(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055858
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】金型
(51)【国際特許分類】
B21J 13/03 20060101AFI20220401BHJP
B21J 13/02 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
B21J13/03
B21J13/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163530
(22)【出願日】2020-09-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】320009451
【氏名又は名称】吉田 哲文
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲文
【テーマコード(参考)】
4E087
【Fターム(参考)】
4E087AA09
4E087CA07
4E087CA15
4E087CB01
4E087CB02
4E087CB03
4E087EC01
4E087EC11
4E087EC43
4E087EC50
4E087ED01
4E087ED04
4E087ED25
(57)【要約】
【課題】型部材に対して圧縮軸心の方向にも予圧を加えることができる金型の提供。
【解決手段】金型1は、型部材7と、型部材7を収容する収容孔9が圧縮軸心Lの方向に開設された補強ケース11と、を備える。型部材7は、補強ケース11の収容孔9に焼き嵌めによって嵌め込まれる。補強ケース11において、型部材7が収容孔9への収容のために挿入される側である挿入開口側には、収容孔9に収容された型部材7に当接する台部材13を保持する台保持部25が形成されている。そして、台保持部25は、焼き嵌めの後の補強ケース11の温度低下に伴って台部材13を型部材7の方向へ加圧するように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型であって、
型部材と、
前記型部材を収容する収容孔が圧縮軸心の方向に開設された補強ケースと、を備え、
前記型部材は、前記補強ケースの前記収容孔に焼き嵌めによって嵌め込まれ、
前記補強ケースにおいて、前記型部材が前記収容孔への収容のために挿入される側である挿入開口側には、前記収容孔に収容された前記型部材に当接する台部材を保持する台保持部が形成され、
前記台保持部は、前記焼き嵌めの後の前記補強ケースの温度低下に伴って前記台部材を前記型部材の方向へ加圧するように構成されている、
金型。
【請求項2】
請求項1に記載の金型であって、
前記台部材は、
前記圧縮軸心の方向における一方の面が前記型部材に当接する基部と、
前記基部の側面から前記圧縮軸心の方向と直交する方向に突出するように形成された少なくとも1つの突出部と、を備え、
前記台保持部は、
前記台部材の前記基部が前記圧縮軸心の方向に挿入される挿入孔と、
前記挿入孔に前記基部が挿入される場合に、前記台部材の前記少なくとも1つの突出部が前記圧縮軸心の方向に挿入される少なくとも1つの縦溝部と、
前記少なくとも1つの縦溝部から前記圧縮軸心の方向と直交する方向に連続するように設けられ、前記少なくとも1つの突出部が前記少なくとも1つの縦溝部に挿入された状態で前記台部材が前記圧縮軸心を中心に回転されることにより、前記少なくとも1つの突出部が入り込むように構成された少なくとも1つの横溝部と、
前記補強ケースにおいて、前記挿入開口側の面から前記少なくとも1つの横溝部へ至るまでの部分である少なくとも1つの溝壁部と、を備え、
前記焼き嵌めの後の前記補強ケースの温度低下に伴って、前記少なくとも1つの溝壁部が、前記型部材の方向に収縮して、前記少なくとも1つの横溝部に入り込んだ前記少なくとも1つの突出部を前記型部材の方向へ加圧することにより、前記台部材を前記型部材の方向へ加圧するように構成されている、
金型。
【請求項3】
請求項2に記載の金型であって、
前記少なくとも1つの突出部は、前記圧縮軸心の方向と直交する面を有する板状である、
