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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055969
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】無機質板
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20220401BHJP
   B32B 13/14 20060101ALI20220401BHJP
   C04B 26/02 20060101ALI20220401BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20220401BHJP
   C04B 14/16 20060101ALI20220401BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
B28B1/30
B32B13/14
C04B26/02 Z
C04B24/26 F
C04B14/16
E04F13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163711
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 稔弘
(72)【発明者】
【氏名】馬越 英明
(72)【発明者】
【氏名】栗岡 正展
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩道
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
4G052
4G112
【Fターム(参考)】
2E110AA02
2E110AA46
2E110AA47
2E110EA09
2E110GA42W
2E110GA42X
2E110GB11W
2E110GB11X
2E110GB11Z
2E110GB12W
2E110GB12X
2E110GB12Z
2E110GB17W
2E110GB18W
2E110GB32W
2E110GB32X
2E110GB42W
2E110GB42X
2E110GB42Z
2E110GB44W
2E110GB44X
2E110GB49W
2E110GB49X
2E110GB49Z
2E110GB54W
2E110GB54X
2E110GB54Z
2E110GB62W
2E110GB62X
2E110GB62Z
4F100AA00A
4F100AA00B
4F100AA00C
4F100AE00A
4F100AG00A
4F100AH02A
4F100AK21A
4F100AK33A
4F100BA03
4F100BA06
4F100CA24A
4F100CA30A
4F100DC00B
4F100DG00C
4F100GB07
4F100JJ07
4F100JK01
4F100YY00A
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
4G112MD00
(57)【要約】
【課題】不燃性能の低下を抑制して、芯層の強度を向上させる。
【解決手段】板状に設けられ、軽量骨材、無機粉体、有機結合剤及び分散剤を含有する芯層1と、芯層1の表面に一体化して設けられ、無機繊維を含有する表層2と、芯層1の裏面に一体化して設けられ、無機繊維を含有する裏層3とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に設けられ、軽量骨材、無機粉体、有機結合剤及び分散剤を含有する芯層と、
上記芯層の表面に一体化して設けられ、無機繊維を含有する表層と、
上記芯層の裏面に一体化して設けられ、無機繊維を含有する裏層とを備えていることを特徴とする無機質板。
【請求項2】
請求項1に記載された無機質板において、
上記分散剤の含有量は、上記有機結合剤に対して10質量%以下であることを特徴とする無機質板。
【請求項3】
請求項1に記載された無機質板において、
上記分散剤の含有量は、上記有機結合剤に対して5質量%以上10質量%以下であることを特徴とする無機質板。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つに記載された無機質板において、
