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特開2022-56168二酸化炭素吸収量推定システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056168
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸収量推定システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/10 20060101AFI20220401BHJP
   G06Q 10/04 20120101ALI20220401BHJP
   G06Q 50/02 20120101ALI20220401BHJP
   G16Y 20/10 20200101ALI20220401BHJP
【FI】
G01W1/10 H
G01W1/10 K
G06Q10/04
G06Q50/02
G16Y20/10
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164026
(22)【出願日】2020-09-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】戸上 崇
(72)【発明者】
【氏名】山本 恭輔
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】圃場の環境情報に基づいて、その圃場で栽培されている植物が吸収する二酸化炭素の量を、より正確に推定する。
【解決手段】設置された圃場に関して互いに異なる複数の環境情報を測定する。複数の環境情報について、それぞれの環境情報と二酸化炭素(CO2)吸収量との対応関係を記憶する。測定された環境情報毎に対応する対応関係を参照して、複数のCO2吸収量を取得する。取得された複数のCO2吸収量を互いに比較して、最小値を推定値として選択する。選択された推定値に関する情報を表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ端末と、サーバと、出力装置とを有する二酸化炭素吸収量推定システムであって、
前記センサ端末は、
設置された圃場に関して互いに異なる複数の環境情報を測定するセンサを有し、
前記サーバは、
前記複数の環境情報について、それぞれの環境情報と二酸化炭素(CO2)吸収量との対応関係を記憶する記憶部と、
測定された環境情報毎に対応する前記対応関係を参照して、複数のCO2吸収量を取得するCO2吸収量取得部と、
取得された前記複数のCO2吸収量を互いに比較して、最小値を推定値として選択する最小値選択部と、
前記環境情報を前記センサ端末から受信し、前記推定値に関する情報を前記出力装置へ送信する送受信部と、
を有し、
前記出力装置は、前記推定値に関する情報を表示する表示部を有する、
ことを特徴とする二酸化炭素吸収量推定システム。
【請求項2】
センサ端末と、サーバと、出力装置とを有する二酸化炭素吸収量推定システムであって、
前記センサ端末は、
設置された圃場に関して互いに異なる複数の環境情報を測定するセンサと、
前記複数の環境情報について、それぞれの環境情報と二酸化炭素(CO2)吸収量との対応関係を記憶する記憶部と、
測定された環境情報毎に対応する前記対応関係を参照して、複数のCO2吸収量を取得するCO2吸収量取得部と、
取得された前記複数のCO2吸収量を互いに比較して、最小値を推定値として選択する最小値選択部と、を有し、
前記サーバは、前記推定値に関する情報を前記センサ端末から受信し、前記推定値に関する情報を前記出力装置へ送信する送受信部と、
を有し、
前記出力装置は、前記推定値に関する情報を表示する表示部を有する、
ことを特徴とする二酸化炭素吸収量推定システム。
【請求項3】
前記センサは、少なくとも、地表面温度、日射量、気温及び相対湿度を測定可能であり、
前記センサ端末及び前記サーバの少なくとも一方は、気温及び相対湿度に基づいて飽差を算出する飽差算出部を有し、
前記記憶部は、地表面温度とCO2吸収量との地表面温度-CO2吸収量対応関係と、日射量とCO2吸収量との日射量-CO2吸収量対応関係と、飽差とCO2吸収量との飽差-CO2吸収量対応関係とを、前記対応関係として記憶し、
