(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056044
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】回転速度判定装置
(51)【国際特許分類】
H02P 3/22 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
H02P3/22 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163821
(22)【出願日】2020-09-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】池上 貴一
(72)【発明者】
【氏名】森本 亮太
【テーマコード(参考)】
5H530
【Fターム(参考)】
5H530AA02
5H530BB32
5H530CC20
5H530CC26
5H530CD24
5H530CE15
5H530CF05
(57)【要約】
【課題】モータの回転速度が、当該モータを非常停止させることが可能な回転速度であるか否かを判定する回転速度判定装置を提供する。
【解決手段】被回転体20に連結されて、この被回転体20を回転させるモータ11と、モータ11の作動を制御するとともに、モータ11の制御が不能となった場合に、このモータ11を非常停止させる回転制御部13とを備えた回転装置10において、モータ11の回転速度の適否を判定する装置である。回転速度判定装置1は、モータ11及び被回転体20のイナーシャを推定するイナーシャ推定部2と、イナーシャ推定部2によって推定されたイナーシャに基づいて、予定された回転速度の適否を判定する判定部3と、判定部3によって不適と判定された場合に、その旨を報知する報知部4とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被回転体に連結されて、該被回転体を回転させるモータと、該モータの作動を制御するとともに、該モータの作動中において該モータに接続されたアンプによる該モータの制御が不能となった場合に該モータを非常停止させる回転制御部とを備えた回転装置において、前記モータが回転するその回転速度の適否を判定する装置であって、
前記モータ及び被回転体のイナーシャを推定するイナーシャ推定部と、
前記イナーシャ推定部によって推定されたイナーシャに基づいて、予定された回転速度の適否を判定する判定部と、
前記判定部によって不適と判定された場合に、その旨を報知する報知部とを備えて構成されていることを特徴とする回転速度判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記イナーシャ推定部によって推定されたイナーシャが、予定された回転速度に対して許容される許容イナーシャを越えているとき、前記回転速度が不適であると判定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の回転速度判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、予定された前記回転速度が、前記イナーシャ推定部によって推定されたイナーシャに対して許容される許容回転速度を越えているとき、予定された前記回転速度が不適であると判定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の回転速度判定装置。
【請求項4】
前記イナーシャ推定部は、前記被回転体について設定された3次元モデルデータを外部から取得し、取得された3次元モデルデータを基に、前記被回転体のイナーシャを推定するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回転速度判定装置。
【請求項5】
前記イナーシャ推定部は、カメラによって撮像された前記被回転体の画像を外部から取得し、取得された画像を基に、前記被回転体のイナーシャを推定するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回転速度判定装置。
【請求項6】
前記イナーシャ推定部は、前記モータが予定された回転速度で回転するときに、前記回転速度に達するまでの加速時間及び前記回転速度を前記回転装置から取得し、取得された加速時間及び回転速度に基づいて、前記モータ及び被回転体のイナーシャを推定するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回転速度判定装置。
【請求項7】
前記判定部は、回転速度が不適であると判定されたとき、推定された前記イナーシャに応じて許容される回転速度を推定し、推定された回転速度に係るデータを前記回転装置の回転制御部に送信するように構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の回転速度判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被回転体を回転させるモータと、このモータの作動を制御する回転制御部とを備えた回転装置において、前記モータの回転速度の適否を判定する回転速度判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工作機機械の分野では、被回転体であるワークや工具を回転させるために回転装置が用いられており、この回転装置は、一般的に、前記被回転体に連結されて、当該被回転体を回転させるモータ、このモータの作動を制御する回転制御部などを備えて構成される。
