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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055650
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163191
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 康裕
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA03
5E316AA06
5E316AA35
5E316AA43
5E316BB11
5E316CC04
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC13
5E316CC32
5E316CC34
5E316CC37
5E316DD12
5E316DD23
5E316DD24
5E316EE33
5E316FF07
5E316FF10
5E316FF13
5E316FF14
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH11
5E316JJ06
(57)【要約】
【課題】配線基板の反りの抑制。
【解決手段】実施形態の配線基板1は、第1面10F及び第1面10Fと反対側の第2面10Bを有するコア基板10と、コア基板10の第1面10F側に形成されている絶縁層13及び導体層14を含む第1ビルドアップ部11と、コア基板10の第2面10B側に形成されている絶縁層13及び導体層14を含む第2ビルドアップ部12と、を備えている。第1ビルドアップ部11が有する導体層14の数は第2ビルドアップ部12が有する導体層14の数よりも大きく、コア基板10は、第1面10Fを構成する第1絶縁層101、第2面を構成する第2絶縁層102、及び第1絶縁層101と第2絶縁層102とによって挟持される金属層100を含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有するコア基板と、前記コア基板の前記第1面側に形成されている絶縁層及び導体層を含む第1ビルドアップ部と、前記コア基板の前記第2面側に形成されている絶縁層及び導体層を含む第2ビルドアップ部と、を備える配線基板であって、
前記第1ビルドアップ部が有する前記導体層の数は前記第2ビルドアップ部が有する前記導体層の数よりも大きく、
前記コア基板は、前記第1面を構成する第1絶縁層、前記第2面を構成する第2絶縁層、及び前記第1絶縁層と前記第2絶縁層とによって挟持される金属層を含んでいる。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1ビルドアップ部における前記コア基板と反対側の表面を構成する導体層は、前記第1ビルドアップ部を構成する導体層が有する配線パターンのなかで最も微細な配線パターンを有している。
【請求項3】
請求項2記載の配線基板であって、前記第1ビルドアップ部の前記コア層と反対側の表面を構成する導体層が有する配線パターンのライン/スペースは3μm/3μmよりも小さい。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2面を構成する導体層の厚さは、前記第1面を構成する導体層の厚さよりも大きい。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2ビルドアップ部を構成する導体層の厚さは、前記第1ビルドアップ部を構成する導体層の厚さよりも大きい。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記金属層は、前記第1絶縁層を貫通するビア導体を介して前記第1面を構成する導体層と接続すると共に、前記第2絶縁層を貫通するビア導体を介して前記第2面を構成する導体層と接続している。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、前記配線基板の一方の表面には、前記コア基板の前記第2面を構成する導体層が露出している。