前記CO2吸収量取得部は、測定された前記地表面温度と、前記地表面温度-CO2吸収量対応関係とに基づく温度ベース推定値と、測定された前記日射量と前記日射量-CO2吸収量対応関係とに基づく日射量ベース推定値と、前記飽差と前記飽差-CO2吸収量対応関係とに基づく飽差ベース推定値とを、前記複数のCO2吸収量として取得し、
前記最小値選択部は、前記温度ベース推定値、前記日射量ベース推定値、及び、前記飽差ベース推定値の中で値が最小のものを前記推定値として選択する、
請求項1又は2に記載の二酸化炭素吸収量推定システム。
【請求項4】
前記記憶部は、前記地表面温度-CO2吸収量対応関係、及び、前記日射量-CO2吸収量対応関係について、植物の種類毎に定められた対応関係を記憶し、
前記CO2吸収量取得部は、前記センサが設置された圃場で栽培されている植物に応じた前記対応関係を参照する、
請求項3に記載の二酸化炭素吸収量推定システム。
【請求項5】
前記センサは、所定の時間間隔毎に前記複数の環境情報を測定し、
前記CO2吸収量取得部は、前記複数の環境情報を測定する毎に前記複数のCO2吸収量を取得し、
前記最小値選択部は、前記複数のCO2吸収量を取得する毎に前記推定値を選択する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸収量推定システム。
【請求項6】
予め定められた期間内に選択された前記推定値を積算する積算部を更に有する、請求項5に記載の二酸化炭素吸収量推定システム。
【請求項7】
センサ端末が設置された圃場に関して互いに異なる複数の環境情報を、前記センサ端末が、センサを用いて測定する段階と、
サーバが、前記センサ端末から前記複数の環境情報を受信する段階と、
前記サーバが、記憶装置に予め記憶された、前記複数の環境情報のそれぞれと二酸化炭素(CO2)吸収量との対応関係を、受信した前記環境情報毎に参照して、複数のCO2吸収量を取得する段階と、
前記サーバが、取得された複数のCO2吸収量を互いに比較して、最小値を推定値として選択する段階と、
前記サーバが、前記推定値に関する情報を出力装置へ送信する段階と、
前記出力装置が、前記推定値に関する情報を表示する段階と、
を含むことを特徴とする、二酸化炭素吸収量推定方法。
【請求項8】
圃場に照射された日射量に関する日射情報、前記圃場の温度に関する温度情報、前記圃場の湿度に関する湿度情報を取得する段階と、
前記温度情報及び前記湿度情報に基づいて、前記圃場の飽差情報を算出する段階と、
前記圃場における単位時間当たりの二酸化炭素の吸収量の推定値であって、前記温度情報に基づく温度ベース推定値と、前記日射情報に基づく日射量ベース推定値と、前記飽差情報に基づく飽差ベース推定値とをそれぞれ算出する段階と、
前記温度ベース推定値、前記日射量ベース推定値、及び、前記飽差ベース推定値を互いに比較したときの最小値を、前記圃場における二酸化炭素の吸収量の推定値として選択する段階と、
を含む、二酸化炭素吸収量推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を栽培する圃場で測定した環境情報に基づいて、その植物が二酸化炭素を吸収する量を推定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圃場に設置されたセンサによって気温、相対湿度、日照等の各種生育環境を示す環境情報を測定して、測定した環境情報に基づいて、植物が吸収した二酸化炭素吸収量を推定するシステムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、太陽電池による発電電力量に基づいて日射強度を算出し、算出した日射強度を、予め用意した日射強度と植物による二酸化炭素吸収量との関係を示すデータに照らして、二酸化炭素吸収量に変換する環境測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-107273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、植物の二酸化炭素吸収量には様々な要因が関与し、二酸化炭素吸収量は日射量のみによって正確に推定することはできない。