(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055815
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】車両用車軸装置、及び車両用車軸装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60G 11/20 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
B60G11/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163461
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】520378469
【氏名又は名称】一般社団法人モバイルユニット普及協会
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】奥村 靖
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA04
3D301AA69
3D301AA85
3D301AA88
3D301AA89
3D301DA11
(57)【要約】
【課題】車両のローリングを抑える機能を維持しつつ、軽量化した構造の車両用車軸装置、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】車両用車軸装置1は、軸線Cに沿って延びるシャフト10と、シャフト10の外周を覆う弾性部材4と、シャフト10、及び弾性部材4を覆う外側ハウジング5を備える。シャフト10は、第一方向の側の端部をシャフト第一端部20aとし、第二方向の側の端部をシャフト第二端部20bとする。シャフト第一端部20aが外側ハウジング5よりも突出し、シャフト10の内部は、シャフト第二端部20bからシャフト第一端部20aに向かう凹みであるシャフト凹部7を有する。外側ハウジング5を車体に固定し、シャフト10に回転力が加わるとき、シャフト10が回転し、外側ハウジング5とシャフト10との間は、弾性部材4が弾性変形してねじれが発生する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体に取り付けて使用する車両用車軸装置であって、
軸線に沿って延びるシャフトと、
前記シャフトの外周を覆う弾性部材と、
前記シャフト、及び前記弾性部材を覆う外側ハウジングを備え、
前記軸線の方向のうちの一方を第一方向、他方を第二方向とし、
前記シャフトは、前記第一方向の側の端部をシャフト第一端部とし、前記第二方向の側の端部をシャフト第二端部とし、
前記シャフト第一端部が前記外側ハウジングよりも突出し、
前記シャフトの内部は、前記シャフト第二端部から前記シャフト第一端部に向かう凹みであるシャフト凹部を有し、
前記外側ハウジングを前記車体に固定し、前記シャフトに回転力が加わるとき、
前記外側ハウジングと前記シャフトとの間は、前記弾性部材が弾性変形してねじれが発生する車両用車軸装置。
【請求項2】
前記シャフト凹部は、前記シャフト第二端部から前記シャフト第一端部まで貫通する開口である請求項1に記載の車両用車軸装置。
【請求項3】
前記シャフト凹部は、前記軸線を中心とする円柱状、円錐状、角柱状、又は角錐状であって、
前記シャフト凹部において、前記軸線に交差する方向に対向する寸法である内側寸法は、前記シャフト第二端部が、前記第一方向の側の端部よりも大きい請求項1又は2に記載の車両用車軸装置。
【請求項4】
前記シャフトは、前記軸線に沿って延びるシャフトコアと、前記シャフトコアの外周を覆う内側ハウジングとからなり、
前記シャフトコアにおいて、前記第二方向の側の端部をシャフトコア第二端部とし、
前記内側ハウジングにおいて、前記第一方向の側の端部は内側第一端部であり、前記第二方向の側の端部は前記シャフト第二端部であり、
前記シャフトコアは、
前記第一方向の側の端部が、前記シャフト第一端部であり、
前記シャフトコア第二端部が、前記内側ハウジングの内側にあって、前記内側第一端部から前記第二方向へ所定長さ隔てた位置と前記シャフト第二端部との間にあり、
前記シャフトコアの少なくとも一部と前記内側ハウジングとが接合し、前記シャフトコアと、前記内側ハウジングとが一体となって前記シャフトを形成する請求項1から3のいずれかに記載の車両用車軸装置。
【請求項5】
前記シャフトコアは、前記内側第一端部と前記シャフト第二端部との間の範囲の少なくとも一部において、前記軸線の方向に連続するリブ部を有し、
前記リブ部は、前記軸線に交差する方向の断面において、前記軸線を通り前記内側ハウジングに向かって延びる軸交差線に沿って延び、前記リブ部の先端が前記内側ハウジングと接合する請求項4に記載の車両用車軸装置。
【請求項6】
前記シャフトコアは、前記シャフトコア第二端部から前記シャフト第一端部に向かう凹みであるシャフトコア凹部を備える請求項4に記載の車両用車軸装置。
【請求項7】
前記シャフト凹部は、前記シャフトコア第二端部から前記シャフト第一端部まで貫通する開口である請求項6に記載の車両用車軸装置。
【請求項8】
前記シャフトコア第二端部は、前記シャフト第二端部よりも前記内側第一端部に近い位置にある請求項4から7のいずれかに記載の車両用車軸装置。
【請求項9】
前記シャフトコア第二端部は、前記内側第一端部よりも前記シャフト第二端部に近い位置にあって、
前記シャフトコアは、前記内側第一端部から前記シャフトコア第二端部との間に渡って、前記内側ハウジングと接合する請求項4から7のいずれかに記載の車両用車軸装置。
【請求項10】
前記シャフト凹部の少なくとも一部は、炭素繊維を含む樹脂材からなる充填部材を備え、
前記外側ハウジングを前記車体に固定し、前記シャフトに回転力が加わるとき、
前記充填部材と一体となった前記シャフトが回転する請求項1から9のいずれかに記載の車両用車軸装置。
【請求項11】
前記シャフト凹部の少なくとも一部は、軽金属を含み鉄よりも比重が小さい金属からなる充填部材を備え、
前記外側ハウジングを前記車体に固定し、前記シャフトに回転力が加わるとき、
前記充填部材と一体となった前記シャフトが回転する請求項1から9のいずれかに記載の車両用車軸装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の車両用車軸装置の製造方法であって、
前記シャフトの内部において、前記シャフト凹部に、前記充填部材を充填するための型である充填部材型を使用し、前記シャフトの外周を前記充填部材型に固定し、前記充填部材型を加熱しながら、前記充填部材を前記シャフト凹部に充填する工程と、
前記シャフトの外周に前記弾性部材を具備して内側ユニットを形成する工程と、
前記内側ユニットを前記外側ハウジングに挿入して固定する工程からなる車両用車軸装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のローリングを適切に調整するための車両用車軸装置、及び車両用車軸装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のローリングを抑えるための車軸装置が提案されていた。例えば、特許文献1のねじり力ブッシング装置は、
図21(特許文献1における
図2に相当する)に示すように、ほぼ正方形の横断面の主部分51とほぼ円筒形の端部52とを有する細長い内側部材50を備えている。複数の正方形のエラストマーブッシング53が主部分51上に配置されかつ正方形の外側ハウジング54が装置を囲んでいる。リンクアーム(図示せず)が内側部材の端部52と連結されかつ車輪組立体を支持するためのスピンドル(図示せず)がリンクアームと連結されている。
【0003】
これによれば、運転中に、タイヤが道路による力および衝撃をうけるときに、スピンドルおよびリンクアームが内側部材50を好適に回転させ、それにより内側部材50が力または衝撃をエラストマーブッシング53の内面に伝達する。そのときに、エラストマーブッシング53が内側部材50と外側ハウジング54との間で圧縮される。力または衝撃が増大すると、エラストマーブッシング53の圧縮も同様に増大する。従って、ねじり力ブッシング装置が道路による力および衝撃を吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来例では、主部分51は金属で形成されることが好ましく、しかも外側ハウジング54の全長に渡っているため、装置全体の重量が大きくなるという問題があった。すなわち、
図21に示すように、従来例では内側部材50が外側ハウジング54の端部54aにまで存在するため、装置全体の重量を重くする大きな要因であった。これは、車両の運転を低燃費で行おうとしたときの障害となり、問題があった。特に電気自動車においては車両の軽量化が要求されるが、従来の装置では対応できないという問題がある。なお、説明のため、
図21に示す要素の符号は、特許文献1に記載の符号と異なっているが、ここで使用した要素の名称は特許文献1と同様である。
【0006】