【請求項8】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1ビルドアップ部を部分的に貫通し底部に部品搭載領域を有するキャビティを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コア基板の一方の面側にのみビルドアップ部を有する配線基板が開示されている。コア基板の一方の面側は絶縁層と導電層が交互に積層されたビルドアップ部が形成されており、コア基板の他方の面には半田ボールと接続される接続パッドが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-249711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の配線基板では、コア基板の一方の面側にのみビルドアップ部が形成されている。すなわち、特許文献1の配線基板は厚さ方向において非対称の層構造を有している。電子部品の搭載時などの熱による熱膨張量に偏りが生じると考えられる。熱膨張量の偏りに起因して配線基板に反りが生じ、配線基板と配線基板に搭載される部品との接続信頼性が低下する虞があると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態である配線基板は、第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有するコア基板と、前記コア基板の前記第1面側に形成されている絶縁層及び導体層を含む第1ビルドアップ部と、前記コア基板の前記第2面側に形成されている絶縁層及び導体層を含む第2ビルドアップ部と、を備えている。前記第1ビルドアップ部が有する前記導体層の数は前記第2ビルドアップ部が有する前記導体層の数よりも大きく、前記コア基板は、前記第1面を構成する第1絶縁層、前記第2面を構成する第2絶縁層、及び前記第1絶縁層と前記第2絶縁層とによって挟持される金属層を含んでいる。
【0006】
本発明の実施形態によれば、曲げ剛性が高く、反りが抑制される信頼性の高い配線基板が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す断面図。
図3】本発明の一実施形態の配線基板のさらに他の例を示す断面図。
図4】本発明の一実施形態の配線基板のさらに他の例を示す断面図。
図5】本発明の一実施形態の配線基板のさらに他の例を示す断面図。
図6A】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
図6B】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
図6C】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
図6D】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
図6E】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
図6F】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
図6G】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
図6H】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態である配線基板が図面を参照しながら説明される。図1には、実施形態の配線基板の一例である配線基板1の断面図が示されている。配線基板1は、第1面10Fと第1面10Fとは反対側の第2面10Bとを有するコア基板10を有している。配線基板1は、コア基板10の第1面10F上の第1ビルドアップ部11と、コア基板10の第2面10B上の第2ビルドアップ部12とを含んでいる。第1ビルドアップ部11及び第2ビルドアップ部12は、交互に積層される絶縁層13及び導体層14で構成されている。
【0009】
なお、本実施形態の配線基板の説明では、配線基板1の厚さ方向においてコア基板10から遠い側は「上側」、「外側」、又は単に「上」とも称され、コア基板10に近い側は「下側」、「内側」又は単に「下」とも称される。
【0010】
2つのビルドアップ部(第1ビルドアップ部11及び第2ビルドアップ部12)は、互いに異なる数の絶縁層及び導体層を含んでいる。具体的には、第1ビルドアップ部11が有する絶縁層13及び導体層14の層数は、第2ビルドアップ部12が有する絶縁層13及び導体層14の層数より大きい。図1に示される例では、第1ビルドアップ部11は、5層の絶縁層13及び5層の導体層14で構成されており、第2ビルドアップ部12は、2層の絶縁層13及び2層の導体層14で構成されている。各ビルドアップ部11、12の上側には、ソルダーレジスト層であり得る被覆層130が形成されている。
【0011】
なお、第1ビルドアップ部11が有する絶縁層13及び導体層14の層数、及び、第2ビルドアップ部12が有する絶縁層13及び導体層14の層数は上述の層数に限定されない。第1ビルドアップ部11が有する絶縁層13及び導体層14の層数が、第2ビルドアップ部12が有する絶縁層13及び導体層14の層数よりも大である条件の下、それぞれ任意の層数の導体層及び絶縁層を有し得る。
【0012】
