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  • 特開-逆火防止用ガス継手 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055856
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】逆火防止用ガス継手
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/08 20060101AFI20220401BHJP
   F16L 37/28 20060101ALI20220401BHJP
   F16L 29/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
A61M16/08 330
F16L37/28
F16L29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163527
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】503369495
【氏名又は名称】帝人ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤本 勝志
【テーマコード(参考)】
3H017
3J106
【Fターム(参考)】
3H017AA09
3J106AB01
3J106BB01
3J106BC12
3J106GA40
3J106GB03
(57)【要約】
【課題】 酸素供給用の導管手段に着火した場合でも、延焼の拡大を防ぐ機能を備えた逆火防止用ガス継手を提供する。
【解決手段】 内側にガス流路を備えた継手本体と、継手本体内で移動可能な弁体と、弁体をガス流れに対して双方向から圧縮した状態でガス流れが可能な位置に保持する2つの圧縮バネとを備え、圧縮バネの一端は継手本体のガス流路入口部で固定され、ガス流れを遮断するシール面を継手本体のガス流路内面に有する逆火防止用ガス継手。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素ガスを供給する可撓性導管に接続する逆火防止用ガス継手であって、内側にガス流路を備えた継手本体と、前記継手本体内で移動可能な弁体と、前記弁体をガス流れに対して双方向から圧縮した状態でガス流れが可能な位置に保持する2つの圧縮バネとを備え、
前記圧縮バネの一端は、前記継手本体のガス流路入口部で固定され、
ガス流れを遮断するシール面を前記継手本体のガス流路内面に有することを特徴とする、逆火防止用ガス継手。
【請求項2】
前記継手本体が、難燃性又は自己消火性樹脂素材を用いた成形体である、請求項1に記載の逆火防止用ガス継手。
【請求項3】
前記弁体が、左右対称形である、請求項1に記載の逆火防止用ガス継手。
【請求項4】
前記弁体が、球形または双円錐形である、請求項3に記載の逆火防止用ガス継手。
【請求項5】
弁体が鋼球または弾性体である請求項3に記載の逆火防止用ガス継手。
【請求項6】
弁体が、不燃性の弾性体により継手本体に接することなく保持される、請求項1に記載の逆火防止用ガス継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸素ボンベ、液体酸素から供給される酸素ガスや酸素濃縮装置からの酸素濃縮ガスなどの助燃性のある呼吸用気体供給用の鼻カニューラ等の可撓性導管に接続され、火元近くで使用された場合に、導管を介しての引火、火炎の延伸を防ぐ逆火防止及び酸素ガス遮断機能を備えたガス継手を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、呼吸器疾患患者に対して酸素ボンベや液体酸素容器、空気中の酸素を分離する吸着型酸素濃縮装置を介して酸素ガスや酸素濃縮空気を供給する酸素吸入療法が行なわれ、特に結核後遺症や肺気腫、COPDなど慢性呼吸器疾患患者の在宅での治療方法として普及している。更に酸素吸入療法は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療における人工呼吸管理としても期待されている。これらの在宅酸素療法では、酸素や酸素濃縮空気を患者の鼻腔に供給する際に鼻カニューラや口鼻マスクなどを使用し、酸素濃縮装置や酸素ボンベの酸素取出口から鼻腔まで軟質導管を伸ばして使用される。
【0003】
酸素ガスそのものは可燃性ではないが、助燃性があるため、延長チューブに引火して火災を起こすなどの事故を防ぐ手段として、酸素ガスを供給するチューブの途中に金属製の継手を設け、チューブに引火した火炎の延焼を不燃性の金属継手部分で遮断する方法(特開2006-280470号公報)、熱によって溶融する弁の開閉留具を設けた継手をチューブ途中に設け、延焼により留め具が外れることで酸素ガス流路が遮断され延焼を遮断する方法(特表2015-524697号公報)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-280470号公報
【特許文献2】特表2015-524697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、酸素供給用の導管手段に着火した場合でも、延焼の拡大を防ぐことのできる機能を備えた逆火防止用ガス継手、それを用いた呼吸用気体供給装置を提供することを目的としている。特に使用者が室内を移動する際、酸素を供給するチューブの取り回し時に家具等へ引っかけたり、チューブの折れ曲がりを防ぐと共に、定期交換可能な、安価、軽量、コンパクトな継手部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる目的を達成するために、鋭意研究した結果、可撓性導管からの火災伝搬により継手本体のガス流路入口部分が溶融または焼損することで、圧縮バネの圧縮力を外部に開放し、弁体が火炎伝搬側へ押し付けられることで酸素ガス流路を遮断するガス継手を見出した。
【0007】
