(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055571
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】ソレノイド、電磁弁、および緩衝器
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20220401BHJP
H01F 7/121 20060101ALI20220401BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20220401BHJP
F16F 9/46 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
H01F7/16 D
H01F7/16 E
H01F7/16 F
H01F7/16 R
F16K31/06 305G
F16K31/06 305J
F16K31/06 305S
F16F9/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163067
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593056543
【氏名又は名称】株式会社タカコ
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】小林 義史
(72)【発明者】
【氏名】安部 友泰
(72)【発明者】
【氏名】森 俊廣
(72)【発明者】
【氏名】段下 直明
(72)【発明者】
【氏名】袰谷 正俊
(72)【発明者】
【氏名】土井 康平
【テーマコード(参考)】
3H106
3J069
5E048
【Fターム(参考)】
3H106DA07
3H106DA13
3H106DA23
3H106DA35
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD09
3H106EE34
3H106EE35
3H106GA17
3H106GA23
3H106GA25
3H106GB09
3H106KK03
3J069AA54
3J069EE32
3J069EE41
3J069EE43
5E048AA04
5E048AA08
5E048AB01
5E048AB10
5E048AD02
5E048BA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、低コストで大型化を招かずに十分な推力を発揮できるソレノイド、ソレノイドを利用した電磁弁および緩衝器の提供を目的としている。
【解決手段】ソレノイド40は、コイル41と、コイル41の軸方向の一端側に配置される第一固定鉄心43と、第一固定鉄心43と空隙をもってコイル41の軸方向の他端側に配置される第二固定鉄心44と、第一固定鉄心43と第二固定鉄心44との間に配置される筒状の第一可動鉄心45と、有底筒状であって第一可動鉄心45内に摺動自在に挿入されて底部46bを第二固定鉄心44に対向させて第一固定鉄心43と第二固定鉄心44との間に配置される第二可動鉄心46と、第一可動鉄心45と第一固定鉄心43との間に介装されて第一可動鉄心45を第二固定鉄心側へ付勢するばね47とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルの軸方向の一端側に配置される第一固定鉄心と、
前記第一固定鉄心と空隙をもって前記コイルの軸方向の他端側に配置される第二固定鉄心と、
前記第一固定鉄心と前記第二固定鉄心との間に配置されて、前記コイルへの通電により前記第一固定鉄心に吸引される筒状の第一可動鉄心と、
有底筒状であって前記第一可動鉄心内に摺動自在に挿入されて底部を前記第二固定鉄心に対向させて前記第一固定鉄心と前記第二固定鉄心との間に配置されるとともに、前記コイルへの通電により前記第二固定鉄心に吸引される第二可動鉄心と、
前記第一可動鉄心と前記第一固定鉄心との間に介装されて前記第一可動鉄心を前記第二固定鉄心側へ付勢するばねとを備えた
ことを特徴とするソレノイド。
【請求項2】
筒状であって前記コイルの内周に配置されて前記第一固定鉄心と前記第二固定鉄心との間に介装されるフィラーリングを備え、
前記第一可動鉄心は、前記フィラーリングの内周に摺動可能に挿入され、
前記第二固定鉄心は、環状であって前記フィラーリング内に圧入されて内周に前記第二可動鉄心が摺動自在に挿入される圧入部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のソレノイド。
【請求項3】
前記第一可動鉄心は、前記第二可動鉄心の外周に摺接する摺接筒と、前記摺接筒の一端から内周へ向けて突出する環状底部とを有し、
前記環状底部は、前記第一固定鉄心に向けて突出して前記第一固定鉄心に離着座する環状凸部を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のソレノイド。
【請求項4】
前記環状凸部は、前記環状底部の外周側に設けられ、
前記環状凸部の外径は、前記環状底部の直径より小径である
ことを特徴とする請求項3に記載のソレノイド。
【請求項5】
前記フィラーリングは、内周に前記圧入部に軸方向で対向するフランジを有し、
前記フランジと前記圧入部との間に介装されて前記フィラーリングと前記第二固定鉄心との間をシールするシールリングを備えた
ことを特徴とする請求項2、請求項2に従属する請求項3または請求項2の従属する請求項4に記載のソレノイド。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のソレノイドを備えて通路の途中に設けられる電磁弁であって、
前記通路を開閉する弁体を備え、
前記ソレノイドは、前記コイルへの通電時に生じる前記第二可動鉄心を前記第二固定鉄心側へ吸引する力を前記弁体に前記通路を閉じる方向へ付与する
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項7】
シリンダと、
前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと、
前記シリンダと前記ロッドが軸方向へ相対移動する際に液体が流れるポートと前記ポートを取り囲む弁座とを有するディスクと、
前記弁座に離着座して前記ポートを開閉するリーフバルブと、
途中に絞りが設けられて、前記ポートの上流側の圧力を前記リーフバルブの背面に減圧して導くパイロット通路と、
前記リーフバルブの背面の圧力を制御する電磁弁と、
前記電磁弁に前記コイルへの通電時に生じる前記第二可動鉄心を前記第二固定鉄心側へ吸引する推力を与える請求項1から5のいずれか一項に記載のソレノイドとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドと、ソレノイドを備えた電磁弁と、ソレノイドを含む電磁弁を備えた緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にソレノイドは、コイルに対して一つの可動鉄心を備えていて、コイルへの通電時に可動鉄心を固定鉄心に向けて吸引することで可動鉄心を駆動するようになっている。ソレノイドを電磁弁に利用する場合、ソレノイドは、通電時に電磁弁の弁体に与える推力を変化させて電磁弁の開弁圧を調節できる。
【0003】
電磁弁は、緩衝器のピストン部に設けられた減衰バルブの背面に背圧を作用させる背圧室の圧力を調節するために、背圧室に減衰バルブの上流側の圧力を減圧して導くパイロット通路の途中に設けられている。このように構成された緩衝器では、ソレノイドの推力を大小変化させると、電磁弁の開弁圧も大小変化して背圧室内の圧力を制御できる。背圧室の圧力を変化させると減衰バルブの開弁圧も大小変化するため、ソレノイドへ与える電流量を制御すれば緩衝器が伸縮時に発生する減衰力を制御できる。
【0004】
このような緩衝器の電磁弁に一般的なソレノイドを利用すると、ソレノイドへ通電可能な正常時では、前述したように、ソレノイドへ与える電流量の制御で緩衝器の減衰力調整を行えるが、ソレノイドへの通電が不能なフェール時には、ソレノイドによる電磁弁の開弁圧の制御が不能となる。そのため、緩衝器では、フェール時の緩衝器の減衰力を設定するためのフェール弁を電磁弁に並列させているが、正常時にフェール弁が開弁してしまうと電磁弁による背圧の制御ができなくなる。したがって、フェール弁の開弁圧をどうしても電磁弁の正常時の開弁圧の制御範囲よりも高くする必要があって、フェール時の緩衝器の減衰力が過剰となって車両における乗心地を損ねる場合がある。
【0005】
このような問題に対して、出願人は、改良型のソレノイドを開発した。改良型のソレノイドは、コイルと、コイルの軸方向の一端側に配置される第一固定鉄心と、第一固定鉄心と空隙をもってコイルの軸方向の他端側に配置される第二固定鉄心と、第一固定鉄心と第二固定鉄心との間に配置されてコイルへの通電により第一固定鉄心に吸引される第一可動鉄心と、第一固定鉄心と第二固定鉄心との間に配置されるとともにコイルへの通電により第二固定鉄心に吸引される第二可動鉄心と、第一可動鉄心と第一固定鉄心との間に介装されて第一可動鉄心を第二固定鉄心側へ付勢するばねとを備えている。
【0006】
このように構成された改良型のソレノイドは、通電時には、第一可動鉄心を第一固定鉄心側に吸引してばねの付勢力が第二可動鉄心に作用しないようにして第二可動鉄心を第二固定鉄心側に吸引する力を電磁弁の弁体に作用させる。また、従来のソレノイドは、非通電時には、ばねの付勢力によって第一可動鉄心が第二可動鉄心に押し付けられるようになっており、ばねの付勢力を第二可動鉄心を介して電磁弁の弁体に作用させる。よって、改良型のソレノイドは、通電時のみならず非通電時にあっても電磁弁の弁体に同じ方向の推力を与え、フェール時の推力をばねの付勢力で設定できる。したがって、改良型のソレノイドによれば、フェール時の電磁弁の開弁圧をソレノイドのばねの付勢力で設定できるので、緩衝器のフェール時の減衰力を最適化できるとともに、電磁弁にフェール弁を並列させる必要もなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、改良型のソレノイドでは、コイルの内周に設けられた非磁性体のフィラーリングと第二固定鉄心とがブレージング(ロウ付け)によって接合されているため、加工コストが高くなる。
【0009】
加工コストを安価に収めるためには、
図8に示すように、第二固定鉄心201の環状の突部201aの外周にフィラーリング202を圧入させればよいが、そうすると、第二可動鉄心203の底部203aの外周に第二固定鉄心201の突部201aを避ける環状凹部203bを設ける必要があり、底部203aと筒部203cとの間の磁路断面積を確保するために第二可動鉄心203の底部203aの軸方向長さをその分長くせざるを得ない。
【0010】
ここで、改良型のソレノイドは、二つの可動鉄心を備えており、第一可動鉄心および第二可動鉄心はともに有底筒状とされていて、第二可動鉄心内に第一可動鉄心が摺動自在に挿入される配置を採用しており、第一可動鉄心と第二可動鉄心とが磁路を形成している。よって、ソレノイドに高電流を流して、第二可動鉄心と第一可動鉄心とを最も離間させた際に、両者が軸方向で重なる長さが短くなると磁束が飽和して十分な推力が得られなくなるため、筒部203cの軸長を確保する必要があるのである。以上の理由から、ソレノイドの低コスト化を図ろうとすると第二可動鉄心203の軸方向長さを長くせざるを得ず、ソレノイドの軸方向長さも長くする必要がある。
【0011】
よって、ソレノイドの低コスト化を図ろうとすると、ソレノイドの軸方向長さを長くせざるを得ないが、それではソレノイドが大型化してしまって、緩衝器等の適用機器への搭載性が悪化し設置スペースの関係でソレノイドを適用機器へ設置できない場合が生じてしまう。
【0012】
