IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 帝人株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-卵の加熱調理品およびその製造方法 図1
  • 特開-卵の加熱調理品およびその製造方法 図2
  • 特開-卵の加熱調理品およびその製造方法 図3
  • 特開-卵の加熱調理品およびその製造方法 図4
  • 特開-卵の加熱調理品およびその製造方法 図5
  • 特開-卵の加熱調理品およびその製造方法 図6
  • 特開-卵の加熱調理品およびその製造方法 図7
  • 特開-卵の加熱調理品およびその製造方法 図8
  • 特開-卵の加熱調理品およびその製造方法 図9
  • 特開-卵の加熱調理品およびその製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055853
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】卵の加熱調理品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20220401BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20220401BHJP
【FI】
A23L15/00 Z
A23L15/00 D
A23L29/244
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163524
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】豊原 清綱
【テーマコード(参考)】
4B041
4B042
【Fターム(参考)】
4B041LC01
4B041LC03
4B041LD01
4B041LH08
4B041LK03
4B041LK37
4B041LK38
4B041LP01
4B042AC03
4B042AC05
4B042AD30
4B042AE03
4B042AE10
4B042AG07
4B042AH09
4B042AK01
4B042AK09
4B042AK15
4B042AP02
4B042AP04
(57)【要約】
【課題】ジューシー感がある、卵の生臭みが軽減されている、柔らかい食感をもつ、および時間経過後または冷凍解凍後も離水感がない、のうちの少なくとも一つの特性をもつ卵の加熱調理品、および調理者に熟練した技術がなくてもそうした特性をもつ卵の加熱調理品を製造できる、卵の加熱調理品の製造法を提供する。
【解決手段】重量平均分子量が500から4000のフルクタンが溶解している、乳清を含まない、鳥類の卵の加熱調理品、および鳥類の卵から液卵を調製する工程、前記卵液に乳清を含まない重量平均分子量が500から4000のフルクタンを溶解させてフルクタン含有卵液を調製する工程、および前記フルクタン含有卵液を加熱して少なくともその一部を凝固させる工程を含む、鳥類の卵の加熱調理品を製造する方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が500から4000のフルクタンが溶解している、乳清を含まない、鳥類の卵の加熱調理品。
【請求項2】
フルクタンが加熱調理品全体に均一濃度で溶解している請求項1に記載の加熱調理品。
【請求項3】
フルクタンがイヌリンである請求項1または2に記載の加熱調理品。
【請求項4】
鳥類の卵100質量部に対して0.5から20質量部のフルクタンが溶解している請求項1から3のいずれかに記載の加熱調理品。
【請求項5】
スクランブルエッグ、オムレツ、または卵焼きである、請求項1から4のいずれかに記載の加熱調理品。
【請求項6】
鳥類の卵から液卵を調製する工程、前記卵液に乳清を含まない重量平均分子量が500から4000のフルクタンを溶解させてフルクタン含有卵液を調製する工程、および前記フルクタン含有卵液を加熱して少なくともその一部を凝固させる工程を含む、鳥類の卵の加熱調理品を製造する方法。
【請求項7】
フルクタンがイヌリンである請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
溶解させるフルクタンの量が加熱調理品100質量部に対して0.5から20質量部である請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
