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特開2022-56115洗浄剤組成物、スプレーボトル型洗浄剤、ウェットワイパー及び物品表面の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056115
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物、スプレーボトル型洗浄剤、ウェットワイパー及び物品表面の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/04 20060101AFI20220401BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20220401BHJP
   C11D 1/88 20060101ALI20220401BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20220401BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20220401BHJP
   C11D 3/26 20060101ALI20220401BHJP
   C11D 3/06 20060101ALI20220401BHJP
   C11D 3/36 20060101ALI20220401BHJP
   C11D 3/34 20060101ALI20220401BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20220401BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20220401BHJP
   C09K 3/32 20060101ALI20220401BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220401BHJP
   A47L 13/17 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
C11D17/04
C11D1/62
C11D1/88
C11D1/68
C11D3/20
C11D3/26
C11D3/06
C11D3/36
C11D3/34
C11D3/33
C11D1/75
C09K3/32 J
C09K3/00 R
A47L13/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163931
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】397056042
【氏名又は名称】セッツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】村上 拡
(72)【発明者】
【氏名】國武 広一郎
(72)【発明者】
【氏名】安木 真世
【テーマコード(参考)】
3B074
4H003
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AB01
3B074AC03
3B074CC03
4H003AC05
4H003AC14
4H003BA12
4H003BA21
4H003BA22
4H003DA05
4H003DA12
4H003DC01
4H003DC02
4H003EA02
4H003EA04
4H003EA08
4H003EA16
4H003EA18
4H003EB04
4H003EB07
4H003EB08
4H003EB13
4H003EB19
4H003EB22
4H003ED28
4H003FA04
4H003FA15
4H003FA21
4H003FA24
4H003FA28
4H003FA29
4H003FA34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた洗浄力を有し、アクリル樹脂表面に対する損傷が抑制されており、拭き跡が残りにくい洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】成分(a)としての第四級アンモニウム塩、成分(b)としての両性界面活性剤、成分(c)としてのアルキルグルコシド、及び成分(d)としてのエタノールを含み、前記成分(a)の含有率が、0.03~0.06質量%であり、前記成分(b)の含有率が、0.04~0.08質量%であり、前記成分(c)の含有率が、0.08~0.12質量%であり、前記成分(d)の含有率が、3~20質量%であり、前記成分(a)、(b)、及び(c)の合計含有率が、0.25質量%以下であり、前記成分(c)の含有率>前記成分(b)の含有率>前記成分(a)の含有率の関係、かつ、前記(c)の含有率/前記成分(a)及び(b)の合計含有率=0.8~1.5の関係を充足する、洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a)としての第四級アンモニウム塩、成分(b)としての両性界面活性剤、成分(c)としてのアルキルグルコシド、及び成分(d)としてのエタノールを含み、
前記成分(a)の含有率が、0.03~0.06質量%であり、
前記成分(b)の含有率が、0.04~0.08質量%であり、
前記成分(c)の含有率が、0.08~0.12質量%であり、
前記成分(d)の含有率が、3~20質量%であり、
前記成分(a)、(b)、及び(c)の合計含有率が、0.25質量%以下であり、
