(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055889
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電池用正極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20220401BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220401BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220401BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20220401BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/36 A
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163580
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】出口 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂井 遼太郎
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA02
5H050DA10
5H050EA10
5H050FA16
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA10
(57)【要約】
【課題】正極合材層中に十分な導電パスを形成することが可能なリチウムイオン二次電池用正極を提供することである。
【解決手段】本発明の一態様にかかるリチウムイオン二次電池用正極1は、正極集電体10と、正極集電体10上に形成された正極合材層11と、を備える。正極合材層11は、正極活物質20と、枝分かれを有する繊維状の第1導電材21と、枝分かれを有しない繊維状の第2導電材22と、を少なくとも含む。第1導電材21は、正極活物質20の表面に配置されており、第2導電材22は、正極活物質20間に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、
前記正極集電体上に形成された正極合材層と、を備え、
前記正極合材層は、正極活物質と、枝分かれを有する繊維状の第1導電材と、枝分かれを有しない繊維状の第2導電材と、を少なくとも含み、
前記第1導電材は、前記正極活物質の表面に配置されており、
前記第2導電材は、前記正極活物質間に配置されている、
リチウムイオン二次電池用正極。
【請求項2】
前記第1導電材のアスペクト比が50以上である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
【請求項3】
前記第1導電材の側鎖の長さの合計を主鎖の長さで除算した値が0.1以上である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
【請求項4】
前記第1導電材の主鎖の1/10以上の長さの側鎖の本数を、前記第1導電材の総数で除算した値が0.5以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
【請求項5】
前記第1導電材のアスペクト比が50以上であり、
前記第1導電材の側鎖の長さの合計を主鎖の長さで除算した値が0.3以上であり、
前記第1導電材の主鎖の1/10以上の長さの側鎖の本数を、前記第1導電材の総数で除算した値が1以上である、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
【請求項6】
前記第1導電材の主鎖の太さが1~30nmであり、
前記第2導電材の主鎖の太さが5~50nmであり、
前記第1導電材の主鎖の太さが前記第2導電材の主鎖の太さよりも細い、
請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
【請求項7】
前記第1導電材の主鎖の太さが1~20nmであり、
前記第2導電材の主鎖の太さが15~40nmである、
請求項6に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
【請求項8】
前記第2導電材に対する前記第1導電材の質量比が0.2~0.3である、請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
【請求項9】
前記第1導電材および前記第2導電材がカーボンナノチューブである、請求項1~8のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極を有するリチウムイオン二次電池。
【請求項11】