加熱調理品がスクランブルエッグ、オムレツ、または卵焼きである請求項6から8のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食感、風味、および/または離水感の点で優れた鳥類の卵(以下、鳥類の卵を単に「卵」とも表記する。)の加熱調理品、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
卵は安定的に供給される優れた食品素材であり、卵料理は多くの者が好む料理であるが、加熱調理後に提供される卵料理は、加熱温度、加熱時間、加熱中の攪拌方法などによって食感が変わりやすく、一般的においしいとされるフワフワ、トロトロといった柔らかい食感で提供するには調理者の熟練した技術が必要である。また、卵の加熱調理品は調理後の余熱、時間経過により卵蛋白質の凝集固化が進行し、フワフワ、トロトロとした食感が維持されるのは短時間である。このため大量の卵の加熱調理は難しく、レストラン等の外食業界ではオーダー毎に加熱調理が行われる場合もある。
【0003】
フルクタンはフルクトシド結合によって結合したフルクトースの重合体であり、様々な植物に貯蔵炭水化物として含まれている。特にチコリやキクイモに含まれる1,2-フルクトシド結合で重合したフルクタンであるイヌリンは、重要な水溶性食物繊維としてその利用が拡大している。
【0004】
イヌリンは難消化性であることから大腸まで送達されて腸内細菌、特に善玉菌であるビフィズス菌の増殖に寄与することが分かっている。また、カロリーが低くGI値を低く保つ効果があることも知られている。
【0005】
イヌリンの用途については様々な検討がなされているが、高濃度溶液から作ったペーストは、そのまったりして味が少ない感触がラードに似ていることから、一部食品の脂肪の置き換えなどにも利用されている。また、各種の苦みなどをマスキングする作用が知られている。
【0006】
特許文献1では、イヌリンを加熱殺菌卵あるいは凍結卵に加えることで、卵白の濁り、卵黄のゲル化、あるいはざらつきといった変性が起こりにくいことが述べられているが、これを加熱したときに食感、食味が改善されることについては明らかにされていない。
【0007】
特許文献2では、総油分5~50重量%の水中油型乳化物であって、pH4.0~6.8に調整したものを添加したスクランブルエッグ、オムレツ、卵焼き等の卵の加熱調理品が記載されている。この乳化物の添加により充分な乳味、コク味を付与しながら、調理者の熟練した技術を必要とせずともフワフワ、トロトロの柔らかい食感に仕上がり、1時間経過後も食感を維持することができるが、カロリーの高い脂質を添加することは低カロリーで健康的な食品には使いにくい。
なお、特許文献2には、ふわふわの卵焼きを得るための添加物として、牛乳やマヨネーズ、バターが列記されている。
【0008】
また、特許文献3には、脱糖した液卵にトレハロースを添加して噴霧乾燥することで得られる、卵のコクの強化組成物が記載されている。この組成物は、加熱殺菌しても凝固せず、風味の劣化やざらつきがない。
【0009】
また、非特許文献1には、社会福祉法人 彗誠会 特別養護老人ホーム 帯広けいせい苑
提供による、卵、ホエーイヌリンクリーム、塩、ゲル化剤、および油を用いた卵焼きのレシピが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008-206399号公報
【特許文献2】特開2018-143167号公報
【特許文献3】特開2005-000014号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】とかちABCプロジェクト「ホエーイヌリンクリームを使用したレシピ」、[令和2年9月23日検索]、インターネット〈URL:http://www.tokachi-zaidan.jp/t-cityarea_new/recipe/kaigo01.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、
a)ジューシー感がある
b)卵の生臭みが軽減されている
c)フワフワ、トロトロの柔らかい食感をもつ、および
d)時間経過後、あるいは冷凍解凍後も離水感がない食感が維持されている
