(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055610
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】高強度ターポリン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/02 20060101AFI20220401BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20220401BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220401BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
B32B5/02 C
B32B27/34
B32B27/36
B32B27/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163128
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(72)【発明者】
【氏名】狩野 俊也
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA08B
4F100AA08C
4F100AA18B
4F100AA18C
4F100AA19B
4F100AA19C
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4F100AJ04D
4F100AJ04E
4F100AK01B
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4F100AK43A
4F100AK47A
4F100AK70D
4F100AK70E
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4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
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4F100BA32E
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4F100DE01C
4F100DG01D
4F100DG01E
4F100DG12A
4F100DG13A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】高強度耐熱繊維織物を用いたターポリン原反により構築された膜構造物において、ラップ接合部分が糸抜破壊を生じることなく(接合部の耐クリープ性に優れ)、ターポリン自体の強度性能が発現され、柔軟風合いを具備する高強度ターポリンの提供。
【解決手段】高強度耐熱繊維糸条を織編要素に含む目開き基布の表裏に熱可塑性樹脂層が積層されてなるターポリンにおいて、目開き基布と熱可塑性樹脂層との間にアイオノマー樹脂接着層を散在して設け、A)「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」、または「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/アイオノマー樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」の接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」の密着領域とを1:10~1:2で含み、C)目開き基布の目開き部には表裏の熱可塑性樹脂層の一部が充填されてなる表裏連結部を形成させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む目開き基布の表裏に熱可塑性樹脂層が積層されてなるターポリンであって、前記目開き基布と前記熱可塑性樹脂層との間にアイオノマー樹脂接着層が散在して設けられ、それによって前記ターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」、または「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/アイオノマー樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」からなる密着領域とを構成比1:10~1:2で含み、C)さらに前記目開き基布の目開き部には前記表裏の熱可塑性樹脂層の一部が充填されてなる表裏連結部を有することを特徴とする高強度ターポリン。
【請求項2】
前記目開き基布の空隙率が5~25%で、この目開き基布の少なくとも片面の、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対する前記アイオノマー樹脂接着層の散在面積率も9~33%である請求項1に記載の高強度ターポリン。
【請求項3】
前記アイオノマー樹脂接着層がドット状、無定型ランダム状、及び連続線状の何れかの態様を含んでいる請求項1または2に記載の高強度ターポリン。
【請求項4】
前記アイオノマー樹脂接着層が、セルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルを含んでいる請求項1~3の何れか1項に記載の高強度ターポリン。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂層が、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化モリブデン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、及びアルミニウム粉から選ばれた1種以上の粒子を含む請求項1~4の何れか1項に記載の高強度ターポリン。
【請求項6】
前記芳香族複素環高分子繊維が、ポリベンゾイミダゾール系、ポリベンゾオキサゾール系、ポリベンゾチアゾール系、及びこれらの共重合高分子(ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、芳香族ポリアミド成分を含む上記共重合系)、の群から選ばれた1種以上である請求項1~5の何れか1項に記載の高強度ターポリン。
【請求項7】
前記目開き基布の織編要素が、経糸条/緯糸条、経糸条/右上バイアス糸条/左上バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上バイアス糸条/左上バイアス糸条、から選ばれた1種である請求項1~6の何れか1項に記載の高強度ターポリン。
【請求項8】
1)全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む目開き基布(空隙率5~25%)の少なくとも片面にアイオノマー樹脂接着層をドット状、無定型ランダム状、連続線状の何れかの態様で散在させ、目開き基布の少なくとも片面の、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対する前記アイオノマー樹脂接着層の散在面積率も9~33%にして設ける工程、
2)表裏の熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートを製造する工程、3)前記目開き基布の表裏に前記熱可塑性樹脂層を積層すると同時に、前記目開き基布の目開き部に前記表裏の熱可塑性樹脂層の一部を溶融充填して表裏連結部を形成する工程、
を少なくとも含む製造方法によって、前記ターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」、または「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/アイオノマー樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」からなる密着領域とを、構成比1:10~1:2で混在して設けることを特徴とする高強度ターポリンの製造方法。
【請求項9】
1)表裏の熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートを製造する工程、2)表裏または表裏一方の熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートにアイオノマー樹脂接着層をドット状、無定型ランダム状、連続線状の何れかの態様で散在させ、どの9cm2(3cm×3cm)単位の面積に対する前記アイオノマー樹脂接着層の散在面積率も9~33%にして設けた熱可塑性樹脂層を形成する工程、3)全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む目開き基布(空隙率5~25%)の表裏、または表裏の一方に、前記アイオノマー樹脂接着層が散在して設けられた熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートを積層すると同時に、前記目開き基布の目開き部に前記表裏の熱可塑性樹脂層の一部を溶融充填して表裏連結部を形成する工程、
を少なくとも含む製造方法によって、前記ターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」、または「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/アイオノマー樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」からなる密着領域とを構成比1:10~1:2で混在して設けることを特徴とする高強度ターポリンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物を始め、ガスホルダー構造物の内膜バルーン、防爆フェンスシートなどに用いられる高強度ターポリンとその製造方法に関する。より詳しくは、膜構造物のラップ接合部糸抜破壊を抑止可能な耐クリープ性を有する柔軟な高強度ターポリンとその製造方法の発明に関する。
【背景技術】
【0002】
大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物に用いる原反素材には、ポリエステルなどの合成繊維マルチフィラメント糸条からなる織物を補強基材として、その両面に軟質塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂フィルムが積層されたターポリンが使用され、膜構造物などを構築するには複数の長尺ターポリンを繋合せ、ラップ(Lap)接合(ターポリン端部ののりしろ部分同士を重ね合わせた状態で熱溶着)することで面積を拡張している。このようなラップ接合部分では互いのターポリンに含む補強基材の織物も単に重なり合った状態で存在し、膜構造物全体からすると補強基材としての織物の存在はラップ接合部分毎に分断されているので、膜構造物自体は実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみで連結されたものとなる。拠ってこのようなラップ接合部の引裂強度は2層の織物を含むことで強靭化される反面、織物を分断して含むラップ接合部の引張破壊強度はターポリン本体の破壊強度よりも劣り、糸抜破壊(糸のすっぽ抜け)する傾向にある。このラップ接合部が糸抜破壊で低下する問題は、ラップ接合部(のりしろ)面積をより大きく取る設計により、十分な糸抜抵抗力を確保することで解決する。しかしラップ接合部の面積増大によって膜構造物の重量が増す不都合や、ターポリン同士が重なって光透過率が極度に低下したラップ接合部が強い陰影となって外観を悪くするために敬遠されがちである。
【0003】
大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫などの外装洗浄、点検、補修を目的にこれらの膜構造物上を歩行する際、金属フレームを外れたエリアではラップ接合部分に体重による張力が掛かる。特に炎天下ではターポリンの熱可塑性樹脂層が軟化し、ラップ接合部分も蓄熱で軟化状態にあるため、ラップ接合部分に過大な張力が掛かることはラップ接合部分の糸抜破壊(織物の経糸条または緯糸状が熱可塑性樹脂層から滑り抜けるすっぽ抜け)を引き起こしてテント構造物の穴裂事故となる。このようなラップ接合部分付近の破壊事故は突風や台風による風圧や積雪でも起こり得る。また穴開き破壊事故には至らないものの、経年でラップ接合部分に糸のスリップ現象を起こし、ラップ接合部近傍の寸法が伸びて膜構造物外観に弛みや皺を生じることがある。このようなラップ接合部分の糸抜破壊を防止するために、補強基材である織物に接着性の樹脂加工(例えば、ポリイソシアネート系硬化剤含有の軟質塩化ビニルペースト組成物)を施し、合成繊維マルチフィラメント糸条に樹脂含浸させることで、熱可塑性樹脂フィルム層(例えば、軟質塩化ビニル樹脂組成物)との接着力を増強させ、この基材層と表皮層との接着効果によってラップ接合部分の糸抜破壊を防止することを可能とする。しかしながらこのような接着仕様では、基材となる織物の合成繊維マルチフィラメント糸条が樹脂で固着され、風合を硬くすると同時に引裂強度を低下させ、膜構造物全体において糸の断裂による穴裂事故の原因となる。つまり織物基材に接着処理が無いと糸抜破壊を誘発し、接着処理を施すと糸の断裂破壊を誘発するというジレンマがある。
【0004】
このようなジレンマでのラップ接合部分の糸抜破壊を防止、及び糸の断裂破壊を防止する手段として、熱可塑性樹脂層と織物基材との接着性改良の提案、熱可塑性樹脂層自体の耐熱性改良などが提案されている。例えば、フレキシブルコンテナ用途で耐高温クリープ性(耐荷重特性)を得るための接着性改良として、熱可塑性樹脂層に対するアンカー(投錨)効果を目的として、フィラメント糸と繊維長の短いステープル糸とを混撚りした撚合糸で形成した繊維基布の少なくとも一方の面に被覆する被覆材とで形成したターポリン(特許文献1)が開示されている。この発明提案は、長繊維にステープル糸を混撚りすることで繊維織物表面にステープル糸の起毛を設け、この起毛に被覆材の溶融部分が入り込んでステープル糸と絡み合うことでアンカーを得ようとするものである。この発明提案によれば確かに高温でのクリープ性向上を得ることが可能である。しかし、十分なアンカー効果(クリープ性向上)を得るにはステープル糸の混撚量を多くする必要があり、ステープル糸の混撚量を多くするほど混撚糸本体の強度と引裂強度とを低下させ、その結果フレキシブルコンテナ本体の強度を悪くするという新たな問題を有している。
