(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056033
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】ダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20220401BHJP
F15B 11/044 20060101ALI20220401BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20220401BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20220401BHJP
F15B 20/00 20060101ALI20220401BHJP
F15B 21/041 20190101ALI20220401BHJP
【FI】
B22D17/32 B
B22D17/32 J
F15B11/044
F15B11/02 V
F15B11/08 B
F15B11/02 C
F15B20/00 D
F15B21/041
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163808
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 貴明
(72)【発明者】
【氏名】日野 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 光貴
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 藍貴
【テーマコード(参考)】
3H082
3H089
【Fターム(参考)】
3H082AA11
3H082BB05
3H082BB12
3H082CC02
3H082DA09
3H082DA18
3H082DA41
3H082DA46
3H082DB12
3H082DB26
3H082DB28
3H082DB35
3H082DE05
3H082EE04
3H089AA10
3H089AA23
3H089BB23
3H089CC01
3H089DA03
3H089DA04
3H089DA14
3H089DB33
3H089DB43
3H089DB63
3H089DC03
3H089FF07
3H089FF12
3H089GG02
3H089JJ04
(57)【要約】
【課題】低コストで長期間に亘って作動油の品質低下を抑制するダイカストマシンを提供する。
【解決手段】ダイカストマシンは、ロッド側供給流路(L
3)から分岐して作動油タンク(41)に至る戻り流路(L
4)に配置されて、戻り流路(L4)を開放してプランジャの前進を許容する許容位置(I)、及び戻り流路(L
4)を遮断してプランジャの前進を制動する制動位置(G)に切替可能なサーボバルブ(50)と、ロッド側供給流路(L
3)の戻り流路(L
4)の分岐位置より油圧ポンプ(43)側に配置されて、油圧ポンプ(43)からロッド室(38)への向かう作動油の流れを許容し、ロッド室(38)から油圧ポンプ(43)へ向かう作動油の流れを遮断するチェックバルブ(47)と、ロッド側供給流路(L
3)のチェックバルブ(47)より油圧ポンプ(43)側に配置されて、作動油から異物を除去するフィルタ(48)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内に形成されたキャビティに連通するスリーブと、
前記スリーブ内で前記キャビティに向けて前進することによって、前記スリーブ内の溶湯金属を前記キャビティに供給するプランジャと、
作動油がヘッド室に供給されることによって前記プランジャを前進させ、作動油がロッド室に供給されることによって前記プランジャを後退させる油圧シリンダと、
前記ヘッド室及び前記ロッド室に作動油を給排する油圧回路とを備えるダイカストマシンであって、
前記油圧回路は、
作動油を貯留する作動油タンクと、
予め蓄圧した作動油を、ヘッド側供給流路を通じて前記ヘッド室に供給するアキュームレータと、
前記作動油タンクに貯留された作動油を、ロッド側供給流路を通じて前記ロッド室に供給する油圧ポンプと、
