(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055982
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】読取装置および画像データ処理方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/387 20060101AFI20220401BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
H04N1/387 800
H04N1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163729
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英和
(72)【発明者】
【氏名】中村 直行
【テーマコード(参考)】
5C062
5C076
【Fターム(参考)】
5C062AA05
5C062AB17
5C062AB20
5C062AB23
5C062AB40
5C062AB41
5C062AB42
5C062AC58
5C076AA23
5C076AA24
5C076BA06
(57)【要約】
【課題】読取デバイスにより読み取られた原稿の画像データを出力したときに、その出力画像に縦筋が発生することを抑制できる、読取装置および画像データ処理方法を提供する。
【解決手段】画像データの傾きを補正する傾き補正処理(S20)では、原稿の読取開始前に設定された内容(設定情報)が既定条件を満たしているか否かに応じて(S13,S14,S15)、ニアレストネイバー法とバイリニア法とが使い分けられる(S16,S17)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に光を照射する光源および前記原稿からの反射光を電気信号に変換するイメージセンサを有し、前記原稿を読み取る読取デバイスと、
画像データを生成するための設定情報を受け付ける受付デバイスと、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記読取デバイスに前記原稿の読み取りを実施させて、前記読取デバイスが出力する電気信号から、前記受付デバイスに受け付けられた前記設定情報に応じた画像データを生成する読取処理と、
前記受付デバイスに受け付けられた前記設定情報が既定条件を満たしているか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理で前記既定条件を満たしていると判断した場合には、ニアレストネイバー法により、前記判断処理で前記既定条件を満たしていないと判断した場合には、関数補間法により、前記読取処理で生成した画像データの傾きを補正する傾き補正処理と、を実行する、読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の読取装置であって、
前記設定情報は、前記コントローラが前記画像データを生成する際の読取解像度の情報を含み、
前記既定条件は、前記読取解像度が既定解像度以上であるという条件を含む、読取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の読取装置であって、
前記既定解像度は、1200dpi以上の値である、読取装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の読取装置であって、
前記設定情報は、前記コントローラで生成された画像データの出力方法の情報を含み、
前記既定条件は、前記出力方法が印刷であるという条件を含む、読取装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の読取装置であって、
前記設定情報は、前記読取処理における画像データを生成する読取モードの情報を含み、
前記既定条件は、前記読取モードがカラーの画像データを生成するカラー読取モードであるという条件を含む、読取装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の読取装置であって、
前記コントローラは、
前記傾き補正処理の前に、前記読取処理で生成した画像データをガンマ補正するガンマ補正処理、を実行する、読取装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の読取装置であって、
前記コントローラは、
前記傾き補正処理の前に、前記読取処理で生成した画像データを平滑化する平滑化フィルタ処理、を実行する、読取装置。
【請求項8】
原稿に光を照射する光源および前記原稿からの反射光を電気信号に変換するイメージセンサを有し、前記原稿を読み取る読取デバイスと、
