(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055980
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】ガスケット部材の製造方法とガスケット部材
(51)【国際特許分類】
B29C 45/34 20060101AFI20220401BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20220401BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
B29C45/34
B29C45/14
B29C45/27
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163727
(22)【出願日】2020-09-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】門野 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 真一
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AA46
4F202AA46A
4F202AD03
4F202AE10
4F202AG01
4F202AG03
4F202AH81
4F202AR12
4F202AR17
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CP01
4F202CP05
4F206AA46
4F206AA46A
4F206AD03
4F206AE10
4F206AG01
4F206AG03
4F206AH81
4F206AR12
4F206AR17
4F206JA07
4F206JB12
4F206JL02
4F206JQ04
4F206JQ81
4F206JW23
(57)【要約】
【課題】ガスケットの成形時に成形不良や損傷等を防ぐことができる、新規なガスケット部材の製造方法とガスケット部材を提供すること。
【解決手段】第1割型32と第2割型34の間に板状の基材12を型締めして、基材12と第1割型32の間に画成されたガスケット14のキャビティ38へゴム状弾性材料を注入充填することにより、基材12の表面16にガスケット14が固着されたガスケット部材10を製造するガスケット部材10の製造方法であって、基材12と第1割型32との衝合面上でキャビティ38から内周側又は外周側へ延び出してキャビティ38の周方向で部分的に開口して設けられた排気溝部52と、第1割型32と第2割型34の型締め方向へ排気溝部52から延び出す排気孔部56とを有するエアベント50が設けられており、キャビティ38へのゴム状弾性材料の注入充填に際して、エアベント50を通じてキャビティ38内の空気を排出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1割型と第2割型の間に板状の基材を型締めして、該基材と該第1割型の間に画成されたガスケットのキャビティへゴム状弾性材料を注入充填することにより、該基材の表面に該ガスケットが固着されたガスケット部材を製造するガスケット部材の製造方法であって、
前記基材と前記第1割型との衝合面上で前記キャビティから内周側又は外周側へ延び出して該キャビティの周方向で部分的に開口して設けられた排気溝部と、該第1割型と前記第2割型の型締め方向へ該排気溝部から延び出す排気孔部とを有するエアベントが設けられており、
該キャビティへの該ゴム状弾性材料の注入充填に際して、該エアベントを通じて該キャビティ内の気体を排出するガスケット部材の製造方法。
【請求項2】
前記排気溝部によって構成された第1絞り口と、前記排気孔部における該排気溝部側の端部に設けられた第2絞り口とによって、前記ゴム状弾性材料の前記キャビティへの充填圧力を制御する請求項1に記載のガスケット部材の製造方法。
【請求項3】
前記排気溝部の前記キャビティへの開口部の幅寸法が前記排気孔部の孔径よりも大きくされている請求項1又は2に記載のガスケット部材の製造方法。
【請求項4】
前記排気孔部の前記排気溝部への開口面積が、該排気溝部の前記キャビティへの開口面積よりも小さくされている請求項1~3の何れか一項に記載のガスケット部材の製造方法。
【請求項5】
前記第1割型と前記第2割型の脱型に際して、前記ゴム状弾性材料において前記排気孔部によって成形された部分を、前記排気溝部によって成形された部分から引き切って除去する請求項1~4の何れか一項に記載のガスケット部材の製造方法。
【請求項6】
前記キャビティへ注入される際の前記ゴム状弾性材料のムーニー粘度が10~80ML(1+3)100℃とされている請求項1~5の何れか一項に記載のガスケット部材の製造方法。
【請求項7】
前記ガスケットの形成材料である前記ゴム状弾性材料が、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-ブテン-ジエンゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つとされている請求項6に記載のガスケット部材の製造方法。
【請求項8】
前記基材が金属製とされている請求項1~7の何れか一項に記載のガスケット部材の製造方法。
【請求項9】
前記エアベントと前記ゴム状弾性材料を前記キャビティへ注入する注入ゲートとが各複数設けられており、
該エアベントと該注入ゲートが該キャビティの周方向で交互に配されている請求項1~8の何れか一項に記載のガスケット部材の製造方法。
【請求項10】
前記エアベントが前記排気溝部と前記排気孔部をつなぐ接続孔部を備えており、
該接続孔部は該排気溝部への接続面積が該排気孔部への接続面積よりも大きくされている請求項1~9の何れか一項に記載のガスケット部材の製造方法。
【請求項11】
板状の基材と、ゴム状弾性材料によって形成されて該基材の表面に一体的に固着される環状のガスケットとを、備えるガスケット部材であって、
前記基材の面上で前記ガスケットから内周側又は外周側へ延び出すオーバーフロータブ部が、該ガスケットと一体形成されて、該ガスケットの周方向で部分的に設けられており、
更に該オーバーフロータブ部には、エアベント用の排気孔部の除去跡があるガスケット部材。
【請求項12】
前記ガスケットは、前記基材から離れるにしたがって幅狭となる山形断面形状で周方向に延びている請求項11に記載のガスケット部材。
【請求項13】
前記基材の前記ガスケットの固着領域には凹所が設けられており、前記オーバーフロータブ部が該凹所の底内面に固着されて該凹所に収容されている請求項11又は12に記載のガスケット部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池などに用いられるガスケット部材の製造方法と、ガスケット部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、化石燃料に代わるエネルギーとして、電気が注目されている。例えば、電気を自動車のエネルギーとして使う場合には、電気を充電池に蓄えて使用する他、燃料電池によって電気を生成して使用することも提案されている。燃料電池は、電解質膜の両面に一対の電極層を設けた発電体を一対のセパレータの間に挟んだ燃料電池セルを備えている。そして、複数の燃料電池セルを積層したスタック構造によって、必要な電力が発揮されるようになっている。