前記ロッド側供給流路から分岐して前記作動油タンクに至る戻り流路に配置されて、前記戻り流路を開放して前記プランジャの前進を許容する許容位置、及び前記戻り流路を遮断して前記プランジャの前進を制動する制動位置に切替可能なサーボバルブと、
前記ロッド側供給流路の前記戻り流路の分岐位置より前記油圧ポンプ側に配置されて、前記油圧ポンプから前記ロッド室への向かう作動油の流れを許容し、前記ロッド室から前記油圧ポンプへ向かう作動油の流れを遮断するチェックバルブと、
前記ロッド側供給流路の前記チェックバルブより前記油圧ポンプ側に配置されて、作動油から異物を除去するフィルタとを備えることを特徴とするダイカストマシン。
【請求項2】
前記油圧回路は、
前記ヘッド側供給流路に配置されて、前記アキュームレータに蓄圧された作動油を前記ヘッド室に供給する供給位置、及び前記ヘッド室内の作動油を前記作動油タンクに還流させる還流位置に切替可能な前進制御バルブと、
前記ロッド側供給流路の前記チェックバルブより前記油圧ポンプ側に配置されて、前記ロッド側供給流路を開放する開放位置、及び前記ロッド側供給流路を閉塞する閉塞位置に切替可能な後退制御バルブとを備え、
前記ダイカストマシンは、前記油圧回路を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記前進制御バルブを前記供給位置にし、前記後退制御バルブを前記閉塞位置にし、前記サーボバルブを前記許容位置にすることによって、前記プランジャを前進させ、
前記サーボバルブを前記許容位置から前記制動位置に切り替えることによって、前記プランジャの前進を制動し、
前記前進制御バルブを前記還流位置にし、前記後退制御バルブを前記開放位置にすることによって、前記プランジャを後退させることを特徴とする請求項1に記載のダイカストマシン。
【請求項3】
前記油圧回路は、
前記フィルタに流入する作動油の圧力を検知する一次圧センサと、
前記フィルタから排出される作動油の圧力を検知する二次圧センサとを備え、
前記ダイカストマシンは、
報知装置と、
前記一次圧センサ及び前記二次圧センサで検知された圧力差が第1閾値以上の場合に、前記報知装置を作動させる制御装置とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載のダイカストマシン。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記圧力差が前記第1閾値より大きい第2閾値未満の場合に、前記プランジャを第1速度で後退させ、
前記圧力差が前記第2閾値以上の場合に、前記プランジャを前記第1速度より遅い第2速度で後退させることを特徴とする請求項3に記載のダイカストマシン。
【請求項5】
前記油圧ポンプは、可変容量型であり、
前記制御装置は、前記圧力差が前記第2閾値以上の場合に、前記第2閾値未満の場合より前記油圧ポンプの吐出容量を低下させることを特徴とする請求項4に記載のダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶湯金属を金型内に射出して成形品を成形するダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金型のキャビティに連通するスリーブ内に配置されたプランジャと、スリーブ内でプランジャを進退させる油圧シリンダとを備えるダイカストマシンが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、前進するプランジャを急停止させるために、特許文献2に記載されているようなサーボバルブを、油圧シリンダのロッド室から作動油タンクに至る油路に配置したダイカストマシンも存在する。
【0004】
このようなダイカストマシンでは、サーボバルブのパイロットポートに至る流路に、作動油に含まれる異物(例えば、金属粉など)を除去するフィルタを取り付けることによって、作動油の品質低下を抑制する努力がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-155378号公報
