(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056122
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】中子製造装置及び中子製造方法
(51)【国際特許分類】
B22C 15/08 20060101AFI20220401BHJP
B22C 9/02 20060101ALI20220401BHJP
B22C 5/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
B22C15/08
B22C9/02 103B
B22C5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163944
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000100805
【氏名又は名称】アイシン高丘株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真也
【テーマコード(参考)】
4E093
4E094
【Fターム(参考)】
4E093LC07
4E094AA06
4E094AA44
4E094AA58
(57)【要約】
【課題】成形型のキャビティに鋳物砂を充填する場合において、キャビティの鋳物砂に水を混入させることなく、吹込口に残る鋳物砂を削減できる中子製造装置及び中子製造方法を提供する。
【解決手段】中子製造装置10は、上部に吹込口24が形成されるとともに、内部にキャビティ23が形成された金型20と、鋳物砂Sを収容する内部空間が形成されたブローヘッド本体31と、ブローヘッド本体31の底部から下方に延びるブローノズル35とを備えている。中子製造装置10は、ブローノズル35を吹込口24に挿入した状態において、ブローノズル35の排出孔を介してキャビティ23に鋳物砂Sを充填するために内部空間にエアを供給し、キャビティ23に鋳物砂Sを充填した後、内部空間のエアを吸引して内部空間の圧力を大気圧よりも低い負圧にする。中子製造装置10は、内部空間の圧力を負圧に維持した状態において、ブローノズル35を吹込口24から離脱させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に吹込口が形成されるとともに、前記吹込口に連通するキャビティが内部に形成された成形型と、
鋳物砂を収容する内部空間が形成されたブローヘッド本体と、
前記ブローヘッド本体の底部から下方に延びるとともに、前記内部空間に連通する排出孔が形成されたブローノズルと、
を備え、
前記ブローノズルを前記吹込口に挿入した状態において前記内部空間に収容された鋳物砂を前記排出孔を介して前記キャビティに充填し、充填した鋳物砂を硬化させることにより中子を製造する中子製造装置であって、
前記ブローノズルを前記吹込口に挿入した状態において、前記排出孔を介して前記キャビティに鋳物砂を充填するために前記内部空間にエアを供給する供給部と、
前記キャビティに鋳物砂を充填した後、前記内部空間のエアを吸引して前記内部空間の圧力を大気圧よりも低い負圧にする吸引部と、
を備え、
前記内部空間の圧力を負圧に維持した状態において、前記ブローノズルと前記成形型とを相対移動させて前記ブローノズルを前記吹込口から離脱させることを特徴とする中子製造装置。
【請求項2】
前記ブローノズル及び前記成形型の下方に配置され、前記排出孔から排出された鋳物砂を受け止める受け止め部と、
前記受け止め部により受け止められた鋳物砂を回収して前記内部空間に戻す回収部と、を備え、
前記ブローノズルを前記吹込口から離脱させた後、前記ブローノズルの下方に前記成形型が位置しないように前記ブローノズルと前記成形型とを相対移動させ、
前記ブローノズルの下方に前記成形型が位置しない状態において、前記内部空間のエアの吸引を停止して前記内部空間の圧力を大気圧に戻す請求項1に記載の中子製造装置。
【請求項3】
前記吸引部は、
第1端が前記内部空間に連通するエア流路と、
エアを吸引する吸引源と、
前記エア流路の第2端を、前記吸引源に接続した状態、又は大気開放状態のいずれかに切り替える切替部と、
を有し、
前記キャビティに鋳物砂を充填した後、前記エア流路の第2端を大気開放状態にし、その後、前記エア流路の第2端を前記吸引源に接続した状態に切り替える、請求項1又は2に記載の中子製造装置。
【請求項4】
前記エア流路は、
第1端が前記内部空間に連通し、第2端が前記切替部に接続された第1エア流路と、
第1端が前記切替部に接続され、第2端が前記吸引源に接続された第2エア流路と、
を有し、