上記芯層における上記軽量骨材の含有量は、10質量%~70質量%であり、
上記芯層における上記無機粉体の含有量は、5質量%~50質量%であり、
上記芯層における上記有機結合剤の含有量は、3質量%~30質量%であることを特徴とする無機質板。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1つに記載された無機質板において、
上記分散剤は、ポリカルボン酸系分散剤であることを特徴とする無機質板。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1つに記載された無機質板において、
上記軽量骨材は、火山性ガラス質発泡体であることを特徴とする無機質板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、火山性ガラス質複層板と呼ばれる無機質板は、例えば、優れた防火性能を有し、高強度で軽量であるので、木造住宅用の耐力面材として広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、芯層と、芯層の表面に一体化された表層と、芯層の裏面に一体化された裏層とを備え、表層及び裏層が、長さ1mm以下の無機繊維、粒径500μm以下の軽量骨材、無機質粉状体及び結合剤を有し、芯層が、長さ3~15mmの無機繊維、軽量骨材、無機質粉状体及び結合剤を有する無機質板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-68567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、火山性ガラス質複層板では、上記特許文献1に開示された無機質板のように、裏層、芯層及び表層が順に積層されており、芯層の強度を向上させることにより、板全体の強度を向上させることが要望されている。ここで、芯層の強度を向上させるには、芯層に含まれる有機結合剤を増量させることが必要であるものの、有機結合剤を増量させると、不燃性能が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、不燃性能の低下を抑制して、芯層の強度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る無機質板は、板状に設けられて軽量骨材、無機粉体、有機結合剤及び分散剤を含有する芯層と、上記芯層の表面に一体化して設けられ、無機繊維を含有する表層と、上記芯層の裏面に一体化して設けられ、無機繊維を含有する裏層とを備えていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、表層及び裏層の間に設けられた芯層が、軽量骨材、無機粉体、有機結合剤及び分散剤を含んでいるので、芯層において、軽量骨材の各粒子の表面、及び無機粉体の各粒子の表面が分散剤によりコーティングされ、軽量骨材の粒子同士の凝集、無機粉体の粒子同士の凝集、及び軽量骨材の粒子と無機粉体の粒子との凝集を抑制することができる。そのため、芯層において、軽量骨材の粒子同士の凝集、無機粉体の粒子同士の凝集、及び軽量骨材の粒子と無機粉体の粒子との凝集が抑制された状態で各粒子の間に有機結合剤が介在することになる。これにより、芯層において、粒子の凝集体同士が有機結合剤により結合して形成される低強度の部分が少なくなるので、芯層の強度を向上させることができる。そして、芯層において、分散剤を添加することにより、有機結合剤を増量させることなく、芯層の強度を向上させることができるので、不燃性能の低下を抑制することができる。したがって、不燃性能の低下を抑制して、芯層の強度を向上させることができる。
【0009】
上記分散剤の含有量は、上記有機結合剤に対して10質量%以下であってもよい。
【0010】
上記の構成によれば、分散剤の含有量が有機結合剤に対して10質量%以下であるので、芯層に分散剤が含有しない場合に比べて、芯層の強度(曲げ強度)を具体的に1.1~1.4倍程度向上させることができる(図2参照)。
【0011】
上記分散剤の含有量は、上記有機結合剤に対して5質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0012】
