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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055885
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】ギヤードモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/116 20060101AFI20220401BHJP
   H02K 5/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
H02K7/116
H02K5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163576
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保科 顕一
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 徳行
(72)【発明者】
【氏名】古林 一美
【テーマコード(参考)】
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
5H605BB05
5H605BB09
5H605CC01
5H605CC06
5H605EC01
5H605EC05
5H605EC08
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB04
5H607BB26
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD19
5H607EE32
5H607EE36
5H607HH09
5H607KK07
(57)【要約】
【課題】ギヤードモータの耐久性を効率的に向上させる。
【解決手段】ケース体と、一端がケース体の外に露出した端子と、ケース体に収容される部材であるストッパ部材と、を備え、ストッパ部材がケース体の内部で端子に接触し、端子がケース体の内部に没入することを阻止するギヤードモータ、又は、先端がケース体の外に露出した出力軸と、ケース体に収容される部材である軸支持部材と、をさらに備え、軸支持部材は出力軸を一方の板面で支持する板状部を有し、板状部の板面のうち出力軸を支持する側の面を表面、その反対側の面を裏面としたときに、ストッパ部材が板状部の裏面を支持する変形防止部を有するギヤードモータによりこれを解決する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース体と、
一端が前記ケース体の外に露出した端子と、
前記ケース体に収容される部材であるストッパ部材と、を備え、
前記ストッパ部材は、前記ケース体の内部で前記端子に接触し、該端子が前記ケース体の内部に没入することを阻止することを特徴とするギヤードモータ。
【請求項2】
前記端子には、その対となる端子を有するコネクタが接続されることを特徴とする請求項1に記載のギヤードモータ。
【請求項3】
前記ケース体は樹脂製であり、
前記ケース体は、前記端子が該ケース体の内側から挿通される貫通穴である端子穴を有し、
前記端子は前記端子穴に対して該端子穴を拡張させながら圧力をかけて押し込まれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のギヤードモータ。
【請求項4】
前記ストッパ部材は前記端子を前記ケース体に組み付けた後に組み付けられる部材であり、
前記ストッパ部材は、前記ケース体内部の収容空間のうち、前記端子を前記ケース体に組み付ける際に該端子の少なくとも一部が通過する位置に配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のギヤードモータ。
【請求項5】
前記ケース体は前記端子が該ケース体の内側から挿通される貫通穴である端子穴を有し、
前記端子は、前記端子穴の差込口に係合する凸部または段差部である抜け止め部を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のギヤードモータ。
【請求項6】
前記ケース体は前記端子が該ケース体の内側から挿通される貫通穴である端子穴を有し、