金型。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の金型であって、
前記少なくとも1つの突出部と、前記少なくとも1つの縦溝部と、前記少なくとも1つの横溝部と、前記少なくとも1つの溝壁部は、それぞれ複数ある、
金型。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の金型であって、
前記補強ケースにおいて、前記挿入開口側とは反対側には、前記型部材の前記挿入開口側とは反対側の面に当接する端壁部が形成されている、
金型。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の金型であって、
前記型部材は、前記圧縮軸心の方向に並設される第1分割型及び第2分割型を備える、
金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金型に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1には、鍛造用の金型として、型部材が補強ケースの収容孔に焼き嵌めによって嵌め込まれる金型が記載されている。型部材は、金属素材が内装されるキャビティを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の詳細な検討の結果、下記の課題が見出された。
従来の金型では、焼き嵌めにより、型部材に対して、圧縮軸心の方向(即ち、縦方向)と直交する方向に予圧を加えることができるものの、圧縮軸心の方向には予圧を加えにくい。このため、鍛造時の押圧力に対する型部材の耐久性を向上させることができなかった。尚、ここで言う圧縮軸心とは、鍛造時に与えられる押圧力の軸心のことである。
【0005】
そこで、本開示の一局面は、型部材に対して圧縮軸心の方向にも予圧を加えることができる金型の提供、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、金型であって、型部材と、型部材を収容する収容孔が圧縮軸心の方向に開設された補強ケースと、を備える。そして、型部材は、補強ケースの収容孔に焼き嵌めによって嵌め込まれる。
【0007】
更に、補強ケースにおいて、型部材が収容孔への収容のために挿入される側である挿入開口側には、収容孔に収容された型部材に当接する台部材を保持する台保持部が形成されている。そして、台保持部は、焼き嵌めの後の補強ケースの温度低下に伴って台部材を型部材の方向へ加圧するように構成されている。
【0008】
このような構成によれば、補強ケースの温度低下に伴う収縮により、型部材に対して、圧縮軸心の方向と直交する方向だけでなく、圧縮軸心の方向にも台部材を介して予圧を加えることができる。このため、鍛造時の押圧力に対する型部材の耐久性を向上させることができる。
【0009】
本開示の一態様では、台部材は、圧縮軸心の方向における一方の面が型部材に当接する基部と、基部の側面から圧縮軸心の方向と直交する方向に突出するように形成された少なくとも1つの突出部と、を備えて良い。
【0010】
そして、台保持部は、台部材の基部が圧縮軸心の方向に挿入される挿入孔と、挿入孔に基部が挿入される場合に、台部材の少なくとも1つの突出部が圧縮軸心の方向に挿入される少なくとも1つの縦溝部と、少なくとも1つの横溝部及び溝壁部と、を備えて良い。
【0011】
横溝部は、縦溝部から圧縮軸心の方向と直交する方向に連続するように設けられ、突出部が縦溝部に挿入された状態で台部材が圧縮軸心を中心に回転されることにより、突出部が入り込むように構成されて良い。溝壁部は、補強ケースにおいて、挿入開口側の面から横溝部へ至るまでの部分であって良い。そして、台保持部は、焼き嵌めの後の補強ケースの温度低下に伴って、溝壁部が、型部材の方向に収縮して、横溝部に入り込んだ突出部を型部材の方向へ加圧することにより、台部材を型部材の方向へ加圧するように構成されて良い。
【0012】
このような構成の金型によれば、組み立てを容易化することができる。
本開示の一態様では、突出部は、圧縮軸心の方向と直交する面を有する板状であって良い。このような構成によれば、突出部は、溝壁部からの圧力を平面で受けることができる。よって、台部材を介した型部材への圧縮軸心の方向の予圧を大きくし易い。
【0013】