上記の構成によれば、分散剤の含有量が有機結合剤に対して5質量%以上10質量%以下であるので、芯層に分散剤が含有しない場合に比べて、芯層の強度(曲げ強度)を具体的に1.2~1.4倍程度向上させることができる(図2参照)。
【0013】
上記芯層における上記軽量骨材の含有量は、10質量%~70質量%であり、上記芯層における上記無機粉体の含有量は、5質量%~50質量%であり、上記芯層における上記有機結合剤の含有量は、3質量%~30質量%であってもよい。
【0014】
上記の構成によれば、芯層において、10質量%~70質量%で含有する軽量骨材の各粒子の表面、及び5質量%~50質量%で含有する無機粉体の各粒子の表面が、3質量%~30質量%で含有する有機結合剤中の分散剤により具体的にコーティングされる。
【0015】
上記分散剤は、ポリカルボン酸系分散剤であってもよい。
【0016】
上記の構成によれば、分散剤がポリカルボン酸系分散剤であるので、ポリカルボン酸系分散剤のカルボキシル基を含む主鎖が、軽量骨材の各粒子の表面、及び無機粉体の各粒子の表面に吸着した状態で、ポリカルボン酸系分散剤の側鎖の立体的障害による反発力が生じることにより、軽量骨材の粒子同士の凝集、無機粉体の粒子同士の凝集、及び軽量骨材の粒子と無機粉体の粒子との凝集を具体的に抑制することができる。
【0017】
上記軽量骨材は、火山性ガラス質発泡体であってもよい。
【0018】
上記の構成によれば、軽量骨材が火山性ガラス質発泡体(シラス発泡体)であるので、優れた防火性能を有し、高強度で軽量の無機質板(火山性ガラス質複層板)を実現することができる。ここで、火山性ガラス質発泡体を用いた火山性ガラス質複層板と呼ばれる無機質板は、セメント系やケイ酸カルシウム系の無機質板と比べて、割れが生じ難く、熱による収縮が小さくなる。なお、セメント系やケイ酸カルシウム系の無機質板は、自由水や結合水を含んでいるので、火災時にそれらの自由水や結合水が蒸発することにより、急速に収縮して、割れが発生し易い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、芯層が、軽量骨材、無機粉体、有機結合剤及び分散剤を含んでいるので、不燃性能の低下を抑制して、芯層の強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係る無機質板の断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る無機質板を構成する芯層において、分散剤の含有量と相対強度との関係を示すグラフである。
図3】本発明の第1の実施形態に係る無機質板を構成する芯層において、密度と相対強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0022】
《第1の実施形態》
図1図3は、本発明に係る無機質板の第1の実施形態を示している。ここで、図1は、本実施形態の無機質板10の断面図である。
【0023】
無機質板10は、図1に示すように、厚さ1mm~9mm程度に板状に設けられた芯層1と、芯層1の表面に厚さ1mm~8mm程度に一体化して設けられた表層2と、芯層1の裏面に厚さ1mm~8mm程度に一体化して設けられた裏層3とを備えている。
【0024】
<芯層>
芯層1は、軽量骨材、無機粉体、有機結合剤及び分散剤を含有している。なお、芯層1には、機能性を有する材料(例えば、吸放湿性を付与するためのシリカゲルや珪藻土等、消臭剤、VOC(Volatile Organic Compounds)吸着剤等)のような補助添加剤が添加されていてもよい。
【0025】
軽量骨材は、芯層1の圧縮強度を確保しつつ、嵩を持たせるために添加されるものであり、例えば、粒径が2000μm以下程度のパーライト、シラス発泡体、シリカフラワー、ガラス発泡体等の火山性ガラス質発泡体である。なお、軽量骨材として例示した材料は、単独で用いてもよいが、複数を組み合わせて用いてもよい。ここで、芯層1における軽量骨材の含有量は、例えば、10質量%~70質量%程度である。
【0026】
無機粉体は、防火性及び硬度を確保するために添加されるものであり、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、フライアッシュ、マイクロシリカ、スラグ等である。なお、無機粉体として例示した材料は、単独で用いてもよいが、複数を組み合わせて用いてもよい。ここで、芯層1における無機粉体の含有量は、例えば、5質量%~50質量%程度である。