このため、日射量に基づいて行う従来の二酸化炭素吸収量の推定によれば、植物が実際に吸収している二酸化炭素の量を正確に推定することができなかった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決すべくなされたものであり、圃場の環境情報に基づいて、その圃場で栽培されている植物が吸収する二酸化炭素の量を、より正確に推定可能な二酸化炭素吸収量推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明は、その一態様として、センサ端末と、サーバと、出力装置とを有する二酸化炭素吸収量推定システムであって、センサ端末は、設置された圃場に関して互いに異なる複数の環境情報を測定するセンサを有し、サーバは、複数の環境情報について、それぞれの環境情報と二酸化炭素(CO2)吸収量との対応関係を記憶する記憶部と、測定された環境情報毎に対応する対応関係を参照して、複数のCO2吸収量を取得するCO2吸収量取得部と、取得された複数のCO2吸収量を互いに比較して、最小値を推定値として選択する最小値選択部と、環境情報をセンサ端末から受信し、推定値に関する情報を出力装置へ送信する送受信部と、を有し、出力装置は、推定値に関する情報を表示する表示部を有する、ことを特徴とする二酸化炭素吸収量推定システムを提供する。
【0008】
また、上述の課題を解決するため、本発明は、他の一態様として、センサ端末と、サーバと、出力装置とを有する二酸化炭素吸収量推定システムであって、センサ端末は、設置された圃場に関して互いに異なる複数の環境情報を測定するセンサと、複数の環境情報について、それぞれの環境情報と二酸化炭素(CO2)吸収量との対応関係を記憶する記憶部と、測定された環境情報毎に対応する対応関係を参照して、複数のCO2吸収量を取得するCO2吸収量取得部と、取得された複数のCO2吸収量を互いに比較して、最小値を推定値として選択する最小値選択部と、を有し、サーバは、推定値に関する情報をセンサ端末から受信し、推定値に関する情報を出力装置へ送信する送受信部と、を有し、出力装置は、推定値に関する情報を表示する表示部を有する、ことを特徴とする二酸化炭素吸収量推定システムを提供する。
【0009】
センサは、少なくとも、地表面温度、日射量、気温及び相対湿度を測定可能であり、センサ端末及びサーバの少なくとも一方は、気温及び相対湿度に基づいて飽差を算出する飽差算出部を有し、記憶部は、地表面温度とCO2吸収量との地表面温度-CO2吸収量対応関係と、日射量とCO2吸収量との日射量-CO2吸収量対応関係と、飽差とCO2吸収量との飽差-CO2吸収量対応関係とを、対応関係として記憶し、CO2吸収量取得部は、測定された地表面温度と、地表面温度-CO2吸収量対応関係とに基づく温度ベース推定値と、測定された日射量と日射量-CO2吸収量対応関係とに基づく日射量ベース推定値と、飽差と飽差-CO2吸収量対応関係とに基づく飽差ベース推定値とを、複数のCO2吸収量として取得し、最小値選択部は、温度ベース推定値、日射量ベース推定値、及び、飽差ベース推定値の中で値が最小のものを推定値として選択する、ことが好ましい。
【0010】
記憶部は、地表面温度-CO2吸収量対応関係、及び、日射量-CO2吸収量対応関係について、植物の種類毎に定められた対応関係を記憶し、CO2吸収量取得部は、センサが設置された圃場で栽培されている植物に応じた対応関係を参照する、ことが好ましい。
【0011】
センサは、所定の時間間隔毎に複数の環境情報を測定し、CO2吸収量取得部は、複数の環境情報を測定する毎に複数のCO2吸収量を取得し、最小値選択部は、複数のCO2吸収量を取得する毎に推定値を選択する、ことが好ましい。
【0012】
予め定められた期間内に選択された推定値を積算する積算装置を更に有する、ことが好ましい。
【0013】
