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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055653
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】無効電力補償装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/70 20060101AFI20220401BHJP
   H02J 3/18 20060101ALI20220401BHJP
   H02M 7/497 20070101ALI20220401BHJP
【FI】
G05F1/70 L
H02J3/18 157
H02M7/497
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163197
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】吉野 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】川村 弥
【テーマコード(参考)】
5G066
5H420
5H770
【Fターム(参考)】
5G066FB11
5G066FC01
5G066FC04
5H420BB03
5H420BB16
5H420CC04
5H420DD03
5H420EA10
5H420EA40
5H420EA45
5H420EA49
5H420EB09
5H420EB38
5H420FF03
5H420FF04
5H420FF22
5H420FF23
5H770BA13
5H770DA01
5H770DA03
5H770DA11
5H770DA23
5H770DA26
5H770DA41
5H770EA01
5H770GA06
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03W
5H770HA03Z
5H770JA09X
5H770LB01
(57)【要約】
【課題】電力系統の種類を問わずに接続することができるMMC方式の無効電力補償装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る無効電力補償装置は、単相変圧器を介して単相交流系統に接続される。この無効電力補償装置は、カスケードに接続された複数の変換器ユニットを含む電力変換器と、前記複数の変換器ユニットにそれぞれ接続された制御装置と、を備える。前記制御装置は、あらかじめ設定された無効電力指令、前記単相交流系統の線間電圧、前記単相交流系統の線電流、前記電力変換器の出力電流および前記複数の変換器ユニットが出力し得る電圧にもとづいて、前記複数の変換器ユニットのそれぞれの動作を制御することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相変圧器を介して交流系統に接続される無効電力補償装置であって、
カスケードに接続された複数の変換器ユニットを含む電力変換器と、
前記複数の変換器ユニットにそれぞれ接続された制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、あらかじめ設定された無効電力指令、前記交流系統の線間電圧、前記単相交流系統の線電流、前記電力変換器の出力電流および前記複数の変換器ユニットが出力し得る電圧にもとづいて、前記複数の変換器ユニットのそれぞれの動作を制御することを特徴とする無効電力補償装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記線間電圧の位相に同期する第1位相同期信号および前記第1位相同期信号に直交する位相を有する第2位相同期信号を生成する単相同期検出回路を含み、
前記線間電圧および前記線電流にもとづいて演算された無効電力検出値および前記無効電力指令にもとづいて生成された第1無効電流指令を前記第2位相同期信号の位相に同期させて第2無効電流指令として生成し、
前記出力電流と前記第2無効電流指令にもとづいて、第1電圧指令を生成し、
前記第1電圧指令および前記線間電圧にもとづいて、第2電圧指令を生成し、
前記複数の変換器ユニットは、前記第2電圧指令にもとづいてそれぞれ動作することを特徴とする請求項1記載の無効電力補償装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記出力電流から直流成分を抽出し、前記直流成分を0に追従するように偏磁抑制電圧指令を生成し、
前記第1電圧指令に前記偏磁抑制電圧指令を加算して、前記第2電圧指令を生成することを特徴とする請求項2記載の無効電力補償装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
あらかじめ設定された直流電圧指令および前記複数の変換器ユニットがそれぞれ出力し得る電圧の平均値にもとづいて第1有効電流指令を生成し、
前記第1有効電流指令を前記第1位相同期信号の位相に同期させて第2有効電流指令を生成し、
前記第2有効電流指令を前記第2無効電流指令に加算して、電流指令を生成し、
前記出力電流および前記電流指令にもとづいて、前記第1電圧指令を生成する請求項2または3に記載の無効電力補償装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記複数の変換器ユニットのうちの1つの変換器ユニットが出力し得る第1直流電圧および前記直流電圧指令にもとづいて、前記第1直流電圧を前記直流電圧指令に追従させるために必要な第1補正電圧指令を生成し、
前記第1補正電圧指令に前記電流指令の位相に同期する第2補正電圧指令を生成し、
前記第2補正電圧指令を前記第1電圧指令に加算して前記第2電圧指令を生成し、
前記1つの変換器ユニットは、前記第2電圧指令にもとづいて動作することを特徴とする請求項4記載の無効電力補償装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記第4電圧指令および前記1つの変換器ユニットのスイッチング周波数を設定するキャリア信号にもとづいて、前記1つの変換器ユニットを制御するためのゲート信号を生成する請求項5記載の無効電力補償装置。
【請求項7】
前記複数の変換器ユニットは、
第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子に直列に接続された第2スイッチング素子と、
第3スイッチング素子と、
前記第3スイッチング素子に直列に接続された第4スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の直列回路に並列に接続されるとともに、前記第3スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の直列回路に並列に接続されたコンデンサと、
前記第1~第4スイッチング素子をそれぞれ駆動するように設けられたゲート回路と、
前記制御装置と前記ゲート回路との間に設けられ、前記第1~第4スイッチング素子の駆動のタイミングに関する情報を前記制御装置と送受信するユニット制御回路と、
前記ゲート回路および前記ユニット制御回路に動作のための電力を供給する制御電源回路と、
をそれぞれ含む請求項1~6のいずれか1つに記載の無効電力補償装置。
【請求項8】
第1単相変圧器を介して3相交流系統の第1相に接続され、
第2単相変圧器を介して前記3相交流系統の第2相に接続され、
第3単相変圧器を介して前記3相交流系統の第3相に接続される無効電力補償装置であって、
カスケードに接続された複数の第1変換器ユニットを含む第1電力変換器と、
カスケードに接続された複数の第2変換器ユニットを含む第2電力変換器と、
カスケードに接続された複数の第3変換器ユニットを含む第3電力変換器と、
前記複数の第1変換器ユニット、複数の第2変換器ユニットおよび複数の第3変換器ユニットにそれぞれ接続された制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、あらかじめ設定された無効電力指令、前記第1相と前記第2相との間の線間電圧、前記第2相と前記第3相との線間電圧、前記第3相と前記第1相との線間電圧、前記第1相の線電流、前記第2相の線電流、前記第3の線電流、前記第1電力変換器の出力電流、前記第2電力変換器の出力電流、前記第3電力変換器の出力電流、前記複数の第1変換器ユニットが出力し得る電圧、前記複数の第2変換器ユニットが出力し得る電圧および前記複数の第3変換器ユニットが出力し得る電圧にもとづいて、前記複数の第1変換器ユニット、前記複数の第2変換器ユニットおよび前記複数の第3変換器ユニットのそれぞれの動作を制御することを特徴とする無効電力補償装置。