本開示の一態様では、少なくとも1つの突出部と、少なくとも1つの縦溝部と、少なくとも1つの横溝部と、少なくとも1つの溝壁部は、それぞれ複数あって良い。このような構成によれば、型部材への圧縮軸心の方向の予圧を大きくし易い。
【0014】
本開示の一態様では、補強ケースにおいて、挿入開口側とは反対側には、型部材の挿入開口側とは反対側の面に当接する端壁部が形成されていて良い。このような構成によれば、補強ケースの温度低下に伴って、補強ケースにおける端壁部が型部材側に収縮することにより、型部材に対して挿入開口側とは反対側からも予圧を加えることができる。よって、型部材への圧縮軸心の方向の予圧を大きくし易い。
【0015】
本開示の一態様では、型部材は、圧縮軸心の方向に並設される第1分割型及び第2分割型を備えて良い。このような構成によれば、型部材を、任意の箇所で第1分割型と第2分割型とに2分割することができる。このため、型部材を、鍛造時の押圧力によって割れやすいと予想される箇所で2分割して、圧力を逃がすことができる。よって、型部材の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】
図2のIII-III線断面図(即ち、正面断面図)である。
【
図5】第1実施形態の金型の使用状態を示す正面断面図である。
【
図6】第1実施形態の金型の組み立て前状態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1~
図6に示す第1実施形態の金型1は、鍛造用の金型である。
【0018】
金型1は、鍛造対象の金属素材3が内装されるキャビティ5を有する円筒状の型部材7と、型部材7を収容する収容孔9が圧縮軸心Lの方向(以下、圧縮軸心L方向)に開設された円筒状の補強ケース11と、台部材13と、を備える。型部材7は、補強ケース11の収容孔9に焼き嵌めによって嵌め込まれる。台部材13も、型部材7と供に、補強ケース11に焼き嵌めによって嵌め込まれる。また、台部材13は、補強ケース11に嵌め込まれた状態において、収容孔9に収容された型部材7に当接する。
【0019】
尚、本実施形態では、鍛造時にパンチ15によって与えられる押圧力の方向、即ち、パンチ15の移動方向が、圧縮軸心L方向である。金型1は、
図1に示す平面視側を上側とし、
図2に示す底面視側を下側として使用される。そして、
図3~
図6における上下方向が、圧縮軸心L方向に該当する。以下の説明において、上下の方向は、
図3~
図6における方向に基づく。
【0020】
型部材7は、金型1の組み立て前状態では、円筒状の第1分割型17と、円筒状の第2分割型18とに、分割されている。尚、型部材7は、ニブとも呼ばれる。第1分割型17は第1ニブと称されても良く、第2分割型18は第2ニブと称されても良い。
【0021】
第1分割型17は、組み立て状態でキャビティ5の一部を形成する内周面17aと、組み立て状態で第2分割型18と接合する接合面17bと、を有する。
第2分割型18は、組み立て状態でキャビティ5の一部を形成する底面18aと、組み立て状態で第1分割型17と接合する接合面18bと、鍛造時にノックアウトピン19が挿入される貫通孔18cと、を有する。尚、
図5に示すように、ノックアウトピン19は、圧縮軸心L方向において、パンチ15と対向するように配設される。
【0022】
そして、第1分割型17と第2分割型18は、互いの接合面17b,18bが接触するようにして、補強ケース11の収容孔9に嵌め込まれる。つまり、型部材7は、第1分割型17と第2分割型18が圧縮軸心L方向に並設されることで構成される。
【0023】
型部材7、補強ケース11及び台部材13のそれぞれの材質は、適宜選択されて良い。例えば、型部材7は、超硬合金又はダイス鋼(例えばJIS規格のSKD11等)又はハイス鋼(例えばJIS規格のSKH51等)にて形成されて良い。例えば、補強ケース11は、型部材7よりも硬さが低い材質(例えばJIS規格のSKD61等)にて形成されて良い。台部材13の材質は、補強ケース11による焼き嵌めが可能な材質であれば良く、例えば型部材7と同じ材質であって良い。
【0024】
図2~
図7に示すように、台部材13は、組み立て状態で圧縮軸心L方向における一方の面(即ち、上端面)が型部材7の下端面に当接する基部21、を備える。基部21に当接される型部材7の下端面は、第2分割型18の下端面である。