また、本発明は、他の一態様として、センサ端末が設置された圃場に関して互いに異なる複数の環境情報を、前記センサ端末が、センサを用いて測定する段階と、サーバが、前記センサ端末から前記複数の環境情報を受信する段階と、前記サーバが、記憶装置に予め記憶された、前記複数の環境情報のそれぞれと二酸化炭素(CO2)吸収量との対応関係を、受信した前記環境情報毎に参照して、複数のCO2吸収量を取得する段階と、前記サーバが、取得された複数のCO2吸収量を互いに比較して、最小値を推定値として選択する段階と、前記サーバが、前記推定値に関する情報を出力装置へ送信する段階と、前記出力装置が、前記推定値に関する情報を表示する段階と、を含む、二酸化炭素吸収量推定方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、他の一態様として、圃場に照射された日射量に関する日射情報、圃場の温度に関する温度情報、圃場の湿度に関する湿度情報を取得する段階と、温度情報及び湿度情報に基づいて、圃場の飽差情報を算出する段階と、圃場における単位時間当たりの二酸化炭素の吸収量の推定値であって、温度情報に基づく温度ベース推定値と、日射情報に基づく日射量ベース推定値と、飽差情報に基づく飽差ベース推定値とをそれぞれ算出する段階と、温度ベース推定値、日射量ベース推定値、及び、飽差ベース推定値を互いに比較したときの最小値を、圃場における二酸化炭素の吸収量の推定値として選択する段階と、を含む、二酸化炭素吸収量推定方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る二酸化炭素吸収量推定システムは、圃場の環境情報に基づいて、その圃場で栽培されている植物が吸収する二酸化炭素の量を、より正確に推定することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る二酸化炭素吸収量推定システムの概略を説明するための模式図である。
図2】センサ端末の概略構成の一例を示す図である。
図3】表示端末の概略構成の一例を示す図である。
図4】サーバの概略構成の一例を示す図である。
図5】(a)は、センサID、センサ位置及び植物種別の対応関係を示す設定テーブルのデータ構造の一例を示す図であり、(b)は、測定時刻、センサID、環境情報及び推定値の対応関係を示す環境情報テーブルのデータ構造の一例を示す図であり、(c)は、センサIDと各予測値の対応関係を示す予報テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
図6】(a)は、植物種別毎の地表面温度とCO2吸収量との対応関係を示すデータの一例であり、(b)は、植物種別毎の日射量とCO2吸収量との対応関係を示すデータの一例であり、(c)は、植物種別1、2に共通の飽差とCO2吸収量との対応関係を示すデータの一例である。
図7】推定処理の一例を示すフローチャートである。
図8】予報推定処理の一例を示すフローチャートである。
図9】表示端末で表示される画面表示データの一例を示す図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係る二酸化炭素吸収量推定システムの概略を説明するための模式図である。
図11】センサ端末の概略構成の一例を示す図である。
図12】(a)は、センサID、センサ位置及び植物種別の対応関係を示す設定テーブルのデータ構造の一例を示す図であり、(b)は、測定時刻、環境情報及び推定値の対応関係を示す環境情報テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0018】
1.二酸化炭素吸収量推定システム1
1.1 二酸化炭素吸収量推定システム1の概略
図1は、二酸化炭素吸収量推定システム1の概略を説明するための模式図である。二酸化炭素吸収量推定システム1は、1又は複数のセンサ端末2と、表示端末4と、サーバ5と、基地局6と、環境予報情報データベース12等を有する。センサ端末2とサーバ5の間、及び、サーバ5と表示端末4の間は、基地局6及びインターネット9を介して相互に接続される。基地局6は、センサ端末2とインターネット9との接続、及び、表示端末4とインターネット9との接続を行う。
【0019】