前記切替部は、前記第1エア流路の第2端を、前記第2エア流路の第1端に接続した状態、又は大気開放状態のいずれかに切り替え、
前記第1エア流路の第2端を大気開放状態にした後、前記吸引源によるエアの吸引を開始し、その後、前記第1エア流路の第2端を前記第2エア流路の第1端に接続した状態に切り替える、請求項3に記載の中子製造装置。
【請求項5】
前記鋳物砂は、熱硬化性の鋳物砂であり、
予め加熱された前記成形型の前記キャビティに鋳物砂を充填し、充填した鋳物砂を焼成硬化させることにより中子を製造する請求項1~4のいずれか1項に記載の中子製造装置。
【請求項6】
ブローヘッド本体の底部から下方に延びるブローノズルを成形型の上部に形成された吹込口に挿入した状態において、前記ブローヘッド本体に形成された内部空間に収容された鋳物砂を、前記内部空間に連通してかつ前記ブローノズルに形成された排出孔を介して、前記成形型の内部に形成されてかつ前記吹込口に連通するキャビティに充填し、充填した鋳物砂を硬化させることにより中子を製造する中子製造方法であって、
前記ブローノズルを前記吹込口に挿入した状態において、前記排出孔を介して前記キャビティに鋳物砂を充填するために前記内部空間にエアを供給する工程と、
前記キャビティに鋳物砂を充填した後、前記内部空間のエアを吸引して前記内部空間の圧力を大気圧よりも低い負圧にする工程と、
前記内部空間の圧力を負圧に維持した状態において、前記ブローノズルと前記成形型とを相対移動させて前記ブローノズルを前記吹込口から離脱させる工程と、
を備えることを特徴とする中子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中子製造装置及び中子製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱硬化性の鋳物砂を焼成硬化させることにより中子を製造するシェル中子の製造方法が知られている。この製造方法では、成形型と、ブローヘッド装置とが用いられる。成形型の上部には吹込口が形成され、成形型の内部には、吹込口に連通するキャビティが形成されている。ブローヘッド装置は、ブローヘッド本体及びブローノズルを備えている。ブローヘッド本体には、鋳物砂を収容する内部空間が形成されている。ブローノズルは、ブローヘッド本体の底部から下方に延びるとともに、内部空間に連通する排出孔が形成されている。
【0003】
ブローノズルを吹込口に挿入した状態において、内部空間に収容された鋳物砂が、予め高温状態にされた(例えば、300℃前後に加熱された)成形型のキャビティにブローノズルの排出孔を介して充填される。充填された鋳物砂が焼成硬化させられることにより中子が製造される。
【0004】
上述した中子の製造方法では、吹込口に鋳物砂が残ると、残った鋳物砂も硬化させられる。成形型から取り出した中子のうち、吹込口に残って硬化した鋳物砂の部分(以下、吹込口跡)が大きいと、吹込口跡を除去する作業負荷が大きくなってしまう。
【0005】
そこで、特許文献1には、ブローノズル内に通水路が形成され、通水路を介してブローノズルの排出孔に残った鋳物砂に水を供給し、排出孔に残った鋳物砂をウェット状態にする中子製造方法が開示されている。ウェット状態にされた鋳物砂の硬度は、キャビティで硬化し始めている鋳物砂の硬度よりも小さい。このため、ブローノズルを上昇させて吹込口から離脱させることにより、ブローノズルの排出孔に残った鋳物砂と、キャビティで硬化し始めている鋳物砂とを容易に分離させることができる。これにより、排出孔に鋳物砂を保持したままブローノズルを吹込口から離脱させることができ、吹込口跡が残らないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、排出孔の鋳物砂に水を供給する場合において、わずかではあるがキャビティの鋳物砂に水が混入するおそれがある。この場合、中子の品質が低下するといった問題が生じ得る。なお、こうした問題は、熱硬化性の鋳物砂が用いられる場合に限らず発生し得る。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、成形型のキャビティに鋳物砂を充填する場合において、キャビティの鋳物砂に水を混入させることなく、吹込口に残る鋳物砂を削減できる中子製造装置及び中子製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、第1の発明は、上部に吹込口が形成されるとともに、前記吹込口に連通するキャビティが内部に形成された成形型と、
鋳物砂を収容する内部空間が形成されたブローヘッド本体と、
前記ブローヘッド本体の底部から下方に延びるとともに、前記内部空間に連通する排出孔が形成されたブローノズルと、
を備え、