【請求項9】
3相交流系統に1次側で接続されたオープンデルタ変圧器の第1の2次巻線、第2の2次巻線および第3の2次巻線を介して接続される無効電力補償装置であって、
カスケードに接続された複数の第1変換器ユニットを含む第1電力変換器と、
カスケードに接続された複数の第2変換器ユニットを含む第2電力変換器と、
カスケードに接続された複数の第3変換器ユニットを含む第3電力変換器と、
前記複数の第1変換器ユニット、複数の第2変換器ユニットおよび複数の第3変換器ユニットにそれぞれ接続された制御装置と、
を備え、
前記第1電力変換器は、前記第1の2次巻線に接続され、
前記第2電力変換器は、前記第2の2次巻線に接続され、
前記第3電力変換器は、前記第3の2次巻線に接続され、
前記制御装置は、あらかじめ設定された無効電力指令、前記3相交流の第1相と前記3相交流の第2相との間の第1線間電圧、前記第2相と前記3相交流の第3相との第2線間電圧、前記第3相と前記第1相との第3線間電圧、前記第1相の第1線電流、前記第2相の第2線電流、前記第3相の第3線電流、前記第1電力変換器の第1出力電流、前記第2電力変換器の第2出力電流、前記第3電力変換器の第3出力電流、前記複数の第1変換器ユニットが出力し得る第1電圧、前記複数の第2変換器ユニットが出力し得る第2電圧および前記複数の第3変換器ユニットが出力し得る第3電圧にもとづいて、前記複数の第1変換器ユニット、前記複数の第2変換器ユニットおよび前記複数の第3変換器ユニットのそれぞれの動作を制御することを特徴とする無効電力補償装置。
【請求項10】
前記制御装置は、
前記制御装置は、前記第1相間電圧の位相に同期する第1位相同期信号および前記第1位相同期信号に直交する位相を有する第2位相同期信号を生成する単相同期検出回路を含み、
前記第1線間電圧および前記第1線電流にもとづいて演算された第1無効電力検出値および前記第1無効電力指令にもとづいて生成された第1無効電流指令を前記第2位相同期信号の位相に同期させて第2無効電流指令として生成し、
前記出力電流と前記第2無効電流指令にもとづいて、第1電圧指令を生成し、
前記第1電圧指令および前記第1線間電圧にもとづいて、第2電圧指令を生成し、
前記複数の第1変換器ユニットは、前記第2電圧指令にもとづいてそれぞれ動作することを特徴とする請求項8または9に記載の無効電力補償装置。
【請求項11】
前記制御装置は、
前記第1出力電流から直流成分を抽出し、前記直流成分を0に追従するように偏磁抑制電圧指令を生成し、
前記第1電圧指令に前記偏磁抑制電圧指令を加算して、前記第2電圧指令を生成することを特徴とする請求項10記載の無効電力補償装置。
【請求項12】
前記制御装置は、
あらかじめ設定された第1直流電圧指令および前記複数の第1変換器ユニットがそれぞれ出力し得る電圧の平均値にもとづいて第1有効電流指令を生成し、
前記第1有効電流指令を前記第1位相同期信号の位相に同期した第2有効電流指令を生成し、
前記第2有効電流指令および前記第2無効電流指令を加算して、電流指令を生成し、
前記第1出力電流および前記電流指令にもとづいて、前記第1電圧指令を生成する請求項10または11に記載の無効電力補償装置。
【請求項13】
前記制御装置は、
前記複数の第1変換器ユニットのうちの1つの第1変換器ユニットが出力し得る第1直流電圧および前記直流電圧指令にもとづいて、前記第1直流電圧を前記直流電圧指令に追従させるために必要な第1補正電圧指令を生成し、
前記第1補正電圧指令に前記電流指令の位相に同期する第2補正電圧指令を生成し、
前記第2補正電圧指令を前記第1電圧指令に加算して前記第2電圧指令を生成し、
前記1つの第1変換器ユニットは、前記第2電圧指令にもとづいて動作することを特徴とする請求項12記載の無効電力補償装置。
【請求項14】
前記制御装置は、
前記複数の第1変換器ユニットのそれぞれの第1変換器ユニットがそれぞれ出力し得る前記第1直流電圧の第1平均値、前記複数の第2変換器ユニットのそれぞれの第2変換器ユニットがそれぞれ出力し得る第2直流電圧の第2平均値および前記複数の第3変換器ユニットのそれぞれの第3変換器ユニットがそれぞれ出力し得る第3直流電圧の第3平均値を演算し、
前記第1~第3平均値のうちから最大値を選択し、
前記第1~第3平均値の平均である第4平均値を演算し、
前記最大値が前記第4平均値に追従するように第1零相電流指令を生成し、
前記第1零相電流指令に、前記第1位相同期信号の位相から180°遅れた第3位相同期信号、前記第3位相同期信号の位相から120°遅れた位相に同期する第4位相同期信号および前記第3位相同期信号の位相から240°遅れた位相に同期する第5位相同期信号のいずれかの位相に同期した第2零相電流指令を生成し、
前記第2有効電流指令、前記第2無効電流指令および前記第2零相電流指令を加算して、前記電流指令を生成し、
前記第1出力電流および前記電流指令にもとづいて、前記第1電圧指令を生成し、
前記第1平均値が前記最大値のときには、前記第1零相電流指令を前記第3位相同期信号に同期させて前記第2零相電流指令とし、
前記第1平均値が前記最大値でないときには、前記第1零相電流指令を前記第4位相同期信号または前記第5位相同期信号に同期させて前記第2零相電流指令とする請求項12または13に記載の無効電力補償装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無効電力補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モジュラーマルチレベルコンバータ(Modular Multilevel Converter、MMC)方式の電力変換器の応用が進んでいる。MMC方式の電力変換器は、複数の変換器ユニットをカスケード接続し、多重変調により交流出力を生成するので、フィルタレスで交流系統に接続することができる。また、電力変換器を構成する変換器ユニットの段数を増やすことで、高電圧に対応することも容易であり、電力系統に接続する変換器として有用である。
【0003】
無効電力補償装置は、交流系統の無効電力を所望の値になるように、交流系統に無効電力を注入する。交流系統には、単相や3相の交流が用いられる。無効電力補償装置にMMC方式の電力変換器を適用する場合に、単相の交流系統への適用が困難であるとの問題がある。
【0004】
MMC方式の電力変換器を3相の交流系統に適用する場合も、3相交流との結線方式により、問題を生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-142467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施形態は、電力系統の種類を問わずに接続することができるMMC方式の無効電力補償装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る無効電力補償装置は、単相変圧器を介して交流系統に接続される。この無効電力補償装置は、カスケードに接続された複数の変換器ユニットを含む電力変換器と、前記複数の変換器ユニットにそれぞれ接続された制御装置と、を備える。前記制御装置は、あらかじめ設定された無効電力指令、前記交流系統の線間電圧、前記単相交流系統の線電流、前記電力変換器の出力電流および前記複数の変換器ユニットが出力し得る電圧にもとづいて、前記複数の変換器ユニットのそれぞれの動作を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態では、電力系統の種類を問わずに接続することができるMMC方式の無効電力補償装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る無効電力補償装置を例示する模式的なブロック図である。
図2】第1の実施形態の無効電力補償装置の一部を例示する模式的なブロック図である。
図3】第1の実施形態の無効電力補償装置の一部を例示する模式的なブロック図である。
図4】第1の実施形態の無効電力補償装置の一部を例示する模式的なブロック図である。
図5】第1の実施形態の無効電力補償装置の動作を説明するための模式的な動作波形図である。
図6図6(a)は、第1の実施形態の無効電力補償装置の動作を説明するための模式的な等価回路図である。図6(b)は、第1の実施形態の無効電力補償装置の動作を説明するための模式的なベクトル図である。
図7図7(a)および図7(b)は、第1の実施形態の無効電力補償装置の動作を説明するための模式的なベクトル図である。
