(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056157
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】付着防止剤噴霧装置
(51)【国際特許分類】
E01C 19/08 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
E01C19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164010
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】御代 哲也
(72)【発明者】
【氏名】阿江 幸己
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052CA21
2D052DA03
(57)【要約】
【課題】 風の影響を抑えられて強風下でもアスファルト合材搬送車両の荷台に安定して噴霧できる付着防止剤噴霧装置を提供する。
【解決手段】
通路5側部に略平行に走行レール10を架設し、走行レール10には走行台車11を走行自在に備え、走行台車11には軸支部12を中心として通路5側へ旋回自在に、かつ上下動自在に旋回アーム13を備え、旋回アーム13には付着防止剤噴霧用の噴霧ノズル16a、16bを備え、通路5周囲または旋回アーム13には搬送車両4aの荷台7高さを検出する荷台高さセンサ18を備える。また、付着防止剤噴霧時に旋回アーム13を通路5側に旋回し、かつ荷台高さセンサ18の検出結果に基づいて旋回アーム13を上下動させて噴霧ノズル16a、16bと搬送車両4aの荷台7とを近接させ、その状態で付着防止剤を噴霧しながら走行台車11を走行させて搬送車両4aの荷台7に付着防止剤を噴霧する噴霧制御器20を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトプラントのプラント本体及び/またはアスファルト合材サイロの直下に配したアスファルト合材の搬送車両入出用の通路の側部に該通路と略平行に走行レールを架設し、該走行レールには走行台車を走行自在に備え、該走行台車には鉛直軸を中心として前記通路側へ旋回自在に、かつ上下動自在に旋回アームを備え、該旋回アームには付着防止剤噴霧用の噴霧ノズルを備え、前記通路周囲または旋回アームには通路内に進入した搬送車両の荷台高さを検出する荷台高さセンサを備えると共に、付着防止剤噴霧時には前記旋回アームを通路側に旋回し、かつ前記荷台高さセンサの検出結果に基づいて前記旋回アームを上下動させて前記噴霧ノズルと搬送車両の荷台とを近接させ、その状態で付着防止剤を噴霧しながら前記走行台車を走行させて搬送車両の荷台に付着防止剤を噴霧する噴霧制御器を備えたことを特徴とする付着防止剤噴霧装置。
【請求項2】
前記旋回アームには搬送車両の荷台のあおり板内壁面に向けて付着防止剤を噴霧するあおり板用の噴霧ノズルを備えたことを特徴とする請求項1記載の付着防止剤噴霧装置。
【請求項3】
前記旋回アーム及び/または噴霧ノズルには付着防止剤保温用のヒータを備えたことを特徴とする請求項1または2記載の付着防止剤噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト合材の付着を抑制する付着防止剤の噴霧装置に関し、特にアスファルト合材の搬送車両の荷台に対して付着防止剤を噴霧する噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルト合材製造工場に設置されるアスファルトプラントでは、製造したアスファルト合材をダンプトラック等の搬送車両の荷台に払い出して出荷する際、粘着性を有するアスファルト合材が前記荷台表面に付着するのを抑制すべく、例えば、運転手がその都度荷台に上がり、適宜の容器に入れた重油や軽油、或いは植物性油脂等を主成分とする各種の付着防止剤を手作業にて荷台表面に散布している。
【0003】
ところで、前記搬送車両の荷台は油系の付着防止剤の散布に伴って滑り易い状態にあり、このような荷台に運転手が上がって行う前記作業は転倒や転落等の事故を招く危険性があって安全上好ましいものではなく、また甚だ面倒で運転手に多大な負担を強いるものとなっている。また、付着防止剤の散布量は運転手の判断に委ねられるため、場合によっては付着防止剤が適正量を超えて散布される可能性もあり、その場合には無駄が生じることになる。