前記端子は断面視L字形の端子であり、その屈曲部は前記ケース体の内部に配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のギヤードモータ。
【請求項7】
前記ストッパ部材は前記ケース体に嵌合され、
前記ストッパ部材は前記ケース体により、前記端子の前記ケース体内部への没入方向と同方向への移動が制限されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のギヤードモータ。
【請求項8】
先端が前記ケース体の外に露出した出力軸と、
前記ケース体に収容される部材である軸支持部材と、をさらに備え、
前記軸支持部材は、前記出力軸を一方の板面で支持する板状部を有し、
前記板状部の板面のうち、前記出力軸を支持する側の面を表面、その反対側の面を裏面としたときに、前記ストッパ部材は、前記板状部の裏面に接触し、該裏面を支持する変形防止部を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のギヤードモータ。
【請求項9】
前記ストッパ部材の前記変形防止部は、前記軸支持部材の裏面のうち、前記出力軸の回転中心線の位置を基準としてその周囲を周方向に沿って等間隔に支持し、又は、該回転中心線の位置を対称の中心として点対称となる位置を支持していることを特徴とする請求項8に記載のギヤードモータ。
【請求項10】
前記軸支持部材と前記ストッパ部材との間には基板が配置されることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のギヤードモータ。
【請求項11】
前記軸支持部材の前記板状部には前記出力軸の後端部が差し込まれる貫通穴が設けられ、
前記出力軸の後端部には永久磁石が配置され、
前記基板の前記永久磁石に対向する位置にはホールセンサが配置されることを特徴とする請求項10に記載のギヤードモータ。
【請求項12】
前記ストッパ部材は前記軸支持部材の裏面を支持する複数の突出部である柱部を有し、
前記基板には前記柱部が貫通する穴である基板穴が設けられ、
前記基板穴は前記ストッパ部材が外力により位置ずれ又は変形を生じた場合でも前記柱部が前記基板に接触しない程度の大きさであることを特徴とする請求項10または請求項11に記載のギヤードモータ。
【請求項13】
前記基板の板面が向けられた方向を上下としたときに、
前記軸支持部材および前記基板は上下に並べて配置され、
前記軸支持部材および前記基板は、前記ケース体にさらに上下から挟まれることで前記ケース体の内部における上下方向の位置が固定されることを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか一項に記載のギヤードモータ。
【請求項14】
前記軸支持部材は、上下に貫通した複数の穴である第1固定穴を有し、
前記基板には、前記第1固定穴に対応する位置に、上下に貫通した複数の穴である第2固定穴が設けられ、
前記第1固定穴および前記第2固定穴の各組み合わせに共通の固定軸が挿通されることで、前記軸支持部材および前記基板は、前記ケース体の内部における水平方向の位置が固定されることを特徴とする請求項13に記載のギヤードモータ。
【請求項15】
前記端子の全長のうち前記ケース体の外に配置された部分の延出方向に沿う方向と、前記出力軸の軸線方向に沿う方向とは、互いに直交する方向であることを特徴とする請求項8から請求項14のいずれか一項に記載のギヤードモータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はギヤードモータの高耐久技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1および2にはコネクタと出力軸とを備えるギヤードモータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-191616号公報
【特許文献2】国際公開第2007/116788(A1)号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ギヤードモータにはその想定される用途や使用環境に耐えうる耐久性が求められる。一方、ギヤードモータの材料強度や構造強度を高めるほど、ギヤードモータの製品コストや重量、サイズは増大する。
【0005】
