(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055950
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/69 20060101AFI20220401BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20220401BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20220401BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
C08G18/69
C08G18/08 038
C08L75/04
C08K3/22
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163678
(22)【出願日】2020-09-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】金井 梓
(72)【発明者】
【氏名】浜田 昴
(72)【発明者】
【氏名】竹川 淳
(72)【発明者】
【氏名】範國 正拓
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK051
4J002DE076
4J002DE146
4J002EH137
4J002EH147
4J002FD027
4J002FD136
4J002GQ00
4J002GQ01
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA13
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC05
4J034CC12
4J034CC52
4J034CC62
4J034DF01
4J034DF02
4J034DG00
4J034DP19
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034KC17
4J034KD02
4J034KE02
4J034MA03
4J034MA12
4J034QB16
4J034QD03
4J034RA14
(57)【要約】
【課題】耐熱性に優れるポリウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】実施形態に係るポリウレタン樹脂組成物は、水酸基含有化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、金属水酸化物(C)、および可塑剤(D)を含有する。水酸基含有化合物(A)は、ポリブタジエンポリオール(A1)を含有し、該ポリブタジエンポリオール(A1)の平均水酸基価が60~100mgKOH/gである。可塑剤(D)は沸点300℃以上のフタル酸エステルのみからなる。該ポリウレタン樹脂組成物は、100℃×1000h処理後の質量減少率が1.5%以下であり、100℃×1000h処理後の-40℃の弾性率変化率(10Hz)が100%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、金属水酸化物(C)、および可塑剤(D)を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、
前記水酸基含有化合物(A)が、ポリブタジエンポリオール(A1)を含有し、前記ポリブタジエンポリオール(A1)の平均水酸基価が60~100mgKOH/gであり、
前記可塑剤(D)が沸点300℃以上のフタル酸エステルのみからなり、
100℃×1000h処理後の質量減少率が1.5%以下であり、
100℃×1000h処理後の-40℃の弾性率変化率(10Hz)が100%以下である、ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
100℃×1000h処理後の質量減少率が1.0%以下であり、
100℃×1000h処理後の-40℃の弾性率変化率(10Hz)が50%以下である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
電気電子部品用である、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路基板や電子部品は、外部からの汚染を防ぐためにポリウレタン樹脂等を用いて封止することが行われている(例えば、特許文献1参照)。これらの用途においては、冷熱サイクルによる部材へのストレスが大きくなっており、高い耐熱性を持つこと、即ち長期にわたって柔軟性を維持することが求められる。
【0003】
特許文献2には、相溶性、作業性に優れ、かつ冷熱サイクル特性に優れたポリウレタン樹脂を提供することを課題として、ポリオール化合物が水酸基価60mgKOH/g以下のポリブタジエンポリオールを含み、ポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して、無機充填材が50~85質量%、可塑剤が1~30質量%含有するポリウレタン樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-020439号公報