のうちの少なくとも一つの特性をもつ卵の加熱調理品を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、調理者に熟練した技術がなくても上記特性を有する卵の加熱調理品を製造できる、卵の加熱調理品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は重量平均分子量が500から4000のフルクタンが溶解している、乳清を含まない、卵の加熱調理品である。
【0015】
また、本発明は卵から液卵を調製する工程、前記卵液に乳清を含まない重量平均分子量が500から4000のフルクタンを溶解させてフルクタン含有卵液を調製する工程、および前記フルクタン含有卵液を加熱して少なくともその一部を凝固させる工程を含む、卵の加熱調理品を製造する方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の卵の加熱調理品によれば、
a)ジューシー感がある
b)卵の生臭みが軽減されている
c)フワフワ、トロトロの柔らかい食感をもつ、および
d)時間経過後、あるいは冷凍解凍後も離水感がない食感が維持されている
のうちの少なくとも一つの特性を有する、という効果が得られる。
また、本発明の卵の加熱調理品の製造方法には、調理者に熟練した技術がなくても上記特性を有する卵の加熱調理品が得られる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】比較例1で得られた90秒加熱後のスクランブルエッグを示す写真である。
図2】実施例1で得られた90秒加熱後のスクランブルエッグを示す写真である。
図3】実施例2で得られた90秒加熱後のスクランブルエッグを示す写真である。
図4】実施例3で得られた90秒加熱後のスクランブルエッグを示す写真である。
図5】実施例4で得られた120秒加熱後のスクランブルエッグを示す写真である。
図6】実施例5で得られた120秒加熱後のスクランブルエッグを示す写真である。
図7】比較例2で得られた解凍後の卵焼きの断面を示す写真である。
図8】実施例6で得られた解凍後の卵焼きの断面を示す写真である。
図9】実施例7で得られた解凍後の卵焼きの断面を示す写真である。
図10】実施例8で得られた解凍後の卵焼きの断面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は重量平均分子量が500から4000のフルクタンが溶解している、乳清を含まない、卵の加熱調理品である。なお、乳清は「ホエー」または「ホエイ」とも称される。
【0019】
本発明の加熱調理品に用いられるフルクタンは、フルクトシド結合によって結合したフルクトースをモノマーとする重合体である。天然のフルクトシド結合としては1,2-フルクトシド結合および1,6-フルクトシド結合があり、これらの組み合わせによって直鎖型、分岐型のフルクタンが存在する。
【0020】
本発明に用いられる直鎖型のフルクタンとしては、イヌリンであることが好ましい。イヌリンはキク科植物の根茎によく存在することが知られており、なかでもチコリから抽出されたイヌリンが最も多く使用されている。また、この直鎖型フルクタンには酵素合成したものもあり、食品素材として販売されているので本発明にも用いられる。
【0021】
一方、分岐型フルクタンはユリ科植物などによくみられるが、食品としてはアガベから抽出されたアガベイヌリンが広く用いられており、本発明にも用いられる。
【0022】
本発明に用いられるフルクタンは、直鎖型であっても分岐型であってもよいが、特に好ましいのは、直鎖型の分子量をある程度分画したイヌリンである。このようなものとしては、チコリから抽出されたイヌリンがその安定供給の面から最も好ましい。
【0023】
本発明に用いられるフルクタンの重量平均分子量は500から4000の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは500から1500であり、最も好ましいのは800から1500の範囲である。低い分子量のものを用いるとより少ない量で所定の凝固を得ることができ、高分子量になるほど多くの量が必要となる。一方、低分子量になるとフルクタン自体に甘味が生じるため、使用に適さない場合があり得る。
【0024】
本発明に用いられるフルクタンの量は、用いる卵の量を100質量部として、おおむね0.5から20質量部の範囲である。より高い効果を得るために使用するフルクタンの添加量の範囲は、用いるフルクタンの分子量とも関連している。目安としては、分子量が1500よりも低いフルクタンを用いる場合には0.5から10質量部であり、分子量が1500から4000のフルクタンを用いる場合には0.5から5質量部である。