上記問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、ギヤードモータの耐久性を効率的に向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のギヤードモータは、ケース体と、一端が前記ケース体の外に露出した端子と、前記ケース体に収容される部材であるストッパ部材と、を備え、前記ストッパ部材は、前記ケース体の内部で前記端子に接触し、該端子が前記ケース体の内部に没入することを阻止することを特徴とする。
【0007】
ケース外に露出した部品に外部から加えられる力の程度は、ケース内に収容されている部品に加えられる力に比べ予測が困難である。給電端子や信号端子がケース外に突き出しているギヤードモータでは、端子にその仕様を超える力が加えられると、端子が破損したり、内部機構が損傷したりするおそれがある。本発明によれば、ケース外に露出した端子の強度をストッパ部材により個別的に補強することが可能となり、ギヤードモータのその全体としての耐久性が効率的に高められる。
【0008】
また、前記端子には、その対となる端子を有するコネクタが接続されてもよい。端子に対してその没入方向に力が加えられる場合でも、ストッパ部材により端子の没入が阻止される。
【0009】
また、前記ケース体は樹脂製であり、前記ケース体は、前記端子が該ケース体の内側から挿通される貫通穴である端子穴を有し、前記端子は前記端子穴に対して該端子穴を拡張させながら圧力をかけて押し込まれる(以下、このような接合方法を「圧入」ともいう。)ことが好ましい。ケース体に対する端子の基本的な位置決めや固定は圧入により行い、過大な外力に対する追加的な補強手段としてストッパ部材を用いることにより、端子の一般的な保持構造を採用しつつ端子の強度を高めることができる。
【0010】
また、前記ストッパ部材は前記端子を前記ケース体に組み付けた後に組み付けられる部材であり、前記ストッパ部材は、前記ケース体内部の収容空間のうち、前記端子を前記ケース体に組み付ける際に該端子の少なくとも一部が通過する位置に配置されることが好ましい。端子の組み付けに必要となるデッドスペースを利用してストッパ部材を配置することにより、ギヤードモータを大型化させることなくその耐久性を高めることができる。
【0011】
また、前記ケース体は前記端子が該ケース体の内側から挿通される貫通穴である端子穴を有し、前記端子は、前記端子穴の差込口に係合する凸部または段差部である抜け止め部を有することが好ましい。これにより、端子の没入方向だけでなく引抜方向への強度も高めることができる。
【0012】
また、前記ケース体は前記端子が該ケース体の内側から挿通される貫通穴である端子穴を有し、前記端子は断面視L字形の端子であり、その屈曲部は前記ケース体の内部に配置されることが好ましい。端子が断面視L字形でその屈曲部がケース内に収容されることにより、その屈曲部の起立部分をストッパ部材に当接させることが可能となり、ストッパ部材は端子をより広い面積で支持することが可能となる。
【0013】
また、前記ストッパ部材は前記ケース体に嵌合され、前記ストッパ部材は前記ケース体により、前記端子の前記ケース体内部への没入方向と同方向への移動が制限されることが好ましい。これによりストッパ部材はより高い位置精度で端子の没入を阻止することが可能となる。
【0014】
また、本発明のギヤードモータは、先端が前記ケース体の外に露出した出力軸と、前記ケース体に収容される部材である軸支持部材と、をさらに備え、前記軸支持部材は、前記出力軸を一方の板面で支持する板状部を有し、前記板状部の板面のうち、前記出力軸を支持する側の面を表面、その反対側の面を裏面としたときに、前記ストッパ部材は、前記板状部の裏面に接触し、該裏面を支持する変形防止部を有することが好ましい。
【0015】
ケース外に露出した端子および出力軸を共通のストッパ部材で個別的に補強することにより、部品点数の増加を抑えつつ、ギヤードモータのその全体としての耐久性を効率的に高めることができる。
【0016】
また、前記ストッパ部材の前記変形防止部は、前記軸支持部材の裏面のうち、前記出力軸の回転中心線の位置を基準としてその周囲を周方向に沿って等間隔に支持し、又は、該回転中心線の位置を対称の中心として点対称となる位置を支持していることが好ましい。これにより軸支持部材の板状部をバランスよく補強することができる。
【0017】
また、前記軸支持部材と前記ストッパ部材との間には基板が配置されてもよい。ストッパ部材が軸支持部材の変形を防ぐことにより、出力軸に大きな力が加えられた場合でも基板への影響が抑えられる。