【特許文献2】特許第6499347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のポリウレタン樹脂組成物では、長期にわたる使用によって可塑剤が気化することにより柔軟性が損なわれることがあり、耐熱性が必ずしも十分とはいえなかった。
【0006】
本発明の実施形態は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れるポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] 水酸基含有化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、金属水酸化物(C)、および可塑剤(D)を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、前記水酸基含有化合物(A)が、ポリブタジエンポリオール(A1)を含有し、前記ポリブタジエンポリオール(A1)の平均水酸基価が60~100mgKOH/g以下であり、前記可塑剤(D)が沸点300℃以上のフタル酸エステルのみからなり、100℃×1000h処理後の質量減少率が1.5%以下であり、100℃×1000h処理後の-40℃の弾性率変化率(10Hz)が100%以下である、ポリウレタン樹脂組成物。
[2] 100℃×1000h処理後の質量減少率が1.0%以下であり、100℃×1000h処理後の-40℃の弾性率変化率(10Hz)が50%以下である、[1]に記載のポリウレタン樹脂組成物。
[3] 電気電子部品用である、[1]または[2]に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、可塑剤の気化を抑制することにより、耐熱性に優れたポリウレタン樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係るポリウレタン樹脂組成物は、水酸基含有化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、金属水酸化物(C)、および可塑剤(D)を含有する。
【0010】
[水酸基含有化合物(A)]
水酸基含有化合物(A)は、ポリブタジエンポリオール(A1)を含有し、該ポリブタジエンポリオール(A1)の平均水酸基価が60~100mgKOH/gである。ポリブタジエンポリオール(A1)は、1種のポリブタジエンポリオールを単独で用いてもよく、2種以上のポリブタジエンポリオールを併用してもよい。
【0011】
ここで、「平均水酸基価」とは、1種単独で用いる場合は当該1種のポリブタジエンポリオールの水酸基価の値であり、2種以上併用する場合はそれら複数のポリブタジエンポリオールの水酸基価をその配合比率を乗じて足し合わせて算出される水酸基価の平均値をいう。本明細書において、水酸基価はJIS K1557-1:2007のA法に準じて測定される。
【0012】
ポリブタジエンポリオール(A1)としては、ポリウレタン樹脂に使用される公知の末端水酸基ポリブタジエンを用いることができ、平均水酸基価が60~100mgKOH/gであれば、水酸基価が60mgKOH/g未満のポリブタジエンポリオールや水酸基価が100mgKOH/gを超えるポリブタジエンポリオールであっても、他のポリブタジエンポリオールと組み合わせることで使用可能である。
【0013】
ポリブタジエンポリオール(A1)の平均水酸基価の下限は、ポリウレタン樹脂組成物の硬化前の粘度を下げて高沸点の可塑剤(D)と組み合わせたときの作業性を向上できる観点から、上記のように60mgKOH/g以上である。ポリブタジエンポリオール(A1)の平均水酸基価の下限は、より好ましくは70mgKOH/g以上であり、更に好ましくは72mgKOH/g以上である。ポリブタジエンポリオール(A1)の平均水酸基価の上限は、100mgKOH/g以下であり、90mgKOH/g以下でもよい。
【0014】
水酸基含有化合物(A)は、更に、上記ポリブタジエンポリオール(A1)以外の水酸基含有化合物(以下、「水酸基含有化合物(A2)」という。)を含有してもよい。該水酸基含有化合物(A2)としては、例えば、一般にポリウレタン樹脂の主原料として用いられているポリオール(A3)、および、架橋剤として用いられている低分子量ポリオール(A4)などが挙げられる。
【0015】
上記ポリオール(A3)は、分子内に複数の水酸基を持つ化合物であり、ポリブタジエンポリオール以外の種々のポリオールが挙げられる。ポリオール(A3)としては、例えば、ひまし油系ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ダイマー酸ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオールの水素化物、およびポリイソプレンポリオールの水素化物などが挙げられ、これらはいずれか1種用いても2種以上併用してもよい。これらの中でもポリオール(A3)としてはひまし油系ポリオール(A31)を用いることが好ましい。上記ポリブタジエンポリオール(A1)にひまし油系ポリオール(A31)を併用することにより、ポリウレタン樹脂組成物の硬化前の粘度を低減することができ、また、イソシアネート基含有化合物(B)との相溶性が向上する。