画像データを生成するための設定情報を受け付ける受付デバイスと、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記読取デバイスに前記原稿の読み取りを実施させて、前記読取デバイスが出力する電気信号から、前記受付デバイスに受け付けられた前記設定情報に応じた画像データを生成する読取処理と、
前記受付デバイスに受け付けられた前記設定情報が既定条件を満たしているか否かを判断する判断処理と、を実行し、
前記判断処理で前記既定条件を満たしていると判断した場合には、前記読取処理で生成した画像データの傾きを補正する傾き補正処理の後に、前記読取処理で生成した画像データをガンマ補正するガンマ補正処理を実行し、前記判断処理で前記既定条件を満たしていないと判断した場合には、前記ガンマ補正処理の後に、前記傾き補正処理を実行する、読取装置。
【請求項9】
請求項8に記載の読取装置であって、
前記コントローラは、
前記読取処理で生成した画像データから原稿の地色を除去する地色除去処理、を実行し、
前記設定情報は、前記地色除去処理を実行するか否かの情報を含み、
前記既定条件は、前記地色除去処理を実行するという条件を含む、読取装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の読取装置であって、
前記設定情報は、前記コントローラで生成された画像データの出力方法、前記読取処理における画像データを生成する読取モード、および前記コントローラが前記画像データを生成する際の読取解像度の情報を含み、
前記既定条件は、前記読取解像度が既定解像度以上であるという第1条件、前記出力方法が印刷であるという第2条件、および前記読取モードがカラーの画像データを生成するカラー読取モードであるという第3条件を含み、
前記コントローラは、
前記第1条件、前記第2条件または前記第3条件の少なくとも1つが成立する場合、前記傾き補正処理にニアレストネイバー法を用い、前記第1条件、前記第2条件および前記第3条件のいずれも成立しない場合、前記傾き補正処理に関数補間法を用いる、読取装置。
【請求項11】
原稿に光を照射する光源および前記原稿からの反射光を電気信号に変換するイメージセンサを有し、前記原稿を読み取る読取デバイスと、
画像データを生成するための設定情報を受け付ける受付デバイスと、
コントローラと、を含むシステムにおいて、前記コントローラによって実行される画像データ処理方法であって、
前記読取デバイスに前記原稿の読み取りを実施させて、前記読取デバイスが出力する電気信号から、前記受付デバイスに受け付けられた前記設定情報に応じた画像データを生成する読取処理と、
前記受付デバイスに受け付けられた前記設定情報が既定条件を満たしているか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理で前記既定条件を満たしていると判断した場合には、ニアレストネイバー法により、前記判断処理で前記既定条件を満たしていないと判断した場合には、関数補間法により、前記読取処理で生成した画像データの傾きを補正する傾き補正処理と、を含む、画像データ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置および画像データ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿を読み取る読取装置では、主走査方向に延びる読取デバイスと原稿とが副走査方向に相対的に移動されつつ、読取デバイスにより原稿が1ラインずつ読み取られる。
【0003】
原稿の読み取りの際に、原稿が主走査方向および副走査方向に対して傾いていると、読取デバイスにより読み取られた画像データ(読取画像)が主走査方向および副走査方向に対応する方向(座標軸)に対して傾いてしまう。そのため、読取装置では、画像データの傾きが検出されて、画像データに対して回転によりその傾きを補正する傾き補正処理が行われる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、画像データを生成するための設定と傾き補正処理に用いられる補間法との組合せによっては、画像データを用紙などに出力したときに、その出力画像に縦筋が発生することが判った。
【0006】
