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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055825
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】粘着剤組成物および粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20220401BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20220401BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20220401BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220401BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20220401BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J133/14
C09J163/00
C09J7/38
C09J7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163479
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 吉博
(72)【発明者】
【氏名】齊木 文弥
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA13
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA04
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB02
4J004EA06
4J004FA05
4J040DF031
4J040DF061
4J040EC022
4J040EC122
4J040GA05
4J040GA07
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA23
4J040LA01
4J040LA02
4J040LA08
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】 十分な耐熱性および耐電解液性を有する粘着剤組成物および粘着テープの提供。
【解決手段】 ベースポリマーと架橋剤とを反応させて得られた架橋ポリマーを含み、架橋剤がエポキシ系架橋剤であり、ベースポリマーの構成モノマーは、Tgが-20℃未満となるモノマーである(A)低Tg(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、Tgが-20℃以上となるモノマーである(B)高Tg(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(C)水酸基含有モノマー、および、(D)カルボキシル基含有モノマーを含み、構成モノマー中、(A)成分の含有量が40~95質量部であり、(B)成分の含有量が1~60質量部 であり、(C)成分の含有量が0.01~30質量部であり、(D)成分の含有量が0.5質量部超5質量部未満である、粘着剤組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースポリマーと架橋剤とを反応させて得られた架橋ポリマーを含む粘着剤組成物であって、
前記ベースポリマーが、
(A)低Tg(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、
(B)高Tg(メタ)アクリル酸エステルモノマー、
(C)水酸基含有モノマー、および、
(D)カルボキシル基含有モノマー、
を含む構成モノマーを共重合して得られた共重合体であり、
前記架橋剤が、エポキシ系架橋剤であり、
前記(A)低Tg(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、ホモポリマーとした際のTgが-20℃未満となるモノマーであり、
前記(B)高Tg(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、ホモポリマーとした際のTgが-20℃以上となるモノマーであり、
前記構成モノマーにおいて、前記(A)低Tg(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの含有量が40~95質量部であり、前記(B)高Tg(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量が1~60質量部であり、前記(C)水酸基含有モノマーの含有量が0.01~30質量部であり、前記(D)カルボキシル基含有モノマーの含有量が0.5質量部超5質量部未満である、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(B)高Tg(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、側鎖の炭素数が5以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび脂環基を持つ(メタ)アクリル酸エステルから選択される1種以上である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記構成モノマーにおける前記(C)水酸基含有モノマーの含有量が0.01質量部以上10質量部未満である、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記架橋ポリマーは、100質量部の前記ベースポリマーに対して、0.01質量部以上0.5質量部未満の前記エポキシ系架橋剤を反応させて得られたものである、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
