(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055965
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】光学特性の測定方法、測定装置、測定プログラム、および測定チャート、ならびに撮像装置
(51)【国際特許分類】
G01M 11/02 20060101AFI20220401BHJP
G01M 11/00 20060101ALI20220401BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20220401BHJP
H04N 17/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
G01M11/02 A
G01M11/00 L
G03B15/00 T
H04N17/00 G
H04N17/00 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163706
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】516317182
【氏名又は名称】OFILM.Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】特許業務法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒本 章人
【テーマコード(参考)】
2G086
5C061
【Fターム(参考)】
2G086FF06
2G086HH07
5C061BB01
5C061BB11
5C061CC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】二次元の点像分布関数をよりシンプルな処理によって測定できる光学特性の測定方法、測定装置、測定プログラム、および測定チャート、ならびに、よりシンプルな処理によって取得された二次元の点像分布関数に基づいて撮像イメージの補正を行う撮像装置を提供する。
【解決手段】測定チャートは、光学系のPSFの取得に用いられる。測定チャートは、複数のチャート要素12を備える。複数のチャート要素12は、地の複数の位置において互いに分離して配置される。地の色は、単一の色である。チャート要素12が配置される複数の位置は、地の中心P1からの距離が互いに異なる位置を含む。各々のチャート要素12は、第1線分L1と、第2線分L2と、を有する。第1線分L1は、タンジェンシャル方向の座標軸に傾いて交わる。第2線分L2は、サジタル方向の座標軸に傾いて交わる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の色の地の中心からの距離が互いに異なる位置を含む前記地の複数の位置において互いに分離して配置され、各々が前記地の色と異なる単一の色を有する複数のチャート要素を含み、前記複数のチャート要素の各々が、前記地の中心および当該チャート要素の中心を通るタンジェンシャル方向の座標軸に傾いて交わる第1線分、および、当該チャート要素の中心を通り前記タンジェンシャル方向の座標軸に垂直なサジタル方向の座標軸に傾いて交わる第2線分、を有する測定チャートの撮像イメージを、前記地の中心に光軸を合わせた光学レンズおよび前記光学レンズを通過した光を受ける固体撮像素子を含む光学系を用いて取得する撮像工程と、
前記撮像工程で取得された前記測定チャートの撮像イメージにおいて前記複数のチャート要素の各々を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出された前記複数のチャート要素の各々について、前記第1線分のエッジプロファイルに基づいて前記タンジェンシャル方向の線像分布関数を算出し、前記第2線分のエッジプロファイルに基づいて前記サジタル方向の線像分布関数を算出し、算出した前記タンジェンシャル方向の線像分布関数および前記サジタル方向の線像分布関数の積によって前記複数のチャート要素の各々の位置に対応する前記光学系の点像分布関数を算出する算出工程と、
を備える光学特性の測定方法。
【請求項2】
前記算出工程は、前記タンジェンシャル方向または前記サジタル方向の少なくとも一方の線像分布関数を、単一のガウス関数を用いた関数として算出する処理を含む
請求項1に記載の光学特性の測定方法。
【請求項3】
前記算出工程は、前記タンジェンシャル方向または前記サジタル方向の少なくとも一方の線像分布関数を、複数のガウス関数を用いた関数として算出する処理を含む
請求項1に記載の光学特性の測定方法。
【請求項4】
前記算出工程は、前記タンジェンシャル方向または前記サジタル方向の少なくとも一方の線像分布関数を、非対称で区分的なガウス関数を用いた関数として算出する処理を含む
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学特性の測定方法。
【請求項5】
前記撮像工程において撮像される前記測定チャートの前記複数のチャート要素は、前記地の中心からの距離が互いに等しい対称位置に配置される2つ以上の対称チャート要素を含み、
前記算出工程は、前記2つ以上の対称チャート要素について前記タンジェンシャル方向または前記サジタル方向の少なくとも一方の線像分布関数を平均化する処理を含む
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学特性の測定方法。
【請求項6】
前記撮像工程において撮像される前記測定チャートの前記複数のチャート要素は、前記地の中心からの距離が互いに等しい対称位置に配置される2つ以上の対称チャート要素を含み、
前記算出工程は、前記2つ以上の対称チャート要素について前記光学系の点像分布関数を平均化する処理を含む
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学特性の測定方法。
【請求項7】
前記撮像工程において撮像される前記測定チャートの前記複数のチャート要素において、前記2つ以上の対称チャート要素のうちの少なくとも一組の色は互いに異なり、
前記算出工程は、前記2つ以上の対称チャート要素について前記光学系の点像分布関数を前記2つ以上の対称チャート要素の色ごとに算出する処理を含む
請求項5または請求項6に記載の光学特性の測定方法。
【請求項8】
単一の色の地の中心からの距離が互いに異なる位置を含む前記地の複数の位置において互いに分離して配置され、各々が前記地の色と異なる単一の色を有する複数のチャート要素を含み、前記複数のチャート要素の各々が、前記地の中心および当該チャート要素の中心を通るタンジェンシャル方向の座標軸に傾いて交わる第1線分、および、当該チャート要素の中心を通り前記タンジェンシャル方向の座標軸に垂直なサジタル方向の座標軸に傾いて交わる第2線分、を有する測定チャートの、前記地の中心に光軸を合わせた光学レンズおよび前記光学レンズを通過した光を受ける固体撮像素子を含む光学系を用いて取得された撮像イメージにおいて、前記複数のチャート要素の各々を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記複数のチャート要素の各々について、前記第1線分のエッジプロファイルに基づいて前記タンジェンシャル方向の線像分布関数を算出し、前記第2線分のエッジプロファイルに基づいて前記サジタル方向の線像分布関数を算出し、算出した前記タンジェンシャル方向の線像分布関数および前記サジタル方向の線像分布関数の積によって前記複数のチャート要素の各々の位置に対応する前記光学系の点像分布関数を算出する算出部と、