本発明の目的は、読取デバイスにより読み取られた原稿の画像データを出力したときに、その出力画像に縦筋が発生することを抑制できる、読取装置および画像データ処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明の一の局面に係る読取装置は、原稿に光を照射する光源および原稿からの反射光を電気信号に変換するイメージセンサを有し、原稿を読み取る読取デバイスと、画像データを生成するための設定情報を受け付ける受付デバイスと、コントローラとを備え、コントローラは、読取デバイスに原稿の読み取りを実施させて、読取デバイスが出力する電気信号から、受付デバイスに受け付けられた設定情報に応じた画像データを生成する読取処理と、受付デバイスに受け付けられた設定情報が既定条件を満たしているか否かを判断する判断処理と、判断処理で既定条件を満たしていると判断した場合には、ニアレストネイバー法により、判断処理で既定条件を満たしていないと判断した場合には、関数補間法により、読取処理で生成した画像データの傾きを補正する傾き補正処理と、を実行する。
【0008】
この構成によれば、画像データの傾きを補正する傾き補正処理では、画像データを生成するための設定情報が既定条件を満たしているか否かに応じて、ニアレストネイバー法と関数補間法とが使い分けられる。これにより、その設定情報に適した補間法で傾き補正処理を画像データに対して行うことができ、画像データを出力して得られる出力画像における縦筋の発生を抑制できる。
【0009】
設定情報は、コントローラが画像データを生成する際の読取解像度の情報を含み、既定条件は、読取解像度が既定解像度以上であるという条件を含んでもよい。
【0010】
読取解像度が既定解像度以上の高解像度である場合、画像データに対して関数補間法による傾き補正処理が行われると、出力画像に縦筋が発生しやすい。そのため、読取解像度が既定解像度以上の高解像度である場合には、画像データに対してニアレストネイバー法による傾き補正処理が行われることにより、出力画像における縦筋の発生を抑制できる。また、読取解像度が高解像度であるので、画像データに対してニアレストネイバー法による傾き補正処理が行われても、出力画像の輪郭などに現れる階段状のギザギザ(ジャギー)が目立つことを抑制できる。
【0011】
一方、読取解像度が既定解像度未満の低解像度である場合、画像データに対してニアレストネイバー法による傾き補正処理が行われると、出力画像の輪郭などに現れる階段状のギザギザが目立つ。そのため、読取解像度が既定解像度未満の低解像度である場合には、画像データに対して関数補間法による傾き補正処理が行われることにより、出力画像で階段状のギザギザが目立つことを抑制できる。また、読取解像度が低解像度であるので、画像データに対して関数補間法による傾き補正処理が行われても、出力画像で縦筋が目立つことを抑制できる。
【0012】
既定解像度は、1200dpi以上の値であってもよい。
【0013】
読取解像度が1200dpi以上の高解像度である場合に、画像データに対してニアレストネイバー法による傾き補正処理が行われることにより、出力画像における縦筋の発生を効果的に抑制できる。
【0014】
設定情報は、コントローラで生成された画像データの出力方法の情報を含み、既定条件は、出力方法が印刷であるという条件を含んでもよい。
【0015】
画像データに対してニアレストネイバー法による傾き補正処理が行われた場合に、画像データに係る画像がディスプレイに拡大表示されると、その拡大画像で階段状のギザギザが目立ってしまうが、画像データに係る画像が用紙に印刷される場合、印刷された画像で階段状のギザギザが目立ちにくい。
【0016】
設定情報は、読取処理における画像データを生成する読取モードの情報を含み、既定条件は、読取モードがカラーの画像データを生成するカラー読取モードであるという条件を含んでもよい。
【0017】
読取モードがカラー読取モードである場合、画像データに対して関数補間法による傾き補正処理が行われると、出力画像に縦筋が発生しやすい。そのため、読取モードがカラー読取モードである場合には、画像データに対してニアレストネイバー法による傾き補正処理が行われることにより、出力画像における縦筋の発生を抑制できる。
【0018】
コントローラは、傾き補正処理の前に、読取処理で生成した画像データをガンマ補正するガンマ補正処理を実行することが好ましい。
【0019】
傾き補正処理により出力画像に縦筋を生じさせる画素が生成される場合に、その傾き補正処理後にガンマ補正処理が行われると、その縦筋となる画素近傍のコントラストが大きくなり、出力画像に縦筋が顕著に現れる。傾き補正処理の前にガンマ補正処理が行われることにより、出力画像に縦筋が顕著に現れることを抑制できる。
【0020】
コントローラは、傾き補正処理の前に、読取処理で生成した画像データを平滑化する平滑化フィルタ処理を実行してもよい。
【0021】
画像データに対して平滑化フィルタ処理が行われることにより、出力画像に縦筋が発生することを一層抑制できる。
【0022】