【0005】
そこで本出願人はフレキシブルコンテナバッグ用のターポリンとして、ターポリン本体の引裂強度や耐クリープ性を犠牲にすることなく、接合部における耐熱クリープ性に優れるターポリン(特許文献2)を提案した。この発明提案は、繊維性基布の経糸群と緯糸群の少なくとも一方に、嵩高状マルチフィラメント糸条と直線状マルチフィラメント糸条とを特定比率で併用した部分嵩高合撚糸を含む繊維性基布をターポリンに用いるもので、この発明提案によれば確かにターポリン本体の引裂強度や耐クリープ性を犠牲にすることなく、接合部における耐熱クリープ性に優れるターポリンを得ることを可能とした。しかし、嵩高状マルチフィラメント糸条と直線状マルチフィラメント糸条との合撚糸を用いることで、繊維性基布が緊縛したものとなり、得られるターポリンの風合いは硬く、フレキシブルコンテナバッグとして使い勝手が悪く、コンパクトな折りたたみ性に劣っていた。このように接合部の耐熱クリープ性と、柔軟性及び引裂強度との関係は、一方が高くなる程もう一方が低くなるという背反関係にあり、両者のバランスを容易に整えることは困難であることが判明した
【0006】
大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物に用いる原反素材には、汎用性からポリエステルのマルチフィラメント糸条からなる織物が多用され、不燃性の基準に則ればこれらの膜構造物にはガラスのマルチフィラメント糸条からなる織物(ガラスクロス)が採用されるのが現状である。特にガラスクロスは不燃性には適しているものの、本質的に屈曲性、耐折曲性に劣り、ターポリンとした際の引裂強度に劣る欠点を有している。一方ポリエステル繊維よりも2~5倍の強度を有する繊維として以前から、全芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維(PBO繊維、PBI繊維、PBT繊維など)、炭素繊維などの高強度耐熱繊維が知られているが、これらはポリエステル繊維の25~50倍高価であるため現在においても膜構造物用のターポリンに使用される経緯に至っていない。しかしながら膜構造物の耐久性向上のニーズに伴い、施工コスト問題が解決すればこれらの高強度耐熱繊維織物を基材とする高強度ターポリンの需要が高まることが予見できる。その際、高強度耐熱繊維織物を用いることで高強度ターポリンの破壊強度が、ポリエステル織物を用いた現行のターポリンよりも2~5倍大きいものとなる。そうなると膜構造物のラップ接合部分の破壊強度も相応に増強して糸抜破壊を生じないようにしないと高価な高強度耐熱繊維織物を用いる価値を失うことになる。すなわち高強度耐熱繊維織物を基材とする高強度ターポリンを膜構造物に用いた場合、高強度耐熱繊維織物が連結していないラップ接合部の破壊強度が、高強度ターポリンの本体破壊強度に大きく及ばない値、例えば50%以下であるようなレベルだとラップ接合部がウイークポイントとなって、高性能な高強度耐熱繊維織物を基材に用いたことの価値を失うことになるのである。従って高強度耐熱繊維織物を基材とする高強度ターポリンを提案するに際し、膜構造物のラップ接合部分で高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊(糸のすっぽ抜け)を生じることなく(接合部の耐クリープ性に優れ)、柔軟風合いを具備する高強度ターポリンの設計を完成させる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-262382号公報
【特許文献2】特開2014-141023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ターポリンの織物基材に、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、炭素繊維などの糸条による高強度耐熱繊維織物を用いた高強度ターポリン原反により構築された膜構造物において、高強度ターポリン同士のラップ(Lap)接合部分がウイークポイントとなって高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊を生じることなく(接合部の耐クリープ性に優れ)、高強度ターポリン自体の強度性能が十二分に発現され、柔軟風合いを具備する高強度ターポリンの提供を課題とするものである。本発明によれば、大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物の原反素材に適し、より堅牢な膜構造物の構築及びその持続耐久を可能とするのみならず、ガスホルダー構造物の内膜バルーン、防爆フェンスシートなどにも適して用いられる。また本発明の高強度ターポリンは、耐貫通性、防刃性に極めて優れるので、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などに使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる点を考慮し検討を重ねた結果、特定の高強度耐熱繊維糸条を織編要素に含む目開き基布の表裏に熱可塑性樹脂層が積層されてなるターポリンにおいて、目開き基布と熱可塑性樹脂層との間にアイオノマー樹脂接着層を散在して設け、それによって接着領域と密着領域とを特定比率で形成し、さらに目開き基布の目開き部には表裏の熱可塑性樹脂層の一部が充填されてなる表裏連結部を設けることによって、ターポリン同士のラップ(Lap)接合部分がウイークポイントとなって高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊(糸のすっぽ抜け)を生じることなく(接合部の耐クリープ性に優れ)、高強度ターポリン自体の強度性能が十二分に発現され、柔軟風合いを具備する高強度ターポリンが得られることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明の高強度ターポリンは、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む目開き基布の表裏に熱可塑性樹脂層が積層されてなるターポリンであって、前記目開き基布と前記熱可塑性樹脂層との間にアイオノマー樹脂接着層が散在して設けられ、それによって前記ターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」、または「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/アイオノマー樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」からなる密着領域とを構成比1:10~1:2で含み、C)さらに前記目開き基布の目開き部には前記表裏の熱可塑性樹脂層の一部が充填されてなる表裏連結部を有することが好ましい。主に接着領域の積層構造A)の存在は耐クリープ性の向上に寄与し、主に密着領域の積層構造B)存在は柔軟性の保持に寄与することの役割分担によって、ターポリン本体の引裂強度を犠牲にすることなく、膜構造物におけるターポリン同士のラップ接合部分がウイークポイントとなって高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊を生じることなく(接合部の耐クリープ性に優れ)、高強度ターポリン自体の強度性能が十二分に発現され、しかも柔軟性のある高強度ターポリン得ることを可能とする。目開き基布と熱可塑性樹脂層との間に形成する樹脂接着層は、目開き基布の片面のみの散在形成でも十分な耐クリープ性を発現させ、ラップ接合部分で糸抜破壊を抑止することができる。C)表裏連結部はラップ接合部分で糸抜破壊の抑止と柔軟性の保持の両方に寄与する。
【0011】
本発明の高強度ターポリンは、前記目開き基布の空隙率が5~25%で、この目開き基布の少なくとも片面の、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対する前記アイオノマー樹脂接着層の散在面積率も9~33%であることが好ましい。表裏連結部(C)は目開き基布の空隙率5~25%の部分に形成され、目開き基布の少なくとも片面の、どの9cm2単位においても実体部面積(空隙部5~25%を除く)のうち接着領域の占有率は9~33%、密着領域の占有率は67~91%である。目開き基布の表裏両面にアイオノマー樹脂接着層を形成する場合は、接着領域の積層構造A)と密着領域の積層構造B)の構成比1:10~1:2の範囲内とするよう、表裏のアイオノマー樹脂接着層形成の重なり合いの有無、及び重なり度合に留意する必要がある。例えば重なり合いが無い場合、表と裏のアイオノマー樹脂接着層の最大形成は16.5%で、重なり合いが完全一致の場合、表も裏もアイオノマー樹脂接着層の最大形成は33%である。重なり合いは表と裏のアイオノマー樹脂接着層の占有率の和が33%を超えた時に、その超えた分の占有率を重なり合いとして取り込み吸収するものである。この接着領域は耐クリープ性の向上に寄与し、ラップ接合部分で高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊を抑止することでラップ接合部がウイークポイントとなる欠点を防ぐもので、また密着領域は柔軟性の保持に寄与し、表裏連結部はラップ接合部分で糸抜破壊の抑止と、柔軟性の保持の両方に寄与する。
【0012】
本発明の高強度ターポリンは、前記アイオノマー樹脂接着層がドット状、無定型ランダム状、及び連続線状の何れかの態様を含んでいることが好ましい。このようなアイオノマー樹脂接着層を接着領域とすることで高強度ターポリン本体の引裂強度を犠牲にすることなく、膜構造物のラップ接合部における耐クリープ性に優れ、ラップ接合部分での糸抜破壊を抑止することでラップ接合部がウイークポイントとなる欠点を防ぎ、しかも柔軟性のある高強度ターポリン得ることを可能とする。
【0013】
本発明の高強度ターポリンは、前記アイオノマー樹脂接着層が、セルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルを、アイオノマー樹脂接着層に対して0.5~10質量%含んでいることが好ましい。セルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルの存在によってアイオノマー樹脂接着層の強靭性、応力分散性及び耐摩耗性を改善し、膜構造物のラップ接合部における耐クリープ性をより向上させ、ラップ接合部分での高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊を抑止する糸抜抵抗値を発現することでラップ接合部がウイークポイントとなる欠点を防ぎ、しかも柔軟性のある高強度ターポリンを得ることができる。
【0014】
本発明の高強度ターポリンは、前記熱可塑性樹脂層が、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化モリブデン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、及びアルミニウム粉から選ばれた1種以上の粒子を、熱可塑性樹脂層に対して1~10質量%含むことが好ましい。アイオノマー樹脂接着層との密着剤として、これら粒子を含むことによってターポリン本体における熱可塑性樹脂層と目開き基布との接着強度、特に目開き基布上に設けたアイオノマー樹脂接着層部分との接着強度を増強することで、膜構造物におけるラップ接合部の耐クリープ性(耐糸抜性)をより向上させる。これはアイオノマー樹脂の金属(イオン)架橋部と酸化チタン、酸化アンチモン、酸化モリブデン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、アルミニウム粉などの粒子との相互作用による密着効果の発現によるもので、これが耐クリープ性向上となる。そしてこのラップ接合部分では高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊を抑止する糸抜抵抗値が発現されることでラップ接合部がウイークポイントとなる欠点を防ぎ、しかも柔軟性ターポリンを得ることができる。
【0015】
本発明の高強度ターポリンは、前記芳香族複素環高分子繊維が、ポリベンゾイミダゾール系、ポリベンゾオキサゾール系、ポリベンゾチアゾール系、及びこれらの共重合高分子(ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、芳香族ポリアミド成分を含む上記共重合系)、の群から選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の高強度ターポリンは、前記目開き基布の織編要素が、経糸条/緯糸条、経糸条/右上バイアス糸条/左上バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上バイアス糸条/左上バイアス糸条、から選ばれた1種であることが好ましい。「経糸条/緯糸条」は二軸織物、「経糸条/右上バイアス糸条/左上バイアス糸条」は三軸織物、「経糸条/緯糸条/右上バイアス糸条/左上バイアス糸条」は四軸織物で、特に三軸織物、及び四軸織物を用いることで、得られるターポリンの耐貫通性、防刃性に極めて優れるので、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などの特殊用途に適して使用することができる。
【0017】
