(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055606
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】プログラム及び開口部装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/264 20060101AFI20220401BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20220401BHJP
F24F 11/76 20180101ALI20220401BHJP
【FI】
E06B9/264 C
F24F5/00 Z
F24F11/76
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163121
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】501354772
【氏名又は名称】株式会社 MTS雪氷研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 益義
【テーマコード(参考)】
2E043
3L054
3L260
【Fターム(参考)】
2E043AA01
2E043AB01
2E043BD01
2E043BE03
2E043BE13
2E043BE17
3L054BE10
3L054BF09
3L054BG03
3L260AB20
3L260BA46
3L260CA12
3L260CA22
3L260CA32
3L260CA34
3L260CB90
3L260EA06
3L260FC37
(57)【要約】
【課題】室内環境に応じて羽板を制御することにより、昼夜問わず快適な室内環境を実現できるルーバー装置のプログラム及び開口部装置を提供すること。
【解決手段】羽板30を有するルーバー装置20の制御をコンピュータとしての制御装置50に実行させるプログラムは、室内の温度を示す温度情報を取得する温度情報取得機能(温度情報取得部61)と、時刻情報を取得する時刻情報取得機能(時刻情報取得部62)と、温度情報が示す室内の温度が設定温度に近づくように、ルーバー装置20の設置位置の状態を示す設置情報と時刻情報に基づいて羽板30の角度を制御する角度制御機能(角度制御部64)と、をコンピュータに実行させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽板を有するルーバー装置の制御をコンピュータに実行させるプログラムであって、
室内の温度を示す温度情報を取得する温度情報取得機能と、
時刻情報を取得する時刻情報取得機能と、
前記温度情報が示す室内の温度が設定温度に近づくように、前記ルーバー装置の設置位置の状態を示す設置情報と前記時刻情報に基づいて前記羽板の角度を制御する角度制御機能と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記角度制御機能は、
前記温度情報、前記設置情報及び前記時刻情報に基づいて前記羽板を回転させる回転方向を決定し、決定された回転方向に基づいて前記羽板の角度を制御する処理を予め設定された時間間隔又はスケジュールに基づいて繰り返す請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記角度制御機能は、
日中において前記温度情報が示す室内の温度が前記設定温度よりも高い場合は、前記羽板の回転方向を閉じる方向に所定角度回転させ、
日中において前記温度情報が示す室内の温度が前記設定温度よりも低い場合は、前記羽板の回転方向を開く方向に所定角度回転させる請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記角度制御機能は、
日没後において前記温度情報が示す室内の温度が前記設定温度よりも高い場合は、前記羽板の回転方向を開く方向に所定角度回転させ、
日没後において前記温度情報が示す室内の温度が前記設定温度よりも低い場合は、前記羽板の回転方向を閉じる方向に所定角度回転させる請求項1から3の何れかに記載のプログラム。
【請求項5】
前記設置情報と前記時刻情報により導出される太陽高度情報を取得する太陽高度取得機能を有し、
前記角度制御機能は、前記設置情報と前記時刻情報により決定される前記太陽高度情報に基づいて室内の温度が前記設定温度に近づくように前記羽板の角度を制御する請求項1から4の何れかに記載のプログラム。
【請求項6】
前記角度制御機能は、
太陽からの直達光が室内に入らない限界角度を上限とし、前記羽板で正反射した太陽の反射光が室内に入る限界角度を下限とする角度範囲を前記太陽高度情報に基づいて設定し、当該角度範囲の中で前記羽板の角度を制御する請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記角度制御機能は、
太陽からの直達光及び前記羽板で正反射した太陽の反射光が室内に入らない角度範囲であって、前記羽板で拡散反射された反射光が室内に入る角度範囲を前記太陽高度情報に基づいて設定し、当該角度範囲の中で前記羽板の角度を制御する請求項5に記載のプログラム。
【請求項8】
ユーザが入力した制御条件情報に基づいて前記角度制御機能による前記羽板の角度を制御する方法を設定するモード設定機能をコンピュータに実行させ、
前記角度制御機能は、前記モード設定機能によって設定された前記羽板の角度を制御する方法に基づいて角度を制御する請求項1から7の何れかに記載のプログラム。
【請求項9】
前記モード設定機能は、
太陽からの直達光が入るように前記羽板の角度を制御する方法を設定可能である請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記モード設定機能は、
ユーザが入力した角度に基づいて前記羽板の角度を制御する方法を設定可能である請求項8に記載のプログラム。
【請求項11】
建物の開口部に設置され、複数の羽板を有するルーバー装置と、
前記ルーバー装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
室内の温度を示す温度情報を取得する温度情報取得部と、
時刻情報を取得する時刻情報取得部と、
前記温度情報が示す室内の温度が設定温度に近づくように、前記ルーバー装置の設置位置の状態を示す設置情報と前記時刻情報に基づいて前記羽板の角度を制御する角度制御部と、