図8図8(a)および図8(b)は、第1の実施形態の無効電力補償装置のシミュレーションによる模式的な動作波形の例である。
図9図9(a)および図9(b)は、第1の実施形態の無効電力補償装置のシミュレーションによる模式的な動作波形の例である。
図10】第2の実施形態に係る無効電力補償装置を例示する模式的なブロック図である。
図11】第3の実施形態に係る無効電力補償装置を例示する模式的なブロック図である。
図12図12(a)は、第3の実施形態の無効電力補償装置に接続される3相変圧器の模式的な等価回路図である。図12(b)は、比較例の無効電力補償装置に接続される3相変圧器の模式的な等価回路図である。
図13】第4の実施形態の無効電力補償装置の一部を例示する模式的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る無効電力補償装置を例示する模式的なブロック図である。
図1に示すように、無効電力補償装置1は、電力変換器10と、変換器制御装置(制御装置)20と、を備える。無効電力補償装置1は、単相変圧器3を介して、交流系統2に接続される。この例のように、無効電力補償装置1は、遮断器7を介して交流系統2に接続されるようにしてもよい。遮断器7は、たとえば、交流系統2に地絡等の異常が生じた場合に、無効電力補償装置1を保護するために設けられる。
【0012】
電力変換器10と交流系統2との間には、いくつかの計測機器が設けられている。これらの計測機器は、電流検出器4,6および電圧検出器5である。電流検出器4は、交流系統2と単相変圧器3との間に流れる電流is(t)を計測するように設けられている。電流検出器4は、電流is(t)の検出値として、交流電流フィードバック信号is1(t)を出力する。電流検出器6は、単相変圧器3と電力変換器10との間に流れる電流ic(t)を計測するように設けられている。電流検出器6は、電流ic(t)の検出値として変換器電流フィードバック信号ic1(t)を出力する。電圧検出器5は、交流系統2の線間の電圧vs(t)を計測するように設けられている。電圧検出器5は、電圧vs(t)の検出値として系統電圧フィードバック信号vs1(t)を出力する。
【0013】
電流検出器4,6および電圧検出器5は、適切な範囲の電流値および電圧値に変換する機器とともに設けられていてもよい。たとえば電流検出器4,6は、変流器によって変流された電流値を計測し、電圧検出器5は、計器用変圧器によって降圧された電圧値を計測するようにしてもよい。
【0014】
電流検出器4,6および電圧検出器5は、変換器制御装置20に接続されている。変換器制御装置20は、電流検出器4,6および電圧検出器5から交流電流フィードバック信号is1(t)、変換器電流フィードバック信号ic1(t)および系統電圧フィードバック信号vs1(t)のデータを取得する。
【0015】
変換器制御装置20は、電力変換器10に接続されている。変換器制御装置20は、電力変換器10が有する複数の変換器ユニット12のそれぞれに接続されている。以下では、変換器ユニットを単にユニットといい、図中もユニットと表記するものとする。変換器制御装置20および電力変換器10は、たとえば光ファイバで接続される。
【0016】
変換器制御装置20は、電力変換器10を構成する各ユニット12から直流電圧のデータを収集する。各ユニット12の直流電圧とは、後に詳述するが、各ユニット12のコンデンサに印加されている電圧である。ユニット12の直流電圧を単に直流電圧という場合がある。各ユニット12は、コンデンサに印加された直流電圧を出力することができる。変換器制御装置20は、交流電流フィードバック信号is1(t)、変換器電流フィードバック信号ic1(t)および系統電圧フィードバック信号vs1(t)の各データならびに各ユニット12の直流電圧のデータにもとづいて、各ユニット12に対するゲート信号に関するデータを含む制御データを生成し、各ユニット12に送信する。各ユニット12は、変換器制御装置20から受信した制御データにしたがって、動作する。
【0017】
変換器制御装置20が生成する制御データは、各ユニット12の動作のためのゲート信号の位相情報等を含んでいる。ゲート信号は、各ユニット12に対する電圧指令にもとづいて生成される。各ユニット12に対する電圧指令は、変換器制御装置20によって演算された電流指令にもとづいて生成される。変換器制御装置20の具体的な構成については、後述する。
【0018】
電力変換器10では、複数のユニット12がカスケードに接続されている。この例では、6台のユニット12が直列に接続されているが、ユニットの接続台数は、これに限らず、2台以上接続されていればよく、出力する変換器電圧の振幅に応じて適切な台数に設定される。
【0019】
電力変換器10では、カスケードに接続された複数のユニット12の両端が、単相変圧器3の2次巻線に接続される。単相変圧器3の1次巻線は、交流系統2に接続される。
【0020】
図2は、本実施形態の無効電力補償装置の一部を例示する模式的なブロック図である。
図2には、無効電力補償装置1の電力変換器10に設けられるユニット12の構成が簡略化されて示されている。
図2に示すように、ユニット12は、スイッチング素子103U,103X,103V,103Yと、コンデンサ104と、ゲート回路102U,102X,102V,102Yと、ユニット制御回路101と、制御電源回路105と、を含む。
【0021】
スイッチング素子103U,103X,103V,103Yのそれぞれは、IGBT等の半導体スイッチング素子にダイオードが逆並列に接続されている。スイッチング素子103U,103X,103V,103Yは、単相ブリッジ回路を構成する。この例では、2つのスイッチング素子103U,103Xは、直列に接続されている。スイッチング素子103U,103Xの接続ノードには、接続端子12aが接続されている。2つのスイッチング素子103V,103Yは、直列に接続されている。スイッチング素子103V,103Yの接続ノードには、接続端子12bが接続されている。コンデンサ104は、スイッチング素子103U,103Xの直列回路およびスイッチング素子103V,103Yの直列回路に並列に接続されている。
【0022】
コンデンサ104は、充電されており、単相ブリッジ回路の動作によって、コンデンサ104の電圧は、時間的に変動する。図2には図示しないが、コンデンサ104の両端の電圧を計測するように、電圧検出器が設けられており、電圧検出器は、コンデンサ104の両端の電圧を検出して、直流電圧フィードバック信号vdck(t)として出力する。コンデンサ104の両端の電圧がユニット12の直流電圧である。
【0023】
電圧vdck(t)のように添え字の“k”は、カスケードに接続されたn台のユニット12のk番目のユニット12に対応することを示している。つまり、k=1~n(自然数)であり、直流電圧フィードバック信号vdck(t)は、k番目のユニット12のコンデンサ104の両端の電圧の検出値であることを表している。その他の記号に添え字として“k”を用いる場合も特に断らない限り同様である。
【0024】
ゲート回路102U,102X,102V,102Yは、スイッチング素子103U,103X,103V,103Yを駆動するようにスイッチング素子103U,103X,103V,103Yのゲートにそれぞれ接続されている。ゲート回路102U,102X,102V,102Yは、ユニット制御回路101からゲート信号GU,GX,GV,GYを供給されて、スイッチング素子103U,103X,103V,103Yのためのゲート駆動信号に増幅してスイッチング素子103U,103X,103V,103Yを駆動する。
【0025】
ユニット制御回路101は、ゲート回路102U,102X,102V,102Yに接続されており、変換器制御装置20から受信した制御データからゲート信号GU,GX,GV,GYを抽出して、ゲート回路102U,102X,102V,102Yに供給する。ユニット制御回路101は、検出された直流電圧フィードバック信号vdck(t)のデータをk番目のユニットの直流電圧のデータとして、変換器制御装置20へ送信する。
【0026】
スイッチング素子103U,103X,103V,103Yは、ゲート信号GU,GX,GV,GYに応じてオンオフする。スイッチング素子103U,103Yがオンし、スイッチング素子103V,103Yがオフしたときに接続端子12bを基準に、接続端子12aに正の電圧が出力される。スイッチング素子103V,103Yがオンし、スイッチング素子103U,103Xがオフしたときに、接続端子12bを基準に、接続端子12aに負の電圧が出力される。この例では、ゲート信号GU,GVが位相シフトされた信号とされ、ユニット12は位相シフト制御されて動作する。