第1及び第2ビルドアップ部11、12を構成する絶縁層13は、絶縁層13に接する導体層14に接続するビア導体14vを含んでいる。第1ビルドアップ部11及び第2ビルドアップ部12に形成されるビア導体14vは、コア基板10側に向かって縮径(先細り)するテーパー形状を有している。なお、便宜上「縮径」という文言が用いられているが、各ビア導体の開口形状は必ずしも円形に限定されない。「縮径」は、単にビア導体の水平断面における外周上の最長の2点間の距離が小さくなることを意味している。
【0013】
第1ビルドアップ部11及び第2ビルドアップ部12の最外の導体層14は、被覆層130の開口から露出する接続パッド14cを有している。第1ビルドアップ部11には、接続パッド14cを介して外部の電子部品が実装され得る。第2ビルドアップ部12には、接続パッド14cを介して例えばマザーボードなどの外部の電気回路基板が接続され得る。
【0014】
コア基板10は、第1絶縁層101、第2絶縁層102、及び第1絶縁層101と第2絶縁層102とに挟まれた金属層100を含んでいる。詳しくは後述するように、コア基板10が金属層100を有することで、配線基板1に生じ得る反りが抑制され得る。第1絶縁層101の上(金属層100と反対側)、すなわちコア基板10の第1面10F側には、第1導体層103が形成され、第2絶縁層102の上(金属層100と反対側)、すなわちコア基板10の第2面10B側には、第2導体層104が形成されている。
【0015】
コア基板10は、第1絶縁層101、金属層100、及び第2絶縁層102を貫通するスルーホール導体14pを含んでいる。スルーホール導体14pは、貫通孔14phが導体で充填されることで形成されている。スルーホール導体14pは第1導体層103と第2導体層104とを接続している。図示の例では、スルーホール導体14pは、第1面10F及び第2面10Bの両側からコア基板10の厚さにおける中央部分に向かって縮径するテーパー形状を有している。
【0016】
配線基板1が有する導体層103、104、14、ビア導体14v、及びスルーホール導体14pは、銅やニッケルなど、適切な導電性を有する任意の材料(導体)を用いて形成され得る。導体層103、104、14、ビア導体14v、及びスルーホール導体14pは、例えば金属箔(好ましくは銅箔)、金属膜層(好ましくは無電解銅めっき膜層)、電解めっき膜層(好ましくは電解銅めっき膜層)によって、又はこれらの組み合わせによって構成される。図1に示される例では、コア基板10を構成する導体層103、104は、金属箔、金属膜層、及び電解めっき膜層を含む3層構造を有している。そして、配線基板1を構成するその他の導体層14、ビア導体14v、及びスルーホール導体14pは、金属膜層及び電解めっき膜層を含む2層構造を有している。しかし、各導体層を構成する層の数は、図示される例に限定されず、例えば、第1導体層103や第2導体層104が、2層構造を有してもよい。各導体層(第1導体層103、第2導体層104、導体層14)は、それぞれ所望の導体パターン(配線パターン)を有している。
【0017】
絶縁層101、102、13は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成され得る。各絶縁層101、102、13は、ガラス繊維などの補強材及び/又はシリカなどの無機フィラーを含み得る。図1に示される例では、コア基板10を構成する第1絶縁層101及び第2絶縁層102はガラス繊維を含む補強材を含んでいる。一方、配線基板1を構成する、コア基板10以外の、第1ビルドアップ部11及び第2ビルドアップ部12を構成する絶縁層13は補強材を含んでいないものが図示されている。第1ビルドアップ部11及び第2ビルドアップ部12上の被覆層130は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを用いて形成される。
【0018】
図1の例のように、各ビルドアップ部11、12が複数の絶縁層13を含んでいる場合、各ビルドアップ部11、12内の各絶縁層13は、各絶縁層13同士を良好に密着させる観点から、同一の樹脂材料を用いて形成され得る。絶縁層13間の剥離が防止される場合がある。また、層間剥離の抑制の観点から、例えば、全ての絶縁層、すなわち、コア基板の第1絶縁層101、第2絶縁層102、第1ビルドアップ部11内の絶縁層13、及び、第2ビルドアップ部12内の絶縁層13が、同一の絶縁性の樹脂材料を含んでもよい。
【0019】
第1ビルドアップ部11及び第2ビルドアップ部12における各絶縁層13に含まれるビア導体14vは、各絶縁層13を貫く貫通孔を導電体で埋めることによって形成される所謂フィルドビアである。ビア導体14vは、その上側(コア基板10と反対側)の導体層と一体的に形成されている。従って、ビア導体14vと導体層14とは、同一の、例えば銅又はニッケルなどからなるめっき膜(金属膜及び電解めっき膜)によって形成されている。