を有する開口部装置。
【請求項12】
前記羽板は、
太陽からの光を反射する鏡面部を有する外装部と、
前記外装部の内部に充填された断熱材と、
を有する請求項11に記載の開口部装置。
【請求項13】
前記鏡面部が粗面加工されている請求項12に記載の開口部装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーバー装置の制御を行うプログラム及びルーバー装置を備える開口部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室温に基づいてルーバーの羽板への開閉を制御する技術が知られている。この種の技術が記載されているものとして例えば特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、室内に太陽光が差し込む晴天の日中において、予め設定しておいた室温よりも、部屋の室温が高くなった場合には制御装置が南側の外部ルーバーの羽板を閉めて室内に入り込む太陽光を遮り、予め設定した室温よりも部屋の温度が高く、かつ、外気温が室温よりも低い場合には制御装置が天井ルーバーの羽板を開けて室内の空気を屋外に排出する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
日中、室内においてユーザが快適と感じる環境を実現するためには、温度だけではなく眩しすぎず暗すぎない適度な採光環境が必要である。採光環境は、ガラス窓等を透過して室内に入り込む太陽光の量とともに、太陽光が直接室内に入り込む直達光であるか反射して入り込む反射光であるか等の太陽光の質も影響する。この点、特許文献1に記載される技術は、太陽光を利用して室内の温度を調整しているものの、羽板の隙間から室内に入る太陽光が太陽高度(仰角)によって必要以上に直達光が多くなってしまう場合もある。
【0006】
また、日没後の太陽光が室内に入り込まない夜間の室内環境を向上させるという観点でも従来技術には改善の余地があった。
【0007】
本発明は、室内環境に応じて羽板を制御することにより、昼夜問わず快適な室内環境を実現できるルーバー装置のプログラム及び開口部装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、羽板を有するルーバー装置の制御をコンピュータに実行させるプログラムであって、室内の温度を示す温度情報を取得する温度情報取得機能と、時刻情報を取得する時刻情報取得機能と、前記温度情報が示す室内の温度が設定温度に近づくように、前記ルーバー装置の設置位置の状態を示す設置情報と前記時刻情報に基づいて前記羽板の角度を制御する角度制御機能と、をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【0009】
前記角度制御機能は、前記温度情報、前記設置情報及び前記時刻情報に基づいて前記羽板を回転させる回転方向を決定し、決定された回転方向に基づいて前記羽板の角度を制御する処理を予め設定された時間間隔又はスケジュールに基づいて繰り返してもよい。
【0010】
前記角度制御機能は、日中において前記温度情報が示す室内の温度が前記設定温度よりも高い場合は、前記羽板の回転方向を閉じる方向に所定角度回転させ、日中において前記温度情報が示す室内の温度が前記設定温度よりも低い場合は、前記羽板の回転方向を開く方向に所定角度回転させてもよい。
【0011】
前記角度制御機能は、日没後において前記温度情報が示す室内の温度が前記設定温度よりも高い場合は、前記羽板の回転方向を開く方向に所定角度回転させ、日没後において前記温度情報が示す室内の温度が前記設定温度よりも低い場合は、前記羽板の回転方向を閉じる方向に所定角度回転させてもよい。
【0012】
前記設置情報と前記時刻情報により導出される太陽高度情報を取得する太陽高度取得機能を有し、前記角度制御機能は、前記設置情報と前記時刻情報により決定される前記太陽高度情報に基づいて室内の温度が前記設定温度に近づくように前記羽板の角度を制御してもよい。
【0013】
前記角度制御機能は、太陽からの直達光が室内に入らない限界角度を上限とし、前記羽板で正反射した太陽の反射光が室内に入る限界角度を下限とする角度範囲を前記太陽高度情報に基づいて設定し、当該角度範囲の中で前記羽板の角度を制御してもよい。
【0014】
前記角度制御機能は、太陽からの直達光及び前記羽板で正反射した太陽の反射光が室内に入らない角度範囲であって、前記羽板で拡散反射された反射光が室内に入る角度範囲を前記太陽高度情報に基づいて設定し、当該角度範囲の中で前記羽板の角度を制御してもよい。
【0015】
ユーザが入力した制御条件情報に基づいて前記角度制御機能による前記羽板の角度を制御する方法を設定するモード設定機能をコンピュータに実行させ、前記角度制御機能は、前記モード設定機能によって設定された前記羽板の角度を制御する方法に基づいて角度を制御してもよい。
【0016】
前記モード設定機能は、太陽からの直達光が入るように前記羽板の角度を制御する方法を設定可能であってもよい。
【0017】
前記モード設定機能は、ユーザが入力した角度に基づいて前記羽板の角度を制御する方法を設定可能であってもよい。
【0018】
また、本発明は、建物の開口部に設置され、複数の羽板を有するルーバー装置と、前記ルーバー装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、室内の温度を示す温度情報を取得する温度情報取得部と、時刻情報を取得する時刻情報取得部と、前記温度情報が示す室内の温度が設定温度に近づくように、前記ルーバー装置の設置位置の状態を示す設置情報と前記時刻情報に基づいて前記羽板の角度を制御する角度制御部と、を有する開口部装置に関する。
【0019】
前記羽板は、太陽からの光を反射する鏡面部を有する外装部と、前記外装部の内部に充填された断熱材と、を有してもよい。
【0020】
前記鏡面部が粗面加工されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のルーバー装置のプログラム及び開口部装置によれば、室内環境に応じて羽板を制御することにより、昼夜問わず快適な室内環境を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係るルーバー装置が適用されるルーバーシステム及び建物の模式図である。
