(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055893
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置、被検体位置合わせ装置、および、被検体位置合わせ方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
A61B5/055 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163586
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 康太
(72)【発明者】
【氏名】花田 光
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 秀之
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB38
4C096AD06
4C096AD12
4C096AD18
4C096BA05
4C096BB32
4C096CC06
4C096EB06
(57)【要約】
【課題】追加のハードウェアを用いずに、被検体の撮像対象部位を撮像空間に自動的に位置合わせすることができる。
【解決手段】被検体の撮像対象部位に配置された状態の受信コイルが受信した核磁気共鳴信号を受け取って、受信コイルの位置を算出する。受信コイルの位置を磁気共鳴イメージング装置の撮像空間に一致させるように被検体を搭載した寝台を移動させる。これにより、被検体の撮像対象部位を磁気共鳴イメージング装置の撮像空間に位置合わせする。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像空間に静磁場を発生させる静磁場発生部と、被検体から放出される核磁気共鳴信号を受信する受信コイルと、前記被検体を搭載し前記撮像空間まで移動させる寝台と、前記寝台の移動を制御して、前記被検体の撮像対象部位を前記撮像空間に位置合わせして配置する被検体位置合わせ部とを有し、
前記被検体位置合わせ部は、前記被検体の撮像対象部位に配置された状態の前記受信コイルが受信した前記核磁気共鳴信号を用いて前記受信コイルの位置を求め、前記受信コイルの位置を前記撮像空間に一致させるように前記寝台を移動させることにより、前記撮像対象部位を前記撮像空間に位置合わせすることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、前記撮像空間に配置された被検体へ高周波磁場を照射する送信コイルと、前記静磁場へ重畳させて傾斜磁場を印加する傾斜磁場発生部とをさらに有し、
前記被検体位置合わせ部は、
所定のパルスシーケンスにしたがって、前記撮像空間の前記被検体に高周波磁場を照射し、前記被検体から放出される前記核磁気共鳴信号を所定の方向に前記傾斜磁場を印加しながら前記受信コイルにより受信させ、
受信した前記核磁気共鳴信号をフーリエ変換して絶対値画像を再構成し、
前記絶対値画像の信号強度のプロファイルを前記所定の方向について求め、
前記プロファイルに基づいて、前記受信コイルの位置を算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、前記受信コイルは、複数のエレメントが少なくとも前記所定の方向に配列された構成であり、
前記被検体位置合わせ部は、前記受信コイルの位置として、前記複数のエレメントのうちの特定のエレメントの位置を算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、前記被検体位置合わせ部は、前記エレメントごとの前記核磁気共鳴信号から前記エレメントごとに前記絶対値画像を再構成し、前記エレメントごとの前記信号強度のプロファイルを算出し、
前記エレメントごとの前記信号強度のプロファイルが前記所定の方向において交差する位置から前記特定のエレメントの位置を算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、前記特定のエレメントの前記プロファイルと、前記所定の方向について前記特定のエレメントと両隣のエレメントのそれぞれの前記プロファイルとが交差する2つの位置の間の点を前記特定のエレメントの位置として算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、前記受信コイルのエレメントの数は、前記所定の方向について一つであり、
前記被検体位置合わせ部は、前記エレメントの前記プロファイルの前記所定の方向についての重心を算出し、前記重心の位置を前記エレメントの位置とすることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、前記被検体位置合わせ部は、前記所定の方向に対して交差する方向についても、前記プロファイルを算出し、前記所定の方向に交差する方向についても、前記受信コイルの位置を算出し、前記受信コイルの位置を前記撮像空間に一致させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、前記被検体位置合わせ部は、前記受信コイルの位置を求める前に、前記被検体の身長および/または操作者が入力した撮像対象部位を用いて、前記撮像対象部位を前記撮像空間まで移動させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、前記被検体位置合わせ部は、前記寝台を連続的に前記撮像空間に向かって移動させながら、前記パルスシーケンスを実行させることにより前記受信コイルの位置を算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、前記被検体位置合わせ部は、前記パルスシーケンスを実行している間および/または前記受信コイルの位置を算出している間の前記寝台の移動量を差し引いて、前記受信コイルの位置を前記撮像空間に一致させるための前記寝台の移動量を算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