【0020】
コア基板10に含まれる金属層100は、例えば、銅又はアルミニウム等の金属の、比較的肉厚な金属板を用いて、第1絶縁層101及び第2絶縁層102の支持体として形成される。コア基板10が金属層100を含んでいることで、配線基板1の剛性が向上し得る。特に、配線基板1の曲げ剛性が向上し、配線基板1の各構成要素の熱膨張量の偏りなどに起因する反りが抑制される。金属層100には、スルーホール導体14pが形成される位置に対応した開口が形成されており、これらの開口には第1絶縁層101及び第2絶縁層102から浸み出した樹脂が充填されている。
【0021】
図1に示される例では、コア基板10の両側の表面(第1面10F及び第2面10B)から、コア基板10の厚さ方向の中央部に向って縮径するテーパー形状を有するスルーホール導体14pが形成され、第1導体層103と第2導体層104を接続している。スルーホール導体14pは長さ方向(コア基板10の厚さ方向)において径の大きさが略同一に形成されてもよい。あるいは、片方の面から他方の面に向って(例えば、第2面10Bから第1面10Fに向って)縮径するテーパー形状を有してもよい。
【0022】
前述のように、厚さ方向において非対称の層構造を有する配線基板では、反りが発生しやすいという問題がある。具体的には、温度変化による熱膨張量又は熱収縮量の偏りによって反りが発生し得る。特に、電子部品搭載時の加熱などにより、配線基板における熱膨張量が偏ることで反りが生じ得る。本実施形態の配線基板1では、コア基板10が比較的剛性の高い金属層100を有する構成を採用している。従って、曲げ剛性が高く、配線基板1の変形が生じ難い。反りの発生が抑制される配線基板1が提供される。
【0023】
本実施形態の配線基板1におけるコア基板10は、第1絶縁層101、第2絶縁層102の厚さが、例えば、70μm以上、90μm以下であり、金属層100は、例えば、30μm以上、100μm以下の厚さを有し得る。図1に示される配線基板1では、コア基板10の第1絶縁層101及び第2絶縁層102は略同じ厚さを有しており、金属層100はコア基板10の厚さ方向における中心部に配置されている。
【0024】
本実施形態の配線基板は、その表面に比較的微細な配線パターンを備える微細配線層を有し得る。図2に例として示される配線基板1aにおいては、第1ビルドアップ部11が微細配線層111を有している。微細配線層111は第1ビルドアップ部11の、コア基板10と反対側に積層される、任意の層数の絶縁層131及び導体層141によって構成される。図示の例では、第1ビルドアップ部11の、最も外側の絶縁層及び導体層を含む、2層の絶縁層131及び2層の導体層141によって微細配線層111が構成されている。
【0025】
配線基板1aにおける、第1ビルドアップ部11の微細配線層111が有する導体層141は、第1ビルドアップ部11における微細配線層111以外の導体層14よりも薄く形成され、微細な配線パターンを有している。第1ビルドアップ部11の最外の導体層141は、被覆層130の開口から露出する、比較的狭ピッチの接続パッド141cを有している。特に、第1ビルドアップ部11におけるコア基板10と反対側の表面を構成する導体層141(接続パッド141cを含んでいる導体層141)は、第1ビルドアップ部11を構成する導体層14、141のなかで最も微細な配線パターンを有している。具体的には、微細配線層111における導体層141は、パターン幅/パターン間距離(L/S)が3μm/3μm以下に形成されている。一方、第1ビルドアップ部11における微細配線層111以外の導体層14は、L/Sが10μm/10μm程度に形成されている。なお、微細配線層111の絶縁層131に含まれるビア導体141vは、微細配線層111以外の絶縁層13に含まれるビア導体14vよりも小径に形成されている。
【0026】
微細配線層111に含まれる絶縁層131及び導体層141の層数は、図示されるものに限定されない。少なくとも、第1ビルドアップ部11の最も外側の絶縁層131及び導体層141が、微細配線層111として形成され、接続パッド141cを介して、比較的狭い端子ピッチを有する、例えばベアチップ半導体などの電子部品が実装され得る。実施形態の配線基板では、コア基板10が金属層100を有することで、配線基板の反りが抑制される。従って、第1ビルドアップ部11の最外の導体層141が微細な配線パターンに形成され、接続パッド141cが比較的狭いピッチを有するとしても、接続パッド141cと電子部品などとの間において、短絡などの不良の少ない、信頼性の高い接続が実現され得る。
【0027】