前記成分(c)の含有率>前記成分(b)の含有率>前記成分(a)の含有率の関係を充足し、かつ、前記成分(c)の含有率/前記成分(a)及び(b)の合計含有率=0.8~1.5の関係を充足する、洗浄剤組成物。
【請求項2】
成分(e)としてのpH緩衝剤をさらに含む、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記pH緩衝剤が、グリシン、リン酸、フタル酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、炭酸、ホウ酸、トリスヒドロキシメチルアミノメタン及びヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸並びにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種であり、
pHが8~10である、請求項2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記第四級アンモニウム塩が、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩及びアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記両性界面活性剤が、アミンオキシド型界面活性剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
アクリル樹脂表面を洗浄するために用いられる、請求項1~5いずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物が、スプレーボトルに充填されている、スプレーボトル型洗浄剤。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物が繊維シートに含まれている、ウェットワイパー。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物を、洗浄対象物品の表面に接触させることを含む、物品表面の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物、スプレーボトル型洗浄剤、ウェットワイパー及び物品表面の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レストラン、居酒屋などの飲食店では、細菌やウイルスの消毒を目的として、エタノール製剤などが使用されてきた。
【0003】
さらに、近年、いわゆる新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の流行の影響により、飲食店などでは、感染防止対策のため、人が入れ替わる都度、アクリルパーテーション、テーブル、イス、メニューブック、タッチパネル、卓上ベル等の物品を消毒することが、業界団体のガイドライン等で推奨されている。そのため、これらの物品に対しては、エタノール製剤や洗浄剤組成物を、スプレーボトル等から噴霧し拭き取る方法や、ウェットワイパー等で拭く方法による消毒が、従来に増して頻繁に行われている。
【0004】
例えば、特許文献1では、物品に付着した汚れに対して、洗浄剤組成物をスプレーボトルで噴霧もしくはウェットワイパーに含侵させて汚れを拭き取り、油汚れやタバコの煙による汚れを除去することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-156999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
感染防止対策で使用されているアクリルパーテーションは、エタノールにより損傷し、表面が白化したり、強度が落ちて破損しやすくなることが知られている。一方、エタノールを含まない界面活性剤を含む洗浄剤は、乾燥まで時間がかかり作業性が悪く、界面活性剤の濃度によっては拭き跡が残り、美観に問題が残る問題がある。
【0007】
本発明は、優れた洗浄力を有し、アクリル樹脂表面に対する損傷が抑制されており、拭き跡が残りにくい、洗浄組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、洗浄剤組成物に、第四級アンモニウム塩、両性界面活性剤、アルキルグルコシド、及びエタノールを配合し、これらの成分の含有率を特定の範囲かつ関係に設定することにより、エタノール濃度が3~20質量%という低濃度であっても、優れた洗浄力を有しつつ、アクリル樹脂表面に対する損傷が抑制されており、拭き跡が残りにくい洗浄剤組成物が得られることを見出した。本発明は、このような知見に基づき、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0009】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 成分(a)としての第四級アンモニウム塩、成分(b)としての両性界面活性剤、成分(c)としてのアルキルグルコシド、及び成分(d)としてのエタノールを含み、
前記成分(a)の含有率が、0.03~0.06質量%であり、
前記成分(b)の含有率が、0.04~0.08質量%であり、
前記成分(c)の含有率が、0.08~0.12質量%であり、
前記成分(d)の含有率が、3~20質量%であり、
前記成分(a)、(b)、及び(c)の合計含有率が、0.25質量%以下であり、
前記成分(c)の含有率>前記成分(b)の含有率>前記成分(a)の含有率の関係を充足し、かつ、前記成分(c)の含有率/前記成分(a)及び(b)の合計含有率=0.8~1.5の関係を充足する、洗浄剤組成物。