を備える光学特性の測定装置。
【請求項9】
単一の色の地の中心からの距離が互いに異なる位置を含む前記地の複数の位置において互いに分離して配置され、各々が前記地の色と異なる単一の色を有する複数のチャート要素を含み、前記複数のチャート要素の各々が、前記地の中心および当該チャート要素の中心を通るタンジェンシャル方向の座標軸に傾いて交わる第1線分、および、当該チャート要素の中心を通り前記タンジェンシャル方向の座標軸に垂直なサジタル方向の座標軸に傾いて交わる第2線分、を有する測定チャートの、前記地の中心に光軸を合わせた光学レンズおよび前記光学レンズを通過した光を受ける固体撮像素子を含む光学系を用いて取得された撮像イメージにおいて、前記複数のチャート要素の各々を検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出された前記複数のチャート要素の各々について、前記第1線分のエッジプロファイルに基づいて前記タンジェンシャル方向の線像分布関数を算出し、前記第2線分のエッジプロファイルに基づいて前記サジタル方向の線像分布関数を算出し、算出した前記タンジェンシャル方向の線像分布関数および前記サジタル方向の線像分布関数の積によって前記複数のチャート要素の各々の位置に対応する前記光学系の点像分布関数を算出する算出ステップと、
をコンピュータに実行させる光学特性の測定プログラム。
【請求項10】
光学レンズおよび前記光学レンズを通過した光を受ける固体撮像素子を含む光学系の点像分布関数の取得に用いられる光学特性の測定チャートであり、
単一の色の地の中心からの距離が互いに異なる位置を含む前記地の複数の位置において互いに分離して配置され、各々が前記地の色と異なる単一の色を有する複数のチャート要素
を備え、
前記複数のチャート要素の各々は、
前記地の中心および当該チャート要素の中心を通るタンジェンシャル方向の座標軸に傾いて交わる第1線分と、
当該チャート要素の中心を通り前記タンジェンシャル方向の座標軸に垂直なサジタル方向の座標軸に傾いて交わる第2線分と、
を有する
光学特性の測定チャート。
【請求項11】
前記複数のチャート要素の各々は、凸四角形であり、
前記第1線分は前記凸四角形のいずれかの辺であり、
前記第2線分は前記凸四角形の辺のうち前記第1線分に隣接する辺である
請求項10に記載の光学特性の測定チャート。
【請求項12】
前記複数のチャート要素は、
前記地の中心からの距離が互いに等しい対称位置に配置される2つ以上の対称チャート要素
を含む
請求項10または請求項11に記載の光学特性の測定チャート。
【請求項13】
前記複数のチャート要素は、前記地の中心を対称点として回転対称に配置される
請求項12に記載の光学特性の測定チャート。
【請求項14】
前記2つ以上の対称チャート要素のうちの少なくとも一組の色は、互いに異なる
請求項12または請求項13に記載の光学特性の測定チャート。
【請求項15】
光学レンズと、
前記光学レンズを通過した光を受けて撮像イメージを取得する固体撮像素子と、
前記光学レンズおよび前記固体撮像素子を含む光学系に請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の測定方法を適用して得られた前記光学系の点像分布関数を用いて算出されたデコンボリューションカーネルを記憶する記憶部と、
前記固体撮像素子が取得する撮像イメージに、前記記憶部から読み出したデコンボリューションカーネルを畳み込む演算を行う演算部と、
を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学特性の測定方法、測定装置、測定プログラム、および測定チャート、ならびに撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、画像記録装置の例を開示する。画像記録装置において、記録される撮像イメージの復元処理が行われる。復元処理は、点像分布関数に基づいて行われる。点像分布関数は、調整用チャートを撮影した撮像イメージから取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の調整用チャートは、複数の点像からなる点像チャートである。点像チャートにおいて、点像は撮像イメージ上で二次元に拡がる。このため、点像チャートにおいて、二次元の点像分布関数は、二次元の撮像イメージから直接算出される。この場合に、二次元の点像分布関数の算出の処理が煩雑になることがある。
【0005】
本開示は、このような課題の解決に係るものである。本開示は、二次元の点像分布関数をよりシンプルな処理によって測定できる光学特性の測定方法、測定装置、測定プログラム、および測定チャートを提供する。また、よりシンプルな処理によって取得された二次元の点像分布関数に基づいて、撮像イメージの補正を行う撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る光学特性の測定方法は、単一の色の地の中心からの距離が互いに異なる位置を含む地の複数の位置において互いに分離して配置され、各々が地の色と異なる単一の色を有する複数のチャート要素を含み、複数のチャート要素の各々が、地の中心および当該チャート要素の中心を通るタンジェンシャル方向の座標軸に傾いて交わる第1線分、および、当該チャート要素の中心を通りタンジェンシャル方向の座標軸に垂直なサジタル方向の座標軸に傾いて交わる第2線分、を有する測定チャートの撮像イメージを、地の中心に光軸を合わせた光学レンズおよび光学レンズを通過した光を受ける固体撮像素子を含む光学系を用いて取得する撮像工程と、撮像工程で取得された測定チャートの撮像イメージにおいて複数のチャート要素の各々を検出する検出工程と、検出工程で検出された複数のチャート要素の各々について、第1線分のエッジプロファイルに基づいてタンジェンシャル方向の線像分布関数を算出し、第2線分のエッジプロファイルに基づいてサジタル方向の線像分布関数を算出し、算出したタンジェンシャル方向の線像分布関数およびサジタル方向の線像分布関数の積によって複数のチャート要素の各々の位置に対応する光学系の点像分布関数を算出する算出工程と、を備える。
【0007】
本開示に係る光学特性の測定装置は、単一の色の地の中心からの距離が互いに異なる位置を含む地の複数の位置において互いに分離して配置され、各々が地の色と異なる単一の色を有する複数のチャート要素を含み、複数のチャート要素の各々が、地の中心および当該チャート要素の中心を通るタンジェンシャル方向の座標軸に傾いて交わる第1線分、および、当該チャート要素の中心を通りタンジェンシャル方向の座標軸に垂直なサジタル方向の座標軸に傾いて交わる第2線分、を有する測定チャートの、地の中心に光軸を合わせた光学レンズおよび光学レンズを通過した光を受ける固体撮像素子を含む光学系を用いて取得された撮像イメージにおいて、複数のチャート要素の各々を検出する検出部と、検出部によって検出された複数のチャート要素の各々について、第1線分のエッジプロファイルに基づいてタンジェンシャル方向の線像分布関数を算出し、第2線分のエッジプロファイルに基づいてサジタル方向の線像分布関数を算出し、算出したタンジェンシャル方向の線像分布関数およびサジタル方向の線像分布関数の積によって複数のチャート要素の各々の位置に対応する光学系の点像分布関数を算出する算出部と、を備える。