【0004】
これに対し、搬送車両の荷台に付着防止剤を自動で散布する装置がある(特許文献1参照)。前記散布装置では、搬送車両の荷台位置よりも上方に位置するアスファルトプラントのプラント本体の脚柱等に散布ノズルを固定しておき、アスファルト合材の積み込みのためにプラント本体下位に進入した搬送車両の荷台に向けて前記散布ノズルより所定量の付着防止剤を自動散布する構成としており、運転手の作業安全性の向上及び負担軽減、並びに適量散布が期待できるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来装置では、散布ノズルを搬送車両の荷台位置よりも上方に位置するプラント本体の脚柱等に固定し、ノズル噴射口と荷台表面とは幾分か離間した構成となっているため、風の影響を比較的受けやすいと予想され、仮に強風下では散布ノズルから噴射した付着防止剤の一部が飛散し、場合によっては荷台から外れて運転席側や周辺の地面等に散布されて周辺環境の汚損や無駄を生じる可能性がある。
【0007】
本発明は上記の点に鑑み、風の影響を抑えられて強風下でもアスファルト合材の搬送車両の荷台に安定して噴霧できる付着防止剤噴霧装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る請求項1記載の付着防止剤噴霧装置では、アスファルトプラントのプラント本体及び/またはアスファルト合材サイロの直下に配したアスファルト合材の搬送車両入出用の通路の側部に該通路と略平行に走行レールを架設し、該走行レールには走行台車を走行自在に備え、該走行台車には鉛直軸を中心として前記通路側へ旋回自在に、かつ上下動自在に旋回アームを備え、該旋回アームには付着防止剤噴霧用の噴霧ノズルを備え、前記通路周囲または旋回アームには通路内に進入した搬送車両の荷台高さを検出する荷台高さセンサを備えると共に、付着防止剤噴霧時には前記旋回アームを通路側に旋回し、かつ前記荷台高さセンサの検出結果に基づいて前記旋回アームを上下動させて前記噴霧ノズルと搬送車両の荷台とを近接させ、その状態で付着防止剤を噴霧しながら前記走行台車を走行させて搬送車両の荷台に付着防止剤を噴霧する噴霧制御器を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項2記載の付着防止剤噴霧装置では、前記旋回アームには搬送車両の荷台のあおり板内壁面に向けて付着防止剤を噴霧するあおり板用の噴霧ノズルを備えたことを特徴としている。
【0010】
また、請求項3記載の付着防止剤噴霧装置では、前記旋回アーム及び/または噴霧ノズルには付着防止剤保温用のヒータを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る請求項1記載の付着防止剤噴霧装置によれば、搬送車両の荷台高さを検出する荷台高さセンサを備えると共に、付着防止剤噴霧時には旋回アームを通路側に旋回し、かつ前記荷台高さセンサの検出結果に基づいて旋回アームを上下動させて噴霧ノズルと搬送車両の荷台とを近接させ、その状態で付着防止剤を噴霧しながら走行台車を走行させて搬送車両の荷台に付着防止剤を噴霧する構成としたので、付着防止剤を噴霧する際の風の影響を抑えられ、例え強風下でも搬送車両の荷台に付着防止剤を安定して噴霧できる。
【0012】
また、請求項2記載の付着防止剤噴霧装置によれば、前記旋回アームには搬送車両の荷台のあおり板内壁面に向けて付着防止剤を噴霧するあおり板用の噴霧ノズルを備えたので、荷台の床面だけでなくあおり板内壁面に対するアスファルト合材の付着も効果的に抑制できる。
【0013】
また、請求項3記載の付着防止剤噴霧装置によれば、前記旋回アーム及び/または噴霧ノズルには付着防止剤保温用のヒータを備えたので、寒冷地や冬期での付着防止剤の凍結や凝固等の不具合を抑制でき、安定した噴霧が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る付着防止剤噴霧装置をアスファルトプラントのプラント本体に設置した状態を示す正面図である。
【
図3】小型の搬送車両に付着防止剤を噴霧する状態を説明する
図2に相当する図である。
【
図5】噴霧ノズルを荷台先端部まで移動させた状態を示す
図3に相当する図である。
【
図6】小型の搬送車両に付着防止剤を噴霧する際の付着防止剤噴霧装置の一連の動作を説明する説明図である。
【