本発明の目的は、従来の課題を解決すべくなされたものであり、車両のローリングを抑える機能を維持しつつ、軽量化した構造の車両用車軸装置、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に係る車両用車軸装置は、車両の車体に取り付けて使用する車両用車軸装置であって、軸線に沿って延びるシャフトと、前記シャフトの外周を覆う弾性部材と、前記シャフト、及び前記弾性部材を覆う外側ハウジングを備え、前記軸線の方向のうちの一方を第一方向、他方を第二方向とし、前記シャフトは、前記第一方向の側の端部をシャフト第一端部とし、前記第二方向の側の端部をシャフト第二端部とし、前記シャフト第一端部が前記外側ハウジングよりも突出し、前記シャフトの内部は、前記シャフト第二端部から前記シャフト第一端部に向かう凹みであるシャフト凹部を有し、前記外側ハウジングを前記車体に固定し、前記シャフトに回転力が加わるとき、前記外側ハウジングと前記シャフトとの間は、前記弾性部材が弾性変形してねじれが発生する。
【0008】
これによれば、シャフトはシャフト凹部を有するので、シャフトの重量を軽減することができる。また、弾性部材によってねじれが発生するので、車両用車軸装置は、軽量化とローリングを抑える機能とを兼ね備えることができる。
【0009】
また、前記車両用車軸装置は、前記シャフト凹部が前記シャフト第二端部から前記シャフト第一端部まで貫通する開口でもよい。この場合、シャフトをさらに軽量化でき、車両用車軸装置を軽量化できる。
【0010】
また、前記車両用車軸装置は、前記シャフト凹部が、前記軸線を中心とする円柱状、円錐状、角柱状、又は角錐状であって、前記シャフト凹部において、前記軸線に交差する方向に対向する寸法である内側寸法は、前記シャフト第二端部が、前記第一方向の側の端部よりも大きくてもよい。
【0011】
この場合、シャフトは、シャフト凹部を軸線の方向に深く形成する際に、回転力を直接受ける第一方向の側の端部に近いほどシャフト凹部の内側寸法が小さいので、強度と剛性を維持できる。逆に、シャフト第二端部に近づくにつれてシャフトコアに加えられた回転力の影響が軽減されるので、シャフト凹部の内側寸法が大きくても強度と剛性を維持できる。
【0012】
また、前記車両用車軸装置は、前記シャフトが、前記軸線に沿って延びるシャフトコアと、前記シャフトコアの外周を覆う内側ハウジングとからなり、前記シャフトコアにおいて、前記第二方向の側の端部をシャフトコア第二端部とし、前記内側ハウジングにおいて、前記第一方向の側の端部は内側第一端部であり、前記第二方向の側の端部は前記シャフト第二端部であり、前記シャフトコアは、前記第一方向の側の端部が、前記シャフト第一端部であり、前記シャフトコア第二端部が、前記内側ハウジングの内側にあって、前記内側第一端部から前記第二方向へ所定長さ隔てた位置と前記シャフト第二端部との間にあり、前記シャフトコアの少なくとも一部と前記内側ハウジングとが接合し、前記シャフトコアと、前記内側ハウジングとが一体となって前記シャフトを形成してもよい。
【0013】
この場合、シャフトコア第二端部は、内側ハウジングの内側にあって、内側第一端部から第二方向へ所定長さ隔てた位置とシャフト第二端部との間にある。よって、少なくともシャフトコア第二端部とシャフト第二端部との間の分の体積はシャフトコアの重量を軽減できる。また、シャフトコアの少なくとも一部と内側ハウジングとが接合するので、シャフトコアと内側ハウジングとが一体となってシャフトとなる。車両にローリングが発生したときに、シャフトと外側ハウジングとの間で弾性部材が弾性変形するねじれによる吸収効果により、適切に調整することができる。シャフトは、シャフトコアと内側ハウジングとを別構成にして一体化することによって、シャフト凹部の形状の自由度が増すため、軽量化が容易となる。よって、シャフトをより軽量化し、車両にローリングが発生したときの吸収効果を兼ね備える。
【0014】
また、前記車両用車軸装置は、前記シャフトコアが、前記内側第一端部と前記シャフト第二端部との間の範囲の少なくとも一部において、前記軸線の方向に連続するリブ部を有し、前記リブ部は、前記軸線に交差する方向の断面において、前記軸線を通り前記内側ハウジングに向かって延びる軸交差線に沿って延び、前記リブ部の先端が前記内側ハウジングと接合してもよい。
【0015】
この場合、シャフトコアの一部がリブ形状を有するので、シャフトコアの重量を軽減することができる。リブ部の先端が内側ハウジングと接合するので、シャフトコアは軸線の方向においてリブ部を含めた範囲で内側ハウジングと接合することにより、シャフトコアと内側ハウジングとを合わせた強度と剛性を高くすることができる。
【0016】
また、前記車両用車軸装置は、前記シャフトコアが、前記シャフトコア第二端部から前記シャフト第一端部に向かう凹みであるシャフトコア凹部を備えてもよい。この場合、シャフトコア凹部を備えるので、シャフトコアを軽量化することができる。
【0017】
また、前記車両用車軸装置は、前記シャフト凹部が、前記シャフトコア第二端部から前記シャフト第一端部まで貫通する開口でもよい。この場合、さらにシャフトコアを軽量化することができる。
【0018】
また、前記車両用車軸装置は、前記シャフトコア第二端部が、前記シャフト第二端部よりも前記内側第一端部に近い位置にあってもよい。この場合、第一領域の体積が小さくなるので、シャフトコアを軽量化することができる。
【0019】
また、前記車両用車軸装置は、前記シャフトコア第二端部が、前記内側第一端部よりも前記シャフト第二端部に近い位置にあって、前記シャフトコアは、前記内側第一端部から前記シャフトコア第二端部との間に渡って、前記内側ハウジングと接合してもよい。
【0020】
この場合、シャフトコアは、軸線方向における内側ハウジングの1/2以上の範囲において接合できるので、さらにシャフトの強度と剛性を高くすることができる。よって、シャフトの強度と剛性を高くしつつ、シャフトコアの軽量化をすることができる。
【0021】
また、前記車両用車軸装置は、前記シャフト凹部の少なくとも一部が、炭素繊維を含む樹脂材からなる充填部材を備え、前記外側ハウジングを前記車体に固定し、前記シャフトに回転力が加わるとき、前記充填部材と一体となった前記シャフトが回転してもよい。
【0022】
この場合、シャフト凹部の少なくとも一部に炭素繊維を含む樹脂材からなる充填部材を備えるので、シャフト凹部を全てシャフトコアで構成した場合に比べて軽量化できる。さらに充填部材と一体となったシャフトの強度と剛性を高めることができる。
【0023】
また、前記車両用車軸装置は、前記シャフト凹部の少なくとも一部が、軽金属を含み鉄よりも比重が小さい金属からなる充填部材を備え、前記外側ハウジングを前記車体に固定し、前記シャフトに回転力が加わるとき、前記充填部材と一体となった前記シャフトが回転してもよい。
【0024】
この場合、シャフト凹部の少なくとも一部に軽金属を含み鉄よりも比重が小さい金属からなる充填部材を備えるので、シャフト凹部を全てシャフトコアで構成した場合に比べて軽量化できる。さらに充填部材と一体となったシャフトの強度と剛性を高めることができる。
【0025】
また、前記車両用車軸装置の製造方法は、前記シャフトの内部において、前記シャフト凹部に、前記充填部材を充填するための型である充填部材型を使用し、前記シャフトの外周を前記充填部材型に固定し、前記充填部材型を加熱しながら、前記充填部材を前記シャフト凹部に充填する工程と、前記シャフトの外周に前記弾性部材を具備して内側ユニットを形成する工程と、前記内側ユニットを前記外側ハウジングに挿入して固定する工程からなる。
【0026】
これによれば、車両用車軸装置の製造方法は、一連の製造工程のなかで、各構成要素を順に組み合わせて製造できる。シャフト凹部に充填部材を充填することができ、充填部材と内側ハウジングとを密着できる。よって、この製造方法によれば、強度と剛性を備えかつ軽量化した車両用車軸装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第一実施形態の車両用車軸装置1aを示した図であり、軸線Cの方向に切断した断面図である。
【
図2】車両用車軸装置1aを示した図であり、(a)は
図1の断面S1-S1を示した図であり、(b)はシャフト10aの斜視図である。
【
図3】第二実施形態の車両用車軸装置1bを示した図であり、軸線Cの方向に切断した断面図である。
【
図4】第三実施形態の車両用車軸装置1cを示した図であり、軸線Cの方向に切断した断面図である。
【
図5】
図4における断面S3-S3を示した図であり、(a)から(c)までは種々の内側ハウジング3とシャフトコア2との組合せを示す。
【
図6】
図4(
図8、
図11を含む)における断面S2-S2を示した図であり、(a)から(c)までは種々の内側ハウジング3に対する充填部材6との組合せを示す。
【
図7】第三実施形態のシャフトコア2cを示した図であり、(a)は角材を基材としたシャフトコアの斜視図であり、(b)は(a)におけるA視図であり、(c)は(b)の斜視図であり、(d)は丸棒を基材としたシャフトコア2cの斜視図である。