【0003】
ところで、燃料電池セルは、セパレータの発電体への重ね合わせ面に形成された酸化ガス流路と燃料ガス流路によって、発電体に酸化ガスと燃料ガスを供給して、水の電気分解の逆反応である電気化学反応(水の生成反応)によって、電力を発生する。それゆえ、燃料電池セルには、酸化ガス、燃料ガス、水などの漏れを防止するためのガスケット部材が設けられる。ガスケット部材は、例えば、特開2008-168448号公報(特許文献1)に示されたシール部品のように、基材の表面にゴム状弾性材料で形成された環状のガスケットが一体的に固着された構造を有している。
【0004】
特許文献1のシール部品は、特許文献1の
図3に示されているように、ゴム状弾性材料をキャビティへ注入する注入ゲートと、キャビティから気体を排出するエアベント孔とが、ガスケットの一部であるベース部のキャビティに接続されて、ガスケットの突出先端側へ延びている。そして、ゴム状弾性材料を注入ゲートからガスケットのキャビティへ直接注入し、ガスケットのキャビティからエアベント孔へ気体を直接排出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者が検討したところ、エアベント孔がガスケットの成形キャビティから先端側へ延びるように設けられていると、エアベント孔に入ったゴム状弾性材料がガスケットに直接的につながって成形されて、ガスケットの先端側へ突出することから、当該部分をガスケットから取り除く必要が生じる。しかしながら、ガスケットの成形完了後の成形用金型の取外し(脱型)において、当該部分をガスケットから引き切って取り除くなどの簡便な方法では、ガスケットが損傷するなど、シール性能に影響するおそれがあった。
【0007】
本発明の解決課題は、ガスケットの成形時に成形不良や損傷等を防ぐことができる、新規なガスケット部材の製造方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明は、所定のガスケットによって安定したシール性能を発揮する、新規な構造のガスケット部材を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0010】
第一の態様は、第1割型と第2割型の間に板状の基材を型締めして、該基材と該第1割型の間に画成されたガスケットのキャビティへゴム状弾性材料を注入充填することにより、該基材の表面に該ガスケットが固着されたガスケット部材を製造するガスケット部材の製造方法であって、前記基材と前記第1割型との衝合面上で前記キャビティから内周側又は外周側へ延び出して該キャビティの周方向で部分的に開口して設けられた排気溝部と、該第1割型と前記第2割型の型締め方向へ該排気溝部から延び出す排気孔部とを有するエアベントが設けられており、該キャビティへの該ゴム状弾性材料の注入充填に際して、該エアベントを通じて該キャビティ内の気体を排出するものである。
【0011】
本態様に従うガスケット部材の製造方法によれば、エアベントを通じてキャビティ内の空気やゴム状弾性材料から生じる揮発ガス等の気体を排出することにより、キャビティの全体にゴム状弾性材料を充填することができて、気体のキャビティ内への残留による成形不良を回避することができる。
【0012】
ガスケットのキャビティに接続される排気溝部が基材と第1割型の衝合面上で延びていることから、排気溝部によって成形されるオーバーフロータブ部は、キャビティによって成形されるガスケットの突出先端側に位置することがなく、ガスケットの突き当てによって発揮されるシール性能を阻害しない。それゆえ、オーバーフロータブ部をガスケットから取り除く必要がなく、取り除く場合にもガスケットの損傷や特性への影響が抑えられる。
【0013】
第1割型と第2割型の型締め方向に延びる排気孔部は、キャビティから離れた位置で排気溝部に接続されている。それゆえ、排気孔部によって成形される排気孔成形部を排気溝部によって成形されるオーバーフロータブ部から取り除いたとしても、ガスケットの損傷や特性への影響を防ぐことができる。
【0014】
第二の態様は、第一の態様に記載されたガスケット部材の製造方法であって、前記排気溝部によって構成された第1絞り口と、前記排気孔部における該排気溝部側の端部に設けられた第2絞り口とによって、前記ゴム状弾性材料の前記キャビティへの充填圧力を制御するものである。
【0015】
本態様に従うガスケット部材の製造方法によれば、第1絞り口と第2絞り口によってキャビティに対するゴム状弾性材料の充填圧力を制御することにより、キャビティの全体へゴム状弾性材料を行き渡らせて、ガスケットの成形不良を防ぐことができる。
【0016】
また、第1割型と第2割型による型締めによって基材がキャビティへ向けて凸となるように湾曲変形したとしても、キャビティに対してゴム状弾性材料を高い圧力で充填することによって、型締めによる基材の変形を解消することができる。
【0017】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載されたガスケット部材の製造方法であって、前記排気溝部の前記キャビティへの開口部の幅寸法が前記排気孔部の孔径よりも大きくされているものである。
【0018】
本態様に従うガスケット部材の製造方法によれば、キャビティにゴム状弾性材料が充填される際に、キャビティ内の気体が幅の広い開口部を備える排気溝部を通じて排気孔部へ導かれることから、効率的な排気が実現される。即ち、ゴム状弾性材料は、排気孔部の開口部分への充填が最後になるように、排気溝部へ向けて周方向の両側から注入される。しかしながら、排気孔部に向けて周方向の両側から注入されたゴム状弾性材料の合流位置は、キャビティの周方向においてばらつく場合がある。そこで、排気孔部の孔径よりも幅広の開口部によってキャビティへ開放される排気溝部がキャビティと排気孔部を連通するように設けられている。これにより、ゴム状弾性材料の合流位置が排気溝部の開口部の範囲内に収まりやすくなって、キャビティ内の気体が排気溝部及び排気孔部を通じて効率的に排出される。
【0019】
第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載されたガスケット部材の製造方法であって、前記排気孔部の前記排気溝部への開口面積が、該排気溝部の前記キャビティへの開口面積よりも小さくされているものである。
【0020】
本態様に従うガスケット部材の製造方法によれば、例えば、キャビティに対するゴム状弾性材料の充填圧力を、排気溝部と排気孔部によって段階的に制御することができる。
【0021】
第五の態様は、第一~第四の何れか1つの態様に記載されたガスケット部材の製造方法であって、前記第1割型と前記第2割型の脱型に際して、前記ゴム状弾性材料において前記排気孔部によって成形された部分を、前記排気溝部によって成形された部分から引き切って除去するものである。
【0022】