正極集電体と、当該正極集電体上に形成された正極合材層とを備えるリチウムイオン二次電池用正極の製造方法であって、
正極活物質と、枝分かれを有する繊維状の第1導電材と、溶媒と、を少なくとも含む正極ペーストを混練する第1混練工程と、
枝分かれを有しない繊維状の第2導電材を前記正極ペーストに加えて混練する第2混練工程と、
前記第2混練工程後の正極ペーストを前記正極集電体上に塗工する工程と、
前記塗工された前記正極ペーストを乾燥させて前記正極集電体上に前記正極合材層を形成する工程と、を備える、
リチウムイオン二次電池用正極の製造方法。
【請求項12】
前記第1混練工程における前記正極ペーストの粘度が50000mPa・s以上である、請求項11に記載のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電池用正極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出する正極および負極の間を、電解質中のリチウムイオンが移動することで充放電可能な二次電池である。
【0003】
特許文献1にはリチウムイオン二次電池用正極に関する技術、具体的には正極活物質と第1~第3の種類の炭素材料とバインダーとを含むリチウムイオン二次電池用正極に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチウムイオン二次電池の正極は、正極集電体と、当該正極集電体上に形成された正極合材層とを備える。正極合材層は、正極活物質と導電材とを含んでいる。例えば正極活物質にはリチウム金属酸化物が用いられるが、リチウム金属酸化物は電子伝導性が低い。このため、カーボンブラックなどの導電材を用いて正極合材層中に導電パスを形成している。
【0006】
しかしながら、導電材にカーボンブラックを用いた場合であっても、正極合材層中に十分な導電パスを形成することができない場合がある。このように十分な導電パスを形成することができない場合は正極合材層が高抵抗となり、リチウムイオン二次電池の出力が低下するという問題がある。
【0007】
上記課題に鑑み本発明の目的は、正極合材層中に十分な導電パスを形成することが可能なリチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電池用正極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様にかかるリチウムイオン二次電池用正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極合材層と、を備える。前記正極合材層は、正極活物質と、枝分かれを有する繊維状の第1導電材と、枝分かれを有しない繊維状の第2導電材と、を少なくとも含む。前記第1導電材は、前記正極活物質の表面に配置されており、前記第2導電材は、前記正極活物質間に配置されている。
【0009】
本発明の一態様にかかるリチウムイオン二次電池は、上述のリチウムイオン二次電池用正極を有するリチウムイオン二次電池である。
【0010】
本発明の一態様にかかるリチウムイオン二次電池用正極の製造方法は、正極集電体と、当該正極集電体上に形成された正極合材層とを備えるリチウムイオン二次電池用正極の製造方法であって、正極活物質と、枝分かれを有する繊維状の第1導電材と、溶媒と、を少なくとも含む正極ペーストを混練する第1混練工程と、枝分かれを有しない繊維状の第2導電材を前記正極ペーストに加えて混練する第2混練工程と、前記第2混練工程後の正極ペーストを前記正極集電体上に塗工する工程と、前記塗工された前記正極ペーストを乾燥させて前記正極集電体上に前記正極合材層を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、正極合材層中に十分な導電パスを形成することが可能なリチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電池用正極の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用正極の構成例を説明するための断面図である。
【
図2】実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用正極が備える正極合材層の詳細を説明するための模式図である。
【
図3】実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用正極の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用正極の構成例を説明するための断面図である。
図2は、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用正極が備える正極合材層の詳細を説明するための模式図である。
図1に示すように、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用正極1は、正極集電体10と、正極集電体10上に形成された正極合材層11と、を備える。