上述の、配線基板の反りを抑制する観点から、加熱時における配線基板内での熱膨張量は均等であることが好ましい。特に、配線基板の構成要素の中でも比較的熱膨張率が大きい金属を含む導体層14及び金属層100は、その存在量が配線基板の厚さ方向の中心位置の両側において比較的均等になるように配置されていることが好ましい。図3に配線基板1bとして示されているように、第2導体層104の厚さT2が第1導体層103の厚さT1よりも大きく形成されていることで、配線基板内での熱膨張量の偏りが緩和されることがある。さらに、第2ビルドアップ部12を構成する導体層14の厚さt2が第1ビルドアップ部11を構成する導体層14の厚さt1よりも大きく形成されていることで、さらに配線基板内での熱膨張量の偏りが緩和されることがある。配線基板の厚さ方向における中心位置から、一方側(例えば第1ビルドアップ部11の表面側)と他方側(例えば第2ビルドアップ部12の表面側)とでの金属の存在量が比較的均等な状態とされ得る。
【0028】
なお、本実施形態において、「第1ビルドアップ部11が有する絶縁層13及び導体層14の層数が、第2ビルドアップ部12が有する絶縁層13及び導体層14の層数よりも大である」とは、コア基板10の第2面10B側に第2ビルドアップ部12が形成されず、コア基板10の第2面10Bが露出する構成をも含む。すなわち本実施形態においては、配線基板は、コア基板10の一方の面にのみビルドアップ部を有する態様も有し得る。
【0029】
図4に示される配線基板1cにおいては、コア基板10の第1面10F側には第1ビルドアップ部11が形成され、コア基板10の第2面10Bを構成する第2導体層104は、第2面10B上に設けられている被覆層130に形成されている開口から露出している。そして、図示される例においては、コア基板10の金属層100は、ビア導体14vを介して、第1導体層103及び第2導体層104と接続されている。このような構成を有することで、第1ビルドアップ部11上に載置され得る電子部品から発せられる熱が、金属層100を介して効果的に配線基板1c外へと放熱されることがある。曲げ剛性が高く反りが効果的に抑制されると共に、良好な放熱性を備えることにより、反りがより効果的に抑制され得る配線基板が提供され得る。
【0030】
実施形態の配線基板は、内部に電子部品が搭載されるキャビティを有する態様をも有し得る。図5に示される配線基板1dは、第1ビルドアップ部11の一部を貫通するキャビティ(凹部)RCを有している。キャビティRCは、第1ビルドアップ部11のキャビティRCの形成箇所に対応した位置に、例えば炭酸ガスレーザー、又はYAGレーザーなどのレーザー光を照射することで形成され得る。キャビティRCの底部は部品搭載領域Aを備えており、部品搭載領域Aは電子部品が接続され得る部品実装パッド140を有している。部品実装パッド140には、エポキシ樹脂などで形成される絶縁性の接着剤、又は、導電性粒子を含む導電性接着剤などの実装用部材を介して電子部品が実装され得る。例えば、メモリ、マイコン、CPU、等の半導体集積回路装置、又はLED、PD(フォトダイオード)等の光半導体デバイスである電子部品が搭載され得る。
【0031】
つぎに、図1に示される配線基板1を例に、配線基板の製造方法が、図6A図6Hを参照して以下に説明される。先ず、所定の厚さの例えば銅又はアルミニウムからなる金属板が裁断され、所定の位置に必要な孔100hをあけた金属板100Pが用意される。金属板100Pの表面には、必要に応じて樹脂の密着性をよくするために粗化処理が施され得る。
【0032】
続いて、図6Aに示されるように、金属板100Pの両面に、例えばエポキシ樹脂等を含浸させた芯材を有するプリプレグ101P及びプリプレグ102Pが配置される。さらに、プリプレグ101Pの上に例えば銅箔である金属箔103Pが積層され、プリプレグ102Pの上に例えば銅箔である金属箔104Pが積層され、加熱プレスによって一体化される。この一体化によってプリプレグ101P、102Pに含まれる樹脂はメタル板100Pに形成された孔100hに充填される。一体化により、図6Bに示される、金属層100がプリプレグ101P、102Pが硬化してなる第1絶縁層101、及び第2絶縁層102に挟まれた出発基板10Pが得られる。
【0033】
図6Aにおけるプリプレグ101Pの厚さはプリプレグ102Pの厚さと略等しく、図6Bに示される出発基板10Pにおいては、第1絶縁層101の厚さは第2絶縁層102の厚さと略等しい。すなわち、金属層100は出発基板10Pにおける厚さ方向の中心に形成されている。
【0034】