【0003】
そして、前記回転制御部には、一般的に、停電やその他の原因によって、前記モータの回転中に、当該モータに接続されたアンプによる制御が不能となったとき、当該モータを非常停止させるためのダイナミックブレーキ回路と呼ばれる回路が設けられている。このようなダイナミックブレーキ回路を備えた回転装置の一例として、従来、特許第6285477号公報(各特許文献1)に開示されたモータ駆動装置が知られている。
【0004】
このモータ駆動装置は、同公報に開示されるように、モータを駆動するインバータと、モータの回転速度を取得する回転速度取得部と、モータのイナーシャに関する情報を格納したイナーシャ情報格納部と、モータの回転速度及びイナーシャに基づいて、モータの回転エネルギーを計算する回転エネルギー計算部と、非常停止時にモータの発電制動によって減速トルクを発生させるダイナミックブレーキ回路と、このダイナミックブレーキ回路における抵抗の耐量に関する情報を格納した耐量情報格納部と、モータの非常停止時に上アーム及び下アームのうちの一方のアームのパワー素子をオンし、他方のアームのパワー素子をオフするパワー素子操作部と、ダイナミックブレーキ回路のスイッチを操作するダイナミックブレーキ回路操作部と、モータの回転エネルギーとダイナミックブレーキ回路の耐量とを比較する耐量比較部とから構成される。
【0005】
そして、ダイナミックブレーキ回路操作部は、モータの回転エネルギーがダイナミックブレーキ回路の耐量を超えている場合には、ダイナミックブレーキ回路を動作させないで、モータの回転エネルギーがダイナミックブレーキ回路の耐量以下の場合に、ダイナミックブレーキ回路を動作させる。尚、モータの回転エネルギーがダイナミックブレーキ回路の耐量を超えている場合には、ダイナミックブレーキ回路操作部は、しばらくモータを空転させることにより、その回転速度が低下し、モータの回転エネルギーがダイナミックブレーキ回路の耐量以下になった後に、ダイナミックブレーキ回路を動作させる。
【0006】
斯くして、この従来のモータ駆動装置では、上記のようなダイナミックブレーキ回路操作部の動作により、ダイナミックブレーキ回路の損傷が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した工作機械の場合、モータが回転させる対象物として被回転体には、上述したワークや工具の他に、これらワークや工具を保持する主軸などが含まれている。したがって、モータを非常停止させるためには、モータの他に、これらの被回転体のイナーシャに基づいた回転エネルギーを考慮する必要がある。
【0009】
ところが、上述した従来のモータ駆動装置では、モータのみのイナーシャに基づいて、モータの回転エネルギーを算出しているため、モータを非常停止させるために必要なエネルギーを正確に算出することができていなかった。
【0010】
主軸については、当該工作機械においては不変であり、その設計上の形状や材質から、イナーシャを算出することができるが、ワークについては、様々な大きさや形状のものが当該工作機械により加工され、また、工具についても、加工に応じて様々な大きさや形状のものが使用される。したがって、モータや主軸のイナーシャの他に、その時に加工されているワーク、及びその時に使用されている工具のイナーシャについても、これを正確に認識できなければ、加工中のモータを非常停止させるために必要なエネルギーを正確に算出することはできない。
【0011】
また、従来のモータ駆動装置では、モータの回転エネルギーがダイナミックブレーキ回路の耐量を超えている場合には、しばらくモータを空転させるようにしており、このような態様では、ダイナミックブレーキ回路の焼き付きを防止することができるかもしれないが、本来的な目的である、モータの非常停止については、これを達成することができない。
【0012】
本発明者等は、以上のような背景に鑑み、以下の知見を得るに至ったものである。即ち、モータ及び被回転体の回転エネルギーがダイナミックブレーキ回路の耐量内であれば、ダイナミックブレーキ回路に焼き付きを生じることなく、モータを非常停止させることが可能であること。そして、モータ及び被回転体の正確なイナーシャが分かれば、ダイナミックブレーキ回路に焼き付きを生じることなくモータを非常停止させることが可能なモータの回転速度を算出することができること。言い換えれば、モータ及び被回転体の正確なイナーシャが分かれば、予定されたモータの回転速度が、ダイナミックブレーキ回路に焼き付きを生じることなく、当該モータを非常停止させることが可能な回転速度であるか否かを判別できること。
【0013】
そこで、本発明は、予定されたモータの回転速度が、当該モータを非常停止させることが可能な回転速度であるか否かを判定する回転速度判定装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、被回転体に連結されて、該被回転体を回転させるモータと、該モータの作動を制御するとともに、該モータの作動中において該モータに接続されたアンプによる該モータの制御が不能となった場合に該モータを非常停止させる回転制御部とを備えた回転装置において、前記モータが回転するその回転速度の適否を判定する装置であって、