【0008】
本開示に係る光学特性の測定プログラムは、単一の色の地の中心からの距離が互いに異なる位置を含む地の複数の位置において互いに分離して配置され、各々が地の色と異なる単一の色を有する複数のチャート要素を含み、複数のチャート要素の各々が、地の中心および当該チャート要素の中心を通るタンジェンシャル方向の座標軸に傾いて交わる第1線分、および、当該チャート要素の中心を通りタンジェンシャル方向の座標軸に垂直なサジタル方向の座標軸に傾いて交わる第2線分、を有する測定チャートの、地の中心に光軸を合わせた光学レンズおよび光学レンズを通過した光を受ける固体撮像素子を含む光学系を用いて取得された撮像イメージにおいて、複数のチャート要素の各々を検出する検出ステップと、検出ステップで検出された複数のチャート要素の各々について、第1線分のエッジプロファイルに基づいてタンジェンシャル方向の線像分布関数を算出し、第2線分のエッジプロファイルに基づいてサジタル方向の線像分布関数を算出し、算出したタンジェンシャル方向の線像分布関数およびサジタル方向の線像分布関数の積によって複数のチャート要素の各々の位置に対応する光学系の点像分布関数を算出する算出ステップと、をコンピュータに実行させる。
【0009】
本開示に係る光学特性の測定チャートは、光学レンズおよび光学レンズを通過した光を受ける固体撮像素子を含む光学系の点像分布関数の取得に用いられる光学特性の測定チャートであり、単一の色の地の中心からの距離が互いに異なる位置を含む地の複数の位置において互いに分離して配置され、各々が地の色と異なる単一の色を有する複数のチャート要素を備え、複数のチャート要素の各々は、地の中心および当該チャート要素の中心を通るタンジェンシャル方向の座標軸に傾いて交わる第1線分と、当該チャート要素の中心を通りタンジェンシャル方向の座標軸に垂直なサジタル方向の座標軸に傾いて交わる第2線分と、を有する。
【0010】
本開示に係る撮像装置は、光学レンズと、光学レンズを通過した光を受けて撮像イメージを取得する固体撮像素子と、光学レンズおよび固体撮像素子を含む光学系に上記の測定方法を適用して得られた光学系の点像分布関数を用いて算出されたデコンボリューションカーネルを記憶する記憶部と、固体撮像素子が取得する撮像イメージに、記憶部から読み出したデコンボリューションカーネルを畳み込む演算を行う演算部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る測定方法、測定装置、測定プログラム、または測定チャートであれば、よりシンプルな処理によって二次元の点像分布関数を測定できる。本開示に係る撮像装置であれば、よりシンプルな処理によって取得された二次元の点像分布関数に基づいて、撮像イメージの補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る撮像装置の構成図である。
【
図2】撮影対象であるオリジナルイメージCと、撮像イメージBと、光学レンズを含む光学系の点像分布関数との関係を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る測定装置の構成図である。
【
図4】実施の形態1に係る測定チャートの例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係るチャート要素の例を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係る光学系の点像分布関数の例を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る光学系の点像分布関数の例を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係る光学系の線像分布関数の例を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係るエッジプロファイルの例を示す図である。
【
図10】実施の形態1に係るエッジプロファイルの微分の例を示す図である。
【
図11】実施の形態1に係る光学特性の測定方法の例を示す図である。
【
図12】実施の形態2に係る光学系の線像分布関数の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る撮像装置1の構成図である。
【0015】
撮像装置1は、光学系2と、処理装置3と、を備える。撮像装置1は、撮影対象の画像を撮影するカメラとして用いることができる。画像は、例えば静止画または動画などである。画像は、撮影対象のイメージであるオリジナルイメージCによって構成される。
【0016】
光学系2は、光学レンズ4と、固体撮像素子5と、を備える。画像の撮影が行われるときに、光学レンズ4の光軸6は、撮影対象に向けられる。固体撮像素子5は、光学レンズ4の焦点位置に配置される。固体撮像素子5は、例えば画像の撮影が行われるときなどに光学レンズ4を介して撮像イメージを取得する素子である。
【0017】
処理装置3は、固体撮像素子5に電気的に接続される。処理装置3は、演算部7および記憶部8を備えている。演算部7は、撮像イメージBの解像度を改善してオリジナルイメージCを復元する補正処理などを行う部分である。記憶部8は、情報を記憶する部分である。記憶部8において、演算部7による補正処理に用いられる各種のデータが記憶される。
【0018】
処理装置3は、ハードウェアとして、例えばプロセッサおよびメモリを備えた処理回路を有する。プロセッサは、例えばCPU、演算装置、マイクロプロセッサ、またはマイクロコンピュータなどである。メモリは、例えばRAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROMおよびEEPROMなどの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、または、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、もしくはDVDなどが該当する。メモリは、例えばソフトウェアまたはファームウェアとしてのプログラムなどを記憶する。そして、処理装置3は、メモリに記憶されたプログラムなどをプロセッサが実行することによって予め設定された処理を実施し、ハードウェアとソフトウェアとが協働した結果として各機能を実現する。処理装置3の各機能は、それぞれ処理回路で実現されてもよい。あるいは、処理装置3の各機能の一部または全部は、まとめて処理回路で実現されてもよい。また、処理回路は、例えば単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、もしくはFPGA、またはこれらの組み合わせで実現されてもよい。
【0019】
図2は、撮影対象であるオリジナルイメージCと、撮像イメージBと、光学レンズ4を含む光学系2の点像分布関数との関係を示す図である。点像分布関数は、オリジナルイメージCが一点である場合に取得される撮像イメージBに対応する関数である。以下において、点像分布関数をPSF(Point Spread Function)とも表記する。