【
図8】第四実施形態の車両用車軸装置1dを示した図であり、軸線Cの方向に切断した断面図である。
【
図9】第四実施形態の車両用車軸装置1dを示した図であり、
図8の断面S4-S4を示した断面図である。
【
図10】車両用車軸装置1dにおけるシャフトコア2dと一部が異なるシャフトコア200dを有する、車両用車軸装置100dを示した図であり、軸線Cの方向に切断した断面図である。
【
図11】第五実施形態の車両用車軸装置1eを示した図であり、軸線Cの方向に切断した断面図である。
【
図12】第五実施形態のシャフトコア2e、及び第七実施形態のシャフトコア2gを示した図であり、(a)は、シャフトコア2e、2gをシャフト第一端部20aの側から見た斜視図であり、(b)は(a)のB方向からの斜視図であり、(c)は(b)に対応した第五実施形態、及び第七実施形態における別の形態のシャフトコア2e(2g)を示した図である。
【
図14】第六実施形態の車両用車軸装置1fを示した図であり、軸線Cの方向に切断した断面図である。
【
図15】
図14における断面図であり、(a)は断面S5-S5を示し、(b)は断面S6-S6を示し、(c)は断面S7-S7を示す。
【
図16】車両用車軸装置1fにおけるシャフトコア2fと一部が異なるシャフトコア200fを有するである、車両用車軸装置100fを示した図であり、軸線Cの方向に切断した断面図である。
【
図17】第七実施形態の車両用車軸装置1gを示した図であり、軸線Cの方向に切断した断面図である。
【
図18】車両用車軸装置1におけるシャフト10(10c)の製造方法を説明した図であり、(a)から(c)までは順に第一工程から第三工程までを示した図である。
【
図19】車両用車軸装置1における内側ユニット30の製造方法(第四工程)を説明した図である。
【
図20】本発明の車両用車軸装置1と、車両に取り付けられる際の関連部材との関係と、製造方法のうちの第五工程を示した斜視図である。
【
図21】従来の車両用車軸装置を示した図であり、軸線Cの方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照し、本発明を具現化した車両用車軸装置1を説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いるものである。図面に記載する装置の構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0029】
<車両用車軸装置1に共通する構成>
図面を参照して、本発明の態様に係る車両用車軸装置1に共通する構成を説明する。なお、
図1から
図17までは、第一実施形態の車両用車軸装置1aから第七実施形態の車両用車軸装置1gまで(車両用車軸装置100d、100fを含む)を説明するものであるが、代表例として
図1等を参照して車両用車軸装置1に共通する構成を説明する。
【0030】
車両用車軸装置1は、車両の車体に取り付けて使用し、以下の構成要素を備える。軸線Cに沿って延びるシャフト10と、シャフト10が延びる方向に沿ってシャフト10の外周を覆う弾性部材4。さらに、シャフト10、及び弾性部材4を覆う外側ハウジング5を備える。
【0031】
軸線Cの方向のうちの一方を第一方向、他方を第二方向とする。シャフト10において、第一方向の側の端部をシャフト第一端部20aとし、第二方向の側の端部をシャフト第二端部20bとする。後述するように、シャフト10は円柱状、又は角柱状である。また、外側ハウジング5は、角筒状又は円筒状の形状である。以下の説明では、外側ハウジング5は例として角筒状のうちの四角筒状の場合について説明する。シャフト10は、複数の例を説明する。
【0032】
シャフト10は、シャフト第一端部20aが外側ハウジング5よりも突出する。シャフト10の内部は、シャフト第二端部20bからシャフト第一端部20aに向かう凹みであるシャフト凹部7を有する。車両用車軸装置1は、外側ハウジング5を車体に固定し、シャフト10に回転力が加わるとき、外側ハウジング5とシャフト10との間は、弾性部材4が弾性変形してねじれが発生する。
【0033】
シャフト10の突出部2jは、先端部分にボルト用凹部12dを挟んでセレーション部12cを形成し、後述するホイールマウントアセンブリ33の内歯部18と係合する。その他、ホイールマウントアセンブリ33との関係については後述する。シャフト10の内在部2kは、弾性部材4及び外側ハウジング5に覆われる部分である。
【0034】
図1等では、例としてシャフト凹部7は、後述する充填部材6を備える(充填する)状態を示すが、充填部材6が充填しない空間状態でもよい。空間状態の場合、シャフト10は最も軽量となる。
【0035】
<車両用車軸装置に共通の構成による解決課題とその効果>
以上説明したように、車両用車軸装置1は以下の課題を解決し、効果を奏する。従来の車両用車軸装置は、重量が大きく、車両の燃費向上に対して障害となっていた。特に、従来の車両用車軸装置は、シャフトコアを装置の全長に渡って通す構成となっており、シャフトコアの重量によって装置全体の重量が大きくなるという課題があった。特に電気自動車においては車両の軽量化が要求されるが、従来の装置では対応できないという課題があった。
【0036】
この課題に対し、車両用車軸装置1は、シャフト10がシャフト凹部7を有するので、シャフト10の重量を軽減することができる。また、弾性部材4によってねじれが発生するので、車両用車軸装置1は、軽量化とローリングを抑える機能とを兼ね備えることができる。
【0037】
<車両用車軸装置1aの構成>
次に、
図1及び
図2を参照して、本発明の第一の態様に係る第一実施形態の車両用車軸装置1aの構成を説明する。すでに説明した共通の構成は説明を省略する。シャフト10aは一体で形成され、シャフト第二端部20bからシャフト第一端部20aに向かってシャフト凹部7を有する。シャフト凹部7は、軸線Cを中心とする円柱状、円錐状、角柱状、又は角錐状である。
図2に示す例では、シャフト10aは四角柱であり、シャフト凹部7は円錐状の形状である。
図2(b)に示すように、突出部2jは円柱状であり、四角柱状の内在部2kに対してテーパ状に繋がっている。
【0038】
シャフト凹部7において、軸線Cに交差する方向に対向する寸法である内側寸法は、シャフト第二端部20bが、第一方向の側の端部よりも大きい。なお、
図1に示す例では、シャフト凹部7はテーパー状であって内側寸法が徐々に変化するが、後述するように内側寸法が段階的に変化する多段形状でもよい。
【0039】
また、
図2に示すように、シャフト凹部7における第一方向の側の端部近傍には、空気穴32を設けている。空気穴32は、シャフト凹部7に後述する充填部材6を充填する際に、シャフト凹部7の内部空気を外部に排出して、充填部材6がシャフト凹部7の第一方向の端部まで行き渡るようにするものである。後述する第三実施形態の車両用車軸装置1cから第七実施形態の車両用車軸装置1gまでも同様である。それぞれのシャフト凹部7における第一方向の端部の近傍に空気穴32を設けている。
図9、
図13、及び
図15を参照のこと。ただし、後述するように、
図3に示すシャフト10b、
図10に示すシャフトコア200d、及び
図16に示すシャフトコア200fには空気穴32は無い。なお、
図3、
図10、及び
図16を参照して後述するが、シャフト凹部7がシャフト10の全長に渡って貫通してもよい。この場合、シャフト凹部7に充填部材6を充填するときに、シャフト凹部7の内部の空気はシャフト第一端部20aの側から抜けるので、空気穴32は不要である。
【0040】
<車両用車軸装置1aの構成による解決課題とその効果>
以上説明したように、車両用車軸装置1aは以下の課題を解決し、効果を奏する。車両用車軸装置1aのシャフト凹部7は、軸線Cの方向に深く形成する際に、回転力を直接受ける第一方向の側の端部に近いほどシャフト凹部7の内側寸法が小さいので、強度と剛性を維持できる。逆に、シャフト第二端部20bに近づくにつれてシャフトコア2に加えられた回転力の影響が軽減されるので、シャフト凹部7の内側寸法が大きくても強度と剛性を維持できる。よって、車両用車軸装置1aはシャフト10aの構成により、軽量化と強度及び剛性の維持とを兼ね備えた効果を奏する。
【0041】
<車両用車軸装置1bの構成とその効果>
次に、
図3を参照して、本発明の第一の態様に係る第二実施形態の車両用車軸装置1bを説明する。シャフト10bは、円筒状であってシャフト凹部7はシャフト第二端部20bからシャフト第一端部20aまで貫通する開口を形成する。突出部2jは、シャフト10aと同様に、セレーション部12cとボルト用凹部12dを形成する。シャフト凹部7には充填部材6を充填する。シャフト凹部7は貫通するため、充填部材6を充填する際にシャフト凹部7の内部の空気はシャフト第一端部20aの側から排出されるので、空気穴32は不要である。シャフト10b以外の構成は車両用車軸装置1aと同様なので、説明は省略する。
【0042】