前記ブローノズルを前記吹込口に挿入した状態において前記内部空間に収容された鋳物砂を前記排出孔を介して前記キャビティに充填し、充填した鋳物砂を硬化させることにより中子を製造する中子製造装置であって、
前記ブローノズルを前記吹込口に挿入した状態において、前記排出孔を介して前記キャビティに鋳物砂を充填するために前記内部空間にエアを供給する供給部と、
前記キャビティに鋳物砂を充填した後、前記内部空間のエアを吸引して前記内部空間の圧力を大気圧よりも低い負圧にする吸引部と、
を備え、
前記内部空間の圧力を負圧に維持した状態において、前記ブローノズルと前記成形型とを相対移動させて前記ブローノズルを前記吹込口から離脱させることを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記ブローノズル及び前記成形型の下方に配置され、前記排出孔から排出された鋳物砂を受け止める受け止め部と、
前記受け止め部により受け止められた鋳物砂を回収して前記内部空間に戻す回収部と、
を備え、
前記ブローノズルを前記吹込口から離脱させた後、前記ブローノズルの下方に前記成形型が位置しないように前記ブローノズルと前記成形型とを相対移動させ、
前記ブローノズルの下方に前記成形型が位置しない状態において、前記内部空間のエアの吸引を停止して前記内部空間の圧力を大気圧に戻すことを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記吸引部は、
第1端が前記内部空間に連通するエア流路と、
エアを吸引する吸引源と、
前記エア流路の第2端を、前記吸引源に接続した状態、又は大気開放状態のいずれかに切り替える切替部と、
を有し、
前記キャビティに鋳物砂を充填した後、前記エア流路の第2端を大気開放状態にし、その後、前記エア流路の第2端を前記吸引源に接続した状態に切り替えることを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、前記エア流路は、
第1端が前記内部空間に連通し、第2端が前記切替部に接続された第1エア流路と、
第1端が前記切替部に接続され、第2端が前記吸引源に接続された第2エア流路と、
を有し、
前記切替部は、前記第1エア流路の第2端を、前記第2エア流路の第1端に接続した状態、又は大気開放状態のいずれかに切り替え、
前記第1エア流路の第2端を大気開放状態にした後、前記吸引源によるエアの吸引を開始し、その後、前記第1エア流路の第2端を前記第2エア流路の第1端に接続した状態に切り替えることを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記鋳物砂は、熱硬化性の鋳物砂であり、
予め加熱された前記成形型の前記キャビティに鋳物砂を充填し、充填した鋳物砂を焼成硬化させることにより中子を製造することを特徴とする。
【0014】
第6の発明は、ブローヘッド本体の底部から下方に延びるブローノズルを成形型の上部に形成された吹込口に挿入した状態において、前記ブローヘッド本体に形成された内部空間に収容された鋳物砂を、前記内部空間に連通してかつ前記ブローノズルに形成された排出孔を介して、前記成形型の内部に形成されてかつ前記吹込口に連通するキャビティに充填し、充填した鋳物砂を硬化させることにより中子を製造する中子製造方法であって、
前記ブローノズルを前記吹込口に挿入した状態において、前記排出孔を介して前記キャビティに鋳物砂を充填するために前記内部空間にエアを供給する工程と、
前記キャビティに鋳物砂を充填した後、前記内部空間のエアを吸引して前記内部空間の圧力を大気圧よりも低い負圧にする工程と、
前記内部空間の圧力を負圧に維持した状態において、前記ブローノズルと前記成形型とを相対移動させて前記ブローノズルを前記吹込口から離脱させる工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明では、ブローノズルを吹込口に挿入した状態において、ブローノズルの排出孔を介してキャビティに鋳物砂を充填するために、供給部によりブローヘッド本体の内部空間にエアが供給される。その後、吸引部により内部空間のエアが吸引され、内部空間の圧力が大気圧よりも低い負圧に維持された状態となる。これにより、ブローノズルの排出孔に鋳物砂を保持したまま、ブローノズルと成形型とを相対移動させてブローノズルを吹込口から離脱させることができる。その結果、キャビティの鋳物砂に水を混入させることなく、吹込口に残る鋳物砂を削減することができる。
【0016】