電子部品または電子部品構成材料の固定に用いられる、電子部品止め用である、請求項1~4のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
コンデンサ素子巻き止め用である、請求項1~5のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
基材と、前記基材の少なくとも片面に設けられた粘着剤層と、を有する粘着テープであって、
前記基材が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)および植物繊維からなる群より選択された少なくとも一種からなり、
前記粘着剤層が、請求項1~6のいずれに記載の粘着剤組成物からなる
ことを特徴とする、粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物および粘着テープに関し、特に電子部品止め用粘着剤組成物および粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ素子は、陽極箔と陰極箔とをセパレーターを介して巻き取り、円筒状の筐体に挿入して製造される。また、巻き取られた陽極、陰極およびセパレーター(コンデンサ素子)は、粘着テープによって固定(巻き止め)される場合がある。
【0003】
コンデンサ素子の巻き止めに使用される粘着テープには、[1]半田リフロー後にも十分な巻き止め性能を発揮すること(耐熱性)、[2]コンデンサ内に充填される電解液に接触した状態でも十分な巻き止め性能を発揮すること(耐電解液性)、等が求められる。これらの性能を満たさない場合、即ち、リフロー時の熱等や電解液との接触等により粘着テープが緩んでしまう場合、コンデンサが十分な性能を発揮できない場合がある。
【0004】
コンデンサ素子の巻き止めに適した粘着テープとして、特許文献1には、基材と、該基材の少なくとも片面に配置された粘着剤層を備え、該粘着剤層が、ベースポリマーを含み、該ベースポリマーの酸価が45mgKOH/g~150mgKOH/gである、粘着テープが開示されている。特許文献1には、このような粘着テープによれば、耐熱性に優れ、高温下でもコンデンサ素子を良好に巻き止め得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-125026
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された粘着テープでは、耐熱性および耐電解液性(熱環境および電解液環境での接着性)が十分ではない場合があった。
【0007】
そこで本発明は、十分な耐熱性および耐電解液性を有する粘着剤組成物および粘着テープの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、鋭意研究のもと、特定の成分を有するベースポリマーを使用し、且つ、特定の架橋剤を使用することにより、上記課題を解決可能なことを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、
前記粘着剤組成物は、ベースポリマーと架橋剤とを反応させて得られた架橋ポリマーを含み、
前記ベースポリマーが、
(A)低Tg(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、
(B)高Tg(メタ)アクリル酸エステルモノマー、
(C)水酸基含有モノマー、および、
(D)カルボキシル基含有モノマー、
を含む構成モノマーを共重合して得られた共重合体であり、
前記架橋剤が、エポキシ系架橋剤であり、
前記(A)低Tg(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、ホモポリマーとした際のTgが-20℃未満となるモノマーであり、
前記(B)高Tg(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、ホモポリマーとした際のTgが-20℃以上となるモノマーであり、
前記構成モノマーにおいて、前記(A)低Tg(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの含有量が40~95質量部であり、前記(B)高Tg(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量が1~60質量部であり、前記(C)水酸基含有モノマーの含有量が0.01~30質量部であり、前記(D)カルボキシル基含有モノマーの含有量が0.5質量部超5質量部未満である、粘着剤組成物である。
【0010】
前記(B)高Tg(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、側鎖の炭素数が5以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび脂環基を持つ(メタ)アクリル酸エステルから選択される1種以上であってもよい。
前記構成モノマーにおける前記(C)水酸基含有モノマーの含有量が0.01質量部以上10質量部未満であってもよい。
前記架橋ポリマーは、100質量部の前記ベースポリマーに対して、0.01質量部以上0.5質量部未満の前記エポキシ系架橋剤を反応させて得られたものであってもよい。
電子部品または電子部品構成材料の固定に用いられる、電子部品止め用であってもよい。
コンデンサ素子巻き止め用であってもよい。
【0011】
また、本発明は、