以上説明したように、車両用車軸装置1bはシャフト10bの構成から円筒状のパイプ状部材を用いて加工することができる。よって、加工が簡単であってコストが安くなる。また、シャフト凹部7はシャフト第二端部20bからシャフト第一端部20aにわたって貫通する開口なので、シャフト10bを軽量化できる。さらに、シャフト凹部7が貫通する開口のため、充填部材6を容易に充填できる。すなわち、充填部材6は予めシャフト凹部7の形状に合わせた形状に成形する必要は無く、例えばシャフト第二端部20bから充填した充填部材6がシャフト第一端部20aからはみ出したときは、はみ出した分を切除すれば良い。また、充填部材6を充填する際に、シャフト凹部7の内部に空気がたまることが無いので、スムーズに充填できる。この効果は、後述する
図10の車両用車軸装置100d、及び
図16の車両用車軸装置100fに示すように、シャフトコア凹部8がシャフト第一端部20aまで貫通する場合も同様である。
【0043】
<車両用車軸装置1cから車両用車軸装置1gまでに共通の構成>
次に、
図4から
図17までを参照して、本発明の第一の態様に係る第三実施形態の車両用車軸装置1cから第七実施形態の車両用車軸装置1gまでに共通の構成を説明する。なお、すでに説明した共通の構成は説明を省略する。以下、車両用車軸装置1と称して説明する。車両用車軸装置1は、シャフト10が軸線Cに沿って延びるシャフトコア2と、シャフトコア2の外周を覆う内側ハウジング3とからなる。シャフトコア2において、第二方向の側の端部をシャフトコア第二端部12とする。内側ハウジング3において、第一方向の側の端部は内側第一端部3aであり、第二方向の側の端部はシャフト第二端部20bである。
【0044】
シャフトコア2は、第一方向の側の端部が、シャフト第一端部20aである。シャフトコア第二端部12が、内側ハウジング3の内側にあって、内側第一端部3aから第二方向へ所定長さ隔てた位置とシャフト第二端部20bとの間にある。シャフトコア2の少なくとも一部と内側ハウジング3とが接合し、シャフトコア2と、内側ハウジング3とが一体となってシャフト10を形成する。後述するように、内側ハウジング3は、角筒状又は円筒状の形状である。
【0045】
シャフトコア2は、シャフト第一端部20aを含み内側ハウジング3から突出する部分である突出部2jと、内側ハウジング3の内部に内在する内在部2kに分けられる。
図4等において、内在部2kの右端に当たる位置が、前述したシャフトコア第二端部12の位置である。内側第一端部3aから第二方向へ隔てた所定長さは、内在部2kの長さに相当する。例として、内在部2kの長さは、突出部2jの2倍以上であると、シャフトコア2に回転力が加わるときに、内側ハウジング3と一体となったシャフト10はねじれが低減され、回転力はシャフト10の全体に伝達される。
【0046】
図4等に示すように、シャフト凹部7は、シャフトコア2と内側ハウジング3とによって形成する第一領域7aと、内側ハウジング3のみによって形成する第二領域7bとからなる。
図4等では、例としてシャフト凹部7は、充填部材6を備える(充填する)状態を示すが、充填部材6が充填しない空間状態でもよい。空間状態の場合、シャフトコア2と内側ハウジング3とが接合したシャフト10は最も軽量となる。
【0047】
図4等に示すように、シャフトコア2の外周と内側ハウジング3の内周とは、溶接部14において溶接によって接合し、シャフトコア2と内側ハウジング3とが一体となったシャフト10を形成する。なお、接合方法は、溶接に限定せず、他に接着、締結部材による締結、その他の方法でもよい。なお、
図4において溶接部14を示す符号は1箇所にのみ付しているが、図に示すように複数箇所に形成する。後述する
図8、
図10、
図11、
図14、
図16、及び
図17も同様である。
【0048】
車両用車軸装置1は、外側ハウジング5を車体に固定し、シャフト10に回転力が加
わるとき、シャフトコア2と内側ハウジング3とが一体となった状態で回転力を受ける。外側ハウジング5とシャフト10との間は、弾性部材4が弾性変形してねじれが発生する。
【0049】
シャフトコア2は、例として構造用の鉄鋼材料等の高強度な材料を使用する。他に、非鉄金属、強化樹脂等の鉄鋼材料以外を使用してもよい。すでに説明した車両用車軸装置1aにおけるシャフト10aも同様である。弾性部材4は、例としてゴム、エラストマーを使用し、他の弾性材料を使用してもよい。ゴムを使用する場合、ゴム硬度は60度以上を想定するが、用途に応じて硬度を選定する。また、
図4等におけるチャックシロ13は、後述するように、弾性部材4としてゴムを使用する場合、ゴムを成形するときに弾性部材型43がチャックする部分である。チャックシロ13は、加工上に必要な部材であって、機能的には無くてもよい。車両用車軸装置1の製造方法は後述する。
【0050】
次に、
図5から
図7までを参照して、シャフトコア2、内側ハウジング3、及び弾性部材4の断面形状その他を説明する。
図5は、シャフトコア2における内在部2kにおける断面を示す。
図5の例では、三つのパターンを示す。
図5(a)に示す例では、シャフトコア2は円柱状であり、内側ハウジング3はシャフトコア2の外径形状に合わせた円筒状である。シャフトコア2と内側ハウジング3とは、四方向から溶接部14において溶接によって接合する。弾性部材4は、内側ハウジング3と外側ハウジング5との間を埋めるように隙間を極力抑えた状態で形成する。
図19にて後述するように、弾性部材4は、シャフト10(内側ハウジング3)に対して成形加工して一体化する。この場合、内側ハウジング3は、丸パイプ材或いは角パイプ材を使用することが一般的である。
【0051】
図5(b)に示す例では、シャフトコア2は円柱状あり、内側ハウジング3は四角筒状である。この場合、シャフトコア2の外周と内側ハウジング3の内周の間には隙間があるが、
図5(a)と同様に、四方向から溶接によって接合する。
図5(c)に示す例では、シャフトコア2は四角筒状であり、内側ハウジング3はシャフトコア2の外周に合わせた四角柱状である。さらに、内側ハウジング3の外周は、四方に凸出し部3cを形成する。凸出し部3cは、例として溶接によって形成する。凸出し部3cは、内側ハウジング3に回転力が加わるときに、弾性部材4との間の滑りを防止する効果を高める。この場合、内側ハウジング3は、角パイプ材を使用することが一般的である。なお、弾性部材4と内側ハウジング3とは密着するので、必ずしも内側ハウジング3に凸出し部3cが無くてもよい。
【0052】
シャフトコア2は角材から製作する場合と丸棒から製作する場合がある。
図7(a)に示す例は、角材から製作する場合を示し、突出部2jは旋盤及びホブ盤等によって加工する。これは、
図5(c)の場合に相当する。また、
図7(d)に示す例は、シャフトコア2を丸棒から製作する場合を示す。これは、
図5(a)、(b)の場合に相当する。なお、外側ハウジング5は、四角筒状を例に示したが、円柱状でもよい。シャフトコア2は、一般的には約300mmから600mmの長さであるが、使用用途によって長さを調整する。
【0053】
<車両用車軸装置1cから車両用車軸装置1gまでに共通の構成による解決課題とその効果>
以上説明したように、車両用車軸装置1cから車両用車軸装置1gまでに共通の構成は以下の課題を解決し、効果を奏する。従来の車両用車軸装置は、重量が大きく、車両の燃費向上に対して障害となっていた。特に、従来の車両用車軸装置は、シャフトコアを装置の全長に渡って通す構成となっており、シャフトコアの重量によって装置全体の重量が大きくなるという課題があった。この課題を解決するために、シャフト10を軽量化するため自由度のある具体的な構成が求められる。
【0054】
この課題に対し、車両用車軸装置1は、シャフト10をシャフトコア2と内側ハウジング3とで構成する。シャフトコア第二端部12が、内側ハウジング3の内側にあって、内側第一端部3aから第二方向へ所定長さ隔てた位置とシャフト第二端部20bとの間にある。よって、シャフト凹部7の体積分だけシャフトコア2の重量が削減でき、軽量化することができる。また、シャフトコア2の少なくとも一部と内側ハウジング3とが接合するので、シャフトコア2と内側ハウジング3とが一体となったシャフト10を形成する。シャフト10は、シャフトコア2と内側ハウジング3とを別構成にして一体化することによって、シャフト凹部7の形状の自由度が増すため、軽量化が容易となる。シャフト凹部7の具体的な形状の種類は後述する。よって、シャフト10をより軽量化し、車両にローリングが発生したときの吸収効果を兼ね備える。
【0055】
<充填部材6の説明>
次に、充填部材6について説明する。シャフト凹部7の少なくとも一部は、炭素繊維を含む樹脂材からなる充填部材6を備えてもよい。この場合、外側ハウジング5を車体に固定し、シャフト10に回転力が加わるとき、さらに充填部材6とが一体となってシャフト10の全体に回転力が伝わる。充填部材6は、いくつかの材質、構成が可能である。
【0056】