【
図2】本実施形態のルーバー装置の構成を説明する断面図である。
【
図3】本実施形態のルーバーシステムのハードウェア構成を示す模式図である。
【
図4】本実施形態のルーバー装置の機能的構成のうち、羽板の制御を行うための機能的構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】本実施形態の制御装置によるルーバー装置の制御の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態のルーバー装置のモード選択画面を模式的に示した図である。
【
図7】本実施形態の室温優先モードの日中制御を説明する羽板の模式図である。
【
図8】本実施形態の室温優先モードの日没後制御を説明する羽板の模式図である。
【
図9】本実施形態のルーバー装置において室温優先モードが選択されたときの室温と時間の関係を季節毎に示すグラフである。
【
図10】本実施形態の採光優先モードの日中制御を説明する羽板の模式図である。
【
図11】本実施形態の陽だまりモードを説明する羽板の模式図である。
【
図12】本実施形態の涼夜モードを説明する羽板の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るルーバー装置20が適用されるルーバーシステム1及び建物2の模式図である。
【0024】
ルーバーシステム1は、太陽からの短波放射(
図1中の太線の矢印)の建物2内への入射量をコントロールするとともに、建物2の外壁や人5等の物体から放射される長波放射(
図1中の一点鎖線の矢印)の建物2外への放出量をコントルールすることで、快適な室内空間を実現する設備(開口部装置)である。
【0025】
なお、ルーバーシステム1が設置される建物2は、快適な空間を効率的に実現するという観点では、その外壁、屋根が高断熱・高気密の材質であることが好ましく、室内については仕切りがない一体的な空間であることが好ましい。
【0026】
<ルーバーシステムの全体構成>
次に、ルーバーシステム1の全体的な構成の一例について説明する。
図1に示すように、ルーバーシステム1は、ルーバー装置20と、排気ファン11と、給気部12と、第1温度センサ13と、第2温度センサ14と、制御装置50と、を備える。
【0027】
ルーバー装置20は、屋根3に形成された窓4に対応する位置に配置される。窓4は、例えば強化ガラスによって構成されるFIX窓である。本実施形態のルーバー装置20は、窓4の室内側に配置されているが、ルーバー装置20は窓4の外部であってもよい。
【0028】
ここで、
図2を参照してルーバー装置20の構成について説明する。ルーバー装置20は、所定の間隔をあけて配置される複数の羽板30と、羽板30を回転させる駆動力を付与するモータ21と、を備える。複数の羽板30は、モータ21の駆動によって同じ方向及び同じ回転角度で回転するようにリンク機構(図示省略)によって連結されている。
【0029】
羽板30は、その外観が細長の板状に形成される。羽板30は、その平面部分が建物2の屋根3の勾配に沿う閉鎖位置(
図2の破線に示す位置)まで回転させることで、窓4から建物2の内側に入る太陽からの光(短波放射)を建物2の外側に反射させることができる。本実施形態の羽板30は、勾配を有する屋根3に沿う方向に設置されているが、羽板30は屋根3に対して傾斜する方向に設置してもよい。
【0030】
羽板30の構造について説明する。羽板30は、金属製の外装部31と、外装部31の内部に充填される断熱材34と、を備える。外装部31は、例えばアルミニウム金属によって構成される。また、外装部31における一側面である第1鏡面部32と他側面である第2鏡面部33は、何れも、高い反射率を有するように鏡面加工されるとともに散乱反射するように粗面処理されている。
【0031】
図2に示す位置に羽板30が位置する場合は、建物2の外側からの太陽光が羽板30の第1鏡面部32で反射された後、隣りの羽板30の第2鏡面部33で更に反射されて室内に到達することになる。本実施形態では、第1鏡面部32及び第2鏡面部33が粗面処理されているので、反射の度に乱反射が繰り返されて柔らかい光が室内に行き渡ることになる。
【0032】
また、外装部31の一側の端部には段部35が形成されており、他側の端部には段部36が形成されている。上述の
図2の破線で示す閉鎖位置では、ある羽板30の段部35と隣り合う羽板30の段部36が重なり合う状態となり、羽板30の配列方向における羽板30間の隙間が塞がれる構造となっている。
【0033】
次に、
図1に戻り、排気ファン11及び給気部12について説明する。排気ファン11及び給気部12は、室内の空気の入れ替えを行うための換気装置である。なお、
図1における白抜きの矢印は、空気の流れを示している。
【0034】
給気部12は、建物2の室内と室外を連通する配管によって構成される。給気部12は、その一部が地中に埋設されている。排気ファン11の駆動によって室内の空気が外部に排出されると、給気部12を通じて室外の空気が室内に供給される。排気ファン11の駆動は制御装置50によって制御される。
【0035】
本実施形態の給気部12は地中に埋設されているので、給気部12を通過する過程で吸引空気の温度は地中温度に近づく。地中温度は、一年を通じて一定の温度を示す傾向があるので、室外の気温が地中の温度より高い場合は吸引空気が冷却され、室外の気温が地中の温度より低い場合は吸引空気が加温されて一定の温度で室内に給気される。また、給気部12の経路を蛇行させて地中における当該給気部12の距離を長く確保することにより、吸引空気の温度をより地中温度に近づけることができる。なお、給気部12は、熱交換の効率を高まるために熱容量の大きい水タンクを配置する構成をとってもよい。
【0036】
第1温度センサ13は建物2の屋根3側の相対的に高い位置に配置され、第2温度センサ14よりも床側の相対的に低い位置に配置される。例えば、建物2の二階を快適な環境にする場合は、第1温度センサ13を屋根3側に配置するとともに第2温度センサ14を二階の床付近に配置する。この配置により、相対的に暖かい空気が滞留し易い上部の温度を第1温度センサ13で検出し、相対的に冷たい空気が滞留し易い下部の温度を第2温度センサ14で検出することができる。
【0037】
<制御装置の構成>
次に、
図3を参照して制御装置50について説明する。
図3は、ルーバーシステム1のハードウェア構成を示す模式図である。