【0020】
図2において、光学系2の上方に示される一連の表示は、オリジナルイメージCと撮像イメージBとの間の、空間領域における関係を示している。オリジナルイメージCは、固体撮像素子5に到達する過程で光学レンズ4を通過する。光学レンズ4を通過する過程で、光学レンズ4の光学特性に起因する空間的なひずみ、いわゆるボケが、オリジナルイメージCに重畳される。ボケの影響は、PSFによって表される。オリジナルイメージCと撮像イメージBとの関係は、次の式(1)で表すことができる。ここで、演算子「*」は、畳み込み演算を表す。
【0021】
【0022】
図2において、光学系2の下方に示される一連の表示は、オリジナルイメージCと撮像イメージBとの間の、周波数領域における関係を示している。周波数領域におけるオリジナルイメージCと撮像イメージBとの関係は、次の式(2)で表すことができる。ここで、F{・}は、フーリエ変換を表す。また、OTF(Optical Transfer Function)は、PSFにフーリエ変換を施すことで得られるPSFの周波数領域表現である。
【0023】
【0024】
式(2)から、オリジナルイメージCの周波数領域表現F{C}は、次の式(3)で表すことができる。
【0025】
【0026】
式(3)に逆フーリエ変換を施すことによって、オリジナルイメージCの空間領域表現は、次の式(4)のように表される。ここで、F-1{・}は、逆フーリエ変換を表す。
【0027】
【0028】
なお、次の式(5)のように、逆伝達関数F-1{1/F{PSF}}を記号Aで表した。
【0029】
【0030】
以下において、記号Aで表される逆伝達関数をデコンボリューションカーネルとも表記する。デコンボリューションカーネルAは、PSFから式(5)の計算によって求められるカーネル関数である。式(4)に示されるように撮像イメージBにデコンボリューションカーネルAを畳み込む演算によって、撮像イメージBからPSFの影響を排除したオリジナルイメージCが復元される。デコンボリューションカーネルAを用いてオリジナルイメージCの復元を行う補正処理は、例えば次の式(6)のように行われる。補正処理は、例えば撮像素子が撮像イメージBを取得するときに、演算部7において行われる。ここで、xおよびyは、イメージにおける画素の横および縦の座標を表す。C(x,y)は、オリジナルイメージCの位置(x,y)における画素値を表す。また、積分領域Dは、畳み込み演算の積分を行う領域を表す。積分領域Dは、例えばオリジナルイメージCの位置(x,y)を中心とした矩形の領域などである。この例において、デコンボリューションカーネルAは、例えばオリジナルイメージCにおける位置(x,y)または位置(x,y)を含むオリジナルイメージCの領域などに応じて、複数のカーネル関数から選択される。なお、デコンボリューションカーネルAは積分、すなわちすべての要素を加算した際にその総和が1となるように規格化されているものとする。
【0031】
【0032】
続いて、撮像装置1の光学系2の光学特性の測定の例を説明する。この例において、光学系2のPSFが光学特性として測定される。
【0033】
図3は、実施の形態1に係る測定装置9の構成図である。
この例において、光学特性の測定は、測定装置9および測定チャート10を用いて行われる。
【0034】
測定装置9は、撮像装置1の光学系2を対象としてPSFを測定する装置である。この例において、測定装置9は、撮像装置1の外部装置である。測定装置9は、光学系2のPSFが測定されるときに、当該光学系2を有する撮像装置1に電気的に接続される。測定装置9は、例えば汎用または専用のコンピュータなどである。測定装置9は、例えば予めインストールされた測定プログラムに基づいて動作する。
【0035】
測定装置9は、ハードウェアとして、例えばプロセッサおよびメモリを備えた処理回路を有する。プロセッサは、例えばCPU、演算装置、マイクロプロセッサ、またはマイクロコンピュータなどである。メモリは、例えばRAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROMおよびEEPROMなどの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、または、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、もしくはDVDなどが該当する。メモリは、例えばソフトウェアまたはファームウェアとしてのプログラムなどを記憶する。そして、測定装置9は、メモリに記憶されたプログラムなどをプロセッサが実行することによって予め設定された処理を実施し、ハードウェアとソフトウェアとが協働した結果として各機能を実現する。測定装置9の各機能は、それぞれ処理回路で実現されてもよい。あるいは、測定装置9の各機能の一部または全部は、まとめて処理回路で実現されてもよい。また、処理回路は、例えば単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、もしくはFPGA、またはこれらの組み合わせで実現されてもよい。
【0036】
測定チャート10は、地11に配置された複数のチャート要素12を含むテストチャートである。測定チャート10の地11は、単一の色の部分である。測定チャート10の地11は、中心P1を有する。測定チャート10の地11の中心P1は、例えば測定チャート10の中心である。各々のチャート要素12は、地11において互いに重ならないように分離して配置される。
【0037】
光学特性の測定方法は、撮像工程と、検出工程と、算出工程と、を含む。
【0038】
撮像工程は、測定対象である撮像装置1の光学系2を用いて測定チャート10の撮像イメージを取得する工程である。撮像工程において、光学レンズ4の光軸6は測定チャート10の地11の中心P1に合わせられる。このとき、撮像装置1は、測定チャート10の正面に配置される。また、撮像装置1は、光学レンズ4の光軸6が測定チャート10の地11の中心P1を通るように配置される。また、撮像装置1は、光学レンズ4の光軸6が測定チャート10に垂直になるように配置される。撮像工程において取得された測定チャート10の撮像イメージは、例えば処理装置3を通じて測定装置9に出力される。
【0039】
検出工程および算出工程の処理は、測定装置9において行われる。測定装置9は、検出部13と、算出部14と、を備える。検出部13は、検出工程の処理を行う部分である。検出工程は、撮像工程で取得された測定チャート10の撮像イメージにおいて、各々のチャート要素12を検出する処理を含む工程である。算出部14は、算出工程の処理を行う部分である。算出工程は、検出工程で検出されたチャート要素12の各々について、当該チャート要素12の位置に対応する光学系2のPSFを算出する処理を含む工程である。
【0040】
この例の算出工程において、算出部14は、各々のチャート要素12の位置に応じて取得したPSFから、デコンボリューションカーネルとして用いられる各々のチャート要素12の位置に対応するカーネル関数を算出する。算出されたカーネル関数は、撮像装置1の処理装置3に出力される。測定装置9から出力されたカーネル関数は、記憶部8に記憶される。記憶部8は、光学特性の測定が終了して測定装置9が撮像装置1から取り外された後に、カーネル関数の記憶を維持する。このように、カーネル関数は、撮像装置1の光学系2に対して一度計算されればよく、補正処理の度に計算されなくてもよい。記憶部8が記憶しているカーネル関数は、補正処理が行われるときに、演算部7によってデコンボリューションカーネルAとして読み出される。