本発明の高強度ターポリンの製造方法は、1)全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む目開き基布(空隙率5~25%)の少なくとも片面にアイオノマー樹脂接着層をドット状、無定型ランダム状、連続線状の何れかの態様で散在させ、目開き基布の少なくとも片面の、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対する前記アイオノマー樹脂接着層の散在面積率も9~33%にして設ける工程、2)表裏の熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートを製造する工程、3)前記目開き基布の表裏に前記熱可塑性樹脂層を積層すると同時に、前記目開き基布の目開き部に前記表裏の熱可塑性樹脂層の一部を溶融充填して表裏連結部を形成する工程、を少なくとも含む製造方法によって、前記ターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」、または「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/アイオノマー樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」からなる密着領域とを、構成比1:10~1:2で混在して設けることが好ましい。特に目開き基布の表裏両面にアイオノマー樹脂接着層を形成する場合は、接着領域の積層構造A)と密着領域の積層構造B)の構成比1:10~1:2の範囲内とするよう、表裏のアイオノマー樹脂接着層形成の重なり合いの有無、及び重なり度合に留意する必要がある。例えば表裏での重なり合いが全く無い場合、表と裏のアイオノマー樹脂接着層の最大形成面積率は各々16.5%で、重なり合いがほぼ一致する場合、表も裏もアイオノマー樹脂接着層の最大形成面積率は約33%となる。また部分的に重なり合いの生成がある場合は表裏各々20~30%の範囲内が好ましい。アイオノマー樹脂接着層は目開き基布の糸条部分に設けられたもので目開きとなる空隙部は最大形成面積率から除外される。アイオノマー樹脂接着層の最大形成面積率はこれによって得られるターポリンの柔軟風合いを維持した状態で、優れたラップ接合部の耐クリープ性を発現し、それによってラップ接合部分での高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊を抑止することでラップ接合部がウイークポイントとなる欠点を防ぐことができる。
【0018】
本発明の高強度ターポリンの製造方法は、1)表裏の熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートを製造する工程、2)表裏または表裏一方の熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートにアイオノマー樹脂接着層をドット状、無定型ランダム状、連続線状の何れかの態様で散在させ、どの9cm2(3cm×3cm)単位の面積に対する前記アイオノマー樹脂接着層の散在面積率も9~33%にして設けた熱可塑性樹脂層を形成する工程、3)全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む目開き基布(空隙率5~25%)の表裏、または表裏の一方に、前記アイオノマー樹脂接着層が散在して設けられた熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートを積層すると同時に、前記目開き基布の目開き部に前記表裏の熱可塑性樹脂層の一部を溶融充填して表裏連結部を形成する工程、を少なくとも含む製造方法によって、前記ターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」、または「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/アイオノマー樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」からなる密着領域とを構成比1:10~1:2で混在して設けることが好ましい。特に表裏の熱可塑性樹脂フィルムにアイオノマー樹脂接着層を形成する場合は、接着領域の積層構造A)と密着領域の積層構造B)の構成比1:10~1:2の範囲内とするよう、表裏の熱可塑性樹脂フィルムに形成したアイオノマー樹脂接着層の重なり合いの有無、及び重なり度合に留意する必要がある。例えば表裏熱可塑性樹脂層での重なり合いが全く無い場合、表と裏の熱可塑性樹脂フィルムへのアイオノマー樹脂接着層の最大形成面積率は各々16.5%で、重なり合いがほぼ一致する場合、表も裏もアイオノマー樹脂接着層の最大形成面積率は約33%である。また部分的な重なり合いが生成する場合のアイオノマー樹脂接着層の形成面積率は各々20~30%の範囲内が好ましい。これによって得られるターポリンの柔軟風合いを維持した状態で、優れたラップ接合部の耐クリープ性を発現し、それによってラップ接合部分での高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊を抑止することでラップ接合部がウイークポイントとなる欠点を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、高強度耐熱繊維織物を用いた高強度ターポリン原反により構築された膜構造物において、高強度ターポリン同士のラップ(Lap)接合部分がウイークポイントとなって高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊(糸のすっぽ抜け)を生じることなく(接合部の耐クリープ性に優れ)、ターポリン自体の強度性能が十二分に発現され、柔軟風合いを具備する高強度ターポリンを得ることができるので、大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物の原反素材に用いることで、より堅牢な膜構造物の構築及びその持続耐久を可能とするのみならず、ガスホルダー構造物の内膜バルーン、防爆フェンスシートなどにも適して用いることができる。また本発明の高強度ターポリンは、耐貫通性、防刃性に極めて優れるので、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などに使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】本発明の高強度ターポリンの樹脂接着層の一例
【
図5】本発明の高強度ターポリンの樹脂接着層の一例
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の高強度ターポリンは、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む目開き基布の表裏に熱可塑性樹脂層が積層されてなるターポリンであって、目開き基布と熱可塑性樹脂層との間にアイオノマー樹脂接着層が散在して設けられ、それによってターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」、または「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/アイオノマー樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」からなる密着領域とを構成比1:10~1:2で含み、C)さらに目開き基布の目開き部には表裏の熱可塑性樹脂層の一部が充填されてなる表裏連結部を有し、さらに目開き基布の空隙率が5~25%で、この目開き基布の少なくとも片面の、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層の散在面積率も9~33%で、しかもアイオノマー樹脂接着層がドット状、無定型ランダム状、及び連続線状の何れかの態様を含む。従って目開き基布の片面の実体部面積(空隙部を除いた面積)において、アイオノマー樹脂接着層の散在部分を含む積層構造は全て接着領域A)で、それ以外の部分の積層構造は全て密着領域となる。但し接着領域A)と密着領域B)に散在して含まれる表裏連結部C)はその何れにも含まれない。特に本発明において接着領域とは熱可塑性樹脂層をJIS K6854-3(T形剥離試験)で剥がした時に、ターポリン本体側に熱可塑性樹脂層またはアイオノマー樹脂接着層、及び両方の残骸が多く残り、目開き基布自体があまり露出しない状態となる凝集破壊が明確な積層構造を意味し、密着領域とは、ターポリン本体側に熱可塑性樹脂層もアイオノマー樹脂接着層もほとんど残らず、目開き基布が露出した状態となる剥離破壊が明確な積層構造を意味する。これにおいても接着領域A)と密着領域B)に散在して含む表裏連結部C)はその何れにも含まれない。
【0022】
本発明の高強度ターポリンに用いる目開き基布は、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む織物が好ましい。全芳香族ポリアミド繊維は、ポリパラベンズアミド、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(商標ケブラー,商標トワロン)、ポリメタフェニレンイソフタルアミド(商標コーネックス)、パラフェニレン/3,4′オキシジフェニレンテレフタルアミド共重合体(商標テクノーラ)、ポリアミドイミド(無水トリメリット酸とジフェニルメタンジイソシアネートの重縮合体:商標ケルメル)などが挙げられ、全芳香族ポリエステル繊維は、パラヒドロキシ安息香酸、p,p-ジオキシジフェニルなどのジフェノール化合物と、6-ヒドロキシナフタレン―2―カルボン酸などの芳香族ジカルボン酸との重縮合体であるポリアリレート(商標:ベクトラン)が挙げられる。芳香族複素環高分子繊維は、ポリベンゾイミダゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスイミダゾール:商標セラゾールなど)、ポリベンゾオキサゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール:商標ザイロンなど)、ポリベンゾチアゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾールなど)、及びこれらの共重合高分子(ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、芳香族ポリアミド成分を含む上記共重合系)、の群から選ばれた1種以上が挙げられる。他の具体例は、ポリパラフェニレンベンゾビスイミダゾール、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾールなどのフェニレン部位(-C6H4-)を、ビフェニレン(-C12H8-)、ターフェニレン(-C18H12-)、ジフェニレンエーテル(-C12H8O-)、ナフチレン(-C10H6-)、アントラセニル(-C14H8-)などの芳香族化合物に置換した化学構造の共重合体、すなわちフェニル部位(C6H6)を、ビフェニル(C12H10)、ターフェニル(C18H14)、ジフェニルエーテル(C12H10O)、ナフタレン(C10H8)、アントラセン(C14H10)、ピレン(C16H10)などの芳香族化合物に置換した化学構造の共重合体が挙げられ、これらはオルト、メタ、パラの位置異性体による共重合体も含まれる。また炭素繊維は、アクリル系繊維を空気中200~300℃で耐炎化した繊維を、次いで不活性気体中1000~1500℃で炭化させたPAN系炭素繊維(商標トレカ)、さらに不活性気体中2500~3000℃で黒鉛化させた高弾性率炭素繊維が挙げられ、本発明の高強度ターポリンの基布に炭素繊維糸条を用いることで優れた帯電防止効果を得ることができる。目開き基布の構成要素となる繊維糸条は上記繊維の混用または混紡であってもよい。また必要に応じて、経糸、緯糸、バイアス糸などの軸糸ごとに繊維種を使い分けてもよい。また必要に応じて、特定の打ち込み間隔(n本交互、n本引揃え交互、n本跨ぎ:nは整数)で異なる複数種の糸条を規則的に配置、あるいはランダムに配置する外観上、格子模様、幾何学模様となる態様であってもよい。特にこの配置態様は、ポリエステル繊維糸条、ナイロン繊維糸条、ビニロン繊維糸条、ガラス繊維糸条、シリカアルミナ繊維糸条、バサルト繊維糸条などを織編要素に含む基布に、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維など任意の糸条の混用配置を行うことによって外観上、格子模様、幾何学模様となる態様であってもよく、この混用配置によって得られるターポリンに、より強固で柔軟なリップストップ引裂抑止構造を付与する。
【0023】
目開き基布を構成する糸条はマルチフィラメント糸条であることが高強度ターポリンの要件に合致して特に好ましく、繊度は250~3500デニール(278~3888dtex)、特に500~2000デニール(555~2222dtex)で、繊維種にもよるが278dtexであればフィラメント数は100~450本程度、1111dtexであればフィラメント数は400~1800本程度が好ましく、糸条は無撚糸(断面が楕円または扁平)であっても撚糸(撚数は任意)であってもよい。また目開き基布の構成糸条を短繊維紡績糸条とすることで、糸条自体の強度は損なうものの短繊維紡績糸条独特の嵩高構造、及び毛羽のアンカー効果によって熱可塑性樹脂層との密着性を増強し、膜構造物のラップ接合部における耐クリープ性をより向上させて、ラップ接合部分での糸抜破壊を抑止する。短繊維紡績糸条は、綿番手の10番手(591dtex)~60番手(97dtex)の範囲、特に10番手(591dtex)、14番手(422dtex)、16番手(370dtex)、20番手(295dtex)、24番手(246dtex)、30番手(197dtex)など、これらの単糸、または双糸(片撚糸)、単糸2本以上による合撚糸(諸撚糸)などが使用できる他、嵩高加工糸条(タスラン加工糸、ウーリー加工糸など)、カバリング糸条(マルチフィラメント糸の外周に同種または異種の短繊維を巻き付けた芯鞘複合糸)なども使用することもできる。目開き基布の経糸及び緯糸、あるいは経糸及びバイアス糸、あるいは経糸、緯糸、及びバイアス糸の打込み密度に制限は無く、用いる糸条の太さ(デニール、番手)に応じて任意の設計が可能であるが、糸条群による交差隙間の総和面積率(空隙率)5~25%の範囲となる打込み密度で、目付量100~750g/m2の目開き基布が適している。特に本発明の高強度ターポリンの目開き基布の織編要素には、織軸ごとにマルチフィラメント糸条と短繊維紡績糸条とを1:1~5:1の本数比で混用して規則的配置とすることで、高強度を維持しながら、短繊維紡績糸条独特の嵩高構造、及び毛羽のアンカー効果によって熱可塑性樹脂層との密着性を増強し、膜構造物のラップ接合部での糸抜破壊(糸のすっぽ抜け)を抑止する。空隙率は、単位面積当たりの目開き基布に占める、経糸及び緯糸、あるいは経糸及びバイアス糸などの織交絡によって生じる多数の隙間の総和面積率で、例えば長さ10cm×幅10cmの目開き基布の隙間の総和面積が10cm2の場合、空隙率は10%である。具体的に糸条幅の平均値を求め、糸条の打込本数/インチ、との関係から1インチ平米当たりの空隙率の計算値として算出可能である。