すなわち本発明は、酸素ガスを供給する可撓性導管に接続する逆火防止用ガス継手であって、内側にガス流路を備えた継手本体と、前記継手本体内で移動可能な弁体と、前記弁体をガス流れに対して双方向から圧縮した状態でガス流れが可能な位置に保持する2つの圧縮バネとを備え、前記圧縮バネの一端は、前記継手本体のガス流路入口部で固定され、可撓性導管からの火災伝搬により前記継手本体のガス流路入口部分が溶融または焼損することで、圧縮バネの圧縮力が外部に開放され、他方の圧縮バネにより弁体が火炎伝搬側へ押し付けられることでガス流れを遮断するシール面を前記継手本体のガス流路内面に有することを特徴とする、逆火防止用ガス継手を提供するものである。
【0008】
また本発明は、かかる継手本体が難燃性樹脂素材を用いた成形体であり、かかる弁体が、双方向のガス流れを遮断するよう、球形または双円錐形など左右対称形であり、鋼球や弾性体である逆火防止用ガス継手を提供する。
【発明の効果】
【0009】
酸素供給チューブにおいて逆火が発生した場合、酸素ガスの供給遮断を確実に行い、類焼を防ぐとともに、安価な部品、構成部品点数も少なく簡便な構造により、小型、軽量化、省スペース効果の高い、逆化防止継手を提供することができる。さらに、構成部品点数低減により低コストの逆火防止継手が提供することができる。
また本方式による小型化により、継手使用時でも引っ掛かりの少ない、使用者の移動の妨げになりにくい延焼防止継手を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の逆火防止用ガス継手の外観図。
図2】本発明の逆火防止用ガス継手の断面図。
図3】本発明の逆火防止用ガス継手のガス遮断時の断面模式図。
図4】本発明の逆火防止用ガス継手の別の態様の断面図。
図5】本発明の逆火防止用ガス継手に用いられる双円錐形弁体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0012】
図1に本発明の実施態様の一つである逆火防止用ガス継手の外観図を示す。形状は両端がいわゆるタケノコ型のチューブ継手であり、酸素濃縮装置や酸素ボンベ等から呼吸器疾患患者が酸素ガスを吸入する際に使用する塩化ビニル等の軟質のカニューラの途中に継手として使用する。
【0013】
酸素供給時にカニューラに着火した場合には瞬時に20cm程度の炎が噴出し、酸素が助燃剤として働くため、炎がカニューラに沿って酸素濃縮装置側に逆行する。本発明は継手部分で炎と酸素供給を遮断することでカニューラの延焼を遮断し、それ以降の酸素濃縮器側への延焼を防ぐことができる。可燃性材料を用いた継手の場合には、継手表面に着火したものがそのまま酸素濃縮装置側のカニューラに引火する恐れがあることから、難燃性や自己消火性の樹脂材料を用いるのが好ましい。例えば、フッ素系の樹脂等、融点が高く高濃度酸素下でも燃焼しにくいものが好ましく、ポリカーボネートやナイロン、塩化ビニル樹脂などの自己消火性を有するものを用いることが出来る。またアンチモン系(Sb2O3)、モリブデン系(MoO2)、リン系、イントメッセント系(APP/EPR)など各種難燃材料を添加した樹脂材料を用いることができる。
【0014】
金属材料等の不燃材料を継手素材として用いることもできるが、継手先端が焼損あるいは溶融して圧縮バネを外部に開放する機能を果たせなくなる恐れがあり、溶融あるいは焼損可能なように材料や先端部の厚さなどを詳細に設計する必要がある。
【0015】
図2に本発明の逆火防止用ガス継手の断面図を示す。継手本体2,3は左右2つの成形品からなり、両者を中央で接合することで構成される。その内部には、酸素ガスを流通する為の酸素流路を備え、継手両端側に圧縮バネ1,1’を備え、2つの圧縮バネで弁体5を継手中央部分で支える構造をとる。
【0016】
弁体5は双方向からの流れを遮断できるよう左右対称の形が望ましく、図2に示すような球形の他、図4に示す円盤状の可動弁体、図5に示す双円錐形でもよい。本弁体は継手内部で同じ圧縮力を持つ圧縮ばねで双方から押される形で、継手内部で流路を遮断することなく保持される。また圧縮バネが封入された継手内部の左右部分、弁体が封入された継手中央部分も、継手本体との間で酸素が流通可能な流路を構成している。
【0017】
継手のいずれか一方より燃焼火炎が伝播してきた場合、図3に示すように継手先端のバネを支えている樹脂壁が熱により軟化、あるいは消失することで支えを失った火炎伝搬側のバネが継手先端から外に押し出されることにより圧縮力が失われ、弁体は反対側のバネによりシール材4のシール面に押し付けられ、ガスは遮断される。
【0018】
弁体5は継手の酸素ガス流路とのシール面が高精度で密閉可能であれば鋼球などを用いたメタルシールを用いる。また、シール面の面粗さが大きく、密閉精度が得られにくい場合は弾性体を用いた弁体を使用してもよい。
【0019】
弁体を支える圧縮バネは、継手の酸素ガス流路内に収納可能な丸線コイルバネ等の金属バネを用いることが出来る。圧縮バネの先端は継手の流路途中ではなく、継手先端部で支持されることが好ましく、火炎燃焼により継手先端が溶融、焼損と同時に圧縮バネ自体の力で、自身を外部に開放し、ガス遮断を行うことができ、継手への燃焼拡大を防止することが出来る。
【0020】
従って、継手先端部の樹脂成形体の厚みは、圧縮バネの力を保持する必要はあるが、なるべく薄い方が好ましく、2mm以下、好ましく1mm以下とするのが好ましい。
【0021】
継手本体は左右対称形とし、部品2つを中央で押込み接続することで一体化する構造で、バネの先端で弁体を支えながら継手本体を押込み接続することで、圧縮バネによる弁体の中央保持の構造を取ることが出来る。これにより口径も小さく、部品点数も継手本体が2部材、圧縮バネ2本、弁体1つの5つの部品で構成可能であり、小型の部品で構成する事が出来るため、カニューラの取り回し時に家具等への引っかかりなど邪魔になったりすることがなく、小型、軽量化、省スペース効果の高い、逆化防止継手を提供することができる。
【符号の説明】
【0022】
1、1’ 圧縮バネ
2 継手本体成形体
3 継手本体成形体
4 シール材
5 弁体(球体)
図1
図2
図3
図4
図5