【0018】
また、本発明のギヤードモータは、前記軸支持部材の前記板状部に前記出力軸の後端部が差し込まれる貫通穴が設けられ、前記出力軸の後端部に永久磁石が配置され、前記基板の前記永久磁石に対向する位置にホールセンサが配置される構成としてもよい。ストッパ部が軸支持部材の変形を防ぐことにより、出力軸に大きな力が加えられた場合でもホールセンサによる出力軸の位置検出精度が保たれる。
【0019】
また、前記ストッパ部材は前記軸支持部材の裏面を支持する複数の突出部である柱部を有し、前記基板には前記柱部が貫通する穴である基板穴が設けられ、前記基板穴は前記ストッパ部材が外力により位置ずれ又は変形を生じた場合でも前記柱部が前記基板に接触しない程度の大きさであることが好ましい。ストッパ部材は端子や出力軸に加えられた外力に対抗する部材である。つまりストッパ部材には大きな力が加えられることが予め見込まれる。そこで、柱部を基板の位置決め等には用いず、柱部の位置や寸法に対して基板穴の大きさに余裕をもたせることにより、仮にストッパ部材が変形したり、ストッパ部材の位置がそのクリアランスの範囲を超えてずれたりしても、柱部が基板に干渉することを防ぐことができる。
【0020】
また、前記基板の板面が向けられた方向を上下としたときに、前記軸支持部材および前記基板は上下に並べて配置され、前記軸支持部材および前記基板は、前記ケース体にさらに上下から挟まれることで前記ケース体の内部における上下方向の位置が固定されることが好ましい。またこのとき、前記軸支持部材は、上下に貫通した複数の穴である第1固定穴を有し、前記基板には、前記第1固定穴に対応する位置に、上下に貫通した複数の穴である第2固定穴が設けられ、前記第1固定穴および前記第2固定穴の各組み合わせに共通の固定軸が挿通されることで、前記軸支持部材および前記基板は、前記ケース体の内部における水平方向の位置が固定されることが好ましい。上下に並べられた軸支持部材と基板とがケース体によって上下に挟み込まれ、また、これらの水平方向の位置が共通の固定軸で固定されることにより、ケース内における軸支持部材および基板の相対的な位置のずれが構造的に防止される。
【0021】
また、前記端子の全長のうち前記ケース体の外に配置された部分の延出方向に沿う方向と、前記出力軸の軸線方向に沿う方向とは、互いに直交する方向であることが好ましい。端子がストッパ部材に当接する方向と出力軸(軸支持部材)がストッパ部材に当接する方向とが違いに直交する方向であることにより、端子または軸支持部材の一方がストッパ部材に加える力が、他方の位置に影響することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明によればギヤードモータの耐久性を効率的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係るギヤードモータの透視斜視図である。
図2】ギヤードモータの動力伝達機構を示す平面図である。
図3】補強部材であるストッパ部材の外形を示す透視斜視図である。
図4】ギヤードモータの補強構造を示す分解斜視図である。
図5図4に示す各部材が組み立てられた状態を示す斜視図(a)、正面図(b)、及び側面図(c)である。
図6】ストッパ部材の柱部が支持する軸支持部材の部位を示す下面図である。
図7図5に示す各部材の側面視断面図である。
図8】基板の平面図である。
図9】端子およびストッパ部材の組み付け方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[構成概要]
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係るギヤードモータ1の透視斜視図である。以降の説明において、「上」および「下」とは、図1等に描かれた座標軸のZ軸に平行な方向をいい、Z1側を「上」、Z2側を「下」とする。「前」および「後ろ」とは、同座標軸のX軸に平行な方向をいい、X1側を「前」、X2側を「後ろ」とする。同様に、「左右」とは同座標軸のY軸に平行な方向をいい、Y1側を「右」、Y2側を「左」とする。
【0025】
本形態のギヤードモータ1は、DCモータ2の回転を減速歯車列30により減速し、出力軸4を回転させるモータユニットである。
【0026】