項2. 成分(e)としてのpH緩衝剤をさらに含む、項1に記載の洗浄剤組成物。
項3. 前記pH緩衝剤が、グリシン、リン酸、フタル酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、炭酸、ホウ酸、トリスヒドロキシメチルアミノメタン及びヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸並びにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種であり、
pHが8~10である、項2に記載の洗浄剤組成物。
項4. 前記第四級アンモニウム塩が、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩及びアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項1~3のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
項5. 前記両性界面活性剤が、アミンオキシド型界面活性剤である、項1~4のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
項6. アクリル樹脂表面を洗浄するために用いられる、項1~5いずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
項7. 項1~6のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物が、スプレーボトルに充填されている、スプレーボトル型洗浄剤。
項8. 項1~6のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物が繊維シートに含まれている、ウェットワイパー。
項9. 項1~6のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物を、洗浄対象物品の表面に接触させることを含む、物品表面の洗浄方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エタノール濃度が3~20質量%という低濃度であるにも関わらず、優れた洗浄力を有しつつ、アクリル樹脂表面に対する損傷が抑制されており、拭き跡が残りにくい洗浄剤組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、当該洗浄剤組成物を用いたスプレーボトル型洗浄剤、ウェットワイパー及び物品表面の洗浄方法を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の洗浄剤組成物、スプレーボトル型洗浄剤、ウェットワイパー及び物品表面の洗浄方法について、詳述する。なお、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「~」で結ぶことができるものとする。
【0012】
本発明の洗浄剤組成物は、成分(a)としての第四級アンモニウム塩、成分(b)としての両性界面活性剤、成分(c)としてのアルキルグルコシド、及び成分(d)としてのエタノールを含む。本発明の洗浄剤組成物において、成分(a)の含有率は0.03~0.06質量%であり、成分(b)の含有率は0.04~0.08質量%であり、成分(c)の含有率は0.08~0.12質量%であり、成分(d)の含有率は3~20質量%である。さらに、本発明の洗浄剤組成物において、成分(a)、成分(b)、及び成分(c)の合計含有率が、0.25質量%以下であり、成分(c)の含有率>成分(b)の含有率>成分(a)の含有率の関係を充足し、かつ、成分(c)の含有率/成分(a)及び成分(b)の合計含有率=0.8~1.5の関係を充足する。本発明の洗浄剤組成物は、これらの特徴を全て充足することにより、優れた洗浄力を発揮しつつ、アクリル樹脂表面に対する損傷が抑制されており、拭き跡が残りにくいという特性が発揮される。
【0013】
以下、本発明の洗浄剤組成物について詳述する。
【0014】
本発明の洗浄剤組成物は、成分(a)として、第四級アンモニウム塩を含む。第四級アンモニウム塩は、洗浄剤組成物に除菌及び抗ウイルス性能を発揮させるために有効である。第四級アンモニウム塩としては、洗浄剤組成物に配合できるものであれば、特に制限されず、具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩及びアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩などが挙げられる。これらの中でも、特に、塩化ベンザルコニウム、塩化ジメチルジメチルアンモニウムが好ましい。本発明の洗浄剤組成物に含まれる第四級アンモニウム塩は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0015】
本発明の洗浄剤組成物において、成分(a)としての第四級アンモニウム塩の含有率は、0.03~0.06質量%である。
【0016】