【0025】
本発明においては、前記フルクタンを添加することによって、本来急速に進行する卵の加熱変化を緩慢にし、またフルクタンの効果によって離水がしにくくなる。特に加熱変化の緩慢化の効果は分子量が低いもののほうが強く、より少ない添加量でもその効果を得ることができる。
【0026】
本発明で用いられる卵は鳥類の卵であり、例えば鶏卵、うずらの卵、アヒルの卵が挙げられる。
【0027】
また、本発明で用いられる卵としては、全卵でもその一部であってもよく、卵黄のみ、卵白のみ、または卵黄と卵白を任意の割合の混合物であってもよい。また、冷凍卵、加糖卵、成分調整卵などの卵加工品、卵製品も使用可能である。
【0028】
本発明の加熱調理品には前記フルクタンが溶解している。すなわち、本発明の加熱調理品中のフルクタンは、加熱調理品に含まれる水分中に溶解状態で存在している。
【0029】
本発明の加熱調理品には、前記フルクタンが溶解している領域が存在していればよい。例えば加熱調理品中の一部で水分が失われて前記フルクタンが析出し、もはや溶解しているとはいえない領域があっても、前記フルクタンが溶解している別の領域があるかぎり、本発明の加熱調理品である。
【0030】
もっとも、本発明の加熱調理品におけるフルクタンは、食感が均一になるよう、加熱調理品全体に均一濃度で溶解していることが好ましい。
【0031】
本発明の加熱調理品にいう加熱とは、その少なくとも一部で卵の加熱による凝固がおきる程度の加熱をいう。すなわち、本発明の加熱調理品は、その一部において卵が加熱凝固しているものであっても、その全部において卵が加熱凝固しているものであってもよい。
【0032】
ここで、卵の凝固とは卵が固まって流動性を失うことをいう。かかる凝固は人がみて認識できればよく、その程度は問わない。なお、卵黄は65℃前後から凝固がはじまり75℃以上で完全に凝固し、卵白は60℃前後から凝固がはじまり80℃以上で完全に凝固するのが通常である。
【0033】
また、本明細書では「加熱調理品」の語を用いているが、この語は卵の加熱操作の典型例をもって表現したものであり、「加熱加工品」、「加熱処理品」、「加熱凝固品」、または「加熱変性品」と同義であって、上述した卵の加熱凝固を生じた部分を有する限り、いずれも本発明の加熱調理品の概念に含まれる。したがって、本発明の加熱調理品には、調理器具や厨房設備を用いて製造されたものに限られず、例えば食品工場、研究施設、食品販売店の店頭で販売時に製造されるものも含まれる。
【0034】
一般的な加熱調理の方法としては、フライパン加熱、電子レンジ加熱、鍋加熱、湯煎加熱などが挙げられる。
【0035】
本発明の加熱調理品には、卵の他に、チーズ、バター、牛乳、クリームなどの乳製品、トマト、タマネギなどの野菜類、栄養強化のための食品添加物、保存安定性向上のための食品添加物、食感向上のための食品添加物(例えばゲル化剤)を含めても含めなくてもよい。
【0036】
本発明の卵の加熱調理品の例としては、スクランブルエッグ、オムレツ、および卵焼きが挙げられる。
【0037】
また、本発明は卵から液卵を調製する工程、前記卵液に乳清を含まない重量平均分子量が500から4000のフルクタンを溶解させてフルクタン含有卵液を調製する工程、および前記フルクタン含有卵液を加熱して少なくともその一部を凝固させる工程を含む、卵の加熱調理品を製造する方法である。
【0038】
かかる本発明の製造方法で用いる「卵」や「フルクタン」、ならびに「加熱」、「凝固」、「調理」、および「加熱調理品」の定義、具体例、および好適例は、いずれも本発明の加熱調理品について前述したものと同一である。
【0039】
本発明の製造方法における「液卵」は、前記卵を割ることで調製できる。こうした割卵は人手で行ってもよいが、割卵機を用いてもよい。割卵したものを、卵黄と卵白に自動的
に分ける装置に供することもできる。また、必要により卵殻の小片、カラザ、卵黄膜などを取り除くための濾過工程を加えてもよい。かかる濾過操作を行う場合は、液卵を適宜冷却しつつ行うことが好ましい。
【0040】
通常、液卵は混合して均一化されるが、均一化の程度は製造しようとする加熱調理品によって異なり、不十分な均一化の方が好ましい場合もある。また、液卵には加熱による凝固を起こさない低温殺菌工程を加えてもよい。