【0027】
図3および図4は、本実施形態の無効電力補償装置の一部を例示する模式的なブロック図である。
図3および図4は、変換器制御装置20の構成の一部を模式的に示しており、図3の構成で生成された電圧指令vrefk(t)は、図4のPWM制御器260,262に供給されることを表している。電圧指令vrefk(t)は、ユニット12ごとにそのユニット12のための信号として生成され、出力される。そのため、電圧指令vrefk(t)を生成し、出力する図3のブロックのうち、ユニット12の直流電圧指令を生成するブロック(図3の演算器240、ユニットの直流電圧制御部241、乗算器242および演算器224を含むブロック)は、ユニット12の台数分設けられる。また、図4のブロックもユニット12の台数分設けられる。
【0028】
図3に示すように、変換器制御装置20は、無効電力検出回路201と、単相同期検出回路202、無効電力制御部211と、乗算器212と、電流制御部221と、を含む。
【0029】
無効電力検出回路201は、電流検出器4および電圧検出器5に接続されている。無効電力検出回路201は、電流検出器4によって検出された交流電流フィードバック信号is1(t)および電圧検出器5によって検出された系統電圧フィードバック信号vs1(t)のデータを入力し、これらのデータを用いて、交流系統2の無効電力検出値Qを演算する。
【0030】
単相同期検出回路202は、電圧検出器5に接続されている。単相同期検出回路202は、系統電圧vs(t)の位相を検出する回路であり、電圧検出器5によって検出された系統電圧フィードバック信号vs(t)を用いて、系統電圧vs(t)の位相に同期した位相同期信号sinωtおよび系統電圧vs(t)の位相から90°遅れた位相の位相同期信号(-)cosωtを出力する。系統電圧フィードバック信号vs1(t)からsinωtを抽出する技術は、周知の回路技術を用いることができる(たとえば、特許第5970208号公報等)。
【0031】
無効電力制御部211、乗算器212および電流制御部221は、電力変換器10が出力する変換器電流ic(t)を、無効電力指令Qrefにもとづいて生成された電流指令irefに追従させる制御を行うブロックである。電流指令irefは、後述するように、無効電流指令および有効電流指令を含むことができるが、上述のブロックでは、このうちの無効電流分である無効電流指令iref’を生成する。
【0032】
無効電力制御部211の入力は、演算器210の出力に接続されている。演算器210の一方の入力は、無効電力検出回路201の出力に接続されている。演算器210の他方の入力には、無効電力指令Qrefが入力される。演算器210は、無効電力指令Qrefと無効電力検出値Qの偏差を出力する。無効電力制御部211は、無効電力指令Qrefと無効電力検出値Qとの偏差を入力して、無効電力検出値Qが無効電力指令Qrefに追従するように無効電流指令Iqrefを生成し、出力する。無効電力制御部211は、たとえばPI制御器である。
【0033】
無効電力制御部211の出力は、乗算器212の一方の入力に接続されている。乗算器212の他方の入力には、位相同期信号cosωtが入力される。位相同期信号cosωtは、単相同期検出回路202によって生成された位相同期信号(-)cosωtを図示しないインバータで反転させて生成される。
【0034】
ここで、本実施形態の無効電力補償装置1が交流系統2から見てコンデンサと等価な無効電力を出力するときに、その無効電力を正とするものとする。そのため、無効電力補償装置1が出力する無効電流は、系統電圧vs(t)に対し位相が90°進むことになる。乗算器212は、無効電流指令Iqrefにcosωtを乗ずることによって、系統電圧vs(t)の位相から90°進んだ位相の電流指令iref’を生成する。つまり、電流指令iref’は、電力変換器10が出力する変換器電流ic(t)の無効電流に対する指令値である。
【0035】
演算器220の一方の入力は、電流検出器6に接続されている。演算器220の一方の入力には、電流検出器6によって検出された変換器電流フィードバック信号ic1(t)が入力される。演算器220の他方の入力は、演算器213を介して、乗算器212の出力に接続されている。演算器220の他方に入力には、乗算器212から出力される電流指令irefが入力される。電流指令irefは、無効電流指令iref’に、後述する有効電流指令Iprefを加算した指令値である。演算器220は、電流指令irefと変換器電流フィードバック信号ic1(t)を入力して、これらの偏差を出力する。
【0036】
演算器220の出力は、電流制御部221の入力に接続されている。電流制御部221は、たとえばPI制御器である。電流制御部221は、変換器電流フィードバック信号ic1(t)が電流指令irefに追従するように制御量を生成し、出力する。電流制御部221が出力する制御量は、演算器222によって、系統電圧フィードバック信号vs1(t)に加算されて、各ユニット12のための電圧指令が生成される。
【0037】
電流制御部221の出力は、演算器222の一方の入力に接続されている。演算器222の他方の入力は、電圧検出器5に接続されている。演算器222は、電流制御部221が生成し、出力する制御量に系統電圧フィードバック信号vs1(t)を加算して出力する。演算器222が出力する信号は、各ユニットに共通する電圧指令とされる。
【0038】
次に、直流偏磁抑制制御のブロックの構成について説明する。
直流偏磁抑制制御のブロックは、単相変圧器3に流れる直流電流成分を0に制御することにより、変圧器のコアの偏磁を防止するために設けられている。直流偏磁抑制制御のブロックは、直流電流成分検出部230および直流偏磁抑制制御部232を含んでいる。このブロックで生成された偏磁抑制電圧指令vdccは、各ユニット12に共通する電圧指令に加算される。
【0039】
直流電流成分検出部230は、電流検出器6に接続されている。直流電流成分検出部230は、変換器電流フィードバック信号ic1(t)を入力して、変換器電流の直流成分を抽出する。直流電流成分検出部230の出力は、演算器231の一方の入力に接続されている。演算器231の他の入力には、“0”が入力されている。演算器231は、変換器電流の直流成分と“0”との偏差を出力する。
【0040】
直流偏磁抑制制御部232は、演算器231の出力に接続されている。直流偏磁抑制制御部232は、たとえばPI制御器であり、変換器電流フィードバック信号ic1(t)の直流成分を0に追従させるように、偏磁抑制電圧指令vdccを生成する。
【0041】
直流偏磁抑制制御部232の出力は、演算器223の一方の入力に接続されている。直流偏磁抑制制御部232によって生成され、出力された偏磁抑制電圧指令vdccは、演算器223の一方の入力に入力される。演算器223の他方の入力には、演算器222の出力が接続されており、ユニット12のための電圧指令vrefが入力される。偏磁抑制電圧指令vdccは、電圧指令vrefに加算されて、単相変圧器3に流れる直流電流を抑制する。
【0042】
次に、有効電流指令Iprefを生成し、出力するブロックの構成について説明する。
直流電圧平均部250、変換器直流電圧制御部252および乗算器253は、交流系統2から取り出す有効電力に応じた有効電流指令Iprefを生成するブロックである。有効電流指令Iprefは、電流指令iref’に加算されて、新たな電流指令irefが生成される。変換器電流ic(t)が、有効電流指令Iprefを含む電流指令irefに追従するように制御されることによって、各ユニット12のコンデンサ104の両端の直流電圧を維持することができる。
【0043】
直流電圧平均部250の入力には、各ユニット12で検出された直流電圧フィードバック信号vdck(t)が入力される。上述したように、kは、1~nの自然数であり、図1の例では、6台分の直流電圧フィードバック信号が入力される。直流電圧平均部250は、全ユニット12の直流電圧vdck(t)の平均値を演算して出力する。
【0044】
直流電圧平均部250の出力は、演算器251の一方の入力に接続されている。演算器251の他方の入力には、各ユニット12共通の直流電圧指令Vdcrefが入力される。演算器251は、全ユニット12の直流電圧フィードバック信号の平均値と各ユニット12共通の直流電圧指令Vdcrefの偏差を出力する。
【0045】
変換器直流電圧制御部252の入力は、演算器251の出力に接続されている。変換器直流電圧制御部252は、全ユニット12の直流電圧の平均値と各ユニット12共通の直流電圧指令Vdcrefの偏差を入力して、全ユニット12の直流電圧の平均値が直流電圧指令Vdcrefに追従するように制御量を出力する。変換器直流電圧制御部252は、たとえばPI制御器である。