図7】大型の搬送車両に付着防止剤を噴霧する状態を説明する
図2に相当する図である。
【
図9】噴霧ノズルを荷台先端部まで移動させた状態を示す
図7に相当する図である。
【
図10】大型の搬送車両に付着防止剤を噴霧する際の付着防止剤噴霧装置の一連の動作を説明する説明図である。
【
図11】荷台高さセンサの別の実施例を示す
図3に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る付着防止剤噴霧装置にあっては、アスファルトプラントのプラント本体及び/または該プラント本体で製造したアスファルト合材を一時的に貯蔵するアスファルト合材サイロの直下に配される、アスファルト合材の搬送車両入出用の通路の側部に該通路に沿って略平行に走行レールを架設し、該走行レールには走行台車を走行自在に備える。前記走行台車には鉛直軸である軸支部を中心として前記通路側へ旋回自在に、かつ上下動自在に旋回アームを備えると共に、該旋回アーム下方部には搬送車両の荷台の床面等に向けて付着防止剤を噴霧する噴霧ノズルを備える。
【0016】
前記旋回アームを上下動させる構成としては、例えば、前記旋回アームの軸支部を上下方向にスライドまたは伸縮自在に構成したり、前記旋回アームを軸支部に対して上下方向に傾動自在に連結するなど種々の構成を採用し得る。
【0017】
前記通路周囲または旋回アームには、通路内に進入して待機する搬送車両の荷台高さを検出する荷台高さセンサを備える。アスファルト合材の搬送車両としては、通常、比較的小型の2tトラックから比較的大型の10tトラックまで各種サイズのものが使用され、そのサイズ毎に荷台高さも異なるが、前記荷台高さセンサにてその都度検出する構成とする。
【0018】
また、前記走行台車や旋回アームの動作制御、噴霧ノズルからの噴霧制御等、搬送車両の荷台に対して付着防止剤を噴霧するにあたっての各種制御を行う噴霧制御器を備える。なお、前記噴霧制御器を別途備えずに、既設のプラント操作盤等に前記噴霧制御機能を具備するようにしてもよい。
【0019】
また、好ましくは、前記旋回アームには搬送車両の荷台のあおり板内壁面に向けて付着防止剤を噴霧するあおり板用噴霧ノズルを備える。これにより、搬送車両の荷台の床面だけでなく、あおり板内壁面にまでムラなく付着防止剤を噴霧でき、アスファルト合材の付着をより効果的に抑制可能とする。
【0020】
更に、好ましくは、前記旋回アーム及び/または噴霧ノズルには付着防止剤保温用のヒータを備える。これにより、寒冷地や冬期にあっても付着防止剤を適度に保温でき、付着防止剤の凍結や凝固等の不具合を抑制可能とする。
【0021】
そして、前記付着防止剤噴霧装置にて搬送車両の荷台へ付着防止剤を噴霧する場合には、前記プラント本体またはアスファルト合材サイロ直下の通路に搬送車両が進入して停車すると、前記噴霧制御器では、先ず、前記旋回アームを通路側に旋回し、かつ前記荷台高さセンサの検出結果に基づいて前記旋回アームを上下動させて前記噴霧ノズルと搬送車両の荷台とを近接させる。次いで、その状態で付着防止剤を噴霧しながら前記走行台車を通路上の搬送車両と略平行に所定速度にて走行させ、搬送車両の荷台全面に亘って付着防止剤を噴霧する。
【0022】
このとき、前記噴霧ノズルと搬送車両の荷台とは近接状態にあるため、風の影響を比較的受けにくく、例え強風下でも付着防止剤を荷台に安定して噴霧することができ、周辺環境の汚損や付着防止剤の無駄を抑制できる。また、近接噴霧として風の影響を受けにくくしたことで、噴霧時の付着防止剤の一層の微粒化(ミスト化)を図れ、荷台床面やあおり板内壁面をより少量の付着防止剤でムラなくコーティングすることが可能となって低コスト化が期待できると共に、あおり板内壁面(垂直面)等での液ダレの軽減効果も期待できる。
【実施例0023】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0024】
図中の1は、アスファルトプラントのプラント本体であって、該プラント本体1は高架台2上に振動篩(図示せず)、骨材貯蔵ビン(図示せず)、ミキサ3等の各種設備を順次積み上げてなり、その直下にアスファルト合材の搬送車両4a、4bの入出用の通路5を配している。前記通路5よりプラント本体1下位に進入して所定位置で停車・待機する搬送車両4a、4bに対し、前記高架台2の最下層のフロア6上の平面視略中心部付近に設置したミキサ3からアスファルト合材を払い出すと、搬送車両4a、4b後方の荷台7部分に落下投入される構成としている。なお、図中の4aは比較的小型(例えば4tサイズ)の搬送車両を、4bは比較的大型(例えば10tサイズ)の搬送車両をそれぞれ表している。