磁気共鳴イメージング装置の寝台の移動を制御して、被検体の撮像対象部位を磁気共鳴イメージング装置の撮像空間に位置合わせして配置する被検体位置合わせ装置であって、
前記被検体の撮像対象部位に配置された状態の前記受信コイルが受信した前記核磁気共鳴信号を用いて前記受信コイルの位置を求め、前記受信コイルの位置を前記撮像空間に一致させるように前記寝台を移動させることにより、前記撮像対象部位を前記撮像空間に位置合わせすることを特徴とする被検体位置合わせ装置。
【請求項12】
被検体の撮像対象部位に配置された状態の受信コイルが受信した核磁気共鳴信号を受け取って、前記受信コイルの位置を算出し、
前記受信コイルの位置を磁気共鳴イメージング装置の撮像空間に一致させるように前記被検体を搭載した寝台を移動させることにより、前記撮像対象部位を前記撮像空間に位置合わせすることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の被検体位置合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)装置に関し、特に被検者セッティング時の操作者のワークフロー向上技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮影においては、MRI装置の静磁場磁石が発生する均一な静磁場空間に被検体が配置され、送信コイルから高周波磁場パルスが照射され、傾斜磁場コイルから傾斜磁場パルスが印加される。高周波磁場パルスを照射された被検体組織の原子核は、NMR信号を発生し、傾斜磁場パルスは、NMR信号に位相エンコードと周波数エンコードを付与する。NMR信号は、受信コイルによって時系列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0003】
MRI装置の撮像空間は、所定精度以上の均一な静磁場空間を形成可能であり、かつ、所定の傾斜磁場パルスを印加可能な領域であり、予め設計により決まっている。そのため、操作者は、撮像空間内に被検者の撮像対象部位を配置する必要がある。
【0004】
従来、操作者が被検者を撮像空間にセッティングする手順は以下の通りである。まず、被検者をMRIに備え付けられている寝台に横たわらせ、撮像対象部位近傍が静磁場の中心に配置されるように、寝台を移動させる操作を操作者が行う。つぎに、操作者は、MRI装置に備え付けられているレーザーを被検者に照射して、レーザーの照射部位を目視で確認しながら、寝台の移動操作をさらに行うことにより、撮像対象部位が静磁場の中心に配置されるように微調整を行う。
【0005】
しかしながら、目視で行う寝台の位置合わせ作業は、操作者の負担になる。また、同じ被検者に対して経過観察のために複数回にわたって検査を行う場合、検査のたびに被検者のセッティング位置が微妙に異なるという問題も生じる。また、付随的な問題としては、位置調整に使用されるレーザーが被検者の目に入るリスクがある。また、レーザーを用いて位置合わせする際に、寝台を細かく何度も移動させる必要があり、被検者が不快に感じることがある。そのため、近年、撮像の効率化・撮像の再現性の向上についての要望が高まりつつある。その一つは、被検者のセッティングの自動化である。
【0006】
特許文献1では、被検者の身長等に応じて、寝台を配置すべき位置を算出し、算出した位置まで寝台を移動させる位置合わせ方法を提案している。具体的には、まず、操作者により選択された検査情報(年齢、性別、撮像対象部位)を基に、撮像対象部位を撮像空間に配置するための寝台位置を学習データから大まかに算出する。次に、センサーを使用して被検者の身長と体重を測定し、測定結果を用いて、寝台位置の補正量を算出する。上記フローで決定した寝台位置に寝台を移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0311842号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、被検者の身長や体重に基づいて撮像対象部位をMRI装置の撮像空間に配置するための寝台の移動量を算出する技術が開示されているが、被検者に取り付けられた受信コイルと撮像空間との位置関係に関しては考慮されていない。
【0009】
すなわち、受信コイルは、その感度領域が実際の撮像対象部位を含むように操作者によって撮像対象部位に近接配置されるため、実際の撮像対象部位は、受信コイルが取り付けられた領域である。例えば身体のAnterior(前部)側に使用する受信コイルであるボディコイルは、寝台の天板上の空間で、身体の所望の位置に搭載することが可能であり、操作者は、撮像対象部位の上にボディコイルを搭載する。
【0010】
そのため、実際の撮像対象部位が、被検者の身長や体重に基づいて算出される撮像対象部位とは、ずれることがあり得るため、受信コイルの中心を静磁場中心(撮像空間の中心)に配置することが望ましい。しかしながら、従来の技術では、受信コイルの位置は考慮されていないため、受信コイルの感度領域の一部が、撮像空間から外れ、その部分の画像を生成することができないことがあり得る。
【0011】
また、特許文献1の技術では、被検者の身長や体重を測定するセンサーを用いるため、MRI装置に予めセンサーを備えておく必要があり、コストが増加する。
【0012】