前記粘着テープは、基材と、前記基材の少なくとも片面に設けられた粘着剤層と、を有し、
前記基材が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)および植物繊維からなる群より選択された少なくとも一種からなり、
前記粘着剤層が、前記粘着剤組成物からなる、粘着テープであってもよい。
この粘着テープは、電子部品または電子部品構成材料の固定に用いられる、電子部品止め用粘着テープとして使用可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、十分な耐熱性および耐電解液性を有する粘着剤組成物および粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る粘着剤組成物および粘着テープについて詳細に説明するが、本発明は以下には何ら限定されない。
【0014】
本明細書において、複数の上限値と複数の下限値とが別々に記載されている場合、これらの上限値と下限値を自由に組み合わせて設定可能な全ての数値範囲が本明細書に記載されているものと解するべきである。
【0015】
本明細書において開示された化合物に異性体が存在する場合、特に断らない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
【0016】
本明細書において、含有量や配合量等について説明されたものは、特に断らない限り、揮発成分を除いた成分(固形分)についての量を示すものとする。
【0017】
本明細書において、電子部品とは、電気製品に使用される部品であれば特に限定されない。電子部品の具体例としては、コンデンサ、コイル、トランス、電池、リード線等が挙げられる。電子部品構成材料とは、これらの電子部品を構成する材料である。
【0018】
<<<<粘着剤組成物>>>>
<<<粘着剤組成物の成分>>>
粘着剤組成物は、架橋ポリマーを必須的に含む。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。
【0019】
<<架橋ポリマー>>
架橋ポリマーは、ベースポリマーを架橋させて得られたものであり、ベースポリマーと架橋剤とを反応させて得られたものである。
【0020】
<ベースポリマー>
ベースポリマーは、複数の共重合可能なモノマー(構成モノマーとする。)を共重合させて得られた共重合体である。以下、ベースポリマーの構成モノマー等について説明する。
【0021】
(構成モノマー)
構成モノマーは、(A)低Tg(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、(B)高Tg(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(C)水酸基含有モノマー、および、(D)カルボキシル基含有モノマーを含む。以下では、これらの成分を、単に(A)成分~(D)成分等と表記する場合がある。なお、本発明において、カルボキシル基を有するモノマーである場合には、常に(D)成分に該当するものとし、(D)成分以外であって水酸基を有するモノマーである場合には、常に(C)成分に該当するものとする。
【0022】
(A)低Tg(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ホモポリマーとした際のTgが-20℃未満、好ましくは-50℃未満となるモノマーである。Tgの下限値は特に限定されないが、例えば-90℃又は-80℃である。
【0023】
(A)成分としては、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA、Tg:-70℃)、アクリル酸イソノニル(INA、Tg:-58℃)、アクリル酸ブチル(BA、Tg:-55℃)、メタクリル酸ラウリル(LMA、Tg:-65℃)等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
(B)高Tgモノマーは、ホモポリマーとした際のTgが-20℃以上、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上となるモノマーである。Tgの上限値は特に限定されないが、例えば200℃、190℃又は180℃である。
【0025】
(B)成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび脂環基を持つ(メタ)アクリル酸エステル、並びに、(メタ)アクリルアミド誘導体から選択される1種以上であることが好ましい。脂環基は、単環構造であっても多環構造であってもよい。
【0026】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび脂環基を持つ(メタ)アクリル酸エステルは、側鎖の炭素数が5以上であることが好ましい。なお、この炭素数の上限は特に限定されないが、例えば、30、25または20等とすればよい。
【0027】
(メタ)アクリルアミド誘導体とは、(メタ)アクリルアミドの末端水素原子が他の置換基で置換された化合物である。
【0028】