【0038】
制御装置50は、ルーバーシステム1の各種の制御を実行するコンピュータである。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)51と、ROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)53と、記憶装置54と、タイマ60と、を備える。
【0039】
CPU51は、ROM52に記録されているプログラム又はRAM53にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する制御部である。
【0040】
記憶装置54は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリで構成され、ルーバーシステム1の種々のデータを保存する。
【0041】
図3に示すように、制御装置50には、第1温度センサ13、第2温度センサ14等の各種センサ類が有線又は無線により電気的に接続されるとともに、制御対象であるルーバー装置20及び排気ファン11が有線又は無線により電気的に接続される。
【0042】
また、制御装置50には、ユーザインターフェースとしての表示部80及び入力部81が有線又は無線により電気的に接続される。表示部80は、画像を表示するディスプレイであり、音声を拡声するスピーカ等を含んでもよい。なお、表示部80及び入力部81は、タッチパネルのように表示機能と入力機能が一体的な構成であってもよいし、タブレットやスマートフォン等のような制御装置50に対して物理的に独立した構成であってもよい。
【0043】
制御装置50は、入力部81を介してユーザの操作を受け付け、ユーザの操作した結果(制御条件情報)に応じてルーバー装置20の羽板30の角度の制御を実行する。本実施形態のルーバー装置20は、羽板30の角度を制御する方法が異なる複数のモードをユーザが選択可能に構成される。
【0044】
次に、本実施形態のルーバー装置20の基本的な制御について説明する。
図4は、本実施形態のルーバー装置20の機能的構成のうち、羽板30の制御を行うための機能的構成を示す機能ブロック図である。
【0045】
図4に示すように、本実施形態における機能的構成は、演算処理を実行するCPU51によって実現される。なお、シングルプロセッサ、マルチプロセッサ及びマルチコアプロセッサ等の各種処理装置単体によって構成されるものの他、これら各種処理装置と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられたものをプロセッサとして機能的構成を実現するものとして採用してもよい。
【0046】
本実施形態では、制御部としてのCPU51において、羽板30の制御を実行する部分として、温度情報取得部61、時刻情報取得部62、太陽高度取得部63、角度制御部64と、モード設定部65、が機能する。このルーバー装置20の制御は通年実行される。
【0047】
温度情報取得部61は、第1温度センサ13及び第2温度センサ14を介して室内の環境の指標となる温度情報を取得する処理を実行する。温度情報は、例えば、タイマ60を利用して所定の時間間隔で取得される。なお、温度情報は、第1温度センサ13及び第2温度センサ14のそれぞれの平均値であってもよいし、第1温度センサ13及び第2温度センサ14の検出値の何れかに重みを付けた値であってもよい。また、場合によっては、第1温度センサ13及び第2温度センサ14の何れかの検出値をそのまま温度情報としてもよい。
【0048】
時刻情報取得部62は、建物2が存在する地域の日付を含む現在時刻を取得する処理を実行する。現在時刻は、例えば、タイマ60から取得されてもよいし、外部から通信を用いて取得してもよい。
【0049】
太陽高度取得部63は、ある時刻における太陽高度を取得するための処理を実行する。太陽高度は、地平線方向を0度、天頂(頭の真上)を90度として測った角度(仰角)の情報であり、建物2から見た太陽の現在位置である。地球の自転及び公転の軌道は一定であるため、現在位置の緯度経度及び時刻がわかれば太陽高度を特定することができる。
【0050】
本実施形態の記憶装置54には、太陽高度を決定するための設置情報55、現在位置と時刻から太陽高度を決定するための高度決定情報56、後述するモード毎に関する情報であるモード情報57が記憶されている。
【0051】
設置情報55は、ルーバー装置20の設置位置の状態を示す情報である。設置情報55には、例えば、ルーバー装置20の地球上の設置点を示す緯度経度情報、設置場所におけるルーバー装置20の向き(方位)やルーバー装置20の傾斜(屋根3の窓4等の設置場所の勾配)を示す設置位置情報等が含まれる。また、設置情報55には、設置場所におけるルーバー装置20の大きさや設置場所の大きさ等も含んでよい。
【0052】
高度決定情報56には、例えば、緯度経度と現在時刻に基づいて太陽高度を決定するためのテーブル又は所定の計算式等の情報が含まれる。このテーブルや計算式には、ルーバーの設置情報55が反映されている。本実施形態の制御装置50は、外部との通信を行わなくても、単独で太陽高度情報を算出することが可能になっている。
【0053】
モード情報57には、例えば、表示部80に表示するモードの名称、モード毎に設定される羽板30の角度を制御するための方法等の情報が含まれる。
【0054】
角度制御部64は、羽板30の角度を制御するための処理を実行する。ここでいう羽板30の角度は、例えば、建物2におけるルーバー装置20が配置される屋根3(窓4)の勾配に対する傾きである。
【0055】
モード設定部65は、角度制御部64による角度の制御方法を設定する処理を実行する。例えば、モード設定部65は、ユーザが入力部81を通じてあるモードを選択したことを検出すると、選択したモードに対応するモード情報57を記憶装置54から読み出し、当該モード情報57を角度の制御方法に設定する。
【0056】
次に、
図5を参照して角度制御部64による角度制御のための処理の流れについて説明する。
図5は、本実施形態の制御装置50によるルーバー装置20の制御の一例を示すフローチャートである。なお、
図5に示すフローは、ユーザが入力部81から所定のモードを選択した場合に開始されるフローである。
【0057】
図5のフローが開始されると、モード設定部65は、記憶装置54のモード情報57からユーザが選択したモードのモード設定を読み込む処理を実行する(ステップS1)。