【0041】
続いて、測定チャート10の例を説明する。
図4は、実施の形態1に係る測定チャート10の例を示す図である。
【0042】
測定チャート10の地11は、例えば測定チャート10の全体にわたる。この例において、測定チャート10は、矩形のチャートである。
図4において、測定チャート10の横方向を表すx軸、および測定チャート10の縦方向を表すy軸が示される。測定チャート10のx軸およびy軸の両方は、測定チャート10の中心P1を通る。測定チャート10の第1象限Q1は、x座標が正であり、かつ、y座標が正の領域である。測定チャート10の第2象限Q2は、x座標が負であり、かつ、y座標が正の領域である。測定チャート10の第3象限Q3は、x座標が負であり、かつ、y座標が負の領域である。測定チャート10の第4象限Q4は、x座標が正であり、かつ、y座標が負の領域である。この例において、測定チャート10の地11の色は、白色である。あるいは、測定チャート10の地11の色は、黒色より白色に近い、薄い灰色であってもよい。
【0043】
測定チャート10の複数のチャート要素12は、地11における複数の位置に配置される。チャート要素12が配置される地11の複数の位置は、地11の中心P1からの距離が互いに異なる位置を含む。地11の中心P1からの距離が互いに異なる位置は、例えば地11の中心P1の位置および地11の中心P1の他の位置などである。この例において、複数のチャート要素12は、正方格子状に配置される。正方格子状の配置は、回転対称な配置の例である。
【0044】
この例において、複数のチャート要素12は、2つ以上の対称チャート要素を含む。対称チャート要素は、地11の中心からの距離が互いに等しい位置に配置されたチャート要素12である。例えば第2象限Q2に配置されたチャート要素12aの対称チャート要素は、第3象限Q3の対応する位置に配置されたチャート要素12bを含む。また、第2象限Q2に配置されたチャート要素12aの対称チャート要素は、同じ第2象限Q2に配置されたチャート要素12cを含んでもよい。第2象限Q2に配置されたチャート要素12aの対称チャート要素は、第1象限Q1または第4象限Q4の対応する位置に配置されたチャート要素12を含んでもよい。
【0045】
各々のチャート要素12は、地11の色と異なる単一の色を有する部分である。なお、
図4において、説明のためチャート要素12の輪郭線が表示されているが、この例のチャート要素12において、輪郭線および内部の色は同一の色である。すなわち、この例のチャート要素12において、チャート要素12の内部と識別できる輪郭線は描かれない。この例において、各々のチャート要素12の色は、黒色である。なお、各々のチャート要素12の色は、地11の色との間に十分大きなコントラストがある色であればよい。例えば、各々のチャート要素12の色は、白色より黒色に近い、濃い灰色であってもよい。また、各々のチャート要素12の色は、赤色、青色、または緑色などであってもよい。
【0046】
各々のチャート要素12について、タンジェンシャル方向が設定される。
図4において、タンジェンシャル方向を表すt軸の例が示される。各々のチャート要素12のタンジェンシャル方向の座標軸は、地11の中心P1および当該チャート要素12の中心P2を通る。この例において、
図4に示されるタンジェンシャル方向のt軸は、横方向のx軸から角度βだけ回転した方向である。なお、地11の中心P1に配置されるチャート要素12において、当該チャート要素12の中心P2は地11の中心P1に一致する。このため、当該チャート要素12について、撮像イメージにおけるいずれの方向がタンジェンシャル方向として設定されてもよい。例えば、当該チャート要素12について、x軸の方向がタンジェンシャル方向として設定されてもよい。
【0047】
この例において、測定チャート10は、複数のマーカ15を含む。マーカ15は、例えば第1象限Q1、第2象限Q2、第3象限Q3、および第4象限Q4の対応する位置に配置される。マーカ15は、例えば測定チャート10の撮像イメージの位置決めなどに用いられる。例えば、測定チャート10の撮像イメージにおいて、測定チャート10の傾きまたは地11の中心P1の位置などがマーカ15によって検出されてもよい。各々のマーカ15の形状は、各々のチャート要素12と区別しうる形状である。各々のマーカ15は、チャート要素12に重ならずに配置される。
【0048】
なお、
図4において、地11の中心P1およびチャート要素12の中心P2を表す点、チャート要素12を含む領域Rを表す破線、ならびにx軸、y軸、およびt軸の座標軸を表す破線が説明のために表示されている。これらは、この例の測定チャート10において描かれていなくてもよい。
【0049】
図5は、実施の形態1に係る測定チャート10のチャート要素12の例を示す図である。
図5において、
図4の領域Rを拡大した図が示される。
【0050】
各々のチャート要素12について、サジタル方向が設定される。
図5において、サジタル方向を表すs軸の例が示される。サジタル方向は、タンジェンシャル方向に垂直な方向である。各々のチャート要素12のサジタル方向の座標軸は、当該チャート要素12の中心P2を通る。
図5において、タンジェンシャル方向またはサジタル方向に直交する直線が一点鎖線で示される。
【0051】
この例において、各々のチャート要素12の形状は、凸四角形である。各々のチャート要素12は、タンジェンシャル方向のt軸に交わる一対の辺L1を有する。一対の辺L1は、互いに対向する対辺である。各々の辺L1は、タンジェンシャル方向の座標軸に傾いて交わる線分である。各々の辺L1は、タンジェンシャル方向のt軸に直交する直線に対して角度αだけ傾いている。ここで、角度αは、例えば2°以上8°以下の範囲に含まれる角度である。角度αは、例えば4°以上8°以下の範囲に含まれる角度であってもよい。一対の辺L1の各々は、第1線分の例である。また、各々のチャート要素12は、サジタル方向のs軸に交わる一対の辺L2を有する。一対の辺L2は、互いに対向する対辺である。各々の辺L2は、サジタル方向の座標軸に傾いて交わる線分である。各々の辺L2は、サジタル方向のs軸に直交する直線に対して角度αだけ傾いている。一対の辺L2の各々は、第2線分の例である。各々のチャート要素12において、辺L1および辺L2は、互いに隣接する辺である。
【0052】
この例において、一対の辺L1の傾きは、互いに同じ角度αである。また、一対の辺L2の傾きは、互いに同じ角度αである。また、辺L1および辺L2の傾きは、互いに同じ角度αである。一方、各々のチャート要素12において、一対の辺L1の傾きは、互いに違う角度であってもよい。一対の辺L2の傾きは、互いに違う角度であってもよい。辺L1および辺L2の傾きは、互いに違う角度であってもよい。
【0053】
各々のチャート要素12について、撮像イメージの座標系(x,y)と、当該チャート要素12のタンジェンシャル方向およびサジタル方向による座標系(t、s)とは、例えば次の式(7)のアフィン変換などによって変換される。ここで、(x0,y0)は、座標系(t、s)の原点を座標系(x,y)で表したときの位置である。すなわち、(x0,y0)は、チャート要素12の中心P2を座標系(x,y)で表したときの位置である。