【0027】
有機結合剤は、上記軽量骨材及び無機粉体を結合するために添加されるものであり、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニールアルコール樹脂、澱粉等である。なお、有機結合剤として例示した材料は、単独で用いてもよいが、複数を組み合わせて用いてもよい。ここで、芯層1における有機結合剤の含有量は、例えば、3質量%~30質量%程度である。
【0028】
分散剤は、上記軽量骨材の粒子同士の凝集、無機粉体の粒子同士の凝集、及び軽量骨材の粒子と無機粉体の粒子との凝集を抑制するために添加されるものであり、例えば、ポリカルボン酸系分散剤等である。ここで、分散剤の含有量は、例えば、有機結合剤に対して、10質量%以下、好ましくは、5質量%以上10質量%以下程度である。
【0029】
<表層及び裏層>
表層2及び裏層3は、無機繊維、軽量骨材、無機粉体及び有機結合剤を含有している。なお、表層2及び裏層3には、必要に応じて、サイズ剤、カップリング剤等の補助添加剤が添加されていてもよい。
【0030】
無機繊維は、表層2(裏層3)のマットを形成し、粘りと強度とを持たせつつ、高い表面性を得るために添加されるものであり、例えば、繊維長さ1mm以下程度の粉砕されたロックウール、スラグウール、ガラス繊維等である。なお、無機粉体として例示した材料は、単独で用いてもよいが、複数を組み合わせて用いてもよい。ここで、表層2(裏層3)における無機繊維の含有量は、例えば、10質量%~70質量%程度である。
【0031】
軽量骨材は、表層2(裏層3)の圧縮強度を確保しつつ、嵩を持たせるために添加されるものであり、例えば、粒径が10μm~500μm程度のパーライト、シラス発泡体、シリカフラワー、ガラス発泡体等の火山性ガラス質発泡体である。なお、軽量骨材として例示した材料は、単独で用いてもよいが、複数を組み合わせて用いてもよい。ここで、表層2(裏層3)における軽量骨材の含有量は、例えば、10質量%~70質量%程度である。
【0032】
無機粉体は、表層2(裏層3)の防火性及び硬度を確保するために添加されるものであり、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、フライアッシュ、マイクロシリカ、スラグ等である。なお、無機粉体として例示した材料は、単独で用いてもよいが、複数を組み合わせて用いてもよい。ここで、表層2(裏層3)における無機粉体の含有量は、例えば、5質量%~50質量%程度である。
【0033】
有機結合剤は、上記無機繊維、軽量骨材及び無機粉体を結合するために添加されるものであり、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニールアルコール樹脂、澱粉等である。なお、有機結合剤として例示した材料は、単独で用いてもよいが、複数を組み合わせて用いてもよい。ここで、表層2(裏層3)における有機結合剤の含有量は、例えば、3質量%~30質量%程度である。
【0034】
上記構成の無機質板10は、優れた防火性能を有し、高強度で軽量であるので、木造住宅用の耐力面材として用いられる。
【0035】
次に、無機質板10を製造する方法について説明する。ここで、本実施形態の無機質板10の製造方法は、裏層マット形成工程、芯層マット形成工程、表層マット形成工程及び成形工程を備える。
【0036】
まず、上述した裏層3の構成材料、すなわち、無機繊維、軽量骨材、無機粉体及び有機結合剤をミキサーに投入し、水を噴霧しながら混合して、スラリーを形成した後に、その形成されたスラリーを長網式湿式抄造装置や丸網式湿式抄造機等により湿式抄造して裏層マットを形成する(裏層マット形成工程)。
【0037】
続いて、上述した芯層3の構成材料、すなわち、軽量骨材、無機粉体、有機結合剤及び予め分散剤を水に溶解した溶液をミキサーに投入し、水を噴霧しながら混合して、芯層用組成物を形成した後に、その形成された芯層用組成物を上記裏層マット形成工程で形成した裏層マット上に均一に散布して芯層マットを形成する(芯層マット形成工程)。
【0038】
さらに、上述した表層2の構成材料、すなわち、無機繊維、軽量骨材、無機粉体及び有機結合剤をミキサーに投入し、水を噴霧しながら混合して、スラリーを形成した後に、その形成されたスラリーを湿式抄造して表層マットを形成し、その形成された表層マットを上記芯層マット形成工程で形成された芯層マット上に積層する(表層マット形成工程)。