【0046】
乗算器253の一方の入力には、変換器直流電圧制御部252の出力が接続されている。乗算器253の他方の入力には、位相同期信号sinωtが入力される。位相同期信号sinωtは、単相同期検出回路202によって生成された系統電圧vs(t)の位相に同期する信号である。乗算器253は、全ユニット12の直流電圧の平均値と各ユニット12共通の直流電圧指令Vdcrefの偏差にもとづいて生成された制御量にsinωtを乗じて出力する。位相同期信号sinωtは、系統電圧vs(t)と同相であり、乗算器253が出力する信号は、全ユニット12の直流電圧の平均値が直流電圧指令Vdcrefに追従するのに必要な有効電力分に応じた有効電流の情報を含んでおり、有効電流指令Iprefとされる。
【0047】
演算器213の一方の入力は、乗算器212の出力に接続されている。演算器213の他方の入力は、乗算器253の出力に接続されている。演算器213の一方の入力には、無効電流指令iref’が入力され、演算器213の他方の入力には、有効電流指令Iprefが入力される。演算器213は、無効電流指令iref’と有効電流指令Iprefを加算して、電流指令irefを出力する。
【0048】
有効電流指令Iprefを生成し、無効電流指令iref’に加算して電流指令irefとすることによって、電力変換器10が出力する変換器電流ic(t)は、所望の無効電流を出力しつつ、電力変換器10と交流系統2と間での有効電力をやりとりすることを可能にする。換言すると、電力変換器10は、有効電流指令Iprefに追従するように、交流系統2から有効電流を供給され、あるいは有効電流を出力することによって、各ユニット12の直流電圧を一定に制御することができる。
【0049】
次に、各ユニット12の直流電圧をユニット12ごとに制御するブロックの構成について説明する。
直流電圧をユニット12ごとに制御するブロックは、ユニットの直流電圧制御部2411および乗算器242を含んでいる。ユニットの直流電圧制御部241および乗算器242は、各ユニット12の直流電圧をユニット12ごとに直流電圧指令Vdcrefに制御し、この例では、生成された制御量を無効電流指令irefの位相に同期する信号として出力する。電流制御部221によって出力された信号に加算することによって、各ユニット12のための電圧指令vrefk(t)を生成し出力するブロックである。このブロックは、各ユニット12の直流電圧を制御するため、ユニット12ごとに設けられている。つまり、n台のユニット12それぞれが電圧指令vref1(t)~vrefn(t)を生成し、出力する。
【0050】
ユニットの直流電圧制御部241の入力は、演算器240の出力に接続されている。演算器240の一方の入力には、k番目のユニット12に設けられた電圧検出器106によって検出された直流電圧フィードバック信号vdck(t)のデータが入力される。演算器240の他方の入力には、各ユニット12共通の直流電圧指令Vdcrefが入力される。演算器240は、直流電圧フィードバック信号vdck(t)と直流電圧指令vdcrefとの偏差を出力し、ユニットの直流電圧制御部241に供給する。
【0051】
ユニットの直流電圧制御部241は、たとえばPI制御器であり、直流電圧vdck(t)が直流電圧指令vdcrefに追従するように制御量を生成し、出力する。
【0052】
ユニットの直流電圧制御部241の出力は、乗算器242の一方の入力に接続されている。乗算器242の他方の入力には、演算器213の出力が接続されている。乗算器242は、ユニットの直流電圧制御部241が生成し、出力する制御量である、そのユニット12に対する電圧指令の補正量である補正電圧指令vadjkに、電流指令irefを乗じて出力する。つまり、乗算器242は、各ユニット12のための補正電圧指令vadjkを、電力変換器10が出力すべき電流の位相に同期した信号にして出力する。補正電圧指令vadjkは、電力変換器10が出力する変換器電流ic(t)と同相であればよいので、乗算器242の他方の入力に入力する信号は、変換器電流フィードバック信号ic1(t)としてもよい。
【0053】
演算器224は、電圧指令vrefに偏磁抑制電圧指令vdccを加算した信号にさらに、電流指令irefの位相に同期した補正電圧指令vadjkを加算して、電圧指令vrefk(t)を出力する。
【0054】
次に、電圧指令vrefk(t)を用いて、ゲート信号GU,GX,GV,GYを生成するブロックの構成例について説明する。
図4に示すように、ゲート信号GU,GX,GV,GYを生成するブロックは、PWM制御部260,262、キャリア信号生成回路264およびゲートロジック回路261,263を含む。
【0055】
PWM制御部260の一方の入力は、図3に示した演算器224の出力に接続されている。PWM制御部260の他方の入力は、キャリア信号生成回路264の出力に接続されている。キャリア信号生成回路264は、キャリア信号vcUXk(t)を出力する。PWM制御部260は、たとえば、2入力のコンパレータ回路を含んでおり、電圧指令vrefk(t)およびキャリア信号vcUXk(t)を比較して、結果をPWM出力として出力する。PWM制御部260は、スイッチング素子103U,103XのためのPWM出力を生成する。
【0056】
PWM制御部262の一方の入力は、図3に示した演算器224の出力に接続されている。PWM制御部262の他方の入力は、キャリア信号生成回路264の出力に接続されている。キャリア信号生成回路264は、キャリア信号vcVYk(t)を出力する。キャリア信号vcVYk(t)は、キャリア信号vcUXk(t)の位相と180°異なる位相を有する信号である。PWM制御部262は、たとえば、2入力のコンパレータ回路を含んでおり、電圧指令vrefk(t)およびキャリア信号vcVYk(t)を比較して、結果をPWM出力として出力する。PWM制御部262は、スイッチング素子103V,103YのためのPWM出力を生成する。
【0057】
ゲートロジック回路261は、スイッチング素子103U,103Xが同時にオンしないようにゲート回路102U,102Xおよびスイッチング素子103U,103Xの特性等を考慮してオンオフのタイミングを調整して、ゲート信号GU,GXを生成し、出力する。ゲートロジック回路263は、スイッチング素子103V,103Yが同時にオンしないようにゲート回路102V,102Yおよびスイッチング素子103V,103Yの特性等を考慮してオンオフのタイミングを調整して、ゲート信号GV,GYを生成し、出力する。
【0058】
図5は、本実施形態の無効電力補償装置の動作を説明するための模式的な動作波形図である。
図5の1段目の動作波形は、電圧軸(縦軸)の基準を合わせた状態で、電圧指令vrefk(t)と、キャリア信号vcUXk(t),vcVYk(t)の時間変化を示している。
図5の2段目から5段目の動作波形は、ゲートロジック回路261,263が生成し出力するゲート信号GU,GX,GV,GYの時間変化を示している。
図5の最下段の動作波形は、図2に示した単相ブリッジ回路の出力(端子12a,12b間)の電圧vok(t)を示している。
なお、キャリア信号生成回路264が生成するキャリア信号は、ユニット12ごとに位相を変えて生成され、図5の1段目の動作波形には、他のユニット12のキャリア信号の波形も同時に示されている。
また、図5の2段目から5段目のゲート信号GU,GX,GV,GYについては、表示の煩雑さを回避するためにデッドタイムを省略して示している。
【0059】
図5に示すように、電圧指令vrefk(t)とキャリア信号vcUXk(t),vcVYk(t)との比較結果により、ゲート信号GU,GX,GV,GYが生成されている。そして、ユニット12の出力の電圧vok(t)は、ゲート信号GU,GX,GV,GYに応じて出力されている。時刻t1から時刻t2までが、1/2周期であり、時刻t2から時刻t3が1/2周期であり、図5では、1周期分のユニット12が出力する電圧vok(t)の波形が示されている。電力変換器10では、ユニット12の台数に応じてキャリア信号の位相が異なる電圧が出力され、多重化されて、出力される。
【0060】
本実施形態の無効電力補償装置1の動作について説明する。
図6(a)は、本実施形態の無効電力補償装置の動作を説明するための模式的な等価回路図である。
図6(b)、図7(a)および図7(b)は、本実施形態の無効電力補償装置の動作を説明するための模式的なベクトル図である。
図6(a)には、図1に示した、交流系統2、単相変圧器3および電力変換器10の接続状態を、簡易的な等価回路で表した図が示されている。図6(a)では、図1の交流系統2は、系統電圧vsを生成し、図1の単相変圧器3は、漏れインダクタンスXを有し、図1の電力変換器10は、変換器電圧vcを出力している。