続いて、図6Cに示されるように、出発基板10Pにスルーホール用貫通孔14phが、炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。貫通孔14phは、例えばレーザー光が金属層100に設けられている孔100hに対応する位置に照射されることで形成される。次いで、例えばサブトラクティブ法を用いて、金属箔、金属膜、及び電解めっき膜を含んでいて所望の導体パターンを有する第1導体層103及び第2導体層104がそれぞれコア基板10の第1面10F側及び第2面10B側に形成される。同時に、金属膜及び電解めっき膜によりスルーホール用貫通孔14phが充填されることによってスルーホール導体14pが形成される。スルーホール用貫通孔14phの形成にはドリル加工等の機械的加工が用いられてもよい。第1導体層103及び第2導体層104は、金属箔103P、104P及びめっき膜(金属膜103n、104n、及び、電解めっき膜103e、104e)によって、形成される。
【0035】
次いで、図6Dに示されるように、絶縁層13がコア基板10の第1及び第2面10F、10B側に形成される。第2面10B側の絶縁層13上には接着層71を介して支持板70が接続される。支持板70には、例えば、金属板や、ガラス繊維などの補強材にエポキシ樹脂を含浸してなるガラスエポキシ板などが用いられるが、これら以外にも、適度な剛性を有する任意の材料が使用され得る。
【0036】
支持板70と絶縁層13の間には、絶縁層13に対する適度な接着性(密着性)を有する接着層71が設けられ、接着層71の接着性により支持板70と絶縁層13とが貼り合わされる。その後、必要に応じて加熱などにより接着層71が硬化される。接着層71を構成する材料は、支持板70及び絶縁層13と密着し得るものであれば特に限定されない。少なくとも、絶縁層13との間よりも、支持板70との間に強い接着力を発現し得る材料が、接着層71の材料として好ましい。接着層71を構成する材料は、紫外線照射や加熱などの特定の処理により絶縁層13との接着性を喪失するものであってもよい。例えば、アクリル系樹脂が接着層71の材料として例示される。
【0037】
なお、図6Dでは、支持板70の片方の面にのみ、コア基板10の両面に絶縁層13が形成された積層体が接着層71を介して貼着される例が示されている。そして、図6D~6Fを参照する説明においては、支持板70の片方の面側において実施される製造工程が説明される。しかしながら、支持板70の両面に積層体が貼着され、支持板70の両面側で配線基板の製造が実施されてよい。具体的には、図6Dに示される段階で、コア基板10の両面に絶縁層13が形成された2つの積層体が、それぞれ第2面10B側を支持板70に向けて支持板70の両面に貼着され得る。そして、図6D~6Fを参照して説明される製造工程は、支持板70の両面側で実施され得る。
【0038】
次いで、図6Eに示されるように、第1面10F側の絶縁層13には、ビア導体用の貫通孔14vhが例えばレーザー光の照射により形成される。そして、例えば、セミアディティブ法を用いて、絶縁層13上及び貫通孔14vh内に、無電解銅めっきなどによる金属膜、及びこの金属膜をシード層として用いて金属膜上に電解めっき膜が形成されて、所望の導体パターンを有する導体層14、ならびに、ビア導体14vが形成される。次いで、図6Fに示されるように、コア基板10の第1面10F側では、一般的なビルドアップ工法による絶縁層13及び導体層14の積層が繰り返される。
【0039】
図6E及び図6Fに示される工程において、コア基板10の第1面10F側へは、製造される配線基板1の第1ビルドアップ部11が有するべき絶縁層13及び導体層14の層数の、第2ビルドアップ部12が有するべき絶縁層13及び導体層14の層数を超える層数分の絶縁層13及び導体層14が積層される。すなわち、図示の例では、配線基板1の第1ビルドアップ部11が有するべき5層の絶縁層13及び導体層14と、第2ビルドアップ部12が有するべき2層の絶縁層13及び導体層14との差異である、3層の絶縁層13及び導体層14が第1面10Fに接する絶縁層13上に形成される。その結果、図6Fに示されるように、コア基板10の第1面10F側に4層の絶縁層13、及び、3層の導体層14が積層され、第2面10B側に1層の絶縁層13が積層された状態となる。
【0040】
次いで、図6Gに示されるように、支持体70が、コア基板10の第2面10B側の絶縁層13から分離される。支持体70の分離により露出する第2面10B側に接する絶縁層13には、ビア導体14vが形成され、併せて導体層14が絶縁層13上に形成される。そして、さらに絶縁層13及び導体層14が積層され、第2ビルドアップ部12が形成される。同時に、第1面10F側においても、第2面10B側と同じ層数の導体層14及び絶縁層13が積層され、第1ビルドアップ部11が形成される。以上でコア基板10の第1面10F側への第1ビルドアップ部11の形成、及び、第2面10B側への第2ビルドアップ部12の形成が完了する。第1ビルドアップ部11及び第2ビルドアップ部12の形成が完了した状態において、第2ビルドアップ12部が有する絶縁層13及び導体層14の層数は、第1ビルドアップ部11が有する絶縁層13及び導体層14の層数よりも小さい。