このように、改良型のソレノイドには、低コスト化を図ろうとすると大型化しなくては十分な推力を発揮できなくなるという問題があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、低コストで、大型化を招かずに十分な推力を発揮できるソレノイドの提供であり、また、低コストで大型化を招かずに開弁圧の調整が可能な電磁弁の提供であり、さらには、低コストで大型化を招かずに減衰力調整が可能な緩衝器の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明のソレノイドは、コイルと、コイルの軸方向の一端側に配置される第一固定鉄心と、第一固定鉄心と空隙をもってコイルの軸方向の他端側に配置される第二固定鉄心と、第一固定鉄心と第二固定鉄心との間に配置されてコイルへの通電により第一固定鉄心に吸引される筒状の第一可動鉄心と、有底筒状であって第一可動鉄心内に摺動自在に挿入されて底部を第二固定鉄心に対向させて第一固定鉄心と第二固定鉄心との間に配置されるとともにコイルへの通電により第二固定鉄心に吸引される第二可動鉄心と、第一可動鉄心と第一固定鉄心との間に介装されて第一可動鉄心を第二固定鉄心側へ付勢するばねとを備えている。
【0015】
このように構成されたソレノイドでは、外周に配置されるのは第二可動鉄心ではなく第一可動鉄心であるため、第二可動鉄心の軸方向長さを長くしなくとも磁束飽和を抑制でき、第一可動鉄心と第二可動鉄心とが最も離間した状態でも第一可動鉄心と第二可動鉄心とが接触する部分の長さを十分に確保できる。
【0016】
また、ソレノイドは、筒状であってコイルの内周に配置されて第一固定鉄心と第二固定鉄心との間に介装されるフィラーリングを備え、第一可動鉄心がフィラーリングの内周に摺動可能に挿入され、第二固定鉄心が環状であってフィラーリング内に圧入されて内周に第二可動鉄心が摺動自在に挿入される圧入部を備えていてもよい。このように構成されたソレノイドによれば、フィラーリングによって第一可動鉄心および第二可動鉄心との軸方向の移動を案内できるとともに、フィラーリング内に圧入部を圧入してフィラーリングと第二固定鉄心とを安価に一体化できる。
【0017】
さらに、ソレノイドは、第一可動鉄心が第二可動鉄心の外周に摺接する摺接筒と、摺接筒の一端から内周へ向けて突出する環状底部とを備え、環状底部が第一固定鉄心に向けて突出して第一固定鉄心に離着座する環状凸部を備えて構成されてもよい。このように構成されたソレノイドによれば、環状凸部と第一固定鉄心との間でコンタミナントを噛み込むのを防止でき、ソレノイドの動作が安定する。
【0018】
また、ソレノイドは、第一可動鉄心の環状凸部が環状底部の外周側に環状底部に設けられ、環状凸部の外径が環状底部の直径より小径となるように構成されてもよい。環状凸部が第一固定鉄心の平坦形状ではない可能性のある嵌合部の外周縁を避けて当接するようになるので環状凸部の全体が嵌合部に密着できるとともに、第一可動鉄心の第一固定鉄心側への移動がスムーズになる。
【0019】
そして、ソレノイドは、フィラーリングが内周に圧入部に軸方向で対向するフランジを備え、フランジと圧入部との間に介装されてフィラーリングと第二固定鉄心との間をシールするシールリングを備えていてもよい。このように構成されたソレノイドによれば、圧入部の全長を短くできるのでソレノイドの全長も短くすることができる。
【0020】
さらに、電磁弁は、ソレノイドを備えて通路の途中に設けられる電磁弁であって、通路を開閉する弁体を備え、ソレノイドがコイルへの通電時に生じる第二可動鉄心を第二固定鉄心側へ吸引する力を弁体に通路を閉じる方向へ付与するように構成されてもよい。このように構成された電磁弁によれば、低コストで小柄なソレノイドを利用して弁体の開弁圧を調整できるとともに、フェール時の弁体の開弁圧をばねの付勢力で設定できる。
【0021】
また、緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと、シリンダとロッドが軸方向へ相対移動する際に液体が流れるポートとポートを取り囲む弁座とを有するディスクと、弁座に離着座してポートを開閉するリーフバルブと、途中に絞りが設けられてポートの上流側の圧力をリーフバルブの背面に減圧して導くパイロット通路と、リーフバルブの背面の圧力を制御する電磁弁と、電磁弁にコイルへの通電時に生じる第二可動鉄心を第二固定鉄心側へ吸引する推力を与えるソレノイドとを備えてもよい。このように構成された緩衝器によれば、低コストで小柄なソレノイドを利用した電磁弁によってリーフバルブの背面の圧力を調節できるので、低コストで大型化を招かずに減衰力を大小調整できる。また、このように構成された緩衝器によれば、フェール時にはソレノイドのばねの付勢力の設定によってリーフバルブの背面の圧力を設定できフェール時に緩衝器が発生する減衰力を最適化できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のソレノイドによれば、低コストで、大型化を招かずに十分な推力を発揮できる。また、本発明の電磁弁によれば、低コストで大型化を招かずに開弁圧の調整が可能となる。さらには、本発明の緩衝器によれば、低コストで大型化を招かずに減衰力調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る減衰バルブを示す縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る減衰バルブを備えた緩衝器を概念的に示す縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る減衰バルブのバルブ部分を拡大して示した図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係る減衰バルブのスプールの移動量に対するリーフスプリングの付勢力の特性を示した図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る減衰バルブのソレノイド部分を拡大して示した図である。
【
図6】本発明の一実施の形態に係る減衰バルブのソレノイドへ与える電流量に対するソレノイドが発生する推力の特性を示した図である。
【
図7】本発明の一実施の形態に係る減衰バルブが適用された緩衝器の減衰特性を示す図である。
【
図8】従来のソレノイドを安価にするためのソレノイドの構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図示した一実施の形態に基づいて、この発明を説明する。一実施の形態におけるソレノイド40は、
図1および
図5に示すように、コイル41と、コイル41の軸方向の一端側に配置される第一固定鉄心43と、第一固定鉄心43と空隙をもってコイルの軸方向の他端側に配置される第二固定鉄心44と、第一固定鉄心43と第二固定鉄心44との間に配置される筒状の第一可動鉄心45と、有底筒状であって第一可動鉄心45内に摺動自在に挿入される第二可動鉄心46と、第一可動鉄心45と第一固定鉄心43との間に介装されて第一可動鉄心45を第二固定鉄心44側へ付勢するばね47とを備えており、緩衝器100における電磁弁24に適用されている。
【0025】
電磁弁24は、緩衝器100における減衰バルブ1のリーフバルブ3に作用させる背圧の調節に利用されており、ソレノイド40への通電量の調節によって前記背圧を大小調節する。
【0026】
以下、ソレノイド40およびソレノイド40が適用される電磁弁24を備えた減衰バルブ1および緩衝器100について詳細に説明する。まず、減衰バルブ1は、
図1に示すように、ポート2aとポート2aを取り囲む弁座2bとを有するディスク2と、正面側を弁座2bに離着座してポート2aを開閉するリーフバルブ3と、リーフバルブ3の背面側に設けられた筒状のハウジング4と、リーフバルブ3の背面に当接するとともにハウジング4の内周に摺動自在に挿入されてハウジング4とともに内方にリーフバルブ3に背圧を作用させる背圧室5を形成する環状のスプール6と、リーフバルブ3の背面側であって背圧室5内に臨むとともにスプール6より外径が小径な環状のばね支持部4gと、スプール6の反リーフバルブ側端となる一端とばね支持部4gとの間に介装されてスプール6をリーフバルブ3に当接させる方向へ付勢する環状のリーフスプリング7と、バルブ保持部材10と、背圧室5にポート2aの上流側の圧力を導くパイロット通路23と、パイロット通路23に設けた電磁弁24と、電磁弁に推力を与えるソレノイド40とを備えている。
【0027】
この減衰バルブ1は、緩衝器100に適用されており、緩衝器100は、主として伸縮時にポート2aを通過する液体に抵抗を与えることによって減衰力を発生するようになっている。
【0028】
この減衰バルブ1が適用される緩衝器100は、たとえば、
図2に示すように、シリンダ101と、シリンダ101内に摺動自在に挿入されるピストン102と、シリンダ101内に移動挿入されてピストン102に連結されるロッド103と、シリンダ101内に挿入したピストン102で区画した伸側室104と圧側室105と、シリンダ101の外周を覆ってシリンダ101との間に排出通路106を形成する中間筒107と、さらに、中間筒107の外周を覆って中間筒107との間にリザーバ108を形成する外筒109とを備えて構成されており、伸側室104と圧側室105とには液体が充填されており、リザーバ108内には液体が貯留される他に気体も封入されている。なお、本実施の形態の緩衝器100では、液体として作動油を用いているが、液体は、作動油以外にも、減衰バルブ1を利用して減衰力を発揮可能な液体であれば使用可能である。
【0029】
そして、この緩衝器100の場合、リザーバ108から圧側室105へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路110と、ピストン102に設けられて圧側室105から伸側室104へ向かう作動油の流れのみを許容する整流通路111とを備え、排出通路106は伸側室104とリザーバ108とを連通し、減衰バルブ1は、ポート2aを排出通路106に接続して当該排出通路106の途中に設けられている。
【0030】
したがって、この緩衝器100は、圧縮作動する際には、ピストン102が
図2中下方へ移動して圧側室105が圧縮され、圧側室105内の作動油が整流通路111を介して伸側室104へ移動する。この圧縮作動時には、ロッド103がシリンダ101内に侵入するためシリンダ101内でロッド侵入体積分の作動油が過剰となり、過剰分の作動油がシリンダ101から押し出されて排出通路106を介してリザーバ108へ排出される。緩衝器100は、排出通路106を通過してリザーバ108へ移動する作動油の流れに減衰バルブ1で抵抗を与えて、シリンダ101内の圧力を上昇させて圧側減衰力を発揮する。
【0031】
反対に、緩衝器100が伸長作動する際には、ピストン102が
図2中上方へ移動して伸側室104が圧縮され、伸側室104内の作動油が排出通路106を介してリザーバ108へ移動する。この伸長作動時には、ピストン102が上方へ移動して圧側室105の容積が拡大して、この拡大分に見合った作動油が吸込通路110を介してリザーバ108から供給される。そして、緩衝器100は、排出通路106を通過してリザーバ108へ移動する作動油の流れに減衰バルブ1で抵抗を与えて伸側室104内の圧力を上昇させて伸側減衰力を発揮する。
【0032】
前述したところから理解できるように、緩衝器100は、伸縮作動を呈すると、必ずシリンダ101内から排出通路106を介して作動油をリザーバ108へ排出し、作動油が圧側室105、伸側室104、リザーバ108を順に一方通行で循環するユニフロー型の緩衝器に設定され、伸圧両側の減衰力を単一の減衰バルブ1によって発生するようになっている。
【0033】
つづいて、減衰バルブ1は、前述したように、ポート2aとポート2aを取り囲む弁座2bとを有するディスク2と、正面側を弁座2bに離着座してポート2aを開閉するリーフバルブ3と、リーフバルブ3の背面側に設けられた筒状のハウジング4と、リーフバルブ3の背面に当接するとともにハウジング4の内周に摺動自在に挿入されてハウジング4とともに内方にリーフバルブ3に背圧を作用させる背圧室5を形成する環状のスプール6と、リーフバルブ3の背面側であって背圧室5内に臨むとともにスプール6より外径が小径な環状のばね支持部4gと、スプール6の反リーフバルブ側端となる一端とばね支持部4gとの間に介装されてスプール6をリーフバルブ3に当接させる方向へ付勢する環状のリーフスプリング7とを備える他にも、本実施の形態では、中間筒107の開口部に設けたスリーブ107aに嵌合されるバルブ保持部材10と、バルブ保持部材10とハウジング4の内部に背圧室5にポート2aの上流側の圧力を導くパイロット通路23と、パイロット通路23に設けた電磁弁24と、電磁弁に推力を与えるソレノイド40とを備えている。