図6(a)に示すように、漏れインダクタンスXの両端に印加される電圧ΔVは、漏れインダクタンスXによるインピーダンスjXと漏れインダクタンスに流れる変換器電流icとの積に等しい。
図6(b)は、図6(a)の等価回路図における各電圧をベクトル図で示している。
つまり、図6(b)に示すように、電力変換器10が出力する変換器電圧vc(t)は、系統電圧vs(t)にΔVをベクトル加算したものである。
【0061】
図7(a)は、ΔVと、電力変換器10が出力する変換器電流icの関係を表したベクトル図である。
図7(a)に示すように、電力変換器10は、ΔVから90°位相が遅れた電流を出力するので、変換器電流icは、ΔVに直交するベクトルとなる。変換器電流icは、無効電流成分および有効電流成分を含んでいる。ここで、ΔVは、無効電力に対応する電圧成分ΔVpおよび有効電力に対応する電圧成分ΔVqを含んでいる。
【0062】
変換器電流icのうち無効電流成分Iqは、ΔVqおよび漏れインダクタンスXで表すことができ、Iq=ΔVq/Xと表すことができる。無効電流成分Iqは、系統電圧vs(t)の位相に対して90°進んだベクトルで表される。
【0063】
変換器電流icのうち有効電流成分Ipは、ΔVpおよび漏れインダクタンスXで表すことができ、Ip=ΔVp/Xと表すことができる。有効電流成分Ipは、系統電圧vs(t)と同相のベクトルで表される。
【0064】
無効電流成分Iqは、図3に関連して説明した無効電力制御部211および乗算器212によって生成された電流指令iref’に追従させる変換器電流ic(t)の無効電流に相当する。
【0065】
有効電流成分Ipは、図3に関連して説明した変換器直流電圧制御部252および乗算器253によって生成された有効電流指令Iprefに追従させる変換器電流ic(t)の有効電流に相当する。
【0066】
つまり、本実施形態の無効電力補償装置1では、交流系統2における無効電力検出値Qにもとづいて無効電流指令Iqrefを演算して、無効電流指令Iqrefを交流系統2の電圧位相に対して90°進めるように乗算器212でcosωtを乗じて電流指令iref’を算出する。
【0067】
また、各ユニット12の直流電圧の平均値にもとづいて有効電流指令iref’’を演算して、有効電流指令iref’’を系統電圧vs(t)の位相と同じ位相となるように、乗算器253でsinωtを乗じて有効電流指令Iprefを算出する。
【0068】
演算器213によって、電流指令iref’および有効電流指令Iprefは、加算されて電流指令irefが生成される。電力変換器10は、電流指令irefに追従するように変換器電流ic(t)を出力する。
【0069】
図7(b)は、図1の例の場合の電力変換器10の出力を各ユニット12でどのように分担して出力するのかを示した図である。
図7(b)に示すように、図1の例では、電力変換器10を構成するユニット12は、6台あり、変換器電圧vc(t)は、6台のユニット12が出力する電圧Vo1~Vo6のベクトル和である。図7(b)には、各ユニット12が出力する電圧Vokは、有効電力に相当する成分および無効電力に相当する成分が合わせて示されている。系統電圧に平行な成分が無効電力成分に相当し、系統電圧に直交する成分が有効電力に相当する。
【0070】
電圧Vo1~Vo3、Vo5およびVo6では、有効電力成分に相当する成分が、右向きの矢印とされており、電圧Vo4では、有効電力成分に相当する成分が左向きとされている。この例では、電圧Vo1~Vo3、Vo5およびVo6を出力している5台のユニット12は、交流系統2から有効電力を供給されていることを表している。電圧Vo4を出力しているユニット12は、交流系統2に有効電力を吐き出していることを表している。
【0071】
図3に関連して説明したように、ユニット12ごとに直流電圧制御がされており、コンデンサ104の両端の電圧が低下しているときには、交流系統2から有効電力を供給されるように、補正電圧指令vadjkを調整する。また、コンデンサ104の両端の電圧が上昇しているときには、交流系統2に有効電力を吐き出すように補正電圧指令vadjkを調整する。つまり、コンデンサ104の両端電圧を上昇させるか下降させるかによって、補正電圧指令vadjkの補正方向を逆方向にすることによって、各ユニット12の直流電圧を制御しつつ、変換器電圧vc(t)を出力することができる。
【0072】
図8(a)~図9(b)は、本実施形態の無効電力補償装置のシミュレーションによる模式的な動作波形の例である。
図8(a)~図9(b)では、縦軸は、相対値で示されている。
図8(a)は、系統電圧vs(t)、変換器電圧vc(t)および変換器電流ic(t)の時間変化を表している。図8(a)に示すように、変換器電圧vc(t)は、系統電圧vs(t)と同相の電圧が出力されている。シミュレーション回路では、単相変圧器と電力変換器との間に、制御動作検証のため、意図的に直流電圧源を接続してあり、その直流電圧を打ち消して直流電流成分が流れないようにするため、変換器電圧vc(t)は、直流偏磁抑制制御によって、系統電圧vs(t)よりも正側にシフトされている。変換器電流ic(t)は、系統電圧vs(t)の位相よりも90°進んだ位相が再現されている。
【0073】
図8(b)は、3台分のユニット12の直流電圧の変化分に相当する信号の時間変化を示している。
図8(b)に示すように、カスケード接続された各ユニット12は、キャリア信号の位相をずらしながらスイッチング動作しており、変換器全体として、周波数が高くなっている。各ユニットの電圧変動は、ほぼ同レベルであること、また、変動の中心が0になるように制御されている様子が再現されている。
【0074】
図9(a)は、電流指令irefおよび変換器電流ic(t)の時間変化を示している。
図9(a)に示すように、変換器電流ic(t)は、変換器制御装置20によって生成された電流指令irefに追従するように制御されることが再現されている。
【0075】
図9(b)は、変換器電流フィードバック信号ic1(t)に含まれる直流電流成分を表しており、図3の直流電流成分検出部230の出力を観測した波形である。この図の縦軸に目盛りはないが、変換器電流の0.1%以下の直流電流成分が変換器電流ic(t)に重畳されている。図8(a)においては、このような微小な直流電流をキャンセルするように直流偏磁抑制制御が機能していることが再現されている。
【0076】
このようにして、本実施形態の無効電力補償装置1は動作することができる。
【0077】
本実施形態の無効電力補償装置1の効果について説明する。
本実施形態の無効電力補償装置1では、単相変圧器3の1次側が単相交流からなる交流系統2に接続され、その単相変圧器3の2次側にカスケード接続されたユニット12を接続することによって、単相交流の交流系統2に接続することができる。
【0078】
変換器制御装置20は、単相同期検出回路202を有しており、単相同期検出回路202によって、系統電圧に直交する信号を生成することができる。そのため、系統電圧に直交する信号に同期するように、無効電流指令irefを生成することができ、無効電流指令irefに追従するように電圧指令を生成することによって、単相交流の交流系統2に必要な無効電力を供給することができる。
【0079】
本実施形態の無効電力補償装置1では、単相同期検出回路202によって、系統電圧に同期する信号を生成することができる。そのため、系統電圧に同期するように、有効電流指令Iprefを生成することができ、有効電流指令Iprefに追従するように電圧指令を生成することによって、単相交流の交流系統2との間で有効電力を授受することができ、ユニット12内の直流電圧を安定化することができる。
【0080】
本実施形態の無効電力補償装置1では、ユニット12ごとに、直流電圧を検出し直流電圧指令に追従するように制御する。ユニット12ごとの直流電圧制御のための補正電圧指令vadjkは、電力変換器10が出力する電流の位相に同期した信号とする。電力変換器10が出力する変換器電流ic(t)は、無効電流成分に加え、上述のように有効電流成分も含むことができる。そのため、ユニット12の直流電圧の大きさに応じて、有効電流を出し入れすることができ、各ユニット12で安定して直流電圧を維持することができる。
【0081】
(第2の実施形態)
図10は、本実施形態に係る無効電力補償装置を例示する模式的なブロック図である。
本実施形態では、上述した第1の実施形態の無効電力補償装置1を3相交流の交流系統に適用する。