【0025】
基部21は、円筒状である。基部21には、第2分割型18の貫通孔18cと同様に、ノックアウトピン19が挿入される貫通孔21cが設けられている。組み立て状態において、基部21及び型部材7の軸方向は圧縮軸心L方向と等しい。
【0026】
そして、基部21の側面には、圧縮軸心L方向(即ち、基部21の軸方向)と直交する方向に突出するように4つの突出部23a~23dが設けられている。突出部23a~23dは、基部21の外周において、所定の間隔を空けて設けられている。突出部23a~23dは、圧縮軸心L方向と直交する面を有する板状である。突出部23a~23dは、基部21の側面から突出した鍔部であるとも言える。
【0027】
また、基部21の軸方向の端面のうち、型部材7の側とは反対側の端面(即ち、下端面)には、直線状の2つの溝21aが形成されている。溝21aは、補強ケース11に収容された状態の台部材13を、圧縮軸心Lを中心に回転させるために使用される。
【0028】
一方、補強ケース11において、型部材7が収容孔9への収容のために挿入される側である挿入開口側(即ち、下側)には、台部材13を、型部材7に当接させた状態で保持する台保持部25が形成されている。
【0029】
台保持部25は、台部材13の基部21が圧縮軸心L方向に挿入される挿入孔27、を備える。挿入孔27は、収容孔9とつながっており、型部材7も挿入できるように形成されている。
【0030】
更に、台保持部25は、挿入孔27に基部21が挿入される場合に、台部材13の突出部23a~23dが圧縮軸心L方向に挿入される4つの縦溝部29a~29dと、4つの横溝部31a~31dと、4つの溝壁部33a~33dと、を備える。
【0031】
横溝部31a~31dのそれぞれは、縦溝部29a~29dのそれぞれから圧縮軸心L方向と直交する方向に連続するように設けられている。
そして、横溝部31a~31dのそれぞれは、突出部23a~23dのそれぞれが縦溝部29a~29dのそれぞれに挿入された状態で台部材13が圧縮軸心Lを中心に回転されることにより、突出部23a~23dのそれぞれが入り込むように形成されている。
【0032】
4つの溝壁部33a~33dは、横溝部31a~31dのそれぞれに対応するものであり、補強ケース11において、挿入開口側の面(即ち、下端面)から対応する横溝部31a~31dへ至るまでの部分である。尚、
図2においては、溝壁部33a~33dの奥の図示されない空間が、横溝部31a~31dであり、その横溝部31a~31dのそれぞれに台部材13の突出部23a~23dのそれぞれが嵌っている。
【0033】
また、補強ケース11において、挿入開口側とは反対側(即ち、上側)には、組み立て状態で型部材7の挿入開口側とは反対側の面(即ち、第1分割型17の上端面)に当接する端壁部35、が形成されている。
図1における点線円は、第1分割型17の外周を示しており、
図1に示される補強ケース11においては、上記点線円よりも内側の部分が、端壁部35に該当する。また、補強ケース11の挿入開口側とは反対側には、
図5に示されるパンチ15を挿入可能な孔37が形成されている。
【0034】
[1-2.組み立て手順]
金型1は、下記〈1〉~〈4〉の手順で組み立てることができる。
〈1〉補強ケース11を、加熱炉等で常温よりも高い所定温度(例えば400~600℃)に加熱する。
【0035】
〈2〉補強ケース11が上記所定温度の付近になっているうちに、
図6における矢印Y1,Y2に示すように、補強ケース11の挿入孔27から、第1分割型17と第2分割型18とを挿入して、第1分割型17及び第2分割型18により形成される型部材7を、収容孔9に嵌め込む。尚、金型1の組み立て作業は、
図6の上下を反対にした状態で行われて良い。
【0036】
〈3〉続いて、
図6における矢印Y3に示すように、台部材13を、補強ケース11の台保持部25にセットする。
具体的には、台部材13の基部21を補強ケース11の挿入孔27に挿入すると共に、台部材13の突出部23a~23dを補強ケース11の縦溝部29a~29dに挿入する。そして、台部材13を補強ケース11の内部方向へ押し込み、基部21が型部材7に当接した状態で、圧縮軸心Lを中心にして台部材13を回転させて、突出部23a~23dを補強ケース11の横溝部31a~31dに嵌め込む。