【0034】
以下、減衰バルブ1の各部について詳細に説明する。バルブ保持部材10は、
図3に示すように、スリーブ107a内に嵌合される大径の基部10aと、基部10aから
図3中右方へ突出するとともに
図3中で右端外周に螺子部(符示せず)を有する軸部10bと、基部10aと軸部10bとを軸方向に貫くように形成されてパイロット通路23の一部を形成する中空部10cと、中空部10cの途中に設けた絞りとしてのオリフィス10dと、基部10aの
図3中左端から右端へ貫く複数の通路10eとを備えて構成されている。
【0035】
通路10eは、前記したように基部10aを貫いていて中空部10cに通じており、さらに、中空部10cを介して中間筒107で形成した排出通路106を介して伸側室104内に連通される。また、通路10eにおける基部10aの
図3中右端側の開口は、リザーバ108に連通されている。つまり、この緩衝器100の場合、伸縮時に伸側室104から排出通路106および通路10eを介してリザーバ108へ作動油を排出するようになっていて、通路10eの上流は伸側室104となる。また、中空部10cの
図3中左端側の開口も、通路10eと同様に、排出通路106を介して伸側室104内に連通されている。
【0036】
なお、このバルブ保持部材10の基部10aの
図3中左方側を小径にして形成した小径部10gをスリーブ107a内に嵌合しており、この小径部10gの外周には、シールリング10fが装着されてスリーブ107aとの間がシールされ、基部10aの外周を介して排出通路106がリザーバ108へ通じてしまうことが無いようになっている。
【0037】
つづいて、バルブ保持部材10の基部10aの
図3中右端には、基部10aに離着座して通路10eを開閉するディスク2が積層されている。このディスク2は、環状であって、肉厚を軸方向に貫く複数のポート2aと、反バルブ保持部材側となる背面側に設けられてポート2aの外周を取り囲んで背面側に突出する環状の弁座2bとを備えている。さらに、ディスク2は、バルブ保持部材10の基部10aに対向する端部から基部10a側に突出する環状凸部2cを備えている。環状凸部2cは、基部10aにおける通路10eより外周側に対向しており、ディスク2が基部10aに当接すると、基部10aの通路10eの外周側に環状凸部2cが着座する。よって、ディスク2が基部10aに当接すると、ディスク2によって通路10eの出口端が閉塞される。また、ポート2aは、通過する作動油の流れに対して抵抗を与えるようになっており、詳しくは後述するが、通路10eを通過した作動油が、ポート2aを通過してディスク2の背面側へ移動すると、ディスク2の正面側であるバルブ保持部材側と背面側とでは圧力に差が生じるようになっている。なお、本実施の形態の減衰バルブ1では、ディスク2に環状凸部2cを設けているが、バルブ保持部材10の基部10aに通路10eの外周を取り囲む弁座を設けてもよい。
【0038】
そして、このディスク2は、バルブ保持部材10の軸部10bの外周に装着した環状のスペーサ25の外周に摺動自在に装着されている。スペーサ25は、その軸方向の厚みがディスク2の内周の軸方向の厚みよりも厚く、ディスク2は、スペーサ25の外周を軸方向である
図3中左右方向へ移動することができるようになっている。したがって、ディスク2は、バルブ保持部材10に対して浮動状態に組付けられていて、バルブ保持部材10に対して遠近することで基部10aに離着座することができるようになっていて、基部10aから離座すると通路10eを開放する。また、弁座2bには、切欠オリフィス2dが設けられている。オリフィスは、切欠オリフィス2dに代えて、バルブ保持部材10やディスク2の環状凸部2cに設けられてもよい。
【0039】
さらに、このディスク2の背面側には、リーフバルブ3が積層されている。このリーフバルブ3は、複数の環状板を積層して構成される積層リーフバルブとされており、内周が軸部10bに組付けられてスペーサ25と軸部10bに螺子締結されるハウジング4とで挟持されている。したがって、リーフバルブ3は、外周側の撓みが許容されてディスク2の弁座2bに離着座することができるようになっている。リーフバルブ3における環状板の外径は、背面側へ積層されるに従って段階的に小さくなっている。
【0040】
また、リーフバルブ3の内周はスペーサ25に積層され、外周はディスク2の背面からリーフバルブ3側へ突出する弁座2bに着座するようになっているので、このリーフバルブ3とディスク2との間には空間があり、この空間で中間室9が形成されている。なお、中間室9は、ポート2aを介して通路10eに連通されている。そして、リーフバルブ3がポート2aを介して中間室9内に作用する圧力を受けて撓んで弁座2bから離座すると、ディスク2との間に環状隙間が形成されて、通路10eおよびポート2aを通過した作動油がリーフバルブ3とディスク2の間を抜けてリザーバ108へ移動できる。つまり、ディスク2が基部10aに着座していてもリーフバルブ3が撓むことで弁座2bから離座すると、ポート2aが開放されて作動油が伸側室104からリザーバ108へ移動できる。
【0041】
さらに、リーフバルブ3が撓むとともに、ディスク2が通路10eから受ける圧力で押し上げられると、ディスク2の全体がスペーサ25上をスライドして基部10aから離座し、この場合には、通路10eを通過した作動油は、ディスク2と基部10aとの間に生じる環状隙間を介してリザーバ108へ排出される。なお、リーフバルブ3は、複数の環状板を積層した積層リーフバルブとして構成されているが、環状板の枚数は任意である。
【0042】
そして、軸部10bの先端である
図1中右端には、ハウジング4が螺着される。すると、軸部10bに組み付けられたスペーサ25およびリーフバルブ3がバルブ保持部材10の基部10aとハウジング4とで挟持されて固定される。なお、前述したように、スペーサ25の外周に装着されるディスク2は、スペーサ25の外周で固定される浮動状態とされており、軸方向に移動可能である。
【0043】
ハウジング4は、
図3に示すように、内周に螺子部(符示せず)を有してバルブ保持部材10の軸部10bに螺着される内筒4aと、内筒4aに対して環状の隙間を開けて対向する外筒4bと、内筒4aの
図3中右端外周から径方向へ突出して外筒4bの
図3中右端に接続されるフランジ状の底部4cと、筒状であって底部4cの反内筒側から立ち上がるとともに外周に螺子部(符示せず)を有するソケット4dと、底部4cを貫いて内筒4aと外筒4bとの間の環状隙間とソケット4d内とを連通する孔4eと、ソケット4dの外周に軸方向沿って設けられた切欠溝4fとを備えている。
【0044】
ハウジング4の内筒4aは、バルブ保持部材10の軸部10bに螺着されると、バルブ保持部材10の基部10aと協働してスペーサ25およびリーフバルブ3を挟持する。また、ハウジング4における内筒4aの外周であって基端となる
図3中右端の外径が大きくなっていて段部が形成されており、当該段部でリーフバルブ3の背面に対向する環状面でなるばね支持部4gが設けられている。このばね支持部4gは、リーフスプリング7の内周を支持するばね受として機能する。また、ハウジング4内は、バルブ保持部材10の中空部10cに通じており、オリフィス10dを介して通路10eの上流である伸側室104内に連通されている。
【0045】
また、
図3に示すように、外筒4bの内周には、スプール6が摺動自在に挿入されている。スプール6は、環状であって、反リーフバルブ側端となる一端(
図3中右端)の外周部を一端外周部6aとして、この一端外周部6aの内側に他端側へ傾斜するテーパ部6bを有するととともに、リーフバルブ側端となる他端(
図3中左端)の外周部を他端外周部6cとして、この他端外周部6cの内側に一端側へ傾斜するテーパ部6dを有している。また、スプール6は、
図3に示すように、一端外周部6aを径方向に貫く複数の溝6eを備えている。なお、本実施の形態の減衰バルブ1では、溝6eは、スプール6の周方向に等間隔を以て3つ設けられている。
【0046】
スプール6は、ハウジング4に対して軸方向へ移動可能であるとともに、他端外周部6cをリーフバルブ3の背面の外周部に当接させていて、ハウジング4と協働して背圧室5を形成している。背圧室5は、ハウジング4の底部4cに設けられた孔4eを介してソケット4d内に連通されている。前述した通り、ハウジング4内が伸側室104内に連通されているので、伸側室104から排出された作動油は、オリフィス10dおよび孔4eを介して背圧室5に導かれる。このようにして、通路10eの上流の圧力がオリフィス10dによって減圧されて背圧室5に導入される。
【0047】
また、スプール6は、リーフバルブ3の外周が当接するスプール6の他端外周部6cより内側にテーパ部6dを有しているので、リーフバルブ3を背面側へ向かうほど外径が段階的に小さくなる積層リーフバルブとしてもスプール6が干渉しない。リーフバルブ3における環状板の枚数および外径については任意に設計変更できるが、スプール6のリーフバルブ側端となる他端側にテーパ部6dを設けることで、リーフバルブ3の環状板の枚数や外径の大きさの選択の自由度が向上する。
【0048】
リーフスプリング7は、本実施の形態の減衰バルブ1では、環状の皿ばねとされており、反リーフバルブ側の内周がハウジング4に設けられたばね支持部4gによって支持されるとともにリーフバルブ側の外周がスプール6の一端外周部6aによって支持されている。ばね支持部4gの外径は、スプール6の内径よりも小径とされており、また、リーフバルブ3がディスク2の弁座2bに着座し、ディスク2がバルブ保持部材10の基部10aに着座し、且つ、スプール6がリーフバルブ3に当接している状態において、スプール6の軸方向で、スプール6の一端外周部6aのリーフスプリング7の支持面よりばね支持部4gのリーフスプリング7の支持面の方がリーフバルブ側に配置されている。つまり、
図3中で、スプール6の一端外周部6aよりハウジング4のばね支持部4gの方が左方に配置されている。
【0049】
よって、リーフスプリング7は、初期撓みが与えられて撓んだ状態でスプール6とばね支持部4gとの間に介装されていて、スプール6を常時リーフバルブ3へ当接させる方向へ付勢している。スプール6の軸方向長さとばね支持部4gの軸方向の位置の設定によってリーフスプリング7の初期撓み量を設定できる。リーフスプリング7は、スプール6を常にリーフバルブ3から離間しないように付勢する必要があるので、軸方向でスプール6の一端外周部6aよりハウジング4のばね支持部4gがリーフバルブ3に近くなるように設定すればよい。ただし、リーフスプリング7の付勢力は減衰バルブ1の開弁圧に影響するため、リーフスプリング7がスプール6を付勢する付勢力は、なるべく小さい方が好ましいので、リーフスプリング7の初期撓み量が小さくする方が望ましい。
【0050】
また、リーフスプリング7の反リーフバルブ側の内周のみがリーフバルブ3の背面に対向するばね支持部4gに当接しており、リーフスプリング7の内周がハウジング4に固定的に支持されていない。よって、スプール6がディスク2から軸方向であって離間する方向へ移動した際に、このように固定的に支持されていないリーフスプリング7がスプール6に与える付勢力は、内周固定された場合のリーフスプリングの付勢力よりも小さくなる。したがって、このようにリーフスプリング7がばね支持部4gによって支持される構造を採用すると、リーフスプリング7の見掛け上のばね定数が低くなるので、スプール6のディスク2から離間する方向へ移動した時にリーフスプリング7がスプール6へ与える付勢力の増加を抑制できる。
【0051】