【0058】
次に、温度情報取得部61は、予め設定されるタイミングで第1温度センサ13及び第2温度センサ14を介して室内の温度情報を取得する処理を実行する(ステップS2)。温度情報取得部61は、例えば、一定時間間隔(例えば10分間隔)で現在の室温を取得する。
【0059】
太陽高度取得部63は、時刻情報に基づいて記憶装置54に記憶される高度決定情報56を読み出し、現在位置及び現在の時刻に基づいて設置場所の現在の太陽高度を示す太陽高度情報を取得する(ステップS3)。
【0060】
次に、角度制御部64は、温度情報取得部61が取得した温度情報と太陽高度取得部63が取得した太陽高度情報に基づいて、室温が設定温度に近づくように羽板30の角度を制御する処理を実行する(ステップS4)。なお、角度制御部64による羽板30の角度制御は、モードによって異なる。モード毎に異なる角度制御の詳細は後述する。例えば、室温優先モードが選択されており、日中の場合、角度制御部64は、室温と設定温度を比較し、設定温度よりも室温が高ければ室温を低める方向に羽板30を一定角度(例えば、5度)回転させるようにモータ21を制御する。逆に、設定温度よりも室温よりも低ければ逆方向に一定角度(例、5度)回転させるようにモータ21を制御する。なお、本実施形態において設定温度は、快適な温度帯として予め設定される温度範囲(例えば、20℃~25℃)である。
【0061】
次に、モード設定部65は、モード終了条件が充足しているか否かを判定し、充足している場合はこのモードの処理を終了する(ステップS5:Yes)。ステップS5でモード終了条件が充足していない場合はステップS2の処理に戻り(ステップS5:No)、以降の処理を繰り返す。本実施形態では、一定の時間間隔で羽板30を順方向又は逆方向に回転させる決定を繰り返すことにより、最適温度(=設定温度)に近づける処理が実行される。
【0062】
モード終了条件には、各種の条件を設定できる。例えば、モード設定部65によるモード読込処理が実行されてから予め設定される時間になったことや、時刻情報から夜間から日中又は日中から夜間に変化したと判定される場合等である。
【0063】
このように、本実施形態の角度制御部64は、設置情報55に含まれる緯度経度情報及び設置位置情報、時刻情報、及び温度情報に基づいて羽板30を回転させる回転方向を決定し、決定された回転方向に羽板30を予め設定された所定角度だけ回転させる処理を、予め設定された時間間隔で繰り返す。なお、予め設定された時間間隔ではなく予め設定されるスケジュールに基づいて羽板30を回転させる制御としてもよい。
【0064】
以上説明した
図4の機能的構成及び
図5のフローチャートは例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能がコンピュータである制御装置50が備えていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に限定されない。また、フローチャートの各ステップも、処理する順番が
図5の順番に限定されない。
【0065】
<モード選択>
図6を参照してモード設定部65によって設定される複数のモードについて説明する。
図6は、本実施形態のルーバー装置20のモード選択画面70を模式的に示した図である。なお、
図6は、あくまで表示部80に表示される画像の一例であり、モードを選択するための手段は、別の画像例や専用の物理ボタンを配置する等、種々の方法で代替できる。
【0066】
図6に示すように、ルーバー装置20は、室温優先モード71、採光優先モード72、陽だまりモード73、涼夜モード74、手動モード75等の複数のモードを有する。ユーザは、入力部81を介して各モードを選択することができる。制御装置50は、ユーザからモードが選択されたことを受け付けると、選択されたモード(制御条件情報)に基づいてルーバー装置20の制御方法を変更し、変更した制御方法に基づいてルーバー装置20を制御する。このように、本実施形態では、羽板30を有するルーバー装置20の制御をコンピュータに実行させるために、ユーザは予め羽板30の角度を制御する制御条件情報を設定する構成となっている。以下、モード毎の角度の制御方法について説明する。
【0067】
<室温優先モード>
まず、室温優先モード71について説明する。室温優先モード71は、予め設定される設定温度に基づいて羽板30の位置を制御するモードであって、室温を最優先するモードである。なお、設定温度は、ユーザによって調整することも可能である。また、室温優先モード71では、制御装置50による排気ファン11の制御も実行される。
【0068】
本実施形態では、室温優先モード71は、太陽が出ている日中と夜間で異なる制御を行う。まず、室温優先モード71の日中制御について説明する。
【0069】
モード設定部65によって室温優先モード71が設定されると、角度制御部64は、日中か日没後かを判定する。本実施形態では、角度制御部64は、太陽高度情報に基づいて日中か日没後かの判定を行う。例えば、太陽高度ΦがΦ>0の関係を満たす場合は日中と判定し、太陽高度ΦがΦ=0や0≧Φの場合は日没後と判定する。なお、日中か日没後かを判定する方法はこれに限定されない。角度制御部64は、時刻情報に基づいて日中か日没後かを判定してもよいし、外部から送信される日中又は日没後を示す情報に基づいて日中か日没後かを判定してもよい。日中が日没後かが判定されると、角度制御部64は、温度情報取得部61が定期的に取得する温度情報を監視し、設定温度から外れている場合には設定温度内に入るように羽板30の角度θを制御する。
【0070】
図7を参照して室温優先モード71の日中制御における角度θの制御方法について説明する。
図7は、本実施形態の室温優先モード71の日中制御を説明する羽板30の模式図である。なお、
図7において、角度θが屋根3の勾配に対する羽板30の角度θとする。例えば、θ=0の場合は、羽板30の平面部分が屋根3の勾配と平行な関係となっていることを示す(
図2における破線の位置)。また、角度αは水平方向に対する屋根3の勾配を示し、角度φは太陽高度取得部63によって取得される太陽高度を示すものとする。更に、
図7の鎖線は、屋根3の勾配に平行な仮想直線Pである。
【0071】
図7に示すように、羽板30で反射されることなく、室内に直接光が入らない限界の角度θは、当該角度θを頂角としたときの二等辺三角形(