充填部材6の一例として、チョップドカーボンについて説明する。チョップドカーボンは短繊維のカーボン繊維を樹脂で固めたもので、高剛性が得られる。チョップドカーボンの一般的な製造方法の例について概略を説明すると、金型に入れた炭素繊維にエポキシ樹脂などを浸みこませ、130℃に加熱し6MPaの圧力でホットプレスする手法で製作する。チョップドカーボンは、インジェクションによる成形と同様に成形できる。なお、チョップドカーボンを成形する際には、後述する充填部材型42がヒーターを内蔵し、チョップドカーボンを加熱する。よって、複雑な形状のパーツでも簡単に制作可能である。本発明においては、シャフト凹部7にチョップドカーボンの材料を注入し、内側ハウジング3の外周側を型で保持しつつホットプレスする。また、詳細な説明は省略するが、プレスによる成形も可能である。
【0057】
一般的なカーボン製品は薄いシートを積層して作るが、チョップドカーボンは、ごく短いカーボン繊維とレジン(樹脂)を高圧で成型(恒温鍛造)したもので、一般的には、チタンの3分の1の軽さで同等以上の曲げ強度を有する。強度、厚さ、形状など設計自由度が大きいのが特徴である。
【0058】
充填部材6の他の例として、CFRPについて説明する。CFRPとは、「CarbonFiberReinforcedPlastics」の略で、「炭素繊維強化プラスチック」を意味する。一般的に、CFRPに使用する炭素繊維には、PAN系とピッチ系の2種類がある。PAN系炭素繊維は、PAN(ポリアクリロニトリル)が原料で、ピッチ系炭素繊維は、石油や石炭から得られるピッチと呼ばれるものが原料の炭素繊維である。
【0059】
また、一般的にCFRPに使用する樹脂には、加熱すると硬化する熱硬化性樹脂と、加熱すると融解する熱可塑性樹脂とがある。CFRPへ主に使用するのは熱硬化性のエポキシ樹脂であり、そのほかにも不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール、シアネートエステル、ポリイミド、熱可塑性樹脂ではポリアミド、ポリカーボネイト、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン等を使用する。
【0060】
CFRPは、種々の製造方法がある。詳細な説明は省略するが、樹脂注入成形法として、溶融した熱硬化樹脂を低圧化で金型に封入した強化繊維プリフォームに注入し、加熱硬化させる成形法がある。或いは、オスまたはメス型に強化繊維材を配置し、フィルムシートで密閉、真空下で樹脂を導入したのち加熱成形するプロセスがある。その他、各種の製造方法があるが、成型する対象、形状等により製造方法が異なる。本発明においては、樹脂注入成形法によってシャフト凹部7に相当する形状を予め成型し、シャフト凹部7に挿入する。さらに、内側ハウジング3の外周側から加熱して、充填部材6との密着性を高める。
【0061】
以上説明した、充填部材6として使用するチョップドカーボン及びCFRPは、いずれも比重が1.8前後であり、鉄の比重7.8と比較すると約1/4である。よって、従来鉄系の材料を使用していた体積分を充填部材6に置き換えることで、軽量化を実現できる。また、鉄との強度を比較すると約10倍であり、剛性を比較すると約7倍である。
【0062】
<充填部材6のよる解決課題とその効果>
以上説明したように、充填部材6を使用すると以下の課題を解決し、効果を奏する。シャフト凹部7は、単に空間のみが存在すると、シャフト10(内側ハウジング3を含む)の外殻のみで強度と剛性を確保する必要が生じる。この場合、シャフト10に回転力が加わるとき、シャフト10(内側ハウジング3を含む)は強度と剛性不足のために捻れてしまう場合がある。本来はシャフト10を覆う弾性部材4が弾性変形してシャフト10に加えられる回転力を吸収すべきであるが、シャフト10におけるシャフト凹部7の外殻が捻れることで、弾性部材4が弾性変形せずにシャフト10(内側ハウジング3を含む)が破損してしまう場合がある。
【0063】
この課題に対し、車両用車軸装置1は、シャフト凹部7の少なくとも一部に炭素繊維を含む樹脂材からなる充填部材6を備えるので、シャフト凹部7に該当する部分を全てシャフト10の材質で構成した場合に比べて軽量化できる。さらに、例に示した充填部材6は、いずれも軽量でありながら強度が高く、剛性を高められる。よって、車両用車軸装置1は、さらに充填部材6を加えることによってシャフト10の強度と剛性を高め、軽量化と本来の機能であるローリングを抑制する効果を兼ね備える。
【0064】
また、充填部材6は、軽金属を含み鉄よりも比重が小さい金属からなるものでもよい。例として、アルミニウム、チタン、ジュラルミン、その他の軽金属であってもよい。いずれも、鉄よりも比重が小さく、剛性が高い材料を使用することで、シャフト10の軽量化と剛性維持とを兼ね備えることができる。この場合、充填部材6は成型による方法ではなく、予めシャフト凹部7の形状に合わせて加工し、シャフト凹部7に挿入する方法で製造する。なお、具体的な製造方法は後述するが、シャフト10(内側ハウジング3を含む)を充填部材型42に装着しておき、充填部材型42を加熱してシャフト10を膨張させたのちに充填部材6を挿入することで、いわゆる焼き嵌めを行ってもよい。
【0065】
<車両用車軸装置1cから1eまでと100dに共通の構成>
次に、
図4から
図11までを参照して、本発明に係る第三実施形態の車両用車軸装置1cから第五実施形態の車両用車軸装置1e(車両用車軸装置100dを含む)までに共通する構成を説明する。すでに説明した、全体に共通する構成の説明は省略する。
【0066】
図4、
図8、及び
図11に示すように、車両用車軸装置1cから1eまでと100dは、シャフトコア第二端部12が、シャフト第二端部20bよりも内側第一端部3aに近い位置にある。すなわち、シャフトコア2の内在部2kの長さは、内側ハウジング3の軸線Cの方向の長さ3dの1/2未満である。
【0067】
図6は、
図4等の断面S2-S2であり、内側ハウジング3においてシャフトコア2が無く、シャフト凹部7が第二領域7bの断面を示す。
図6(a)から
図6(c)までに示す内側ハウジング3の形状は、
図5(a)から
図5(c)までに示す例と同様である。内側ハウジング3のシャフト凹部7に充填部材6を充填する場合、充填部材6の断面形状は内側ハウジング3の内周形状に沿って形成する。
【0068】
<車両用車軸装置1cから1eまでと100dに共通の解決課題とその効果>
以上説明したように、車両用車軸装置1cから1eまでと100dに共通する構成は、車両用車軸装置1に共通する課題でもある軽量化についての具体的な手段が求められる。その一つの解決手段として、シャフトコア第二端部12が、シャフト第二端部20bよりも内側第一端部3aに近い位置にある。この場合、車両用車軸装置1cから1eまでと100dは、シャフトコア2の内在部2kの長さが、内側ハウジング3の軸線Cの方向の長さ3dの1/2未満である。よって、シャフトコア2が軸線Cの方向の全長に渡って存在する場合に比べて重量を軽減できる。合わせて、すでに説明したように、シャフト凹部7に充填部材6を備えることにより、シャフトコア2の長さを短くすることによる強度及び剛性の低下を補うことができる。
【0069】
<車両用車軸装置1c固有の構成>
次に、
図4から
図7までを参照して、本発明の態様に係る第三実施形態の車両用車軸装置1cに固有の構成を説明する、すでに説明した共有の構成は説明を省略する。以下説明する他の実施形態も同様である。
図7(b)、(c)に示すシャフトコア第二端部12は、シャフトコア2cに固有の形状である。例として、シャフトコア第二端部12に、軸線Cに交差する方向に溝12eを形成する。溝12eは直線状に形成してもよいし、例えば螺旋状(図示せず)に形成してもよい。溝12eはシャフト凹部7に含まれる。充填部材6を溝12eに充填することで、シャフトコア2と充填部材6とが一体化し、シャフトコア2に回転力が加わるときに、内側ハウジング3及び充填部材6とを一体となって回転させるためである。また、溝12eの他に、12の表面に凹凸形状を形成してもよい。なお、
図4に示すように、内側ハウジング3におけるシャフトコア第二端部12の近傍には、空気穴32を形成する。
【0070】
なお、車両用車軸装置1cは充填部材6を備える場合について説明したが、必ずしも充填部材6を備えなくてもよい。この場合、溝12eは不要であり、第二領域7bは空間となる。以下に説明する車両用車軸装置1dから1gまでも同様に、必ずしも充填部材6を備えなくてもよい。
【0071】
<車両用車軸装置1cの解決課題とその効果>
以上説明した車両用車軸装置1cは、以下の課題を解決し効果を奏する。
図4に示すように、シャフト10cのシャフト凹部7は、充填部材6を備えてもよい。しかしながら、シャフト10cに回転力が加わるとき、シャフトコア第二端部12と充填部材6との間に滑りが発生すると、シャフト10cの剛性が低下する。この場合、内側ハウジング3が捻れることにより破損する場合がある。この課題に対し、
図7(b)、(c)に示すように、車両用車軸装置1cは、シャフトコア第二端部12に溝12eを形成する。溝12eに充填部材6が入り込むので、シャフトコア2は回転力が加わるときに充填部材6との間の滑りを防止できる。よって、シャフト10cの強度と剛性を高めることができる。
【0072】
<車両用車軸装置1d固有の構成>
次に、
図8、