【0024】
1)ポリベンゾイミダゾール系繊維は、芳香族テトラアミン化合物(塩酸塩であってもよい)のジアミン成分と、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸エステル、芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物、複素環状ジカルボン酸などのジカルボン酸誘導体とが重縮合反応しアミド結合(プレポリマー)を形成し、次いで隣接するアミノ基とアミド結合とが縮合反応して形成されたイミダゾール環と芳香族環とを分子内に有する。具体的に3,3’-ジアミノベンジジン(四塩酸塩)とイソフタル酸ジフェニルエステル、またはテレフタル酸ジフェニルエステルとの重縮合反応によって得られるポリベンゾビスイミダゾールによる繊維、さらに芳香族テトラアミン化合物の一部を芳香族ジアミンに置換することで得られる芳香族ポリアミド成分を含むポリベンゾイミダゾール系共重合体繊維を用いることができる。2)ポリベンゾオキサゾール系繊維は、芳香環中の隣接する炭素原子上にアミノ基と水酸基とを有する芳香族ジアミンジオールと、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸エステル、芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物、複素環状ジカルボン酸などのジカルボン酸誘導体とが重縮合反応しアミド結合(プレポリマー)を形成し、次いで隣接する水酸基とアミド結合とが縮合反応して形成されたオキサゾール環と芳香族環とを分子内に有する繊維で、具体的に3,3’-ジヒドロキシベンジジン(塩酸塩でもよい)、または3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニルと、テレフタル酸との重縮合反応によって得られるポリベンゾビスオキサゾールによる繊維、さらに芳香族ジアミンジオールの一部を芳香族ジアミンに置換することで得られる芳香族ポリアミド成分を含むポリベンゾオキサゾール系共重合体繊維を用いることができる。3)ポリベンゾチアゾール系繊維は、芳香環中の隣接する炭素原子上にアミノ基とメルカプト基とを有する芳香族ジアミンジメルカプト(芳香族ジアミンジチオール)と、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸エステル、芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物、複素環状ジカルボン酸などのジカルボン酸誘導体とが重縮合反応しアミド結合(プレポリマー)を形成し、次いで隣接するメルカプト基とアミド結合とが縮合反応して形成されたチアゾール環と芳香族環とを分子内に有する繊維で、具体的に3,3’-ジメルカプトベンジジン(塩酸塩でもよい)、または3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメルカプトビフェニルと、テレフタル酸との重縮合反応によって得られるポリベンゾビスチアゾールによる繊維、さらに芳香族ジアミンジメルカプトの一部を芳香族ジアミンに置換することで得られる芳香族ポリアミド成分を含むポリベンゾチアゾール系共重合体繊維を用いることができる。
【0025】
4)さらにベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール共重合系の芳香族複素環高分子繊維は、3,3’-ジアミノベンジジン(四塩酸塩でもよい)及び、3,3’-ジヒドロキシベンジジン(塩酸塩でもよい)と、イソまたはテレフタル酸ジフェニルエステルとの重縮合反応によって得られる共重合繊維であり、ベンゾイミダゾール-ベンゾチアゾール共重合系の芳香族複素環高分子繊維は、3,3’-ジアミノベンジジン(四塩酸塩でもよい)及び、3,3’-ジメルカプトベンジジン(塩酸塩でもよい)と、イソまたはテレフタル酸ジフェニルエステルとの重縮合反応によって得られる共重合繊維である。また、ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系の芳香族複素環高分子繊維は、3,3’-ジヒドロキシベンジジン(塩酸塩でもよい)及び、3,3’-ジメルカプトベンジジン(塩酸塩でもよい)と、イソまたはテレフタル酸ジフェニルエステルとの重縮合反応によって得られる共重合繊維である。また、ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系の芳香族複素環高分子繊維は、3,3’-ジアミノベンジジン(四塩酸塩でもよい)、3,3’-ジヒドロキシベンジジン(塩酸塩でもよい)及び、3,3’-ジメルカプトベンジジン(塩酸塩でもよい)と、イソまたはテレフタル酸ジフェニルエステルとの重縮合反応によって得られる共重合繊維である。5)これらの共重合体繊維は、更に芳香族テトラアミン化合物の一部、芳香族ジアミンジオールの一部、芳香族ジアミンジメルカプトの一部、などを芳香族ジアミンに置換することで得られる芳香族ポリアミド成分を含む共重合体繊維であってもよい。
【0026】
本発明の高強度ターポリンに用いる目開き基布は、平織物(経/緯二軸織物、経/バイアス三軸織物、経/緯/バイアス四軸織物)、斜子織物(2×2、3×3、4×4などの正則斜子織、3×2、4×2、4×3、5×3、2×3、2×4、3×4、3×5などの不規則斜子織)、綾織物(経糸、緯糸とも最少3本ずつ用いた最小構成単位を有する:3枚斜文、4枚斜文、5枚斜文、6枚斜文など)、朱子織物(経糸、緯糸とも最少5本ずつ用いた最小構成単位を有する:2飛び、3飛び、4飛び、5飛びなどの正則朱子)などが挙げられ、これら目開き基布の空隙率は5~25%である態様が好ましい。なかでも目開き基布の織編要素を「経糸条/緯糸条」である二軸織物、特に「経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条」である三軸織物、及び「経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条」である四軸織物が、各軸方向での物性(強度/外力の伝播分散性)値バランスに優れ好ましい。特に三軸織物、及び四軸織物を用いることで、得られる高強度ターポリンの耐貫通性、防刃性に極めて優れるので、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などの特殊用途に使用することができる。
【0027】
本発明の高強度ターポリンにおいて、アイオノマー樹脂接着層は目開き基布と熱可塑性樹脂層との間にドット状、無定型ランダム状、及び連続線状の何れかの態様にて散在して設けられ、それによってターポリンの積層構造を、A)「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」の断面、または「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/アイオノマー樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」の断面からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」の断面からなる密着領域と区分するものである。接着領域と密着領域との構成比は1:10~1:2で、C)さらに目開き基布の目開き部には表裏の熱可塑性樹脂層の一部が充填されてなる表裏連結部を有する。主に接着領域の積層構造A)の存在は耐クリープ性の向上に寄与し、主に密着領域の積層構造B)存在は柔軟性の保持に寄与することの役割分担によって、ターポリン本体の引裂強度を犠牲にすることなく、膜構造物における高強度ターポリン同士のラップ接合部分がウイークポイントとなって高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊を生じることなく(接合部の耐クリープ性に優れ)、高強度ターポリン自体の強度性能が十二分に発現され、しかも柔軟性のある高強度ターポリン得ることを可能とする。目開き基布と熱可塑性樹脂層との間に形成する樹脂接着層は、目開き基布の片面のみの散在形成でも十分な耐クリープ性を発現させ、ラップ接合部分で糸抜破壊を抑止することができる。C)表裏連結部はラップ接合部分で糸抜破壊の抑止と柔軟性の保持の両方に寄与する。そして接着領域の構成比が密着領域の10に対して1よりも小さい割合となると、得られるターポリン同士のラップ接合部分での糸抜破壊を生じることがあり、また接着領域の構成比が密着領域の2に対して1よりも大きい割合となると得られるターポリン同士のラップ接合部分での糸抜破壊抑止効果は大きくなるものの、ターポリンの風合いを硬くするのみならず引裂強度を低下させることがある。
【0028】
このような構成とする手段として、アイオノマー樹脂接着層を予め目開き基布の片面、または両面に形成する手段、または表裏の熱可塑性樹脂層となる熱可塑性樹脂フィルム側(表及び裏、表または裏)に予めアイオノマー樹脂接着層を形成する手段が挙げられる。目開き基布と熱可塑性樹脂層との間に形成するアイオノマー樹脂接着層は、目開き基布の片面のみの散在形成でもラップ接合部分での十分な糸抜破壊を抑止することができる。両面にアイオノマー樹脂接着層を形成する場合は、接着領域の積層構造A)と密着領域の積層構造B)の構成比1:10~1:2の範囲内とするよう、表裏のアイオノマー樹脂接着層形成の重なり合いの有無、及び重なり度合に留意する必要がある。例えば表裏での重なり合いが全く無い場合、表と裏のアイオノマー樹脂接着層の最大形成面積率は各々16.5%で、重なり合いがほぼ一致する場合、表も裏もアイオノマー樹脂接着層の最大形成面積率は約33%となる。また部分的に重なり合いの生成がある場合はアイオノマー樹脂接着層の形成面積率は表裏各々20~30%の範囲内が好ましい。アイオノマー樹脂接着層は目開き基布の糸条部分に設けられたもので目開きとなる空隙部は最大形成面積率から除外される。アイオノマー樹脂接着層を予め目開き基布(空隙率が5~25%)の片面、または両面に形成する具体的工程は、
1)目開き基布の少なくとも片面にアイオノマー樹脂接着層をドット状、無定型ランダム状、連続線状の何れかの態様で散在させ、目開き基布の少なくとも片面の、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層の散在面積率も9~33%にして設ける工程、2)表裏の熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートを製造する工程、3)目開き基布の表裏に熱可塑性樹脂層を積層すると同時に、目開き基布の目開き部に表裏の熱可塑性樹脂層の一部を溶融充填して表裏連結部を形成する工程、を少なくとも含む製造方法によって、ターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」の断面、または「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/アイオノマー樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」の断面からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」の断面からなる密着領域とを構成比1:10~1:2で混在して設けることができる。これによって得られるターポリンの風合いを極度に硬くすることなく、ラップ接合部分で糸抜破壊の抑止性を発現することができる。
【0029】
表裏の熱可塑性樹脂層となる熱可塑性樹脂フィルム側(表及び裏、表または裏)に予めアイオノマー樹脂接着層を形成する具体的工程は、
1)表裏の熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートを製造する工程、2)表裏または表裏一方の熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートにアイオノマー樹脂接着層をドット状、無定型ランダム状、連続線状の何れかの態様で散在させ、どの9cm2(3cm×3cm)単位の面積に対する前記アイオノマー樹脂接着層の散在面積率も9~33%にして設けた熱可塑性樹脂層を形成する工程、3)全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む目開き基布(空隙率5~25%)の表裏、または表裏の一方に、前記アイオノマー樹脂接着層が散在して設けられた熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートを積層すると同時に、前記目開き基布の目開き部に前記表裏の熱可塑性樹脂層の一部を溶融充填して表裏連結部を形成する工程、
を少なくとも含む製造方法によって、ターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」の断面、または「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層/目開き基布/アイオノマー樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」の断面からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」の断面からなる密着領域とを構成比1:10~1:2で混在して設けることができる。表裏の熱可塑性樹脂フィルムにアイオノマー樹脂接着層を形成する場合は、接着領域の積層構造A)と密着領域の積層構造B)の構成比1:10~1:2の範囲内とするよう、表裏熱可塑性樹脂層のアイオノマー樹脂接着層形成の重なり合いの有無、及び重なり度合に留意する必要がある。例えば表裏熱可塑性樹脂層での重なり合いが無い場合、表と裏の熱可塑性樹脂層のアイオノマー樹脂接着層の最大形成面積率は16.5%で、重なり合いが概ね一致する場合、表も裏もアイオノマー樹脂接着層の最大形成面積率は33%である。また部分的な重なり合いが生成する場合、アイオノマー樹脂接着層の形成面積率は各々20~30%の範囲内が好ましい。これによって得られるターポリンの風合いを極度に硬くすることなく、ラップ接合部分で糸抜破壊の抑止性を発現することができる。これによって得られるターポリンの風合いを極度に硬くすることなく、優れた接合部耐熱クリープ性を発現させることができる。