【0016】
ひまし油系ポリオール(A31)としては、ひまし油、ひまし油脂肪酸、及びこれらに水素付加した水添ひまし油や水添ひまし油脂肪酸を用いて製造されたポリオールを使用することができる。このようなポリオールとしては、例えば、ひまし油、ひまし油とその他の天然油脂とのエステル交換物、ひまし油と多価アルコールとの反応物、ひまし油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物及びこれらにアルキレンオキサイドを付加重合したポリオールなどが挙げられる。ひまし油系ポリオール(A31)の水酸基価は、特に限定されないが、50~250mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは120~180mgKOH/gである。
【0017】
低分子量ポリオール(A4)としては、分子量300以下の多価アルコールが挙げられ、より詳細には、例えばN,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ヒドロキノン-ビス(β-ヒドロキシエチル)エーテル、レゾルシノール-ビス(β-ヒドロキシエチル)エーテル等の芳香族アルコール、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、オクタンジオール、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン等の脂肪族アルコールが挙げられ、これらはいずれか1種用いても2種以上併用してもよい。
【0018】
一実施形態において、水酸基含有化合物(A)としては、ポリブタジエンポリオール(A1)のみからなること、または、ポリブタジエンポリオール(A1)およびポリオール(A3)のみからなることが好ましく、低分子量ポリオール(A4)は含有しないことが好ましい。より好ましくは、水酸基含有化合物(A)は、ポリブタジエンポリオール(A1)のみからなること、または、ポリブタジエンポリオール(A1)およびひまし油系ポリオール(A31)のみからなることである。
【0019】
水酸基含有化合物(A)の含有量は、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して、3~30質量%でもよく、5~25質量%でもよく、6~20質量%でもよく、7~20質量%でもよい。
【0020】
ポリブタジエンポリオール(A1)の含有量は、特に限定されないが、ポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して、3~25質量%でもよく、5~25質量%でもよく、6~20質量%でもよく、7~16質量%でよい。
【0021】
ポリオール(A3)(好ましくはひまし油系ポリオール(A31))を配合する場合、その含有量は、特に限定されないが、ポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して、0.1~10質量%でもよく、0.5~5質量%でもよく、0.5~3質量%でもよい。また、ポリブタジエンポリオール(A1)とポリオール(A3)との混合割合は、特に限定されず、質量比(A1)/(A3)が50/50~95/5でもよく、60/40~90/10でもよい。
【0022】
[イソシアネート基含有化合物(B)]
イソシアネート基含有化合物(B)としては、特に限定されず、種々のポリイソシアネート化合物を用いることができる。例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物(B1)、脂環族ポリイソシアネート化合物(B2)、芳香族ポリイソシアネート化合物(B3)、および芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物(B4)、およびこれらの変性体が挙げられ、いずれか1種用いても2種以上併用してもよい。これらの中でも、反応性、耐久性、粘度および作業性の観点から、ポリイソシアネート化合物の変性体を用いることが好ましい。
【0023】
脂肪族ポリイソシアネート化合物(B1)としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
脂環族ポリイソシアネート化合物(B2)としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0025】
芳香族ポリイソシアネート化合物(B3)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0026】
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物(B4)としては、例えば、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0027】