第2の発明では、ブローノズルを吹込口から離脱させた後、ブローノズルの下方に成形型が位置しないようにブローノズルと成形型とが相対移動させられる。そして、ブローノズルの下方に成形型が位置しない状態において、内部空間のエアの吸引を停止して内部空間の圧力を大気圧に戻す。これにより、ブローノズルの排出孔に保持されていた鋳物砂は、重力により排出されて下方に落下する。落下した鋳物砂は、回収部により回収される。回収された鋳物砂は、乾燥状態であるため、ブローヘッド本体の内部空間に戻して再利用することができる。これにより、中子の製造工程における鋳物砂の使用量を削減でき、ひいては中子の製造に要するコストを削減できる。
【0017】
キャビティに鋳物砂が充填される場合、供給部により内部空間にエアが供給されるため、内部空間の圧力が大気圧に対して高い状態となる。鋳物砂の充填後、内部空間の圧力が高い状態のまま、エア流路を介して吸引源により内部空間のエアを吸引すると、内部空間の鋳物砂が吸引源に吸引されやすくなり、吸引源が故障する懸念がある。
【0018】
この点、第3の発明では、キャビティに鋳物砂が充填された後、エア流路の第2端が大気開放状態にされる。これにより、内部空間の圧力が大気圧に向かって低下する。その後、エア流路の第2端が吸引源に接続された状態に切り替えられる。これにより、内部空間の圧力が低下してから吸引源によりエアの吸引を開始でき、内部空間の鋳物砂が吸引源に吸引されることを抑制できる。このため、吸引源の故障の発生を抑制できる。
【0019】
第4の発明では、キャビティに鋳物砂が充填された後、内部空間の圧力を低下させるために、第1エア流路の第2端が大気開放状態にされる。内部空間の圧力の低下量を大きくするには、大気開放状態に維持される時間が必要になる。
【0020】
ここで、第4の発明では、大気開放状態に維持される時間が有効利用される。詳しくは、第1エア流路の第2端が大気開放状態にされた後、第1エア流路の第2端が第2エア流路の第1端に接続された状態に切り替えられるに先立ち、吸引源によるエアの吸引が開始される。これにより、第2エア流路の圧力を低下させることができる。その後、第1エア流路の第2端が第2エア流路の第1端に接続された状態に切り替えられる。この場合、第2エア流路の圧力が低下しているため、第1エア流路の第2端が第2エア流路の第1端に接続された状態に切り替えられてから、内部空間の圧力が負圧にされるまでに要する時間を短縮できる。これにより、ブローノズルが吹込口に挿入されてから、ブローノズルを吹込口から離脱させるまでに要する時間を短縮することができる。その結果、ブローノズルの排出孔に維持された鋳物砂が硬化することを抑制できる。
【0021】
第5の発明では、鋳物砂として熱硬化性の鋳物砂が用いられる。予め加熱された成形型のキャビティに鋳物砂を充填する場合でも、キャビティの鋳物砂に水を混入させることなく、吹込口に残る鋳物砂を削減することができる。
【0022】
第6の発明では、ブローノズルを吹込口に挿入した状態において、ブローノズルの排出孔を介してキャビティに鋳物砂を充填するために、ブローヘッド本体の内部空間にエアが供給される。その後、内部空間のエアが吸引され、内部空間の圧力が大気圧よりも低い負圧に維持された状態となる。これにより、ブローノズルの排出孔に鋳物砂を保持したまま、ブローノズルと成形型とを相対移動させてブローノズルを吹込口から離脱させることができる。その結果、キャビティの鋳物砂に水を混入させることなく、吹込口に残る鋳物砂を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態に係る中子製造装置の全体構成図。
【
図3】金型のキャビティに鋳物砂を充填する状態を示す図。
【
図4】ブローヘッド本体の内部空間を負圧状態にしたまま、ブローノズルを吹込口から離脱させた状態を示す図。
【
図5】ブローヘッド本体の内部空間の圧力を大気圧に戻し、ブローノズルから鋳物砂を排出させる状態を示す図。
【
図6】その他の実施形態に係るブローノズル及び吹込口近傍を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の中子製造装置を具体化した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
<中子製造装置の構成>
図1に示すように、中子製造装置10は、成形型としての金型20と、ブローヘッド装置30とを備えている。金型20は、相対的に近接及び離間可能な上型21及び下型22を備えている。上型21及び下型22が組み合わせられた状態において、金型20の内部には中子を成形するためのキャビティ23が形成されている。
【0026】
上型21には、上下方向に貫通してキャビティ23に連通する吹込口24が形成されている。本実施形態では、吹込口24が複数(図中、2つを例示)形成されている。また、吹込口24は、上型21の上面側から下面側にいくほど開口寸法が大きくなっている。