本態様に従うガスケット部材の製造方法によれば、ガスケット成形後の第1割型と第2割型の脱型時に、ガスケットの突出方向に延び出す排気孔部による成形部分(排気孔成形部)を除去することができ、排気孔成形部を切除するなどの工程が不要になる。しかも、排気孔成形部は、排気溝部による成形部分(オーバーフロータブ部)につながっていることから、引き切る際にガスケットが損傷するおそれもない。仮にオーバーフロータブ部が引き切りによって損傷したとしても、オーバーフロータブ部はガスケットの特性に寄与する部分ではないことから、ガスケットによって目的とするシール性能が実現される。
【0023】
第六の態様は、第一~第五の何れか1つの態様に記載されたガスケット部材の製造方法であって、前記キャビティへ注入される際の前記ゴム状弾性材料のムーニー粘度が10~80ML(1+3)100℃とされているものである。
【0024】
本態様に従うガスケット部材の製造方法によれば、キャビティに充填されるゴム状弾性材料の粘性が、シリコーンゴムなどに比して大きくされていることにより、キャビティへの充填圧力を狭窄された排気溝部及び排気孔部によって有効に制御することができる。
【0025】
第七の態様は、第六の態様に記載されたガスケット部材の製造方法であって、前記ガスケットの形成材料である前記ゴム状弾性材料が、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-ブテン-ジエンゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つとされているものである。
【0026】
本態様に従うガスケット部材の製造方法によれば、成形前の粘性がシリコーンゴム等よりも高いエチレン-ブテン-ジエンゴム等を採用することにより、ゴム状弾性材料が狭窄されたエアベントへ入り難く、ゴム状弾性材料がキャビティへ優先的に充填されることから、ガスケットの成形不良が回避される。また、ゴム状弾性材料のキャビティへの充填圧力を、エアベントを構成する排気溝部及び排気孔部によって有効に制御することができる。
【0027】
第八の態様は、第一~第七の何れか1つの態様に記載されたガスケット部材の製造方法であって、前記基材が金属製とされているものである。
【0028】
本態様に従うガスケット部材の製造方法によれば、合成樹脂フィルムなどの変形し易い基材を用いる場合に比して、基材の変形剛性(板厚方向の曲げ剛性)を大きく得ることができる。それゆえ、基材を第1割型と第2割型の間にセットする際に、型締め力による基材の曲がりが防止されて、ガスケットを精度よく成形することができる。
【0029】
基材を第1割型と第2割型の間にセットする際に、より強い型締め力で基材を締め込むことが可能となって、基材と第1割型の間へゴム状弾性材料が入り込むことによるバリの発生を抑制することができる。
【0030】
第九の態様は、第一~第八の何れか1つの態様に記載されたガスケット部材の製造方法であって、前記エアベントと前記ゴム状弾性材料を前記キャビティへ注入する注入ゲートとが各複数設けられており、該エアベントと該注入ゲートが該キャビティの周方向で交互に配されているものである。
【0031】
本態様に従うガスケット部材の製造方法によれば、各注入ゲートからキャビティへ注入されたゴム状弾性材料がキャビティの周方向に流れる際に、ゴム状弾性材料の合流部分にエアベントが配されて、キャビティ内に気体が残留し難い。
【0032】
第十の態様は、第一~第九の何れか1つの態様に記載されたガスケット部材の製造方法であって、前記エアベントが前記排気溝部と前記排気孔部をつなぐ接続孔部を備えており、該接続孔部は該排気溝部への接続面積が該排気孔部への接続面積よりも大きくされているものである。
【0033】
本態様に従うガスケット部材の製造方法によれば、ゴム状弾性材料の成形体において、接続孔部による成形部分は、排気溝部による成形部分への接続面積が、排気孔部による成形部分への接続面積よりも大きくされる。これにより、排気孔部による成形部分を引き切る等してガスケット側から取り除く際に、排気孔部による成形部分と接続孔部による成形部分との接続部分(境界部分)においてゴム状弾性材料の成形体が切断され易く、成形体の切断箇所がガスケットからより離れた位置に設定される。それゆえ、仮にガスケットを含むゴム状弾性材料の成形体が意図しない形状で切断されたとしても、切断の影響がガスケットまで及ぶのをより効果的に防ぐことができる。
【0034】
第十一の態様は、板状の基材と、ゴム状弾性材料によって形成されて該基材の表面に一体的に固着される環状のガスケットとを、備えるガスケット部材であって、前記基材の面上で前記ガスケットから内周側又は外周側へ延び出すオーバーフロータブ部が、該ガスケットと一体形成されて、該ガスケットの周方向で部分的に設けられており、更に該オーバーフロータブ部には、エアベント用の排気孔部の除去跡があるものである。
【0035】
本態様に従う構造とされたガスケット部材によれば、排気孔部によって成形される部分が、ガスケットと一体形成されたオーバーフロータブ部から切り離されることから、排気孔部による成形部分の切除がガスケットに影響し難い。
【0036】
第十二の態様は、第十一の態様に記載されたガスケット部材において、前記ガスケットは、前記基材から離れるにしたがって幅狭となる山形断面形状で周方向に延びているものである。
【0037】
本態様に従う構造とされたガスケット部材によれば、ガスケットが他部材(シール対象部材)に当接する際に、当接するガスケットの先端部分が幅狭とされていることにより、大きな圧力で当接して、優れたシール性能が発揮される。
【0038】
第十三の態様は、第十一又は第十二の態様に記載されたガスケット部材において、前記基材の前記ガスケットの固着領域には凹所が設けられており、前記オーバーフロータブ部が該凹所の底内面に固着されて該凹所に収容されているものである。
【0039】
本態様に従う構造とされたガスケット部材によれば、オーバーフロータブ部が除去されることなくガスケットにつながって残っていても、オーバーフロータブ部が凹所に収容されることで、オーバーフロータブ部が基材と基材に重ね合わされる他部材(シール対象部材)との間に挟み込まれるのを防ぐことができる。それゆえ、オーバーフロータブ部の挟み込みによって基材に対して集中的に応力が作用するのを防ぐことができる。また、基材と他部材を重ね合わせる際に、重ね合わせ方向における寸法のばらつきが回避される。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、ガスケットの成形時に成形不良や損傷等を防ぐことができ、目的とするガスケットのシール性能を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の第一の実施形態としてのガスケット部材を示す平面図
【
図4】
図1のガスケット部材の製造工程における型締め工程を示す断面図であって、
図5のIV-IV断面に相当する図
【
図6】
図1に示すガスケット部材のガスケットを成形する第1割型の底面図
【
図7】
図1のガスケット部材の製造工程におけるガスケットの成形工程を示す断面図
【
図8】
図1のガスケット部材の製造工程における脱型工程を示す断面図
【
図9】本発明の第二の実施形態としてのガスケット部材の製造方法におけるガスケットの成形工程を示す断面図
【
図10】本発明の第三の実施形態としてのガスケット部材の製造方法におけるガスケットの成形工程を示す断面図
【