【0037】
すると、
図2及び
図7に示すように、底面視において、台部材13の突出部23a~23dが、補強ケース11の縦溝部29a~29d内には存在せず、補強ケース11の溝壁部33a~33dの奥に隠れた状態になる。この状態が、台部材13のセット完了状態である。
【0038】
また、台部材13を回転させる際には、基部21に形成されている2つの溝21aの両方又は一方に、板状又は棒状の部材を差し込み、その板状の部材を動かすことで、台部材13を容易に回転させることができる。
【0039】
〈4〉上記〈1〉~〈3〉の手順で組み上がった金型1を冷却する。金型1の冷却には、扇風機や空調装置等の機器が使用されても良いし、放置による自然冷却であっても良い。
【0040】
金型1の冷却が完了すると、補強ケース11が収縮して、補強ケース11の内部の空間が縮小する。
このため、型部材7には、収容孔9の縮小により少なくとも圧縮軸心L方向と直交する方向(即ち、横方向)に圧力(即ち、予圧)が加えられる。そして更に、型部材7には、台保持部25及び端壁部35の収縮により台部材13を介して圧縮軸心L方向にも予圧が加えられることとなる。
【0041】
なぜなら、焼き嵌めの後の補強ケース11の温度低下に伴って、溝壁部33a~33dが、型部材7の方向に収縮して、横溝部31a~31d内の突出部23a~23dを型部材7の方向へ加圧するため、台部材13が型部材7の方向へ加圧されるからである。また、補強ケース11の端壁部35も型部材7の方向に収縮するため、型部材7には、挿入開口側とは反対側からも予圧が加えられる。
【0042】
尚、補強ケース11が上記所定温度付近になっている場合は、補強ケース11の内側面と、型部材7及び台部材13の外側面とに、型部材7及び台部材13を補強ケース11に嵌装可能な隙間が生じるが、この隙間は補強ケース11の温度低下に伴って無くなる。
【0043】
[1-3.使用例]
図5に示すように、金型1の使用時(即ち、鍛造時)には、型部材7のキャビティ5に金属素材3が配置される。また、金型1の下から、台部材13の貫通孔21c及び第2分割型18の貫通孔18cにノックアウトピン19が挿通される。そして、金型1の上方からキャビティ5内の金属素材3へとパンチ15が所定の力で下ろされることにより、金属素材3に押圧力が加えられて、金属素材3がキャビティ5の形状に成形される。
【0044】
[1-4.効果]
以上詳述した金型1によれば、以下の効果を奏する。
(1a)補強ケース11において、型部材7に当接する台部材13を収容して保持する台保持部25は、焼き嵌めの後の補強ケース11の温度低下に伴って台部材13を型部材7の方向へ加圧するように構成されている。
【0045】
このため、補強ケース11の温度低下に伴う収縮により、型部材7に対して、圧縮軸心L方向と直交する方向だけでなく、圧縮軸心L方向にも台部材13を介して予圧を加えることができる。よって、鍛造時の押圧力に対する型部材7の耐久性を向上させることができる。
【0046】
(1b)台部材13は、上記〈3〉で述べた手順で補強ケース11の台保持部25にセットすることができる。このため、金型1の組み立てを容易化することができる。
(1c)台部材13の突出部23a~23dは、圧縮軸心L方向と直交する面を有する板状になっている。このため、突出部23a~23dは、補強ケース11における溝壁部33a~33dの収縮による当該溝壁部33a~33dからの圧力を、平面で受けることができる。よって、台部材13を介した型部材7への圧縮軸心L方向の予圧を大きくし易い。
【0047】
(1d)台部材13の突出部23a~23dと、補強ケース11の縦溝部29a~29d、横溝部31a~31d及び溝壁部33a~33dは、それぞれ1つずつであっても良いが、上記金型1では複数個ずつ設けられている。このため、型部材7への圧縮軸心L方向の予圧を大きくし易い。尚、突出部23a~23dと、縦溝部29a~29d、横溝部31a~31d及び溝壁部33a~33dとの、それぞれの数は、4つに限らず、1つ以上で適宜決定して良い。
【0048】