そこで本発明の目的は、追加のハードウェアを用いずに、被検体の撮像対象部位を撮像空間に自動的に位置合わせすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の磁気共鳴イメージング装置は、撮像空間に静磁場を発生させる静磁場発生部と、被検体から放出される核磁気共鳴信号を受信する受信コイルと、被検体を搭載し撮像空間まで移動させる寝台と、寝台の移動を制御して、被検体の撮像対象部位を撮像空間に位置合わせして配置する被検体位置合わせ部とを有する。被検体位置合わせ部は、被検体の撮像対象部位に配置された状態の受信コイルが受信した核磁気共鳴信号を用いて受信コイルの位置を求め、受信コイルの位置を撮像空間に一致させるように寝台を移動させることにより、撮像対象部位を撮像空間に位置合わせする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被検体の撮像対象部位に配置された状態の受信コイルが受信した核磁気共鳴信号を用いて受信コイルの位置を求め、受信コイルの位置を撮像空間に一致させることにより、追加のハードウェアを用いずに、被検体の撮像対象部位を撮像空間に自動的に位置合わせすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態のMRI装置の全体構成を説明するための図
【
図2】実施形態1の被検体位置合わせ部81の処理を示すフローチャート
【
図3】実施形態1の被検体位置合わせ部81の処理の変形例を示すフローチャート
【
図4】実施形態1、2、3、4における撮像対象部位の選択用の画面および推奨受信コイルの表示画面を示す画面例
【
図5】実施形態1における人体の基準位置から対象検査部位までの距離を示す説明図
【
図6】実施形態1におけるアレイ状の受信コイルの(a)エレメントの配置を示す説明図、(b)エレメントの相対位置を示す表
【
図7】実施形態1において予め定めておいた性別と年齢と身長との関係を示す表
【
図8】実施形態1において、予め定めておいた基準位置(頚椎屈曲部)から対象検査部位までの距離を身長別に示す一覧表
【
図9】(a)実施形態1、2、3、4における被検体位置合わせに用いるパルスシーケンス、(b)取得したNMR信号の処理を示すフロー図
【
図10】(a)実施形態1におけるアレイ状の受信コイルのエレメントの配置を示す説明図、(b-1)図(a)の受信コイルを用いて一様なファントムのNMR信号からエレメントごとに得た絶対値画像の信号強度のプロファイルを示すグラフ、(b-2)図(a)の受信コイルを用いて被検体のNMR信号からエレメントごとに得た絶対値画像の信号強度のプロファイルを示すグラフ
【
図11】(a)実施形態1におけるアレイ状の受信コイルのエレメントの配置と、中心のエレメントを示す説明図、(b)図(a)の受信コイルを用いて得た絶対値画像の信号強度のプロファイルから、エレメントの境界位置を求めた説明図
【
図12】実施形態2の被検体位置合わせ部81の処理を示すフローチャート
【
図13】実施形態2における一つのエレメントからなる受信コイルの構成と、受信コイルを用いて一様なファントムのNMR信号から得た絶対値画像の信号強度のプロファイルを示す説明図
【
図14】実施形態2における一つのエレメントからなる受信コイルと、静磁場中心と、絶対値画像の信号強度のプロファイルの重心を示す説明図
【
図15】実施形態3の被検体位置合わせ部81の処理を示すフローチャート
【
図16】実施形態3におけるアレイ状の受信コイルの構成と、受信コイルを用いて一様なファントムのNMR信号から得た絶対値画像の信号強度のX軸方向のプロファイルを示す説明図
【
図17】実施形態3におけるアレイ状の受信コイルのエレメントの配置と、中心のエレメントと、得た絶対値画像の信号強度のプロファイルから求めたエレメントの境界位置を示す説明図
【
図18】実施形態4の被検体位置合わせ部81の処理を示すフローチャート
【
図19】実施形態4における寝台の移動と、実補正移動量を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の実施形態について詳説する。なお、以下の説明において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
最初に、本実施形態に係るMRI装置の一例の全体概要を
図1に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るMRI装置の全体構成を示すブロック図である。
【0018】
MRI装置は、NMR現象を利用して被検体の断層画像を得るものであり、
図1に示すように、静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、送信系5と、受信系6と、信号処理系7と、シーケンサ4と、中央処理装置(CPU)8とを備えて構成される。
【0019】
静磁場発生系2は、被検体1の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源を配置した構成である。静磁場発生源は、垂直磁場方式の場合、被検体1の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式の場合、体軸方向に、均一な静磁場を発生させる。
【0020】
傾斜磁場発生系3は、MRI装置の座標系(静止座標系)であるX,Y,Zの3軸方向に傾斜磁場Gx,Gy,Gzを印加する傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とを備えて構成される。傾斜磁場電源10は、後述のシ-ケンサ4からの命令に従って、X,Y,Z方向の傾斜磁場コイルに選択的に駆動電流を供給することにより、傾斜磁場Gx,Gy,Gzのうちの1以上を印加する。例えば、撮影時には、スライス面(撮影断面)に直交する方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)を印加して被検体1に対するスライス面を設定し、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード方向の傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード方向の傾斜磁場パルス(Gf)をそれぞれ印加して、エコー信号にそれぞれの方向における位置情報をエンコードすることができる。