本発明の洗浄剤組成物は、成分(b)として、両性界面活性剤を含む。両性界面活性剤は、アミンオキシド型界面活性剤が好適であり、洗浄剤組成物に対して抗ウイルス性能を発揮させるために有効である。アミンオキシド型界面活性剤としては、炭素数8~20の炭化水素基を1つ有することが好ましい。アミンオキシド型界面活性剤の具体例としては、デシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、などのアルキルジメチルアミンオキシド、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミンオキシドが好ましい。本発明の洗浄剤組成物に含まれる両性界面活性剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0017】
本発明の洗浄剤組成物において、成分(b)としての両性界面活性剤の含有率は、0.04~0.08質量%である。
【0018】
本発明の洗浄剤組成物は、成分(c)として、アルキルグルコシドを含む。アルキルグルコシドは、洗浄剤組成物に対して抗ウイルス性能を発揮させるために有効である。アルキルグルコシドは、アルキル基の平均炭素数が、好ましくは8~16、より好ましくは8~14であり、配糖体の平均縮合度が好ましくは1~2、より好ましくは1.1~1.8である。本発明の洗浄剤組成物に含まれるアルキルグルコシドは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0019】
本発明の洗浄剤組成物において、成分(c)としてのアルキルグルコシドの含有率は、0.08~0.12質量%である。
【0020】
本発明の洗浄剤組成物は、成分(d)として、エタノールを含む。発明の洗浄剤組成物において、成分(d)としてのエタノールの含有率は、3~20質量%である。本発明においては、エタノール濃度が低濃度であっても、優れた洗浄力を有しつつ、アクリル樹脂表面に対する損傷が抑制されており、拭き跡が残りにくい洗浄剤組成物が得られるという観点から、エタノールの含有率は、好ましくは3~15質量%、より好ましくは4~12質量%、さらに好ましくは5~11質量%、特に好ましくは6~10質量%である。また、エタノールの添加は乾燥スピードの向上や除菌力の発揮に必要な成分である。
【0021】
本発明の洗浄剤組成物は、成分(e)として、必要に応じて、pH緩衝剤を含む。pH緩衝剤は、pH変化に対する緩衝作用によって、洗浄剤組成物の液性を安定させ、且つ弱アルカリ性による洗浄力を確保することに有効である。pH緩衝剤の具体例としてはグリシン、リン酸、フタル酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、炭酸、ホウ酸、トリスヒドロキシメチルアミノメタン及びヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種が挙げられる。本発明の洗浄剤組成物に含まれるpH緩衝剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。pH緩衝剤としては、特に炭酸塩が好ましく、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを組み合わせることがさらに好ましい。
【0022】
さらに、本発明の洗浄剤組成物は、成分(a)、成分(b)及び成分(c)の合計含有率が、0.25質量%以下である。また、本発明の洗浄剤組成物は、成分(c)の含有率>成分(b)の含有率>成分(a)の含有率の関係を充足し、かつ、成分(c)の含有率/成分(a)及び成分(b)の合計含有率=0.8~1.5の関係を充足する必要がある。本発明の洗浄剤組成物は、以上の全ての要件を充足することにより、優れた洗浄力を有し、アクリル樹脂表面に対する損傷が抑制されており、拭き跡が残りにくいという特性を発揮することができる。
【0023】
本発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、成分(a)、成分(b)及び成分(c)の合計含有率は、好ましくは0.10~0.25質量%、より好ましくは0.12~0.25質量%、さらに好ましくは0.15~0.25質量%である。
【0024】
また、本発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、成分(c)の含有率/成分(a)及び成分(b)の合計含有率は、特に好ましくは0.90~1.30である。
【0025】
本発明の洗浄剤組成物は、成分(a)、(b)、(c)、(d)、さらに必要に応じて成分(e)を前記所定範囲の含有率で含む水性洗浄剤組成物である。すなわち、本発明の洗浄剤組成物は、水を含んでいる。水の含有率としては、本発明の洗浄剤組成物による効果を阻害しないことを限度として、特に制限されないが、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上である。
【0026】
本発明の洗浄剤組成物は、本発明の効果を阻害しないことを限度として、成分(a)、(b)、(c)、(d)、水、さらに必要に応じて成分(e)の他、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、キレート剤、可溶化剤、色素、香料、防腐剤などが挙げられる。本発明の洗浄剤組成物に添加剤が含まれる場合、添加剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。本発明の洗浄剤組成物に添加剤が含まれる場合、各添加剤の含有率としては、好ましくは0.5質量%以下であり、添加剤の合計含有率としては、好ましくは1質量%以下である。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物のpHは、本発明の効果を阻害しないことを限度として、特に制限されないが、好ましくは8.0~10.0であり、より好ましくは9.0~10.0である。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物は、好ましくは除菌力を備えている。除菌対象は、特定の菌に限定されず、例えば大腸菌、サルモネラ属菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌等の病原性を持つ可能性の菌などが挙げられる。