【特許文献2】特開昭53-6775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、パイロットポートに供給される作動のみがフィルタを通過するだけでは、作動油の品質を長期間に亘って維持するのは難しい。また、プランジャを前進させるための流路は大流量になるので、このような流路に取り付けるフィルタは大型で非常に高価になるという課題がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、サーボバルブを備えるダイカストマシンにおいて、低コストで長期間に亘って作動油の品質低下を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するため、金型内に形成されたキャビティに連通するスリーブと、前記スリーブ内で前記キャビティに向けて前進することによって、前記スリーブ内の溶湯金属を前記キャビティに供給するプランジャと、作動油がヘッド室に供給されることによって前記プランジャを前進させ、作動油がロッド室に供給されることによって前記プランジャを後退させる油圧シリンダと、前記ヘッド室及び前記ロッド室に作動油を給排する油圧回路とを備えるダイカストマシンであって、前記油圧回路は、作動油を貯留する作動油タンクと、予め蓄圧した作動油を、ヘッド側供給流路を通じて前記ヘッド室に供給するアキュームレータと、前記作動油タンクに貯留された作動油を、ロッド側供給流路を通じて前記ロッド室に供給する油圧ポンプと、前記ロッド側供給流路から分岐して前記作動油タンクに至る戻り流路に配置されて、前記戻り流路を開放して前記プランジャの前進を許容する許容位置、及び前記戻り流路を遮断して前記プランジャの前進を制動する制動位置に切替可能なサーボバルブと、前記ロッド側供給流路の前記戻り流路の分岐位置より前記油圧ポンプ側に配置されて、前記油圧ポンプから前記ロッド室への向かう作動油の流れを許容し、前記ロッド室から前記油圧ポンプへ向かう作動油の流れを遮断するチェックバルブと、前記ロッド側供給流路の前記チェックバルブより前記油圧ポンプ側に配置されて、作動油から異物を除去するフィルタとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、サーボバルブを備えるダイカストマシンにおいて、低コストで長期間に亘って作動油の品質低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るダイカストマシンの側面図である。
【
図3】ダイカストマシンのハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係るダイカストマシン10の側面図である。ダイカストマシン10は、金型内に溶湯金属を射出して、成形品を製造する。
図1に示すように、ダイカストマシン10は、型締装置20と、射出装置30とを主に備える。
【0012】
型締装置20は、金型21の開閉及び型締を行う。具体的には、型締装置20は、固定側金型22を支持する固定ダイプレート23と、可動側金型24を支持する可動ダイプレート25とを主に備える。固定側金型22及び可動側金型24は、ダイカストマシン10の左右方向(水平方向)において、互いに対面するように支持されている。
【0013】
可動ダイプレート25は、型開閉シリンダ26の駆動力がトグルリンク機構27を通じて伝達されることによって、タイバー28に沿って左右方向に移動する。可動ダイプレート25が左方向に移動すると、固定側金型22と可動側金型24とが離間(型開)する。一方、可動ダイプレート25が右方向に移動すると、固定側金型22と可動側金型24とが当接(型閉)する。そして、可動ダイプレート25を右方向に移動させる向きの圧力がさらに加わると、固定側金型22及び可動側金型24が型締される。
【0014】
射出装置30は、型締された金型21内に溶湯金属を射出する。射出装置30は、射出スリーブ(スリーブ)31と、プランジャ32と、油圧シリンダ33と、油圧回路40とを主に備える。本実施形態に係る射出装置30は、型締装置20と水平方向(型締装置20の右方)に離間して配置されている。
【0015】
射出スリーブ31は、固定ダイプレート23に取り付けられた円筒形状の部材である。射出スリーブ31の先端部は、型締された金型21の内部空間(以下、「キャビティ」と表記する。)に連通している。また、射出スリーブ31には、ラドル(図示省略)によって供給された溶湯金属が貯留される。
【0016】