【0021】
送信系5は、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル(送信コイル)14aとを備えて構成され、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために、被検体1に高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」という)を照射する。具体的には、高周波発振器11から出力されたRFパルスを、シーケンサ4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調し、この振幅変調されたRFパルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給することにより、RFパルスが被検体1に照射される。これにより、被検体1の組織の原子核スピンに核磁気共鳴が生じ、エコー信号(NMR信号)が放出される。
【0022】
受信系6は、受信側の高周波コイル(受信コイル)14bと信号増幅器15と直交位相検波器16とA/D変換器17とを備えて構成され、被検体1の放出するエコー信号(NMR信号)を検出する。具体的には、受信コイル14bは、被検体1に近接して配置され、被検体1が放出するエコー信号を受信して電気信号に変換する。信号増幅器15は、エコー信号を増幅し、直交位相検波器16は、シーケンサ4からの指令によるタイミングで、エコー信号を直交する二系統の信号に分割する。二系統の信号は、それぞれがA/D変換器17でディジタル量に変換されて、信号処理系7に送られる。
【0023】
信号処理系7は、光ディスク19、磁気ディスク18、ROM21およびRAM22等の記憶装置と、CRT等からなるディスプレイ20とを有する。CPU8は、信号処理系7の一部を構成し、予め光ディスク19等に格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、被検体1を撮像空間40に自動位置合わせを行う被検体位置合わせ部81と、画像再構成を行う画像再構成部82と、各種データ処理を行うデータ処理部(不図示)等の機能を実現する。
【0024】
具体的には、被検体位置合わせ部81は、寝台30に搭載された被検体1の撮像対象部位を撮像空間40の中心(静磁場中心)に自動的に位置合わせする。
【0025】
画像再構成部82は、受信系6からのデータがCPU8に入力されると、CPU8が信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置の磁気ディスク18等に記録する。
【0026】
シーケンサ4は、送信系6および傾斜磁場発生系3にそれぞれ所定のタイミングでRFパルスと傾斜磁場パルスを照射および印加させ、所定のタイミングで受信系6に被検体1からのエコー信号を検出させるパルスシーケンスを実行させる制御手段である。シーケンサ4は、CPU8の制御で動作し、各部にパルスシーケンスを実行させる命令を送ることにより、被検体1の断層画像の再構成のために必要なデータ(エコー信号)を収集させる。
【0027】
操作部25は、MRI装置の各種制御情報や上記信号処理系7で行う処理の制御情報を入力するもので、トラックボール又はマウス23、及び、キーボード24を含む。この操作部25は、ディスプレイ20に近接して配置され、操作者がディスプレイ20を見ながら操作部25を通してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御できるように構成されている。
【0028】
MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0029】
なお、上述の受信コイル14bは、操作者によって、被検体1の撮像対象部位に対向するように、或いは、取り囲むように設置される。
【0030】
以下、被検体位置合わせ部81が、寝台30に搭載された被検体1の撮像対象部位を撮像空間40の中心(静磁場中心)に自動的に位置合わせする処理について、実施形態1~4により説明する。
【0031】
<<実施形態1>>
次に、本発明の実施形態1の被検体位置合わせ部81の処理について
図2のフローを用いて説明する。
【0032】
(ステップ101)
操作部25を通して、操作者は、被検者情報の入力を実行し、被検者位置合わせ部81は、入力された被検者情報を受け付ける。被検者情報としては、「撮像対象部位」「体位」「性別」「年齢」は入力必須項目とする。
図4に選択可能な種々の撮像対象部位が表示された表示画面例を示す。操作者は、
図4の表示画面において、撮像対象部位を選択することにより、撮像対象部位を入力することができる。
図4の表示画面には、選択された撮像対象部位に応じて、推奨する受信コイル14bの種類が表示される構成としてもよい。
【0033】
(ステップ102)
操作者は、被検体1の人体基準位置(例えば頚部屈曲部)が
図5のように、寝台30の所定の位置(寝台30に設けた目印である矢印の位置)に一致するように寝台30に搭載する。
【0034】
さらに、操作者は、被検体1の撮像対象部位に、受信コイル14bを設置する。また、受信コイル14bのケーブルを寝台30に設けられたコネクタに接続することにより、信号増幅器15と接続する。ここでは、一例として、
図6(a)に示すように、被検体1のHF(Head Foot)方向(体軸方向)に複数個のコイルが配列されたアレイコイルを受信コイル14bとして用いる。
図6の受信コイル14bは、被検体1の幅方向にも複数個のコイルが配列されている。
【0035】
その後、操作者が寝台移動開始ボタンを押下すると、被検体位置合わせ部81は、それを受け付け、ステップ103に進む。
【0036】
(ステップ103、104)