本発明の他の局面に係る読取装置は、原稿に光を照射する光源および原稿からの反射光を電気信号に変換するイメージセンサを有し、原稿を読み取る読取デバイスと、画像データを生成するための設定情報を受け付ける受付デバイスと、コントローラとを備え、コントローラは、読取デバイスに原稿の読み取りを実施させて、読取デバイスが出力する電気信号から、受付デバイスに受け付けられた設定情報に応じた画像データを生成する読取処理と、受付デバイスに受け付けられた設定情報が既定条件を満たしているか否かを判断する判断処理とを実行し、判断処理で既定条件を満たしていると判断した場合には、読取処理で生成した画像データの傾きを補正する傾き補正処理の後に、読取処理で生成した画像データをガンマ補正するガンマ補正処理を実行し、判断処理で既定条件を満たしていないと判断した場合には、ガンマ補正処理の後に、傾き補正処理を実行する。
【0023】
たとえば、コントローラは、読取処理で生成した画像データから原稿の地色を除去する地色除去処理を実行し、設定情報は、地色除去処理を実行するか否かの情報を含み、既定条件は、地色除去処理を実行するという条件を含む。
【0024】
この構成によれば、画像データに対して地色除去処理が行われる場合には、傾き補正処理の後にガンマ補正処理が行われる。原稿の地色(背景色)の判定は、傾き補正処理の後に行う必要があるが、その判定の前にガンマ補正処理が行われると、地色を良好に判定することができない。傾き補正処理の後にガンマ補正処理が行われることにより、傾き補正処理の後でガンマ補正処理の前に、地色の判定を行うことができる。
【0025】
一方、画像データに対する地色除去処理が行われない場合には、ガンマ補正処理の後に傾き補正処理が行われる。これにより、出力画像に縦筋が顕著に現れることを抑制できる。
【0026】
設定情報は、コントローラで生成された画像データの出力方法、読取処理における画像データを生成する読取モード、およびコントローラが画像データを生成する際の読取解像度の情報を含み、既定条件は、読取解像度が既定解像度以上であるという第1条件、出力方法が印刷であるという第2条件、および読取モードが多値の画像データを生成する多値読取モードであるという第3条件を含み、コントローラは、第1条件、第2条件または第3条件の少なくとも1つが成立する場合、傾き補正処理にニアレストネイバー法を用い、第1条件、第2条件および第3条件のいずれも成立しない場合、傾き補正処理に関数補間法を用いてもよい。
【0027】
なお、本発明は、読取装置の形態で実現できるだけでなく、たとえば、画像データ処理方法の形態で実現することもできる。
【0028】
その画像データ処理方法は、原稿に光を照射する光源および原稿からの反射光を電気信号に変換するイメージセンサを有し、原稿を読み取る読取デバイスと、画像データを生成するための設定情報を受け付ける受付デバイスと、コントローラとを含むシステムにおいて、コントローラによって実行される画像データ処理方法であって、読取デバイスに原稿の読み取りを実施させて、読取デバイスが出力する電気信号から、受付デバイスに受け付けられた設定情報に応じた画像データを生成する読取処理と、受付デバイスに受け付けられた設定情報が既定条件を満たしているか否かを判断する判断処理と、判断処理で既定条件を満たしていると判断した場合には、ニアレストネイバー法により、判断処理で既定条件を満たしていないと判断した場合には、関数補間法により、読取処理で生成した画像データの傾きを補正する傾き補正処理とを含む。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、読取デバイスにより読み取られた原稿の画像データを出力したときに、その出力画像に縦筋が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係る読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図2】原稿の読み取りに関する一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】傾き補正処理とガンマ補正処理との前後による補間画素値の変化の一例を示す図である。
【
図4】傾き補正処理とガンマ補正処理との前後による補間画素値の変化の他の例を示す図である。
【
図5】傾き補正処理とガンマ補正処理との前後による補間画素値の変化のさらに他の例を示す図である。
【
図6A】他の実施形態に係る処理の流れを示すフローチャート(その1)である。
【
図6B】他の実施形態に係る処理の流れを示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0032】
<読取装置の電気的構成>