これらのポリイソシアネート化合物(B1)~(B4)の変性体としては、例えば、イソシアヌレート変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、アダクト変性体、カルボジイミド変性体などが挙げられる。一実施形態として、脂肪族ポリイソシアネート化合物(B1)のイソシアヌレート変性体、芳香族ポリイソシアネート化合物(B3)のカルボジイミド変性体が挙げられる。
【0028】
イソシアネート基含有化合物(B)の含有量は、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して、0.5~15質量%でもよく、1~10質量%でもよく、1.5~5質量%でもよい。
【0029】
[金属水酸化物(C)]
金属水酸化物(C)としては、水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウムが挙げられ、好ましくは水酸化アルミニウムを用いることである。
【0030】
金属水酸化物(C)の含有量は、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して、40~85質量%でもよく、50~75質量%でもよい。金属水酸化物(C)の含有量が40質量%以上であることにより難燃性を向上することができ、また85質量%以下であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の硬化前の粘度を低減することができる。
【0031】
[可塑剤(D)]
可塑剤(D)としては、沸点が300℃以上のフタル酸エステルが用いられる。可塑剤(D)として沸点が300℃以上のフタル酸エステルのみを用いることにより、硬化後のポリウレタン樹脂組成物を高温環境下においたときの可塑剤(D)の気化を抑制することができ、長期にわたる使用において柔軟性を維持することができ、耐熱性を向上することができる。その一方で、沸点が高い可塑剤は一般に分子量が大きいことから、ポリウレタン樹脂組成物の硬化前における粘度を上昇させる要因になる。これに対し、上記のようにポリブタジエンポリオール(A1)の平均水酸基価を60mgKOH/g以上、より好ましくは70mgKOH/g以上とすることにより、沸点の高い可塑剤を用いた場合でありながら、ポリウレタン樹脂組成物の硬化前の粘度上昇を抑えることができ、作業性を向上することができる。
【0032】
本明細書において、可塑剤(D)の沸点はJIS K 2233(標準気圧:1013hPa)により測定される。
【0033】
沸点が300℃以上の可塑剤(D)のフタル酸エステルとしては、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジイソデシルなどが挙げられる。これらのフタル酸エステルはいずれか1種用いても2種以上併用してもよい。
【0034】
可塑剤(D)の含有量は、特に限定されないが、ポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して、5~30質量%であることが好ましく、より好ましくは10~27質量%である。可塑剤(D)の含有量が5質量%以上であることによりポリウレタン樹脂組成物の硬化後の柔軟性を向上することができ、また、30質量%以下であることによりウレタン樹脂硬化物からのブリードを抑えることができる。
【0035】
[その他の成分]
本実施形態に係るポリウレタン樹脂組成物には、更に必要に応じて、消泡剤、触媒、酸化防止剤、吸湿剤、防黴剤、シランカップリング剤、粘着付与剤、硬化促進剤、着色剤、アミン系架橋剤、充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を含むことができる。
【0036】
[ポリウレタン樹脂組成物]
本実施形態に係るポリウレタン樹脂組成物において、イソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO/OH)は特に限定されないが、0.6~1.5であることが好ましく、より好ましくは0.7~1.3である。
【0037】
ポリウレタン樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法に従って製造することができる。例えば、(工程1)水酸基含有化合物(A)を含む第1成分を調製する工程、(工程2)イソシアネート基含有化合物(B)を含む第2成分を調製する工程、および、(工程3)これら第1成分と第2成分を混合してポリウレタン樹脂組成物を得る工程、を含む方法が挙げられる。
【0038】
金属水酸化物(C)、可塑剤(E)および任意成分としての各種添加剤は、上記の第1成分と第2成分のどちらに含有させていてもよい。また、第1成分において水酸基含有化合物(A)とともにイソシアネート基含有化合物(B)の一部を含有させる場合、当該第1成分は、水酸基含有化合物(A)とイソシアネート基含有化合物(B)とを反応させることによって得られる、末端に水酸基(OH)を有するウレタンプレポリマーを含んでもよい。また、第2成分においてイソシアネート基含有化合物(B)とともに水酸基含有化合物(A)の一部を含有させる場合、当該第2成分は、イソシアネート基含有化合物(B)と水酸基含有化合物(A)とを反応させることによって得られる、末端にイソシアネート基(NCO)を有するウレタンプレポリマーを含んでもよい。