【0025】
図中の8は搬送車両4a、4bの荷台7に対し、アスファルト合材の積み込み前に付着防止剤を噴霧する付着防止剤噴霧装置であって、後述する走行レール、走行台車、旋回アーム、噴霧ノズル、噴霧制御器等を主体に構成している。
【0026】
前記高架台2の四隅を支持する四本の脚柱9a~9dのうち、前記通路5の一側部に並設される二本の脚柱9a、9bの所定高さ位置には、前記通路5に沿って略平行にかつ略水平に走行レール10を架設し、該走行レール10には走行台車11を走行自在に備えている。前記走行台車11を走行させる駆動源としては、走行台車11自体に自走用の駆動モータを搭載してもよいが、走行レール10の長手方向に沿って配したタイミングベルトやタイミングチェーン等に走行台車11を固着し、前記タイミングベルトやタイミングチェーン等を別途備えた駆動モータにて回動させることで走行台車11を走行させる構成としてもよい。
【0027】
前記走行台車11上部には、鉛直軸である軸支部12を中心として前記通路5側へ旋回自在に、かつ上下動自在に所定長さの旋回アーム13を備えている。前記旋回アーム13を上下動させる構成としては、例えば、前記旋回アーム13の基端部を支持する軸支部12自体を上下方向にスライドまたは伸縮自在に構成することもできるが、本実施例では、前記旋回アーム13を軸支部12に対して上下方向に所定角度範囲で傾動自在に連結した略クレーン構造を採用している。
【0028】
また、前記旋回アーム13の先端部には揺動自在に所定長さ(好ましくは、大型の搬送車両4bの荷台7周囲のあおり板の高さ長程度)の垂直桿14を吊下し、該垂直桿14の下端部には所定長さ(好ましくは、小型の搬送車両4aの荷台7の幅長よりも若干短い程度)の水平桿15の略中央部を連結していると共に、該水平桿15の長手方向に沿って所定間隔にて複数の付着防止剤噴霧用の噴霧ノズル16a、16bを固着している。また、前記各噴霧ノズル16a、16bには、付着防止剤の後ダレ防止用に電磁弁やチャッキ弁等の弁体(図示せず)を開閉自在に内蔵している。
【0029】
ここで、図中の16aは、主に搬送車両4a、4bの荷台7の床面7aに対して付着防止剤を噴霧する(噴射口を真下方向に向けた)床面用の噴霧ノズルである一方、図中の16bは、主に搬送車両4a、4bの荷台7のあおり板内壁面7bに対して付着防止剤を噴霧する(噴射口を斜め下方または水平方向に向けた)あおり板用の噴霧ノズルである。
【0030】
なお、本実施例では、前記のように、各噴霧ノズル16a、16bを、旋回アーム13先端部に吊下した水平桿15に固着しているが、何ら前記構成に限定されるものではなく、例えば、旋回アーム13下部に直接、所定間隔にて複数の噴霧ノズルを固着するようにしてもよい。
【0031】
ただし、本実施例のような構成を採用することにより、前記水平桿15ごと搬送車両4a、4bの荷台7内部(好ましくは、床面7a付近)まで下ろすことが可能となり、その際には、荷台7周囲のあおり板が風よけ代わりとなり、例え強風下でも前記水平桿15に固着した各噴霧ノズル16a、16bから噴霧される付着防止剤を周辺へ極力飛散させずに荷台7内壁面に付着させることが可能となる。
【0032】
また、前記水平桿15や噴霧ノズル16a、16b等には、付着防止剤保温用の、例えばベルトヒータやバンドヒータ等のヒータ17を貼着している。付着防止剤のうち、重油や軽油等は低温下では粘度が高まって凝固する可能性がある一方、植物性油脂等を界面活性剤を含んだ水と混合・乳化させたものでは液剤中の水分が凍結する可能性があるものの、前記ヒータ17にて、例えば約30℃程度に保温することで前記不具合を未然に防止でき、寒冷地や冬期にあっても好適に使用可能としている。なお、本実施例では、前記ヒータ17を水平桿15や噴霧ノズル16a、16b部分に備えたが、より上流側の旋回アーム13部分等にも貼着してもよい。
【0033】
図中の18は前記高架台2下位の通路5内に進入して停車・待機する搬送車両4a、4bの荷台7(床面7a)の高さを検出する、例えば超音波センサやレーザセンサ等の荷台高さセンサであって、アスファルト合材の搬送車両として一般に使用される、例えば、2~10tサイズの各搬送車両の荷台高さを前記荷台高さセンサ18にて逐次検出可能としている。なお、前記荷台高さセンサ18の設置箇所としては、本実施例では通路5上位のフロア6下面部としているが、これに限定されるものではなく、例えば通路5側方位置等も含めた通路5周囲や、旋回アーム13等にも設置することができる。