図7中のグレーで示す三角形)が成立するときである。このとき、羽板30の平面部分の幅方向の長さをLとすると、隣り合う羽板30までの距離もLとなる。この室内に直接光が入らない限界の角度θは、下記の式(1)で表現できる。
θ=180-2(φ+α)・・・式(1)
一方、反射光が入る角度θの限界の角度θは、下記の式(2)で表現できる。
θ=90-(φ+α)・・・式(2)
【0072】
以上を踏まえると、室温優先モード71の日中制御における角度θの範囲は、次式のように設定することができる。室温優先モード71の日中制御では、室温が設定温度よりも高い場合には屋根3の勾配に対する羽板30の角度を式(3)に示す角度範囲内で小さくなる方向に所定角度で回転させ、室温が設定温度よりも低い場合には羽板30の角度を式(3)に示す角度範囲内で大きくなる方向に所定角度で回転させる制御が実行される。そして、角度制御部64は、ルーバー装置20のモータ21を駆動して羽板30の角度θを制御する。例えば、順方向(あるいは逆方向)に所定角度5度だけ羽板30を回転させる。このとき、角度範囲を超えるようであれば角度範囲の限界値まで羽板30を回転させる。
180-2(φ+α)>θ>90-(φ+α)・・・式(3)
【0073】
次に、
図8を参照して室温優先モード71の日没後制御について説明する。
図8は、本実施形態の室温優先モード71の日没後制御を説明する羽板30の模式図である。日没後制御における角度範囲は、放射冷却の効果を高める観点から式(4)で表現できる。式(4)に示すように、日中制御では、羽板30aのように屋根3の勾配と平行な角度が最小の角度であり、羽板30bのように屋根3の勾配に直交する角度が最大の角度となる。
90≧θ≧0・・・式(4)
モード設定部65は、時刻情報取得部62が取得した日付を含む時刻情報に基づいて室温優先モード71の日没後制御における角度θを制御する方法を決定する。
【0074】
日没後制御では、日中制御とは逆方向に回転方向が設定される。即ち、室温優先モード71の日没後制御では、室温が設定温度よりも高い場合には屋根3の勾配に対する羽板30の角度を式(4)に示す角度範囲内で大きくなる方向に所定角度で回転させ、室温が設定温度よりも低い場合には羽板30の角度を式(4)に示す角度範囲内で小さくなる方向に所定角度で回転させる制御が実行される。そして、角度制御部64は、ルーバー装置20のモータ21を駆動して羽板30の角度θを制御する。例えば、順方向(あるいは逆方向)に所定角度5度だけ羽板30を回転させる。このとき、角度範囲を超えるようであれば角度範囲の限界値まで羽板30を回転させる。
【0075】
室温優先モード71の日没後制御において季節が冬の場合は、
図8の破線で示す羽板30aのようにθが0になることが多くなり、ルーバー装置20によって、窓4が閉ざされた状態となる。この状態にすることで、放射冷却に起因する温度低下を防止することができ、冬における室温の低下を効果的に防止することができる。
【0076】
一方、室温優先モード71の日没後制御において季節が夏の場合は、
図8の実線で示す羽板30bのように窓4を閉じない位置に羽板30bを回転させて放射冷却を促進して温度低下を促す制御を行うことが多くなる。
【0077】
このように、室温優先モード71の制御を日中と日没後で異ならせることにより、より快適な室内環境を実現することができるのである。
【0078】
図9は、本実施形態のルーバー装置20において室温優先モードが選択されたときの室温と時間の関係を季節毎に示すグラフである。このうち、
図9(a)は夏の晴天時における時間帯と温度の関係を示すグラフであり、
図9(b)は春・秋の晴天時における時間帯と温度の関係を示すグラフであり、
図9(c)は冬の晴天時における時間帯と温度の関係を示すグラフである。
【0079】
図9(a)~(c)のグラフの何れにおいても、実線が外気温を示し、一点鎖線がルーバー装置20によって制御された室温である。
図9(a)~(c)のそれぞれに示されるように、ルーバー装置20によって室温を設定温度に近づけることができることがわかる。また、日没後制御を季節(夏・冬)によって変更することにより、設定温度により近づけることが可能である。なお、季節によってその制御方法を変更してもよい。
【0080】
<採光優先モード>
次に、採光優先モード72について説明する。採光優先モード72は、予め設定される設定温度に基づいて羽板30の位置を制御するモードであって、採光を重要視するモードである。なお、本モードにおいても、設定温度は、ユーザによって調整することも可能であり、太陽が出ている日中と日没後で異なる制御が実行される。また、採光優先モード72でも、制御装置50による排気ファン11の制御も実行される。
【0081】
採光優先モード72の日中制御について説明する。モード設定部65によって採光優先モード72が設定されると、角度制御部64は、温度情報取得部61が定期的に取得する温度情報を監視し、設定温度から外れている場合には設定温度内に入るように羽板30の角度θを制御する。
【0082】
図10を参照して室温優先モード71の日中制御における角度θの制御方法について説明する。
図10は、本実施形態の採光優先モードの日中制御を説明する羽板30の模式図である。
図10に示すように、室内に拡散反射光(散乱光)のみが入る限界の角度θは、羽板30の平面部分と太陽光の入射角度が直角になるときの角度θである。このとき、隣り合う羽板30の端部を結ぶとともに勾配に平行な仮想的な線分Lを斜辺とする直角三角形(
図10中のグレーで示す三角形)が成立する。そして、室内に拡散反射光のみが入る限界の角度θは、下記の式(5)で表現できる。
θ=90-(φ+α)・・・式(5)
【0083】
採光優先モード72における角度θの範囲は、式(6)のように設定することができる。採光優先モード72では、室温が設定温度よりも高い場合には屋根3の勾配に対する羽板30の角度を式(6)に示す角度範囲内で小さくなる方向に所定角度で回転させ、室温が設定温度よりも低い場合には羽板30の角度を式(6)に示す角度範囲内で大きくなる方向に所定角度で回転させる制御が実行される。従って、採光優先モード72では、柔らかな拡散反射光のみが室内に入ることになる。そして、角度制御部64は、ルーバー装置20のモータ21を駆動して羽板30の角度θを制御する。例えば、順方向(あるいは逆方向)に所定角度5度だけ羽板30を回転させる。このとき、角度範囲を超えるようであれば角度範囲の限界値まで羽板30を回転させる。
90-(φ+α)≧θ>0・・・式(6)