ステップ103において、被検体位置合わせ部81は、ステップ101で被検者情報の「身長」が未入力であるかどうか判定し、未入力の場合は、ステップ104に進み、ステップ101で入力された「性別」、「年齢」の情報に基づいて、性別と年齢と身長との関係を示すテーブルを参照して、身長を推定する。性別と年齢と身長との関係を示すテーブルは、例えば
図7に示すように、年齢別身長統計データに基づいて予め作成し、ROM21等に格納したおいたものである。
【0037】
なお、年齢別・人種別の身長データを用いて、ステップ104の身長推定の精度を向上させることも可能である。
【0038】
ステップ103において、被検体位置合わせ部81は、ステップ101で被検者情報の「身長」が入力済みである場合には、そのままステップ105に進む。
【0039】
(ステップ105)
ステップ105において、被検体位置合わせ部81は、撮像対象部位と身長から、撮像対象部位を静磁場中心に配置するための寝台移動量を算出する。
【0040】
まず、被検体位置合わせ部81は、ステップ101で受け付けた撮像対象部位と身長に基づき、
図8に示すような予め定められたテーブルを参照する等して、頚部屈曲部から撮像部位までの距離を求める。
図8のテーブルは、身長別統計データ等を基に、
図5に示すように頚部屈曲部から各撮像部位までの距離を身長ごとに予め定め、テーブルにしたものであり、ROM21等に格納されている。
【0041】
静磁場中心を原点とした場合、寝台上の撮像対象部位の位置(目的寝台位置)は式(1)のように表現できる。
【0042】
【0043】
ただし、TargetTablePositionは目的寝台位置、DefaultTablePositionは、頚椎屈曲部の寝台位置、Shift Positionは、頚椎屈曲部から入力された撮像対象部位までの距離、を表す。
【0044】
被検体位置合わせ部81は、求めた頚部屈曲部から撮像部位までの距離と、現在の頚椎屈曲部の寝台位置と、式(1)を用いて、撮像対象部位の位置(目的寝台位置)を算出する。これにより、撮像対象部位の位置(目的寝台位置)を静磁場中心(原点)まで移動させるための寝台移動量を算出することができる。
【0045】
その後、被検体位置合わせ部81は、算出した寝台移動量分だけ寝台30を移動させ、撮像対象部位を静磁場中心に配置する。
【0046】
(ステップ106)
RFパルスの照射可能条件を満たしたこと(例えば、MRI装置が配置されたシールドルームの扉が閉じられて一定時間待機後)をCPU8(被検体位置合わせ部81)が認識すると、CPU8(被検体位置合わせ部81)は、シーケンサ4を起動し、シーケンサ4の制御により、予め定めた受信コイル14bの位置合わせ用のパルスシーケンスを実行する。
【0047】
パルスシーケンスおよびパルスシーケンスによりNMR信号受信後の一連の処理の流れを
図9(a),(b)に示す。
【0048】
この位置合わせ用のパルスシーケンスは、
図9(a)に示すように、被検体1のHF方向(体軸方向)を含むスライス(サジタルまたはコロナル面)を選択してそのスピンを励起し、放出されるNMR信号を、HF方向を読み出し方向として受信コイル14bにより受信するシーケンスである。
【0049】
具体的には、HF方向(体軸方向)を含むスライスを選択するスライス選択傾斜磁場パルス803,804を印加しながらRFパルス801,802を照射してスピンを励起し、HF方向に周波数エンコード傾斜磁場パルス805を印加しながら、エコー信号806を受信コイル14bであるアレイコイルの個々のエレメントによりそれぞれ受信する(リードアウト方向はHF方向)。
【0050】
受信系6は、受信コイル14bを構成する個々のエレメントによりそれぞれ受信されたNMR信号をそれぞれ信号処理系7に送信する。
【0051】
信号処理系7の被検体位置合わせ部81は、
図9(b)に示すように、個々のアレイコイルが受信したNMR信号(k空間の信号)をそれぞれ実信号と虚信号に分け、それぞれフーリエ変換を施して、実信号画像と虚信号画像を生成し、両画像を足し合わせることにより絶対値(強度)画像を、アレイコイルのエレメントごとに生成する。
【0052】
(ステップ107)
被検体位置合わせ部81は、「撮像対象部位」から静磁場中心に配置すべき受信コイル14bのエレメントを特定する。例えば、
図6(a)の受信コイルの例では、HF方向の中心エレメントEL5~EL8のいずれかを、静磁場中心に配置すべきエレメントであるとする。なお、
図6(a)の受信コイルの例では、被検体の左右方向にもエレメントが並んでいるため、HF方向(体軸)に最も近い中心エレメントEL6またはEL7をHF方向について静磁場中心に配置すべきエレメントであるとすることが望ましい。ここでは、
図10(a)に示すように、EL6をHF方向(体軸)について静磁場中心に配置する。
【0053】
なお、受信コイルのHF方向の中心エレメントを定義するために、
図6(b)に示すような受信コイルごとに受信コイルの中心位置から各エレメントの相対位置情報を予め定義し、ROM21等に格納しておく。
(ステップ108)
ステップ108において、被検体位置合わせ部81は、ステップ106で得た受信コイル14bのエレメントごと絶対値(強度)画像の信号強度データから、HF方向の中心エレメントEL5~EL8(ここでは、EL6)の中心位置を算出する。
【0054】
具体的には、
図10(b-1)、(b-2)に示すようなZ軸(HF)方向に並ぶエレメント列(EL2、EL6、EL10)についてエレメントごとの絶対値(強度)画像の信号強度プロファイルを作成し、このプロファイルからエレメントEL6のHF方向の中心位置を算出する。
【0055】
このとき、人体のように一様の形状および同一組成ではない被検体1の場合、
図10(b-1)に示すような理想的な信号強度プロファイルにはならず、