さらに、スプール6の一端外周部6aの内側にテーパ部6bが設けられているため、一端外周部6aの内径を大きくできる。リーフスプリング7の外周側の支持径は、スプール6の一端外周部6aの内径で決せられ、前記支持径が大きくなればなるほど、スプール6の前記移動に伴うリーフスプリング7の撓み量を低減できる。したがって、このようにスプール6の一端外周部6aの内側にテーパ部6bを設けると、リーフスプリング7の見掛け上のばね定数を低くできるため、スプール6のディスク2から離間する方向へ移動した時にリーフスプリング7がスプール6へ与える付勢力の増加を抑制できる。
【0052】
なお、スプール6の一端外周部6aには溝6eが設けられており、リーフスプリング7が孔や溝を一切備えていなくともリーフスプリング7の
図3中左方のリーフバルブ側の部屋と
図3中右方の反リーフバルブ側の部屋とが溝6eによって連通されるので、リーフスプリング7が背圧室5を分断しない。溝6eは、背圧室5内のリーフスプリング7のリーフバルブ側の部屋と反リーフバルブ側の部屋とで差圧が生じない程度の流路面積を確保できるように設けられている。また、溝6eの周方向幅の設定によって、
図4に示すように、スプール6の移動量に対してリーフスプリング7がスプール6に与える付勢力の大きさの特性を変更できる。溝6eの幅を狭くする場合、
図4中の特性線Aで示すように、リーフスプリング7の見掛け上のばね定数が大きくなる傾向を示すとともに特性線Aの途中に現れる線形域(スプール6の移動量にリーフスプリング7の付勢力が比例する領域)が狭くなる。溝6eの幅を広くする場合、
図4中の特性線Bで示すように、リーフスプリング7の見掛け上のばね定数が小さくなる傾向を示すとともに特性線Bの途中に現れる線形域(スプール6の移動量にリーフスプリング7の付勢力が比例する領域)が広くなる。溝6eの流路面積を前述のように確保する必要があるので、溝6eの幅を狭くしたい場合には、溝6eの設置数を少なくすればよく、溝6eの幅を広くしたい場合には、溝6eの設置数を少なくすればよい。したがって、減衰バルブ1に求められる要求仕様により、リーフスプリング7がスプール6に与えるべき付勢力の特性を決定して溝6eの設置数と幅とを適宜設定すればよい。なお、溝6eをスプール6に設けて背圧室5の分断を回避するのに代えて、リーフスプリング7を孔あきのリーフスプリングとしてもよい。
【0053】
また、前述した通り、伸側室104から排出された作動油は、オリフィス10dおよび孔4eを介して背圧室5に導かれるため、リーフバルブ3の背面には、スプール6を附勢するリーフスプリング7による附勢力以外に、背圧室5の内部圧力によってリーフバルブ3をディスク2へ向けて押しつける附勢力が作用する。すなわち、緩衝器100の伸縮作動する際に、ディスク2には、正面側から通路10eを介して伸側室104内の圧力が作用するとともに、背面側からはリーフバルブ3を介して背圧室5の内部圧力とリーフスプリング7による附勢力が作用することになる。
【0054】
なお、スプール6の外径を直径とした円の面積からリーフバルブ3の最上段に積層される最小径の環状板の外径を直径とした円の面積を引いた背面側受圧面積に背圧室5の圧力を乗じた値の力がリーフバルブ3にディスク2へ押しつけるように作用し、弁座2bの内径を直径とした円の面積からスペーサ25の外径を直径とした円の面積を引いた正面側受圧面積に中間室9の圧力を乗じた値の力がリーフバルブ3にディスク2から離間する方向へ作用する。よって、リーフバルブ3の背面側受圧面積と正面側受圧面積との比が、背圧室5内の圧力に対するリーフバルブ3の開弁圧の比である増圧比を決定づけている。
【0055】
そして、伸側室104内の圧力によって、中間室9内の圧力が高まりリーフバルブ3の外周を
図3中右方へ撓ませようとする力が、背圧室5の内部圧力とリーフスプリング7による附勢力に打ち勝つと、リーフバルブ3が撓んで弁座2bから離座してリーフバルブ3とディスク2との間に隙間が形成されて通路10eが開放される。この実施の形態では、環状凸部2cの内径より弁座2bの内径を大きくしていて、ディスク2が通路10e側の圧力を受ける受圧面積と、ディスク2が中間室9側の圧力を受ける受圧面積に差をもたせていて、ポート2aによって生じる差圧がディスク2をバルブ保持部材10の基部10aから離座させる開弁圧に達しないと、ディスク2は基部10aに着座したままとなる。他方、リーフバルブ3が撓んで開弁状態にあり、ポート2aによって生じる差圧がディスク2を基部10aから離座させる開弁圧に達すると、ディスク2も基部10aから離座して通路10eを開放するようになる。つまり、中間室9の圧力に対するディスク2の開弁圧の比であるディスク2における増圧比より、リーフバルブ3における増圧比を小さく設定しており、ディスク2が開弁する際の伸側室104内の圧力よりもリーフバルブ3が開弁する際の伸側室104内の圧力の方が低くなるようになっている。すなわち、ディスク2の開弁圧よりもリーフバルブ3の開弁圧が低くなるように設定している。
【0056】
つづいて、ハウジング4内のソケット4dおよび内筒4aの
図3中右端部の内側には、筒状の弁座部材21が収容されている。この弁座部材21は、有底筒状の小径筒部21aと、小径筒部21aの
図3中右端である端部の外周から外方へ向けて突出するフランジ部21bと、フランジ部21bの外周から小径筒部21aとは反対側へ向けて延びる大径筒部21cと、小径筒部21aの側方からフランジ部21bの内周に向けて斜めに開口する透孔21dと、大径筒部21cを径方向に貫いて大径筒部21cの内外を連通する切欠21eと、フランジ部21bの
図3中右端内周から軸方向に突出する環状の弁座21fとを備えて構成されている。
【0057】
弁座部材21は、大径筒部21cをハウジング4のソケット4d内に嵌合させてハウジング4内に収容されている。なお、弁座部材21内は、切欠21eおよびソケット4dに設けた切欠溝4fを介してリザーバ108に連通されている。また、小径筒部21aの外径は、ハウジング4の内筒4aの内径より小径とされており、弁座部材21内は、透孔21dおよびバルブ保持部材10の中空部10cおよびオリフィス10dを介して伸側室104に連通されている。
【0058】
つづいて、弁座部材21の小径筒部21a内には、弁体22が摺動自在に挿入されている。詳しくは、弁体22は、小径筒部21a内に摺動自在に挿入される弁座部材側である
図3中左端側の小径部22aと、反弁座部材側である
図3中右端側の大径部22bと、小径部22aと大径部22bとの間に設けた環状の凹部22cと、反弁座部材側端の外周に設けたフランジ状のばね受部22dと、弁体22の先端から後端へ貫通する連通路22e、連通路22eの途中に設けたオリフィス22fとを備えて構成されている。
【0059】
そして、弁体22の凹部22cは、弁体22が弁座部材21に対して軸方向へ許容される範囲内で移動する際、常に、透孔21dに対向して、弁体22が透孔21dを閉塞することが無いようになっている。
【0060】
また、弁体22にあっては、前述のように、凹部22cを境にして反弁座部材側の外径が大径になっており、大径部22bの
図3中左端に弁座部材21の弁座21fに対向する環状の弁部22gを備え、弁体22が弁座部材21に対して軸方向へ移動することで弁部22gが弁座21fに離着座するようになっている。
【0061】
さらに、ばね受部22dとフランジ部21bとの間には、弁体22を反弁座部材側へ附勢するコイルばね33が介装されている。弁体22は、コイルばね33によって常に反弁座部材側へ附勢されている。このように、弁体22は、コイルばね33から弁座部材21から離間する方向へ付勢される一方、ソレノイド40から受ける弁座部材21に着座する方向へ向けて推力を受けるようになっている。
【0062】
このように、弁体22、弁座部材21、コイルばね33およびソレノイド40とで電磁弁24を構成しており、弁部22gが弁座21fに着座すると電磁弁24が閉弁するようになっている。電磁弁24は、閉弁状態では、バルブ保持部材10の中空部10cと弁座部材21内との連通を断ち、開弁状態では、中空部10cを弁座部材21内に連通する。よって、電磁弁24が開弁すると、伸側室104は、中空部10c、オリフィス10d、透孔21d、弁座部材21内、切欠21eおよび切欠溝4fを介してリザーバ108に連通される。このように、本実施の形態では、中空部10c、オリフィス10d、透孔21d、弁座部材21内、切欠21eおよび切欠溝4fにてパイロット通路23を形成している。パイロット通路23のオリフィス10dより下流は、ハウジング4の孔4eを介して背圧室5に通じており、パイロット通路23のオリフィス10dの下流の圧力は電磁弁24の開弁圧の制御によって調節できる。
【0063】
電磁弁24の開弁圧は、後述するソレノイド40によって制御され、ソレノイド40に与える電流量によってリーフバルブ3の背面の圧力である背圧室5内の圧力を調整できる。背圧室5内の圧力は、リーフバルブ3の背面に作用しているので、本実施の形態の減衰バルブ1では、ソレノイド40へ与える電流量の調節によってリーフバルブ3の開弁圧を調節でき、これによって、緩衝器100が発生する減衰力を大小変化させ得る。
【0064】
なお、この場合、コイルばね33を利用して、弁体22を弁座部材21から遠ざかる方向へ附勢するようにしているが、コイルばね33以外にも附勢力を発揮することができる弾性体を使用することができる。さらに、弁体22の大径部22b内には、プランジャ34が嵌合されている。
【0065】
また、弁体22は、弁座部材21の小径筒部21a内に挿入されると、小径筒部21a内であって透孔21dより先端側に空間26を形成する。この空間26は、弁体22に設けた連通路22e、オリフィス22fおよびプランジャ34に設けた通孔34aを介して電磁弁24外に連通されている。これにより、弁体22が弁座部材21に対して
図1中左右方向である軸方向に移動する際、前記空間26がダッシュポットとして機能して、弁体22の急峻な変位を抑制するとともに、弁体22の振動的な動きを抑制することができる。
【0066】
このように構成された減衰バルブ1における各部は、緩衝器100の外筒109に設けた開口に取り付けたスリーブ109a内に収容されるとともに、ソレノイド40をスリーブ109aに回転可能に装着されたナット120に螺着することで緩衝器100に固定される。
【0067】
ソレノイド40は、
図5に示すように、コイル41と、コイル41の軸方向の一端側に配置される第一固定鉄心43と、第一固定鉄心43と空隙をもってコイル41の軸方向の他端側に配置される第二固定鉄心44と、第一固定鉄心43と第二固定鉄心44との間に配置されてコイル41への通電により第一固定鉄心43に吸引される筒状の第一可動鉄心45と、有底筒状であって第一可動鉄心45内に摺動自在に挿入されて底部46bを第二固定鉄心44に対向させて第一固定鉄心43と第二固定鉄心44との間に配置されるとともにコイル41への通電により第二固定鉄心44に吸引される第二可動鉄心46と、第一可動鉄心45と第一固定鉄心43との間に介装されて第一可動鉄心45を第二固定鉄心側へ付勢するばね47とを備えて構成されている。
【0068】
コイル41は、筒状であって樹脂モールドされており、第一可動鉄心45および第二可動鉄心46の外周に配置されている。コイル41の内周には、非磁性体で形成された筒状のフィラーリング42が嵌合されている。フィラーリング42は、
図5中の左端側の内周から内側向けて突出する環状のフランジ42aと、
図5中右端内周に設けられた環状溝42bとを備えている。
【0069】
第一固定鉄心43は、コイル41の一端となる
図5中右端に当接するともにフィラーリング42の
図5中右端の内周に嵌合されている。具体的には、第一固定鉄心43は、磁性体で形成されており、樹脂モールドされたコイル41の
図5中右端に当接する円盤状のベース43aと、ベース43aから立ち上がりフィラーリング42の内周に嵌合される環状の嵌合部43bとを備えている。
【0070】
第二固定鉄心44は、コイル41の他端となる
図5中左端に当接するとともに第一固定鉄心43と空隙をもってフィラーリング42の
図5中左端の内周に圧入嵌合されている。具体的には、第二固定鉄心44は、磁性体で形成されており、樹脂モールドされたコイル41の