【0030】
上記段落〔0027〕―〔0029〕のアイオノマー樹脂接着層において、目開き基布の空隙率が5~25%で、この目開き基布の少なくとも片面の、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層の散在面積率も9~33%であることが好ましい。表裏連結部(C)は目開き基布の空隙率5~25%の部分に形成され、目開き基布の少なくとも片面の、どの9cm2単位においても実体部面積(空隙部5~25%を除く)のうち接着領域の占有率は9~33%、密着領域の占有率は67~91%である。アイオノマー樹脂接着層の散在面積率が9%未満だと、膜構造物のラップ接合部分での糸抜破壊の抑止性が不十分となることがあり、また散在面積率が33%を超えると、膜構造物のラップ接合部分での糸抜破壊の抑止性は十分となるものの、ターポリンの風合いが硬くなり膜構造物の施工時に折り畳みの折れ皺跡となるなど、取扱性、外観美観に不都合を及ぼすことがある。ドット状のアイオノマー樹脂接着層とは具体的に、円、楕円、四角(市松)、三角、十字架、星形などの幾何学形状(角が潰れていてもよい)など、及びこれらのドットの組み合わせで、1ドットの幅1mm~6mm、高さ1mm~6mmのドットの集合体で、横段の並びの偶数列と奇数列が並ぶ整列配置、または横段の並びの偶数列と奇数列との互いのドット隣接間隔を半間隔ずらした千鳥配置が好ましい。ドット形状は、円、楕円、四角(市松)が特に好ましい。無定型ランダム状のアイオノマー樹脂接着層とは具体的に、ペイズリー、飛沫、写真、絵柄、文字、記号、モノグラムなど、及びこれらの組み合わせで、形や配置に特別な規約を設けていないものである。また連続線状のアイオノマー樹脂接着層とは、具体的に、横ストライプ、縦ストライプ、斜ストライプ、格子、斜め格子、三角格子、籠目、などの幾何学形状、自由な線及び曲線、など線幅1mm~6mmのもの、及びこれらの組み合わせが挙げられる。連続線状のアイオノマー樹脂接着層は、斜め格子、三角格子が最も好ましく、斜め格子は右上り30~60°(特に45°)の直線群と左上り30~60°(特に45°)の直線群との交差によるものが挙げられ、また三角格子は、横線群(または縦線群)と、右上り30~60°(特に45°)の直線群と左上り30~60°(特に45°)の直線群との交差によるものが挙げられる。またこれらのドット状、無定型ランダム状、連続線状のアイオノマー樹脂接着層の形成は、例えばグラビア印刷、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、インクジエット印刷、転写などの公知の印刷方法を用いることができる。
【0031】
アイオノマー樹脂接着層を形成する接着性組成物に含むアイオノマー樹脂は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体を基体ポリマーとして、カルボン酸基に金属(イオン)を結合させた樹脂で、特にカルボン酸基に結合した金属(イオン)がポリマーとポリマー間の架橋点、またカルボン酸基とカルボン酸基間の架橋点となって、基体ポリマーよりも樹脂の強靭性、及び耐摩耗性を増し、かつ対金属、対プラスチック類との接着性を増大する。基体ポリマーとしては、不飽和カルボン酸含量が1~30質量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体が好ましく、さらに他の単量体を共重合した三元共重合体であってもよい。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、無水マレイン酸などが例示されるが、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、基体ポリマーの具体例は、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタリル酸共重合体、などである。また上記他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどが例示できるが、特にアクリル酸、メタクリル酸の不飽和カルボン酸エステルが好ましい。アイオノマー樹脂は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の30~80%を金属イオンで中和したものが好ましく、金属イオンとしては、Li、Na、Kなどの1価金属のイオン、Mg、Caなどのアルカリ土類金属、あるいはZnなどの2価金属のイオンなどが例示できるが、特にNa、Ca、Znが好ましい。本発明においてアイオノマー樹脂接着層を形成する接着性組成物はホットメルト性を有するか、または液状であることが好ましい。そのためには、固形分25~50質量%濃度のアイオノマー樹脂エマルジョン(乳化水分散体)、またはアイオノマー樹脂ディスパージョン(強制水分散体)を基体に用いればよい。このアイオノマー樹脂エマルジョン、及びアイオノマー樹脂ディスパージョンは、配合や希釈で濃度調整が可能で、また添加剤での粘度・レオロジーコントロールが可能であることが好ましく、アイオノマー樹脂接着層は塗布後に熱乾燥され、水分や有機溶剤が揮発して被膜となる。アイオノマー樹脂エマルジョン、またはアイオノマー樹脂ディスパージョンに、セルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルを含むことによって、粘度・レオロジーがコントロールされ液垂れが無く、塗布ムラの無い状態での目開き基布への塗工、または熱可塑性樹脂層フィルムへの塗工が容易となる。そしてこの塗工被膜であるアイオノマー樹脂接着層に、セルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルを含むことによって、アイオノマー樹脂接着層の強靭性、応力分散性及び耐摩耗性を増し、膜構造物のラップ接合部での糸抜破壊抑止効果(糸のすっぽ抜け抑止)を向上させる。
【0032】
アイオノマー樹脂接着層に、セルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルを、アイオノマー樹脂接着層に対して0.5~10質量%含むことによって、アイオノマー樹脂接着層の強靭性、応力分散性及び耐摩耗性を増すことで、膜構造物のラップ接合部での糸抜破壊抑止(糸のすっぽ抜け抑止)を向上させる。これは目開き基布に接着しているアイオノマー樹脂接着層との界面、すなわち目開き基布を構成する糸条と、それに接着しているアイオノマー樹脂接着層との界面に作用する接合部クリープ剪断力がセルロースナノファイバー個々に伝播することで、クリープ剪断力に抵抗する応力となって、アイオノマー樹脂接着層の塑性変形に対する抵抗力が増すことでアイオノマー樹脂接着層全体の形態保持性が安定するためと考察される。セルロースナノファイバーは、セルロース原料(化学処理パルプ・機械破砕パルプ・古紙パルプなど)を機械的に解繊(粗解繊・微解繊)し、繊維径をナノサイズ化して得られた、粉体、スラリー、または分散液状のものが使用できる。本発明に用いるセルロースナノファイバーは、カルボキシメチルセルロース、酸化セルロース、エステル化セルロース、エーテル化セルロース、アセチル化セルロース、シアノエチル化セルロース、アセタール化セルロース、イソシアネート化セルロース、から選らばれた一種以上が好ましい。カルボキシメチルセルロースはセルロースの1級、2級水酸基(2,3,6位)を任意にカルボキシメチル化し、機械的に解繊したもので、また酸化セルロースはTEMPO触媒を含む酸化触媒液により、セルロース分子中の1級水酸基(6位)のみを選択的にカルボキシ基に変換し、機械的に解繊したものである。セルロースナノファイバーの平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は50~500、平均繊維径は4nm~200nm、平均繊維長は2μm~100μmのものが、接着性組成物中におけるセルロースナノファイバーの分散性に優れ、かつアイオノマー樹脂接着層内に親和する。またセルロースナノクリスタルは、セルロース原料(木材・竹・植物パルプ、古紙パルプなど)を硫酸等の酸によって非結晶部分を除去した後、機械的解繊処理して得られる、平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)50以下、平均繊維径1nm~100nm、平均繊維長50nm~5μmのもので、エステル化、エーテル化、アセチル化などの公知の化学修飾がなされたセルロースナノクリスタルであってもよい。これらは粉体、スラリー、または分散液状の形態で使用できる。
【0033】
これらのアイオノマー樹脂接着層(セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタルなどを1~10質量%含む)には、さらにシリカ、ヒュームドシリカ、ゼオライト、及び粘土鉱物から選ばれた1種以上のナノ物質担持体を、セルロースナノファイバー、及びセルロースナノクリスタルと同量程度で含むことができる。粘土鉱物は、モンモリロナイト、セピオライト、タルク、カオリナイト、バーミキュライト、ハロサイト、イラサイト、クロライトなどから選ばれた1種以上である。これら無機粒子の粒子径は0.01μm~3μm、好ましくは0.1μm~1.5μmであるが、これらは疎水性または親水性に表面処理が施された粒子であってもよい。これによって、膜構造物のラップ接合部における糸抜破壊の抑止性をより向上させることができる。これは目開き基布に接着しているアイオノマー樹脂接着層との界面、すなわち目開き基布を構成する糸条と、それに接着しているアイオノマー樹脂接着層との界面に作用するクリープ剪断力に抵抗する接着応力と、アイオノマー樹脂接着層の塑性変形に対する抵抗力が、アイオノマー樹脂接着層にセルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルと、ナノ物質担持体とを含む相互作用によって相乗的に向上するためと考察される。またこれらの接着性組成物には、ポリイソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、及びシランカップリング剤など、公知の反応性化合物を含み、アイオノマー樹脂接着層内で主剤樹脂との付加反応体、または反応ブレンド体を形成することでさらなるラップ接合部のクリープ性(糸のすっぽ抜け抑止効果)を向上させる。
【0034】
本発明の高強度ターポリンにおいて、目開き基布の表裏に形成する熱可塑性樹脂層は、公知の熱可塑性樹脂およびエラストマーにより形成される組成物であり、これらは例えば、軟質塩化ビニル樹脂(可塑剤含有)、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂(PE,PP)、オレフィン系共重合体樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂などであり、これらにはウレタンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、クロルスルホン化ポリエチレン、SBR、EPDM、EPMなどの熱可塑性ゴムをブレンドして補助成分として含んでいてもよい。これらの熱可塑性樹脂のうち、特に高周波溶着性を有する軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、ウレタン樹脂、及びフッ素含有共重合体樹脂などを高周波溶着性付与成分として熱可塑性樹脂層に対し50質量%以上含有することが好ましい。特に熱可塑性樹脂層が、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化モリブデン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、及びアルミニウム粉から選ばれた1種以上の粒子を、アイオノマー樹脂接着層との密着剤として、熱可塑性樹脂層に対して1~10質量%含むことが好ましい。これら粒子を含むことによってターポリン本体における熱可塑性樹脂層と目開き基布との接着強度、特に目開き基布上に設けたアイオノマー樹脂接着層部分との接着強度をより増強して膜構造物におけるラップ接合部の耐クリープ性がより向上する。これはアイオノマー樹脂の金属(イオン)架橋部と酸化チタン、酸化アンチモン、酸化モリブデン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、アルミニウム粉などの粒子との相互作用による密着効果の発現によるもので、これが耐クリープ性向上となる。そしてこのラップ接合部分では高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊を抑止する糸抜抵抗値が発現されることでラップ接合部がウイークポイントとなる欠点を防ぎ、しかも柔軟性のターポリンを得ることができる。熱可塑性樹脂層には、安定剤、着色剤、顔料、光輝性顔料、難燃剤、防炎剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤、架橋剤などの公知の添加剤を任意に用いることができる
【0035】