図11】本発明の第四の実施形態としてのガスケット部材の製造方法におけるガスケットの成形工程を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0043】
図1~
図3には、第一の実施形態としてのガスケット部材10が示されている。ガスケット部材10は、例えば燃料電池スタックにおける燃料電池セルの封止構造として用いられるものであって、基材としてのセパレータ12と、セパレータ12に一体的に固着されるガスケット14とを、備えている。以下の説明において、上下方向とは、原則として、セパレータ12の厚さ方向である
図2中の上下方向を言う。
【0044】
セパレータ12は、板状の部材とされている。セパレータ12は、好適には金属製とされており、例えば、アルミニウム合金等によって形成されている。セパレータ12は、本実施形態では略矩形板状とされているが、外形を限定されるものではない。セパレータ12の表面である上面16には、凹所18が開口している。凹所18は、セパレータ12の外周端部と中央部を除く部分に設けられて、周方向に連続する環状とされている。凹所18の深さ寸法は、ガスケット14の突出高さ寸法よりも小さく、且つ後述する排気タブ部24の厚さ寸法以上とされていることが望ましい。セパレータ12は、凹所18の形成部分と凹所18を外れた部分が略同じ厚さとされているが、例えば、凹所18の形成によって凹所18の形成部分が他の部分よりも薄肉とされていてもよい。セパレータ12の中央部分には、酸化ガス、燃料ガス、水等が流れる図示しない多数の溝が形成されているが、見易さのために図中では省略した。また、セパレータ12には、酸化ガス、燃料ガス、水等を厚さ方向に流すための貫通孔が形成されていてもよい。
【0045】
ガスケット14は、ゴムや樹脂エラストマ等のゴム状弾性材料によって形成されている。ガスケット14の形成材料は、ゴム状弾性材料であれば特に限定されない。例えば、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-ブテン-ジエンゴム等が採用され得る。ガスケット14の形成材料は、好適には、成形前の流動状態の粘度がムーニー粘度が10~80ML(1+3)100℃とされている。ガスケット14の形成材料は、成形前の流動状態において、シリコーンゴムよりも粘度が高くされて流動性が低いことが望ましい。
【0046】
ガスケット14は、環状とされており、セパレータ12の外周部分に全周にわたって連続して設けられている。ガスケット14は、
図2,
図3に示すように、セパレータ12の上面16に突出しており、セパレータ12から離れる上側へ行くにしたがって幅狭となる山形断面形状を有している。換言すれば、ガスケット14は、
図2,
図3に示す周方向と直交する断面において、略二等辺三角形となる断面形状を有している。ガスケット14の上側の頂点の表面である上端面は、周方向と直交する断面において略円弧状となる湾曲面とされている。
【0047】
ガスケット14には、注入タブ部20が一体形成されている。注入タブ部20は、環状とされたガスケット14の周方向に部分的に設けられており、ガスケット14の下端部から内周側又は外周側へ延び出している。本実施形態の注入タブ部20は、上下方向視において略円形乃至は略小鉤形状とされているが、注入タブ部20の上下方向視の形状は特に限定されない。注入タブ部20は、好適には、ガスケット14の周方向の複数箇所に設けられており、本実施形態では3箇所に設けられている。注入タブ部20は、略板状とされており、ガスケット14よりも上下方向の厚さ寸法が小さくされている。注入タブ部20の厚さ寸法は、好適にはガスケット14の高さ寸法の半分以下、より好適には1/3以下とされる。
【0048】
注入タブ部20には、注入孔部除去跡22が設けられている。注入孔部除去跡22は、後述するガスケット14の成形において、第1割型32に形成された注入孔部44内で成形される注入孔成形部64が注入タブ部20から引き切られた痕跡である。従って、複数の注入タブ部20に設けられる注入孔部除去跡22は、必ずしも一定の態様にはならず、例えば、注入タブ部20の上面に突出する凸部、注入タブ部20の上面に開口する凹部、注入タブ部20の上面における他の部分とは異なる質感などによって特定される。注入孔部除去跡22は、後述する注入孔部44が円形断面であることから、上面視において略円形とされている。
【0049】
ガスケット14には、オーバーフロータブ部としての排気タブ部24が一体形成されている。排気タブ部24は、環状とされたガスケット14の周方向に部分的に設けられており、ガスケット14の下端部から内周側又は外周側へ延び出している。本実施形態の排気タブ部24は、上下方向視において略円形乃至は略小鉤形とされているが、排気タブ部24の上下方向視の形状は特に限定されない。排気タブ部24は、好適には、ガスケット14の周方向の複数箇所に設けられている。排気タブ部24は、略板状とされており、ガスケット14よりも上下方向の厚さ寸法が小さくされている。排気タブ部24の厚さ寸法は、好適にはガスケット14の高さ寸法の半分以下、より好適には1/3以下とされる。
【0050】
排気タブ部24には、後述する排気孔部56の除去跡である排気孔部除去跡26が設けられている。排気孔部除去跡26は、後述するガスケット14の成形において、第1割型32に形成された排気孔部56内で成形される排気孔成形部66が排気タブ部24から引き切られて除去された痕跡である。従って、複数の排気タブ部24に設けられる排気孔部除去跡26は、必ずしも一定の態様にはならず、例えば、排気タブ部24の上面に突出する凸部、排気タブ部24の上面に開口する凹部、排気タブ部24の上面における他の部分とは異なる質感などによって特定される。排気孔部除去跡26は、後述する排気孔部56が円形断面であることから、上面視において略円形とされている。排気孔部除去跡26は、排気タブ部24においてガスケット14から離れた位置に設けられている。
【0051】
注入タブ部20と排気タブ部24は、ガスケット14の周方向において交互に配されている。従って、注入タブ部20に設けられる注入孔部除去跡22と、排気タブ部24に設けられる排気孔部除去跡26は、ガスケット14の周方向において交互に配されている。排気タブ部24は、好適には、周方向で隣り合う両側の注入タブ部20,20からの距離が略等しくなるように、それら注入タブ部20,20間の略中央に配される。
【0052】
ガスケット14と注入タブ部20と排気タブ部24は、何れもセパレータ12の凹所18の底内面に固着されている。凹所18の深さ寸法がガスケット14の突出高さ寸法よりも小さいことから、ガスケット14は突出先端部分においてセパレータ12の開口よりも上側へ突出している。凹所18の深さ寸法が注入タブ部20と排気タブ部24の厚さ寸法以上とされていることから、注入タブ部20と排気タブ部24は、凹所18の開口より上側へ突出することなく、凹所18内に収容されている。好適には、注入タブ部20に設けられた注入孔部除去跡22と排気タブ部24に設けられた排気孔部除去跡26も、凹所18内に収容される。
【0053】
凹所18は、幅寸法が、全周にわたって一定とされて、ガスケット14から内周側又は外周側へ突出する注入タブ部20及び排気タブ部24を収容可能な大きさとされていてもよい。また、凹所18は、注入タブ部20及び排気タブ部24の形成部分において、幅寸法が部分的に大きくされることによって、注入タブ部20及び排気タブ部24を収容可能とされていてもよい。