図1に示される読取装置1は、原稿を読み取る装置である。読取装置1は、たとえば、画像データに係る画像を用紙に印刷する印刷装置(図示せず)とともに、読取機能および印刷機能などの複数の機能を有する複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)を構成する。読取装置1による読み取りの方式は、シート状の原稿をガラス板上を通過させつつ読み取るADF(Auto Document Feeder)方式であってもよいし、ガラス板上に載置された原稿を読み取るFB(Flat Bed)方式であってもよい。
【0033】
ガラス板の下方には、読取デバイス11が設けられている。読取デバイス11には、光源12およびイメージセンサ13などが内蔵されている。イメージセンサ13は、たとえば、複数の受光素子が主走査方向に配列されたリニアイメージセンサからなる。イメージセンサ13は、各受光素子における受光に応じたアナログ信号を出力する。
【0034】
読取装置1の外面には、操作パネル21が設けられている。操作パネル21は、たとえば、タッチパネルであり、操作部22(受付デバイスの一例)および表示部23を備えている。表示部23には、各種の情報や操作ボタンなどの画像が表示される。ユーザが表示部23に表示される操作ボタンをタッチ操作することにより、その操作が操作部22に受け付けられて、その操作の内容に応じた信号が操作パネル21から出力される。
【0035】
操作パネル21の操作により、原稿の読み取りに関する各種の設定を行うことができる。各種の設定には、たとえば、読取モードの設定、原稿の読み取りにより画像データを生成する際の読取解像度、原稿を読み取った画像データの出力先(印刷装置、外部装置)が含まれる。各種の設定の後、表示部23に表示されるスタートボタンの操作により、原稿の読み取りの開始を指示することができる。読取モードには、原稿をカラーで読み取って、カラーの画像データを生成するカラー読取と、原稿をモノクロで読み取って、モノクロの画像データを生成するモノクロ読取とが用意されている。
【0036】
なお、操作パネル21は、タッチパネルに限らず、物理キーからなる操作部22と、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどからなる表示部23とを別々に備えていてもよい。
【0037】
また、読取装置1は、LANインタフェース(I/F)31および制御部41を備えている。
【0038】
LANインタフェース31(受付デバイスの一例)は、パーソナルコンピュータ(PC)2などの外部装置とのLAN(Local Area Network)を介したデータ通信のためのインタフェースである。通信の方式は、無線通信方式であってもよいし、有線通信方式であってもよい。
【0039】
制御部41は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)42、ROM(Read Only Memory)43およびRAM(Random Access Memory)44を備えている。
【0040】
ASIC42は、コントローラの一例であり、演算処理のためのCPU45および画像データ処理のための画像処理回路46を内蔵している。ASIC42には、読取デバイス11および操作パネル21から信号が入力される。また、ASIC42には、LANインタフェース31が接続されており、ASIC42は、PC2などの外部装置とLAN経由でデータ通信が可能である。
【0041】
CPU45は、ASIC42に入力される信号などに基づいて、ROM43に記憶されているプログラムを実行することにより、読取デバイス11による原稿の読取動作や操作パネル21の表示部23の表示など、読取装置1の各部の動作を制御する。
【0042】
ROM43は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリからなる。ROM43には、CPU45によって実行されるプログラムおよび各種のデータなどが記憶されている。
【0043】
RAM44は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリであり、CPU45がプログラムを実行する際のワークエリアとして使用される。
【0044】
<ASICによる処理>
原稿の読み取りの開始が指示されると、ASIC42のCPU45は、
図2に示されるように、まず、操作パネル21の操作により設定された設定情報を取得する(S11)。
【0045】
次に、CPU45は、読取処理を実行する(S12)。読取処理では、CPU45は、読取デバイス11に原稿の読み取りを実施させる。そして、CPU45は、読取デバイス11が出力する電気信号から、カラー/モノクロ読取および読取解像度などの設定情報に応じた画像データを生成する。
【0046】
原稿の読み取りの際に、原稿が主走査方向および副走査方向に対して傾いていると、画像データ(読取画像)が主走査方向および副走査方向に対応する方向(座標軸)に対して傾いてしまう。この場合、ASIC42の画像処理回路46により、画像データの傾きが検出されて、画像データに対して回転によりその傾きを補正する傾き補正処理が行われる。