前記モータ及び被回転体のイナーシャを推定するイナーシャ推定部と、
前記イナーシャ推定部によって推定されたイナーシャに基づいて、予定された回転速度の適否を判定する判定部と、
前記判定部によって不適と判定された場合に、その旨を報知する報知部とを備えて構成さる回転速度判定装置に係る。
【0015】
この回転速度判定装置によれば、前記イナーシャ推定部により、前記モータ及び被回転体のイナーシャが推定される。尚、被回転体はモータにより駆動されて回転する物体であり、例えば、工作機械の主軸装置の場合には、主軸、これに取り付けられたチャック、及びチャックに把持されたワークなどが含まれ、また、工具主軸装置の場合には、主軸、及びこれに取り付けられた工具などが含まれる。
【0016】
そして、前記イナーシャ推定部により推定されたイナーシャ(推定イナーシャ)に基づいて、前記判定部により、予定された前記モータの回転速度につき、その適否が判定される。例えば、前記モータ及び被回転体の回転エネルギーは、当該モータ及び被回転体のイナーシャ、並びに回転速度から算出することができる。そして、前記回転制御部によって前記モータを非常停止させる際に消費される単位時間当たりのエネルギーと、前記モータ及び被回転体の回転エネルギーとに基づいて、前記回転制御部により当該モータを非常停止させることができる時間を算出することができる。
【0017】
したがって、モータを非常停止させる際の許容時間が定まり、更に、モータに予定された回転速度(予定回転速度)が定まれば、予定回転速度で回転しているモータを許容時間内で非常停止させることができる許容イナーシャ(即ち、予定回転速度に対して設定される閾値)が求まる。そこで、前記判定部は、前記推定イナーシャと前記許容イナーシャとを比較し、推定イナーシャが許容イナーシャ以下であれば、当該予定回転速度は適正であると判定し、推定イナーシャが許容イナーシャを超える場合には、当該予定回転速度は不適であると判定することができる。
【0018】
或いは、モータを非常停止させる際の許容時間が定まり、更に、モータ及び被回転体のイナーシャが推定されれば、モータを許容時間内で非常停止させることができる許容回転速度(即ち、推定イナーシャに対して設定される閾値)が求まる。斯くして、前記判定部は、モータの予定回転速度と、前記許容回転速度を比較し、予定回転速度が許容回転速度以下であれば、当該予定回転速度は適正であると判定し、予定回転速度が許容回転速度を超える速度であれば、当該予定回転速度は不適であると判定することができる。
【0019】
そして、前記判定部によって不適と判定された場合には、前記報知部によりその旨が報知される。尚、報知の態様としては、適宜ディスプレイを用いた表示や、スピーカを介した音声出力などの態様を例示することができる。
【0020】
斯くして、本発明に係る回転速度判定装置によれば、モータに対して予定された回転速度が、当該モータを許容時間内に非常停止させることができる回転速度であるか否かを判定することができるので、予定回転速度が適正な場合には、そのまま当該モータを回転させ、予定回転速度が適正でない場合には、当該モータを停止させるといった処置を講じることができる。そして、このような態様を採ることで、モータを非常停止させる必要が生じたときに、当該モータを確実に許容時間内で停止させることができる。
【0021】
また、この回転速度判定装置では、前記イナーシャ推定部により、モータのみならず、このモータによって駆動される被回転体のイナーシャも推定し、これらモータ及び被回転体のイナーシャに基づいて、モータを非常停止させる時間を算出するようにしているので、当該非常停止時間を正確に算出することができ、ひいては、上述した予定回転速度が適正か否かの判定を正確に行うことができる。
【0022】
尚、本発明において、前記イナーシャ推定部は、前記被回転体のイナーシャを推定する際に、当該被回転体の3次元モデルデータを外部から取得し、取得された3次元モデルデータを基に、前記被回転体のイナーシャを推定することができる。
【0023】
或いは、前記イナーシャ推定部は、前記被回転の内、外部から観察することができるものについては、カメラにより撮像された当該被回転体の画像を外部から取得し、取得された画像を基に、当該被回転体のイナーシャを推定することができる。
【0024】
また、本発明において、前記イナーシャ推定部は、前記モータが予定された回転速度で回転するときに、前記回転速度に達するまでの加速時間及び前記回転速度を前記回転装置から取得し、取得された加速時間及び回転速度に基づいて、前記モータ及び被回転体のイナーシャを推定することができる。
【0025】
また、本発明において、前記判定部は、回転速度が不適であると判定されたとき、推定された前記イナーシャに応じて許容される回転速度を推定し、推定された回転速度に係るデータを前記回転装置の回転制御部に送信するように構成されていても良い。このようにすれば、前記回転制御部は、推定イナーシャに応じた適正な回転速度で前記モータを回転させることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明に係る回転速度判定装置によれば、モータに対して予定された回転速度が、当該モータを許容時間内に非常停止させることができる回転速度であるか否かを判定することができるので、予定回転速度が適正な場合には、そのまま当該モータを回転させ、予定回転速度が適正でない場合には、当該モータを停止させるといった処置を講じることができる。そして、このような態様を採ることで、モータを非常停止させる際に、当該モータを確実に許容時間内で停止させることができる。