【0014】
正極集電体10は、金属箔や金属板で構成されている。正極集電体10には、例えば、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金を用いることができる。
【0015】
図2に示すように、正極合材層11は、正極活物質20と、第1導電材21と、第2導電材22と、を少なくとも含む。
【0016】
正極活物質20は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な材料であり、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、アルミ酸リチウム(LiAlO2)等を用いることができる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、アルミ酸リチウム(LiAlO2)を任意の割合で混合したNCA系の材料を用いてもよい。一例を挙げると、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2を用いることができる。また、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2を任意の割合で混合した材料を用いてもよい。例えば、これらの材料を等しい割合で混合したニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)を用いてもよい。
【0017】
正極活物質20の粒径は、例えば3~15μmである。なお、本発明において各々の材料の粒径はメジアン径D50であり、レーザー回折・散乱法を用いて測定した値である。また、正極活物質はこれらの材料に限定されることはなく、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な材料であればどのような材料であってもよい。
【0018】
第1導電材21および第2導電材22は、正極合材層11中に導電パスを形成するための材料である。
図2に示すように、第1導電材21は枝分かれを有する繊維状の導電材であり、主として正極活物質20の表面に配置されている。第2導電材22は枝分かれを有しない繊維状の導電材であり、主として正極活物質20間に配置されている。換言すると、第2導電材22は正極活物質20間に導電パスを形成するように配置されている。第1導電材21および第2導電材22は、例えばカーボンナノチューブを用いて構成することができる。
【0019】
ここで、枝分かれを有しない繊維状の導電材とは、枝分かれを有しない1本の繊維状の導電材のみならず、一部に枝分かれ(側鎖)を有していてもその枝(側鎖)の長さが短い繊維状の導電材も含むものとする。例えば、側鎖の長さが主鎖の長さの1/30より短い場合には、枝分かれを有しない繊維状の導電材であるものとする。
【0020】
第1導電材21のアスペクト比(主鎖の長さ/主鎖の太さ)は50以上であることが好ましく、80以上であることが更に好ましい。また、第1導電材21のアスペクト比(主鎖の長さ/主鎖の太さ)の上限については、合材層内で第1導電材21が分散できれば、特に限定されないが4000以下であることが好ましい。第1導電材21の側鎖の長さの合計を主鎖の長さで除算した値は0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることが更に好ましい。ここで、主鎖の長さとは1本の第1導電材21の中で最も長くなる箇所を測定したときの長さであり、側鎖の長さとはその主鎖から分岐している部分の長さである。
【0021】
また、第1導電材21の主鎖の1/10以上の長さの側鎖の本数を、第1導電材21の総数で除算した値が0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることが更に好ましく、より好ましくは1以上、更に好ましくは3以上であることが好ましい。当該算出方法について簡潔に説明すると、例えば、4本の第1導電材21のうち、側鎖(主鎖の1/10以上の長さ)の本数が1本である第1導電材21が2本、側鎖(主鎖の1/10以上の長さ)の本数が0本である第1導電材21が2本である場合、第1導電材21の主鎖の1/10以上の長さの側鎖の本数を、第1導電材21の総数で除算した値は、(2本+0本)/4本=0.5となる。
【0022】
第1導電材21の主鎖の太さは1~30nm、好ましくは1~20nmである。第2導電材22の主鎖の太さは5~50nm、好ましくは15~40nmである。このとき、第1導電材21の主鎖の太さが第2導電材22の主鎖の太さよりも細くなるように構成する。
【0023】
特に本実施の形態では、第1導電材21のアスペクト比(主鎖の長さ/主鎖の太さ)が50以上であり、第1導電材21の側鎖の長さの合計を主鎖の長さで除算した値が0.3以上であり、第1導電材21の主鎖の1/10以上の長さの側鎖の本数を第1導電材21の総数で除算した値を0.5以上とすることが好ましい。