プランジャ32は、射出スリーブ31内に進退可能に収容されている。プランジャ32が前進すると、射出スリーブ31に貯留された溶湯金属がキャビティに供給される。一方、プランジャ32が後退すると、ラドルから供給される溶湯金属を貯留する空間が射出スリーブ31内に形成される。
【0017】
油圧シリンダ33は、作動油が供給及び排出(以下、「給排」と表記する。)されて伸縮することによって、プランジャ32を進退させる。油圧シリンダ33への作動油の給排は、油圧回路40によって行われる。
図2に示すように、油圧シリンダ33は、シリンダチューブ34と、ピストン35と、ロッド36とで構成される。
【0018】
ピストン35は、シリンダチューブ34内を移動可能に構成されている。また、ピストン35は、シリンダチューブ34内を、ヘッド室37及びロッド室38に区画する。ロッド36は、基端がピストン35に接続され、シリンダチューブ34の外部に突出して、先端にプランジャ32が接続されている。
【0019】
ヘッド室37に作動油が供給され且つロッド室38から作動油が排出されると、ピストン35がロッド室38側に移動して、ロッド36が伸長する。これにより、射出スリーブ31内でプランジャ32が前進する。一方、ロッド室38に作動油が供給され且つヘッド室37から作動油が排出されると、ピストン35がヘッド室37側に移動して、ロッド36が縮小する。これにより、射出スリーブ31内でプランジャ32が後退する。
【0020】
また、
図2に示すように、ロッド36の位置は、位置センサ39によって検知される。位置センサ39は、ロッド36の位置を検知し、検知結果を示す位置信号を後述する制御装置60に出力する。位置センサ39は、例えば、リニアエンコーダである。
【0021】
図2は、油圧回路40の回路図である。
図2に示すように、油圧回路40は、作動油タンク41と、モータ42と、油圧ポンプ43と、アキュームレータ44と、チャージバルブ45と、前進制御バルブ46と、チェックバルブ47と、フィルタ48と、後退制御バルブ49と、サーボバルブ50と、一次圧センサ51と、二次圧センサ52とを主に備える。
【0022】
油圧ポンプ43とアキュームレータ44とは、チャージ流路L1によって接続されている。アキュームレータ44と油圧シリンダ33のヘッド室37とは、チャージ流路L1から分岐したヘッド側供給流路L2によって接続されている。油圧ポンプ43と油圧シリンダ33のロッド室38とは、チャージ流路L1から分岐したロッド側供給流路L3によって接続されている。油圧シリンダ33のロッド室38とサーボバルブ50とは、ロッド側供給流路L3から分岐した戻り流路L4によって接続されている。
【0023】
作動油タンク41は、作動油を貯留する。モータ42は、油圧ポンプ43を駆動するための駆動力を発生させる。油圧ポンプ43は、モータ42の駆動力が伝達されて、作動油タンク41に貯留された作動油をチャージ流路L
1に圧送する。油圧ポンプ43は、例えば、斜板式または斜軸式の可変容量型の油圧ポンプである。油圧ポンプ43には、制御装置60(
図3参照)の制御に従って吐出容量を変更するレギュレータ43aが設けられている。
【0024】
油圧ポンプ43の吐出容量を変更することによって、プランジャ32の後退速度を変化させることができる。より詳細には、制御装置60は、プランジャ32の後退速度を、吐出容量が最も大きい「高速(例えば、0.3m/sec)」、吐出容量が次に大きい「中速(例えば、0.2m/sec)」、吐出容量が最も小さい「低速(例えば、0.1m/sec)」のいずれかに設定することができる。
【0025】
アキュームレータ44は、作動油を圧縮した状態で貯留(蓄圧)し、圧縮された作動油を油圧シリンダ33のヘッド室37に供給する。より詳細には、アキュームレータ44には、チャージ流路L1を通じて油圧ポンプ43から供給される作動油が蓄圧される。また、アキュームレータ44から排出される作動油は、ヘッド側供給流路L2を通じてヘッド室37に供給される。
【0026】
チャージバルブ45は、チャージ流路L1に配置されている。より詳細には、チャージバルブ45は、チャージ流路L1のヘッド側供給流路L2との分岐位置より油圧ポンプ43側で、且つロッド側供給流路L3との分岐位置よりアキュームレータ44側に配置されている。チャージバルブ45は、非チャージ位置Aと、チャージ位置Bとに切替可能に構成されている。
【0027】