【0027】
ブローヘッド装置30は、ブローヘッド本体31、ブローノズル35、支持台36及びガイドバネ37を備えている。ブローヘッド本体31は、底板部32、側壁部33及び天板部34を備えている。底板部32の外縁部には、上下方向に延びる側壁部33の第1端が設けられている。側壁部33の第2端には、天板部34が設けられている。底板部32、側壁部33及び天板部34により、ブローヘッド本体31の内部空間が形成されている。この内部空間には、中子を成型するための乾燥状態の鋳物砂Sが収容される。天板部34には、上下方向に貫通する上部孔34aが形成されている。
【0028】
底板部32には、下方に延びるブローノズル35が吹込口24と同数設けられている。底板部32からブローノズル35の先端に亘って、上下方向に貫通する排出孔が形成されている。ブローノズル35は、円筒形状をなし、先端部が先細りとなるテーパ形状を有している。ブローヘッド本体31の内部空間に収容された鋳物砂Sは、排出孔を介してブローヘッド本体31の外部に排出される。
【0029】
ブローヘッド本体31は、水平状態になるように、ガイドバネ37を介して支持台36に支持されている。支持台36は、天板部34に対して下方に位置している。後述する圧着部53が天板部34に当接していない状態において、支持台36に対する天板部34の上下方向の距離は、ブローヘッド本体31の内部空間に収容される鋳物砂Sの質量に応じた高さとなる。
【0030】
本実施形態において、ブローヘッド本体31の内部空間に収容される鋳物砂Sは、熱硬化性の鋳物砂である。具体的には、鋳物砂Sは、砂及びレジン(フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂)からなるレジンコーテッドサンド(RCS)である。
【0031】
中子製造装置10は、金型駆動部25及びブローヘッド駆動部38を備えている。金型駆動部25は、ブローヘッド装置30に対して金型20を水平方向に移動させる。また、金型駆動部25は、中子を金型20から取り出すために上型21及び下型22を分離させたり、中子が取り出された後に上型21及び下型22を組み合わせたりする。ブローヘッド駆動部38は、金型20に対してブローヘッド装置30を水平方向及び上下方向に移動させる。
【0032】
中子製造装置10は、給気管50、第1電磁弁51、伸縮管52、圧着部53、中継管54、第2電磁弁55、排気管56、吸引管57、ブロワ58及びシリンダ59を備えている。
【0033】
給気管50の第1端には、工場エアの供給源が接続されている。給気管50の第2端には、第1電磁弁51が接続されている。第1電磁弁51には、伸縮管52の第1端と、中継管54の第1端とが接続されている。第1電磁弁51は、伸縮管52の第1端の接続先を、給気管50の第2端又は伸縮管52の第1端のいずれかに切り替える三方弁である。本実施形態では、第1電磁弁51がブローヘッド装置30の上方に設けられている。このため、伸縮管52は、第1電磁弁51からブローヘッド装置30に向かって下方に延びている。伸縮管52は、シリンダ59の駆動制御により長さが可変とされている。
【0034】
伸縮管52の第2端には、圧着部53が設けられている。圧着部53は、ブローヘッド本体31に形成された上部孔34aの開口寸法よりも大きい径寸法を有する環状(円環状)のシール部と、シール部と伸縮管52の第2端とを連結する連結部とを有している。圧着部53は、天板部34に対する密着性の高い材料で構成され、例えば弾性力のある合成樹脂で構成されている。
【0035】
シリンダ59の駆動制御により伸縮管52の長さが最小長さにされる場合、
図1に示すように、圧着部53と天板部34とは離間する。シリンダ59の駆動制御により伸縮管52が伸長して圧着部53が下降すると、圧着部53のシール部が上部孔34aを覆うように圧着部53が天板部34の上面に密着する。この状態から伸縮管52がさらに伸長すると、ガイドバネ37の復元力に打ち勝って圧着部53がブローヘッド本体31を下方に押し下げる。この場合、ガイドバネ37の復元力により天板部34に対して上向けの力が作用するため、圧着部53のシール部と天板部34との密着性が高くなる。
【0036】
中継管54の第2端には、第2電磁弁55が接続されている。第2電磁弁55には、吸引管57の第1端と、排気管56の第1端とが接続されている。排気管56の第2端は、大気開放されている。第2電磁弁55は、中継管54の第2端の接続先を、吸引管57の第1端又は排気管56の第1端のいずれかに切り替える三方弁である。
【0037】
吸引管57の第2端には、吸引源としてのブロワ58が接続されている。ブロワ58は、吸引管57側のエアを吸引する。
【0038】