側鎖の炭素数が5以上の、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび脂環基を持つ(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸イソボルニル(IBOA、Tg:97℃、側鎖炭素数:10)、アクリル酸シクロヘキシル(CHA、Tg:15℃、側鎖炭素数:6)、アクリル酸ジシクロペンタニル(Tg:120℃、側鎖炭素数:10)、アクリル酸イソステアリル(ISA、Tg:-18℃、側鎖炭素数:18)、メタクリル酸イソボルニル(IBOMA、Tg:180℃、側鎖酸素数:10)、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA、Tg:66℃、側鎖炭素数6)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(Tg:175℃、側鎖炭素数:10)等が挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリルアミド誘導体としては、アクリロイルモルフォリン(ACMO、Tg:145℃、アクリルアミド誘導体)、ジエチルアクリルアミド(DEAA、Tg:81℃、アクリルアミド誘導体)、ジメチルアクリルアミド(DMAA、Tg:119℃、アクリルアミド誘導体)、イソプロピルアクリルアミド(NIPAM、Tg:134℃、アクリルアミド誘導体)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA、Tg:134℃、アクリルアミド誘導体)等が挙げられる。
【0030】
これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
(A)成分および(B)成分において表記されたTgは、各モノマーをホモポリマーとした際のTgを示す。各Tgは従来公知の物性であり、例えば、各ホモポリマーについて示差走査熱量測定(DSC)を実施することで計測することができる。
【0032】
(C)水酸基含有モノマーは、水酸基と、他の構成モノマーと共重合するための官能基(不飽和炭素結合を有する官能基であり、例えばビニル基)とを有する(典型的にはこれらの官能基を1つずつ有する)。
【0033】
(C)成分としては、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(2HEA)、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)、アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、アクリル酸1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
(D)カルボキシル基含有モノマーは、カルボキシル基と、他の構成モノマーと共重合するための官能基(不飽和炭素結合を有する官能基であり、例えばビニル基)とを有する(典型的にはこれらの官能基を1つずつ有する)。
【0035】
(D)成分としては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、2-アクリロイロキシエチル-コハク酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチル-フタル酸等が挙げられる。
【0036】
構成モノマーにおいて、(A)成分の含有量は、好ましくは40~95質量部であり、より好ましくは60~95質量部であり、更に好ましくは62.5~90質量部である。
【0037】
構成モノマーにおいて、(B)成分の含有量は、好ましくは1~60質量部(または、1質量部以上60質量部未満)であり、より好ましくは1~40質量部であり、更に好ましくは5~35質量部であり、特に好ましくは15~35質量部である。
【0038】
構成モノマーにおいて、(C)成分の含有量は、好ましくは0.01~30質量部であり、より好ましくは0.01~15質量部であり、更に好ましくは0.01~10質量部(または、0.01質量部以上10質量部未満)であり、更により好ましくは0.5~9質量部であり、特に好ましくは1.5~8質量部である。
【0039】
構成モノマーにおいて、(D)カルボキシル基含有モノマーの含有量は、好ましくは0.5質量部超5質量部未満であり、より好ましくは0.7~4.5質量部であり、更に好ましくは1~4質量部である。
【0040】
(A)~(D)成分の含有量の合計は、構成モノマー全体に対して、50質量以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上、または100質量%である。
【0041】
構成モノマーとしては、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の構成モノマーと共重合するための官能基を有し、且つ、(A)~(D)成分とは異なる、従来公知のその他のモノマーを含んでいてもよい。
【0042】
(ベースポリマーの重量平均分子量)
ベースポリマーの重量平均分子量は、特に限定されず、100,000~3,000,000、200,000~2,000,000、300,000~1,500,000等とすることができる。
【0043】
ベースポリマーの重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)により測定したポリスチレン換算分子量から求めたものである。
【0044】
<架橋剤>
架橋剤は、エポキシ系架橋剤を含む。
【0045】
エポキシ系架橋剤としては、特に限定されず、一分子中にエポキシ基を2個以上(好ましくは2~5個、より好ましくは2~4個)有する化合物を使用可能である。エポキシ系架橋剤としては、例えば、グリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を例示できる。エポキシ系架橋剤は、三菱ガス化学社製「テトラッドX」等の市販品を使用することができる。
【0046】
ベースポリマーを100質量部とした場合、エポキシ系架橋剤の含有量を、0.01質量部以上0.5質量部未満とすることが好ましく、0.02~0.25質量部とすることがより好ましく、0.05~0.1質量部とすることが更に好ましい。このような範囲とすることで、粘着剤組成物の耐熱性および耐電解液性を高めることが可能である。
【0047】