出力軸4は円柱形状の軸部42を有しており、軸部42の先端面(上面)はケース体の上面に形成された開口部911から外部に露出している。軸部42の先端面には駆動対象の機器が接続されるDカット穴43が形成されている。尚、他の機器の接続構造は本形態のDカット穴43には限られず、他の機器の接続部の形状に応じて適宜変更可能である。
【0027】
ギヤードモータ1は、ケース体の前面に設けられたコネクタ部921から複数の電源端子・信号端子7(以下、単に「端子7」という。)の接点部71が露出している。コネクタ部921には、端子7の対となる端子を有する他のコネクタが接続される。
【0028】
尚、ここでいう「露出」とは、ケース体の外(以下、単に「ケース外」ともいう。)から視認可能であること、又は、人や他の機器等が直接触れられる状態にあることをいい、例えばコネクタ部921の中に収容されている接点部71も、コネクタ部921の開口から視認可能であれば、その接点部71はケース外に露出しているといえる。また、例えばギヤードモータ1の不使用時にはコネクタ部921の開口が防塵・防水用のキャップやフリップで塞がれていても、その使用時にはキャップやフリップが外され、接点部71が視認可能となったり、接点部71に他の端子が直接接続されたりするのであれば、その接点部71はケース外に露出しているといえる。
【0029】
[動力伝達機構]
図2は、ギヤードモータ1の動力伝達機構を示す平面図である。図2に示されるように、DCモータ2の回転軸に装着されたウォーム29と出力軸4との間には、ウォームホイールを含む複数の歯車部材からなる減速歯車列30が配置されている。端子7からDCモータ2に電力が供給され、ウォーム29が回転すると、その回転はこれら減速歯車列30により減速され、最終的に出力軸4の軸部42に伝達される。
【0030】
[補強構造]
図3は、補強部材であるストッパ部材8の外形を示す透視斜視図である。図4はギヤードモータ1の補強構造を示す分解斜視図である。図5は、図4に示す各部材が組み立てられた状態を示す斜視図(a)、正面図(b)、及び側面図(c)である。以下、図3から図5を参照して、ストッパ部材8によるギヤードモータ1の補強構造について説明する。
【0031】
ギヤードモータ1には、その想定される用途や使用環境に耐えうる耐久性が求められる。一方、ギヤードモータ1の材料強度や構造強度を高めるほど、ギヤードモータ1の製品コストや重量、サイズは増大する。特に、ケース外に露出した端子7と軸部42に対して外部から加えられる力の程度は、ケース体の内部(以下、単に「ケース内」ともいう。)に収容されている他の部品に比べて予測が困難である。本形態のギヤードモータ1は、補強部材であるストッパ部材8を別途備え、ストッパ部材8でこれら端子7及び軸部42を個別的に補強することにより、ギヤードモータ1のその全体としての耐久性を効率的に高めている。
【0032】
本形態のストッパ部材8は樹脂製の部材であり、ケース体に収容されている。図3に示すように、ストッパ部材8は略直方体形状の本体部を有している。ストッパ部材8の前面8aは、ケース内で端子7の後端部に接触し、端子7がその規定位置(組み付け位置)からケース内に没入することを阻止する。ストッパ部材8の上面8bには、上方に突き出した2本の凸部である柱部81が形成されている。柱部81は、後述する軸支持部材5の下面を支持することで軸支持部材5の変形を阻止する変形防止部の一例である。また、ストッパ部材8の左右の面には、上下に延びる板状の凸部であるフランジ部82が形成されている。フランジ部82は、後述する下ケース92の溝部923に嵌合され、ケース内におけるストッパ部材8の位置を固定する。
【0033】
図3から図5に示すように、本形態の端子7は断面視L字形の端子である。端子7の屈曲部72および起立部73はケース内に配置されており、端子7は、その起立部73でストッパ部材8の前面8aに当接する。これによりストッパ部材8は、端子7を広い面積で安定して支持することができる。本形態のギヤードモータ1では、コネクタ921にその対となるコネクタが接続されるときに、端子7に対して没入方向への力が加えられるが、ストッパ部材8により端子7の没入が構造的に阻止される。
【0034】