中子製造装置10は、鋳物砂Sをブローヘッド本体31の内部空間に供給するための砂貯蔵部として、ホッパ40を備えている。ホッパ40には、鋳物砂Sが貯蔵されている。ホッパ40の底部には、流出孔が設けられている。流出孔はホッパ40の内外を上下方向に貫通しており、流出孔が下方に向けて開放されると、ホッパ40に貯蔵された鋳物砂Sが下方に向けて流出する。ブローヘッド駆動部38により、ブローヘッド本体31の上部孔34aがホッパ40の流出孔の下方に位置するようにブローヘッド装置30が移動させられた状態において、ホッパ40の流出孔から鋳物砂Sを流出させることにより、上部孔34aを介してブローヘッド本体31の内部空間に鋳物砂Sが供給される。
【0039】
中子製造装置10は、シュート41及びバケットエレベータ42を備えている。シュート41は、ブローノズル35から鋳物砂Sが充填される場合における金型20の配置位置よりも下方に配置され、ブローノズル35から排出されて落下した鋳物砂Sを受け止める受け止め部として機能する。シュート41は、斜め下方に傾斜してバケットエレベータ42の入口部まで繋がっており、重力を利用して、受け止めた鋳物砂Sをバケットエレベータ42の入口部まで搬送する。バケットエレベータ42は、入口部に供給された鋳物砂Sを上方位置にある出口部まで搬送する。出口部まで搬送された鋳物砂Sは、ホッパ40に再度供給される。このため、バケットエレベータ42は回収部として機能する。
【0040】
中子製造装置10は、制御部としてのコントローラ60を備えている。コントローラ60は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを主体に構成されている。コントローラ60は、金型駆動部25、ブローヘッド駆動部38、バケットエレベータ42、第1電磁弁51、第2電磁弁55、ブロワ58及びシリンダ59の駆動制御を行う。
【0041】
<中子の製造工程>
図2を用いて、コントローラ60が主体となって実行する中子の製造工程について説明する。
【0042】
ステップS10では、圧着部53、ブローヘッド本体31及び金型20が上下方向に一列に並んで配置された
図1の状態において、ブローノズル35が吹込口24に挿入されるまで、シリンダ59の駆動制御により伸縮管52を伸長して圧着部53を下降させる。詳しくは、圧着部53が下降することにより、まず、上部孔34aを覆うように圧着部53が天板部34の上面に密着する。その後、圧着部53の下降が継続されることにより、ガイドバネ37の復元力に抗して、圧着部53がブローヘッド本体31を下方に押し下げ、ブローノズル35が吹込口24に挿入される。本実施形態では、ブローノズル35の長さ寸法が吹込口24の上下方向の長さ寸法と同等である。このため、ブローヘッド本体31の底板部32を上型21の上面に当接させた状態において、ブローノズル35の先端部がキャビティ23に突出しないようになっている。
【0043】
ステップS11では、給気管50と伸縮管52とを連通させるように第1電磁弁51の駆動制御を行う。これにより、給気管50、第1電磁弁51、伸縮管52、圧着部53及び上部孔34aを介してブローヘッド本体31の内部空間にエアが圧送される。その結果、内部空間の圧力が大気圧よりも高くなり、
図3に示すように、ブローヘッド本体31の内部空間の鋳物砂Sがブローノズル35の排出孔を介して金型20のキャビティ23に充填される。なお、ステップS11において、給気管50、第1電磁弁51、伸縮管52及び圧着部53が、内部空間にエアを供給する供給部として機能する。
【0044】
給気管50と伸縮管52との連通状態が所定時間(例えば3~5秒)に亘って継続されると、ステップS12に進み、伸縮管52と中継管54とを連通させるように第1電磁弁51の駆動制御を行う。ステップS12の段階では、第2電磁弁55により中継管54と排気管56とが連通状態にされているため、ブローヘッド本体31の内部空間のエアは、第1電磁弁51、中継管54、第2電磁弁55及び排気管56を介して大気中に放出される。これにより、ブローヘッド本体31の内部空間の圧力が大気圧に向かって低下する。
【0045】
ステップS13では、ブロワ58を起動させる。これにより、吸引管57のエアがブロワ58に吸引され、吸引管57の圧力が、例えば大気圧よりも低い負圧まで低下する。なお、吸引管57にタンク(例えば真空タンク)が接続されていてもよい。この場合、負圧とされるエアの体積を増やすことができる。
【0046】
伸縮管52がブローヘッド本体31に対して上方に延びるように配置されているため、ブローヘッド本体31の内部空間の鋳物砂Sがエアとともに吸引されることを抑制できる。これにより、鋳物砂Sに起因した第1電磁弁51、第2電磁弁55及びブロワ58の故障の発生を抑制できる。