架橋剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、イソシアネート系、ポリオール、ポリアミン等の公知の架橋剤を含んでいてもよい。
【0048】
架橋剤全体におけるエポキシ系架橋剤の含有量は、50質量以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上、または100質量%である。
【0049】
本発明によれば、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分を所定の含有量にて含む構成モノマーと、エポキシ系架橋剤と、を反応させて得られる架橋ポリマーを使用することにより、Tgが低い(A)成分由来の被着体への濡れ性、Tgが高い(B)成分由来の凝集力による基材の反発力に耐える耐剥がれ性、(C)成分由来の水酸基と(D)成分由来のカルボキシル基との縮合反応(例えば、リフローによる高温環境に曝された際の縮合反応)、エポキシ系架橋剤由来の強固なポリマー間の結合等がバランスよく生じるため、優れた耐熱性および耐電解液性が奏されるものと予想される。
【0050】
<<<その他の成分>>>
粘着剤組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の成分を含むことができる。その他の成分としては、充填剤(例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、カーボンブラックなど)、界面活性剤、有機顔料、無機顔料、安定剤、シランカップリング剤、スペーサー粒子、粘着付与剤、可塑剤などの公知の添加剤が挙げられる。
【0051】
また、粘着剤組成物の製造時には、作業性を向上させるために、溶媒等が添加される場合がある。製造時に配合され得るこのような溶媒等は、粘着剤組成物に残存していてもよいが、溶媒が除去されていることが好ましい。
【0052】
<<<<粘着テープ>>>>
粘着テープは、基材と、基材の少なくとも片面に設けられた粘着剤層とを有する。
【0053】
粘着テープの幅は、適用対象(例えば、電子部品)のサイズ等を考慮して、適宜調整すればよい。
【0054】
粘着テープは、例えば、長尺状に形成され、軸芯に巻き取られた状態で提供されるが、テープ状に裁断される前のフィルム状のものとして提供されてもよい。
【0055】
粘着テープは、基材の両面に粘着剤層を有する両面テープであってもよい。
【0056】
粘着テープは、従来公知のその他の層を含んでいてもよい。その他の層としては、例えば、基材と粘着剤層との接着性を高めるプライマー層や、粘着剤層に接触するように設けられ、使用時には除去されるセパレーター層等が挙げられる。なお、生産性や環境負荷を考慮すると、直巻き(ノンセパレーター)であることが好ましい。
【0057】
<<<粘着剤層>>>
粘着剤層は、前述の粘着剤組成物からなる。
【0058】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、例えば、2~100μmまたは5~50μmとすることができる。
【0059】
<<<基材>>>
基材は、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜選択できるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)及び植物繊維からなる群より選択された少なくとも一種からなることが好ましい。アルミ電解コンデンサ用等とする場合、耐加水分解性の観点から、基材が、ポリプロピレン(PP)および/またはポリフェニレンサルファイド(PPS)からなることが好ましい。
【0060】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)は、合成樹脂フィルムであってもよいし、合成樹脂繊維であってもよい。
【0061】
基材が合成樹脂繊維および植物繊維からなる場合、抄くことで形成されたものであってもよい。
【0062】
また、基材が合成樹脂フィルムである場合、耐熱性を向上させるという観点から、延伸フィルム(例えば、一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルム)であることが好ましい。
【0063】
基材の厚さは、特に限定されないが、例えば、5~100μmまたは9~50μmとすることができる。
【0064】
基材層の表面には、適宜の処理(粘着剤層との密着性を向上させるためのコロナ処理や、基材の粘着剤層と接触しない面に実施される剥離処理等)が施されていてもよい。
【0065】
<<<<粘着剤組成物および粘着テープの製造方法>>>>
粘着剤組成物および粘着テープは、従来公知の方法に従って製造することができる。
【0066】
粘着剤組成物は、以下の手順により製造可能である。
先ず、ベースポリマーと架橋剤とを含み、必要に応じて、その他の添加剤や溶媒を含む原料組成物を調製する(原料調製工程)。
次に、原料組成物を加熱し、溶媒を除去するとともに、ベースポリマーを架橋し、粘着剤組成物を得る(架橋工程)。
【0067】
粘着テープは、以下の手順により製造可能である。
先ず、ベースポリマーと架橋剤とを含み、必要に応じて、その他の添加剤や溶媒を含む原料組成物を調製する(原料調製工程)。
次に、原料組成物を基材上に塗工する(塗工工程)。
次に、原料組成物を加熱することで、溶媒を除去するとともに、ベースポリマーを架橋し、粘着テープを得る(架橋工程)。
また、必要に応じて、切断および巻き取り等を行う(加工工程)。
【0068】
予めフィルム状等に形成した粘着剤層を基材に積層させることで、粘着テープを製造してもよい。
【0069】