【0041】
次いで図6Hに示されるように、第1面10F側の第1ビルドアップ部11、及び、第2面10B側の第2ビルドアップ部12の最外の絶縁層13及び導体層14の上に被覆層130が形成される。被覆層130は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを用いて形成され、被覆層130には、露光及び現像によって開口13aが形成される。開口13aからは最外の導体層14に含まれる接続パッド14cが露出する。
【0042】
以上の工程を経ることによって、配線基板1が完成する。被覆層130の開口13a内に露出する接続パッド14cの表面には保護膜(図示せず)が形成されてもよい。例えば、Ni/Au、Ni/Pd/Au、又はSnなどからなる保護膜がめっき法により形成され得る。有機材の吹き付けによりOSP膜が形成されてもよい。
【0043】
なお、図2に示される配線基板1aが製造される場合には、図6Gに示される、第1面10F側に絶縁層を積層する工程において、比較的厚さの小さい樹脂フィルムが用いられ、絶縁層131が形成され得る。絶縁層131に比較的小径のビア導体141vが形成されると共に、ビア導体141vと一体的に形成される導体層141は、比較的微細なパターンに形成され得る。少なくとも第1ビルドアップ部11における、最外の導体層141は、L/Sが3μm/3μm以下となるように形成される。
【0044】
また、図3に示される配線基板1bが製造される場合には、コア基板10の第2面10B側の導体層104、14の電解めっき膜の形成において、第2面10B側の電流密度が、第1面10F側の電流密度より高くなるように電圧が印加される。これにより、第2面10B側の電解めっき膜の厚みが第1面10F側の電解めっき膜の厚みより厚く形成され、第2面10B側の導体層104、14の厚さは、第1面10F側の導体層103、14の厚さより大きく形成され得る。
【0045】
また、図4に示される配線基板1cが製造される場合には、図6Dに示される段階において、第2面10B側の絶縁層13が形成されず、第2導体層104が支持板70に貼着される。支持板70は、被覆層130の形成直前の段階で第2導体層104から分離され得る。
【0046】
また、図5に示される配線基板1dが製造される場合には、第1ビルドアップ部11が形成された後に、例えば、炭酸ガスレーザー又はYAGレーザーなどのレーザー光を使用するレーザー加工、又は、ドリル加工を使用して、第1ビルドアップ部11の一部分が除去される。例えば、第1ビルドアップ部11のキャビティRCの底部となるべき所定の領域上に剥離膜を形成し、剥離膜の周縁全体に沿う溝が第1ビルドアップ部11の表面からのレーザー加工又はドリル加工により形成される。第1ビルドアップ部11の溝に囲まれる部分を剥離層と共に除去することでキャビティRCが形成され得る。
【0047】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、ならびに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。例えば、配線基板1が有するビア導体14vは、コア基板10に向かって縮径するテーパー形状を有しているが、ビア導体14vは配線基板1の厚さ方向において径の大きさが略同一に形成されてもよいし、反対側に(コア基板から配線基板の外側)に向かって縮径する形状に形成されてもよい。また、第1ビルドアップ部11及び第2ビルドアップ部12の最外層には被覆層130が設けられなくてもよい。
【0048】
また、配線基板の製造方法は、各図面を参照して先に説明された方法に限定されない。例えば、コア基板10の第1及び第2導体層103、104は、金属箔を用いるセミアディティブ法を用いて形成されてもよい。第1及び第2ビルドアップ部11、12内の各導体層は、サブトラクティブ法を用いて形成されてもよい。先に説明された製造方法の条件や順序などは適宜変更され得る。現に製造される配線基板の構造に応じて、一部の工程が省略されてもよく、別の工程が追加されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1、1a、1b、1c、1d 配線基板
10 コア基板
10F 第1面
10B 第2面
11 第1ビルドアップ部
12 第2ビルドアップ部
13、131 絶縁層
14、141 導体層
14v、141v ビア導体
14c、141c 接続パッド
14p スルーホール導体
100 金属層
101 第1絶縁層
102 第2絶縁層
103 第1導体層
104 第2導体層
111 微細配線層
RC キャビティ
A 部品搭載領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H