(1e)補強ケース11において、挿入開口側とは反対側には、型部材7の挿入開口側とは反対側の面に当接する端壁部35が形成されている。このため、補強ケース11の温度低下に伴って、端壁部35が型部材7側に収縮することにより、型部材7に対して挿入開口側とは反対側からも予圧を加えることができる。よって、型部材7への圧縮軸心L方向の予圧を大きくし易い。
【0049】
(1f)型部材7は、圧縮軸心L方向に並設される第1分割型17及び第2分割型18によって構成される。このため、型部材7を、任意の箇所で第1分割型17と第2分割型18とに2分割することができる。よって、型部材7を、鍛造時の押圧力によって割れやすいと予想される箇所で2分割して、圧力を逃がすことができ、延いては、型部材7の耐久性を更に向上させることができる。
【0050】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。尚、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0051】
図8に示すように、第2実施形態の金型41では、型部材7(即ち、第1分割型17及び第2分割型18)が、円筒状の内ケース43に嵌め込まれた状態で、補強ケース11の収容孔9に焼き嵌めによって嵌め込まれている。
【0052】
金型41では、前述の手順〈2〉において、型部材7が嵌め込まれた状態の内ケース43が、補強ケース11の収容孔9に嵌め込まれて良い。あるいは、補強ケース11の収容孔9に内ケース43が嵌め込まれてから、その内ケース43に型部材7が嵌め込まれても良い。内ケース43への型部材7の嵌め込みは、焼き嵌めであって良いし、圧入であっても良い。内ケース43の材質は、例えば補強ケース11又は台部材13の材質と同じであっても良いし、それらとは異なる材質であっても良い。
【0053】
そして、金型41において、台部材13は、補強ケース11に嵌め込まれた状態において、収容孔9に収容された型部材7及び内ケース43に当接する。
尚、補強ケース11は、内ケース43に対して、外ケースであると言うことができる。また、補強ケース11から見ると、型部材7及び内ケース43が、収容孔9に嵌め込まれる型部材に該当すると見なすこともできる。
【0054】
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様の効果を奏し、更に、型部材7に対して内ケース43によっても予圧を加えることができる。
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0055】
例えば、
図9に示すように、台部材13を回転させる際に使用される部分として、基部21の側部に、当該側部の一部を軸方向(即ち、縦方向)に切り落とした形状の平坦部21bを、基部21の軸心に対して対称の位置に少なくとも1組み設けても良い。この構成によれば、例えばレンチ状の工具を平坦部21bに噛み合わせることにより、台部材13を容易に回転させることができる。
また、
図9において、点線の楕円で示される(a)部は、台部材13の突出部23aを、矢印Y4の方向から見た図(即ち、突出部23aの正面図)である。そして、
図9に示すように、突出部23a~23dのそれぞれにおいて、補強ケース11の横溝部31a~31dに入る際の先端部分を、他の部分よりも厚さが小さいテーパ部45として良い。この構成によれば、台部材13を回転させて、突出部23a~23dを横溝部31a~31dに嵌め込む際に、突出部23a~23dをなめらかに嵌め込むことができる。尚、本実施形態において、台部材13は、突出部23a~23dが補強ケース11の縦溝部29a~29dに挿入された状態で、圧縮軸心Lを中心に左回りと右回りとの何れにも回転させることができる。このため、突出部23a~23dのそれぞれにおいて、テーパ部45は、横方向の一方側の端だけでなく、両方側の端に設けられても良い。例えば、突出部23aを例に挙げると、
図9の(a)部において、テーパ部45は、突出部23aの左端だけでなく右端にも設けられて良い。
また、型部材7の軸心と圧縮軸心Lとが、ずれている構成であっても良いし、型部材7は、円筒状以外の形状であっても良い。
また、型部材7は、分割されない1つの部材であっても良い。また、補強ケース11は、端壁部35を有さない構成であっても良い。また、収容孔9を
図3等における上側ほど径が小さいテーパ状に形成して良い。