【0029】
さらに、本発明の洗浄剤組成物は、好ましくは抗ウイルス性を備えている。抗ウイルス対象は特定のウイルスに限定されるものではない。例えば、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)やインフルエンザウイルス等のエンベロープ構造をとり、病原性を持つ可能性があるウイルスが好適な対象である。
【0030】
次に、本発明の洗浄剤組成物を利用した洗浄方法について説明する。洗浄方法としては、洗浄剤組成物を洗浄対象物品に付着させる方法の違いから、主に以下の2つの形態が挙げられる。
【0031】
本発明の洗浄剤組成物の第1の利用方法としては、例えば、洗浄剤組成物をスプレーボトルに充填してスプレーボトル型洗浄剤とし、洗浄剤組成物を洗浄対象物品の表面に吹き付け、その後ウエスなどで拭き取る方法が挙げられる。なお、洗浄剤組成物を物品表面に接触させ、直ちに拭き取っても良いが、好ましくは30秒間以上、より好ましくは1分間以上、さらに好ましくは2分間以上放置してから拭き取るのがよい。なお、放置する時間の上限については、特に制限されないが、例えば30分間以下、好ましくは5分間以下、さらに好ましくは3分間以下が挙げられる。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物の第2の利用方法としては、例えば、洗浄剤組成物を繊維シートに含ませたウェットワイパーとし、ウェットワイパーで洗浄対象物品の表面を拭く方法が挙げられる。
【0033】
本発明の洗浄剤組成物の洗浄対象物品としては、例えば、硬質表面を持つ物品が挙げられる。具体的にはテーブル、イス、調理用具、厨房機器、食品製造機器、家電製品、トイレ、窓ガラスなどが挙げられる。洗浄対象物品の素材としては、ステンレス、鋳鉄、メッキ鋼板、アルミニウム、真鍮、陶器、プラスチックが挙げられる。近年、特に感染防止対策にアクリル板が使用される場合が多いが、アクリル樹脂表面は、エタノールなどの溶剤により白化することが知られている。本発明の洗浄剤組成物では、アクリル樹脂表面の白化が抑制され、拭き跡も残りにくい。よって、本発明の洗浄剤組成物は、特に、アクリル樹脂表面を洗浄するために好適に用いられる。なお、本発明の洗浄剤組成物を、アクリル樹脂表面の洗浄のために用いる場合にも、他の物品の洗浄にも用いることができる。
【実施例0034】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。なお、表1中の各成分の値は特に記載のない限り、質量%を意味する。
【0035】
洗浄剤組成物の調製に使用した各成分の詳細は以下の通りである。
成分(a):塩化ベンザルコニウム(三洋化成工業株式会社製の商品名カチオンG-50)
成分(b):アルキルアミンオキシド(花王株式会社製の商品名アンヒトール20N)
成分(b):脂肪酸アミドプロピルアミンオキサイド(竹本油脂株式会社製の製品名パイオニンC-151)
成分(c):アルキルグルコシド(花王株式会社製の商品名マイドール12)
成分(d):エタノール(合同酒精株式会社製の商品名発酵アルコール95%1級)
成分(e):炭酸ナトリウム(トクヤマ・セントラルソーダ株式会社製の商品名デンス灰)
成分(e):炭酸水素ナトリウム(AGC株式会社製の商品名重炭酸ナトリウム)
【0036】
<洗浄剤組成物の調製>
室温(25℃)環境において、それぞれ、表1に示される組成となるように、各成分を混合して、実施例1~4及び比較例1~8の各洗浄剤組成物を調製した。
【0037】
[洗浄力]
縦160mm×横180mm×厚み2mmのアクリル板の表面を人の手でくまなく触り皮脂を付着させて後、洗浄組成物を3回スプレー(3ml)し、ウエスで軽く拭き取った後、アクリル板の表面を観察して、洗浄力を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
〇:汚れが確認できない程度によく落ちていた
×:汚れが少量残った
【0038】
[アクリル樹脂表面の損傷]
縦75mm×横20mm×厚み2mmのアクリル板を洗浄剤組成物に浸漬し、50℃で72時間静置し、アクリル板の表面を観察し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
〇:変化なし
△:表面に変化が見られる
×:表面が白化している
【0039】
[乾燥スピード]
縦160mm×横180mm×厚み2mmのアクリル板の表面に洗浄組成物を1回スプレー(1ml)し、ウエスで軽く拭き取った後、乾燥するまでのスピードを以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
〇:短時間で乾燥する
△:乾燥していくが、若干遅い
×:中々乾燥しない
【0040】
[拭き跡の残り]
縦160mm×横180mm×厚み2mmのアクリル板の表面を人の手でくまなく触り皮脂を付着させて後、洗浄組成物を3回スプレー(3ml)し、ウエスで軽く拭き取った後、アクリル板の表面を観察して、拭き跡の残りを以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