図5中左端に当接する環状のベース44aと、ベース44aの外周から立ち上がる筒状のケース部44bと、ベース44aの内周側から立ち上がりフィラーリング42の内周に圧入される筒状の圧入部44cとを備えている。
【0071】
ケース部44bの内周には、コイル41およびコイル41の内周に嵌合されるフィラーリング42が収容されるとともに、ケース部44bの
図5中右端側内周には、第一固定鉄心43が収容されている。そして、ケース部44bの
図5中右端を外周から加締めることで第一固定鉄心43がケース部44bに把持されて固定される。第一固定鉄心43がケース部44bに固定されると、コイル41とフィラーリング42とが第一固定鉄心43のベース43aと第二固定鉄心44のベース44aとで挟持されるとともに、嵌合部43bおよび圧入部44cがフィラーリング42の内周に嵌合されコイル41がケース部44b内に嵌合されているのでコイル41とフィラーリング42とが軸方向および径方向に拘束された状態で第一固定鉄心43と第二固定鉄心44との間に収容される。
【0072】
また、第二固定鉄心44の圧入部44cの先端となる
図5中右端の外周には、テーパ状の面取り部44dが設けられていて、フィラーリング42との間に環状隙間が形成されている。この環状隙間には、シールリング50が収容されている。シールリング50は、フィラーリング42の内周に設けたフランジ42aと圧入部44cの面取り部44dとに密着して第二固定鉄心44とフィラーリング42との間をシールしている。さらに、フィラーリング42の
図5中右端内周に設けられた環状溝42b内には、第一固定鉄心43の嵌合部43bの外周に密着するシールリング51が装着されている。シールリング51は、第一固定鉄心43とフィラーリング42との間をシールしている。
【0073】
フィラーリング42の内周であって、第一固定鉄心43の嵌合部43bと第二固定鉄心44の圧入部44cとの間には、第一可動鉄心45が摺動自在に挿入されている。
【0074】
また、第二固定鉄心44のベース44aの
図1中左端には、左方へ向けて突出するとともに、減衰バルブ1におけるハウジング4のソケット4dの外周に螺合する接続筒44eが設けられている。
【0075】
第一可動鉄心45は、磁性体で形成されており、フィラーリング42の内周に摺接する摺接筒45aと、摺接筒45aの一端である
図5中右端から内周へ向けて突出して第一固定鉄心43の嵌合部43bの
図5中左端面に対向する環状底部45bと、環状底部45bから第一固定鉄心43に向けて突出して第一固定鉄心43に離着座する環状凸部45cとを備えている。また、環状底部45bの内径は、一端側となる
図5中で右端側が拡径されていて環状底部45bの内周に段部45dが形成されている。
【0076】
第一可動鉄心45の摺接筒45aは、外周を前述したようにフィラーリング42の内周に摺接させており、他端となる
図5中左端を第二固定鉄心44の圧入部44cの
図5中右端に軸方向で対向させている。
【0077】
環状凸部45cは、環状底部45bの外周側に設けられており、環状凸部45cの外径は環状底部45bの直径より小径となっている。よって、環状凸部45cが第一固定鉄心43の嵌合部43bの
図5中左端に当接すると、第一可動鉄心45の環状底部45bと第一固定鉄心43の嵌合部43bとの間であって環状凸部45cの内周側と外周側にそれぞれ環状隙間が形成される。また、環状凸部45cの軸方向長さは、0.13mmから0.15mmまでの長さとなっており、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43の嵌合部43bの
図5中左端に当接した際に形成される環状凸部45cの内外周の環状隙間の厚さは0.13mmから0.15mmの範囲の厚さとなる。
【0078】
第一可動鉄心45の摺接筒45aの他端となる
図5中左端から環状底部45bにおける環状凸部45cの第一固定鉄心43の嵌合部43bに対する当接面までの軸方向長さは、第一固定鉄心43の嵌合部43bと第二固定鉄心44の圧入部44cとの間の軸方向の距離よりも短い。よって、第一可動鉄心45は、第一固定鉄心43と第二固定鉄心44との間でフィラーリング42に移動を案内されつつ軸方向に変位できる。
【0079】
なお、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43から離間して第二固定鉄心側へ移動した際に摺接筒45aがフィラーリング42のフランジ42aに干渉しないように、摺接筒45aの他端の外周にはテーパ状の面取り部45eが設けられている。
【0080】
さらに、第一可動鉄心45の環状底部45bの内周には、非磁性体で形成された筒状のばね受52が嵌合されている。ばね受52は、
図5中右端の外周にフランジ52aを備えるとともに、
図5中左端の内周から内方へ向けて突出する環状のばね支持部52bとを備えている。ばね受52は、前述したように、環状底部45bの内周に嵌合されると、環状底部45bの内周に形成された段部45dにフランジ52aを当接させて、第一可動鉄心45に対して他端側となる
図5中左方への相対移動が規制される。なお、ばね受52は、第一可動鉄心45に圧入によって装着されてもよいし、螺子締結されてもよい。また、ばね受52は、磁性体で形成されてもよいが、非磁性体で形成されると第一可動鉄心45が第二可動鉄心46に摺接する摺接筒45aに磁束を集中して流すことができ、ソレノイド40の第一可動鉄心45と第二可動鉄心46に与える吸引力を損なわない。なお、ばね受52を磁性体とする場合には、ばね受52と第一可動鉄心45とを一体不可分の一部品で構成してもよい。
【0081】
また、ばね受52の内周に設けられたばね支持部52bと第一固定鉄心43のベース43aとの間には、第一可動鉄心45を常時第一固定鉄心43から軸方向であって離間する方向へ付勢するばね47が圧縮状態で介装されている。ばね47は、一端が嵌合部43bの内周に挿入されるとともに、他端側がばね受52内に挿入されており、常時、ばね受52を第一固定鉄心43から軸方向に離間するように付勢している。ばね受52の内径と嵌合部43bの内径とは、略同じ径とされており、ばね47は、ばね受52と嵌合部43bとによって径方向への位置ずれが防止されている。
【0082】
また、ばね47によって付勢されるばね受52は、第一可動鉄心45の内周に嵌合しておりフランジ52aが環状底部45bの内周の段部45dに当接しているので、ばね47の付勢力はばね受52を介して第一可動鉄心45に伝達されている。よって、第一可動鉄心45は、ばね47によって常時第一固定鉄心43から軸方向で離間する方向、つまり、第二可動鉄心46側へ向けて付勢されている。
【0083】
ばね受52は、ばね47の付勢力を受けてフランジ52aと段部45dと当接させているので、第一可動鉄心45に圧入されずとも離間しないが、前述したように第一可動鉄心45の内周に圧入されてもよい。
【0084】
第二可動鉄心46は、磁性体で形成されており、筒部46aと筒部46aの
図5中左端を閉塞する底部46bとを備えて有底筒状とされており、筒部46aの外周を第一可動鉄心45の摺接筒45aの内周に摺接させている。なお、筒部46aの内径は、第一可動鉄心45のばね受52の外径より大径とされている。よって、第二可動鉄心46は、筒部46aが摺接する第一可動鉄心45の摺接筒45aに移動が案内されて第一可動鉄心45に対して軸方向へ相対移動できる。第一可動鉄心45は、摺接筒45aの外周をフィラーリング42に摺接させているので、第一可動鉄心45および第二可動鉄心46は、ともにフィラーリング42に軸ぶれせずに軸方向へ移動できる。なお、第二可動鉄心46の底部46bの外周は、常に、第二固定鉄心44の圧入部44cの内周に接している。
【0085】
また、筒部46aとばね受52との間には、環状隙間が形成されているので、第二可動鉄心46の筒部46aと、第一可動鉄心45の摺接筒45aおよびばね受52とで囲まれる空間が密閉されない。また、第二可動鉄心46の底部46bには、第二可動鉄心46の内外を連通する連通孔46cが設けられており、ばね受52内に連通される第二可動鉄心46内も密閉されないようになっている。
【0086】
よって、第二可動鉄心46は、第一可動鉄心45に対して軸方向にスムーズに移動できるとともに、第一可動鉄心45もフィラーリング42および第二可動鉄心46に対して軸方向へスムーズに移動できる。
【0087】
また、ばね47は、第一可動鉄心45を第二固定鉄心側へ付勢している。皿ばね48は、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46とが軸方向にて接近して圧縮されると弾発力を発揮して第一可動鉄心45と第二固定鉄心44とのそれ以上の接近を規制する。皿ばね49は、第二可動鉄心46が第二固定鉄心44に軸方向で接近して圧縮されると弾発力を発揮して第二可動鉄心46の第二固定鉄心44へ向けてそれ以上接近するのを規制する。なお、皿ばね48,49に代えて、ウェーブワッシャやゴム等といった弾性体を設けてもよいし、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46との接近、第二可動鉄心46と第二固定鉄心44との接近を規制できれば弾性体以外の部材を設けてもよい。
【0088】
第一固定鉄心43、第二固定鉄心44、第一可動鉄心45および第二可動鉄心46は、前述したように、それぞれ磁性体で形成されていて、
図5に示すように、ソレノイド40において磁路Pを形成している。つまり、磁路Pは、第一可動鉄心45の摺接筒45aと第二可動鉄心46の筒部46aとの摺接部分を通っている。
【0089】
そして、コイル41に通電すると、コイル41にて発生する磁界が第一固定鉄心43、第二固定鉄心44、第一可動鉄心45および第二可動鉄心46を通ってコイル41へ戻る。したがって、コイル41へ通電すると、第一可動鉄心45が
図5中右方に配置されている第一固定鉄心43に吸引されるとともに、第二可動鉄心46が
図5中左方に配置されている第二固定鉄心44に吸引される。つまり、ソレノイド40におけるコイル41に通電すると、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46とが互いに軸方向で離間する方向へ吸引される。
【0090】
このように構成されたソレノイド40は、第二固定鉄心44にハウジング4を螺着することによって減衰バルブ1に組み付けられた後、第二固定鉄心44の
図5中左端の外周に設けられた螺子部(符示せず)が緩衝器100の外筒109のスリーブ109aに装着されたナット120に螺着されて緩衝器100に取り付けられる。このように第二固定鉄心44を取り付けると、第二固定鉄心44内にソレノイド40の構成全部品が収容されているので、ソレノイド40を緩衝器100に装着できる。
【0091】
このようにソレノイド40を緩衝器100に装着すると、第二可動鉄心46の底部46bが電磁弁24における弁体22の後端に装着されたプランジャ34に当接する。よって、ソレノイド40が発生する推力は、プランジャ34を介して弁体22に伝達される。弁体22は、コイルばね33によって開弁方向に付勢される一方、ソレノイド40の推力を閉弁方向に受けるため、ソレノイド40の推力を調整すると、弁体22がパイロット通路23から受ける圧力で弁座部材21から離間するときの圧力、つまり、電磁弁24の開弁圧を調節できる。パイロット通路23の電磁弁24の上流であってオリフィス10dより下流の圧力は、電磁弁24の開弁圧に等しくなるため、背圧室5の圧力も電磁弁24の開弁圧に等しくなる。よって、ソレノイド40の推力の調整によって、背圧室5内の圧力を制御できる。
【0092】
つづいて、
図6には、ソレノイド40へ供給する電流量と、ソレノイド40が電磁弁24における弁体22に与える力との関係を示している。この
図6中、電流量Iaは、第一固定鉄心43から離れた状態にある第一可動鉄心45を第一固定鉄心43に吸着させるのに最低限必要な電流量であり、電流量Ibは、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に吸着された後に第一固定鉄心43と第一可動鉄心45の吸着状態を維持するのに最低限必要な電流量である。なお、電流量Icについては、後述する。なお、ソレノイド40が示されている各図は、コイル41へ電流供給して第一可動鉄心45を第一固定鉄心43に吸着させた状態を示している。