図10に示すように、本実施形態の無効電力補償装置1001は、電力変換器10a,10b,10cと変換器制御装置1020と、を備える。電力変換器10aは、単相変圧器3aの2次側に接続されている。単相変圧器3aの1次側は、3相交流の交流系統1002のU相1002aおよびV相1002bの線間に接続されている。電力変換器10bは、単相変圧器3bの2次側に接続されている。単相変圧器3bの1次側は、交流系統1002のV相1002bおよびW相1002cの線間に接続されている。電力変換器10cは、単相変圧器3cの2次側に接続されている。単相変圧器3cの1次側は、交流系統1002のW相1002cおよびU相1002aの間に接続されている。3台の単相変圧器3a~3cの1次側は、Δ結線されている。
【0082】
この例では、交流系統1002と単相変圧器3aとの間、交流系統1002と単相変圧器3bとの間、交流系統1002と単相変圧器3cとの間には、遮断器7が設けられている。
【0083】
交流系統2と単相変圧器3aとの間には、交流系統2と単相変圧器3aとの間に流れる電流を検出するように電流検出器4aが設けられ、電流検出器4aは、交流電流フィードバック信号is1(t)を出力する。単相変圧器3aと電力変換器10との間には、単相変圧器3と電力変換器10との間に流れる電流を検出するように電流検出器6aが設けられ、電流検出器6aは、変換器電流フィードバック信号ic1(t)を出力する。
【0084】
電流検出器4b,6bについても上述と同様に、交流電流フィードバック信号is2(t)および変換器電流フィードバック信号ic2(t)を出力する。電流検出器4c,6cについても上述と同様に、交流電流フィードバック信号is3(t)および変換器電流フィードバック信号ic3(t)を出力する。
【0085】
電圧検出器1005は、交流系統1002の各相に接続され、各相の、相電圧vsU(t)、vsV(t)、vsW(t)を検出し、各相の線間電圧を出力する。
【0086】
電力変換器10a~10cの構成は、第1の実施形態の電力変換器10の構成と同じである。変換器制御装置1020の構成は、各相ごとに設けられ、各相のための構成は、第1の実施形態の場合の変換器制御装置20の構成と同一とすることができる。たとえば、変換器制御装置1020では、各相に対応する制御ブロックは、同一の筐体に収納される。各相ごとに制御ブロックが別々の筐体に収納されてもよい。本実施形態では、各相の電力変換器10a~10cが、相ごとに制御される。なお、無効電力指令Qrefおよび直流電圧指令Vdcrefは、各相に共通のデータとして用いられる。
【0087】
本実施形態の無効電力補償装置1001は、各相ごとに上述した第1の実施形態の場合の無効電力補償装置1と同様に動作することができる。
【0088】
本実施形態の無効電力補償装置1001の効果について説明する。
本実施形態の無効電力補償装置1001は、各相の構成が第1の実施形態の場合の無効電力補償装置1と同じであり、同様の効果を奏する。すなわち、各相の電力変換器10a~10cを単相変圧器3a~3cの2次側にそれぞれ直接接続することができる。
【0089】
従来、MMC方式を採用した無効電力補償装置では、3相変圧器の2次側で各相の電力変換器をΔ結線する場合が多い。電力変換器をΔ結線した場合には、ユニットの直流電圧制御のために、電力変換器内を循環する循環電流を流す必要がある。電力変換器の各相を構成するユニットが出力する電圧は、ステップ状に変化し、また、電力変換器の相間で出力電圧に差が生じ得るので、相間の循環電流を所望の値に制御するために、各相の電力変換器は、リアクトルを介して、3相変圧器に接続する必要がある。そのため、リアクトルを各相に設けることとなるが、変換器出力を大容量化する場合に、リアクトルの大型化が顕著となり、設置スペースの増大や、コストの上昇に加え、リアクトルによる電力損失も懸念されている。
【0090】
また、MMC方式を採用した無効電力補償装置では、各相の電力変換器をスター結線で接続する構成も考えられるが、スター結線とすると、循環電流を用いたユニットの直流電圧制御が電流経路不在により適用できないので、系統電圧不平衡時に無効電流指令の範囲に制約を受ける問題を生じ得る。本問題を解消するために、スター結線の中性点電圧(零相電圧)に系統周波数の電圧を重畳する方法が知られているが、実現のためには各相のユニットの直列段数を増加させる必要があり、電力変換器の大型化やコスト増大が懸念される。
【0091】
本実施形態の無効電力補償装置1001では、単相変圧器3a~3cの1次-2次間に存在する漏れインダクタンスを介して各相の電力変換器10a~10c同士が接続されるため、上述のとおり、単相変圧器3a~3cに各相の電力変換器10a~10cを外付けのリアクトルを介することなく直接接続することができる。また、上述のようなスター結線に特有の問題を生じることがない。
【0092】
また、本実施形態の無効電力補償装置1001では、従来の3相交流系統に接続する無効電力補償装置のように、制御パラメータ等の演算にDQ変換等の回転座標変換を用いる必要がない。そのため、第1の実施形態において説明した単相交流のための構成をそのまま流用し、3相交流系統接続に対応した無効電力補償装置とすることができる。
【0093】
さらに、本実施形態の無効電力補償装置1001では、3相交流系統の相ごとに無効電力補償をすることができるので、不平衡な3相交流系統にそのまま接続して、異なる無効電力をそれぞれ補償することができる。
【0094】
その他、第1の実施形態の場合と同様の効果を奏する。すなわち、単相同期検出回路202によって生成された位相同期信号を用いることによって、無効電流指令および有効電流指令を含む電流指令を生成することができ、必要な無効電流を出力するとともに、ユニットの直流電圧を安定化する制御を容易に行うことができる。
【0095】
(第3の実施形態)
図11は、本実施形態に係る無効電力補償装置を例示する模式的なブロック図である。
図11に示すように、本実施形態の無効電力補償装置2001は、第2の実施形態の場合の3相交流の各相に対応して設けられた単相変圧器に代えて、オープンデルタ変圧器2003を介して、交流系統1002に接続される。本実施形態の無効電力補償装置2001では、他の構成は、第2の実施形態の場合と同じであり、同一の構成要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略する。
【0096】
オープンデルタ変圧器2003は、1次側で、交流系統1002の各相、すなわちU相1002a、V相1002bおよびW相1002cに接続される。オープンデルタ変圧器2003の2次側は、U相に対応する単相巻線が電力変換器10aに接続され、V相に対応する単相巻線が電力変換器10bに接続され、W相に対応する単相巻線が電力変換器10cに接続される。
【0097】
図12(a)は、第3の実施形態の無効電力補償装置に接続される3相変圧器の模式的な等価回路図である。図12(b)は、比較例の無効電力補償装置に接続される3相変圧器の模式的な等価回路図である。
図12(a)は、本実施形態のオープンデルタ変圧器2003の等価回路を模式的に示している。図12(b)は、比較のために、Δ-Δ結線の3相変圧器1003の模式的な等価回路を示している。
図12(a)に示すように、オープンデルタ変圧器2003の1次側は、3相の3つの端子は、3相交流の各相に接続される。U相に接続される巻線は、一方がU端子を介してU相に接続される。U相に接続される他方の巻線は、V端子に接続されている。V相に接続される巻線の一方は、V端子を介してV相に接続される。V相に接続される他方の巻線は、W端子に接続されている。W相に接続される巻線は、一方がW端子を介して、W相に接続される。W相に接続される他方の巻線は、U端子に接続されている。つまり、1次側の3つ巻線は、Δ結線されている。
【0098】
オープンデルタ変圧器2003の2次側の巻線は、それぞれ独立して設けられていおり、互いに絶縁されている。すなわち、U相に接続される1次巻線に磁気結合された2次巻線は、端子u1,u2に接続されている。V相に接続される1次巻線に磁気結合された2次巻線は、端子v1,v2に接続されている。W相に接続される1次巻線に磁気結合された2次巻線は、端子w1,w2に接続されている。端子u1,u2の端子対、端子v1,v2の端子対および端子w1,w2の端子対は、それぞれ絶縁されている。端子対u1,u2には、電力変換器10aが接続され、端子対v1,v2には、電力変換器10bが接続され、端子対w1,w2の端子対には、電力変換器10cが接続される。
【0099】
比較例の3相変圧器1003は、1次側は、オープンデルタ変圧器2003と同じ端子であり、内部接続されている。2次側は、1次側と同様にΔ結線されている。