【0084】
なお、採光優先モード72の日没後制御は、角度範囲も含めて室温優先モード71の日没後制御と同様であるので、その説明を省略する。
【0085】
<陽だまりモード>
次に、
図11を参照して陽だまりモード73について説明する。陽だまりモード73は、陽だまりができるように室内に積極的に太陽の直達光を取り込むモードである。
図11は、本実施形態の陽だまりモードを説明する羽板30の模式図である。
【0086】
図11に示すように、陽だまりモード73では、室温を考慮せずに光を取り入れることを最優先にする制御が行われる。角度制御部64は、羽板30で反射せずに直接室内に入る直達光が多くなるように、羽板30の第1鏡面部32が太陽の仰角に沿うように羽板30の角度θを制御する。従って、陽だまりモード73の角度θは以下の式(7)で表現できる。
θ=180-(φ+α)・・・式(7)
【0087】
陽だまりモード73では、角度制御部64は、式(7)に基づいて羽板30の角度θを決定する。陽だまりモード73では、太陽高度に追従するように羽板30が制御されることになり、第1温度センサ13及び第2温度センサ14が取得する温度情報を参酌することなく、羽板30の角度θが制御されることになる。なお、陽だまりモードにおいて、直達光が入る範囲で羽板30の角度を温度情報に基づいて変更してもよい。
【0088】
以上説明した陽だまりモード73は、日中制御のみである。日没後は室温優先モード71の日没後制御、採光優先モード72の日没後制御又は後述する涼夜モード74に自動的に移行する。また、指定された時間帯のみ陽だまりモード73が適用され、それ以外の時間帯は室温優先モード71の日中制御や採光優先モード72の日中制御が行われる構成であってもよい。
【0089】
<涼夜モード>
次に、
図12を参照して涼夜モード74について説明する。
図12は、本実施形態の涼夜モード74を説明する羽板30の模式図である。なお、涼夜モード74は、室温に基づいて制御を実行せず、ユーザが指定した任意の角度θに基づいて羽板30の位置を決定する日没後制御のみのモードである。
【0090】
涼夜モード74では、人の視線6に基づいて角度θを決定することができる。例えば、夜間は常に星空を見ていたい場合において、ユーザの位置(例えば、ベッドやソファーの位置)や視線6にあわせて角度θを制御する。入力部81を通じて設定された角度θは、涼夜モード74の角度θとして記憶装置54に記憶される。以降、涼夜モード74の選択中は、角度θの変更処理がされるまで当該角度θに基づいて羽板30が制御されることになる。なお、涼夜モード74における角度範囲は、構造上の限界角度(例えば約170度)から0の範囲である。
【0091】
<手動モード>
次に、手動モード75について説明する。手動モード75は、羽板30の角度θをユーザが入力部81を通じて制御装置50に直接入力するマニュアルモードである。角度制御部64は、入力部81を通じて入力された角度θになるようにルーバー装置20のモータ21を制御する。なお、手動モード75における角度範囲は、構造上の限界角度(例えば約170度)から0の範囲である。
【0092】
<本実施形態の構成及び効果>
以上説明したように、ルーバー装置20の羽板30の角度の制御をコンピュータとしての制御装置50に実行させるプログラムは、室内の温度を示す温度情報を取得する温度情報取得機能(温度情報取得部61)と、時刻情報を取得する時刻情報取得機能(時刻情報取得部62)と、温度情報が示す室内の温度が設定温度に近づくように、ルーバー装置20の設置位置の状態を示す設置情報55と時刻情報に基づいて羽板30の角度を制御する角度制御機能(角度制御部64)と、をコンピュータに実行させる。また、本実施形態の開口部装置としてのルーバーシステム1は、建物2の開口部である窓4に設置され、複数の羽板30を有するルーバー装置20と、ルーバー装置20を制御する制御装置50と、を備える。制御装置50は、上述の温度情報取得部61と、時刻情報取得部62と、角度制御部64と、を有する。
【0093】
快適性には、温度だけでなく眩しすぎず暗すぎない適度な採光環境が必要である。本実施形態の構成によれば、日中は、屋根3の窓4を透過して室内に入り込む太陽光の量(短波放射量)と、室内に入り込む太陽光の種類を直達光、反射光又は拡散光等にコントロールすることも可能となるので、快適性に重要な要素である採光条件を良好なものにすることができる。また、太陽光のない日没後において、室内の床や壁から自然に発せられる長波放射を屋根3の窓4を透過させて室外(天空)に放出させることで放射冷却の原理を利用して室内を冷却することもできるし、室外へ流出する長波放射の量を抑制することで室内の温度を維持又は高くすることもできる。即ち、室内環境に応じてルーバーの羽板30の角度を制御することにより、太陽からの光(短波放射)の建物2内への入射量をコントロールするとともに、建物2の外壁や人5等の物体から放射される長波放射の建物2外への放出量をコントルールできる。これによって春夏秋冬昼夜を問わず24時間、日照有無の区別なく、快適な室内環境を実現できる。
【0094】
また、本実施形態の角度制御部64は、温度情報、設置情報55及び時刻情報に基づいて羽板30を回転させる回転方向を決定し、決定された回転方向に基づいて羽板30の角度を制御する処理を予め設定された時間間隔又はスケジュールに基づいて繰り返す。
【0095】
本実施形態の構成により、羽板30の位置が温度情報に基づいて随時修正されるので、室外の環境が変化しても、室内環境をより快適な状態に維持することができる。
【0096】
また、本実施形態の角度制御部64は、日中において温度情報が示す室内の温度が設定温度よりも高い場合は、羽板30の回転方向を閉じる方向に所定角度回転させ、日中において温度情報が示す室内の温度が設定温度よりも低い場合は、羽板30の回転方向を開く方向に所定角度回転させる。
【0097】
本実施形態の構成により、太陽の影響が大きい日中であっても、太陽からの短波放射の建物2内への入射量が羽板30によってコントロールされるのでより快適な室内環境を実現することができる。
【0098】
また、本実施形態の角度制御部64は、日没後において温度情報が示す室内の温度が設定温度よりも高い場合は、羽板の回転方向を開く方向に所定角度回転させ、日没後において温度情報が示す室内の温度が設定温度よりも低い場合は、羽板30の回転方向を閉じる方向に所定角度回転させる。
【0099】