本発明の高強度ターポリンを構成する表裏の熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂組成物を熱混練し、カレンダー法、またはTダイス押出法で溶融圧延した厚さが80~800μm、特に150~300μmフィルム(シート)が使用できる。また目開き基布に対する表裏の熱可塑性樹脂層の積層は、熱ロール/ゴムロールの連続圧着ユニットを1~2と、冷却ロールユニット、及び巻取ユニットを有するラミネーターを用いることによって1パスまたは2パスの工程により熱溶融圧着することができる。本発明の高強度ターポリンの製造は、カレンダー成型して得たフィルムをラミネーターにより目開き基布の両面に熱圧着する方法が適している。このとき目開き基布の目開き部には表裏から熱可塑性樹脂フィルムの溶融物が侵入し充填され、目開き部を介して表と裏のフィルム同士が部分的にブリッジ固化してなる表裏連結部(C)が形成されることが好ましい。この表裏連結部(C)の形成量は目開き基布の空隙率と実質的同じ占有率となる。得られるターポリンの厚さは0.4~1.5mm、質量500~2000g/mの範囲が、大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物の原反素材に適し、より堅牢な膜構造物の構築及びその持続耐久を可能とするのみならず、ガスホルダー構造物の内膜バルーン、防爆フェンスシートなどにも適して用いられる。また本発明の高強度ターポリンは、耐貫通性、防刃性に極めて優れるので、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などに使用することができる。
【0036】
本発明の高強度ターポリンの表面の片面以上に、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル/シリコン系共重合体樹脂、フッ素系共重合体樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合体樹脂のブレンド、ウレタン/シリコン系グラフト共重合体樹脂、及びウレタン/フッ素系グラフト共重合体樹脂、などの塗膜からなる防汚層が形成されていてもよく、また、フッ素系樹脂層/アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ硬化物接着層、フッ素系樹脂層/アクリル系樹脂接着層、フッ素系樹脂層/アクリル系樹脂層/アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ硬化物接着層、及びフッ素系樹脂層/アクリル系樹脂層/塩化ビニル系樹脂接着層などのフッ素系樹脂フィルムを防汚層として積層することができる。これらの防汚層を、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、モニュメントなどの膜構造物に適用することで屋外使用時の耐久性を飛躍的に向上させることができる。さらにこれらの防汚層の表面には、1次粒子径3nm~150nmの無機コロイド物質を原料とするナノ粒子が、シランカップリング剤の加水分解縮合物を含むバインダー成分に担持されてなる帯電防止性防汚層が設けられていてもよい。無機コロイド物質は、光触媒性酸化チタンゾル、光触媒性酸化亜鉛ゾル、光触媒性酸化錫ゾル、酸化チタンゾル、酸化亜鉛ゾル、酸化錫ゾル、シリカゾル、酸化アルミニウムゾル、酸化ジルコニウムゾル、酸化セリウムゾル、及び複合酸化物(酸化亜鉛-五酸化アンチモン複合または酸化スズ-五酸化アンチモン複合)ゾルなどの金属酸化物である。
【0037】
本発明の高強度ターポリンの接合・縫製などは、高周波ウエルダー融着法、熱板融着法、熱風融着法、超音波融着法などの熱融着が適用可能である。特に高周波融着法において、ウエルドバーによる発熱プレスにより表裏の熱可塑性樹脂層が再溶融し、樹脂接着層(接着領域)を再加熱することで目開き基布(マルチフィラメント糸条)との接着効果が増すこと、また表裏連結部が再溶融し、目開き基布との密着性を増すことで更に膜構造物のラップ接合部におけるクリープ性(糸抜破壊の抑止性)を向上させることができる。
【0038】
実施例
本発明を下記の実施例及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。
接合体の評価方法
〈経糸方向クリープ試験によるラップ接合部の糸抜破壊抑止効果の確認〉
2枚のターポリンのヨコ方向(緯糸方向)の端部同士を8cm幅ののりしろを取って平行に重ね合わせたラップ接合部を形成し、4cm幅×30cm長のウエルドバー(平刃)を装着した高周波ウエルダー融着機(山本ビニター(株)製YTO-8A型:高周波出力8KW)を用い、陽極電流1.0Aでターポリンの高周波融着接合を行い、ターポリン接合体を得た。この接合体より融着接合部を重ね合わせ幅8cmをタテ方向に含む、3cm幅×30cm長の試験片を採取してクリープ試験片とし、クリープ試験機(東洋精機製作所(株)製:100LDR型)を使用して25℃×100kgf荷重(条件1)、20℃×150kgf荷重(条件2)、20℃×200kgf荷重(条件3)の3条件で経糸方向のクリープ性を24時間評価した。
〈緯糸方向クリープ試験によるラップ接合部の糸抜破壊抑止効果の確認〉
2枚のターポリンのタテ方向(経糸方向)の端部同士を8cm幅ののりしろを取って平行に重ね合わせたラップ接合部を形成し、上記経糸方向クリープ性評価用試験片の準備と同様の手順によって得た試験片を用い、25℃×100kgf荷重(条件1)、25℃×150kgf荷重(条件2)、25℃×200kgf荷重(条件3)の3条件で緯糸方向のクリープ性を24時間評価した。
※三軸織物を用いた場合は、緯糸方向をバイアス方向(右上がり、または左上がりの何れか一方)に読み替えた試験を行うものとする。
評価の基準
1 :24時間経過後、ラップ接合部に異変・異常なく良好
2 :24時間経過後、糸条が変位しラップ接合部に伸びが発生した
3 :24時間以内にラップ接合部に糸抜を生じ試験片が伸びた
4 :24時間以内にラップ接合部に糸抜破壊を生じ試験片が分断した
〈破壊した時間を記録〉
破壊状態の判断 : ラップ接合部糸抜け破壊(糸条の断裂なし),
ラップ接合部以外の破壊(糸条の断裂あり)
ターポリンの引裂強度
〈JIS L1096:8.17.1 A法〉シングルタング法
断:糸条の断裂を伴う本体破壊
抜:糸条の糸抜を伴う本体破壊
ターポリンの柔軟性
〈JIS L1096:8.21.1 A法〉45°カンチレバー法
試験片の自重による垂れ度合で判断する評価で、カンチレバー試験機の45°傾斜部に試験片の先端が触れるまでの試験片の移動距離(cm)で示し、移動距離が短いほど柔軟性が高いものと評価する。
【0039】
[実施例1]
<目開き基布(1)>
1500デニール(1670dtex)の全芳香族ポリアミド繊維(フィラメント数1000本:ポリパラフェニレンテレフタルアミド)によるマルチフィラメント糸条を経糸群及び緯糸群に用い、経糸群は1インチ間13本の織組織、及び緯糸群は1インチ間13本の織組織とする平織物を目開き基布(1)として用いた。この目開き基布(1)の質量は165g/m2、空隙率(目抜け)は14%であった。この目開き基布(1)の片面上に、下記の接着性組成物(1)〔配合1〕によるアイオノマー樹脂接着層(1)の形成を60メッシュロール(5mmφの円ドット、左右隣接間隔10mm、横段列隣接間隔10mm、横段の並びの偶数列と奇数列との互いのドット隣接間隔を半間隔ずらした千鳥配置)によるグラビア塗布を行い、100℃×1分の熱風乾燥を施して円ドット状のアイオノマー樹脂接着層(1)を設けた。
〔配合1〕アイオノマー樹脂接着層を形成する接着性組成物(1)
エチレン-メタリル酸共重合体(不飽和カルボン酸含量25質量%)のカルボン酸に亜鉛イオンが結合してなるアイオノマー樹脂ディスパージョン(固形分25質量%)
100質量部
セルロースナノファイバー(カルボキシメチルセルロース) 1質量部
<高強度ターポリン(1)>
アイオノマー樹脂接着層(1)を片面に形成した空隙率12%の目開き基布(1)を基材として、その両面に下記〔配合2〕の軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)からなる厚さ0.2mmのカレンダー成型フィルムを表裏の熱可塑性樹脂層性樹脂層としてラミネーターでの熱圧着によるブリッジ溶融ラミネートにより、「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層(1)/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量830g/m2の高強度ターポリン(1)を得た。得られた高強度ターポリン(1)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:4であった。また、目開き基布(1)の片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層(1)の散在面積率も18~21%であった。
〔配合2〕:軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)
塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)(可塑剤)
55質量部
リン酸トリクレジル(防炎可塑剤) 10質量部
エポキシ化大豆油(安定剤兼可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
三酸化アンチモン(難燃剤、兼アイオノマー樹脂接着層との密着剤) 10質量部
ルチル型酸化チタン(白顔料、兼アイオノマー樹脂接着層との密着剤) 5質量部
ベンゾトリアゾール骨格有機化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
【0040】
[実施例2]
実施例1の目開き基布(1)を、目開き基布(2)に変更した以外は実施例1と同様として、「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層(1)/目開き基布(2)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(2)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量815g/m2の高強度ターポリン(2)を得た。得られた高強度ターポリン(2)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:4であった。また、目開き基布(2)の片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層(1)の散在面積率も18~21%であった。
<目開き基布(2)>
1500デニール(1670dtex)の全芳香族ポリエステル繊維(フィラメント数300本:パラヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸の重縮合によるポリアリレート)によるマルチフィラメント糸条を経糸群及び緯糸群に用い、経糸群は1インチ間13本の織組織、及び緯糸群は1インチ間13本の織組織とする平織物を目開き基布(2)として用いた。この目開き基布(2)の質量は157g/m2、空隙率(目抜け)は14%である。
【0041】
[実施例3]
実施例1の目開き基布(1)を、目開き基布(3)に変更した以外は実施例1と同様として、「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層(1)/目開き基布(3)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(3)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量843g/m2の高強度ターポリン(3)を得た。得られた高強度ターポリン(3)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:4であった。また、目開き基布(3)の片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層(1)の散在面積率も18~21%であった。
<目開き基布(3)>
1500デニール(1670dtex)の芳香族複素環高分子繊維(フィラメント数996本:ポリベンゾオキサゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)によるマルチフィラメント糸条を経糸群及び緯糸群に用い、経糸群は1インチ間13本の織組織、及び緯糸群は1インチ間13本の織組織とする平織物を目開き基布(3)として用いた。この目開き基布(3)の質量は174g/m2、空隙率(目抜け)は14%である。
【0042】
[実施例4]
実施例1の目開き基布(1)を、目開き基布(4)に変更した以外は実施例1と同様として、「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層(1)/目開き基布(4)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(4)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量850g/m2の高強度ターポリン(4)を得た。得られた高強度ターポリン(4)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:4であった。また、目開き基布(4)の片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層(1)の散在面積率も18~21%であった。
<目開き基布(4)>
1782デニール(1980dtex)の炭素繊維(フィラメント数3000本)によるマルチフィラメント糸条を経糸群及び緯糸群に用い、経糸群は1インチ間11本の織組織、及び緯糸群は1インチ間11本の織組織とする平織物を目開き基布(4)として用いた。この目開き基布(4)の質量は178g/m2、空隙率(目抜け)は14%である。
【0043】
[実施例5]
実施例1の目開き基布(1)の片面に設けた〔配合1〕によるアイオノマー樹脂接着層(1)の形成を変更し、目開き基布(1)の両面に、60メッシュロール(5mmφの円ドット、左右隣接間隔10mm、横段列隣接間隔10mm、横段の並びの偶数列と奇数列との互いのドット隣接間隔を半間隔ずらした千鳥配置)によるグラビア塗布を表裏の円ドットが重ならないように調節して行い、100℃×1分の熱風乾燥を施して円ドット状のアイオノマー樹脂接着層(1)を設けた以外は実施例1と同様として、「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層(1)/目開き基布(1)/アイオノマー樹脂接着層(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量835g/m2の高強度ターポリン(5)を得た。得られた高強度ターポリン(5)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域が表裏分で2倍となって、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:2となった。また、目開き基布(1)の各々片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層(1)の散在面積率も18~21%であった。