【0054】
このような構造とされたガスケット部材10は、
図2,
図3に2点鎖線で仮想的に示したシール対象部材28に対して重ね合わされて使用される。シール対象部材28は、本実施形態では別のセパレータとされており、セパレータ12と略面対称形状とされている。尤も、シール対象部材は、セパレータに限定されず、例えば電解質膜の両面に電極層を設けた膜-電極複合体(Membrane Electrode Assembly(MEA))などであってもよい。
【0055】
シール対象部材28は、ガスケット14の突出先端側から基材としてのセパレータ12に重ね合わされている。シール対象部材28は、セパレータ12と略面対称であることから、注入タブ部20と排気タブ部24が設けられる部分に、セパレータ12に向けて開口する凹所30が形成されている。それゆえ、注入タブ部20、排気タブ部24、注入孔部除去跡22、排気孔部除去跡26がセパレータ12の凹所18の開口よりも上側へ突出していたとしても、シール対象部材28の凹所30に収容されて、セパレータ12とシール対象部材28の間に挟み込まれることがない。これにより、注入タブ部20や排気タブ部24の挟み込みによるセパレータ12及びシール対象部材28に対する応力集中の発生が回避される。また、注入タブ部20や排気タブ部24の挟み込みによってセパレータ12とシール対象部材28の積層方向において寸法にばらつきが生じるのを防ぐことができる。
【0056】
シール対象部材28がセパレータ12に重ね合わされた状態において、ガスケット14は、シール対象部材28の凹所30の底内面に押し当てられる。そして、セパレータ12とシール対象部材28の重ね合わせ面間が、ガスケット14によって流体密に封止される。これにより、セパレータ12とシール対象部材28の重ね合わせ面間は、ガスケット14よりも内周側が外周側に対して流体密に隔てられている。なお、ガスケット14は、先端に向けて幅狭となる山形断面とされていることから、ガスケット14のシール対象部材28への当接圧を大きく得ることができて、ガスケット14のシール対象部材28への当接によるシール性能の向上が図られている。
【0057】
本実施形態のガスケット部材10は、セパレータ12の上面16にガスケット14を成形し、ガスケット14を成形時にセパレータ12に固着することにより形成される。以下において、セパレータ12にガスケット14を成形してガスケット部材10を得る工程について、
図4~
図8を参照しつつ説明する。
【0058】
まず、ガスケット14の成形用金型である第1割型32と第2割型34を準備する。第1割型32は、
図4~
図6に示すように、ガスケット14に対応する形状の周溝36が下面に開口して設けられている。第2割型34は、セパレータ12の下面を支持可能な上面を備えている。
【0059】
また、ガスケット部材10を構成するセパレータ12を予め準備する。セパレータ12は、例えば、金属素板に溝などを適宜にプレス加工で形成することにより得ることができる。
【0060】
次に、第1割型32と第2割型34の間にセパレータ12をセットする。即ち、
図4,
図5に示すように、セパレータ12を第2割型34の上面に載せた状態で、第1割型32をセパレータ12及び第2割型34に対して上方から重ね合わせて、第1割型32と第2割型34を型締めする。第1割型32と第2割型34の型締めによって、セパレータ12は、第1割型32と第2割型34の間で挟持される。特に、第1割型32の下面における周溝36の内周側及び外周側がセパレータ12の上面16に対して押し当てられて密着する。なお、第1割型32と第2割型34の型締めは、図中では省略したが、直圧方式やトグル方式といった従来の型締め機構によって実現され得る。
【0061】
第1割型32の下面とセパレータ12の上面16とが衝き合わされることにより、第1割型32の下面に開口する周溝36の開口が、セパレータ12によって覆われている。これにより、第1割型32とセパレータ12の間に環状のキャビティ38が形成されている。キャビティ38は、ガスケット14を成形する部分であって、ガスケット14に対応する内面形状を有している。
【0062】
キャビティ38には、ゴム状弾性材料を注入するための注入ゲート40が接続されている。注入ゲート40は、第1割型32に複数が形成されており、キャビティ38を構成する周溝36から内周側又は外周側へ延び出す注入溝部42と、注入溝部42から上方へ延び出す注入孔部44とを、備えている。
【0063】
注入溝部42は、第1割型32の下面に開口する溝状とされており、第1割型32のセパレータ12への衝合面上で延びている。注入溝部42は、注入タブ部20を成形する部分であって、注入タブ部20の外面に対応する内面形状を有している。そして、注入溝部42の開口は、第1割型32と第2割型34の型締め状態において、周溝36と同様にセパレータ12によって覆われる。
【0064】
注入孔部44は、上下方向に延びる孔であって、下端が注入溝部42に開口していると共に、上端が第1割型32の上端まで達している。注入孔部44は、全体として下方へ向けて次第に小径となるテーパ孔形状を有しており、下端部が小径の注入絞り口46とされていると共に、上端部分が部分的に大径とされた拡径部48とされている。
【0065】
キャビティ38には、空気やゴム状弾性材料の揮発ガス等の気体を排出するためのエアベント50が接続されている。エアベント50は、第1割型32に複数が形成されており、キャビティ38を構成する周溝36から内周側又は外周側へ延び出す排気溝部52と、排気溝部52から上方へ延び出す排気孔部56とを、備えている。
【0066】
排気溝部52は、第1割型32の下面に開口する溝状とされており、第1割型32のセパレータ12への衝合面上で延びている。排気溝部52は周溝36に対して周方向で部分的に設けられており、本実施形態では複数の排気溝部52が周溝36の周方向で相互に離隔して設けられている。排気溝部52は、排気タブ部24を成形する部分であって、排気タブ部24の外面に対応する内面形状を有している。そして、排気溝部52の開口は、第1割型32と第2割型34の型締め状態において、周溝36と同様にセパレータ12によって覆われる。排気溝部52は、キャビティ38に連通されており、キャビティ38への開口部分を含む全体が第1絞り口54とされている。
【0067】
排気孔部56は、上下方向に延びる孔であって、下端が排気溝部52に開口していると共に、上端が第1割型32の上端まで達している。排気孔部56は、全体として下方へ向けて次第に小径となるテーパ孔形状を有しており、下端部が小径の第2絞り口58とされている。排気孔部56の上端部分は、部分的に大径とされた拡径部60とされている。第2絞り口58における排気孔部56の孔径R(
図6参照)よりも、排気溝部52の開口部57の幅寸法W(
図6参照)が大きくされている(W>R)。
【0068】
複数の注入ゲート40と複数のエアベント50は、キャビティ38の周方向において交互に位置するように配されることが望ましい。より好適には、エアベント50と、エアベント50に対して周方向の両側に位置する注入ゲート40,40との各距離は、相互に略同じとされる。
【0069】
少なくとも1つの排気孔部56には、