図10(b-2)に示すような信号強度プロファイルが得られる。そのため、信号強度プロファイルのピーク位置からエレメントEL6の中心位置を算出することは困難である。そこで、本実施形態では、作成したエレメントごとの絶対値画像の信号強度プロファイルを基に、HF方向に隣接したエレメント(EL2とEL6とEL10)の信号を比較し、エレメント間で信号強度プロファイルの値が等しくなる(すなわちプロファイルが交差する)HF方向(Z方向)の位置Z1,Z2を
図11(a),(b)のように求める。これにより、エレメント間の境界位置(位置Z1,Z2)を検出することができる。
【0056】
なお、Z軸方向は静磁場と同方向、かつ寝台の長手方向である。
【0057】
図11(a)のエレメント配置を例とすると、信号強度プロファイルの値が等しくなる位置Zは、式(2)のように表現できる。
【0058】
【0059】
エレメントEL6の中心位置Correction Positionは、エレメント間の境界位置(位置Z1,Z2)を用いて、式(3)により算出できる。
【0060】
【数3】
Z
1, Z
2: 境界となったZ方向の2点の座標位置を示す。
【0061】
式(3)により得られるエレメントEL6の中心位置は、境界位置である2点(位置Z1,Z2)の座標位置の中心値であり、静磁場中心(Z=0.0)からの距離を表すので、被検体位置合わせ部81は、この値を寝台移動量として寝台30を移動させることにより、受信コイル14bのエレメントEL6の中心をZ軸方向について静磁場中心に配置することができる。
【0062】
このように、操作者が撮像対象部位に取り付けた受信コイル14bをHF方向について静磁場中心に配置することができるため、受信コイル14bおよび撮像対象部位を撮像空間40内に自動で配置できる。よって、撮像対象部位の全体を撮像することができる。
【0063】
また、本実施形態では、追加的なセンサーを用いることなく、入力された被検者情報を基に人体の基準位置から対象撮像部位までの距離を求め、大凡の寝台移動位置の確定と寝台移動を行う。その後、HF方向にリードアウトを設定し、スライス選択傾斜磁場、周波数エンコード傾斜磁場を印加して取得したNMR信号から、Z軸(HF)方向のエレメント別の絶対値画像の信号強度プロファイルを得る。エレメント間の境界を検出し、境界位置からエレメントの中心位置を求めることができる。エレメントの中心位置を静磁場中心からの距離として取り扱い、算出された中心値を寝台移動量として寝台を移動させ、所望のエレメントを静磁場中心へ配置することが可能である。
【0064】
なお、被検体位置合わせ部81は、より高精度に所望のエレメントが静磁場中心に配置されるように、
図3に示すように、上述のステップ101~108により所望の受信コイル14bのエレメントの中心が静磁場中心に配置されるよう寝台30を移動させた後に、ステップ109を実行してもよい。ステップ109では、被検体位置合わせ部81は、所望の受信コイル14bのエレメントの位置が静磁場中心から所定の範囲(例えば、1.5cm未満の範囲)に配置されているかどうかを判定し、受信コイル14bのエレメントの位置が静磁場中心から所定の範囲内に配置されていれば、被検体の自動位置合わせを完了とし、所定の範囲内に配置されていない場合は、ステップ106に戻って、被検体の自動位置合わせを再実施する。
【0065】
なお、実施形態1においては、頚部屈曲部を人体の基準位置とし、寝台に頚部屈曲部の目安位置を示す目印を備えた寝台を用いて説明したが、他の部位を人体の基準位置とすることももちろん可能である。
【0066】
実施形態1のMRI装置の効果としては、以下を挙げることができる。
1.テーブル位置のセッティング作業によるユーザー(装置の操作者)の負担を低減することができる。
2.従来技術のようにレーザーを用いないため、レーザーが目に入るというリスクを回避できる。
3.従来技術においてレーザー位置合わせ時の寝台移動による被検者に与えていた不快感を低減することができる。
4.所望の受信コイルの感度領域を自動で静磁場中心に移動させることができる。
5.付加的なハードウェアが不要であるため、製造原価を抑制することができる。
【0067】
<<実施形態2>>
次に、本発明の実施形態2の被検体位置合わせ部81の処理について
図12のフローを用いて説明する。
【0068】
実施形態2では、受信コイル14bのエレメント数が1つの場合について説明する。以下、実施形態1と異なる処理のみを説明し、同じ処理の説明は省略する。
(ステップ201~205)
実施形態1のステップ101~105と同一であるため、説明を省略する。
【0069】
(ステップ206)
RFパルスの照射可能条件を満たしたこと(例えば、シールドルームの扉が閉じられて一定時間待機後)をCPU8(被検体位置合わせ部81)が認識すると、CPU8(被検体位置合わせ部81)は、シーケンサ4を起動し、シーケンサ4の制御により、予め定めた受信コイル14bの位置合わせ用のパルスシーケンスを実行する。
【0070】
このパルスシーケンスは、実施形態1の
図9(a)のパルスシーケンスと同様であるが、シーケンサ4は、スライス選択傾斜磁場803、804は印加せず、周波数エンコード傾斜磁場805を印加しながらエコー信号806を受信コイル14bの一つのエレメントにより受信する(リードアウト方向はHF方向)。
【0071】
エコー信号の受信後の処理は、実施形態1のステップ106と同様であり、受信コイル14bを構成する一つのエレメントについての絶対値画像を生成する。
【0072】
(ステップ207)
「被検体位置合わせ部81は、「撮像対象部位」から静磁場中心に配置するエレメントを特定する。例えば、
図4に示すように撮像部位に応じて推奨受信コイルを操作者に提示し、提示した推奨受信コイルのエレメントが静磁場中心に配置されるよう設定する。
【0073】
(ステップ208)
被検体位置合わせ部81は、ステップ206で生成した受信コイル14bの一つのエレメントの絶対値画像から、Z軸(HF)方向についての絶対値画像の信号強度プロファイルを
図13のように作成する(ここでのZ軸方向は静磁場と同方向、かつ寝台の長手方向である)。
【0074】