非チャージ位置Aは、チャージ流路L1を閉塞して、油圧ポンプ43から供給される作動油をアキュームレータ44にチャージ不能にする位置である。チャージ位置Bは、チャージ流路L1を開放して、油圧ポンプ43から供給される作動油をアキュームレータ44にチャージ(蓄圧)可能にする位置である。
【0028】
チャージバルブ45の初期位置は、非チャージ位置Aである。また、チャージバルブ45は、制御装置60から制御電圧が印加されることによって、非チャージ位置Aからチャージ位置Bに切り替えられる。さらに、チャージバルブ45は、制御装置60からの制御電圧の印加が停止することによって、再びチャージ位置Bから非チャージ位置Aに切り替えられる。
【0029】
前進制御バルブ46は、ヘッド側供給流路L2に配置されている。前進制御バルブ46は、還流位置Cと、供給位置Dとに切替可能に構成されている。還流位置Cは、アキュームレータ44及びヘッド室37の間を遮断し、ヘッド室37内の作動油を作動油タンク41に還流させる位置である。供給位置Dは、アキュームレータ44に蓄圧された作動油をヘッド室37に供給し、ヘッド室37及び作動油タンク41の間を遮断する位置である。
【0030】
前進制御バルブ46の初期位置は、還流位置Cである。また、前進制御バルブ46は、制御装置60から制御電圧が印加されることによって、還流位置Cから供給位置Dに切り替えられる。さらに、前進制御バルブ46は、制御装置60からの制御電圧の印加が停止することによって、再び供給位置Dから還流位置Cに切り替えられる。
【0031】
チェックバルブ47は、ロッド側供給流路L3に配置されている。より詳細には、チェックバルブ47は、ロッド側供給流路L3の戻り流路L4との分岐位置より油圧ポンプ43側に配置されている。チェックバルブ47は、油圧ポンプ43からロッド室38への向かう作動油の流れを許容し、ロッド室38から油圧ポンプ43へ向かう作動油の流れを遮断する。
【0032】
フィルタ48は、ロッド側供給流路L3に配置されている。より詳細には、フィルタ48は、チェックバルブ47より油圧ポンプ43側で且つ後退制御バルブ49よりロッド室38側に配置されている。フィルタ48は、油圧ポンプ43から供給された作動油が通過することによって、作動油に含まれる異物(例えば、金属粉など)を除去する。また、フィルタ48は、着脱(交換)可能に構成されている。
【0033】
後退制御バルブ49は、ロッド側供給流路L3に配置されている。より詳細には、後退制御バルブ49は、ロッド側供給流路L3のチェックバルブ47(より詳細には、フィルタ48)より油圧ポンプ43側に配置されている。後退制御バルブ49は、閉塞位置Eと、開放位置Fとに切替可能に構成されている。
【0034】
閉塞位置Eは、ロッド側供給流路L3を閉塞して、油圧ポンプ43からロッド室38への作動油の供給を停止する位置である。開放位置Fは、ロッド側供給流路L3を開放して、油圧ポンプ43からロッド室38へ作動油を供給する位置である。
【0035】
後退制御バルブ49の初期位置は、閉塞位置Eである。また、後退制御バルブ49は、制御装置60から制御電圧が印加されることによって、閉塞位置Eから開放位置Fに切り替えられる。さらに、後退制御バルブ49は、制御装置60からの制御電圧の印加が停止することによって、再び開放位置Fから閉塞位置Eに切り替えられる。
【0036】
サーボバルブ50は、戻り流路L4に配置されている。サーボバルブ50は、一対のパイロットポート50a、50bを備える。サーボバルブ50は、アキュームレータ(図示省略)から一対のパイロットポート50a、50bのいずれかにパイロット圧油が供給されることによって、制動位置Gと、ループ位置Hと、許容位置Iとに切替可能に構成されている。また、アキュームレータからパイロットポート50a、50bに至る流路には、フィルタ53が配置されている。
【0037】
制動位置Gは、戻り流路L4を遮断して、ロッド室38内の作動油が作動油タンク41に還流するのを阻止(換言すれば、プランジャ32の前進を制動)する位置である。ループ位置Hは、戻り流路L4のロッド室38側と、戻り流路L4の作動油タンク41側とを、独立したループ流路にする位置である。許容位置Iは、戻り流路L4を開放して、ロッド室38内の作動油が作動油タンク41に還流するのを許容(換言すれば、プランジャ32の前進を許容)する位置である。
【0038】