【0027】
また、この回転速度判定装置では、前記イナーシャ推定部により、モータのみならず、このモータによって駆動される被回転体のイナーシャも推定し、これらモータ及び被回転体のイナーシャに基づいて、モータを非常停止させる時間を算出するようにしているので、当該非常停止時間を正確に算出することができ、ひいては、上述した予定回転速度が適正か否かの判定を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る回転速度判定装置及び回転装置を示したブロック図である。
【
図2】第1の実施形態における回転制御部に設けられる非常停止回路を含む主軸モータの回路を示した回路図である。
【
図3】モータ及び被回転体を所定時間内に非常停止させる場合の許容イナーシャと許容回転速度との関係を示した線図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る回転速度判定装置及び回転装置を示したブロック図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態に係る回転速度判定装置及び回転装置を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態に係る回転速度判定装置について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、本例の回転速度判定装置1は、回転装置10における回転速度の適否を判定する装置である。
【0031】
本例の回転装置10は、NC旋盤の一部を構成するもので、同じくNC旋盤の一部を構成する被回転体20を駆動して回転させる。被回転体20は、回転自在に主軸台(図示せず)に支持される主軸21、この主軸21の先端部に取り付けられるチャック22、及びこのチャック22に把持されたワーク23から構成される。尚、本例では、回転装置10、及びこの回転装置10によって駆動される被回転体20を、NC旋盤の構成物としたが、このような態様に限られるものでは無く、マシニングセンタなどの他の工作機械の構成物や、他のあらゆる機械の構成物とすることができる。
【0032】
前記回転装置10は、前記主軸21に接続されて、当該主軸21を回転させる主軸モータ(同期モータ)11、この主軸モータ11の回転速度等を検出するロータリエンコーダ12、前記主軸モータ11の動作を制御する回転制御部13、及びNCプログラム記憶部14などから構成される。
【0033】
前記NCプログラム記憶部14は、NC旋盤の加工で用いられるNCプログラムを記憶する機能部であり、RAMなどの適宜記憶媒体から構成される。尚、NCプログラムには、各送り軸に関する位置指令や、前記被回転体20の回転に関する指令(回転方向、及び回転速度)などが含まれる。
【0034】
前記回転制御部13は、前記主軸モータ11の回転動作を制御する機能部であり、NCプログラム記憶部14に格納されたNCプログラムが実行される際に、当該NCプログラム中に含まれる回転に関する指令に従って、指令された回転方向、及び指令された回転速度で前記主軸モータ11を回転させる。その際、回転制御部13は、前記ロータリエンコーダ12によって検出される主軸モータ11の回転速度に基づいて、当該主軸モータ11をフィードバック制御する。尚、NCプログラム中に含まれる回転以外の指令、例えば上記送り軸の関する位置指令は、回転制御部13以外の他の制御部である送り軸制御部によって制御が実行される。他の指令についても同様である。
【0035】
また、前記回転制御部13は、停電や、その他の原因により、前記主軸モータ11に供給される電力が遮断されたときに、当該主軸モータ11を非常停止させるための回路(非常停止回路であり、従来例ではダイナミックブレーキ回路と称されている。)を備えている。この非常停止回路は、電力供給が遮断されたときに、主軸モータ11に接続される回路であり、電力遮断時に、主軸モータ11との間に、
図2に示した短絡回路を形成する。この短絡回路によれば、電力供給が遮断されて、前記主軸モータ11及び前記被回転体20が空転することよって当該主軸モータ11に発生する誘起電流を、コイルに流すことで当該主軸モータ11及び被回転体20の回転エネルギーを熱に変換して消費させ(銅損を生じさせ)、これにより主軸モータ11を停止させるというものである。尚、非常停止回路としては、このようなダイナミックブレーキ回路に限られるものではなく、例えば、供給電力が遮断されたときに、主軸モータ11とこれを駆動するアンプとの間で動力線間を短絡して、主軸モータ11の内部抵抗のみで電力を消費させるように構成された短絡回路でも良い。
【0036】
この回転制御部13は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータの他、適宜構成の電気回路、電子回路などから構成される。
【0037】
尚、
図2に示した非常停止回路における銅損P