【0044】
[実施例6]
実施例1の目開き基布(1)の片面に設けた〔配合1〕によるアイオノマー樹脂接着層(1)の形成面積率を変更し、60メッシュロール(5mmφの円ドット、左右隣接間隔25mm、横段列隣接間隔25mm、横段の並びの偶数列と奇数列との互いのドット隣接間隔を半間隔ずらした千鳥配置)によるグラビア塗布を行った以外は実施例1と同様として、「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層(1)/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量823g/m2の高強度ターポリン(6)を得た。得られた高強度ターポリン(6)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:10となった。また、目開き基布(1)の各々片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層(1)の散在面積率も9~11%であった。
【0045】
[実施例7]
実施例1の目開き基布(1)の片面に形成したアイオノマー樹脂接着層(1)の円ドット態様を斜め格子状に変更した以外は実施例1と同様とした。アイオノマー樹脂接着層(1)は、<配合1>のアイオノマー樹脂接着層を形成する接着性組成物(1)を用い、60メッシュロール(2mm幅の右上り45°の直線群と2mm幅の左上り45°の直線群との交差による斜め格子、直線間隔20mm)によるグラビア塗布を行い、100℃×1分の熱風乾燥を施して斜め格子状のアイオノマー樹脂接着層(1)を設けた。アイオノマー樹脂接着層(1)が形成された目開き基布(1)を用いて得られた高強度ターポリン(7)は、「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の斜め格子接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量830g/m2、表裏連結部は14%、斜め格子接着領域と密着領域との構成比は約1:5であった。また、目開き基布(1)の片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層(1)の散在面積率も15~17%であった。
【0046】
[実施例8]
実施例1の目開き基布(1)の片面に形成したアイオノマー樹脂接着層(1)の円ドット態様を斜め格子状に変更し、目開き基布(1)の両面に設けた以外は実施例1と同様とした。
アイオノマー樹脂接着層(1)は、<配合1>のアイオノマー樹脂接着層を形成する接着性組成物(1)を用い、60メッシュロール(2mm幅の右上り45°の直線群と2mm幅の左上り45°の直線群との交差による斜め格子、直線間隔20mm)によるグラビア塗布を目開き基布(1)の両面に行い、100℃×1分の熱風乾燥を施して斜め格子状のアイオノマー樹脂接着層(1)を格子軸が表裏で重ならない状態で設けた。アイオノマー樹脂接着層(1)が両面に形成された目開き基布(1)を用いて得られた高強度ターポリン(8)は、「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/目開き基布(1)/樹脂接着層(1)/熱可塑性樹脂層」断面の斜め格子接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量838g/m2、表裏連結部は14%、斜め格子接着領域と密着領域との構成比は約2:5であった。また、目開き基布(1)の各々片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層(1)の散在面積率も15~17%であった。
【0047】
[実施例9]
実施例1に用いた目開き基布(1)を下記の目開き基布(5)に変更し、目開き基布(2)の両面にアイオノマー樹脂接着層(1)のグラビア塗布を表裏の円ドットが重ならないように調節して行い、アイオノマー樹脂接着層(1)の形成を行った以外は実施例1と同様として「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/目開き基布(5)/樹脂接着層(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(5)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量850g/m2の高強度ターポリン(9)を得た。高強度ターポリン(9)の表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:2であった。また、目開き基布(5)の各々片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層(1)の散在面積率も18~21%であった。
<目開き基布(5)>
1215デニール(1350dtex)のガラス繊維(フィラメント数800本)からなる1.0Z(1/0)マルチフィラメント糸条を主体に、経糸群及び緯糸群に用いて平織された空隙率(目抜け)14%の目開き基布で、経糸群及び緯糸群の糸条配列において、5のn倍数(nは1以上の整数)本目毎に、1500デニール(1670dtex)の芳香族複素環高分子繊維(フィラメント数996本:ポリベンゾオキサゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)によるマルチフィラメント糸条で置換された四角格子状を成し、経糸群及び緯糸群の打込密度は1インチ間16本による質量176g/m2のリップストップ(引裂伝播防止)構造基布で、ポリベンゾオキサゾール系繊維糸条の糸本数含有率は20%(本)である。
【0048】
[実施例10]
実施例1に用いた目開き基布(1)を下記の目開き基布(6)に変更し、目開き基布(6)の両面にアイオノマー樹脂接着層(1)のグラビア塗布を表裏の円ドットが重なるように調節して行い、アイオノマー樹脂接着層(1)の形成を行った以外は実施例1と同様として「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/目開き基布(6)/樹脂接着層(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(6)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.85mm、質量889g/m2の高強度ターポリン(10)を得た。高強度ターポリン(10)の表裏連結部は11%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:4であった。また、目開き基布(6)の各々片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層(1)の散在面積率も18~21%であった。
<目開き基布(6)>
1500デニール(1670dtex)の芳香族複素環高分子繊維(フィラメント数996本:ポリベンゾオキサゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)によるマルチフィラメント糸条を経糸群及び45°左上/45°右上バイアス糸群に用い、経糸群は1インチ間10本の織組織とし、また45°左上/45°右上バイアス糸群は各々1インチ間10本の織組織とする三軸平織物を目開き基布(6)に用いた。この目開き基布(6)の質量は224g/m2、空隙率(目抜け部総和)は11%であった。
【0049】
[実施例11]
実施例1に用いた目開き基布(1)を下記の目開き基布(7)に変更し、目開き基布(7)の両面にアイオノマー樹脂接着層(1)のグラビア塗布を表裏の円ドットが重ならないよう調節して行い、アイオノマー樹脂接着層(1)の形成を行った以外は実施例1と同様として「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/目開き基布(7)/樹脂接着層(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(7)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.88mm、質量941g/m2の高強度ターポリン(11)を得た。高強度ターポリン(11)の表裏連結部は10%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:2であった。また、目開き基布(7)の各々片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層(1)の散在面積率も18~21%であった。
<目開き基布(7)>
1500デニール(1670dtex)の芳香族複素環高分子繊維(フィラメント数996本:ポリベンゾオキサゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)によるマルチフィラメント糸条を経糸群及び緯糸群に用い、経緯とも1インチ間8本の織組織とする平織物に、45°左上/45°右上バイアス糸群を絡み糸で1インチ間8本配置したハイブリッド四軸織物で、45°左上/45°右上バイアス糸群が、1782デニール(1980dtex)の炭素繊維(フィラメント数3000本)によるマルチフィラメント糸条であって、質量268g/m2、空隙率(目抜け)10%の目開き基布(7)である。
【0050】
[実施例12]
実施例1の工程の一部を替え、アイオノマー樹脂接着層(1)を目開き基布(1)側ではなく、熱可塑性樹脂層性樹脂層側に設ける工程に替えた以外は実施例1と同様の工程として、実施例1のターポリン(1)と同じ規格のターポリン(1′)を得た。すなわち軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)をカレンダー成型して得た厚さ0.2mmのフィルムの裏面に、アイオノマー樹脂接着層(1)の形成を実施例1のメッシュロールによるグラビア塗布を行い、100℃×1分の熱風乾燥を施して円ドット状のアイオノマー樹脂接着層(1)を設けた熱可塑性樹脂層性樹脂層(ターポリンの裏面側)とした。またアイオノマー樹脂接着層(1)を設けない熱可塑性樹脂層性樹脂層をターポリンの表面側用とした。目開き基布(1)を基材に、この表裏の熱可塑性樹脂層性樹脂層を熱圧着によるブリッジ溶融ラミネートにより行い、「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層(1)/目開き基布/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量830g/m2の高強度ターポリン(12)を得た。得られた高強度ターポリン(12)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:4であった。また、目開き基布(1)の片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に接する樹脂接着層(1)の散在面積率も18~21%であった。
【0051】
[実施例13~23]
実施例1~11のターポリン(1)~(11)の両面に下記〔配合3〕のアクリル系樹脂塗料を100メッシュのグラビアロールにより塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、アクリル系樹脂塗膜層(5g/m2/片面)を表裏に形成し中間体A(1~11)とした。
〔配合3〕アクリル系樹脂塗料
メタアクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル共重合体
100質量部
メチルエチルケトン(MEK希釈剤) 250質量部
トルエン(希釈剤) 250質量部
次にこの中間体(1)の片表面に下記〔配合4〕のアミノエチル化アクリル樹脂エポキシ組成物の溶液を100メッシュのグラビアロールにより塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、アクリル系樹脂塗膜層(5g/m2/片面)を表面側に半硬化の状態で付帯する中間体B(1~11)を得た。
〔配合4〕アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ組成物
メタクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸共重合
物のカルボキシル基にポリエチレンイミンをグラフトし、
側鎖が、-COO(CH2CH2NH)nHの化学式で示されるアミン価(固形分1g
に含むアミンmmol数)0.7~1.3mmol/gの一級アミノ基含有アクリル系樹脂
100質量部
エポキシ樹脂(エポキシ当量260g/eqのビスフェノールA骨格含有3官能
エポキシ樹脂) 20質量部
メチルエチルケトン(MEK希釈剤) 150質量部
トルエン(希釈剤) 150質量部
次に、この中間体B(1~11)のアミノエチル化アクリル樹脂エポキシ半硬化物層面側に、厚さ25μm、53g/m2のポリビニリデンフルオライド(PVdF)フィルムのコロナ処理面側を対向し、150℃の熱ロール条件でラミネーターを通過させ、熱圧着してフッ素系樹脂フィルムを積層して防汚層とした。各々実施例1~11のターポリンを基材に、フッ素系樹脂フィルムを防汚層とする高強度ターポリン(13)~(23)を得た。
【0052】
【0053】
【0054】