【0041】
前記卵液にフルクタンを溶解させてフルクタン含有卵液を調製する工程は、用いたフルクタンが溶解している卵液が得られるかぎり、人手で行ってもよく、フルクタンの投入装置や攪拌装置を用いて行ってもよい。かかるフルクタンの液卵への溶解は均一であることが好ましいが、液卵の一部にでもフルクタンを溶解させている限り、本発明の製造方法の範囲に含まれる。
【0042】
前記フルクタン含有卵液を加熱して少なくともその一部を凝固させる工程は、静置状態で行っても、随時または常時攪拌しながら行ってもよい。
【0043】
本発明の製造方法は、卵から液卵を調製する工程、フルクタン含有卵液を調製する工程、およびフルクタン含有卵液を加熱凝固させる工程を含むが、それらの工程はこの記載順になされるのが通常である。
【0044】
もっとも、例えば攪拌操作など液卵を調製する工程を行いつつ、それにフルクタンを溶解させる工程も行うことも可能であるし、フルクタンを添加する操作を行いつつ、それを加熱する工程も行うことも可能であって、それらも本発明の製造方法の範囲に含まれる。
【実施例0045】
以下の本発明の実施例においては、次の評価方法を採用した。
(1)重量平均分子量: ゲルろ過クロマトグラフ法を用いて次の条件によって測定した。
液体クロマトグラフ装置 島津製作所製 Prominence、検出器 RID-10A、カラム Tosoh製 TSKgel G2500WXL、移動相 水。
【0046】
(2)風味の評価:5または6人のパネラーが食することにより風味評価を行った。イヌリン不添加の調理品を対照として、イヌリンを所定量添加した調理品を評価した。評価基準は以下の通り。
・しっとり感 しっとりしている 2、 若干しっとり感がある 1、 ほとんど変わらない 0
・ふんわり感 ふんわりしている 2、 若干ふんわり感がある 1、 ほとんど変わらない 0
・臭み 弱くなっている2、やや弱くなっている 1、 ほとんど変わらない 0
・食感 ジューシー感が強い2、 ジューシー感がやや強い1、 ほとんど変わらない 0
これらの項目について、製造後15分後および2時間後のもの、ならびに1週間冷凍して常温解凍後のものを評価し、その平均点を算出した。
【0047】
(3)耐冷凍性評価: 卵焼き(レシピ以下参照)を製造し、ラップして冷凍した。2日
後、常温解凍して、断面観察による組織の状態および風味を評価した。
(4)スクランブルエッグの製造
全鶏卵、イヌリン、バター、および食塩を表1-3に記載の組成にて混合し、スクランブルエッグ原液とした。これを120℃に熱したフライパンに載せたセルクル中でかき混
ぜながら調理した。動画測定により加工性の目安としての調理時間を測定した。
(5)卵焼きの製造
全鶏卵、出汁、砂糖、およびイヌリンを表4、5に記載の組成にて混合し、卵焼き原液とした。卵焼き器を約120℃に温め、液の半量ずつを焼きながら巻き上げてゆく方法でだし巻き卵とした。
卵焼きについては上記(2)の方法にて官能試験を実施した。
【0048】
[実施例1から5、比較例1]
比較例1および実施例1から5として、表1-3に記載の組成のスクランブルエッグを製造し、その結果を表1-3にまとめた。実施例1から5のスクランブルエッグは、イヌリン不添加の比較例1のスクランブルエッグよりもトロトロ感が保たれていた。また、調理時間が短すぎて対象物のコントロールが難しくなることはなく、十分な加工性が確保された。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
[実施例6から8、比較例2]
比較例2および実施例6から8として、表4、5に記載の組成の卵焼きを製造し、冷凍
したのち解凍したものを(2)に記載の官能試験にて評価した。その結果を表4、5にまとめた。実施例6から8の卵焼きはイヌリン非添加の比較例2の卵焼きに比べて卵の臭みが少なく、ジューシー感が保たれていた。
【0053】
また、比較例2の卵焼きを解凍後に観察するとその断面に粗大な孔が多くみられるのに対し、実施例6から8の卵焼きでは解凍後であってもその断面は比較的緻密であった。
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば小売用の卵の加熱調理品を製造する製造業や、卵の加熱調理品を提供
する外食産業で利用されうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10