【0039】
最後に、上記裏層マット、芯層マット及び表層マットが順に積層された3層のマットを連続プレス装置や多段プレス装置等により所定の圧力及び温度(100~250℃)で熱圧プレスして一体に成形した後に、ドライヤーで乾燥する。
【0040】
以上のようにして、本実施形態の無機質板10を製造することができる。
【0041】
次に、本実施形態の無機質板10において、具体的に行った実験について説明する。ここで、図2は、無機質板10を構成する芯層1において、分散剤の含有量と相対強度との関係を示すグラフである。また、図3は、芯層1において、その密度と相対強度との関係を示すグラフである。
【0042】
概略的には、分散剤の含有量の異なる複数の芯層組成物(以下の実験例1~15)をそれぞれ形成し、その形成された各芯層組成物を板状に成形して、その成形された芯材(芯層1に相当)の曲げ試験を行って、各芯材を評価した。
【0043】
<実験例1>
まず、シラス発泡体50質量部、炭酸カルシウム20質量部、水酸化アルミニウム10質量部、澱粉、フェノール樹脂及びポリビニールアルコール樹脂の有機結合剤20質量部をミキサーで撹拌しながら、水(水道水又は工業用水)25質量部を加えることにより、芯層組成物を形成した。
【0044】
続いて、上記芯層組成物を枠型に投入し、予備成形した後に、平板プレス機により圧力0.1Pa~1.0Paで60秒間プレスして、厚さ4.5mm~5.5mmの成形体を形成した。
【0045】
さらに、成形体を180℃で30分間乾燥して、芯材を形成した。
【0046】
そして、芯材を長さ300mm×幅50mmに切断して複数の試験体を作製した後に、JIS A 1408に準じて、各試験体において、端部から10mmの位置における破壊荷重を測定して、曲げ強度を算出した。ここで、破壊荷重は、(株)島津製作所製のオートグラフAG-I(卓上)形を用いて、スパン150mmの対辺単純支持方式で測定した。
【0047】
<実験例2>
上記実験例1の芯層組成物における有機結合剤の総質量に対して0.6質量%のポリカルボン酸系分散剤を上記実験例1の芯層組成物に添加して、芯層組成物を形成した。この芯層組成物について、上記実験例1と同様に、芯材を形成し、曲げ強度を算出した。
【0048】
<実験例3>
上記実験例1の芯層組成物における有機結合剤の総質量に対して1.0質量%の上記ポリカルボン酸系分散剤を上記実験例1の芯層組成物に添加して、芯層組成物を形成した。この芯層組成物について、上記実験例1と同様に、芯材を形成し、曲げ強度を算出した。
【0049】
<実験例4>
上記実験例1の芯層組成物における有機結合剤の総質量に対して2.8質量%の上記ポリカルボン酸系分散剤を上記実験例1の芯層組成物に添加して、芯層組成物を形成した。この芯層組成物について、上記実験例1と同様に、芯材を形成し、曲げ強度を算出した。
【0050】
<実験例5>
上記実験例1の芯層組成物における有機結合剤の総質量に対して5.0質量%の上記ポリカルボン酸系分散剤を上記実験例1の芯層組成物に添加して、芯層組成物を形成した。この芯層組成物について、上記実験例1と同様に、芯材を形成し、曲げ強度を算出した。
【0051】
<実験例6>
上記実験例1の芯層組成物における有機結合剤の総質量に対して10.0質量%の上記ポリカルボン酸系分散剤を上記実験例1の芯層組成物に添加して、芯層組成物を形成した。この芯層組成物について、上記実験例1と同様に、芯材を形成し、曲げ強度を算出した。
【0052】
<実験例7>
上記実験例1の芯層組成物における有機結合剤の総質量に対して20.0質量%の上記ポリカルボン酸系分散剤を上記実験例1の芯層組成物に添加して、芯層組成物を形成した。この芯層組成物について、上記実験例1と同様に、芯材を形成し、曲げ強度を算出した。
【0053】
<実験例8>
上記実験例1の芯層組成物における有機結合剤の総質量に対して30.0質量%の上記ポリカルボン酸系分散剤を上記実験例1の芯層組成物に添加して、芯層組成物を形成した。この芯層組成物について、上記実験例1と同様に、芯材を形成し、曲げ強度を算出した。
【0054】