サーボバルブ50の初期位置は、制動位置Gである。また、サーボバルブ50は、パイロットポート50aにパイロット圧油が供給されることによって、制動位置Gからループ位置Hに切り替えられる。また、サーボバルブ50は、パイロットポート50bにパイロット圧油が供給されることによって、制動位置Gから許容位置Iに切り替えられる。さらに、サーボバルブ50は、パイロットポート50a、50bへのパイロット圧油の供給が停止することによって、制動位置Gに戻る。
【0039】
一次圧センサ51は、ロッド側供給流路L3のフィルタ48及び後退制御バルブ49の間に配置されている。一次圧センサ51は、フィルタ48に流入する作動油の圧力(以下、「一次圧P1」と表記する。)を検知し、検知結果を示す圧力信号を制御装置60に出力する。
【0040】
二次圧センサ52は、ロッド側供給流路L3のチェックバルブ47及びフィルタ48の間に配置されている。二次圧センサ52は、フィルタ48から排出される作動油の圧力(以下、「二次圧P2」と表記する。)を検知し、検知結果を示す圧力信号を制御装置60に出力する。
【0041】
図3は、ダイカストマシン10のハードウェア構成図である。ダイカストマシン10は、制御装置60を備える。制御装置60は、例えば、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)61、各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)62、及び演算手段の作業領域となるRAM(Random Access Memory)63を備える。そして、ROM62に記憶されたプログラムをCPU61が読み出して実行することによって、後述する各処理を実現してもよい。
【0042】
但し、制御装置60の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0043】
制御装置60は、ダイカストマシン10全体の動作を制御する。より詳細には、制御装置60は、位置センサ39から出力される位置信号と、一次圧センサ51及び二次圧センサ52から出力される圧力信号とを取得する。また、制御装置60は、レギュレータ43aを制御して油圧ポンプ43の吐出容量を増減させる。また、制御装置60は、チャージバルブ45、前進制御バルブ46、及び後退制御バルブ49へ制御電圧を印加及び印加停止する。また、制御装置60は、パイロットポート50a、50bに供給されるパイロット圧油の供給を制御するソレノイドバルブ(図示省略)へ制御電圧を印加及び印加停止する。さらに、制御装置60は、報知装置64を作動させる。
【0044】
報知装置64は、ダイカストマシン10のオペレータに情報を報知する装置である。報知装置64の具体例は特に限定されないが、文字、画像、または映像を表示させるディスプレイ、点灯または点滅するLEDランプ、または音声を出力するスピーカである。
【0045】
次に、ダイカストマシン10が成形品を成形する処理を説明する。
図4は、射出制御処理のフローチャートである。射出制御処理は、複数の成形品を連続して成形する処理である。射出制御処理の開始時点において、金型21は型締され、射出スリーブ31には溶湯金属が貯留され、プランジャ32の後退速度は「高速」に設定され、アキュームレータ44には所定圧力の作動油が蓄圧されているものとする。
【0046】
まず、制御装置60は、チャージバルブ45を非チャージ位置Aにし、前進制御バルブ46を供給位置Dにし、後退制御バルブ49を閉塞位置Eにし、サーボバルブ50を許容位置Iにする(S11、射出前進)。これにより、ヘッド側供給流路L2を通じてアキュームレータ44からヘッド室37に作動油が供給され、戻り流路L4を通じてロッド室38から作動油タンク41に作動油が排出される。その結果、プランジャ32が所定の前進速度(例えば、10m/sec)で前進し、射出スリーブ31内の溶湯金属がキャビティ内に射出される。
【0047】
次に、制御装置60は、位置センサ39から出力される位置信号に基づいて、プランジャ32が予め定められた前進位置に到達するまで(S12:No)、ステップS11の状態を維持する。そして、制御装置60は、プランジャ32が前進位置に到達したタイミングで(S12:Yes)、チャージバルブ45を非チャージ位置Aにし、前進制御バルブ46を供給位置Dにし、後退制御バルブ49を閉塞位置Eにし、サーボバルブ50を制動位置Gにする(S13、増圧)。サーボバルブ50を許容位置Iから制動位置Gに切り替えると、ロッド室38から作動油タンク41への作動油の排出がサーボバルブ50によって阻止される。これにより、前進しているプランジャ32が急制動される。