【0034】
なお、前記荷台高さセンサを旋回アーム13に設置する場合には、例えば、
図11に示すように、旋回アーム13先端部に吊下した水平桿15等に、下方側でかつ直近に位置する荷台7(床面7a)を検知可能とする近接スイッチやリミットスイッチ等の荷台高さセンサ18’を取り付け、前記旋回アーム13を通路5側に旋回(展開)した状態で旋回アーム13先端側を徐々に降下させた際に、前記荷台高さセンサ18’が搬送車両4a、4bの荷台7の床面7aを検知すると、それを荷台7の高さとして認識させるようにするとよい。
【0035】
また、前記旋回アーム13の先端部には、前方側(旋回アーム13先端側)でかつ直近に位置する荷台7のあおり板を検知可能とする近接スイッチやリミットスイッチ等の近接センサ19を備えており、前記旋回アーム13を通路5側に旋回(展開)した状態で走行台車11を走行レール10の終端部10b側(通路5入口側)へ走行させた際に、前記近接センサ19が搬送車両4a、4bの荷台7前端部のあおり板を検知すると、荷台7終端部と認識して前記走行台車11の走行、及び噴霧ノズル16a、16bからの付着防止剤の噴霧を停止させるようにしている。
【0036】
また、前記付着防止剤噴霧装置8には、図示はしていないが、前記各種設備以外にも、付着防止剤を貯蔵する貯蔵タンク、該貯蔵タンクから前記旋回アーム13や水平桿15等を介して各噴霧ノズル16a、16bに付着防止剤を供給するゴムホースや塩ビ管等の供給ライン、前記貯蔵タンクから供給ラインを介して各噴霧ノズル16a、16bに付着防止剤を圧送する供給ポンプ等を具備している。
【0037】
図中の20は、前記走行台車11や旋回アーム13等の動作制御、前記供給ポンプのON/OFF切替による前記各噴霧ノズル16a、16bからの噴霧制御等、搬送車両4a、4bの荷台7に対して付着防止剤を噴霧するにあたっての各種制御を行う噴霧制御器である。
【0038】
続いて、前記付着防止剤噴霧装置8にて、比較的小型(例えば4tサイズ)の搬送車両4aの荷台7へ付着防止剤を噴霧する場合について
図1~
図6に基づいて説明する。先ず、
図1~
図2及び
図6の(a)に示すように、待機状態にある付着防止剤噴霧装置8では、搬送車両4aが通路5内に進入するのを妨げないように、旋回アーム13を通路5一側部側に旋回して退避させておくと共に、走行台車11を走行レール10の基端部10a(搬送車両4aがバックで通路5内に進入する方向から見て最深部側)に移動させておく。そして、この状態で搬送車両4aを通路5内にバックで進入させ、所定位置(上位のミキサ3から排出されるアスファルト合材を、車両後方の荷台7の後部側で受け止められる位置)に停車・待機させる。このとき、前記荷台高さセンサ18では、待機中の前記搬送車両4aの荷台7(床面7a)高さを検出する。
【0039】
なお、アスファルト合材の受け止め位置を荷台7中央部とせずに荷台7の後部側とするのは、荷台7全体に万遍なくアスファルト合材を積み込むためであり、初めに荷台7後部側に積み込んだ後には、運転手は搬送車両4aを若干バックさせてアスファルト合材の受け止め位置を荷台7前方側にずらし、これを繰り返すことで荷台7全体に一定の層厚でアスファルト合材を積み込み可能としている。したがって、付着防止剤の噴霧を行う、アスファルト合材積み込み前の搬送車両4aの初期停車位置は、図面に示されるように通路5入口側に若干偏っていることとなる。
【0040】
次いで、
図3及び
図6の(b)に示すように、前記噴霧制御器20では、前記旋回アーム13を図中X方向である通路5側に旋回(展開)し、かつ前記荷台高さセンサ18の検出結果に基づいて前記旋回アーム13先端部側を図中Z方向へ下降させ、旋回アーム13先端部に吊下した水平桿15ごと搬送車両4aの荷台7内部まで下ろし、前記水平桿15に固着した各噴霧ノズル16a、16bと、搬送車両4aの荷台7の床面7aやあおり板内壁面7bとを近接させる。なお、前記走行台車11を走行レール10の基端部10aに位置させた状態で旋回アーム13を通路5側に旋回後、先端部側を下降させると、待機中の搬送車両4aの荷台7内部の後端部付近(後端部のあおり板より若干前方位置)に前記水平桿15を下ろせるように、走行台車11の位置決めや旋回アーム13の旋回角度等を前記噴霧制御器20に予め設定している。
