施形態の
図2と同様の概略斜視図で、養殖用水殺菌具X3の各水処理具2Cの外観形状は略球体状タイプである。
【0029】
以上のように構成しても、本発明の主たる課題を達成することができる。したがって、養殖用水殺菌具X、X1、X2、X3を構成する各水処理具2、2A、2B、2Cの形状は、発明の課題を逸脱しない範囲で任意に設計変更することができる。
【0030】
なお、
図1の実施形態に於いて、養殖生け簀11に養殖用水殺菌具Xを、例えば吊り下げ杆13等を介して合計4本配設したが、該
図1は説明の便宜上のものであるから、1本、2本、4本、5本、6本等を養殖生け簀11内に適宜に配設しても良い。
【0031】
付言すると、養殖用水殺菌具Xの数は、養殖対象の魚如何によって変える必要があるので、銅イオンの濃度と養殖対象の魚の遊泳を考慮して適宜に決めることができる。
また養殖用水殺菌具Xを、養殖生け簀11の網本体12に連結手段を介して適宜に連結しても良い。
【0032】
さらに
図1の実施形態では、一つの長尺袋1の内部に一列状に水処理具2を設けたことを図示したが、一つの長尺袋1の内部に複数列状に水処理具2を設けても良い。また少なくとも使用時には、養殖用水殺菌具X、X1、X2、X3の下端部に紐を介して錘を付けるのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、例えば海上の養殖生け簀にマグロ、鯛などの魚を養殖する場合に使用される。
【符号の説明】
【0034】
X、X1、X2、X3…養殖用水殺菌具、
1…一つの長尺袋、1a…開口、
2、2A、2B、2C…水処理具、
3…金属繊維用の長尺状包装体、
4…金属繊維、
5…締付手段、
11…養殖生け簀、
12…網本体。