【0047】
ステップS14では、中継管54と吸引管57とを連通させるように第2電磁弁55の駆動制御を行う。これにより、ブローヘッド本体31の内部空間のエアは、上部孔34a、圧着部53、伸縮管52、第1電磁弁51、中継管54、第2電磁弁55及び吸引管57を介してブロワ58に吸引される。その結果、ブローヘッド本体31の内部空間の圧力は、大気圧よりも低い負圧(例えば、-0.012MPaG)となる。なお、ステップS14において、圧着部53、伸縮管52、第1電磁弁51及び中継管54が第1エア流路として機能し、吸引管57が第2エア流路として機能し、第2電磁弁55が切替部として機能する。
【0048】
ステップS15では、
図4に示すように、ブローノズル35が吹込口24から離脱するまで、シリンダ59の駆動制御により伸縮管52を縮めて圧着部53を上昇させる。ブローヘッド本体31の内部空間が負圧状態にされているため、ブローノズル35を上昇させたとしても、ブローノズル35内の排出孔に鋳物砂Sが保持される。
【0049】
なお、ブローヘッド本体31の下方に配置されている金型20は予め加熱された状態であるため、ブローノズル35を吹込口24に挿入した時間が長くなると、ブローノズル35の排出孔の鋳物砂Sが熱硬化してしまう懸念がある。このため、ステップS12の工程が開始されてからステップS15の工程が開始されるまでの時間は、ブローノズル35の排出孔の鋳物砂Sが熱硬化しないような時間に設定される。
【0050】
ステップS16では、金型駆動部25の駆動制御により、ブローヘッド本体31の下方位置から所定位置(具体的には、金型20の抜型位置)まで水平方向に金型20を移動させる。これにより、ブローヘッド本体31の下方に金型20が存在しなくなる。
【0051】
なお、金型20のキャビティ23に充填された鋳物砂Sは、加熱されることにより熱硬化し、中子が成形される。抜型位置に移動させられた金型20は、金型駆動部25の駆動制御により上型21と下型22とに分離され、中子が取り出される。
【0052】
ステップS17では、圧着部53がブローヘッド本体31の天板部34から離れるまで、シリンダ59の駆動制御により伸縮管52を縮めて圧着部53を上昇させる。これにより、ブローヘッド本体31の内部空間の密閉状態が解消され、内部空間の圧力は大気圧となる。その結果、
図5に示すように、ブローノズル35の排出孔に保持された鋳物砂Sが重力で下方に排出される。排出された鋳物砂Sは乾燥状態の砂である。このため、排出されて落下した鋳物砂Sは、シュート41及びバケットエレベータ42を介してホッパ40に戻されることにより再利用することができる。
【0053】
圧着部53が天板部34から離れた後、ブロワ58を停止させる。また、中継管54と排気管56とを連通させるように第2電磁弁55の駆動制御を行う。
【0054】
なお、圧着部53がブローヘッド本体31の天板部34から離れた後、ブローヘッド駆動部38の駆動制御により、ブローヘッド装置30がホッパ40の下方まで移動させられる。ブローヘッド装置30がホッパ40の下方に位置する状態において、ホッパ40から上部孔34aを介してブローヘッド本体31の内部空間に鋳物砂Sが供給されればよい。
【0055】
ステップS17が終了すると、次のステップS10~S17からなるサイクルに移行する。
【0056】
以上説明した中子製造装置10によれば、以下に示す作用効果が得られる。
【0057】
ブローノズル35を吹込口24に挿入した状態において、ブローノズル35の排出孔を介してキャビティ23に鋳物砂Sを充填するために、エア供給源からブローヘッド本体31の内部空間にエアが供給される。その後、ブロワ58により内部空間のエアが吸引され、内部空間の圧力が大気圧よりも低い負圧に維持された状態となる。これにより、ブローノズル35の排出孔に鋳物砂Sを保持したまま、ブローノズル35を上昇させて吹込口24から離脱させることができる。その結果、キャビティ23の鋳物砂Sに水を混入させることなく、吹込口24に残る鋳物砂を削減又は吹込口24に鋳物砂Sが残らないようにできる。
【0058】
ブローノズル35を上昇させて吹込口24から離脱させた後、ブローノズル35の下方に金型20が位置しないように、金型20を水平移動させる。そして、ブローノズル35の下方に金型20が位置しない状態において、天板部34から圧着部53が離れるように圧着部53を上昇させる。これにより、内部空間のエアの吸引が停止され、内部空間の圧力が大気圧まで上昇する。その結果、ブローノズル35の排出孔に保持されていた鋳物砂Sは、重力により排出されて下方に落下する。落下した鋳物砂Sは、シュート41及びバケットエレベータ42を介してホッパ40に回収される。回収された鋳物砂Sは、乾燥状態であるため、ブローヘッド本体31の内部空間に戻して再利用することができる。これにより、中子の製造工程における鋳物砂の使用量を削減でき、ひいては中子の製造に要するコストを削減できる。