【0047】
読取対象の原稿が網点の大小により濃淡を表した網点原稿である場合、読取解像度などの画像データを生成するための設定と傾き補正処理に用いられる補間法との組合せによっては、傾き補正処理を含む一連の画像データ処理後の画像データを用紙に出力したときに、その出力画像に縦筋が発生する場合がある。
【0048】
そのため、傾き補正処理に先立ち、CPU45は、先に取得した設定情報から、既定条件が満たされているか否かを判断する。既定条件には、読取解像度が既定解像度以上であるという第1条件、コピー出力が設定されているという第2条件、および読取モードがカラー読取に設定されているという第3条件が含まれる。
【0049】
すなわち、CPU45は、読取解像度が既定解像度以上であるという第3条件が満たされているか否かを判断する(S15)。既定解像度は、たとえば、1200dpiに設定されている。なお、既定解像度は、1200dpi以上の値であればよく、たとえば、1800dpiに設定されていてもよい。
【0050】
また、CPU45は、設定情報から、コピー出力が設定されているという第1条件が満たされているか否か、つまり画像データの出力先が印刷装置に設定されているか否かを判断する(S13)。
【0051】
さらに、CPU45は、設定情報から、カラー読取が設定されているという第2条件が満たされているか否かを判断する(S14)。
【0052】
そして、第1条件、第2条件および第3条件のうち、少なくとも1つが満たされている場合(S13,S14,S15:YES)、CPU45は、傾き補正処理に用いる画素補間法をニアレストネイバー法に決定する(S16)。
【0053】
一方、第1条件、第2条件および第3条件のいずれも満たされていない場合(S15:NO)、CPU45は、傾き補正処理に用いる画素補間法をバイリニア法に決定する(S17)。
【0054】
また、傾き補正処理に先立ち、画像処理回路46により、読取画像の明るさを調整するため、画像データをガンマ補正(γ補正)するガンマ補正処理が行われる(S18)。
【0055】
ガンマ補正処理の後、画像処理回路46により、画像データの画素値を平滑化するため、ガンマ補正された画像データに対する平滑化フィルタ処理が行われる(S19)。
【0056】
その後、画像処理回路46により、画像データに対する傾き補正処理が行われる(S20)。傾き補正処理では、X軸を主走査方向にとり、Y軸を副走査方向にとって、X軸に対して角度θで回転させた画像データにおける座標(x’,y’)に対して、次式(1)の行列演算により、回転前の座標(x,y)が求められる。
【0057】
【0058】
座標(x,y)は、必ずしも整数値とならず、実際に画素が存在しない位置の座標となる。そのため、先に決定された画素補間法による画素補間が行われて、回転後の画像データの各画素の画素値が取得される。すなわち、読取解像度が既定解像度以上であるという第1条件、コピー出力が設定されているという第2条件、および読取モードがカラー読取に設定されているという第3条件のうち、少なくとも1つの既定条件が満たされている場合には、ニアレストネイバー法による画素補間が行われる。一方、読取解像度が既定解像度以上であるという第1条件、コピー出力が設定されているという第2条件、および読取モードがカラー読取に設定されているという第3条件のいずれも満たされていない場合には、バイリニア法による画素補間が行われる。
【0059】
傾き補正処理後、CPU45は、画像データ出力処理を実行する(S21)。画像データ出力処理により、傾きが補正された画像データは、操作パネル21の操作により設定された出力先に出力される。画像データの出力が完了すると、原稿の読み取りに関する一連の処理が終了となる。
【0060】
<作用効果>
以上のように、画像データの傾きを補正する傾き補正処理では、画像データを生成するための設定情報が既定条件を満たしているか否かに応じて、ニアレストネイバー法とバイリニア法とが使い分けられる。これにより、その設定情報に適した補間法で傾き補正処理を画像データに対して行うことができ、画像データを出力して得られる出力画像における縦筋の発生を抑制できる。
【0061】
既定条件には、読取解像度が既定解像度以上であるという第1条件、コピー出力が設定されているという第2条件、および読取モードがカラー読取に設定されているという第3条件が含まれている。
【0062】