本形態のギヤードモータ1は、出力軸4をケース内で支持する軸支持部材5を有している。軸支持部材5は、図4に示すように、平面視矩形状の平板部である板状部51と、板状部51の下面(裏面)から下方に突き出した複数の脚部531と、を有している。板状部51には出力軸4の後端部(下端部)が差し込まれる貫通穴52が形成されており、貫通穴52の周縁には、板状部51の肉厚が円筒状に大きく形成された開口リブ521が設けられている。出力軸4の軸部42は歯車部41よりも下まで延びており、軸部42の直径は貫通穴52や開口リブ521の直径よりも大きい(図5(b)(c)参照)。これにより軸支持部材5は、その板状部51の上面(表面)で出力軸4を支持する。
【0035】
ストッパ部材8の柱部81は、板状部51の下から貫通穴52の近傍を支持し、板状部51の変形を阻止する。図6は、板状部51の下面51bのうち柱部81によって支持される部位を示す下面図である。図6(a)に示すように、本形態の柱部81は貫通穴52の左右を支持している。このように、柱部81が、出力軸4の回転中心線Aの位置を対称の中心として点対称となる位置を支持することにより、軸支持部材5をバランスよく補強することができる。その他、例えば図6(b)に示すように、柱部81は、同回転中心線Aの位置を基準として、その周囲を周方向に沿って等間隔に支持してもよい。または、図6(c)に示すように、貫通穴52の周囲を支持可能な範囲内ですべて支持してもよい。
【0036】
尚、本形態のギヤードモータ1は出力軸4が板状部51を貫通する構造であるため、ストッパ部材8は貫通穴52の周囲を支持しているが、板状部51が出力軸4を貫通させずにその上面で支持する構造である場合は、ストッパ部材8は出力軸4の回転中心線Aの位置を直接支持してもよい。
【0037】
また本形態のギヤードモータ1では、端子7の接点部71の延出方向に沿う方向(X方向)と、出力軸4の軸線方向に沿う方向(Z方向)とが互いに直交している。すなわち、ストッパ部材8に対して端子7が当接する方向(X2方向)と、出力軸4(軸支持部材5)が当接する方向(Z2方向)とは互いに直交している。これにより、端子7又は軸支持部材5の一方がストッパ部材8に加える力が、他方の部材には伝わりにくくなっている。
【0038】
[基板の保護構造]
また、図4に示すように、本形態のギヤードモータ1では、軸支持部材5とストッパ部材8の間に基板6が配置されている。基板6にはホールセンサ61が実装されており、基板6のスルーホール68には端子7の起立部73が半田付けされている。基板6は、端子7からDCモータ2とホールセンサ61に電力を供給し、また、ホールセンサ61の出力を、端子7を介して図示しない制御装置に送る。
【0039】
図7は、図5に示す各部材の側面視断面図である。図7に示すように、出力軸4の下端部には永久磁石45が埋め込まれており、ホールセンサ61は永久磁石45に対向する位置に配置されている。ホールセンサ61は出力軸4の回転に伴う磁界の変化を検知して出力軸4の配置角度を特定する。本形態では、ストッパ部材8が軸支持部材5の変形を防ぐことにより、出力軸4に大きな力が加えられた場合でもホールセンサ61による出力軸4の位置検出精度が保たれる。
【0040】
図8は、基板6の平面図である。図8及び図4に示すように、ストッパ部材8の柱部81は、基板6に形成された貫通穴である基板穴62に挿通され、軸支持部材5を支持する。ここで、基板穴62は、ストッパ部材8が外力により位置ずれ又は変形を生じた場合でも、柱部81が基板6に接触しない程度の大きさに形成されている。ストッパ部材8は、端子7や出力軸4に加えられた外力に対抗する部材である。つまりストッパ部材8には大きな力が加えられることが予め見込まれている。そこで、柱部81を基板6の位置決め等には使用せず、柱部81の位置や寸法に対して基板穴62の大きさに余裕(隙間G)をもたせることにより、仮にストッパ部材8が変形したり、ストッパ部材8の位置がそのクリアランスの範囲を超えてずれたりしても、柱部81が基板6に干渉することが防止されている。
【0041】
[端子およびストッパ部材の組み付け構造]
図9は、端子7及びストッパ部材8の組み付け方法を示す平面図である。以下、図9を参照して端子7及びストッパ部材8の組み付け構造について説明する。
【0042】
本形態のケース体は樹脂製である。本形態のケース体は図示しないケース半体である上ケースと、下ケース92とにより構成されている。下ケース92は、端子7がケース体の内側から挿通される貫通穴である端子穴922を有している。端子7は端子穴922に対して端子穴922を拡張させながら圧力をかけて押し込まれる(以下、このような接合方法を「圧入」ともいう。)。本形態のギヤードモータ1では、ケース体に対する端子7の基本的な位置決めや固定は圧入により行い、過大な外力に対する追加的な補強手段としてストッパ部材8を用いることにより、端子7の一般的な保持構造を採用しつつ端子7の強度を高めている。