実験結果(実験例1~実験例8)としては、図2のグラフ中の黒丸印が示すように、分散剤を10質量%以下(好ましくは5質量%~10質量%)添加させることにより、相対強度が1.1~1.4倍程度向上することが分かった。なお、図2及び後述する図3の縦軸の相対強度は、分散剤を添加しない場合(実験例1、グラフ中の黒三角印)の曲げ強度の平均値を1としたときの相対強度を示す。ここで、図2中の近似曲線aは、相対強度を示す縦軸をyとすると共に、有機結合剤に対する分散剤の含有量を示す横軸をxとすると、y=-3×10-6+0.0003x-0.0066x+0.0627x+1.1779となり、y(相対強度)は、x=8(質量%)程度で最大となる。
【0055】
上記実験例2~8では、芯層組成物に分散剤を外掛けで添加して、有機結合剤及び分散剤を含む有機成分が20質量%を超える実験例を説明したが、下記実験例9~15では、芯層組成物に分散剤を内掛けで添加して、有機結合剤及び分散剤を含む有機成分が20質量%で一定の実験例を説明する。
【0056】
<実験例9>
上記シラス発泡体50質量部、上記炭酸カルシウム20質量部、上記水酸化アルミニウム10質量部、上記有機結合剤19.76質量部及び上記ポリカルボン酸系分散剤0.24質量部をミキサーで撹拌しながら、上記水25質量部を加えることにより、芯層組成物を形成した。この芯層組成物について、上記実験例1と同様に、芯材を形成し、曲げ強度を算出した。なお、この場合、有機結合剤の総質量に対する上記ポリカルボン酸系分散剤の含有量は、1.2質量%である。
【0057】
<実験例10>
上記シラス発泡体50質量部、上記炭酸カルシウム20質量部、上記水酸化アルミニウム10質量部、上記有機結合剤19.72質量部及び上記ポリカルボン酸系分散剤0.28質量部をミキサーで撹拌しながら、上記水25質量部を加えることにより、芯層組成物を形成した。この芯層組成物について、上記実験例1と同様に、芯材を形成し、曲げ強度を算出した。なお、この場合、有機結合剤の総質量に対する上記ポリカルボン酸系分散剤の含有量は、1.4質量%である。
【0058】
<実験例11>
上記シラス発泡体50質量部、上記炭酸カルシウム20質量部、上記水酸化アルミニウム10質量部、上記有機結合剤19.61質量部及び上記ポリカルボン酸系分散剤0.39質量部をミキサーで撹拌しながら、上記水25質量部を加えることにより、芯層組成物を形成した。この芯層組成物について、上記実験例1と同様に、芯材を形成し、曲げ強度を算出した。なお、この場合、有機結合剤の総質量に対する上記ポリカルボン酸系分散剤の含有量は、2.0質量%である。
【0059】
<実験例12>
上記シラス発泡体50質量部、上記炭酸カルシウム20質量部、上記水酸化アルミニウム10質量部、上記有機結合剤19.42質量部及び上記ポリカルボン酸系分散剤0.58質量部をミキサーで撹拌しながら、上記水25質量部を加えることにより、芯層組成物を形成した。この芯層組成物について、上記実験例1と同様に、芯材を形成し、曲げ強度を算出した。なお、この場合、有機結合剤の総質量に対する上記ポリカルボン酸系分散剤の含有量は、3.0質量%である。
【0060】
<実験例13>
上記シラス発泡体50質量部、上記炭酸カルシウム20質量部、上記水酸化アルミニウム10質量部、上記有機結合剤19.23質量部及び上記ポリカルボン酸系分散剤0.77質量部をミキサーで撹拌しながら、上記水25質量部を加えることにより、芯層組成物を形成した。この芯層組成物について、上記実験例1と同様に、芯材を形成し、曲げ強度を算出した。なお、この場合、有機結合剤の総質量に対する上記ポリカルボン酸系分散剤の含有量は、4.0質量%である。
【0061】
<実験例14>
上記シラス発泡体50質量部、上記炭酸カルシウム20質量部、上記水酸化アルミニウム10質量部、上記有機結合剤19.05質量部及び上記ポリカルボン酸系分散剤0.95質量部をミキサーで撹拌しながら、上記水25質量部を加えることにより、芯層組成物を形成した。この芯層組成物について、上記実験例1と同様に、芯材を形成し、曲げ強度を算出した。なお、この場合、有機結合剤の総質量に対する上記ポリカルボン酸系分散剤の含有量は、5.0質量%である。
【0062】
<実験例15>
上記シラス発泡体50質量部、上記炭酸カルシウム20質量部、上記水酸化アルミニウム10質量部、上記有機結合剤18.18質量部及び上記ポリカルボン酸系分散剤1.82質量部をミキサーで撹拌しながら、上記水25質量部を加えることにより、芯層組成物を形成した。この芯層組成物について、上記実験例1と同様に、芯材を形成し、曲げ強度を算出した。なお、この場合、有機結合剤の総質量に対する上記ポリカルボン酸系分散剤の含有量は、10.0質量%である。