【0024】
なお、本実施の形態においてアスペクト比とは、正極合剤層を塗工・乾燥後のアスペクト比であり、正極ペーストで溶媒に分散させる際に導電材が切断されてしまう場合もあるので、その場合は、それも考慮し、導電材を選定する。
【0025】
また、本実施の形態では、正極合材層11中において、第2導電材22に対する第1導電材21の質量比(第1導電材21の質量/第2導電材22の質量)が0.2~0.5であることが好ましい。
【0026】
本実施の形態において、正極活物質20に対する第1導電材21および第2導電材22の量は、0.1質量%以上10質量%以下、好ましくは0.1質量%以上2質量%以下とすることができる。
【0027】
正極合材層11は更に、分散剤、及びバインダーを含んでいてもよい。
【0028】
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアルキレンポリアミン、ベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0029】
バインダー14には、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、ポリアクリレート等を用いることができる。
【0030】
本実施の形態において、正極合材層11の密度は1.5~4.0g/cm3とすることが好ましい。また、正極合材層11の空隙率は、20%以上60%以下とすることが好ましい。正極合材層11の膜厚は、20~150μmとすることが好ましい。
【0031】
次に、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用正極の製造方法について説明する。
図3は、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用正極の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0032】
リチウムイオン二次電池用正極を製造する際は、まず正極ペーストを準備する。具体的には、正極活物質20と第1導電材21と溶媒とを少なくとも含む正極ペーストを混練する(第1混練工程:ステップS1)。第1混練工程(ステップS1)における正極ペーストの粘度は50000mPa・s以上、好ましくは80000mPa・s以上とすることが好ましく、200000mPa・s以下とすることが好ましい。または、第1混練工程(ステップS1)における正極ペーストの固形分濃度NVを50wt%以上、好ましくは60wt%以上としてもよい。
【0033】
正極活物質20および第1導電材21には上述した材料を用いることができる。溶媒には、例えばイソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン、水等を用いることができる。正極ペーストには更に、分散剤、及びバインダーを含めてもよい。分散剤、及びバインダーには上述した材料を用いることができる。
【0034】
第1導電材21は枝分かれにより複数の側鎖が存在するので、側鎖が存在しない導電材と比べて、効率的に正極活物質20に第1導電材21を絡めることができ、正極活物質20の表面の導電パスを良好に形成することができる。特に、第1混練工程(ステップS1)における正極ペーストの粘度を上述の範囲、すなわち粘度を高めに設定することで、正極活物質20に第1導電材21を効率的に絡めることができる。
【0035】
その後、ステップS1で混練した正極ペーストに第2導電材22を加えて混練する(第2混練工程:ステップS2)。第2導電材22は枝分かれがないため、正極活物質20に絡みつきづらく、正極合材層11中において1本の導電材として存在する。このため、第2導電材22は、正極合材層11中において正極活物質20間を繋ぐ導電パスを良好に形成することができる。
【0036】
第2混練工程(ステップS2)における正極ペーストの粘度は、500~30000mPa・s、好ましくは500~10000mPa・s程度に調整することが好ましい。正極ペーストの粘度が低すぎると、ステップS3において正極ペーストを正極集電体10上に塗工する際に塗工しづらくなるからである。また、正極ペーストの粘度が高すぎると、ステップS3において正極ペーストを正極集電体10上に塗工した際に、正極ペースト中における第2導電材22の流動性が悪くなり、第2導電材22による導電パスの形成が妨げられるからである。
【0037】
次に、上述のようにして準備した正極ペーストを正極集電体10上に塗工する(ステップS3)。正極集電体10には、上述した材料を用いることができる。
【0038】
その後、正極集電体10上に塗工された正極ペーストを乾燥させて正極集電体10上に正極合材層11を形成する(ステップS4)。このときの乾燥温度は、100℃~200℃とする。
【0039】
このような工程により、