【0054】
【0055】
続いて、光学系2のPSFの例を説明する。
図6および
図7は、実施の形態1に係る光学系2のPSFの例を示す図である。
【0056】
この例の測定チャート10において、地11の色は白色であり、各々のチャート要素12の色は黒色である。このため、
図6において、輝度値の大きい測定チャート10の地11における点P3についてのPSFが例として示される。
【0057】
図6において、等高線によってPSFの例が示される。この例において、PSFは非等方な分布を表す。光学レンズ4は光軸6に対して対称であるので、PSFの主軸は、タンジェンシャル方向およびサジタル方向となる。また、光学レンズ4の対称性から、この例のPSFは、サジタル方向について対称な分布を表す。一方、この例のPSFは、タンジェンシャル方向について非対称な分布を表す。なお、例えば撮像イメージの中心付近などにおいて、PSFは等方な分布であってもよい。また、PSFは、タンジェンシャル方向およびサジタル方向の一方または両方において、対称な分布であってもよい。あるいは、PSFは、タンジェンシャル方向およびサジタル方向の一方または両方において、非対称な分布であってもよい。
【0058】
図7において、PSFと線像分布関数の対応が示される。線像分布関数は、撮像イメージにおけるいずれか一つの方向についてのボケの影響を表す関数である。以下において、線像分布関数をLSF(Line Spread Function)とも表記する。タンジェンシャル方向のLSFであるLSF
tは、例えばPSFのt軸への射影である。サジタル方向のLSFであるLSF
sは、例えばPSFのs軸への射影である。すなわち、タンジェンシャル方向およびサジタル方向のLSFは、次の式(8)のように表される。
【0059】
【0060】
ここで、PSFがタンジェンシャル方向およびサジタル方向に変数分離可能な関数である場合に、PSFは、次の式(9)のように、これらの方向のLSFに分離できる。
【0061】
【0062】
このため、PSFは、タンジェンシャル方向およびサジタル方向の各々のLSFを求めることで、その積として式(9)のように得られる。このため、測定装置9の算出部14は、測定チャート10の撮像イメージにおける各々のチャート要素12について、タンジェンシャル方向およびサジタル方向のLSFをそれぞれ算出する。算出部14は、算出したタンジェンシャル方向およびサジタル方向のLSFの積としてPSFを算出する。
【0063】
図8は、実施の形態1に係る光学系2のLSFの例を示す図である。
【0064】
図8において、タンジェンシャル方向の非対称なLSFの例が示される。この例において、算出部14は、例えばガウス関数などの解析的な関数としてLSFを取り扱う。この例において、算出部14は、次の式(10)のように表される区分的なガウス関数としてタンジェンシャル方向のLSFを取り扱う。ここで、σ
t1は、タンジェンシャル方向のt座標が正または0の領域において定義されるガウス関数の幅を表す。また、σ
t2は、タンジェンシャル方向のt座標が負の領域において定義されるガウス関数の幅を表す。
【0065】
【0066】
算出部14は、幅σt1および幅σt2などをパラメータとして決定することで、タンジェンシャル方向のLSFを算出する。算出部14は、サジタル方向についても同様に、区分的なガウス関数としてLSFを算出する。
【0067】
あるいは、算出部14は、サジタル方向またはタンジェンシャル方向の一方または両方について、対称なガウス関数としてLSFを算出してもよい。例えば、算出部14は、次の式(11)のように表される通常の対称なガウス関数としてサジタル方向のLSFを取り扱ってもよい。ここで、σsは、ガウス関数の幅を表す。この場合に、算出部14は、幅σsなどをパラメータとして決定することで、サジタル方向のLSFを算出する。
【0068】
【0069】
続いて、算出部14によるLSFの算出の例を説明する。算出部14は、各々のチャート要素12の辺L1および辺L2のエッジプロファイルに基づいてLSFを算出する。エッジプロファイルは、測定チャート10の地11および各々のチャート要素12の境界のエッジにおける輝度値の分布である。
【0070】
図9は、実施の形態1に係るエッジプロファイルの例を示す図である。
【0071】
図9の上段において、チャート要素12の例が示される。この例において、当該チャート要素12のs座標がs
aである直線上のエッジプロファイルが示される。
図9の上段において、測定チャート10の地11における当該直線上の2点(t
a,s
a)、(t
b,s
a)についてのPSFが例として示される。ここで、エッジプロファイルはt軸に平行な直線上の分布であるため、エッジプロファイルは、t軸へのPSFの射影であるLSFの特徴を反映したものとなる。
【0072】
図9の中段において、(t
a,s
a)および(t
b,s
a)の2点におけるタンジェンシャル方向のLSFが示される。
図9の中段において示されるように、例えば地11における点である(t
a,s
a)の輝度値は、PSFによってチャート要素12の内部の位置の輝度値に影響する。
【0073】
図9の下段において、タンジェンシャル方向についての輝度値の分布が示される。輝度値の分布は、地11における点の輝度値のPSFによる拡がりを重ね合わせたものとなるので、LSFをタンジェンシャル方向について積分したものとなる。このため、撮像イメージの輝度値分布から得られるタンジェンシャル方向のエッジプロファイルをt座標で微分することによって、タンジェンシャル方向のLSFを得ることができる。
【0074】
図10は、実施の形態1に係るエッジプロファイルの微分の例を示す図である。
【0075】
図10に示されるように、エッジプロファイルを微分することで、エッジの位置にピークを持つLSFが得られる。これを利用して、算出部14は、測定チャート10の撮像データから得られたタンジェンシャル方向のエッジプロファイルのt座標での微分に基づいて、タンジェンシャル方向のLSFを算出する。なお、エッジプロファイルの微分は、エッジの向きによって正または負の符号をもつため、算出部14はエッジプロファイルの微分の絶対値に基づいてLSFを算出する。算出部14は、サジタル方向についても同様にLSFを算出する。
【0076】
続いて、光学系2についての光学特性の測定方法の例を説明する。
図11は、実施の形態1に係る光学特性の測定方法の例を示す図である。
【0077】
まず、測定装置9は、撮像工程において取得された測定チャート10の撮像イメージを撮像装置1から読み込む。その後、測定装置9の検出部13は、検出工程の処理を行う。
【0078】
検出工程において、検出部13は、ステップST0に示されるように、測定チャート10の撮像イメージから各々のチャート要素12を検出する。検出部13は、例えば凸四角形を検出する画像認識などの手法によってチャート要素12の検出を行う。また、検出部13は、検出したチャート要素12について、測定チャート10の地11の中心P1に対するチャート要素12の位置を取得する。地11の中心P1の位置、およびチャート要素12の位置は、例えば画像認識によって検出した複数のマーカ15などを基準として取得される。