図9を参照して、本発明の態様に係る第四実施形態の車両用車軸装置1dに固有の構成を説明する。シャフトコア2は、シャフトコア第二端部12からシャフト第一端部20aに向かう凹みであるシャフトコア凹部8を有する。シャフトコア凹部8は、車両用車軸装置1aにおいて説明したシャフト凹部7と同様に、軸線Cを中心とする円柱状、円錐状、角柱状、又は角錐状である。ここで、シャフトコア凹部8は、シャフト凹部7の一部である。また、内側ハウジング3の内側において、シャフトコア第二端部12とシャフト第二端部20bとの間もシャフト凹部7の一部である。この場合、シャフト凹部7において、軸線Cに交差する方向に対向する寸法である内側寸法は、シャフト第二端部20bが、シャフトコア凹部8の第一方向の側の端部よりも大きい。ここで、シャフト凹部7の第一方向の側の端部は、シャフトコア凹部8の第一方向の側の端部が相当する。
【0073】
シャフトコア凹部8は円柱状の凹みである。その他、シャフトコア凹部8は、角柱状の凹みでもよいし、軸線Cに交差する方向の断面形状が一様で無くてもよい。
図8に示す例では、シャフトコア凹部8の深さは、シャフトコア2の内在部2kと同じ長さである。なお、これに限らずシャフトコア凹部8は、シャフトコア2のシャフトコア第二端部12からシャフト第一端部20aまでの間に任意の深さで形成できる。
【0074】
<車両用車軸装置100d固有の構成>
次に、
図10を参照して、車両用車軸装置100dの構成を説明する。車両用車軸装置100dは、車両用車軸装置1dに対してシャフトコア200dの構成が異なる。
図10に示すように、シャフトコア200dのシャフトコア凹部8は、シャフトコア第二端部12からシャフト第一端部20aまで貫通する開口である。この場合、シャフトコア凹部8に充填部材6を充填するときに、シャフトコア凹部8内部の空気はシャフト第一端部20aの側から抜けるので、空気穴32は不要である。
【0075】
<車両用車軸装置1d、100dの解決課題とその効果>
以上説明した車両用車軸装置1dは、以下の課題を解決し効果を奏する。車両用車軸装置1dは、車両用車軸装置1cと同様に軽量化のための具体的な構成が求められる。この課題に対する対応として、車両用車軸装置1dのシャフトコア2dはシャフトコア凹部8を有する。シャフトコア2dは、シャフトコア凹部8による体積分に相当する重量が軽減されるので、車両用車軸装置1dを軽量化できる。また、シャフトコア2dの内在部2kの長さは、シャフトコア凹部8を有さない場合と同様なので、シャフトコア2の外周部分はシャフトコア凹部8が無い場合と同様に内側ハウジング3と接合できる。よって、シャフト10dが回転するときの強度と剛性が維持できる。充填部材6をシャフトコア凹部8に充填することにより、シャフト10dの強度と剛性をさらに高めることができる。
【0076】
さらに、車両用車軸装置100dは、シャフトコア凹部8が、シャフトコア第二端部12からシャフト第一端部20aまで貫通する開口である。よって、さらにシャフトコア200dを軽量化することができる。また、シャフトコア凹部8に充填部材6を充填するとき、シャフトコア凹部8の内部の空気はシャフト第一端部20aの側から抜け出るので、充填部材6を容易に充填することができる。充填部材6がシャフト第一端部20aからはみ出した場合でも、はみ出した分を切除するだけで良いので、充填が容易である。合わせて、予め充填部材6をシャフトコア凹部8の形状に合わせたて成形しておく必要が無いので、充填部材6を充填する手間が省ける。
【0077】
<車両用車軸装置1e固有の構成>
次に、
図11から
図13までを参照して、本発明の態様に係る第五実施形態の車両用車軸装置1eに固有の構成を説明する。車両用車軸装置1eのシャフトコア2eは、内側第一端部3aとシャフト第二端部20bとの間の範囲の少なくとも一部において、軸線Cの方向に連続して形成するリブ部9を有する。リブ部9は、軸線Cに交差する方向の断面において、軸線Cを通り内側ハウジング3に向かって延びる軸交差線9aに沿って延びる。リブ部9の先端は、内側ハウジング3と接合する。
【0078】
図12(b)及び
図12(c)は、リブ部9の形状の例を示す。
図12(b)に示す例では、リブ部9が軸線Cを通る十字状に形成する。シャフトコア2eは、角材から加工したものであり、リブ部9の先端は、母材となる角材の外形をそのまま残し、他の部分は切削加工したものである。この場合、内側ハウジング3の内周側において対向する面はいずれもリブ部9と接合する。
図12(c)に示す例では、リブ部9は軸線Cを通り1本である。この場合も、リブ部9の先端は角材の外形のままである。この場合、内側ハウジング3の内周側において対向する一組の面はリブ部9と接合する。
【0079】
なお、リブ部9は角材の母材から削り出してもよいし、或いは、シャフトコア2eの一部を形成する四角柱状の部材の端部にリブ溝9b(
図12(b)、(c)の格子状のハッチング範囲を参照)を形成し、板状のリブ部9を差し込んだ後に溶接してもよい。リブ部9は1本及び2本の例を示したが、これに限らずさらに多数備えてもよい。リブ部9は全長に渡って軸線Cに交差する方向の断面形状が同一であることが望ましい。これは、リブ部9と内側ハウジング3との間の空間に、第二方向から軸線Cの方向へ充填部材6を充填しやすくするためである。また、リブ部9は少なくともシャフトコア2eと内側ハウジング3とが接触する部分に形成すればよく、他の部分の形状は例えば軸線Cが通る中心部分は円柱形状(図示しない)であるなど任意の形状でもよい。
【0080】
リブ部9は、シャフトコア第二端部12からシャフト第一端部20aに向かって所定の長さ9dに形成する。所定の長さ9dは、シャフトコア2eにおけるシャフトコア第二端部12からセレーション部12cの第二方向の端部までの間の任意の長さに設定可能である。
図11に示す例では、リブ部9は、シャフトコア第二端部12から第一方向に向かって内側ハウジング3の内側第一端部3aまでの間のうち、中間位置まで形成する。リブ部9を形成し、内側ハウジング3との間にできる空間は第一領域7aとなる。
図13に示すように、第一領域7aに充填部材6を備える場合、リブ部9と内側ハウジング3との間の空間は充填部材6を備える。なお、
図12を参照して説明したリブ部9の構成は、後述する車両用車軸装置1gのシャフトコア2gも同様である。また、リブ部9は、シャフトコア2eの内在部2kにおいてシャフトコア第二端部12までの全長に渡って形成する例を示したが、シャフトコア第二端部12よりも第一方向の側の途中まで形成したものでもよい。
【0081】
<車両用車軸装置1eの解決課題とその効果>
以上説明したように、車両用車軸装置1eは以下の課題を解決し、効果を奏する。すでに説明したように、シャフトコア2は軽量化のための具体的な構成が要求される。この課題に対する対応として、車両用車軸装置1eのシャフトコア2eは、内側第一端部3aとシャフトコア第二端部12との間の範囲の少なくとも一部において、軸線Cの方向に連続して形成するリブ部9を有する。
【0082】
よって、シャフトコア2eは、リブ部9を含めた軸線Cの方向の所定の長さ(2kの長さに相当)において、内側ハウジング3と接合できるので、シャフト10eの強度と剛性を高めることができる。また、シャフトコア2eの無い第二領域7bにおいて、充填部材6を充填することによりさらにシャフト10eの強度と剛性を高めることができる。
【0083】
<車両用車軸装置1f、1g、100fに共通の構成>
次に、本発明の態様に係る第六実施形態の車両用車軸装置1fと、第七実施形態の車両用車軸装置1g、及び車両用車軸装置100fに共通の構成を説明する。
図14、
図16、及び
図17に示すように、車両用車軸装置1f、1g、100fのシャフトコア第二端部12は、内側第一端部3aよりもシャフト第二端部20bに近い位置にあり、シャフトコア2f、2g、200fは、内側第一端部3aからシャフトコア第二端部12との間に渡って、内側ハウジング3と接合する。すなわち、シャフトコア2f、2g、200fは、内側ハウジング3の軸線Cの方向の長さ3bの1/2よりも長い範囲において内側ハウジング3の内周側との間で接合する。
【0084】
<車両用車軸装置1f、1g、100fに共通の解決課題とその効果>
以上説明したように、車両用車軸装置1f、1g、100fは以下の課題を解決し、効果を奏する。シャフトコア2(2f、2g、200f)は、シャフト10(10f、10g、101f)の強度と剛性を高めるため、軽量化しつつも内側ハウジング3との接合領域を広くしたいという課題がある。この課題に対し、車両用車軸装置1f及び1gは、シャフトコア2f、2gが、内側ハウジング3の軸線Cの方向の長さ3bの1/2よりも長い範囲において内側ハウジング3の内周側との間で接合する。シャフトコア2は、シャフトコア凹部8又はリブ部9を有することにより軽量化でき、さらに軸線Cの方向における内側ハウジング3の1/2以上の範囲において接合できるので、シャフト10の強度と剛性を高くすることができる。よって、シャフト10の強度と剛性を高くしつつ、シャフトコア2を軽量化することができる。
【0085】
<車両用車軸装置1fの構成>
次に、