loss[J/s]は、以下の数式1よって算出することができる。
(数式1)
P
loss=3RI
2=R・(K
m・ω
m)
2/(R
2+(ω
m・p・L)
2)
但し、Rは1相分の抵抗値[Ω]、Lは1相分のインダクタンス[H]、K
mは線間誘起電圧定数[Vrms/(rad/s)]、ω
mは回転角速度[rad/s](回転角速度は回転速度[m/s]と等価であるため、以下では、「回転速度」と総称する。)、pは極対数(極数/2)である。
【0038】
前記回転速度判定装置1は、イナーシャ推定部2、判定部3及び報知部4から構成される。尚、この回転速度判定装置1は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、前記イナーシャ推定部2、判定部3及び報知部4は、それぞれコンピュータプログラムによってその機能が実現され、後述する処理を実行する。
【0039】
前記イナーシャ推定部2は、前記回転制御部13から、前記主軸モータ11が回転を開始してから目標とする回転速度に達するまでの時間(加速時間)、及び達した回転速度に係るデータを取得し、これらのデータに基づいて、主軸モータ11及び被回転体20のイナーシャを推定する処理を行う。
【0040】
主軸モータ11の加速時間をtac[s]、主軸モータ11及び被回転体20のイナーシャをI[kgm2]、加速時の主軸モータ11の出力をPmotor[w]、回転速度をω[rad/s]とすると、以下の関係式(数式2)が成立する。
(数式2)
I=(2Pmotor・tac)/ω2
イナーシャ推定部2は、回転制御部13から、主軸モータ11の加速時間tac、及び回転速度ωに係るデータを取得して、上記数式2に従って、主軸モータ11及び被回転体20のイナーシャIを推定する。
【0041】
前記判定部3は、前記イナーシャ推定部2により推定された主軸モータ11及び被回転体20のイナーシャIを基に、主軸モータ11の回転速度ω(目標回転速度として予定された回転速度)の適否を判定する処理を行う。主軸モータ11の回転速度ωの適否は、主軸モータ11への電力の供給が遮断されたときに、前記回転制御部13に設けられた非常停止回路により、主軸モータ11及び被回転体20を所定時間(許容時間)内に停止可能か否かで決定される。尚、この許容時間は、非常停止回路に負荷がかかったときに当該非常停止回路が焼き付かない時間であり、回路毎に経験的に設定された時間を用いることができる。
【0042】
ところで、前記非常停止回路で主軸モータ11及び被回転体20を停止させることができる時間(非常停止)tsは、主軸モータ11及び被回転体20の回転エネルギーをreとすると、上述した非常停止回路の銅損Plossを用いて、以下の数式3によって算出することができる。
(数式3)
ts=re/Ploss
但し、
re=(I・ω2)/2
よって、
ts=(I・ω2)/(2・Ploss)
【0043】
そして、許容時間をtawとすると、主軸モータ11及び被回転体20を許容時間taw内に停止させるためには、主軸モータ11及び被回転体20のイナーシャIは、以下の数式4を満足する必要がある。
(数式4)
taw>ts=(I・ω2)/(2・Ploss)
したがって、
I<2・Ploss・taw/ω2
【0044】
言い換えれば、回転速度ωで回転する主軸モータ11及び被回転体20を許容時間taw内に停止させるために、主軸モータ11及び被回転体20に許容されるイナーシャIawは、以下の数式5によって表される。
(数式5)
Iaw=2・Ploss・taw/ω2
【0045】
そこで、前記判定部3は、前記イナーシャ推定部2によって推定された主軸モータ11及び被回転体20の推定イナーシャIを、許容イナーシャ(閾値)Iawと比較し、推定イナーシャIが許容イナーシャIaw以下であれば、主軸モータ11の回転速度ωは適正であると判定し、推定イナーシャIが許容イナーシャIawを超える場合には、主軸モータ11の回転速度ωは不適であると判定する。
【0046】
或いは、他の態様として、判定部3は、推定イナーシャIが、上記数式4を満足するか否かを判別し、推定イナーシャIが数式4を満足する場合には、主軸モータ11の回転速度ωは適正であると判定し、推定イナーシャIが数式4を満足しない場合には、主軸モータ11の回転速度ωは不適であると判定することができる。
【0047】
更に他の態様としては、主軸モータ11の回転速度ωに着目すると、主軸モータ11を非常停止させる際の許容時間tawが設定され、主軸モータ11及び被回転体20のイナーシャIが推定されれば、主軸モータ11及び被回転体20を許容時間taw内に停止させるためには、主軸モータ11の回転速度ωは、上記数式4から、以下の数式6を満足する必要がある。
(数式6)
ω<(2・Ploss・taw/I)1/2
【0048】
言い換えれば、イナーシャIを有する主軸モータ11及び被回転体20を許容時間taw内に停止させるために、主軸モータ11及び被回転体20に許容される許容回転速度ωawは、以下の数式7によって表される。
(数式7)
ωaw=(2・Ploss・taw/I)1/2
【0049】
そこで、前記判定部3は、主軸モータ11の回転速度ωと、前記許容回転速度ωawとを比較し、回転速度ωが許容回転速度ωaw以下であれば、当該回転速度ωは適正であると判定し、回転速度ωが許容回転速度ωawを超える速度であれば、当該回転速度ωは不適であると判定する。