【0041】
次いで、
図4~
図5及び
図6の(c)に示すように、前記状態を維持したまま前記各噴霧ノズル16a、16bより付着防止剤を噴霧しながら、前記走行台車11を図中Y方向へ所定速度にて走行させ、搬送車両4aの荷台7の床面7a、及びあおり板内壁面7bの全面に亘って付着防止剤を一様に噴霧していく。
【0042】
そして、前記旋回アーム13先端部に備えた近接センサ19が搬送車両4aの荷台7前端部のあおり板を検知すれば、荷台7終端部と認識して前記走行台車11の走行、及び各噴霧ノズル16a、16bからの付着防止剤の噴霧を停止した後、旋回アーム13先端部側を上昇させて水平桿15を搬送車両4aの荷台7外部へと取り出す。次いで、旋回アーム13を通路5一側部側に旋回させつつ、走行台車11を走行レール10の基端部10aへと後退させ、最初の待機状態に復帰させる。そして、荷台7の全面に付着防止剤を噴霧し終えた搬送車両4aに対し、上位のミキサ3からアスファルト合材を払い出して積み込み、積み込みを終えた前記搬送車両4aは舗装現場へと搬送・出荷する。
【0043】
次に、前記付着防止剤噴霧装置8にて、比較的大型(例えば10tサイズ)の搬送車両4bの荷台7へ付着防止剤を噴霧する場合について
図1~
図2、及び
図7~
図10に基づいて説明する。なお、基本的な動作・制御は前記した小型の搬送車両4aの場合と略同一であるため、重複する部分の説明は省略する。
【0044】
大型の搬送車両4bの場合、荷台7高さが小型の搬送車両4aの場合と比較してより高いものとなるが、前記荷台高さセンサ18による検出結果に基づいてその都度旋回アーム13先端部側を上下動させて調節するため、小型の搬送車両4aの場合と同様に、旋回アーム13先端部に吊下した水平桿15ごと搬送車両4bの荷台7内部まで下ろせ、前記水平桿15に固着した各噴霧ノズル16a、16bと、搬送車両4bの荷台7の床面7aやあおり板内壁面7bとを近接させることができる結果、風の影響を抑えて荷台7表面に付着防止剤を安定して噴霧可能としている。
【0045】
また、
図7~
図10に示すように、上位のミキサ3からアスファルト合材を受け取るために停車・待機した際の大型の搬送車両4bの荷台7前端部が、小型の搬送車両4aの場合と比較してプラント本体1の高架台2の脚柱9b、9dよりも前方側(通路5入口側)に大きく突出することとなる。このとき、走行台車11上の旋回アーム13を通路5側へ約90度(通路5と略直交方向に)旋回させる構成とした場合、走行レール10を前記突出分だけ通路5前方側に大きく延長させる必要が生じるが、その場合には搬送車両4bの走行の邪魔となって作業安全上好ましくない。
【0046】
そこで、本実施例では、前記旋回アーム13と水平桿15とを、平面視でそれぞれの長手方向が所定角度(例えば約30~60度程度)を形成するように連結し、前記旋回アーム13を通路5側へ旋回させて前記水平桿15の長手方向が搬送車両4bの荷台7の幅方向と略一致した際(このとき旋回アーム13は平面視で通路5前方側へ傾斜している状態)、走行台車11の位置に対して水平桿15位置が通路5前方側に突出する構成としている。これにより、前記走行台車11が走行レール10の終端部10b(通路5入口部)に到達した際に、水平桿15を搬送車両4bの荷台7前端部に近接させることができ、前記のような走行レール10の延長が不要となって作業安全上より好ましいものとなる。
【0047】
このように、本発明に係る付着防止剤噴霧装置8にあっては、前記噴霧ノズル16a、16bと搬送車両4a、4bの荷台7とを近接状態に維持しながら付着防止剤を噴霧可能な構成としたので、例え強風下でも付着防止剤を荷台7に安定して噴霧することができ、周辺環境の汚損や付着防止剤の無駄を抑制できる。
【0048】
なお、本実施例では、アスファルトプラントのプラント本体1直下に配される通路5に進入する搬送車両4a、4bに対して付着防止剤を噴霧する場合について説明したが、前記プラント本体1で製造したアスファルト合材を一時的に貯蔵する、アスファルト合材サイロの直下に配される通路に侵入する搬送車両4a、4bに対して付着防止剤を噴霧する場合にも同様に適用することができる。
本発明は、アスファルトプラントのプラント本体やアスファルト合材サイロに限らず、アスファルト合材を搬送する搬送車両に対して付着防止剤を噴霧する場合において広く利用できる。