【0093】
まず、コイル41へ供給する電流量がゼロの場合、つまり、ソレノイド40の非通電時には、ばね47の付勢力により第一可動鉄心45が
図5中左方へ押されて皿ばね48を介して第二可動鉄心46に突き当たり、第二可動鉄心46は、弁体22とともに左方へ押される。このように、ソレノイド40の非通電時には、弁体22は、第二可動鉄心46、皿ばね48および第一可動鉄心45を介してばね47による左向きの力を受ける。つまり、ソレノイド40の非通電時には、ソレノイド40は弁体22に、ばね47の付勢力に起因する左向きの力を与える。
【0094】
次に、ソレノイド40へ供給する電流量を増やしていく場合、第一可動鉄心45を第一固定鉄心43へ吸引する
図5中右向きの力が大きくなるとともに、第二可動鉄心46を第二固定鉄心44へ吸引する
図5中左向きの力も大きくなる。このような場合、ソレノイド40へ供給する電流量が電流量Ia未満の領域では、弁体22にばね47の付勢力が伝わるものの、第一可動鉄心45を右方へ付勢するばね47の力の一部が第一可動鉄心45を左方(第一固定鉄心43側)へ吸引する力により相殺される。このため、電流量が電流量Ia未満の領域では、ソレノイド40へ供給する電流量を増やすほどソレノイド40が弁体22に与える左向きの力が減少する。
【0095】
その一方、ソレノイド40へ供給する電流量を増やしていく場合であって、その電流量が電流量Ia以上の領域では、ばね47の付勢力に抗して第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に引き寄せられて吸着される。このような状態では、ばね47の付勢力が第二可動鉄心46へ伝わらなくなって、第二可動鉄心46を第二固定鉄心44へ吸引する力のみが弁体22を押し下げる方向へ作用する。この第二可動鉄心46を吸引する
図5中左向きの力は、ソレノイド40へ供給する電流量に比例して大きくなるので、ソレノイド40へ供給する電流量が電流量Ia以上の領域では、ソレノイド40へ供給する電流量を増やすほど、その電流量に比例してソレノイド40が弁体22に与える左向きの力が増加する。
【0096】
反対に、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に吸着してばね47の付勢力が第二可動鉄心46に伝わらない状態から、ソレノイド40へ供給する電流量を減らしていく場合、第一可動鉄心45を第一固定鉄心43へ吸引する
図5中右向きの力が小さくなるとともに、第二可動鉄心46を第二固定鉄心44へ吸引する
図5中左向きの力も小さくなる。このような場合であっても、ソレノイド40へ供給する電流量が電流量Ib以上の領域では、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に吸着されて、ばね47の付勢力が第二可動鉄心46へ伝わらない状態が維持される。このため、ソレノイド40へ供給する電流量が電流量Ib以上の領域では、ソレノイド40へ供給する電流量を減らすほど、その電流量に比例してソレノイド40が弁体22に与える左向きの力が減少する。
【0097】
その一方、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に吸着してばね47の付勢力が第二可動鉄心46に伝わらない状態から、ソレノイド40へ供給する電流量を減らしていく場合であって、その電流量が電流量Ib未満の領域になると、ばね47の付勢力によって第一可動鉄心45と第一固定鉄心43との吸着状態が解除されて、ばね47の付勢力が第二可動鉄心46へ伝わるようになる。このため、電流量が電流量Ib未満の領域では、ソレノイド40へ供給する電流量を減らすほどソレノイド40が弁体22に与える
図5中左向きの力が増加する。
【0098】
図6からもわかるように、第一可動鉄心45と第一固定鉄心43の吸着を維持するのに最低限必要な電流量であるIbは、離間した状態にある第一可動鉄心45を第一固定鉄心43に吸着させるのに最低限必要な電流量である電流量Iaより小さい(Ia>Ib)。このため、ソレノイド40に供給する電流量に対するソレノイド40が弁体22に与える力の特性は、ヒステリシスをもった特性となる。なお、
図6では、理解を容易にするため、ソレノイド40へ供給される電流量が小さい領域を誇張して記載している。
【0099】
そして、本実施の形態では、ソレノイド40へ供給する電流量を制御して、ソレノイド40が弁体22に与える力を制御しようとする場合、一旦電流量Ia以上の電流供給をして第一可動鉄心45を第一固定鉄心43に吸着させた後、ソレノイド40へ供給する電流量は、電流量Ibより大きな電流量Ic以上となる範囲で制御される。第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に一度吸着されれば、ソレノイド40へ供給する電流量がIb未満にならなければ、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43から離間しないので、電流量Icは、電流量Ibよりも大きければ電流量Iaよりも小さくて良い。これにより、ソレノイド40への通電量を制御する正常時には、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に吸着された状態が維持されるので、ソレノイド40へ供給する電流量と、ソレノイド40が弁体22に与える
図5中左向きの力が比例関係となり、その力はソレノイド40へ供給する電流量を増やすほど大きくなる。
【0100】
その正常時(制御時)において、ソレノイド40への通電によって生じる磁力に起因してソレノイド40が弁体22に与える力をソレノイド40の「推力」という。つまり、ソレノイド40の推力は、ソレノイド40へ供給する電流量の制御によって制御される。また、本実施の形態では、ソレノイド40へ供給する電流量とソレノイド40が弁体22に与える推力との関係が比例関係となり、供給電流量を増やすほど推力が大きくなり、供給電流量を減らすほど推力が小さくなる。
【0101】
その一方、ソレノイド40への通電が断たれるフェール時においては、非通電時と同じ状況となるので、ソレノイド40のばね47によって弁体22が
図5中左向きに付勢され、その付勢力は、ばね定数等のばね47の仕様に応じて予め決められる。また、フェール時(非通電時)に弁体22を付勢するばね47の付勢力の方向は、正常時に弁体22に付与される推力の方向と同じである。なお、ソレノイド40への通電を断った状態でのばね47の付勢力は、コイルばね33が弁体22を弁座部材21から離間させる付勢力よりも大きくしてある。よって、ソレノイド40は、非通電時であっても弁体22をコイルばね33に抗して弁座部材21に着座させる推力を発揮できる。
【0102】
このようにソレノイド40の推力は、正常時には、ソレノイド40のコイル41へ供給される電流量が電流量Ic以上に制御され、通電量が大きくなればなるほど大きくなる。つまり、ソレノイド40への通電量が大きくなると、弁体22をコイルばね33に対向して閉弁方向へ押すソレノイド40の推力が大きくなるので、電磁弁24の開弁圧は高くなる。よって、正常時において、ソレノイド40への通電量を電流量Icとすると電磁弁24の開弁圧が最小となり、背圧室5の圧力が最も低くなり、リーフバルブ3の開弁圧が最小となる。他方、ソレノイド40への通電量を最大にすると電磁弁24の開弁圧が最大となり、背圧室5の圧力が最も高くなって、リーフバルブ3の開弁圧が最大となる。なお、ソレノイド40への通電量の最大値は、コイル41や電源の仕様などによって適宜決定される。
【0103】
また、フェール時には、前述した通りソレノイド40は、ばね47の付勢力を弁体22に伝達してコイルばね33に対向する推力を与える。よって、フェール時には、弁体22は、ばね47の付勢力からコイルばね33の付勢力を差し引いた力で弁座部材21に押し付けられるので、電磁弁24の開弁圧はばね47とコイルばね33のばね定数等の仕様に応じて決せられる。よって、フェール時であっても、電磁弁24の開弁圧を予め設定でき、背圧室5の圧力を予め設定される前記開弁圧にしてリーフバルブ3の開弁圧を任意に設定できる。
【0104】
ここで、本実施の形態のソレノイド40では、コイル41と、コイル41の軸方向の一端側に配置される第一固定鉄心43と、第一固定鉄心43と空隙をもってコイル41の軸方向の他端側に配置される第二固定鉄心44と、第一固定鉄心43と第二固定鉄心44との間に配置されてコイル41への通電により第一固定鉄心43に吸引される筒状の第一可動鉄心45と、有底筒状であって第一可動鉄心45内に摺動自在に挿入されて底部46bを第二固定鉄心44に対向させて第一固定鉄心43と第二固定鉄心44との間に配置されるとともにコイル41への通電により第二固定鉄心44に吸引される筒状の第二可動鉄心46と、第一可動鉄心45と第一固定鉄心43との間に介装されて第一可動鉄心45を第二固定鉄心44側へ付勢するばね47とを備えている。
【0105】
このように構成された本実施の形態のソレノイド40では、第二可動鉄心46が第一可動鉄心45内に摺動自在に挿入されており、磁路Pが第一可動鉄心45の摺接筒45aと第二可動鉄心46の筒部46aとの摺接部分および第二固定鉄心44の圧入部44cと第二可動鉄心46の筒部46aの
図5中左端外周との摺接部分を通っている。
【0106】
そして、本実施の形態のソレノイド40では、第二固定鉄心44とフィラーリング42とをブレージングによって接合するのではなく、フィラーリング42を第二固定鉄心44のベース44aから第一固定鉄心側へ突出する環状の圧入部44cの外周に圧入して第二固定鉄心44に固定している。
【0107】
外周に配置されるのは、圧入部44cの内周に摺接する第二可動鉄心46ではなく、第一可動鉄心45であるため、第二可動鉄心46の
図5中左端の底部46bの外周に
図8に示すような圧入部44cが出入りする環状凹部を設けずに済む。よって、第二可動鉄心46の底部46bの厚みを厚くしなくとも、筒部46aから底部46bへかけての肉厚が薄くならずに第二可動鉄心46内の磁路断面積を確保でき、第二可動鉄心46内での磁束飽和を抑制できる。換言すれば、第二可動鉄心46の底部46bの軸方向長さを長くせずとも、第二可動鉄心46内での磁束飽和を抑制できる。
【0108】
このように第二可動鉄心46を第一可動鉄心45内に摺動自在に挿入する構造を採用すると、第二可動鉄心46の軸方向長さを長くすることなくフィラーリング42の第二固定鉄心44への接合を安価な圧入を採用できる。ソレノイド40の軸方向長さを長くしなくとも、第二可動鉄心46と第一可動鉄心45とが最も離間した状態で、つまり、第二可動鉄心46が第二固定鉄心44に対して軸方向で最も接近し、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43の嵌合部43bに当接した状態で、第二可動鉄心46の筒部46aと第一可動鉄心45の摺接筒45aとが接触している部分の長さ(ラップ長さ)を十分に確保できる。
【0109】
と言うのは、第二可動鉄心46の全長を従来のソレノイドと同等としても、第二可動鉄心46の底部46bの厚みである軸方向長さを長くする必要がないから筒部46aの長さも従来のソレノイドと同等に確保できる。第一可動鉄心45の摺接筒45aの長さも従来のソレノイドと同等にしておけば、従来のソレノイドと同等のラップ長さを確保できる。よって、ソレノイド40の全長を従来のソレノイドと同等にしても、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46とが最も離間した際のラップ長さが減少せず、ソレノイド40の第一可動鉄心45および第二可動鉄心46へ与える吸引力も減少することはない。よって、ソレノイド40に安価な構造を採用しても、ソレノイド40の全長の大型化を招かず、ソレノイド40は十分な推力の発生できる。
【0110】