読取解像度が既定解像度以上の高解像度である場合、たとえば、読取解像度が1200dpi以上の高解像度である場合、画像データに対してバイリニア法による傾き補正処理が行われると、出力画像に縦筋が発生しやすい。そのため、読取解像度が既定解像度以上の高解像度である場合には、画像データに対してニアレストネイバー法による傾き補正処理が行われることにより、出力画像における縦筋の発生を抑制できる。また、読取解像度が高解像度であるので、画像データに対してニアレストネイバー法による傾き補正処理が行われても、出力画像の輪郭などに現れる階段状のギザギザ(ジャギー)が目立つことを抑制できる。
【0063】
一方、読取解像度が既定解像度未満の低解像度である場合、画像データに対してニアレストネイバー法による傾き補正処理が行われると、出力画像の輪郭などに現れる階段状のギザギザが目立つ。そのため、読取解像度が既定解像度未満の低解像度である場合には、画像データに対してバイリニア法による傾き補正処理が行われることにより、出力画像で階段状のギザギザが目立つことを抑制できる。また、読取解像度が低解像度であるので、画像データに対してバイリニア法による傾き補正処理が行われても、出力画像で縦筋が目立つことを抑制できる。
【0064】
また、画像データに対してニアレストネイバー法による傾き補正処理が行われた場合に、画像データに係る画像がディスプレイに拡大表示されると、その拡大画像で階段状のギザギザが目立ってしまうが、画像データに係る画像が用紙に印刷されるコピー出力の場合、印刷された画像で階段状のギザギザが目立ちにくい。そのため、コピー出力が設定されている場合には、ニアレストネイバー法による傾き補正処理が行われることが望ましい。
【0065】
読取モードがカラー読取モードである場合、画像データに対してバイリニア法による傾き補正処理が行われると、出力画像に縦筋が発生しやすい。そのため、読取モードがカラー読取モードである場合には、画像データに対してニアレストネイバー法による傾き補正処理が行われることにより、出力画像における縦筋の発生を抑制できる。
【0066】
傾き補正処理が行われる前に、画像データに対して画像データをガンマ補正するガンマ補正処理が行われる。傾き補正処理により出力画像に縦筋を生じさせる画素が生成される場合に、その傾き補正処理後にガンマ補正処理が行われると、その縦筋となる画素近傍のコントラストが大きくなり、出力画像に縦筋が顕著に現れる。傾き補正処理の前にガンマ補正処理が行われることにより、出力画像に縦筋が顕著に現れることを抑制できる。
【0067】
たとえば、
図3に示されるように、画素P1と画素P2との間の中央に位置する画素Piの画素値を線形補間する場合に、バイリニア法による傾き補正処理後にガンマ補正処理が行われると、その補正処理により得られる画素値Pi’は、二点鎖線で示されるように、画素P1に対応する補正処理後の画素P1’(以下、単に「画素P1’」という。)の画素値と画素P2に対応する補正処理後の画素P2’(以下、単に「画素P2’」という。)の画素値との平均値よりも大きくなる。そのため、その画素が縦筋の一部となって目立つ。これに対し、ガンマ補正処理後にバイリニア法による傾き補正処理が行われる場合、その補正処理により得られる画素値Pi’’は、太実線で示されるように、画素P1’の画素値と画素P2’の画素値との平均値にほぼ一致する。そのため、出力画像に縦筋が顕著に表れることを抑制できる。
【0068】
また、
図4に示されるように、画素P2からの距離が画素P1からの距離の2倍となる位置の画素Piの画素値を線形補間する場合に、バイリニア法による傾き補正処理後にガンマ補正処理が行われると、その補正処理により得られる画素値Pi’は、二点鎖線で示されるように、画素P1’の画素値に2/3を乗じた値と画素P2’の画素値に1/3を乗じた値との加算値よりも大きくなる。そのため、その画素が縦筋の一部となって目立つ。これに対し、ガンマ補正処理後にバイリニア法による傾き補正処理が行われる場合、その補正処理により得られる画素値Pi’’は、太実線で示されるように、画素P1’の画素値に2/3を乗じた値と画素P2’の画素値に1/3を乗じた値との加算値にほぼ一致する。そのため、出力画像に縦筋が顕著に表れることを抑制できる。
【0069】
さらに、
図5に示されるように、画素P1からの距離が画素P2からの距離の2倍となる位置の画素Piの画素値を線形補間する場合に、バイリニア法による傾き補正処理後にガンマ補正処理が行われると、その補正処理により得られる画素値Pi’は、二点鎖線で示されるように、画素P1’の画素値に1/3を乗じた値と画素P2’の画素値に2/3を乗じた値との加算値よりも大きくなる。そのため、その画素が縦筋の一部となって目立つ。これに対し、ガンマ補正処理後にバイリニア法による傾き補正処理が行われる場合、その補正処理により得られる画素値Pi’’は、太実線で示されるように、画素P1’の画素値に1/3を乗じた値と画素P2’の画素値に2/3を乗じた値との加算値にほぼ一致する。そのため、出力画像に縦筋が顕著に表れることを抑制できる。
【0070】