【0059】
キャビティ23に鋳物砂Sが充填される場合、内部空間にエアが供給されるため、内部空間の圧力が大気圧に対して高い状態となる。この状態のまま、ブロワ58により内部空間のエアを吸引すると、内部空間の鋳物砂Sがブロワ58に吸引されやすくなり、ブロワ58が故障する懸念がある。この点、本実施形態では、キャビティ23に鋳物砂Sが充填された後、第2電磁弁55により中継管54と排気管56とが連通状態にされる。これにより、内部空間の圧力が大気圧に向かって低下する。その後、第2電磁弁55により中継管54と吸引管57とが連通状態にされる。これにより、内部空間の圧力が低下してからブロワ58によりエアの吸引を開始でき、内部空間の鋳物砂Sがブロワ58に吸引されることを抑制できる。このため、ブロワ58の故障の発生を抑制できる。
【0060】
キャビティ23に鋳物砂Sが充填された後、第2電磁弁55により中継管54と排気管56とが連通状態にされ、その後、中継管54と吸引管57とが連通状態にされるに先立ち、ブロワ58を起動させる。これにより、吸引管57の圧力を低下させることができる。その後、第2電磁弁55により中継管54と吸引管57とが連通状態に切り替えられる。この場合、吸引管57の圧力が低下しているため、中継管54と吸引管57とが連通状態に切り替えられてから、内部空間の圧力を負圧にするまでに要する時間を短縮できる。これにより、ブローノズル35が吹込口24に挿入されてから、ブローノズル35を吹込口24から離脱させるまでに要する時間を短縮することができる。その結果、ブローノズル35の排出孔に維持された鋳物砂Sが金型20からの熱により硬化することを抑制できる。
【0061】
ブローヘッド本体31の上部孔34aを覆うようにブローヘッド本体31の天板部34に密着する圧着部53に加え、給気管50、第1電磁弁51、伸縮管52、中継管54、吸引管57及び第2電磁弁55が中子製造装置10に備えられる。これにより、エア供給源からブローヘッド本体31の内部空間にエアを供給する流路と、内部空間のエアを吸引するための流路とを伸縮管52で共通化することができ、中子製造装置10の構成を簡素化することができる。
【0062】
伸縮管52がブローヘッド本体31の上方に向かって延びている。このため、ブローヘッド本体31の内部空間のエアが吸引される場合において、内部空間の鋳物砂Sがエアとともに吸引されにくくなる。これにより、鋳物砂Sに起因した第1電磁弁51、第2電磁弁55及びブロワ58の故障の発生を抑制することができる。
【0063】
<変形例>
上記実施の形態の変形例を以下に説明する。
【0064】
(1)
図6に示すように、ブローノズル39は、先端側にいくほど外径寸法が小さくなっており、上型21の吹込口26は、キャビティ側にいくほど開口寸法が小さくなっているものであってもよい。この場合、ブローノズル39を吹込口26に挿入した状態において、ブローノズル39と吹込口26との間の隙間を極力小さくできる。これにより、鋳物砂をキャビティに充填する場合において、吹込口26に残る鋳物砂の量をより削減することができる。
【0065】
なお、
図6に示す構成では、ブローノズル39と吹込口26との間の隙間が小さくなることから、ブローノズル39が加熱されやすくなり、ブローノズル39に形成された排出孔39aの鋳物砂が硬化しやすくなる懸念がある。このため、例えば、排出孔39aに連通していない冷却水の流通経路がブローノズル39に形成され、ブローノズル39が冷却されてもよい。
【0066】
(2)
図2のステップS17において、圧着部53が天板部34から離れるようにシリンダ59の駆動制御が行われる前にブロワ58を停止させてもよい。この場合であっても、エアの吸引を停止させてブローノズル35の排出孔に保持された鋳物砂Sを排出させることができる。
【0067】
(3)エアを吸引する吸引源としては、ブロワに限らず、例えば真空ポンプであってもよい。
【0068】
(4)鋳物砂としては、熱硬化性の鋳物砂に限らず、例えば、加熱なしで時間経過により硬化する鋳物砂であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10…中子製造装置、20…金型、23…キャビティ、24…吹込口、31…ブローヘッド本体、35…ブローノズル、41…シュート、42…バケットエレベータ、51…第1電磁弁、52…伸縮管、53…圧着部、54…中継管、55…第2電磁弁、57…吸引管、58…ブロワ、S…鋳物砂(中子砂)。