さらに、本実施の形態のソレノイド40では、筒状であってコイル41の内周に配置されて第一固定鉄心43と第二固定鉄心44との間に介装されるフィラーリング42を備え、第一可動鉄心45がフィラーリング42の内周に摺動可能に挿入され、第二固定鉄心44が環状であってフィラーリング42内に圧入されて内周に第二可動鉄心46が摺動自在に挿入される圧入部44cを有している。このように構成されたソレノイド40によれば、フィラーリング42によって第一可動鉄心45および第二可動鉄心46との軸方向の移動を案内できるとともに、フィラーリング42内に圧入部44cを圧入してフィラーリング42と第二固定鉄心44とを安価に一体化できる。
【0111】
また、本実施の形態のソレノイド40では、第一可動鉄心45が第二可動鉄心46の外周に摺接する摺接筒45aと、摺接筒45aの一端から内周へ向けて突出する環状底部45bとを有し、環状底部45bが第一固定鉄心43に向けて突出して第一固定鉄心43に離着座する環状凸部45cを備えている。このように構成されたソレノイド40では、第一可動鉄心45が第一固定鉄心43に吸引されると、環状凸部45cのみが第一固定鉄心43に当接する。よって、第一可動鉄心45と第一固定鉄心43との間に切削屑等のコンタミナントが入り込んでもコンタミナントは環状凸部45cが第一固定鉄心43に接近して着座する際に第一可動鉄心45と第一固定鉄心43との間であって環状凸部45cの内周或いは外周へ逃げるため、環状凸部45cと第一固定鉄心43との間でコンタミナントを噛み込むのを防止できる。よって、第一可動鉄心45と第一固定鉄心43との間にコンタミナントが存在しても、第一可動鉄心45の環状凸部45cが第一固定鉄心43に吸引されて密着でき、常に、コイル41へ電流量Ibを供給すれば第一可動鉄心45を第一固定鉄心43に吸着した状態に維持できるようになり、ソレノイド40の動作が安定する。
【0112】
なお、環状凸部45cの軸方向長さは、0.13mmから0.15mmの範囲の長さになるように設定されており、環状凸部45cが第一固定鉄心43の嵌合部43bに当接した際に、第一可動鉄心45から第一固定鉄心43へ向かう磁束が環状凸部45cのみならず環状凸部45cの内周および外周にできる空隙を通過できるようにしている。このようにすることで、環状凸部45c以外に前記空隙も磁路の一部を形成でき、第一可動鉄心45を第一固定鉄心43に吸着させる吸着力を大きくでき、環状凸部45cの径方向幅を可能な限り狭くしてコンタミナントの噛み込みリスクを効果的に低減できる。なお、環状凸部45cの内周および外周にできる前記空隙を磁路として用いない場合、環状凸部45cを軸方向に対して垂直な平面で切った断面積を吸引力を確保できるように設定すればよい。
【0113】
また、第一可動鉄心45の環状凸部45cは、環状底部45bの外周側に設けられ、環状凸部45cの外径は、環状底部45bの直径より小径となっているため、第一固定鉄心43の嵌合部43bへの当接時に嵌合部43bの外周縁から径方向に離間した位置に着座する。第一固定鉄心43の嵌合部43bの外周は、第一固定鉄心43の加工の影響或いは他部品との接触によって平坦とならず一部が盛り上がるような形状となってしまう場合があるが、環状凸部45cが前述のように構成されると、平坦形状ではない可能性のある嵌合部43bの外周縁を避けて嵌合部43bに当接するようになるので、環状凸部45cの全体が嵌合部43bに密着できる。また、環状凸部45cが環状底部45bの外周側に配置されているので、環状凸部45cが第一固定鉄心43の嵌合部43bに当接した際に、環状凸部45cの外周側に生じる密閉空間が小さくなるので、第一可動鉄心45の第一固定鉄心43側への移動がスムーズになる。なお、第一固定鉄心43の嵌合部43bに当接した際の環状凸部45cの内周側の空間は、ばね受52内、第二可動鉄心46の連通孔46cを介してソレノイド40の外方へ連通されているので、第一可動鉄心45の移動を妨げない。
【0114】
さらに、本実施の形態のソレノイド40では、フィラーリング42が内周に圧入部44cに軸方向で対向するフランジ42aを備え、フランジ42aと圧入部44cとの間に介装されてフィラーリング42と第二固定鉄心44との間をシールするシールリング51を備えている、このように構成されたソレノイド40では、フィラーリング42のフランジ42aと第二固定鉄心44の圧入部44cとの間にシールリング51を介装しているので、圧入部44cの外周に環状溝を設けてシールリングを装着するような構造を採用する場合に比較して圧入部44cの全長を短くできる。よって、圧入部44cを短くできるため、本実施の形態のソレノイド40では、全長を短くすることができる。
【0115】
つづいて、以下に、本実施の形態に係る減衰バルブ1と減衰バルブ1を備えた緩衝器100の作動について説明する。緩衝器100が伸縮して伸側室104から作動油が減衰バルブ1を経てリザーバ108へ排出されると、減衰バルブ1が正常動作する場合には、通路10eおよびパイロット通路23の上流の圧力が高まり、ソレノイド40に電流を供給して、電磁弁24の開弁圧を調節するようにすると、パイロット通路23におけるオリフィス10dと電磁弁24との間の圧力が背圧室5に導かれる。
【0116】
背圧室5の内部圧力は、電磁弁24の開弁圧に制御され、当該開弁圧をソレノイド40で調節することによりリーフバルブ3の背面に作用する圧力を調節することができ、ひいては、リーフバルブ3が通路10eを開放する開弁圧をコントロールすることができる。
【0117】
より詳細には、伸側室104内の圧力によって、中間室9内の圧力が高まりリーフバルブ3の外周を
図3中右方へ撓ませようとする力が、背圧室5の内部圧力とリーフスプリング7による附勢力に打ち勝つと、リーフバルブ3が撓んで弁座2bから離座してリーフバルブ3とディスク2との間に隙間が形成されて通路10eが開放される。よって、背圧室5内の圧力を電磁弁24によって大小調節すると、リーフバルブ3を弁座2bから離座させ得る中間室9の圧力を大小調節できる。つまり、ソレノイド40へ与える電流量によってリーフバルブ3の開弁圧を制御できる。したがって、緩衝器100の減衰力特性(ピストン速度に対する減衰力の特性)は、
図7に示すように、リーフバルブ3が開弁するまでは、減衰バルブ1の摺動隙間および切欠オリフィス2dを作動油が通過するので、減衰係数が大きな特性(
図7中線X部分)となるが、リーフバルブ3が弁座2bから離座して通路10eを開くと、
図7中線Yで示すように傾きが小さくなる、つまり、減衰係数が小さくなる特性となる。
【0118】
また、先に述べたように、リーフバルブ3における増圧比をディスク2における増圧比よりも小さくしているので、リーフバルブ3の開弁圧はディスク2の開弁圧よりも小さいので、ポート2aによって生じる差圧がディスク2を基部10aから離座させる開弁圧に達しないと、ディスク2は基部10aに着座したままとなる。他方、リーフバルブ3が撓んで開弁状態にあり、緩衝器100のピストン速度が速くなり、ポート2aによって生じる差圧がディスク2を基部10aから離座させる開弁圧に達すると、ディスク2も基部10aから離座して通路10eを開放するようになる。すると、リーフバルブ3のみが開弁状態にあって、通路10eがポート2aのみを介してリザーバ108に連通される場合に対し、ディスク2が基部10aから離座すると、通路10eがポート2aを介さず直接にリザーバ108に連通され流路面積が大きくなるため、緩衝器100の減衰力特性は、
図7中線Zに示すように、リーフバルブ3のみが開弁状態にある場合に比較して傾きが小さくなる、つまり、減衰係数がさらに小さくなる特性となる。
【0119】
そして、ソレノイド40への通電量を調節して、電磁弁24の開弁圧を大小させると、
図7中の破線で示す範囲で、線Yおよび線Zを上下に移動させるように緩衝器100の減衰力特性を変化させることできる。
【0120】
また、リーフバルブ3における増圧比をディスク2における増圧比よりも小さくすることができ、そうすることでリーフバルブ3の開弁圧はディスク2の開弁圧よりも小さくなり、二段階に通路10eをリリーフするので、この減衰バルブ1にあっては、電磁弁24の開弁圧を最少にするフルソフト時における減衰力を小さくすることができるとともに、減衰力の可変範囲を大きくすることができる。
【0121】
したがって、本実施の形態の減衰バルブ1によれば、緩衝器100のピストン速度が低速域にある際にソフトな減衰力を出力でき減衰力過多となることがなく、ピストン速度が高速域になった際に要望されるハードな減衰力の上限も高めることができ減衰力不足を招くこともない。そのため、この減衰バルブ1を緩衝器100に適用すれば、減衰力可変範囲を大きくとることができ、車両における乗り心地を向上させることができる。
【0122】
なお、本実施の形態の場合、電磁弁24が、筒状であって内外を連通する透孔21dを有する小径筒部21aと、当該小径筒部21aの端部に設けられた環状の弁座21fとを備えた弁座部材21と、小径筒部21a内に摺動自在に挿入される小径部22aと、大径部22bと、小径部22aと大径部22bとの間に設けられて透孔21dに対向する凹部22cとを備えた弁体22とを備え、弁座21fに弁体22における大径部22bの端部を離着座させるようにしている。よって、この電磁弁24は、弁体22を弁座部材21から抜け出る方向へ圧力が作用する受圧面積を小さくすることができ、受圧面積を小さくしながら、開弁時の流路面積を大きくすることができる。このようにすると、弁体22の受圧面積を減らしてソレノイド40が出力するべき推力を低減できるとともに、開弁時の流路面積を大きくすることで弁体22の移動量を低減して電磁弁24が過剰に開弁するオーバーシュートを低減できる。
【0123】
また、フェール時には、ソレノイド40へ電流供給が断たれるが、ソレノイド40は、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46とを備えており、非通電時であってもばね47によって、通電時と同様の方向の推力を弁体22へ与えることができる。よって、本実施の形態の減衰バルブ1によれば、フェール時にもソレノイド40に推力を発揮させてリーフバルブ3の開弁圧を予め任意に設定される値に設定して、緩衝器100に十分な減衰力を発揮させ得る。
【0124】
なお、フェール時に、弁体22に推力を与えられない一般的なプル型のソレノイドでは、背圧室5内の圧力が非常に低くなってしまって、リーフバルブ3の開弁圧も非常に低くなり、緩衝器の減衰力不足を招いてしまう。よって、このようなソレノイドを利用する場合、別途、フェール時に背圧室5の圧力を上昇させるためのフェール弁が必要となるなど、減衰バルブの構造が複雑となってしまう。これに対して、本実施の形態の減衰バルブ1では、別途のフェール弁の設置を要せずに、フェール時に緩衝器100に予め設定した減衰力を発揮させ得る。
【0125】
また、フェール時に、弁体22に最大推力を与えてしまう一般的なプッシュ型のソレノイドでは、背圧室5内の圧力が最大となってしまって、リーフバルブ3の開弁圧が最大となり、緩衝器の減衰力過多を招いてしまう。よって、このようなソレノイドを利用する場合も、別途、フェール時に背圧室5の圧力を適正にするフェール弁が必要となるなど、減衰バルブの構造が複雑となってしまう。これに対して、本実施の形態の減衰バルブ1では、別途のフェール弁の設置を要せずに、フェール時に緩衝器100に予め設定した減衰力を発揮させ得る。
【0126】
減衰バルブ1および緩衝器100は以上のように動作する。そして、本実施の形態の電磁弁24は、パイロット通路(通路)23を開閉する弁体22を備え、ソレノイド40は、コイル41への通電時に生じる第二可動鉄心46を第二固定鉄心44側へ吸引する力を弁体22にパイロット通路(通路)23を閉じる方向へ付与するので、正常時には弁体22の開弁圧の調整が可能であるとともに、フェール時の弁体22の開弁圧をばね47の付勢力で設定できる。このように構成された電磁弁によれば、低コストで小柄なソレノイドを利用して弁体の開弁圧を調整できるとともに、フェール時の弁体の開弁圧をばねの付勢力で設定できる。さらに、前述のように本実施の形態のソレノイド40では、供給される電流量が大きくなるほど対象物に付与する推力を大きくできるので、電磁弁24では、ソレノイド40へ供給する電流量を大きくするほどソレノイド40が弁体22に閉じ方向へ与える推力が大きくなって電磁弁24の開弁圧を高くできる。