本実施形態の構成により、日没後は、建物2内から建物2外に長波放射を放出し、放射冷却を利用して建物2内の環境をより快適な状態にすることができる。
【0100】
また、本実施形態のプログラム(ルーバーシステム1)は、設置情報55と時刻情報により導出される太陽高度情報を取得する太陽高度取得機能(太陽高度取得部63)を有し、角度制御機能は、設置情報55と時刻情報により決定される太陽高度情報に基づいて室内の温度が設定温度に近づくように羽板30の角度を制御する。
【0101】
本実施形態の構成により、室内の温度とともに太陽高度(仰角)を考慮して羽板30の角度θが制御されることになるので、温度及び明るさを考慮した快適な室内環境を実現することができる。
【0102】
また、本実施形態の室温優先モード71において、角度制御部64は、太陽からの直達光が室内に入らない限界角度を上限とし、羽板30で正反射した太陽の反射光が室内に入る限界角度を下限とする角度範囲を太陽高度情報に基づいて設定し、当該角度範囲の中で羽板30の角度θを制御する。
【0103】
この構成により、直達光の室内への入射を防止して室内に明暗の縞模様が発生する事態を防止しつつ、羽板30で一度反射した光によって室内を十分に明るくできるとともに、比較的強い反射光によって室温を設定温度に効率的に近づけることができる。
【0104】
また、本実施形態の採光優先モード72において角度制御部64は、太陽からの直達光及び羽板30で正反射した太陽の反射光が室内に入らない角度範囲であって、羽板30で拡散反射された反射光が室内に入る角度範囲を太陽高度情報に基づいて設定し、当該角度範囲の中で羽板30の角度θを制御する。
【0105】
この構成により、室温を調整しつつ、柔らかな拡散反射光のみを室内に取り入れることができるので、室内に良質な自然採光環境を実現することができる。
【0106】
また、本実施形態のプログラムは、ユーザが入力した制御条件情報に基づいて角度制御機能による羽板30の角度θを制御する方法を設定するモード設定機能(モード設定部65)をコンピュータに実行させ、角度制御機能は、モード設定機能によって設定された羽板30の角度θを制御する方法に基づいて角度θを制御する。
【0107】
また、本実施形態のモード設定機能は、太陽高度情報に基づいて太陽からの直達光が入るように羽板30の角度θを制御する方法である陽だまりモード73を設定可能である。
【0108】
この構成により、直達光を積極的に取り入れることができ、室内においても「縁側の日向ぼっこ」のような陽だまりの環境を容易に実現することができる。
【0109】
また、モード設定機能は、ユーザが入力した角度に基づいて羽板30の角度θを制御する方法として、涼夜モード74又は手動モード75を設定可能である。
【0110】
この構成により、ユーザの目的に応じて羽板30の角度θを自由に設定できる。例えば、夜間においてソファやベッド等の特定の位置から星空を常に見える位置に羽板30の角度θを設定することができる。
【0111】
また、本実施形態の羽板30は、太陽からの光を反射する第1鏡面部32及び第2鏡面部33を有する外装部31と、外装部31の内部に充填された断熱材34と、を有する。
【0112】
この構成により、羽板30を閉鎖位置(θ=0度)にした場合には高い断熱性で開口部を閉鎖することができるとともに、羽板30を開いて太陽からの光を室内に取りいれたい場合には第1鏡面部32及び第2鏡面部33を利用して充分な量の光を室内に取り入れることができる。
【0113】
また、本実施形態の第1鏡面部32及び第2鏡面部33が粗面加工されている。
【0114】
この構成により、第1鏡面部32及び第2鏡面部33で反射した太陽からの光が散乱光となるので、柔らかい光で室内を明るくすることができる。
【0115】
本実施形態の説明は、以上の通りである。本実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0116】
例えば、モード設定部65で選択可能なモードの処理の一部を省略したり、他のモードの処理を組み合わせたり、時限的にモードを変更したりすることができる。更に、新たなモードを追加したり、場合によってはモード選択機能を省略したりすることもできる。
【0117】
また、上記実施形態では、プログラムが設置情報55と時刻情報により導出される太陽高度情報を取得する太陽高度取得機能(太陽高度取得部63)を有する構成であるが、場合によっては当該構成を省略してもよい。例えば、時刻情報取得部62が取得する時刻情報をテーブルや所定の計算式に入力し、角度制御部64が角度制御を行う構成としてもよい。
【0118】
また、制御装置50は、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、制御装置50は、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0119】
また、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray(登録商標) Disc(ブルーレイディスク)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されているのプログラムメモリやハードディスク等で構成される。
【0120】
また、上記実施形態では、住居用の戸建である建物2に適用されるルーバーシステム1を開口部装置の一例として説明したが、この構成に限定されるわけではない。ルーバーシステム1から排気ファン11や給気部12の構成を省略してもよい。また、人間が居住しないペット用の建物や販売店等が入る非住居用のビルにおいても本発明のプログラム及び開口部装置を適用できる。
【0121】
更に、建物等の不動産に限定されるわけではなく、自動車や電車等の移動体にも本発明のプログラム及び開口部装置を適用することができる。なお、移動体の場合は、設置情報(緯度経度情報)を動的に更新した上で太陽高度情報を取得することが好ましい。
【符号の説明】
【0122】
1 ルーバーシステム(開口部装置)
20 ルーバー装置
30 羽板
31 外装部
32 第1鏡面部(鏡面部)
33 第2鏡面部(鏡面部)
34 断熱材
50 制御装置(コンピュータ)
61 温度情報取得部(温度情報取得機能)
62 時刻情報取得部(時刻情報取得機能)
63 太陽高度取得部(太陽高度取得機能)
64 角度制御部(角度制御機能)
65 モード設定部(モード設定機能)