架橋工程における加熱条件は特に限定されないが、例えば、90~120℃にて3~10分の加熱とすることができる。また、架橋工程における加熱条件は、例えば、20~50℃(好ましくは、30~50℃)にて、10~100時間(好ましくは、30~100時間)の加熱とすることもできる。架橋工程において、溶媒の除去と、架橋とは、同時に実施してもよいし、別々に実施してもよい。例えば、架橋工程は、主に溶媒を除去することを目的として90~120℃にて3~10分の加熱を行い、主に架橋を完了させることを目的として30~50℃にて10~100時間の加熱を行う、という工程であってもよい。
【0070】
原料組成物が含有可能な溶媒としては、特に限定されず、従来公知の溶媒を使用可能である。
【0071】
<<<<用途>>>>
本発明に係る粘着剤組成物および粘着テープは、種々の用途に使用することができるが、電子部品止め用(電子部品または電子部品構成材料の固定用)とすることが好ましい。本発明に係る粘着剤組成物および粘着テープは、特に、電解液に接触した状態や高熱環境に曝された後であっても、十分な耐熱性および耐電解液性を有するという点で、コンデンサ巻き止め用(特に、アルミコンデンサ巻き止め用)とすることが最適である。より具体的には、陽極箔と陰極箔とをセパレーターまたは電解紙を介して捲回した構造を有し、電解液を含むコンデンサ素子の、外周部の固定用(巻止め用)として有用である。
【0072】
本発明に係る粘着剤組成物および粘着テープのその他の用途としては、耐熱性および耐電解液性に優れるという観点から、Liイオン2次電池の電極絶縁用として使用することもできる。
【0073】
なお、コンデンサ素子以外の電子部品においても、リフローによる高熱環境に曝され、且つ、コンデンサ素子から滲み出た電解液等に暴露し得る。そのため、本発明に係る粘着剤組成物および粘着テープは、電子部品止め用(電子部品または電子部品構成材料の固定用)の範囲内で、コンデンサ素子巻き止め用以外の用途にも使用することができる。
【0074】
また、粘着剤組成物および粘着テープをコンデンサ素子巻き止め用とした場合、径が小さいほど基材の反発力による端末剥がれへの影響が大きくなる。そのため、小径のコンデンサ程、高い粘着性能が求められる。本発明に係る粘着剤組成物および粘着テープは、優れた粘着性を有するため、小径のコンデンサ(例えば、直径4-20mmのコンデンサ)の素子用とすることが可能である。
【実施例0075】
以下、実施例および比較例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらには何ら限定されない。
【0076】
<<<粘着テープの製造>>>
以下の手順に基づいて、粘着テープを製造した。
基材として二軸延伸ポリフェニレンサルファイドフィルム[商品名「トレリナ3040」(厚さ:16μm)、東レ(株)製、両面コロナ処理]を用いた。
基材の一方の面上に、プライマーを塗布し、乾燥させた。
他方の面上に長鎖アルキル系剥離剤を塗布し、乾燥させた(乾燥後の塗布量0.01g/m)。
次いで、基材のプライマー塗布面に、ベースポリマーと架橋剤と溶媒とを含む原料組成物を塗布し、100℃にて3分間加熱し、溶媒を除去し、粘着剤組成物からなる粘着剤層(厚さ:10μmまたは16μm)を形成した。
なお、架橋に際しては、50℃にて72時間加熱し、ベースポリマーの架橋を完了させた。
【0077】
各実施例および比較例は、使用した粘着剤組成物を変更した粘着テープである。
各実施例および比較例で使用した、ベースポリマーの構成モノマーの種類および架橋剤の種類、並びに、それらの配合量(固形分の質量部)を表に示す。
【0078】
なお、表中、「FA-513M」は、日立化成株式会社製のメタクリル酸ジシクロペンタニルであり、「テトラッドX」は、三菱ガス化学社製のエポキシ系架橋剤であり、「コロネートL」は、東ソー株式会社製のポリイソシアネート系の架橋剤である。
【0079】
なお、表中に示されたTgは、従来公知の物性であり、例えば、各ホモポリマーについて示差走査熱量測定(DSC)を実施することで計測することができ、表中に示された炭素数は側鎖の炭素数を示している。
【0080】
<<<評価>>>
各実施例および比較例に係る粘着テープについて、端末剥がれおよび巻きズレの評価を行った。
【0081】
<<端末剥がれ評価1>>
<評価方法>
5℃の雰囲気下で2mmφのアルミ棒に、粘着テープ(幅5mm)を50mm巻き付けて評価用試料を作製した。該評価用試料を23℃のγ-ブチルラクトンに12時間浸漬させ、粘着テープ端末の剥がれた長さを確認した。なお、γ-ブチルラクトンは、電解液として多用される溶剤である。
【0082】
<<端末剥がれ評価2>>
<評価方法>
5℃の雰囲気下で2mmφのアルミ棒に、粘着テープ(幅5mm)を50mm巻き付けて評価用試料を作製した。該評価用試料を105℃のγ-ブチルラクトンに12時間浸漬させ、粘着テープ端末の剥がれた長さを確認した。なお、γ-ブチルラクトンは、電解液として多用される溶剤である。
【0083】
<<GBL含浸後加熱収縮率評価1>>
<評価方法>
アルミパネルに貼付した粘着テープの剥離剤処理面に、評価用粘着テープ(幅5mm)を50mm貼り付けて評価用試料を作製した。該評価用試料を25℃のγ-ブチルラクトンに5分間浸漬し取り出したのち、200℃のオーブンで1時間加熱し、粘着テープの収縮率を下記式に基づいて算出した。
収縮率(%)=(1-加熱後のテープ長さ/加熱前のテープ長さ)×100
【0084】
<<GBL含浸後加熱収縮率評価2>>
<評価方法>
アルミパネルに貼付した粘着テープの剥離剤処理面に、評価用粘着テープ(幅5mm)を50mm貼り付けて評価用試料を作製した。該評価用試料を25℃のγ-ブチルラクトンに5分間浸漬し取り出したのち、260℃のオーブンで1時間加熱し、粘着テープの収縮率を下記式に基づいて算出した。
収縮率(%)=(1-加熱後のテープ長さ/加熱前のテープ長さ)×100
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】