【0048】
次に、制御装置60は、ステップS13の実行時点から予め定められた保圧時間が経過するまで(S14:No)、ステップS13の状態を維持する。そして、制御装置60は、保圧時間が経過したタイミングで(S14:Yes)、チャージバルブ45を非チャージ位置Aにし、前進制御バルブ46を還流位置Cにし、後退制御バルブ49を開放位置Fにし、サーボバルブ50をループ位置Hにする(S15、射出後退)。これにより、ロッド側供給流路L3を通じて油圧ポンプ43からロッド室38に作動油が供給され、前進制御バルブ46を通じてヘッド室37から作動油タンク41に作動油が排出される。その結果、プランジャ32が所定の後退速度(ここでは、高速)で後退する。
【0049】
また、ステップS15を実行することによって、油圧ポンプ43から供給される作動油がフィルタ48を通過する。そこで、制御装置60は、一次圧センサ51で検知される一次圧P1と、二次圧センサ52で検知される二次圧P2との差である圧力差ΔPを算出する。そして、制御装置60は、算出した圧力差ΔPと、予め定められた第1閾値Pth1とを比較する(S16)。そして、制御装置60は、圧力差ΔPが第1閾値Pth1以上の場合に(S16:Yes)、報知装置64を作動させる(S17)。制御装置60は、例えばステップS17において、フィルタ48の交換を促すメッセージをディスプレイに表示させる。一方、制御装置60は、圧力差ΔPが第1閾値Pth1未満の場合に(S16:No)、ステップS17の処理をスキップする。
【0050】
次に、制御装置60は、位置センサ39から出力される位置信号に基づいて、プランジャ32が予め定められた後退位置に到達するまで(S18:No)、ステップS15~S17の状態を維持する。そして、制御装置60は、プランジャ32が後退位置に到達したタイミングで(S18:Yes)、チャージバルブ45を非チャージ位置Aにし、前進制御バルブ46を還流位置Cにし、後退制御バルブ49を閉塞位置Eにし、サーボバルブ50を制動位置Gにする(S19、射出動作完了)。これにより、プランジャ32が後退位置で停止する。
【0051】
次に、制御装置60は、後退速度切替処理を実行する(S20)。
図5は、後退速度切替処理のフローチャートである。後退速度切替処理は、ステップS16で算出した圧力差ΔPに基づいて、次のステップS15におけるプランジャ32の後退速度を切り替える処理である。但し、後退速度切替処理は省略可能である。
【0052】
まず、制御装置60は、直近のステップS16で算出した圧力差ΔPと、予め定められた第2閾値Pth2及び第3閾値Pth3とを比較する(S31、S32)。なお、Pth1<Pth2<Pth3である。
【0053】
そして、制御装置60は、圧力差ΔPが第2閾値Pth2未満の場合に(S31:No)、後退速度を高速(第1速度)に設定する(S33)。また、制御装置60は、圧力差ΔPが第2閾値Pth2以上で且つ第3閾値Pth3未満の場合に(S31:Yes&S32:No)、後退速度を中速(第2速度)に設定する(S34)。さらに、制御装置60は、圧力差ΔPが第3閾値Pth3以上の場合に(S31:Yes&S32:Yes)、後退速度を低速(第3速度)に設定する(S35)。より詳細には、制御装置60は、油圧ポンプ43の吐出容量を、ステップS33~S35で設定したプランジャ32の後退速度に対応する値に変更する。
【0054】
また図示は省略するが、制御装置60は、ステップS15~S20の処理と並行して、金型21を型開し、可動側金型24に保持された成形品を取出し、射出スリーブ31に溶湯金属を貯留する。さらに図示は省略するが、制御装置60は、アキュームレータ44内の作動油の圧力が下限値を下回った場合に、チャージバルブ45をチャージ位置Bに切り替える。これにより、チャージ流路L1を通じて油圧ポンプ43からアキュームレータ44に作動油が供給される。そして、制御装置60は、アキュームレータ44内の作動油の圧力が上限値に達したタイミングでチャージバルブ45を非チャージ位置Aに切り替える。アキュームレータ44に作動油をチャージする処理は、例えば、型開、成形品の取出し、溶湯金属の補給などと並行して実行される。