図5に示すように、上端において内周側又は外周側へ延び出す吸引溝62が接続されている。吸引溝62は、図示しない真空ポンプに接続されている。そして、第1割型32と第2割型34の型締めによってキャビティ38を形成した後、真空ポンプによってキャビティ38内の空気を吸引して強制的に排出することにより、キャビティ38内を大気圧よりも低圧に減圧する。
【0070】
第1割型32の上方には、ガスケット14の形成材料であるゴム状弾性材料を注入ゲート40へ注入する図示しない射出成形機が配されており、射出成形機の射出口が注入ゲート40の注入孔部44に接続されている。そして、予め減圧されたキャビティ38に対して、射出成形機の射出口から注入ゲート40を通じてゴム状弾性材料が注入される。ゴム状弾性材料は、流動性を有する状態とされており、キャビティ38に対して加圧状態で注入される。なお、
図6には、注入ゲート40からキャビティ38へ注入されるゴム状弾性材料の流れを矢印で示した。
【0071】
キャビティ38は、空気が強制排気された減圧状態とされていることから、ゴム状弾性材料がキャビティ38へ積極的に流入する。特に、ゴム状弾性材料は、キャビティ38に対して加圧状態で注入されることから、キャビティ38内の気圧との圧力差が大きくなって、ゴム状弾性材料がキャビティ38内で流動しやすい。
【0072】
注入孔部44から注入溝部42を通じてキャビティ38へ注入されたゴム状弾性材料は、
図6において矢印で示すように、キャビティ38内を注入溝部42から周方向の両側へ流動する。ゴム状弾性材料の注入によって、キャビティ38内の気体は、排気溝部52を通じて排気孔部56から外部へ排出される。要するに、注入ゲート40からキャビティ38へのゴム状弾性材料の注入は、キャビティ38内の気体をエアベント50を通じて外部へ排出しながら実行される。
【0073】
キャビティ38の周方向で隣り合う2つの注入溝部42,42からキャビティ38へ流れ込んだゴム状弾性材料は、キャビティ38における注入溝部42,42の間で合流する。排気溝部52は、ゴム状弾性材料の合流位置においてキャビティ38に開口するように配されていることから、キャビティ38内がゴム状弾性材料で満たされるまで排気溝部52が塞がれることがなく、排気溝部52及び排気孔部56を通じた気体の排出が維持される。それゆえ、キャビティ38内の気体の残留が防止されて、キャビティ38によって成形されるガスケット14の成形不良が防止される。
【0074】
特に本実施形態では、キャビティ38の周方向において、排気溝部52の幅寸法が排気孔部56の幅寸法よりも大きくされていることから、排気孔部56がキャビティ38に直接開口している場合よりも、ゴム状弾性材料の合流位置がエアベント50の開口部分に位置し易い。それゆえ、ゴム状弾性材料の合流位置がキャビティ38の周方向においてばらついたとしても、キャビティ38内の気体をエアベント50によって効率的に排出することができる。
【0075】
キャビティ38内を流れるゴム状弾性材料は、排気溝部52へも浸入するが、排気溝部52のキャビティ38への開口部57における開口面積は、キャビティ38における周方向と直交する断面の面積(キャビティ断面積)よりも十分に小さくなっており、ゴム状弾性材料は排気溝部52への浸入よりもキャビティ38を周方向へ流れ易くなっている。それゆえ、キャビティ38に充填されるゴム状弾性材料の充填圧力が、排気溝部52で構成される第1絞り口54によって設定される。従って、排気溝部52の高さ及び周方向幅によって、ゴム状弾性材料のキャビティ38への充填圧力を制御することができる。
【0076】
排気溝部52に入ったゴム状弾性材料は、排気溝部52から排気孔部56へ浸入しようとする。排気孔部56の排気溝部52への開口面積(第2絞り口58の開口面積)は、排気溝部52のキャビティ38への開口面積よりも更に小さくされており、排気溝部52から排気孔部56へのゴム状弾性材料の流入抵抗がより大きくされている。これにより、ゴム状弾性材料が排気溝部52から排気孔部56へ浸入するのに優先して、より大きな圧力でゴム状弾性材料をキャビティ38へ注入することができて、キャビティ38の全体にゴム状弾性材料を充填することができる。要するに、排気孔部56の第2絞り口58によっても、ゴム状弾性材料のキャビティ38への充填圧力を制御することができる。
【0077】
本実施形態では、排気溝部52で構成された第1絞り口54による充填圧力の制御と、排気孔部56の第2絞り口58による充填圧力の制御とによって、キャビティ38に対するゴム状弾性材料の充填圧力を漸次に又は段階的に最終的には目的とする所定圧力にまで高めて、キャビティ38の全体を適切な圧力で注入されるゴム状弾性材料によって満たすことができる。
【0078】
なお、複数の排気溝部52のキャビティ38への開口面積は、一定であってもよいが、互いに異なっていてもよい。例えば、各排気溝部52の開口部位において想定されるゴム状弾性材料の圧力に応じて異ならせることができる。具体的には、例えば、注入ゲート40に近いなどの理由で充填圧力が大きくなり易い排気溝部52では開口面積を小さくすると共に、注入ゲート40から遠いなどの理由で充填圧力が小さくなり易い排気溝部52では開口面積を大きくするなどして、ゴム状弾性材料がキャビティ38の注入ゲート間領域の全体にわたって略等しく充填完了されるようにしてもよい。
【0079】
同様に、複数の排気孔部56の排気溝部52への開口面積は、一定であってもよいが、互いに異なっていてもよい。例えば、排気孔部56の開口において想定されるゴム状弾性材料の圧力に応じて異ならせることができる。具体的には、例えば、注入ゲート40に近いなどの理由で充填圧力が大きくなり易い排気孔部56では開口面積を小さくすると共に、注入ゲート40から遠いなどの理由で充填圧力が小さくなり易い排気孔部56では開口面積を大きくするなどしてもよい。
【0080】
図7に示すように、ゴム状弾性材料は、キャビティ38と注入ゲート40とエアベント50とを満たした状態で、加硫成形される。これにより、キャビティ38においてガスケット14が成形される。注入溝部42において注入タブ部20が成形され、注入孔部44において注入孔成形部64が成形される。排気溝部52において排気タブ部24が成形され、排気孔部56において排気孔成形部66が成形される。ガスケット14と注入タブ部20と注入孔成形部64と排気タブ部24と排気孔成形部66とは、一体形成されて連続している。
【0081】
ゴム状弾性材料が、キャビティ38と注入ゲート40とエアベント50の全体を満たすと、キャビティ38の内圧が高まるが、基材が金属製のセパレータ12とされており、第1割型32と第2割型34が大きな型締め力で型締めされている。それゆえ、セパレータ12と第1割型32の当接面間に対するゴム状弾性材料のはみ出しが防止されて、バリの発生が防止される。
【0082】
なお、大きな力で型締めすることによって、セパレータ12が弾性的に曲がって、キャビティ38側へ凸となるように突出することも考えられる。しかしながら、ゴム状弾性材料が比較的に粘度の高いゴム材料とされていることから、キャビティ38に対してゴム状弾性材料を高圧で充填することにより、セパレータ12の曲がりが解消されて、セパレータ12を初期形状に復元させることができる。
【0083】
ガスケット14の成形が完了した後、