【0079】
その後、算出部14は、算出工程の処理を行う。算出工程において、算出部14は、例えばステップSTt1からステップSTt4に示されるように、タンジェンシャル方向のLSFを算出する。
【0080】
ステップSTt1において、算出部14は、チャート要素12の辺L1をエッジとしたエッジプロファイルを取得する。このとき、サジタル方向の複数の座標を通る複数の直線状において、複数のエッジプロファイルが取得される。
【0081】
ステップSTt2において、取得された複数のエッジプロファイルの例が示される。エッジプロファイルの輝度値は、撮像イメージの画素上の値であるため、離散的な分布となる。このため、各々のエッジプロファイルにおいて、特にエッジ付近の急峻に立ち上がる部分の輝度値の情報は粗いものとなる。ところで、辺L1は角度αだけ傾いているため、エッジ位置のt座標は、各々のエッジプロファイルにおいて互いにずれたものとなる。このため、各々のエッジプロファイルにおいて、他のエッジプロファイルにおいて取得されない中間点の輝度値の情報が得られるようになる。したがって、算出部14は、複数のエッジプロファイルの角度αによるずれをキャンセルするように、複数のエッジプロファイルをシフトして重ね合わせる。
【0082】
ステップSTt2において、シフトして重ねられた複数のエッジプロファイルが示される。このように、算出部14は、重ね合わせによってエッジプロファイルとして詳細な輝度値の分布を得ることができる。
【0083】
ステップSTt3において、算出部14は、重ね合わせによって得られたエッジプロファイルの微分を行い、タンジェンシャル方向のLSFを算出する。算出部14は、例えばガウス関数の幅などのLSFのパラメータを調整することによって、エッジプロファイルと整合するLSFを算出してもよい。
【0084】
算出工程において、算出部14は、同様にステップSTs1からステップSTs4に示されるように、サジタル方向のLSFを算出する。
【0085】
算出工程において、算出部14は、ステップST5に示されるように、タンジェンシャル方向のLSFおよびサジタル方向のLSFを積として合成することで、二次元のPSFを解析的な関数として取得する。
【0086】
測定装置9は、ステップST0からステップST5までの工程を、各々のチャート要素12について同様に行う。
【0087】
その後、算出部14は、(s,t)座標によって表されているPSFを、(x,y)座標による表現に変換してもよい。また、算出部14は、解析的な関数として取得されたPSFに基づいて、デコンボリューションカーネルとして用いられるカーネル関数を算出してもよい。このとき、カーネル関数は、ガウス関数の幅などのLSFのパラメータによって表される解析的な関数であってもよい。算出部14は、例えばPSFに基づいてカーネル関数を算出した後に、カーネル関数の規格化などの処理を行ってもよい。
【0088】
なお、撮像装置1の光学系2の光学特性を測定する測定装置9は、撮像装置1と一体であってもよい。例えば、測定装置9の算出部14および検出部13は、撮像装置1の処理装置3において実装されていてもよい。このとき、光学特性の測定およびデコンボリューションカーネルの算出は、必要に応じた撮像装置1の操作によって行われてもよい。
【0089】
また、各々のチャート要素12の形状は、凸四角形に限られず、タンジェンシャル方向の座標軸に傾いて交わる第1線分、およびサジタル方向の座標軸に傾いて交わる第2線分を有するものであればよい。チャート要素12は、例えば第1線分および第2線分が当該チャート要素12の中心P2において交差するX字状の形状であってもよい。
【0090】
以上に説明したように、実施の形態1に係る測定チャート10は、光学系2のPSFの取得に用いられる。光学系2は、光学レンズ4および固体撮像素子5を含む。固体撮像素子5は、光学レンズ4を通過した光を受ける。測定チャート10は、複数のチャート要素12を備える。複数のチャート要素12は、地11の複数の位置において互いに分離して配置される。地11の色は、単一の色である。チャート要素12が配置される複数の位置は、地11の中心P1からの距離が互いに異なる位置を含む。各々のチャート要素12は、第1線分と、第2線分と、を有する。第1線分は、タンジェンシャル方向の座標軸に傾いて交わる。タンジェンシャル方向の座標軸は、地11の中心P1および当該チャート要素12の中心P2を通る。第2線分は、サジタル方向の座標軸に傾いて交わる。サジタル方向の座標軸は、当該チャート要素12の中心P2を通る。サジタル方向の座標軸は、タンジェンシャル方向の座標軸に垂直である。
また、実施の形態1に係る光学特性の測定方法は、撮像工程と、検出工程と、算出工程と、を備える。撮像工程は、測定チャート10の撮像イメージを、光学レンズ4および固体撮像素子5を含む光学系2を用いて取得する処理を含む。撮像工程において、光学レンズ4の光軸6は、地11の中心に合わせられる。撮像イメージは、光学レンズ4を通過した光を受ける固体撮像素子5によって取得される。検出工程は、撮像工程で取得された測定チャート10の撮像イメージにおいて、各々のチャート要素12を検出する処理を含む。算出工程は、検出工程で検出された各々のチャート要素12についての行われる工程である。算出工程は、第1線分のエッジプロファイルに基づいてタンジェンシャル方向のLSFを算出する処理を含む。算出工程は、第2線分のエッジプロファイルに基づいてサジタル方向のLSFを算出する処理を含む。算出工程は、算出したタンジェンシャル方向のLSFおよびサジタル方向のLSFの積によって各々のチャート要素12の位置に対応するPSFを算出する処理を含む。
また、実施の形態1に係る測定装置9は、検出部13と、算出部14と、を備える。検出部13は、光学特性の測定方法の検出工程の処理を行う部分である。算出部14は、光学特性の測定方法の算出工程の処理を行う部分である。
また、実施の形態1に係る測定プログラムは、検出ステップと、算出ステップと、をコンピュータに実行させる。検出ステップは、光学特性の測定方法の検出工程の処理を行うステップである。算出ステップは、光学特性の測定方法の算出工程の処理を行うステップである。
また、実施の形態1に係る撮像装置1は、光学レンズ4と、固体撮像素子5と、記憶部8と、演算部7と、を備える。固体撮像素子5は、光学レンズ4を通過した光を受けて撮像イメージを取得する。記憶部8は、デコンボリューションカーネルを記憶する。デコンボリューションカーネルは、光学レンズ4および固体撮像素子5を含む光学系2に実施の形態1に係る測定方法を適用して得られた光学系2のPSFを用いて算出される。演算部7は、固体撮像素子5が取得する撮像イメージに、記憶部8から読み出したデコンボリューションカーネルを畳み込む演算を行う。
【0091】
このような構成により、二次元のPSFは、タンジェンシャル方向およびサジタル方向のそれぞれの一次元のLSFから構成される。PSFの測定に用いられる測定チャート10は、タンジェンシャル方向およびサジタル方向に対応する第1線分および第2線分を有するので、これらの方向のLSFが容易に算出できる。また、LSFは一次元の関数であるため、ガウス関数などの解析関数を用いて容易に算出できる。このため、よりシンプルな処理によって二次元のPSFが測定される。また、よりシンプルな処理によって取得された二次元のPSFに基づいて、撮像イメージの補正が行われる。また、二次元のPSFも解析関数によって表されるため、フーリエ変換などのデコンボリューションカーネルの算出のための演算も解析的に行いうる。このため、デコンボリューションカーネルの算出の処理もよりよい精度でよりシンプルに行われうる。また、第1線分は、タンジェンシャル方向の座標軸に傾いて交わる。また、第2線分は、サジタル方向の座標軸に傾いて交わる。これにより、中間点の輝度値の情報を互いに補う複数のエッジプロファイルが容易に得られる。このため、LSFがより精度よく算出されるようになる。