〇:ほぼ拭き跡が見られない
×:拭き跡が見られる
【0041】
[除菌力]
(大腸菌に対する除菌効果)
大腸菌(Escherichia coli NBRC3301)をSCDブイヨン培地に接種し、30℃で24時間培養したものを菌液とした。次に、洗浄剤組成物と菌液を9:1(容量)で混合し、1分間接触させた後、100μlを900μlのSCDLP培地に移植し、35℃で48時間培養後、濁りにより菌の生死を測定した。評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
〇:大腸菌が死滅した。
×:大腸菌が死滅しなかった。
【0042】
(黄色ブドウ球菌に対する除菌効果)
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 12732)をSCDブイヨン培地に接種し、30℃で24時間培養したものを菌液とした。次に、洗浄剤組成物と菌液を9:1(容量)で混合し、1分間接触させた後、100μlを900μlのSCDLP培地に移植し、35℃で48時間培養後、濁りにより菌の生死を測定した。評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
〇:大腸菌が死滅した。
×:大腸菌が死滅しなかった。
【0043】
[新型コロナウイルス不活化効果の評価]
新型コロナウイルスに対する不活化効果の評価は、ウイルス感染価をTCID50法にて測定することにより評価した。供試ウイルスとしてSARS-CoV-2 JPN/TY/WK-521株(以下、「SARS-CoV-2」と表記する)を用いた。また、宿主細胞としてセリンプロテアーゼであるTMPRSS2を強制発現させたアフリカミドリザル腎由来株化細胞(Vero E6/TMPRSS2細胞)を使用した。5%ウシ胎仔血清と1 mg/ml G418を添加したDulbecco’s modified Eagle’s medium (DMEM)にて懸濁させたVero E6/TMPRSS2細胞を96穴マイクロプレートの各穴に0.1mLずつ分注し、37℃、5%CO2の条件下で一晩培養し、単層培養細胞としたものを使用した。尚、NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)では、有効な界面活性剤について公表されているが、界面活性剤は混合ミセルを形成するために、実際の混合系で検証することが重要である。
【0044】
(感染価の測定)
供試ウイルス液としては、SARS-CoV-2をlog10TCID50/mlとして8となるように調製した懸濁液を用いた。各組成物0.03mlに供試ウイルス液0.03mlを加え、室温で1分間感作させた。その後、この液に2%ウシ胎仔血清と1 mg/ml G418を添加したDMEM (DMEM/F2/G418)0.54mlに加えて試験液とした。更にDMEM/F2/G418を用いて試験液を10倍段階希釈した。この段階希釈液を各段階毎に0.1mlずつ4穴に接種して、37℃、5%CO2の条件下で3日間培養した。培養後、細胞変性の出現の有無を判定し、ウイルス感染価(TCID50/ml)をリード-メンチ(Reed-Muench)法により算出した。対照としてリン酸緩衝液を用いて測定した場合の感染価との差(Δlog10TCID50/ml)により、各試験液についてウイルス不活化効果を評価した。評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
〇:対照の感染価との差が4以上
【0045】
【表1】
【0046】
表1において、「-」は、評価を行っていないことを示す。
【0047】
表1に示されるように、実施例1~5の洗浄剤組成物は、成分(a)としての第四級アンモニウム塩、成分(b)としての両性界面活性剤、成分(c)としてのアルキルグルコシド、及び成分(d)としてのエタノールを含み、成分(a)の含有率が、0.03~0.06質量%であり、成分(b)の含有率が、0.04~0.08質量%であり、成分(c)の含有率が、0.08~0.12質量%であり、成分(d)の含有率が、3~20質量%であり、成分(a)、(b)、及び(c)の合計含有率が、0.25質量%以下であり、成分(c)の含有率>成分(b)の含有率>成分(a)の含有率の関係を充足し、かつ、前記成分(c)の含有率/前記成分(a)及び(b)の合計含有率=0.8~1.5の関係を充足している。実施例1~5の洗浄剤組成物は、優れた洗浄力を有しており、さらに、アクリル樹脂表面に対する損傷が抑制されており、拭き跡が残りにくいものであった。さらに、実施例1~4の洗浄剤組成物は、乾燥スピードが速く、優れた除菌力を有していた。また、さらに、実施例2の洗浄剤組成物を代表例として、新型コロナウイルス(SARS-Co-V2)に対する抗ウイルス性評価を行ったところ、抗ウイルス性を備えていた。
【0048】
これに対して、比較例1~8の洗浄剤組成物は、本発明の組成を充足していない。比較例1,3,6,7の洗浄剤組成物は、洗浄力が劣っていた。また、比較例8の洗浄剤組成物は、アクリル樹脂表面を損傷させていた。また、比較例2~6の洗浄剤組成物は、拭き跡の残りが生じていた。通常、除菌効果の測定では24時間経過後に濁りが発生するが、比較例6では24時間後では透明で、48時間後に濁りが確認された。これは、第四級アンモニウム塩が除菌力を発揮し初期菌数を減らしたが、完全には死滅されることができなかったことが考えられる。このことより、本洗浄剤組成物は第四級アンモニウム塩とエタノールの相乗効果により、アクリル樹脂表面への損傷を抑えながら、高い除菌力と洗浄力を発揮したものと考えられる。