つぎに、被検体位置合わせ部81は、作成したエレメントの信号強度プロファイルに基づいて、Z方向の重心Z
Gを
図14のように算出する。
図13および
図14のエレメント配置を例とすると、重心Z
Gは、式(4)により算出することができる。
【0075】
【0076】
静磁場中心位置をZ=0.0とした場合、重心ZGの座標位置は、静磁場中心からの距離を表すので、被検体位置合わせ部81は、算出された重心ZGの座標を寝台移動量として、寝台30を移動させることにより、エレメントの重心ZGを静磁場中心へ配置することができる。
【0077】
実施形態2により、エレメントが一つのみの受信コイル14bであっても、エレメントの重心を自動で静磁場中心に配置することができる。
【0078】
<<実施形態3>>
次に、実施形態3の被検体位置合わせ部81の処理について
図15のフローを用いて説明する。
【0079】
実施形態3の処理は、実施形態1と同様の処理であるが、寝台30をX方向(短手方向=被検体のRL(体幅)方向)に移動させる点が異なっている。以下、実施形態1と異なる処理のみ説明し、同じ処理の説明は省略する。
【0080】
また、寝台30をX方向に移動可能な構造のMRI装置は、一般的に垂直磁場のMRI装置に限定される。
【0081】
(ステップ301~305)
実施形態1のステップ101~105と同一であるため、説明を省略する。
【0082】
(ステップ306)
RFパルスの照射可能条件を満たしたこと(例えば、シールドルームの扉が閉じられて一定時間待機後)をCPU8(被検体位置合わせ部81)が認識すると、CPU8(被検体位置合わせ部81)は、シーケンサ4を起動し、シーケンサ4の制御により、予め定めた受信コイル14bの位置合わせ用のパルスシーケンスを実行する。このパルスシーケンスは、実施形態1の
図9(a)のパルスシーケンスと同様であるが、スライスは、被検体1のRL方向に沿って設定され、リードアウト方向もRL方向である点が実施形態1とは異なる。すなわち、被検体1のRL方向に沿ったスライスを選択するスライス選択傾斜磁場803,804を印加しながら、RFパルス801,802を照射し、周波数エンコード傾斜磁場805を印加しながら、エコー信号806を受信コイル14bにより受信する(リードアウト方向はRL方向)。
【0083】
エコー信号の受信後の処理は、実施形態1のステップ106と同様であり、受信コイル14bを構成する複数のエレメントについてそれぞれ絶対値画像を生成する。
【0084】
(ステップ307)
被検体位置合わせ部81は、「撮像部位」から静磁場中心に配置すべきエレメントを特定する。例えば、
図4に示すように撮像部位に応じて推奨受信コイルを操作者に提示し、提示した推奨受信コイルのRL方向の中心エレメントEL6(またはEL7)が静磁場中心に配置されるよう設定する。
【0085】
(ステップ308)
被検体位置合わせ部81は、ステップ306で生成した受信コイル14bの複数のエレメントの絶対値画像から、X軸(RL)方向についての絶対値画像の信号強度プロファイルを
図16のようにX軸(RL)方向に並んだ複数のエレメントEL5~EL8について作成する(ここでのX軸方向は静磁場と垂直方向、かつ寝台の短手方向である)。
【0086】
作成したエレメントEL5~EL8ごとの信号強度プロファイルを基に、RL方向に隣接したエレメントEL5~EL8の信号強度を比較し、エレメント間で信号値が等しくなるX方向の位置を求め、エレメント間の境界X1、X2を検出する。
【0087】
図17のエレメント配置を例にすると、エレメント間で信号値が等しくなるX方向の位置は、式(5)により求めることができる。
【0088】
【0089】
エレメントEL6の中心位置Correction Positionは、エレメント間の境界位置(位置X1,X2)を用いて、式(6)により算出できる。
【0090】
【数6】
X
1,X
2: 境界となったX方向の2点の座標位置を示す。
【0091】
式(6)により得られるエレメントEL6の中心位置は、境界位置である2点(位置X
1,X
2)の座標位置の中心値であり、静磁場中心(X=0.0)からの距離を表すので、被検体位置合わせ部81は、この値を寝台移動量として寝台30を移動させることにより、
図17のように、受信コイル14bの中心のエレメントEL6をX軸方向について静磁場中心に配置することができる。
【0092】
上述した実施形態3は、X(RL)方向について、受信コイル14bの中心のエレメントを静磁場中心に配置する処理であるので、実施形態1、2のZ(HF)方向について、受信コイル14bの中心のエレメントを静磁場中心に配置する処理と組み合わせることにより、受信コイル14のX(RL)方向とZ(HF)方向の中心を静磁場中心と一致させることができる。
【0093】
例えば、実施形態1、2の処理を行って、Z方向の寝台移動量の算出およびZ方向への寝台移動を実行後に、実施形態3によるX方向の寝台移動量の算出およびX方向への寝台移動実行を行うことにより、被検体の撮像対象部位に設置された受信コイルの中心を、静磁場中心に位置合わせする寝台制御が可能である。
【0094】
なお、X方向への寝台移動後にZ方向への寝台移動を実行する順序でも寝台制御を行うことももちろん可能である。
【0095】
さらにコロナル面で励起することでZ方向、X方向の寝台移動量を同時に算出することができ、Z方向、X方向の寝台移動を同時に制御するような効率的な移動も可能である。
【0096】
また、実施形態1、2、3に共通するが、撮像部位や体位に応じて励起するスライス断面、スライス厚を最適化してもよい。例えば、四肢などの末端の撮像部位においては、対象物が撮像空間40内に含まれない場合も発生し得るため、スライス選択傾斜磁場を印加せずに全励起してNMR信号を取得してもよい。
【0097】
<<実施形態4>>
次に、実施形態4について
図18、