【0100】
本実施形態の無効電力補償装置2001の効果について説明する。
3相変圧器をオープンデルタ変圧器2003とすることによって、単相変圧器を3台設置する場合よりも設置スペースを削減することが可能になる。したがって、本実施形態の無効電力補償装置2001では、第2の実施形態の場合と同様の効果を有し、加えて、オープンデルタ変圧器2003に接続できることにより、設置した場合のシステム全体の占有面積を削減することができ、変圧器を含めたシステム全体として、小型化、省スペース化を図ることができる。
【0101】
(第4の実施形態)
図13は、本実施形態の無効電力補償装置の一部を例示する模式的なブロック図である。
本実施形態では、変換器制御装置2020の構成が、第2、第3の実施形態の場合と相違する。他の構成要素は、第2、第3の実施形態の場合と同じであり、同一の構成要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略する。本実施形態における変換器制御装置2020は、第2あるいは第3の実施形態の変換器制御装置1020を置き換えて適用することができる。
図13に示すように、変換器制御装置2020は、零相電流指令i0を生成するブロック1021を含む。このブロック1021は、各相の直流電圧平均部250a~250cによって演算された、各相の電力変換器10a~10cを構成するユニット12の直流電圧の平均値を入力する。直流電圧平均部250aは、U相に対応した電力変換器10aのユニット12の直流電圧の平均値を演算する。直流電圧平均部250bは、V相に対応した電力変換器10bのユニット12の直流電圧の平均値を演算する。直流電圧平均部250cは、W相に対応した電力変換器10cのユニット12の直流電圧の平均値を演算する。
【0102】
零相電流指令i0を生成するブロック1021は、各相のユニット12の直流電圧の平均値を入力し、3つの平均値にもとづいて、零相電流指令i0を生成する。生成された零相電流指令i0は、演算器213によって電流指令iref’および有効電流指令Iprefに加算されて、電流指令irefとされる。
【0103】
零相電流指令i0を生成するブロック1021は、最大値選択部1022、平均値演算部1023、零相電流指令生成部1025および乗算器1027を含む。
【0104】
最大値選択部1022の入力は、各相の直流電圧平均部250a~250cの出力に接続されている。最大値選択部1022は、各相の直流電圧の平均値のうち、最大値を選択して出力する。
【0105】
平均値演算部1023の入力は、各相の直流電圧平均部250a~250cの出力に接続されている。平均値演算部1023は、各相の直流電圧の平均値の各相間の平均値を演算して出力する。
【0106】
演算器1024の一方の入力は、最大値選択部1022の出力に接続されている。演算器1024の他方の入力は、平均値演算部1023の出力に接続されている。演算器1024は、各相の直流電圧のうちの最大値と各相の直流電圧の平均値の各相間の平均値との偏差を演算して出力する。
【0107】
零相電流指令生成部1025の入力は、演算器1024の出力に接続されている。零相電流指令生成部1025は、たとえばPI制御器であり、各相の直流電圧のうちの最大値が各相の直流電圧の平均値の各相間の平均値に追従するように制御量を生成し、出力する。
【0108】
乗算器1027の一方の入力は、零相電流指令生成部1025の出力に接続されている。乗算器1027の他方の入力は、切替器1026の出力に接続されている。
【0109】
切替器1026は、3つの入力を切り替えて出力する。切替器1026の3つの入力には、交流系統1002の各相、すなわちU相1002a、V相1002bおよびW相1002cの位相を反転させた位相を有する位相同期信号が入力される。これらの位相同期信号は、U相に対応する(-)sinωt、V相に対応する(-)sin(ωt-120°)およびW相に対応する(-)sin(ωt-240°)である。
【0110】
切替器1026は、最大値選択部1022によって選択された最大値の相を選択する。最大値選択部1022がU相の直流電圧を最大値として選択した場合には、切替器1026は、位相同期信号(-)sinωtを出力するように切り替える。最大値選択部1022がV相の直流電圧を最大値として選択した場合には、切替器1026は、位相同期信号(-)sin(ωt-120°)を出力するように切り替える。最大値選択部1022がW相の直流電圧を最大値として選択した場合には、切替器1026は、位相同期信号(-)sin(ωt-240°)を出力するように切り替える。
【0111】
乗算器1027は、零相電流指令生成部1025によって生成され出力された操作量を切替器1026から出力された位相同期信号に同期した信号にして出力する。乗算器1027から出力された信号は、零相電流指令i0とされる。
【0112】
本実施形態の無効電力補償装置の動作について説明する。
本実施形態の無効電力補償装置では、変換器制御装置2020は、U相~W相各相のユニット12の直流電圧の平均値のうち、最大値を有する相について、直流電圧の平均値がこの最大値を含めた3相分の直流電圧の平均値に追従するように、零相電流指令i0を生成する。この零相電流指令i0は、直流電圧が最大となっている相の有効電流指令の大きさを減少させ、減少させた有効電流を他相に配分させる。
【0113】
たとえば、交流系統1002が不平衡状態の場合に、無効電力補償装置は、ある相の出力が大きく設定され、他相の出力がそれに比べて小さく設定されることによって、不平衡状態を平衡させようと動作する。このときに、出力が小さい相の電力変換器では、変換器損失が小さいため、ユニット12の直流電圧が高くなる傾向にある。本実施形態では、そのような状態にある相を検出し、その相の電圧位相とは180°異なるように零相電流指令i0を有効電流指令Iprefに加算することによって、その相の有効電流を低減させることができる。他相では、120°ずつ位相がずれた零相電流指令i0が有効電流指令Iprefに加算されるので、他相における有効電流指令は増加する。
【0114】
上述の動作は、電力変換器10a~10c間で相互に有効電流の調整を行うので、交流系統1002に影響を与えることなく各相の直流電圧の間のバランスを調整することができる。
【0115】
本実施形態の無効電力補償装置の効果について説明する。
本実施形態の無効電力補償装置では、第2、第3の実施形態の場合と同様の効果に加え、変換器制御装置2020が零相電流指令i0を生成するブロックを有するので、各相のユニット12の直流電圧の平均値にアンバランスが生じた場合であっても、交流系統1002に影響を与えることなく、ユニット12の直流電圧の平均値の相間のアンバランスを解消することができる。ユニット12の直流電圧の平均値の相間のバランスを維持するように制御することによって、ユニット12の電力損失等の相間アンバランスを解消すること、ユニット12の許容電力等を最適化することができ、装置全体の小型化、省スペース化等を実現することが可能になる。
【0116】
このようにして、電力系統の種類を問わずに接続することができるMMC方式の無効電力補償装置が実現される。
【0117】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0118】
1,1001,2001 無効電力補償装置、2,1002 交流系統、3,3a,3b,3c 単相変圧器、4,4a,4b,4c,6,6a,6b,6c 電流検出器、5,1005 電圧検出器、10,10a,1b,10c 電力変換器、12 変換器ユニット(ユニット)、20,1020,2020 変換器制御装置、101 ユニット制御回路、102U,102V,102X,102Y ゲート回路、103U,103V,103X,103Y スイッチング素子、104 コンデンサ、105 制御電源回路、201 無効電力検出回路、202 単相同期検出回路、211 無効電力制御部、212,242,253 乗算器、221 電流制御部、230 直流電流成分検出部、232 直流偏磁抑制制御部、241 ユニットの直流電圧制御部241、250,250a,250b,250c 直流電圧平均部、252 変換器直流電圧制御部、260,262 PWM制御部、261,263 ゲートロジック回路、264 キャリア信号生成回路、1021 零相電流指令を生成するブロック、1022 最大値選択部、1023 平均値演算部、1025 零相電流指令生成部、1026 切替器、1027 乗算器、2003 オープンデルタ変圧器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13