図14及び
図15を参照して、本発明の態様に係る第六実施形態の車両用車軸装置1fの構成を説明する。車両用車軸装置1fのシャフトコア2fは、車両用車軸装置1dと同様にシャフトコア凹部8を有する。シャフトコア凹部8は、軸線Cを中心とする円柱状、円錐状、角柱状、又は角錐状である。シャフトコア凹部8において、軸線Cに交差する方向に対向する寸法である内側寸法は、シャフトコア第二端部12が、第一方向の側の端部よりも大きい。なお、シャフトコア凹部8を含めたシャフト凹部7の内側寸法は、シャフト第二端部20bが、シャフトコア凹部8における第一方向の側の端部よりも大きい。
図14に示すように、シャフトコア凹部8は、内側寸法が、シャフトコア第二端部12からシャフト第一端部20aに向かうに従って減少する多段形状である。ここで、対向する内側寸法とは、シャフトコア凹部8が円柱状の場合は内径寸法が該当し、角柱状の場合は対向する面との間の距離が該当する。
【0086】
図15は、シャフトコア2fにおける各部のシャフトコア凹部8の形状の例を説明する断面図である。ここでは、シャフトコア凹部8が円筒状の場合を説明する。
図15(a)は、シャフト第一端部20aに近い位置のシャフトコア凹部8aを示す断面S5-S5であり、
図15(b)は中間位置のシャフトコア凹部8bを示す断面S6-S6であり、さらに、
図15(c)は最もシャフトコア第二端部12に近い位置のシャフトコア凹部8cを示す断面S7-S7である。シャフトコア凹部8aは内径が最も小さく、シャフトコア凹部8cの内径が最も大きい。すなわち、シャフト第一端部20aに近い側は、軸線Cに交差する方向における断面において、シャフトコア凹部8aによる空間の割合が小さく、シャフトコア2fの強度と剛性が高い。シャフトコア第二端部12に近い側は、同様の断面においてシャフトコア凹部8cによる空間の割合が大きいので、シャフトコア2fの軽量化に寄与する。
【0087】
シャフトコア凹部8が円柱状の場合の加工方法を説明する。軸線Cの方向に深く穴開け加工するとき、一つのドリルによって深くまで削るには困難を伴う。この課題に対して、シャフトコア凹部8はシャフトコア第二端部12の側から太いドリルで第一段の加工を行い、次に第一段の分だけシャフト第一端部20aの側に凹んだ位置から中サイズのドリルで第二段の加工を行う。さらに、第一段と第二段を合わせた分だけシャフト第一端部20aの側に凹んだ位置から小サイズのドリルで第三弾の加工を行う。これによれば、各段における加工深さは一定量に抑えながら、全体として深くまでシャフトコア凹部8を形成できる。各ドリルは、必要以上の長さの特殊なドリルを用意する必要は無く、加工コストを低減できる。
【0088】
また、
図15に示す例は、シャフトコア凹部8が円柱状の場合を示すが、角柱状でもよい。シャフトコア凹部8が角柱状の場合の加工方法は、例えば、外形寸法が同じで、内側寸法が異なる角パイプ材を複数利用し、軸線Cの方向に並べて順に端部を溶接して繋ぐ方法がある。或いは、シャフトコア2fが金属の場合、シャフトコア凹部8に合わせた電鋳によって凹部を形成してもよい。
【0089】
図14に示す例では、シャフトコア第二端部12は内側ハウジング3のシャフト第二端部20bに近接した位置にあり、軸線Cの方向においてシャフトコア2fと内側ハウジング3とが接合する範囲が長い。シャフトコア凹部8の深さは、内側第一端部3aに近接した位置まで深く形成する。シャフトコア2fと内側ハウジング3とは、溶接部14において溶接により接合する。
図15の各図に示すように、溶接部14は四方に形成し、シャフトコア2fの軸線Cの方向において全長に渡って複数箇所に形成するので、シャフトコア2fと内側ハウジング3とは強固に接合する。しかも、シャフトコア凹部8は軸線Cの方向において長く形成するので、シャフトコア2fと内側ハウジング3とが接合したシャフト10fは、強度と剛性を維持しつつ、軽量化が可能となる。
【0090】
なお、
図15(a)は、すでに説明した空気穴32を示すため、溶接部14は3箇所のみ現れている。また、図示しないが、シャフトコア凹部8がシャフトコア2の全長に渡って貫通してもよい。この場合、シャフトコア凹部8に充填部材6を充填するときに、シャフトコア凹部8内部の空気はシャフト第一端部20aの側から抜けるので、空気穴32は不要である。
【0091】
<車両用車軸装置100f固有の構成>
次に、
図16を参照して、車両用車軸装置1fに対して、シャフトコア200fの構成が異なる車両用車軸装置100fの構成を説明する。シャフトコア200fは、シャフトコア2fと同様に、多段状のシャフトコア凹部8(8a、8b、8c)を有する。シャフトコア凹部8は、シャフトコア第二端部12からシャフト第一端部20aまで貫通する開口である。すなわち、シャフトコア凹部8aはシャフト第一端部20aにまで繋がっている。
図10を参照してすでに説明した車両用車軸装置100dと同様に、シャフトコア凹部8に充填部材6を充填する。なお、シャフトコア凹部8は、充填部材6を充填させず、空間のままでもよい。
【0092】
<車両用車軸装置1f、100fの解決課題とその効果>
以上説明したように、車両用車軸装置1fは以下の課題を解決し、効果を奏する。シャフトコア2fは、シャフト10fの強度と剛性を高めるため、軽量化しつつも内側ハウジング3との接合領域を広くするために具体的な構成の提案が求められる。この課題に対し、
図14及び
図15に示すように、シャフトコア凹部8を含めたシャフト凹部7の内側寸法は、シャフト第二端部20bが、シャフトコア凹部8における第一方向の側の端部よりも大きい。さらに、シャフトコア2fのシャフトコア凹部8は、シャフトコア第二端部12からシャフト第一端部20aに向かうに従い、対向する内側寸法が減少する多段形状である。
【0093】
シャフトコア凹部8を軸線Cの方向に深く形成する場合、シャフトコア2fは、回転力を直接受けるシャフト第一端部20aに近いほどシャフトコア凹部8(8a)の対向する内側寸法が小さいので、強度と剛性を維持できる。逆に、シャフト第一端部20aから遠ざかる側は、シャフトコア2fに加えられる回転力の影響が軽減されるので、シャフトコア凹部8(8c)の対向する内側寸法が大きくても強度と剛性を維持できる。合わせて、シャフトコア凹部8によるシャフトコア2の体積の減少分を大きくできるので、シャフトコア2の軽量化を行うことができる。
【0094】
さらに、シャフトコア凹部8の加工を行う際、多段形状では一度に凹部を加工する距離が短くなるので、工具への負担が少ない。よって、シャフトコア凹部8は、多段形状にすることにより、シャフトコア第二端部12からシャフト第一端部20aに向かって深くまで形成することができる。合わせて、シャフトコア凹部8によるシャフトコア2fの体積の減少分を大きくできるので、シャフトコア2fの軽量化を行うことができる。
【0095】
この場合、シャフトコア凹部8による体積分に相当するシャフトコア2fの重量が軽減されるので、車両用車軸装置1fを軽量化できる。さらに、シャフトコア2fの外周部分はシャフトコア凹部8が無い場合と同様に内側ハウジング3と接合できるので、シャフト10fが回転するときの強度と剛性が維持できる。
【0096】
また、
図16に示すように、車両用車軸装置100fは、シャフトコア凹部8がシャフトコア第二端部12からシャフト第一端部20aまで貫通する開口である。よって、さらにシャフトコア200fを軽量化することができる。充填部材6を充填する際の効果は、車両用車軸装置100dと同様である。
【0097】
<車両用車軸装置1gの構成>
次に、
図13及び
図17を参照して、本発明の態様に係る第七実施形態の車両用車軸装置1gの構成を説明する。車両用車軸装置1gは、第五実施形態の車両用車軸装置1eに対して、リブ部9を軸線Cの方向に長く形成する場合を示す。シャフトコア2gは、シャフトコア2fと同様に、シャフトコア第二端部12がシャフト第二端部20bに近接する場合を示す。リブ部9は、シャフトコア第二端部12からシャフト第一端部20aに向かって所定の長さ9dに形成する。所定の長さ9dは、シャフトコア2gにおけるシャフトコア第二端部12からセレーション部12cの第二方向の端部までの間の任意の長さに設定可能である。
図17に示す例では、軸線Cの方向におけるリブ部9の長さ9dは、シャフトコア2gの内在部2kのうちの1/2以上である。
【0098】
すでに説明した車両用車軸装置1eと同様に、リブ部9を形成することでシャフトコア2gと内側ハウジング3との間にできる空間は第一領域7aとなる。
図13に示すように、第一領域7aに充填部材6を備える場合、リブ部9と内側ハウジング3との間の空間は充填部材6を備える。リブ部9の形状は、
図12(b)、(c)に示すように、車両用車軸装置1eと同様なので、説明は省略する。
【0099】
<車両用車軸装置1gの解決課題とその効果>
以上説明したように、車両用車軸装置1gは以下の課題を解決し、効果を奏する。車両用車軸装置1gは、車両用車軸装置1fと同様の課題を有する。この課題に対して、車両用車軸装置1gのシャフトコア2gは、シャフトコア2fと同様に、リブ部9を含めた内側ハウジング3と接合する範囲が長い。よって、シャフト10gの強度と剛性が高まる。合わせて、リブ部9を長く形成することでシャフトコア2gの重量を軽減することができる。すなわち、シャフト10gの強度と剛性を維持しつつ、シャフトコア2gを軽量化することができる優れた効果を奏する。