図19を用いて説明する。実施形態1、実施形態2及び実施形態3は、それぞれステップ101~105、ステップ201~205、ステップ301~305において、撮像対象部位と身長に基づいて、予め定めたテーブル等を参照して予め定めた寝台移動量(プリセット量)により、寝台を移動させる処理を行う構成であったが、実施形態4では、これらの処理を行わない。実施形態4では、寝台30を一定速度でHF方向に移動させ、一定間隔でNMR信号を取得して、所望の受信コイルエレメントを静磁場中心へと移動させる。以下、
図18のフローを用いて具体的に説明する。
【0098】
(ステップ401)
操作部25を通して、操作者は、被検者情報の入力が実行し、被検者位置合わせ部81は、入力された被検者情報を受け付ける。被検者情報としては、「撮像部位」は入力必須項目とする。
図4に選択可能な種々の撮像対象部位が表示された表示画面例を示す。
【0099】
(ステップ402)
被検体位置合わせ部81は、「撮像対象部位」から静磁場中心に配置すべき受信コイル14bのエレメントを特定する。例えば、
図6(a)の受信コイルの例では、HF方向の中心エレメントEL5~EL8のいずれか(例えばEL6)を、静磁場中心に配置すべきエレメントであるとする。
【0100】
(ステップ403)
操作者は、被検体1を寝台に横たわらせ、被検体1の撮像対象部位に、受信コイル14bを設置する。また、受信コイル14bのケーブルを寝台30に設けられたコネクタに接続することにより、信号増幅器15と接続する。
【0101】
操作者が寝台移動開始ボタンを押下すると、被検体位置合わせ部81は、シーケンサ4を起動し、シーケンサ4の制御により、寝台30をMRI装置内へ向かって移動開始させる。移動速度は、一定速度(例えば、v[mm/s]と置く)し、連続的に移動させる(
図19参照)。
【0102】
(ステップ404)
被検体位置合わせ部81は、寝台30が一定速度で移動している最中に、実施形態1のステップ106と同様に、パルスシーケンスを実行し、受信コイル14bは、全てのエレメントによりNMR信号(エコー信号)を受信する。被検体位置合わせ部81は、受信コイル14bのエレメントごとに、絶対値画像を生成し、
図10(b-2)のような絶対値画像の信号強度プロファイルを生成する。
【0103】
(ステップ405、406)
被検体位置合わせ部81は、実施形態1のステップ108の前半を実行し、信号強度プロファイルの境界値Z1,Z2から受信コイル14bのエレメントの位置を検出する(ステップ405)。ステップ405において、受信コイル14bのエレメントの位置を検出可能であったか判定し、検出可能であった場合には、ステップ407に進む。エレメント位置の検出可否の判断は、例えばエレメント位置の算出に用いる境界値Z1,Z2となった2点の座標の信号強度を、予め定めた閾値と比較し、閾値を超えていた場合に、検出可能と判断することができる。
【0104】
検出不能であった場合は、被検体位置合わせ部81は、ステップ404に戻り再びパルスシーケンスを実行する。
【0105】
(ステップ407)
被検体位置合わせ部81は、寝台30の移動を停止させ、ステップ405において検出した受信コイル14bのエレメントEL6の位置から、静磁場中心までの距離を算出する。このとき、ステップ404でパルスシーケンスを実行している間も、実行後も連続的に寝台が移動していたことを考慮して、現時点のエレメントの位置から、静磁場中心までの距離を算出する。具体的には、
図9(a)のパルスシーケンスにおいてRFパルス801の照射タイミングを例えば時刻0[s]とし、受信コイル14bがNMR信号を受信して、被検体位置合わせ部81がエレメント位置の解析を実行するまでの経過時刻をt[s]と置くと、経過時間t[s]の間に寝台30がvt[mm]移動している(
図19参照)。ステップ405で検出されたエレメントの位置(境界値Z
1,Z
2の中心値)は、時刻0[s]における位置であるので、経過時間t[s]の間の寝台移動量vt[mm]を考慮して、受信コイル14bのエレメントEL6を静磁場中心に一致させるための寝台移動量(実補正移動量)Correction Positionは、式(7)により算出できる(
図19)。
【0106】
【0107】
被検体位置合わせ部81は、式(7)により得られた寝台移動量(実補正移動量)Correction Positionだけ寝台30を移動させることにより、受信コイル14bのエレメントEL6の中心をZ軸方向について静磁場中心に配置することができる。
【0108】
このように、操作者が撮像対象部位に取り付けた受信コイル14bをHF方向について静磁場中心に配置することができるため、受信コイル14bおよび撮像対象部位を撮像空間40内に自動で配置できる。よって、撮像対象部位の全体を撮像することができる。
【0109】
また、本実施形態4では、実施形態1等のステップ101~105の処理により、予め定めたテーブル等を参照して予め定めた寝台移動量(プリセット量)により、寝台を移動させる処理を行わない構成であるため、予めテーブル等を用意する必要がなく、操作者は身長を入力する必要がないという利点がある。
【0110】
また、パルスシーケンスを実行している最中も、寝台30を静磁場中心へ向かって移動させ続けているため、ステップ407において寝台を移動させる量が少なく、素早く被検体を静磁場中心に配置できる。
【0111】
以上、本発明の実施形態を述べたが、本発明は実施形態の構成や処理に限定
されるものではない。
【符号の説明】
【0112】
1:被検体、2:静磁場発生系、3:傾斜磁場発生系、4:シーケンサ、5:送信系、6:受信系、7:信号処理系、8:中央処理装置(CPU)、9:傾斜磁場コイル、10:傾斜磁場電源、11:高周波発信器、12:変調器、13:高周波増幅器、14a:高周波コイル(送信コイル)、14b:高周波コイル(受信コイル)、15:信号増幅器、16:直交位相検波器、17:A/D変換器、18:磁気ディスク、19:光ディスク、20:ディスプレイ、21:ROM、22:RAM、23:トラックボール又はマウス、24:キーボード、81:位置合わせ部、82:画像再構成部