【0063】
実験結果(実験例1、9~15)としては、図2のグラフ中の白丸印が示すように、分散剤を10質量%以下(好ましくは5質量%~10質量%)添加させることにより、相対強度が1.1~1.35倍程度向上することが分かった。ここで、図2中の近似曲線bは、相対強度を示す縦軸をyとすると共に、有機結合剤に対する分散剤の含有量を示す横軸をxとすると、y=-0.0023x+0.0345x+1.1707となり、y(相対強度)は、x=8(質量%)程度で最大となる。
【0064】
また、実験例1~実験例15の実験結果において、芯層の密度と相対強度との関係に着目すると、図3のグラフに示すように、芯層の密度の大きさに影響することなく、分散剤を添加する場合(グラフ中の黒丸印(実験例2~8)及び白丸印(実験例9~15))には、分散剤を添加しない場合(グラフ中の黒三角印(実験例1))に比べて、相対強度が高くなることが分かった。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の無機質板10によれば、表層2及び裏層3の間に設けられた芯層1が、軽量骨材、無機粉体、有機結合剤及び分散剤を含んでいるので、芯層1において、軽量骨材の各粒子の表面、及び無機粉体の各粒子の表面が分散剤によりコーティングされ、軽量骨材の粒子同士の凝集、無機粉体の粒子同士の凝集、及び軽量骨材の粒子と無機粉体の粒子との凝集を抑制することができる。そのため、芯層1において、軽量骨材の粒子同士の凝集、無機粉体の粒子同士の凝集、及び軽量骨材の粒子と無機粉体の粒子との凝集が抑制された状態で各粒子の間に有機結合剤が介在することになる。これにより、芯層1において、粒子の凝集体同士が有機結合剤により結合して形成される低強度の部分が少なくなるので、芯層1の強度を向上させることができる。そして、芯層1において、少量の分散剤を添加することにより、有機結合剤を増量させることなく、芯層1の強度を向上させることができるので、不燃性能の低下を抑制することができる。したがって、不燃性能の低下を抑制して、芯層1の強度を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態の無機質板10によれば、分散剤の含有量が有機結合剤に対して10質量%以下である場合には、芯層1に分散剤が含有しない場合に比べて、芯層1の強度(曲げ強度)を1.1~1.4倍程度向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態の無機質板10によれば、分散剤の含有量が有機結合剤に対して5質量%以上10質量%以下である場合には、芯層1に分散剤が含有しない場合に比べて、芯層の強度(曲げ強度)を具体的に1.2~1.4倍程度向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態の無機質板10によれば、分散剤がポリカルボン酸系分散剤であるので、ポリカルボン酸系分散剤のカルボキシル基を含む主鎖が、軽量骨材の各粒子の表面、及び無機粉体の各粒子の表面に吸着した状態で、ポリカルボン酸系分散剤の側鎖の立体的障害による反発力が生じることにより、軽量骨材の粒子同士の凝集、無機粉体の粒子同士の凝集、及び軽量骨材の粒子と無機粉体の粒子との凝集を抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態の無機質板10によれば、軽量骨材が火山性ガラス質発泡体(シラス発泡体)であるので、優れた防火性能を有し、高強度で軽量の無機質板10を実現することができる。
【0070】
《その他の実施形態》
上記第1の実施形態では、無機質板として、表層、芯層及び裏層が一体化された火山性ガラス質複層板を例示したが、本発明は、表層及び裏層が省略された芯層だけからなる無機質板等にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明は、不燃性能の低下を抑制して、芯層の強度を向上させることができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 芯層
2 表層
3 裏層
10 無機質板
図1
図2
図3