図8に示すように、第1割型32と第2割型34を上下方向に引き離して脱型する。注入孔成形部64は、注入孔部44の拡径部48によって成形された大径の上端部分が、第1割型32に対して上下方向でアンダーカットとなっている。同様に、排気孔成形部66は、排気孔部56の拡径部60によって成形された大径の上端部分が、第1割型32に対して上下方向でアンダーカットとなっている。これにより、第1割型32をセパレータ12から上方へ脱型する際に、注入孔成形部64が注入タブ部20から引き切られると共に、排気孔成形部66が排気タブ部24から引き切られて、それら注入孔成形部64と排気孔成形部66がガスケット14から分離して除去される。本実施形態では、注入孔部44の下端が小径の注入絞り口46とされていることから、注入孔成形部64は、下端において注入タブ部20から分離する。また、排気孔部56の下端が小径の第2絞り口58とされていることから、排気孔成形部66は、下端において排気タブ部24から分離する。従って、注入タブ部20の上面には、注入孔成形部64の破断跡である注入孔部除去跡22が形成されると共に、排気タブ部24の上面には、排気孔成形部66の破断跡である排気孔部除去跡26が形成される。
【0084】
このように、本実施形態では、ガスケット14によるシール構造の邪魔となる注入孔成形部64と排気孔成形部66が、第1割型32と第2割型34の脱型に際して取り除かれるようになっており、それら注入孔成形部64と排気孔成形部66を除去する工程が不要とされている。従って、第1割型32と第2割型34の脱型によって、ガスケット部材10を得ることができ、製造工程を完了することができる。尤も、例えば切削による破断跡の除去工程を加えることによって、注入孔成形部64と排気孔成形部66の破断跡をより小さくすることもできる。なお、仮に、排気孔成形部66が排気タブ部24との境界部分のみで切断されず、よりガスケット14に近い位置にまで切断面が及んだとしても、切断面が排気タブ部24に止められ易く、切断面がガスケット14まで達するのを防ぐことができる。排気タブ部24は、成形時の排気溝部52にゴム状弾性体が流入して成形されるに過ぎないことから、切断されたとしてもガスケット14のシール性能に影響しない。
【0085】
図9には、本発明の第二の実施形態としてのガスケット部材の製造工程を示す。具体的には、
図9は、第1割型70と第2割型72によって形成されるキャビティ38及びエアベント74にゴム状弾性材料が充填された状態を示す。本実施形態において、第一の実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0086】
第1割型70は、排気溝部52の底面において下向きに開口する接続孔部76を備えている。接続孔部76は、排気溝部52の底面に部分的に設けられており、本実施形態では略一定の円形断面で上下方向へ直線的に延びている。接続孔部76は、下端において排気溝部52と連続していると共に、上端において排気孔部56と連続しており、排気溝部52と排気孔部56の間に設けられて、それら排気溝部52と排気孔部56をつないでいる。接続孔部76は、排気孔部56の下端よりも大径とされており、排気孔部56が接続孔部76の中央部分につながっている。従って、接続孔部76は、排気溝部52に対する接続面積が、排気孔部56に対する接続面積よりも大きくされている。換言すれば、排気溝部52の上端(底面)における接続孔部76の開口面積が、接続孔部76の上端における排気孔部56の開口面積よりも大きくされている。なお、本実施形態のエアベント74は、排気溝部52と排気孔部56に加えて接続孔部76を備えている。
【0087】
そして、ゴム状弾性材料の成形後に第1割型70と第2割型72を上下方向で相互に分離させて成形品から脱型する際に、排気孔部56によって成形された排気孔成形部66が、排気溝部52によって成形された排気タブ部24から引き切られる。排気孔成形部66と接続孔部76によって成形された接続孔成形部78との接続部分は、排気タブ部24と接続孔成形部78との接続部分よりも上下方向と直交する断面積(接続面積)が小さくされていることから、第1割型70と第2割型72の脱型に際して優先的に切断される。これにより、排気孔成形部66を切除する際の切断位置が、排気溝部52と排気孔部56が直接的に連続して設けられた第一の実施形態の構造に比して、ガスケット14からより離れた位置に設定される。それゆえ、排気孔成形部66の切除がガスケット14の形状や性能に影響し難く、目的とするシール性能を安定して得ることができる。仮に、排気孔成形部66が接続孔成形部78との境界部分のみで切断されず、よりガスケット14に近い位置にまで切断面が及んだとしても、切断面が接続孔成形部78に止められたり、排気タブ部24において止められ易くなって、ガスケット14の損傷が回避される。
【0088】
本実施形態では、ガスケット14から内周側又は外周側へ延び出すオーバーフロータブ部79が、排気タブ部24だけでなく、排気タブ部24と接続孔成形部78とによって構成されている。そして、排気孔成形部66が接続孔成形部78との境界部分で切断されて取り除かれると、排気孔成形部66の除去跡がオーバーフロータブ部79の表面である接続孔成形部78の表面に形成される。
【0089】
なお、接続孔部の形状は、前記実施形態のような略一定の円形断面で上下方向へ直線的に延びるものに限定されず、例えば、略一定の多角形断面で上下方向へ直線的に延びる形状であってもよいし、
図10に示す第三の実施形態の接続孔部80のような上方へ向けて次第に収縮するテーパ形状であってもよい。具体的には、
図10に示す接続孔部80は、略半球形の凹所状とされており、接続孔部80によって成形される接続孔成形部82が上方へ向けて次第に縮径する略半球形状とされている。このような
図10に示す態様においても、接続孔部80の排気溝部52への接続面積が接続孔部80の排気孔部56への接続面積よりも大きくされており、排気孔成形部66の切除に際して、切断位置が接続孔成形部82と排気孔成形部66の接続部分に設定される。従って、
図10の態様においても、前記第二の実施形態と同様の効果を奏する。
【0090】
第二,第三の実施形態に示した接続孔部76,80と同様の構造を、注入溝部42と注入孔部44の間に設けることもできる。これによれば、注入孔成形部64を切除する際に、ガスケット14の損傷が回避されて、目的とするシール性能を安定して得ることができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、ガスケット14の具体的な形状は、前記実施形態によって限定的に解釈されるべきものではない。例えば、前記実施形態のガスケット14は、理解を容易にするために簡単な略四角枠状とされていたが、より複雑な形状のガスケット14にも本発明は適用可能である。具体的には、ガスや液体をガスケット部材10の厚さ方向に流すための貫通孔がセパレータ12に設けられている場合には、ガスケット14において各貫通孔を囲む部分が設けられる等してもよい。
【0092】
さらに、ガスケット14の断面形状は、前記実施形態に示した三角形状に限定されず、台形状や半円形状などであってもよい。また、ガスケット14の断面形状は、一定である必要はなく、長さ方向において変化していてもよい。なお、ガスケット14の断面形状は、シール性能を有利に得るために突出先端側が幅狭とされていることが望ましいが、限定されるものではない。