また、傾き補正処理の前に、画像データに対して画像データを平滑化する平滑化フィルタ処理が行われる。平滑化フィルタ処理が行われることにより、出力画像に縦筋が発生することを一層抑制できる。
【0071】
<他の実施形態>
原稿の読み取りの開始が指示されたことに応じて、ASIC42では、
図6に示される処理が行われてもよい。
【0072】
図6Aに示される処理におけるステップS31~S37は、
図2に示される処理におけるステップS11~S17と同一であるから、ここでの説明は省略する。
【0073】
傾き補正処理に用いる画素補間法が決定された後、CPU45は、
図6Bに示されるように、画像データから原稿の地色を除去する地色除去処理の実行が設定されているか否かを判断する(S38)。地色除去処理を実行するか否かは、操作パネル21の操作により設定される。ステップS31で取得される設定情報には、地色除去処理を実行するか否かの情報が含まれている。
【0074】
地色除去処理の実行が設定されている場合(S38:YES)、画像処理回路46により、画像データに対して傾き補正処理が行われる(S39)。その後、CPU45は、原稿の地色(背景色)の判定を行い(S40)、その判定結果を用いて、画像データから原稿の地色を除去する地色除去処理を行う(S41)。
【0075】
地肌除去処理後、画像処理回路46により、ガンマ補正処理が行われる(S42)。ガンマ補正処理の後、CPU45は、画像データ出力処理を実行する(S43)。画像データ出力処理による画像データの出力が完了すると、原稿の読み取りに関する一連の処理が終了となる。
【0076】
一方、地色除去処理の実行が設定されていない場合には(S38:NO)、画像処理回路46により、ガンマ補正処理が行われ(S44)、ガンマ補正処理後に、傾き補正処理が行われる(S45)。傾き補正処理後、CPU45は、画像データ出力処理を実行する(S21)。画像データ出力処理による画像データの出力が完了すると、原稿の読み取りに関する一連の処理が終了となる。
【0077】
<作用効果>
このように、設定情報に地色除去処理を実行するか否かの情報が含まれ、既定条件に地色除去処理を実行するという条件が含まれる。画像データに対して地色除去処理が行われる場合には、傾き補正処理の後にガンマ補正処理が行われる。原稿の地色(背景色)の判定は、傾き補正処理の後に行う必要があるが、その判定の前にガンマ補正処理が行われると、地色を良好に判定することができない。傾き補正処理の後にガンマ補正処理が行われることにより、傾き補正処理の後でガンマ補正処理の前に、地色の判定を行うことができる。
【0078】
一方、画像データに対する地色除去処理が行われない場合には、ガンマ補正処理の後に傾き補正処理が行われる。これにより、出力画像に縦筋が顕著に現れることを抑制できる。
【0079】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0080】
たとえば、原稿の読み取りに関する一連の処理、つまり
図2に示される処理ならびに
図6Aおよび
図6Bに示される処理は、読取装置1と通信可能に接続されたPC2などの外部装置で行われてもよい。
【0081】
また、操作パネル21の操作により、原稿の読み取りに関する各種の設定が行われるとしたが、読取装置1と通信可能に接続されたPC2などの外部装置にて、原稿の読み取りに関する各種の設定が行われてもよい。
【0082】
前述の実施形態では、読取解像度が既定解像度以上であるという第1条件、コピー出力が設定されているという第2条件、および読取モードがカラー読取に設定されているという第3条件のうち、少なくとも1つの既定条件が満たされている場合に、ニアレストネイバー法による画素補間が行われ、それらの第1条件、第2条件および第3条件のいずれも満たされていない場合には、バイリニア法による画素補間が行われるとした。これに限らず、たとえば、第1条件、第2条件および第3条件のすべてが満たされている場合に、ニアレストネイバー法による画素補間が行われ、第1条件、第2条件および第3条件のいずれか1つでも満たされていない場合には、バイリニア法による画素補間が行われてもよい。また、第1条件、第2条件および第3条件のうちの2つが満たされている場合に、ニアレストネイバー法による画素補間が行われ、それ以外の場合には、バイリニア法による画素補間が行われてもよい。
【0083】
関数補間法の一例として、線形補間法であるバイリニア法を取り上げたが、関数補間法としては、3次関数を用いて補間するバイキュービック法が採用されてもよい。
【0084】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1:読取装置
11:読取デバイス
12:光源
13:イメージセンサ
21:操作パネル
42:ASIC
45:CPU
46:画像処理回路