【0055】
次に
図4に戻って、制御装置60は、所定の数の成形品を成形したか否かを判定する(S21)。そして、制御装置60は、未だ所定の数の成形品を成形していないと判定した場合に(S21:No)、ステップS11~S20の射出処理を再び実行する。一方、制御装置60は、所定の数の成形品を成形したと判定した場合に(S21:Yes)、射出制御処理を終了する。すなわち、制御装置60は、所定の数の成形品を成形するまでステップS11~S20の射出処理を繰り返す。そして、制御装置60は、繰り返し実行されるステップS20において、次のステップS15における後退速度を設定する。
【0056】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0057】
プランジャ32の後退速度は、プランジャ32の前進速度と比較して十分に遅い。そのため、油圧回路40内において、ロッド側供給流路L3(より詳細には、油圧ポンプ43からチェックバルブ47の間)の作動油の流量は、ヘッド側供給流路L2及び戻り流路L4の作動油の流量より小さい。
【0058】
また、ロッド側供給流路L3を通過する作動油の累積量(すなわち、プランジャ32が後退位置に到達したときのロッド室38の容積に相当する量)は、アキュームレータからパイロットポート50a、50bに供給される(すなわち、フィルタ53を通過する)作動油の量より十分に大きい。
【0059】
そこで、上記の実施形態のように、ロッド側供給流路L3のチェックバルブ47より油圧ポンプ43側にフィルタ48を配置することによって、小さな(すなわち、廉価な)フィルタ48で作動油から異物を適切に除去することができる。その結果、低コストで長期間に亘って作動油の品質低下を抑制することができる。
【0060】
また、上記の実施形態によれば、戻り流路L4にサーボバルブ50を配置することによって、プランジャ32の前進速度を最高速度から0にまで急制動することができる。これにより、キャビティ内における溶湯金属の供給不足を抑制することができる。その結果、成形品の成形不良が抑制される。
【0061】
また、上記の実施形態によれば、圧力差ΔPが第1閾値Pth1以上になった場合に、報知装置64を作動させるので、目詰まりが進む前にフィルタ48の交換を促すことができる。さらに、上記の実施形態によれば、圧力差ΔPが第1閾値Pth1より大きい第2閾値Pth2以上の場合に、次の射出処理におけるプランジャ32の後退速度を低下させるので、フィルタ48の目詰まりの進行を遅らせることができる。その結果、フィルタ48の目詰まりの進行に伴うダイカストマシン10の停止時期を延伸することができる。
【0062】
なお、プランジャ32の後退速度は3段階に限定されず、2段階でもよいし、4段階以上でもよい。また、プランジャ32の後退速度を変更する具体的な方法は、油圧ポンプ43の吐出容量を変更することに限定されず、後退制御バルブ49を電磁比例弁にすることによって実現してもよい。さらに、報知の有無及び後退速度の切り替えに用いるパラメータは、圧力差ΔPに限定されず、フィルタ48の目詰まりの程度と相関のある他のパラメータでもよい。
【0063】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0064】
10…ダイカストマシン、20…型締装置、21…金型、22…固定側金型、23…固定ダイプレート、24…可動側金型、25…可動ダイプレート、26…型開閉シリンダ、27…トグルリンク機構、28…タイバー、30…射出装置、31…射出スリーブ、32…プランジャ、33…油圧シリンダ、34…シリンダチューブ、35…ピストン、36…ロッド、37…ヘッド室、38…ロッド室、39…位置センサ、40…油圧回路、41…作動油タンク、42…モータ、43…油圧ポンプ、43a…レギュレータ、44…アキュームレータ、45…チャージバルブ、46…前進制御バルブ、47…チェックバルブ、48…フィルタ、49…後退制御バルブ、50…サーボバルブ、50a,50b…パイロットポート、51…一次圧センサ、52…二次圧センサ、60…制御装置、61…CPU、62…ROM、64…報知装置