【0056】
また、台部材13の突出部23a~23dは、板状に限らず、例えば棒状であっても良い。そして、補強ケース11における縦溝部29a~29d及び横溝部31a~31dの形状は、突出部23a~23dに対応した形状に構成すれば良い。また、台部材13の基部21には、台部材13を回転させる際に使用される凹部として、直線状の溝21aに代えて、例えば棒状の部材の先部分を入れることが可能な穴を設けておいても良い。
【0057】
また、上記金型1,41の構成は、より大きい荷重がかかる冷間鍛造用の金型として特に有効であるが、上記金型1,41の思想は、鍛造の種類に限定されず、例えば熱間鍛造、温間鍛造、半溶融鍛造等、冷間鍛造以外の鍛造用金型にも適用して良い。
【符号の説明】
【0058】
1,41…金型、3…金属素材、5…キャビティ、7…型部材、9…収容孔、L…圧縮軸心、11…補強ケース、13…台部材、15…パンチ、17…第1分割型、17a…内周面、17b…接合面、18…第2分割型、18a…底面、18b…接合面、18c…貫通孔、19…ノックアウトピン、21…基部、21a…溝、21b…平坦部、21c…貫通孔、23a~23d…突出部、25…台保持部、27…挿入孔、29a~29d…縦溝部、31a~31d…横溝部、33a~33d…溝壁部、35…端壁部、37…孔、43…内ケース、45…テーパ部。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型であって、
型部材と、
前記型部材を収容する収容孔が圧縮軸心の方向に開設された補強ケースと、を備え、
前記型部材は、前記補強ケースの前記収容孔に焼き嵌めによって嵌め込まれ、
前記補強ケースにおいて、前記型部材が前記収容孔への収容のために挿入される側である挿入開口側には、前記収容孔に収容された前記型部材に当接する台部材を保持する台保持部が形成され、
前記台保持部は、前記焼き嵌めの後の前記補強ケースの温度低下に伴って前記台部材を前記型部材の方向へ加圧するように構成され、
前記台部材は、
前記圧縮軸心の方向における一方の面が前記型部材に当接する基部と、
前記基部の側面から前記圧縮軸心の方向と直交する方向に突出するように形成された少なくとも1つの突出部と、を備え、
前記台保持部は、
前記台部材の前記基部が前記圧縮軸心の方向に挿入される挿入孔と、
前記挿入孔に前記基部が挿入される場合に、前記台部材の前記少なくとも1つの突出部が前記圧縮軸心の方向に挿入される少なくとも1つの縦溝部と、
前記少なくとも1つの縦溝部から前記圧縮軸心の方向と直交する方向に連続するように設けられ、前記少なくとも1つの突出部が前記少なくとも1つの縦溝部に挿入された状態で前記台部材が前記圧縮軸心を中心に回転されることにより、前記少なくとも1つの突出部が入り込むように構成された少なくとも1つの横溝部と、
前記補強ケースにおいて、前記挿入開口側の面から前記少なくとも1つの横溝部へ至るまでの部分である少なくとも1つの溝壁部と、を備え、
前記焼き嵌めの後の前記補強ケースの温度低下に伴って、前記少なくとも1つの溝壁部が、前記型部材の方向に収縮して、前記少なくとも1つの横溝部に入り込んだ前記少なくとも1つの突出部を前記型部材の方向へ加圧することにより、前記台部材を前記型部材の方向へ加圧するように構成されている、
金型。
【請求項2】
請求項1に記載の金型であって、
前記少なくとも1つの突出部は、前記圧縮軸心の方向と直交する面を有する板状である、
金型。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の金型であって、
前記少なくとも1つの突出部と、前記少なくとも1つの縦溝部と、前記少なくとも1つの横溝部と、前記少なくとも1つの溝壁部は、それぞれ複数ある、
金型。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の金型であって、
前記補強ケースにおいて、前記挿入開口側とは反対側には、前記型部材の前記挿入開口側とは反対側の面に当接する端壁部が形成されている、
金型。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の金型であって、
前記型部材は、前記圧縮軸心の方向に並設される第1分割型及び第2分割型を備える、
金型。