【0039】
ポリウレタン樹脂組成物においては、水酸基含有化合物(A)とイソシアネート基含有化合物(B)とが一部又は全部反応して、ポリウレタン樹脂を形成していてもよい。すなわち、ポリウレタン樹脂組成物は、硬化前の液状であってもよく、または硬化したものであってもよい。ポリウレタン樹脂組成物を硬化させる方法としては、上記第1成分及び第2成分を混合すればよく、それにより、水酸基含有化合物(A)とイソシアネート基含有化合物(B)とが反応してポリウレタン樹脂となり硬化する。その際、加熱することにより硬化させてもよい。
【0040】
本実施形態においてポリウレタン樹脂組成物の100℃×1000h処理後の質量減少率は1.5%以下である。これにより高温環境下での可塑剤(D)の気化が抑制され、長期にわたる使用において柔軟性を維持することができる。該質量減少率は1.0%以下であることがより好ましい。該質量減少率は低いほど好ましいので、下限は特に限定されず0%でもよい。
【0041】
ここで、該質量減少率は、ポリウレタン樹脂組成物を硬化させた試験片を100℃で1000時間処理し、処理前の試験片の質量に対する処理前後の試験片の質量減少量の百分率として求められる。
【0042】
本実施形態においてポリウレタン樹脂組成物の100℃×1000h処理後の-40℃の弾性率変化率(10Hz)は100%以下である。これにより長期にわたる冷熱サイクルによる柔軟性の低下を抑えることができ、耐熱性を向上することができる。該弾性率変化率(10Hz)は50%以下であることが好ましい。該弾性率変化率(10Hz)は低いほど好ましいので、下限は特に限定されず0%でもよい。
【0043】
ここで、該弾性率変化率(10Hz)は、ポリウレタン樹脂組成物を硬化させた試験片を100℃で1000時間処理し、処理前の試験片の-40℃の弾性率に対する処理前後の試験片の-40℃の弾性率増加量の百分率として求められる。-40℃の弾性率とは、動的粘弾性測定機を用いて試験片を-40℃の雰囲気下で測定した弾性率をいう。
【0044】
ポリウレタン樹脂組成物の100℃×1000h処理後の-40℃の弾性率(10Hz)は、特に限定されないが、100MPa以下であることが好ましく、より好ましくは80MPa以下である。
【0045】
[用途]
本実施形態に係るポリウレタン樹脂組成物は、耐熱性に優れていることから電気電子部品用として好ましく用いられる。このような電気電子部品としては、トランスコイル、チョークコイルおよびリアクトルコイルなどの変圧器や機器制御基板が挙げられる。
【0046】
本実施形態に係るポリウレタン樹脂組成物を用いた電気電子部品は、例えば、電気洗濯機、便座、湯沸し器、浄水器、風呂、食器洗浄機、太陽光パネル、電動工具、自動車、バイクなどに使用することができる。
【実施例0047】
以下、実施例及び比較例に基づいて、ポリウレタン樹脂組成物について詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されない。なお、実施例中に於ける「部」、「%」は、特に明示した場合を除き、「質量部」、「質量%」をそれぞれ表している。
【0048】
実施例及び比較例において使用する原料を以下に示す。
【0049】
[ポリブタジエンポリオール(A1)]
・a1-2:下記方法により調製したポリブタジエンポリオール
窒素で系内を置換した攪拌反応器に150質量部の1,3-ブタジエン、イソプロパノール88質量%と水12質量%とを含有する共沸混合物105質量部、および60%過酸化水素水溶液30質量部を仕込んだ。その反応器の内容物を連続的に攪拌しながら120℃になるまで加熱し、攪拌しながら120℃から130℃に保ち2時間重合反応を行った。所定時間完了後、その反応器の内容物を冷却し、その反応生成物を反応器から取り出し、未反応モノマーを反応生成物から取り除き、その生成物を水洗して残留イソプロパノール及び未反応過酸化水素を除去した。この生成物を真空乾燥して、粘度が25℃で5000mPa・s、水酸基価が80.0mgKOH/gのポリブタジエンポリオールa1-2を得た。
【0050】
・a1-1:水酸基価46.6mgKOH/gのポリブタジエンポリオール(商品名:Poly bd R-45HT、出光興産(株)製)
・a1-3:水酸基価102.7mgKOH/gのポリブタジエンポリオール(商品名:Poly bd R-15HT、出光興産(株)製)
【0051】
[その他の水酸基含有化合物(A2)]
・a2-1:水酸基価161mgKOH/gのひまし油脂肪酸-多価アルコールエステル(官能基数2価)(商品名:ひまし油D、伊藤製油株式会社製)
・a2-2:水酸基価529.8mgKOH/gの芳香族アルコール(商品名:OKオール100,岡畑産業株式会社製)
・a2-3:水酸基価767.5mgKOH/gの脂肪族アルコール(商品名:オクタンジオール、KHネオケム株式会社製)
【0052】
[イソシアネート基含有化合物(B)]
・b1:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(商品名:デュラネートTPA-100-D、旭化成ケミカルズ(株)製)
・b2:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(商品名:デュラネートTLA-100、旭化成ケミカルズ(株)製)