【0093】
また、より確実なシールを実現するために、複数のガスケット14を並列に設けることもできる。即ち、1つのガスケット14の内周側又は外周側に別のガスケット14を設けることによって、多重のシール構造を実現することもできる。この場合に、複数のガスケット14に跨るように注入タブ部20や排気タブ部24を設けることもできる。これによれば、複数のガスケット14のキャビティ38へ共通の注入ゲート40によってゴム状弾性材料を注入することができると共に、共通の排気孔部56によって複数のガスケット14のキャビティ38から気体を排出することができる。
【0094】
注入溝部42、注入孔部44、排気溝部52、排気孔部56は、形成数や具体的な形状、ガスケット14に対する配置、大きさなど、何れも適宜に設定される。例えば、排気溝部52と排気孔部56の大きさや形状によって、キャビティ38に対するゴム状弾性材料の充填圧力を調節することもできる。また、排気溝部52の容積によって、第1絞り口54による圧力制御と第2絞り口58による圧力制御の切替えのタイミングを調節することもできる。
【0095】
排気孔成形部66は、第1割型32と第2割型34の脱型時に排気タブ部24から切り離されなくてもよい。例えば、脱型後に排気孔成形部66を排気タブ部24から切り離す工程を脱型工程とは別に設けることもできる。同様に、注入孔成形部64の注入タブ部20からの分離も、脱型後の切断工程によって実現してもよい。
【0096】
前記実施形態では、排気孔部56が上下方向に対して非傾斜で延びている構造を例示したが、例えば、
図11に示す第四の実施形態の排気孔部90のように、中心軸Lが上下方向に対して傾斜して延びていてもよい。これによれば、第1割型70と第2割型72の脱型に際して、上方へ引く力が排気孔成形部92における
図11中の左側に集中的に及ぼされて、排気孔成形部66と接続孔成形部82の接続部分に対して
図11中の左側からの亀裂が入り易くなり、排気孔成形部92を効率的に切除することができる。なお、注入孔部を上下方向に対して傾斜させて、注入孔成形部において排気孔成形部92と同様の効率的な切除を図ることもできる。
【符号の説明】
【0097】
10 ガスケット部材(第一の実施形態)
12 セパレータ(基材)
14 ガスケット
16 上面(基材の表面)
18 凹所
20 注入タブ部
22 注入孔部除去跡
24 排気タブ部(オーバーフロータブ部)
26 排気孔部除去跡(除去跡)
28 シール対象部材
30 凹所
32 第1割型
34 第2割型
36 周溝
38 キャビティ
40 注入ゲート
42 注入溝部
44 注入孔部
46 注入絞り口
48 拡径部
50 エアベント
52 排気溝部
54 第1絞り口
56 排気孔部
57 開口部
58 第2絞り口
60 拡径部
62 吸引溝
64 注入孔成形部
66 排気孔成形部
70 第1割型(第二の実施形態)
72 第2割型
74 エアベント
76 接続孔部
78 接続孔成形部
79 オーバーフロータブ部
80 接続孔部(第三の実施形態)
82 接続孔成形部
90 排気孔部(第四の実施形態)
92 排気孔成形部
【手続補正書】
【提出日】2020-12-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
第1割型と第2割型の間に板状の基材を型締めして、該基材と該第1割型の間に画成されたガスケットのキャビティへゴム状弾性材料を注入ゲートから注入充填することにより、該基材の表面に該ガスケットが固着されたガスケット部材を製造するガスケット部材の製造方法であって、
前記キャビティにおける前記注入ゲートから離れた位置において前記基材と前記第1割型との衝合面上で該キャビティから内周側又は外周側へ延び出して該キャビティの周方向で部分的に開口して設けられた排気溝部と、該第1割型と前記第2割型の型締め方向へ該排気溝部から延び出す排気孔部とを有するエアベントが設けられており、
該キャビティへの該ゴム状弾性材料の前記注入ゲートからの注入充填に際して、該注入ゲートから離れて設けられた該エアベントを通じて該キャビティ内の気体を排出するガスケット部材の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
前記エアベントと前記ゴム状弾性材料を前記キャビティへ注入する前記注入ゲートとが各複数設けられており、
該エアベントと該注入ゲートが該キャビティの周方向で交互に配されている請求項1~8の何れか一項に記載のガスケット部材の製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項11
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項11】
板状の基材と、ゴム状弾性材料によって形成されて該基材の表面に一体的に固着される環状のガスケットとを、備えるガスケット部材であって、
前記基材の面上で前記ガスケットから内周側又は外周側へ延び出すオーバーフロータブ部が、該ガスケットと一体形成されて、該ガスケットの周方向で部分的に設けられ、該ガスケットにおける注入ゲートの除去跡から離れて位置せしめられており、
更に該オーバーフロータブ部には、エアベント用の排気孔部の除去跡があるガスケット部材。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
第一の態様は、第1割型と第2割型の間に板状の基材を型締めして、該基材と該第1割型の間に画成されたガスケットのキャビティへゴム状弾性材料を注入ゲートから注入充填することにより、該基材の表面に該ガスケットが固着されたガスケット部材を製造するガスケット部材の製造方法であって、前記キャビティにおける前記注入ゲートから離れた位置において前記基材と前記第1割型との衝合面上で該キャビティから内周側又は外周側へ延び出して該キャビティの周方向で部分的に開口して設けられた排気溝部と、該第1割型と前記第2割型の型締め方向へ該排気溝部から延び出す排気孔部とを有するエアベントが設けられており、該キャビティへの該ゴム状弾性材料の前記注入ゲートからの注入充填に際して、該注入ゲートから離れて設けられた該エアベントを通じて該キャビティ内の気体を排出するものである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
第九の態様は、第一~第八の何れか1つの態様に記載されたガスケット部材の製造方法であって、前記エアベントと前記ゴム状弾性材料を前記キャビティへ注入する前記注入ゲートとが各複数設けられており、該エアベントと該注入ゲートが該キャビティの周方向で交互に配されているものである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
第十一の態様は、板状の基材と、ゴム状弾性材料によって形成されて該基材の表面に一体的に固着される環状のガスケットとを、備えるガスケット部材であって、前記基材の面上で前記ガスケットから内周側又は外周側へ延び出すオーバーフロータブ部が、該ガスケットと一体形成されて、該ガスケットの周方向で部分的に設けられ、該ガスケットにおける注入ゲートの除去跡から離れて位置せしめられており、更に該オーバーフロータブ部には、エアベント用の排気孔部の除去跡があるものである。