【0050】
或いは、判定部3は、主軸モータ11の回転速度ωが、推定イナーシャIに基づいて算出される上記数式6を満足するか否かを判別し、回転速度ωが数式6を満足する場合には、主軸モータ11の回転速度ωは適正であると判定し、回転速度ωが数式6を満足しない場合には、主軸モータ11の回転速度ωは不適であると判定することができる。
【0051】
尚、主軸モータ11及び被回転体20を合わせたイナーシャIと、このイナーシャIに対して許容される主軸モータ11及び被回転体20の許容回転速度ω
awとの関係、言い換えれば、主軸モータ11及び被回転体20の回転速度ωに対して許容される主軸モータ11及び被回転体20を合わせた許容イナーシャI
awとの関係は、
図3に示した限界曲線で表される。そして、主軸モータ11及び被回転体20のイナーシャIに対して、主軸モータ11の回転角速度ωが、限界曲線より下の領域である場合には、当該回転角速度ωは適正であり、限界曲線より上の領域となる場合には、当該回転角速度ωは不適である。
【0052】
そして、判定部3は、回転速度ωが不適であると判定された場合には、上記数式7に従って算出される、或いは既に算出した許容回転速度ωawに減速する指令を前記回転制御部13に送信して、主軸モータ11の回転速度を許容回転速度ωawに減速させる処理を行う。
【0053】
前記報知部5は、ディスプレイ5に接続されており、前記判定部3により判定された前記主軸モータ11の回転角速度ωの適否について、当該ディスプレイ5に表示する。特に、回転速度ωが不適であると判定された場合には、外部に明瞭に認識されるように、強調表示を行う、或いは、アラームを伴った表示を行うのが好ましい。
【0054】
以上の構成を備えた本例の回転速度判定装置1によれば、前記回転制御部13により、前記主軸モータ11が駆動されて回転を開始すると、前記イナーシャ推定部2により、前記主軸モータ11が回転を開始してから目標とする回転速度に達するまでの加速時間tac、及び達した回転速度ωに係るデータが、前記回転制御部13から取得され、取得された加速時間tac及び回転速度ωに基づいて、主軸モータ11及び被回転体20のイナーシャIが推定される。
【0055】
そして、前記イナーシャ推定部2により推定された主軸モータ11及び被回転体20のイナーシャIに基づいて、前記判定部3により、当該主軸モータ11の回転速度ωの適否、即ち、当該主軸モータ11への電力の供給が遮断されたときに、前記回転制御部13に設けられた非常停止回路によって、前記主軸モータ11及び被回転体20を所定時間(許容時間taw)内に停止可能な回転速度か否かが判定され、この判定結果が、前記報知部5を介して、前記ディスプレイ5に表示される。
【0056】
また、前記判定部3により、回転速度ωが不適であると判定された場合には、上記数式7に従って算出される、或いは既に算出した許容回転速度ωawに減速する指令が前記回転制御部13に送信され、この回転制御部13による制御の下で、前記主軸モータ11の回転速度ωが許容回転速度ωawに減速される。
【0057】
以上のように、本例の回転速度判定装置1によれば、主軸モータ11に対して予定された回転速度ωが、当該主軸モータ11を許容時間taw内に非常停止させることができる回転速度であるか否かを判定することができ、また、判定結果が、報知部4を介してディスプレイ5に表示されるので、回転速度ωが適正でない場合には、そのことが、例えばオペレータなどの関係者によって認識される。
【0058】
また、本例では、回転速度ωが不適であると判定された場合に、前記判定部3から前記回転制御部13に、回転速度ωを許容回転速度ωawに減速する指令が送信され、回転制御部13によって、前記主軸モータ11の回転速度ωが許容回転速度ωawに減速されるので、主軸モータ11を常に適正な回転速度で回転させることができる。
【0059】
また、本例の回転速度判定装置1では、前記イナーシャ推定部2により、主軸モータ11のみならず、この主軸モータ11によって駆動される被回転体20のイナーシャIも推定し、これら主軸モータ11及び被回転体20のイナーシャIに基づいて、主軸モータ11の回転速度ωの適否を判定するようにしているので、当該判定を正確に行うことができる。
【0060】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る回転速度判定装置について、
図4を参照しながら説明する。この回転速度判定装置101は、第1の実施形態に係る回転速度判定装置1に比べて、主軸モータ11及び被回転体20のイナーシャIを推定する手法、及び回転速度ωの適否を判定する手法が異なるものであり、構成的には、モデルデータ記憶部104を更に備える点、前記イナーシャ推定部2とは異なる処理を実行するイナーシャ推定部102を備える点、前記判定部3とは異なる処理を実行する判定部103を備える点において、その構成が異なっており、他の構成については、第1の実施形態に係る回転速度判定装置1と同じである。したがって、この回転速度判定装置101において、前記回転速度判定装置1と同じ構成については、同じ符号を付している。また、回転装置10及び被回転体20についても、第1の実施形態のものと同じ構成である。
【0061】