【0100】
<車両用車軸装置1の製造方法の説明>
次に、
図18から
図20までを参照して、本発明の第二の態様に係る、車両用車軸装置1の製造方法を説明する。例として、第三実施形態の車両用車軸装置1cについて説明するが、他の実施形態においても同様の製造方法である。車両用車軸装置1の製造方法は、
図18(a)に示すように、まずシャフトコア2を内側ハウジング3に挿入する第一工程を行う。次に、
図18(b)に示すように、シャフトコア2の外周と内側ハウジング3の内周とを接合する第二工程を行う。なお、第一実施形態の車両用車軸装置1aと第二実施形態の車両用車軸装置1bは、第一工程と第二工程とが省かれる。
【0101】
次に
図18(c)に示すように、充填部材6をシャフト凹部7に充填するための型である充填部材型42を使用する。シャフト10(内側ハウジング3)の外周を充填部材型42に固定し、充填部材型42を加熱しながら、充填部材6をシャフト凹部7に充填してシャフト10を形成する第三工程を行う。次に、
図19(a)、(b)に示すように、シャフト10(内側ハウジング3)における外周に弾性部材4を具備して内側ユニット30を形成する第四工程を行う。次に、
図20に示すように、内側ユニット30を外側ハウジング5に挿入して固定する第五工程を行う。
【0102】
詳細に説明すると、第二工程では、
図18(b)に示すように、まず、シャフト第一端部20aと内側第一端部3aとを内側位置決め治具41にて位置決めする。次に、溶接部14において、シャフトコア2の外周と内側ハウジング3の内周との間の複数箇所を溶接する。溶接部14は、予め内側ハウジング3に貫通する穴を形成しておき、内側ハウジング3の外周側から溶接できる構造である。溶接部14の数は、シャフトコア2の軸線Cの方向の長さに応じて適宜設け、長さが長いほど多くする。
【0103】
第三工程では、充填部材6に使用する材料等に応じて具体的な注入方法が異なる。一つの方法は、予め充填部材6をシャフト凹部7の形状に合わせて成型又は加工しておき、シャフト凹部7に挿入する方法である。他の方法は、充填部材6の材料をシャフト凹部7に注入し、加熱及び加圧によって硬化させる方法である。使用する充填部材6の材料に応じて適切な方法を選択する。
【0104】
第四工程では、弾性部材4の例としてゴムを使用する場合について説明する。
図19(a)に示すように、シャフト凹部7にチャックシロ13を挿入する。ゴムを成形するための弾性部材型43は上下割りの構造であり、上型である第一弾性部材型44と下型である第二弾性部材型45からなる。第一弾性部材型44と第二弾性部材型45とがシャフト10を挟んで固定し、
図19(b)の状態にする。
【0105】
図19(b)に示すように、上型である第一弾性部材型44及び下型である第二弾性部材型45と、シャフト10との間には空間47を形成する。注入口46から、ゴムの材料を注入し、空間47にゴムの材料を満たして加硫処理を行う。ゴムは、加硫処理によって弾力性が発生し、シャフト10(内側ハウジング3)の外周と密着する。このとき、第一弾性部材型44と第二弾性部材型45の中心軸Mと軸線Cとが一致し、弾性部材4であるゴムをシャフト10の外周に均等に形成できる。
【0106】
また、弾性部材4の他の例としてエラストマー樹脂を使用する場合を説明する。弾性部材4は、予め対応する部材に応じた形状に成型しておく。弾性部材4の内側は、内側ハウジング3の外周の形状に合わせた筒状空間を形成し、外側は外側ハウジング5の内周に合わせた形状に形成しておく。弾性部材4は、内側ハウジング3の外周に沿って挿入する。弾性部材4と内側ハウジング3とが接触する部分は、接着剤を塗布して接着してもよい。或いは、弾性部材4の空間47のサイズが内側ハウジング3との間で締まり嵌めとなるよう形成し、弾性部材4を内側ハウジング3に圧入してもよい。
【0107】
第五工程では、
図20に示すように、内側ユニット30を外側ハウジング5の第二方向の側より挿入する。このとき、弾性部材4の外周と外側ハウジング5の内周との間に接着剤を塗布して接着してもよい。或いは、外側ハウジング5の開口部5aのサイズに対して、弾性部材4の外周寸法を大きくしておき、弾性部材4を弾性変形させながら外側ハウジング5に圧入してもよい。
【0108】
外側ハウジング5には、第一方向の側よりブッシュ11を挿入する。シャフトコア2は、穴11aに対して回転可能である。さらに、蓋21を外側ハウジング5の第一方向の側の端部に溶接する。シャフト10の突出部2jは、蓋21の穴21a、及びブッシュ11の穴11aに対して回転可能である。なお、チャックシロ13はそのまま取り付けておいてもよいし、外してもよい。ブッシュ11は、シャフトコア2に対する軸受けとして機能する。ブッシュ11は、蓋21とシャフト10とが共に金属の場合、シャフト10が回転したときに蓋21との間で摩擦が発生するのを防ぐ働きがある。さらに、ブッシュ11は、シャフト10の軸心位置を定める役割を果たす。例としてナイロン系の樹脂を使用するが、他の樹脂材料、或いはその他の材料を使用してもよい。蓋21は、外側ハウジング5と溶接できるよう、同系統の材料が好ましい。なお、ブッシュ11と蓋21は、予め外側ハウジング5に取り付けておいてもよい。
【0109】
<車両用車軸装置の製造方法における解決課題とその効果>
以上説明したように、車両用車軸装置1の製造方法は以下の課題を解決し、効果を奏する。車両用車軸装置1の製造方法は、車両用車軸装置1が車両走行時のローリングを抑制する機能を十分に果たすよう製造することが求められる。特に、充填部材6はシャフト10(内側ハウジング3)との密着性が不十分であると、シャフト10の強度と剛性を維持できないという課題がある。
【0110】
この課題に対して、車両用車軸装置1の製造方法は、一連の製造工程のなかで、各構成要素を順に組み合わせて製造できる。特に、第三工程において、シャフト凹部7に充填部材6を充填することができ、充填部材6とシャフト10(内側ハウジング3)とを密着できる。よって、この製造方法によれば、強度と剛性を備えかつ軽量化した車両用車軸装置1を製造することができる。
【0111】
<車両用車軸装置1と関連要素の関係説明>
次に、
図20を参照して、車両用車軸装置1における各構成要素と、ホイールマウントアセンブリ33との関係を説明する。車両用車軸装置1は、車輪付き車両(図示せず)に取り付けるためのサイズおよび構成である。車両用車軸装置1は、車輪付き車両に使用でき、自動車等の一般的な車両に加えて、トレーラ用にも適する。
図20に示す車両用車軸装置1は、片側の車輪に対応するものである。左右の車輪に対応する場合は、一対の車両用車軸装置1を使用する。
【0112】
外側ハウジング5は、台座15に固定し、ボルト等によって台座15を車体に固定する。ホイールマウントアセンブリ33は、スピンドル16とトーションアーム17とを備える。スピンドル16は、トーションアーム17の第一端部23に取り付ける。スピンドル16の軸は、シャフトコア2の軸線Cと実質的に平行である。スピンドル16は、ホイール(図示せず)をホイールマウントアセンブリ33に回転可能に取り付けるための構成である。
【0113】
内歯部18を有するスロット22は、トーションアーム17の第二端部24に形成する。スロット22は、セレーション部12cと、ナット、ボルトおよびワッシャを含むアーム保持セット25とを受けるサイズである。具体的には、セレーション部12cをスロット22内に滑り込み、アーム保持セット25のボルトは第二端部24に形成する貫通穴26に嵌合する。アーム保持セット25のボルトとナットを締め付けると、スロット22はセレーション部12cに対して圧縮し、内歯部18がセレーション部12cに係合する。
【0114】
車両用車軸装置1が耐荷重的に作動するとき、ホイールマウントアセンブリ33は、車両用車軸装置1が取り付けられている車両のホイールからの垂直荷重のほぼ全体をブッシュ11及び内側ユニット30に伝達する。車両用車軸装置1は、ホイールマウントアセンブリ33がシャフトコア2を介して伝達するねじり荷重を吸収する。
【符号の説明】
【0115】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g 車両用車軸装置
2、2c、2d、2e、2f、2g シャフトコア
3 内側ハウジング
3a 内側第一端部
4 弾性部材
5 外側ハウジング
6 充填部材
7 シャフト凹部
8、8a、8b、8c シャフトコア凹部
9 リブ部
9a 軸交差線
10、10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g シャフト
12 シャフトコア第二端部
20a シャフト第一端部
20b シャフト第二端部
23 第一端部
24 第二端部
30 内側ユニット
42 充填部材型
C 軸線
100d、100f 車両用車軸装置
200d、200f シャフトコア