【0127】
また、本実施の形態の減衰バルブ1は、ポート2aとポート2aを取り囲む弁座2bとを有するディスク2と、正面側を弁座2bに離着座してポート2aを開閉するリーフバルブ3と、リーフバルブ3の背面側に設けられた筒状のハウジング4と、リーフバルブ3の背面に当接するとともにハウジング4の内周に摺動自在に挿入されてハウジング4とともに内方にリーフバルブ3に背圧を作用させる背圧室5を形成する環状のスプール6と、リーフバルブ3の背面側であって背圧室5内に臨むとともにスプール6の内径より外径が小径な環状のばね支持部4gと、スプール6の反リーフバルブ側端となる一端とばね支持部4gとの間に介装されてスプール6をリーフバルブ3に当接させる方向へ付勢する環状のリーフスプリング7とを備えている。
【0128】
このように構成された減衰バルブ1では、スプール6がハウジング4の内周に配置されており、スプール6の内外径を小さくできるとともに、スプール6を付勢するリーフスプリング7がスプール6の反リーフバルブ側端によって支持されるから、スプール6の内周にリーフスプリング7を支持するばね受を設ける必要が無くなる。よって、本実施の形態の減衰バルブ1によれば、スプール6の体積を小さくしてスプール6の慣性質量を低減できるから、リーフバルブ3の開閉時にスプール6の慣性の影響が小さくなるので、リーフバルブ3の開閉動作について応答性を向上できる。
【0129】
また、本実施の形態の減衰バルブ1では、ばね支持部4gがリーフバルブ3の背面に対向してリーフスプリング7の内周端の反リーフバルブ側のみに当接するようになっている。このように構成された減衰バルブ1では、リーフスプリング7の反リーフバルブ側の内周のみがリーフバルブ3の背面に対向するばね支持部4gに当接しているためリーフスプリング7の内周がハウジング4に固定的に支持されていないので、スプール6の移動量に対するリーフスプリング7の全体の撓み量を低減でき、リーフスプリング7の見掛け上のばね定数を低くできる。ここで、一層スプール6の慣性質量を低減しようとする場合、スプール6の内外径を小さくすることになるが、そうするとリーフスプリング7の内外径差が小さくなってばね定数が大きくなり、製品毎にリーフバルブ3の開弁圧がばらつくという背反がある。ところが、本実施の形態の減衰バルブ1では、リーフスプリング7の見掛け上のばね定数を低減でき、リーフバルブ3の開弁圧に与えるリーフスプリング7の影響を低減できるから、これによってスプール6の内外径をより小径にして慣性質量をより小さくしても減衰力のばらつきが生じてしまうのを防止できる。つまり、このように構成された減衰バルブ1によれば、スプール6の慣性質量をより一層低減でき、リーフバルブ3の開閉動作において応答性をより一層向上できる。
【0130】
さらに、本実施の形態の減衰バルブ1は、スプール6が一端の外周部となる一端外周部6aの内側にテーパ部6bを有し、リーフスプリング7がスプール6に対して一端外周部6aのみに当接するように構成されている。このように構成された減衰バルブ1では、リーフスプリング7の外周側の支持径を大きくでき、リーフスプリング7の撓み量を低減できる。したがって、このようにスプール6の一端外周部6aの内側にテーパ部6bを設けると、リーフスプリング7の見掛け上のばね定数を低くできる。そのため、このように構成された減衰バルブ1によれば、前述したリーフスプリング7の内周を固定的に支持しない場合と同様に、スプール6の慣性質量をより一層低減でき、リーフバルブ3の開閉動作において応答性をより一層向上できる。
【0131】
加えて、本実施の形態の減衰バルブ1は、スプール6がリーフバルブ側端となる他端における外周部である他端外周部6cの内側にテーパ部6dを有し、リーフバルブ3がスプール6の他端外周部6cのみに当接するように構成されている。このように構成された減衰バルブ1によれば、スプール6のテーパ部6dによってリーフバルブ3を逃げる空間を形成されるため、スプール6がリーフバルブ3に干渉しないので、リーフバルブ3における環状板の枚数や外径の大きさの選択の自由度が向上する。
【0132】
また、本実施の形態の減衰バルブ1は、背圧室5内とポート2aの上流側とを連通するパイロット通路23と、背圧室5内の圧力を制御する電磁弁24とを備えている。このように構成された減衰バルブ1によれば、電磁弁24によって背圧室5内の圧力を調整してリーフバルブ3の開弁圧を変更して緩衝器100の減衰力を調整できる。この実施の形態の場合、パイロット通路23にオリフィス10dを設けて通路10eの圧力を減圧して背圧室5へ導入しているが、オリフィス以外にもチョーク等の他の弁で減圧するようにしてもよい。
【0133】
なお、本実施の形態の減衰バルブ1の場合、背圧室5の圧力をソレノイド40で制御するようにして、ディスク2およびリーフバルブ3の開弁圧を制御するようにしているが、ソレノイド40で電磁弁24の開弁圧を制御せず、電磁弁24がパッシブな圧力電磁弁として背圧室5の圧力制御を行わなくとも、リーフバルブ3における増圧比をディスク2における増圧比よりも小さくすることができるから、減衰特性が二段階に変化するようにでき、ピストン速度が低速域にある際に小さな減衰力を出力でき減衰力過多となることがなく、ピストン速度が高速域になった際に大きな減衰力を出力させることができ、減衰力不足を解消することができる。
【0134】
さらに、ディスク2は、バルブ保持部材10に対し浮動状態で積層されているので、通路10eを大きく開放することができ、ディスク2の開弁時における減衰係数を小さくすることができるようになって、ソレノイド40による減衰力制御が非常に容易となる。また、リーフバルブ3は、環状であって内周がバルブ保持部材10に固定されて、外周が弁座2bに離着座するリーフバルブであるので、ディスク2を設けて、減衰力を二段階に変化させるようにしても、リーフバルブ3でディスク2を附勢してディスク2が通路10eを開放した後で、基部10aへ着座する位置への復帰を助けるため、緩衝器100の伸縮方向の切り替わり時などで、通路10eの閉じ遅れを生じさせることがなく、減衰力発生応答性を損なわない。
【0135】
また、本実施の形態の緩衝器100は、シリンダ101と、シリンダ101内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド103と、シリンダ101とロッド103が軸方向へ相対移動する際に液体が流れるポート2aとポート2aを取り囲む弁座2bとを有するディスク2と、弁座2bに離着座してポート2aを開閉するリーフバルブ3と、途中にオリフィス(絞り)10dが設けられて、ポート2aの上流側の圧力をリーフバルブ3の背面に減圧して導くパイロット通路23と、リーフバルブ3の背面の圧力を制御する電磁弁24と、電磁弁24にコイル41への通電時に生じる第二可動鉄心46を第二固定鉄心44側へ吸引する推力を与えるソレノイド40とを備えている。
【0136】
このようにすると、シリンダ101とロッド103が軸方向へ相対移動する際にポート2aを通過する液体の流れに対してリーフバルブ3によって抵抗を付与すれば、緩衝器100がその抵抗に起因する減衰力を発生できる。また、リーフバルブ3の背圧が電磁弁24によって調節できるので、ソレノイド40へ供給する電流量の変更により発生する減衰力を大小調節できるとともに、フェール時にはソレノイド40のばね47の付勢力の設定によってリーフバルブ3の背圧を設定できフェール時に緩衝器100が発生する減衰力を最適化できる。よって、このように構成された緩衝器100によれば、低コストで小柄なソレノイドを利用した電磁弁24によってリーフバルブ3の背圧を調節できるので、低コストで大型化を招かずに減衰力を大小調整できる。
【0137】
さらに、前述のように、電磁弁24では、ソレノイド40へ供給する電流量を大きくするほど電磁弁24の開弁圧を高くできるので、緩衝器100によれば、ソレノイド40へ供給する電流量を大きくするほど主弁体の背圧を高くでき、発生する減衰力を大きくできる。つまり、このように構成された緩衝器100では、ソレノイド40へ供給する電流量が小さい場合に発生する減衰力を小さくできるので、緩衝器100を車両のサスペンションに利用した場合には、通常走行時の消費電力を少なくできる。また、これによりソレノイド40の発熱を抑制して緩衝器の温度変化を小さくできるので、液温変化に起因する減衰力特性(ピストン速度に対する減衰力の特性)の変化を小さくできる。
【0138】
また、本実施の形態の緩衝器100は、シリンダ101と、シリンダ101内に移動自在に挿入されるとともにシリンダ101内を液体が充填される伸側室104と圧側室105とに区画するピストン102と、ピストン102に連結されるロッド103と、液体を貯留するリザーバ108と、リザーバ108から圧側室105へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路110と、圧側室105から伸側室104へ向かう作動油の流れのみを許容する整流通路111と、伸側室104とリザーバ108とを連通する排出通路106と、伸側室104をポート2aの上流としてリザーバ108をポート2aの下流として排出通路106に設けられる減衰バルブ1とを備えて構成されている。
【0139】
このように構成された緩衝器100によれば、伸縮する際にシリンダ101内から排出通路106を通じてリザーバ108へ必ず液体が排出されるユニフロー型の緩衝器として構成され、この液体の流れに対して一つの応答性の良い減衰バルブ1で抵抗を与えるので、減衰力発生応答性が向上する。
【0140】
なお、ソレノイド40を備えた減衰バルブ1は、このようにユニフロー型の緩衝器100に適用されると、緩衝器100の伸縮の方向によらず減衰力発生の応答性を向上できるが、バイフロー型の緩衝器に適用されてもよい。バイフロー型の緩衝器には、シリンダ内に気室を備えた単筒型緩衝器とシリンダの外方にリザーバを複筒型緩衝器とがある。単筒型緩衝器の場合には、ピストンに伸側室から圧側室へ向かう液体の流れを許容する伸側通路と圧側室から伸側室へ向かう液体の流れを許容する圧側通路とを備えており、複筒型緩衝器の場合には、これらの伸側通路と圧側通路に加えて、シリンダ外に設けたリザーバから圧側室へ向かう液体の流れを許容する吸込通路と、圧側室からリザーバへ向かう液体の流れを許容する排出通路とを備えている。ソレノイド40を備えた電磁弁24、減衰バルブ1は、伸側通路、圧側通路および排出通路の何れにも設置でき、このように電磁弁24或いは減衰バルブ1を備えた緩衝器は、ソレノイド40へ供給する電流量の変更により発生する減衰力を大小調節できるとともに、フェール時にはソレノイド40のばね47の付勢力の設定によってリーフバルブ3の背圧を設定できフェール時に緩衝器100が発生する減衰力を最適化できる。
【0141】
また、本実施の形態の減衰バルブ1では、バルブ保持部材10の基部10aに設けた通路10eを開閉するディスク2のポート2aをリーフバルブ3で開閉するようにして、減衰力を二段階に変化させるようにしているが、減衰力を二段階に変化させる必要がない場合には、ディスク2を廃止して、バルブ保持部材10の基部10aをディスクとして用い、基部10aの通路10eをポートとし、基部10aに通路10eを取り囲む弁座を設けて通路10eをリーフバルブ3で開閉する構造を採用してもよい。
【0142】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0143】
2・・・ディスク、2a・・・ポート、2b・・・弁座、3・・・リーフバルブ、10d・・・オリフィス(絞り)、22・・・弁体、23・・・パイロット通路(通路)、24・・・電磁弁、40・・・ソレノイド、41・・・コイル、42・・・フィラーリング、42a・・・フランジ、43・・・第一固定鉄心、44・・・第二固定鉄心、44c・・・圧入部、45・・・第一可動鉄心、45a・・・摺接筒、45b・・・環状底部、45c・・・環状凸部、46・・・第二可動鉄心、46b・・・底部、47・・・ばね、51・・・シールリング、100・・・緩衝器、101・・・シリンダ、102・・・ピストン、103・・・ロッド