図1に示したようなリチウムイオン二次電池用正極1を製造することができる。なお、本実施の形態では、ステップS4の乾燥工程の後、正極合材層11をプレスするプレス工程を更に備えていてもよい。
【0040】
ここで、第1導電材21(カーボンナノチューブ)の枝分かれ構造は、カーボンナノチューブを製造する際に形成してもよく、またカーボンナノチューブを溶媒に分散させる際に外力を加えることで形成してもよい。なお、本実施の形態にかかる発明では、枝分かれ構造を備える第1導電材21は、これら以外の方法を用いて形成してもよい。
【0041】
また、正極合材層11中における第1導電材21と第2導電材22は下記の方法を用いて分離することができる。すなわち、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用正極1を溶媒に分散させる。そして、遠心分離器を用いてこの溶媒を遠心分離することで、正極活物質20と絡んだ状態の第1導電材21(重い)と、正極活物質20と絡んでいない第2導電材22(軽い)とを分離することができる。このとき、正極活物質20と絡んだ状態の第1導電材21は重いので沈降し、正極活物質20と絡んでいない第2導電材22は軽いので沈降せずに上澄みとなる。
【0042】
以上で説明した本実施の形態にかかる発明では、枝分かれを有する繊維状の第1導電材21と、枝分かれを有しない繊維状の第2導電材22と、を導電材として用いている。そして、正極活物質20の表面に第1導電材21を配置し、正極活物質20間に第2導電材22を配置している。
【0043】
つまり、第1導電材21は枝分かれにより複数の側鎖が存在するので、正極活物質20の表面に導電パスを良好に形成することができる。また、第2導電材22は枝分かれがないため、正極活物質20に絡みつきづらく、正極合材層11中において1本の導電材として存在する。このため、第2導電材22は、正極合材層11中において正極活物質20間を繋ぐ導電パスを良好に形成することができる。
【0044】
したがって、本実施の形態にかかる発明により、正極合材層中に十分な導電パスを形成することができる。
【0045】
次に、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池について説明する。
以下では一例として、捲回電極体を備えるリチウムイオン二次電池について説明する。捲回電極体は、長尺状の正極シート(正極)と長尺状の負極シート(負極)とを長尺状のセパレータを介して積層し、この積層体を捲回し、得られた捲回体を側面方向から押しつぶすことで形成する。正極シートには、上述したリチウムイオン二次電池用正極を用いることができる。負極シートも正極シートと同様に、箔状の負極集電体の両面に負極活物質を含む負極合材層が形成された負極を用いることができる。
【0046】
リチウムイオン二次電池の容器は、上端が開放された扁平な直方体状の容器本体と、その開口部を塞ぐ蓋体とを備える。容器を構成する材料としては、アルミニウム、スチール等の金属材料が好ましい。または、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリイミド樹脂等の樹脂材料を成形した容器であってもよい。容器の上面(つまり、蓋体)には、捲回電極体の正極と電気的に接続される正極端子および捲回電極体の負極と電気的に接続される負極端子が設けられている。
【0047】
そして、捲回電極体の両端部の正極シートおよび負極シートが露出した部分(正極合材層および負極合材層がない部分)に、正極リード端子および負極リード端子をそれぞれ設け、上述の正極端子および負極端子とそれぞれ電気的に接続する。このようにして作製した捲回電極体を容器本体に収容し、蓋体を用いて容器本体の開口部を封止する。その後、蓋体に設けられた注液孔から電解液を注液し、注液孔を封止キャップで閉塞することにより、リチウムイオン二次電池を作製することができる。
【実施例0048】
次に本発明の実施例について説明する。
下記の方法を用いて、実施例および比較例にかかるサンプルを作製した。
【0049】
<実施例>
図3に示したフローを用いて、実施例にかかるサンプルを作製した。まず、正極活物質としてLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2を、第1導電材として枝分かれのあるカーボンナノチューブ(CNT1)を、第2導電材として枝分かれのないカーボンナノチューブ(CNT2)を、バインダーとしてPVdFを、溶媒としてNMPを、それぞれ準備した。このとき使用した正極活物質の粒径(D50)は5~10μmであった。また、使用した第1導電材(CNT1)および第2導電材(CNT2)は、表1に示すとおりである。
【0050】