前記モデルデータ記憶部104は、前記主軸モータ11のロータ部、前記主軸21、及び前記チャック22のモデルデータ(形状及び材質)、並びに当該NC旋盤で加工が予定されている各ワークのモデルデータ(形状及び材質)を記憶する機能部であり、予め、外部から前記モデルデータが入力され、当該モデルデータ記憶部104に格納される。
【0062】
前記イナーシャ推定部102は、前記NCプログラム記憶部14に格納されたNCプログラムが実行される際に、当該NCプログラム中に含まれるワークの種類に関する情報を、前記NCプログラム記憶部14から取得する。そして、取得したワークの情報を基に、前記モデルデータ記憶部104を参照して当該ワークの形状及び材質を認識する。また、同様に前記モデルデータ記憶部104に参照して、前記主軸モータ11のロータ部、前記主軸21、及び前記チャック22の形状及び材質を認識する。
【0063】
ついで、イナーシャ推定部102は、取得した主軸モータ11、主軸21、チャック22及びワークの形状及び材質に基づいて、これらの質量を推定するとともに、これらを総合したイナーシャIを理論的に推定した後、当該イナーシャIに係る情報を前記判定部103に送信する。
【0064】
前記判定部103は、実行されるNCプログラム中に含まれる主軸モータ11の回転速度ωに関する情報(回転指令)を、前記NCプログラム記憶部14から取得する。そして、前記イナーシャ推定部102において推定された主軸モータ11及び被回転体20のイナーシャI、及び取得した主軸モータ11の回転速度ωに基づいて、第1の実施形態における手法と同様の手法により、主軸モータ11の回転速度ωの適否を判定する。この判定部103では、その判定処理において、主軸モータ11の回転速度ωをNCプログラム中に含まれる指令速度を用いる点において、第1の実施形態における判定部3とは、その処理手法が異なっている。
【0065】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る回転速度判定装置について、
図5を参照しながら説明する。この回転速度判定装置111は、第2の実施形態に係る回転速度判定装置101に比べて、主軸モータ11及び被回転体20のイナーシャを推定する手法が異なるものであり、構成的には、機内にカメラ113を更に備える点、前記イナーシャ推定部102とは異なる処理を実行するイナーシャ推定部112を備える点において、その構成が異なっており、他の構成については、第2の実施形態に係る回転速度判定装置101と同じである。したがって、この回転速度判定装置111において、前記回転速度判定装置1、回転速度判定装置101と同じ構成については、同じ符号を付している。また、回転装置10及び被回転体20についても、第1の実施形態及び第2の実施形態のものと同じ構成である。
【0066】
前記カメラ113は、NC旋盤の加工領域内を撮像するカメラであり、特に、チャック22及びワーク23の外観を撮像することができるようになっている。
【0067】
前記イナーシャ推定部112は、前記NCプログラム記憶部14に格納されたNCプログラムが実行される際に、前記カメラ113によって撮像された画像を当該カメラ113から取得する。そして、得られた画像を処理してワーク形状を認識するとともに、前記モデルデータ記憶部104を参照して、認識されたワーク形状に合致した材質を認識する。また、同様に、前記モデルデータ記憶部104に参照して、前記主軸モータ11のロータ部、前記主軸21、及び前記チャック22の形状及び材質を認識する。
【0068】
ついで、イナーシャ推定部112は、取得した主軸モータ11、主軸21、チャック22及びワークの形状及び材質に基づいて、これらの質量を推定するとともに、これらを総合したイナーシャIを理論的に推定した後、当該イナーシャIに係る情報を前記判定部103に送信する。
【0069】
この第3の実施形態では、カメラ113によって撮像されたワークの画像からワーク形状を認識するようにした点が、第2の実施形態と異なっている。
【0070】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明が採り得る態様は、何らこれに限定されるものではない。例えば、上述した第1、第2及び第3の各実施形態では、判定部3及び判定部103において、イナーシャIに対する許容回転速度ω
aw、或いは回転速度に対する許容イナーシャI
awを数式によって算出するようにしたが、このような態様に限られるものではなく、
図1、
図4及び
図5に示すように、限界情報記憶部6を設け、この限界情報記憶部6に、イナーシャIに対する許容回転速度ω
aw、或いは回転速度に対する許容イナーシャI
awを予め格納するようにしても良い。この場合、判定部3及び判定部103は、この限界情報記憶部6に格納された許容回転速度ω
aw、或いは許容イナーシャI
awを用いて、主軸モータ11の回転速度ωの適否を判定することができる。
【0071】
また、上例では、判定部3及び判定部103において、回転速度ωが不適であると判定された場合に、当該判定部3及び判定部103から前記回転制御部13に、回転速度ωを許容回転速度ωawに減速する指令を送信して、前記主軸モータ11の回転速度ωを許容回転速度ωawに減速させるようにしたが、このような態様に限られるものではなく、当該判定部3及び判定部103から回転制御部13に、減速指令を送信しない態様であっても良い。この場合、ディスプレイ5に表示された判定結果を確認することで、オペレータ等の関係者は、主軸モータ11を停止させるといった処置などを講じることができる。