【0043】
図9に示されるように、端子7及びストッパ部材8を下ケース92に組み付ける際には、まず端子7が端子穴922に圧入される(図9(a)(b))。本形態の端子7は端子穴922の差込口に係合する凸部である抜け止め部74を有している。これにより、端子7の引抜方向への強度が高められている。抜け止め部74は端子穴922の差込口に係合する形状であればよく、段差部としてもよい。
【0044】
ストッパ部材8は、端子7を下ケース92に組み付けた後に組み付けられる(図9(c))。ストッパ部材8のフランジ部82が下ケース92の溝部923にはめ込まれ、ストッパ部材8は前後方向への移動が制限される。これによりストッパ部材8は高い位置精度で端子7の没入を阻止することができる。
【0045】
ここで、本形態のストッパ部材8は、ケース体の収容空間のうち、端子7をケース体に組み付ける際に端子7が通過する位置に配置される(図9(b)の矢印部分)。このように本形態のギヤードモータ1では、ストッパ部材8をケース体の一部としてではなく、別部品として備え、端子7の組み付けに必要となるデッドスペースを利用してストッパ部材8を配置することにより、ギヤードモータ1を大型化させることなくその耐久性が高められている。
【0046】
尚、本形態のギヤードモータ1では、端子7の没入方向への移動をストッパ部材8で阻止し、端子7の引抜方向への移動を抜け止め部74により阻止するが、例えばストッパ部材8を下ケース92に組み付ける際に、端子7の起立部73をストッパ部材8に差し込むことで(ストッパ部材8で起立部73の両面を支持することで)、端子7の没入および引抜の両方をストッパ部材8のみで阻止することも可能である。
【0047】
[基板および軸支持部材の固定構造]
以下、図4及び図5を参照して、軸支持部材5及び基板6の固定構造について説明する。
【0048】
ギヤードモータ1の軸支持部材5及び基板6は、その板面を上下に向けて上下に並べて配置されている。図4に示すように、軸支持部材5の板面には上下に貫通した複数の穴である第1固定穴53が形成されており、基板6には、第1固定穴53に対応する位置に、上下に貫通した複数の穴である第2固定穴63が形成されている。軸支持部材5の第1固定穴53は脚部531を貫通しており、脚部531は基板6の上面に載置される。そして、図5に示すように、これら第1固定穴53及び第2固定穴63の各組み合わせには共通の固定軸951が挿通される。これにより軸支持部材5及び基板6は、ケース内における水平方向の位置が固定される。
【0049】
各固定軸951はケース体に支持されている。各固定軸951は、上ケースと下ケース92の内面に設けられた凸部である軸受ボス(図示せず)にその両端が差し込まれ、ケース体に移動不能に固定される。上ケースと下ケース92が嵌合されると、軸受ボスは、軸支持部材5の上面と基板6の下面を上下から挟み込み、これら軸支持部材5及び基板6のケース内における上下方向の位置を固定する。
【0050】
このように、上下に並べられた軸支持部材5及び基板6が上ケース及び下ケース92によって上下に挟み込まれ、また、これらの水平方向の位置が共通の固定軸951で固定されることにより、ケース内における軸支持部材5及び基板6の相対的な位置のずれが構造的に防止される。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:ギヤードモータ,2:DCモータ,29:ウォーム,30:減速歯車列,4:出力軸,41:歯車部,42:軸部,43:嵌合穴,45:永久磁石,A:回転中心線,5:軸支持部材,51:板状部,51b:下面(裏面),52:貫通穴,521:開口リブ,53:第1固定穴,531:脚部,6:基板,61:ホールセンサ,62:基板穴,63:第2固定穴,68:スルーホール,7:端子,71:接点部,72:屈曲部,73:起立部,74:抜け止め部,8:ストッパ部材,8a:正面,8b:上面,81:柱部(変形防止部),82:フランジ部,911:開口部,92:下ケース,921:コネクタ部,922:端子穴,923:溝部,951:固定軸

図1
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図9