・b3:ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名:WANNATE HMDI、万華化学ジャパン株式会社製)
・b4:ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体(商品名:ミリオネートMLT、東ソー株式会社製)
【0053】
[金属水酸化物(C)]
・c1:水酸化アルミニウム(商品名:水酸化アルミC-305、住友化学(株)製)
・c2:水酸化アルミニウム(商品名:BX-053、日本軽金属株式会社製)
【0054】
[可塑剤(D)]
・d1:フタル酸ジイソノニル、沸点403℃(商品名:DINP、株式会社ジェイ・プラス製)
・d2:フタル酸ジウンデシル、沸点523℃(商品名:サンソサイザーDUP、新日本理化(株)製)
・d3:アジピン酸ジイソデシル(商品名:DIDA、田岡化学工業株式会社製)
【0055】
・触媒:ジオクチル錫ジラウレート(商品名:ネオスタンU-810、日東化成株式会社製)
【0056】
[実施例1~8及び比較例1~3]
下記表1に示す配合(質量部)により、各実施例及び各比較例のポリウレタン樹脂組成物を調製した。調製に際しては、表1に示す成分のうち、イソシアネート基含有化合物(B)を除く成分を混合機(商品名:あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて2000rpmで3分間混合した後、25℃に調整した。続いて、この混合物に25℃に調整したイソシアネート基含有化合物(B)を加え、同上の混合機を用いて2000rpmで60秒間混合することにより、各ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0057】
得られたポリウレタン樹脂組成物について、粘度、質量減少率および弾性率変化率を測定・評価した。測定・評価方法は以下のとおりである。
【0058】
(粘度)
得られたポリウレタン樹脂組成物を25℃に調整し、混合開始から5分後の粘度をBM型粘度計を用いて測定した。
【0059】
(質量減少率)
1.試験片の作成
ポリウレタン樹脂組成物を5cm×5cm、厚み1cmの金型に流し込み、80℃で16時間養生した後、これを脱型することにより、評価用の試験片を作成した。
【0060】
2.質量減少率の測定
試験片を100℃にて1000時間処理し、加熱処理前後の試験片についてそれぞれ室温(23℃)にて質量を測定し、下記計算式により質量減少率を算出した。
質量減少率(%)={(処理前の試験片の質量(g)-処理後の試験片の質量(g))/(処理前の試験片の質量(g))}×100
【0061】
3.可塑剤の気化抑制効果の評価
質量減少率の結果に基づいて、下記評価基準により可塑剤の気化抑制効果を評価した。
(評価基準)
◎(優):質量減少率が1.0%以下
○(良):質量減少率が1.0%超1.5%以下
×(不良):質量減少率が1.5%超
【0062】
(弾性率変化率)
1.試験片の作成
ポリウレタン樹脂組成物を1cm×8cm、厚み3mmの金型に流し込み、80℃で16時間養生した後、これを脱型することにより、評価用の試験片を作成した。
2.弾性率変化率の測定
100℃にて1000時間処理する前の試験片と、加熱処理後の試験片について、それぞれ-40℃の雰囲気下で、動的粘弾性測定機:DMS(SIINanoTechnology社製:DMS6100)を用いて、変形モードを引張モードとして弾性率(周波数:10Hz)を測定した。測定はJIS K 7244-4に準拠し、5mm×30mm×3mmの短冊状に切り出したサンプルを試料として、貯蔵弾性率E’を測定した。測定条件は下記の通り。
測定温度:-100℃~150℃
昇温速度:3℃/min
初期歪:0.01%
初期荷重:25g
測定した弾性率を用いて、下記の計算式により弾性率変化率を測定した。
弾性率変化率(%)={(処理後弾性率(MPa)-処理前弾性率(MPa))/処理前弾性率(MPa)}×100
【0063】
3.耐熱性の評価
弾性率変化率の結果に基づいて、下記評価基準により耐熱性を評価した。
(評価基準)
◎(優):弾性率変化率が50%以下
○(良):弾性率変化率が50%超100%以下
×(不良):弾性率変化率が100%超
【0064】
【0065】
結果は表1に示すとおりである。上記特許文献2の実施例に相当する比較例1~3は、平均水酸基価が低いポリブタジエンポリオールとともに、可塑剤としてアジピン酸エステルを用いた例であり、加熱処理後の質量減少率が大きく、可塑剤の気化を抑制する効果が不十分であり、また加熱処理後の弾性率の上昇が大きく、耐熱性に劣っていた。
【0066】
これに対し、実施例1~8であると、加熱処理後の質量減少率が小さく、可塑剤の気化抑制効果に優れるとともに、加熱処理後の弾性率の上昇が小さく、耐熱性に優れていた。また、可塑剤として高沸点のフタル酸エステルのみの使用でありながら、硬化前のポリウレタン樹脂組成物の粘度が低く、作業性に優れていた。
【0067】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。