【0072】
また、前記報知部4による報知の態様は、上例のものに限定されるものではなく、判定結果を外部に報知することができるものであれば、どのような態様のものであっても良い。
【0073】
また、上例では、被回転体20として、主軸21、チャック22及びワーク23から構成されるものを例示したが、当然のことながら、このような構成物に限られるものではない。ほんの一例を挙げれば、工作機械の分野における他の構成物としては、主軸やこの主軸に装着される工具からなるものを例示することができる。
【0074】
繰り返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 回転速度判定装置
2 イナーシャ推定部
3 判定部
4 報知部
5 ディスプレイ
10 回転装置
11 主軸モータ
12 ロータリエンコーダ
13 回転制御部
20 被回転体
21 主軸
22 チャック
23 ワーク
【手続補正書】
【提出日】2021-01-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被回転体に連結されて、該被回転体を回転させるモータと、該モータの作動を制御するとともに、該モータの作動中において、該モータに供給される電力が遮断されて、該モータの制御が不能となったときに、該モータを非常停止させる回転制御部とを備えた回転装置の、前記モータの回転速度の適否を判定する装置であって、
前記モータ及び被回転体のイナーシャを推定するイナーシャ推定部と、
前記イナーシャ推定部によって推定されたイナーシャに基づいて、前記回転制御部における制御目標として予定された前記モータの回転速度が、前記モータを許容時間内に非常停止させることができる速度であるか否かについての適否を判定する判定部と、
前記判定部によって不適と判定された場合に、その旨を報知する報知部とを備えて構成されていることを特徴とする回転速度判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記イナーシャ推定部によって推定されたイナーシャが、予定された回転速度に対して許容される許容イナーシャを越えているとき、前記回転速度が不適であると判定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の回転速度判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、予定された前記回転速度が、前記イナーシャ推定部によって推定されたイナーシャに対して許容される許容回転速度を越えているとき、予定された前記回転速度が不適であると判定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の回転速度判定装置。
【請求項4】
前記イナーシャ推定部は、前記被回転体について設定された3次元モデルデータを外部から取得し、取得された3次元モデルデータを基に、前記被回転体のイナーシャを推定するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回転速度判定装置。
【請求項5】
前記イナーシャ推定部は、カメラによって撮像された前記被回転体の画像を外部から取得し、取得された画像を基に、前記被回転体のイナーシャを推定するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回転速度判定装置。
【請求項6】
前記イナーシャ推定部は、前記モータが予定された回転速度で回転するときに、前記回転速度に達するまでの加速時間及び前記回転速度を前記回転装置から取得し、取得された加速時間及び回転速度に基づいて、前記モータ及び被回転体のイナーシャを推定するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回転速度判定装置。
【請求項7】
前記判定部は、回転速度が不適であると判定されたとき、推定された前記イナーシャに応じて許容される回転速度を推定し、推定された回転速度に係るデータを前記回転装置の回転制御部に送信するように構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の回転速度判定装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、被回転体に連結されて、該被回転体を回転させるモータと、該モータの作動を制御するとともに、該モータの作動中において、該モータに供給される電力が遮断されて、該モータの制御が不能となったときに、該モータを非常停止させる回転制御部とを備えた回転装置の、前記モータの回転速度の適否を判定する装置であって、
前記モータ及び被回転体のイナーシャを推定するイナーシャ推定部と、
前記イナーシャ推定部によって推定されたイナーシャに基づいて、前記回転制御部における制御目標として予定された前記モータの回転速度が、前記モータを許容時間内に非常停止させることができる速度であるか否かについての適否を判定する判定部と、
前記判定部によって不適と判定された場合に、その旨を報知する報知部とを備えて構成さる回転速度判定装置に係る。