【0092】
また、各々のチャート要素12は、凸四角形である。第1線分は、凸四角形のいずれかの辺L1である。第2線分は、凸四角形の辺のうち辺L1に隣接する辺L2である。
【0093】
このような構成により、チャート要素12の形状が単純であるので、チャート要素12の検出が容易になる。また、辺L1の対辺も、辺L1と同様に第1線分としてLSFの算出に用いることができる。辺L2の対辺も、辺L2と同様に第2線分としてLSFの算出に用いることができる。このため、各々のチャート要素12から取得できる情報が増える。また、対辺の向きは互いに逆であるので、対辺の向きによる誤差要因がキャンセルされうる。したがって、LSFがより精度よく算出されるようになる。
【0094】
また、複数のチャート要素12は、地11の中心P1を対称点として回転対称に配置される。
また、複数のチャート要素12は、地11の中心P1からの距離が互いに等しい対称位置に配置される2つ以上の対称チャート要素を含む。
このとき、算出工程は、2つ以上の対称チャート要素について、タンジェンシャル方向またはサジタル方向の少なくとも一方のLSFを平均化する処理を含んでもよい。タンジェンシャル方向のLSFの平均化の処理は、例えば複数のチャート要素12によって算出された複数のタンジェンシャル方向のLSFの算術平均などであってもよい。サジタル方向のLSFの平均化の処理は、タンジェンシャル方向のLSFの平均化の処理と同様に行われてもよい。
また、算出工程は、2つ以上の対称チャート要素について光学系2のPSFを平均化する処理を含んでもよい。PSFの平均化の処理は、例えば複数のチャート要素12によって算出された複数のPSFの算術平均などであってもよい。
【0095】
回転対称な位置におけるPSFは、互いに同様の特性を持つ。このような構成により、複数のチャート要素12によって同様の特性を持つPSFの測定を行うことができる。この場合に、PSFの測定に用いられる情報が増える。また、撮像イメージ上の回転位置による誤差要因がキャンセルされうる。したがって、PSFがより精度よく算出されるようになる。
【0096】
なお、算出工程は、タンジェンシャル方向またはサジタル方向の少なくとも一方の線像分布関数を、単一のガウス関数を用いた関数として算出する処理を含んでもよい。
また、算出工程は、タンジェンシャル方向またはサジタル方向の少なくとも一方の線像分布関数を、非対称で区分的なガウス関数を用いた関数として算出する処理を含んでもよい。
【0097】
このような構成により、座標変換、およびフーリエ変換などの解析的な演算が容易になる。また、ガウス関数をフーリエ変換すると周波数領域のガウス関数が得られるので、PSFの解析的な関数の取り扱いが容易になる。また、区分的なガウス関数をフーリエ変換すると周波数領域のガウス関数または誤差関数などの解析的な関数が得られるので、PSFの解析的な関数の取り扱いが容易になる。また、二次元のガウス関数は二次形式の指数関数であるので、アフィン変換などの座標変換の取り扱いが容易になる。
【0098】
また、複数のチャート要素12は、地11の中心を対称点として回転対称に配置される。このとき、2つ以上の対称チャート要素のうちの少なくとも一組の色を、互いに異なるものであってもよい。例えば、第1象限Q1に配置されるチャート要素12の色を黒色とし、第2象限Q2の対応する位置に配置されたチャート要素12の色を赤色とし、第3象限Q3の対応する位置に配置されたチャート要素12の色を緑色とし、第4象限Q4の対応する位置に配置されたチャート要素12の色を青色としてもよい。
このとき、算出工程は、これらの対称チャート要素について光学系2のPSFを対称チャート要素の色ごとに算出する処理を含んでもよい。
【0099】
このような構成により、色ごとに異なるPSFの算出ができるようになる。また、算出工程において、算出部14は、例えば第2象限Q2のチャート要素12から取得された赤色に対するPSFを、第1象限Q1の対応する位置、第3象限Q3の対応する位置、および第4象限Q4の対応する位置における赤色に対するPSFとしてもよい。算出部14は、緑色、および青色などの他の色についても、同様の処理を行ってもよい。これにより、測定チャート10の回転対称性によって、撮像イメージの広い範囲において色ごとに異なるPSFが算出される。光学系2の光学特性は光の色によって異なりうるので、色ごとのPSFによってより精度のよい補正処理が行われるようになる。
【0100】
実施の形態2.
実施の形態2において、実施の形態1で開示される例と相違する点について特に詳しく説明する。実施の形態2で説明しない特徴については、実施の形態1で開示される例のいずれの特徴が採用されてもよい。
【0101】
図12は、実施の形態2に係る光学系2のLSFの例を示す図である。
【0102】
図12において、複数のガウス関数を用いたLSFの例が示される。この例において、算出部14は、次の式(12)のように複数のガウス関数を用いた関数としてタンジェンシャル方向のLSFを取り扱う。ここで、σ
t1およびσ
t3は、タンジェンシャル方向のt座標が正または0の領域において定義される2つのガウス関数の各々の幅を表す。また、σ
t2およびσ
t4は、タンジェンシャル方向のt座標が負の領域において定義される2つのガウス関数の各々の幅を表す。また、aは、各々の区分において定義される2つのガウス関数のピーク高さの比を表す。
【0103】
【0104】
算出工程において、算出部14は、幅σt1、幅σt2、幅σt3、幅σt4、および比aなどをパラメータとして決定することで、タンジェンシャル方向のLSFを算出する。算出部14は、サジタル方向についても同様に、複数のガウス関数を用いた関数としてLSFを算出する。あるいは、算出部14は、サジタル方向またはタンジェンシャル方向のいずれか一方について、実施の形態1において開示された例のようにLSFを算出してもよい。
【0105】
図12に示されるように、エッジプロファイルの微分値の裾がガウス関数の裾より重い場合であっても、複数のガウス関数を用いることでより精度よくLSFが算出される。このため、測定装置9は、より精度よくPSFを算出できる。
【0106】
なお、算出部14は、複数のガウス関数を用いた関数として、複数のガウス関数の線形和によってLSFを算出してもよい。また、算出部14は、ピーク位置の異なる複数のガウス関数の線形和などによって、非対称なLSFを表してもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 撮像装置、 2 光学系、 3 処理装置、 4 光学レンズ、 5 固体撮像素子、 6 光軸、 7 演算部、 8 記憶部、 9 測定装置、 10 測定チャート、 11 地、 12、12a、12b、12c チャート要素、 13 検出部、 14 算出部、 15 マーカ