つまり、実施例1では、第1導電材(CNT1)として長さが1.2μm、太さが10nmのカーボンナノチューブを用いた。また、第1導電材(CNT1)の側鎖の長さの合計を主鎖の長さで除算した値は、0.2であった。第1導電材(CNT1)の主鎖の1/10以上の長さの側鎖の本数を、第1導電材(CNT1)の総数で除算した値は1.1であった。また、第2導電材(CNT2)として長さが0.8μm、太さが30nmのカーボンナノチューブを用いた。第2導電材(CNT2)に対する第1導電材(CNT1)の質量比は0.2であった。また、各々の原料の混合比は、正極活物質を55~60質量%、第1導電材(CNT1)を0.1~1質量%、第2導電材(CNT2)を0.1~3質量%、バインダーを0.3~2質量%、及び溶媒を30~45質量%とした。
【0051】
まず、正極活物質、第1導電材(CNT1)、バインダー、及び溶媒を混練した(第1混練工程)。第1混練工程における正極ペーストの粘度は、95300mPa・sとした。なお、正極ペーストの粘度は、レオメータ(アントンパール社製MCR-302、コーンプレートCP-50-1)を使用し、25℃、せん断速度10-2s-1~103s-1の条件で測定した。
【0052】
次に、混練した正極ペーストに第2導電材(CNT2)を加えて混練した(第2混練工程)。第2混練工程における正極ペーストの粘度は6400mPa・sとした。その後、混練後の正極ペーストを正極集電体であるアルミニウム箔に塗工した。そして、正極ペーストを乾燥温度120℃の条件で2分間乾燥させて正極集電体上に正極合材層を形成した。このときの正極合材層の厚さは35~40μmであった。
【0053】
<比較例>
上述の実施例と同様に、
図3に示したフローを用いて正極集電体上に正極合材層を形成して比較例1~4にかかるサンプルを作製した。
【0054】
比較例1にかかるサンプルでは、第1導電材(CNT1)として長さが0.5μm、太さが12nmのカーボンナノチューブを用いた。なお、比較例1では第1導電材(CNT1)として、枝分かれのないカーボンナノチューブを使用した。比較例1では第1混練工程における正極ペーストの粘度を7620mPa・sとした。また、比較例1では第2導電材(CNT2)を使用していないため、第2混練工程を実施していない。比較例1では、便宜上、枝分かれのないカーボンナノチューブを第1導電材(CNT1)として記載している。以下、同様である。
【0055】
比較例2は、実施例1にかかるサンプルにおいて第2導電材(CNT2)の添加を省略したサンプルである。比較例2では第2導電材(CNT2)を使用していないため、第2混練工程を実施していない。比較例2では第1混練工程における正極ペーストの粘度を11700mPa・sとした。これ以外は、実施例1と同様である。
【0056】
比較例3にかかるサンプルでは、第1導電材(CNT1)として長さが0.8μm、太さが30nmのカーボンナノチューブを用いた。なお、比較例3では第1導電材(CNT1)として、枝分かれのないカーボンナノチューブを使用した。比較例3では第1混練工程における正極ペーストの粘度を6490mPa・sとした。また、比較例1では第2導電材(CNT2)を使用していないため、第2混練工程を実施していない。
【0057】
比較例4にかかるサンプルでは、第1導電材(CNT1)として長さが0.5μm、太さが12nmのカーボンナノチューブを用いた。なお、比較例4では第1導電材(CNT1)として、枝分かれのないカーボンナノチューブを使用した。比較例4では第1混練工程における正極ペーストの粘度を71000mPa・sとした。また、第2導電材(CNT2)として長さが0.8μm、太さが30nmのカーボンナノチューブを用いた。第2導電材(CNT2)に対する第1導電材(CNT1)の質量比は0.2とした。第2混練工程における正極ペーストの粘度は、3560mPa・sとした。すなわち、比較例4では、第1導電材(CNT1)および第2導電材(CNT2)として、長さと太さが異なるカーボンナノチューブ(両方とも枝分かれのないカーボンナノチューブ)を使用してサンプルを作製した。
【0058】
<サンプルの評価>
各々のサンプルの正極合材層の極板抵抗率(Ω・cm)を日東精工アナリテック社製(旧三菱ケミカルアナリテック)MCP-T610を用いて測定した。測定した極板抵抗率を表1に示す。表1に示すように、実施例1にかかるサンプルでは比較例1~4にかかるサンプルと比べて極板抵抗率が最も低い値(8(Ω・cm))となった。これに対して比較例1~4にかかるサンプルでは、極板抵抗率が11.1~22.2(Ω・cm)の範囲となり、実施例1にかかるサンプルよりも極板抵抗率が大きくなった。特に、比較例1に係るサンプルでは、極板抵抗率が22.2(Ω・cm)となり、最も高い値となった。
【0059】
以上の結果から、枝分かれを有する繊維状の第1導電材(CNT1)と、枝分かれを有しない繊維状の第2導電材(CNT2)と、を導電材として用い、正極活物質の表面に第1導電材(CNT1)を配置し、正極活物質間に第2導電材(CNT2)を配置することで、正極合材層中に十分な導電パスを形成することができた。
【0060】
【0061】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。