従来、接合部耐クリープ(糸抜破壊防止)性と、柔軟性及び引裂強度との関係は、一方が高くなる程もう一方は低くなるという背反関係にあり、両者のバランスを得ることは至極困難とされていたが、本発明により得られた実施例1~12の高強度ターポリン(1)~(12)は、何れも優れた接合部耐クリープ(糸抜破壊防止)性を有しながら、柔軟性で高い引裂強度を兼備するものであった。特に本発明においては、目開き基布と熱可塑性樹脂層との間にアイオノマー樹脂接着層を散在して設け、接着領域と密着領域とを構成比1:10~1:2の範囲、特に1:5~1:2とすることで接合部耐クリープ性(糸抜破壊防止効果)と、柔軟性及び引裂強度とのバランスよく兼備することを可能とした。この際、アイオノマー樹脂接着層にナノセルロースを含有することでアイオノマー樹脂接着層自体の強靭性、応力分散性及び耐摩耗性を増し、高強度ターポリン同士のラップ接合部での糸抜破壊抑止性が効果的に向上した。実施例6は、接着領域と密着領域との構成比1:10と、接着領域が少ないことで本発明の実施例中で最も柔軟性に富んでいた。そのため接合部耐クリープ性に関しては実施例中で最も低いレベルにあったが従来品よりは優れており、ラップ幅の設定によっては実用可能範囲と判断される。反対に実施例5,8,9、11は、接着領域と密着領域との構成比2:5~1:2と、接着領域が多いことで本発明の実施例中でやや柔軟性を欠くものであったが、従来品よりは柔軟性に富んでいて、接合部耐クリープ性に関しては実施例中高いレベルにあった。また実施例5,8,9、10,11では目開き基布の両面にアイオノマー樹脂接着層を散在して設けたことで、アイオノマー樹脂接着層の形成量(接着領域)が実質的に2倍となり、接合部耐クリープ(糸抜破壊防止効果)性が飛躍的に向上した。以上の実施例により、高強度耐熱繊維織物を基材とする高強度ターポリンによる膜構造物の設計において、膜構造物のラップ接合部分での糸抜破壊(糸のすっぽ抜け)を生じるような事故の心配が解消されるものと確信できる。
【0055】
実施例10の高強度ターポリン(10)は基布に三軸織物を用い、また実施例11の高強度ターポリン(11)は基布に四軸織物を用いたことで、織編要素の糸条本数が増して各々のターポリンの風合いがやや硬化したものの、引裂強度と接合部耐クリープ性に関しては他の実施例のどの高強度ターポリンよりも高レベルであった。また実施例9では、ガラス繊維糸条とポリベンゾオキサゾール系繊維糸条との混織により、経緯各々にポリベンゾオキサゾール系繊維糸条を20%(本)含有する四角格子状リップストップ(引裂伝播防止)平織物としたことで、ガラスクロス特有の引裂弱さを改善した。また実施例11では、ポリベンゾオキサゾール系糸条と炭素繊維糸条との混編により、経緯方向にポリベンゾオキサゾール系繊維糸条を配置、バイアス方向に炭素繊維糸条を配置したハイブリッド四軸織物としたことで、表面抵抗率測定(JIS K7194準拠)で109Ω/□~1010Ω/□の優れた帯電防止効果が発現された。さらにターポリン(1)~(11)を基材に、フッ素系樹脂フィルムを防汚層として片面に設けた高強度ターポリン(13)~(23)では、これらの防汚性評価として、市販の油性ペン(赤)文字描き、室温60秒乾燥後のDRYティッシュペーパー拭取除去性(擦り取り往復10回)で評価した結果、明らかにフッ素系樹脂フィルムを付帯する高強度ターポリン(13)~(23)の赤インク文字の除去性に優れていたのに対し、フッ素系樹脂フィルムを付帯しない高強度ターポリン(1)~(11)では赤インク文字がターポリンに浸透し、しかも擦った部分にインク汚れが延びて汚らしい状態となった。また高強度ターポリン(1)~(23)の断片を4-6月の3ケ月間屋外曝露し、水濡ティッシュペーパー拭取除去性(擦り取り往復10回)で評価した結果、明らかにフッ素系樹脂フィルムを付帯する高強度ターポリン(13)~(23)では付着煤塵の除去性に優れ、初期の外観を回復したのに対し、フッ素系樹脂フィルムを付帯しない高強度ターポリン(1)~(11)では、ターポリン表面に可塑剤が移行することで付着煤塵がこびり付き、初期の外観が回復できないものであった。従って、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、モニュメントなどの膜構造物などの用途に用いる高強度ターポリンは、実施例13~23のターポリン(13)~(23)が特段に好ましい。
【0056】
[比較例1]
実施例1の高強度ターポリン(1)の設計からアイオノマー樹脂接着層を省略した以外は実施例1と同様として「熱可塑性樹脂層/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び14%の表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量825g/m2のターポリン(24)を得た。得られたターポリン(24)は、柔軟性に富み、引裂強度には優れているものの、アイオノマー樹脂接着層を有していないことが原因で、ラップ接合部の耐クリープ性には劣るもので、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、モニュメントなどの膜構造物などの用途には各段不適切なものであった。
【0057】
[比較例2]
実施例1の目開き基布(1)に形成したアイオノマー樹脂接着層(1)をアイオノマー樹脂接着層(2)に変更した以外は実施例1と同様とした。アイオノマー樹脂接着層(2)は、<配合1>のアイオノマー樹脂接着層を形成する接着性組成物(1)を用い、60メッシュロール(3mmφの円ドット、上下左右ドット間隔12mm、横段の並びの偶数列と奇数列との整列を半分ずらした千鳥配置)によるグラビア塗布を行い、100℃×1分の熱風乾燥を施して円ドット状のアイオノマー樹脂接着層(2)を設けた。アイオノマー樹脂接着層(2)が形成された目開き基布(1)を用いて得られたターポリン(25)は、「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層(2)/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量820g/m2、表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:20であった。また、目開き基布(1)の片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層(2)の散在面積率も約4.5%であった。得られたターポリン(25)は、接着領域と密着領域との好ましい構成比1:10~1:2の範囲から大きく外れた1:20と、接着領域が僅少のため、比較例1に近い態様となり、比較例1同様、柔軟性に富み、引裂強度には優れているものの、ラップ接合部の耐クリープ性には劣るもので、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、モニュメントなどの膜構造物などの用途に使用するには各段不適切なものであった。
【0058】
[比較例3]
実施例1の目開き基布(1)に形成したアイオノマー樹脂接着層(1)をアイオノマー樹脂接着層(3)に変更した以外は実施例1と同様とした。アイオノマー樹脂接着層(3)は、<配合1>のアイオノマー樹脂接着層を形成する接着性組成物(1)を用い、60メッシュロール(14mmφの円ドット、上下左右ドット間隔3mm、横段の並びの偶数列と奇数列の整列を半分ずらした千鳥配置)によるグラビア塗布を行い、100℃×1分の熱風乾燥を施して円ドット状のアイオノマー樹脂接着層(3)を設けた。アイオノマー樹脂接着層(3)が形成された目開き基布(1)を用いて得られたターポリン(26)は、「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層(3)/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量840g/m2、表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:1であった。また、目開き基布(1)の片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層(3)の散在面積率も約50%であった。得られたターポリン(26)は、接着領域と密着領域との好ましい構成比1:10~1:2の範囲から大きく外れた1:1と、接着領域が過剰のため、ラップ接合部の耐クリープ性には優れているものの柔軟性を欠き、引裂強度も幾分劣ることで、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、モニュメントなどの膜構造物などの用途に使用するには不適切なものであった。
【0059】
[比較例4]
実施例1のアイオノマー樹脂接着層(1)を形成するアイオノマー接着性組成物(1)〔配合1〕を、下記〔配合5〕の接着性組成物に変更し、これにより形成される樹脂接着層をウレタン系樹脂とした。
〔配合5〕ウレタン系樹脂接着層を形成する接着性組成物
ウレタン樹脂エマルジョン(ポリカーボネート系:固形分30質量%)100質量部
※フィルム物性100μm(最大伸長450%、100%mod17Mpa、破断強度68Mpa)
3官能イソシアネート化合物 3質量部
※ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート3量体
ウレタン系樹脂接着層は、<配合5>の接着性組成物を用い、60メッシュロール(5mmφの円ドット、左右隣接間隔10mm、横段列隣接間隔10mm、横段の並びの偶数列と奇数列との互いのドット隣接間隔を半間隔ずらした千鳥配置)によるグラビア塗布を行い、100℃×1分の熱風乾燥を施して円ドット状のウレタン系樹脂接着層を設けた。ウレタン系樹脂接着層が形成された目開き基布(1)を用いて得られたターポリン(27)は、「熱可塑性樹脂層/ウレタン系樹脂接着層/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量830g/m2、表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:4であった。また、目開き基布(1)の片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するウレタン系樹脂接着層の散在面積率も18~21%であった。得られたターポリン(27)は、ラップ接合部の耐クリープ性には優れているものの接着領域の風合いが硬くターポリン自体の柔軟性を欠き、引裂強度も幾分劣ることで、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、モニュメントなどの膜構造物などの用途に使用するには不適切なものであった。
【0060】
[実施例24]
実施例1のアイオノマー樹脂接着層(1)を形成するアイオノマー接着性組成物(1)〔配合1〕を、下記〔配合6〕のアイオノマー接着性組成物(2)に変更し、これにより形成されるアイオノマー樹脂接着層を(4)とした。これ以外は実施例1と同様として、「熱可塑性樹脂層/アイオノマー樹脂接着層(2)/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/目開き基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量830g/m2の高強度ターポリン(28)を得た。得られた高強度ターポリン(28)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:4であった。また、目開き基布(1)の片面、どの9cm2(3cm×3cm)単位の実体部面積に対するアイオノマー樹脂接着層(2)の散在面積率も18~21%であった。
〔配合6〕アイオノマー樹脂接着層(4)を形成するアイオノマー接着性組成物(2)
エチレン-メタリル酸共重合体(不飽和カルボン酸含量25質量%)のカルボン酸に
亜鉛イオンが結合してなるアイオノマー樹脂ディスパージョン(固形分25質量%)
100質量部
すなわち〔配合6〕は〔配合1〕からセルロースナノファィバー(カルボキシメチルセルロース)1質量部を省略したものである。これは実施例1との対比から、アイオノマー樹脂接着層にセルロースナノファイバー(カルボキシメチルセルロース)を約3.8質量%含有していないと、25℃×150kgf×24hrの耐クリープ性がクリアできないことが〔表3〕より明らかである。これは耐クリープ荷重がラップ接合部に掛かる際、目開き基布に接着しているアイオノマー樹脂接着層との界面、すなわち目開き基布を構成するマルチフィラメント糸条と、それに接着しているアイオノマー樹脂接着層との界面に作用する接合部耐クリープの剪断力の分散がセルロースナノファイバー個々に伝播することが出来ないため、剪断力に抵抗するための応力緩和が不十分となり、アイオノマー樹脂接着層全体の形態保持が安定できないためと考察される。
【0061】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の高強度ターポリンは、高強度耐熱繊維織物を用いた高強度ターポリン原反により構築された膜構造物において、高強度ターポリン同士のラップ(Lap)接合部分がウイークポイントとなって高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊(糸のすっぽ抜け)を生じることなく(接合部の耐クリープ性に優れ)、ターポリン自体の強度性能が十二分に発現され、柔軟風合いを具備する高強度ターポリンを得ることができるので、大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物の原反素材に用いることで、より堅牢な膜構造物の構築及びその持続耐久を可能とするのみならず、ガスホルダー構造物の内膜バルーン、防爆フェンスシートなどにも適して用いることができる。また本発明の高強度ターポリンは、耐貫通性、防刃性に極めて優れるので、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などに使用することもできる。
【符号の説明】
【0063】
1:高強度ターポリン
2:目開き基布
3:熱可塑性樹脂層
3-1:表面
3-2:裏面
4:アイオノマー樹脂接着層
5:C)表裏連結部
6:A)接着領域 ※5(C)部分の除外表現は省略(実際は含まず)
7:B)密着領域 ※5(C)部分の除外表現は省略(実際は含まず)