センサ端末2は、複数の圃場毎に設置されて、設置された圃場の環境情報をサーバ5に送信する。サーバ5は、環境情報に基づいて、各圃場における二酸化炭素の吸収量を推定し、その推定値に基づいて画面表示データを生成する。表示端末4は、画面表示データを表示する。環境予報情報データベース12は、気象庁または気象予報業務を行う事業者が提供するデータベースである。環境予報情報データベース12は、センサ端末2が設置された圃場の気温、相対湿度及び日射量の8日先までの予測値と、それ以降の少なくとも3か月分の各日の平年値を含む環境予報情報を格納し、インターネット9を介してサーバ5に提供する。表示端末4と基地局6とは、無線通信によって相互に接続される。表示端末4とサーバ5とは、基地局6及びインターネット9を介して相互に接続される。
【0020】
各圃場では、例えば、2種類の芝草C3、C4のいずれかを栽培している。以下、芝草C3の植物種別を1とし、芝草C4の植物種別を2とする。芝草C3は、寒地型芝草であり、生育適温は15~20度である。芝草C3は、5度付近の低温でも生育し、暖地では冬季でも緑を保つことがあるが、その反面、夏季の高温では枯れ上がりやすいという特徴を有する。芝草C4は、暖地型芝草であり、生育適温は25~35度である。芝草C4は、夏季の高温下でも良好な生育を示すものの、晩秋の低温で休眠し地上部が枯れ上がる。また、芝草C4は、早春のグリーンアップも遅れがちである。
【0021】
二酸化炭素吸収量推定システム1では、各圃場に設置されたセンサ端末2によって一定時間ごとに環境情報を測定する。サーバ5は、センサ端末2で測定された環境情報に基づいて、そのセンサ端末2が設置された圃場で栽培されている植物が、その一定時間内に吸収する二酸化炭素の推定値を求め、求めた推定値に基づいて画面表示データを生成する。表示端末4は、ネットワーク対応型のデジタルサイネージを行う端末であり、サーバ5で生成された画面表示データを表示する。
【0022】
まず、センサ端末2に接続されたセンサ部は、そのセンサ端末2が設置された圃場における、気温、相対湿度、地表面温度、日射量を所定の周期で測定し、自センサ端末2を示すセンサIDと関連付けて、基地局6、インターネット9を介してサーバ5に送信する。所定の周期は例えば10分である。
【0023】
サーバ5の記憶装置には、CO2吸収量の推定値を求める際の算出根拠として用いる因子と、実際のCO2吸収量との対応関係、即ち、因子‐CO2吸収量対応関係が予め格納される。ここでは、サーバ5は、地表面温度、日射量、飽差の3つの因子それぞれとCO2吸収量との対応関係が格納されている。地表面温度-CO2吸収量対応関係データは、植物の種別毎に、その種別の植物が栽培されている圃場の地表面温度Tと、その植物のCO2吸収量Prtempとの対応関係を示す。日射量-CO2吸収量対応関係データは、植物の種別毎に、その種別の植物が栽培されている圃場の日射量Rと、その植物のCO2吸収量Prsrとの対応関係を示す。飽差-CO2吸収量対応関係データは、植物が栽培されている圃場の飽差Dと、その植物のCO2吸収量Prvpdとの対応関係を示す。
【0024】
サーバ5は、受信したセンサIDに基づいて圃場で栽培されている植物の種別を判定し、そのセンサIDと共に受信した地表面温度を、判定した植物種別の地表面温度-CO2吸収量対応関係データに当てはめて温度ベース推定値Prtempを求める。また、サーバ5は、判定したセンサIDと共に受信した日射量を、判定した植物種別の日射量-CO2吸収量対応関係データに当てはめて日照量ベース推定値Prsrを求める。また、サーバ5は、判定したセンサIDと共に受信した気温及び相対湿度に基づいて飽差Dを求め、その飽差Dを、判定した植物種別の飽差-CO2吸収量対応関係データに当てはめて飽差ベース推定値Prvpdを求める。
【0025】
次に、サーバ5は、求めた3つの推定値Prtemp、Prsr及びPrvpdを互いに比較して、最小値を推定値として選択する。これにより、3つの推定値にリービッヒの最小律を適用して、光合成速度の最小律を選択する。サーバ5は、求めた推定値を元に画面表示データを生成して、生成した画面表示データを、インターネット9、基地局6を介して表示端末4に送信する。
【0026】
次に、表示端末4は、サーバ5から送信された画面表示データを受信して、その画面表示データを表示する。
【0027】
上述のとおり、二酸化炭素吸収量推定システム1は、地表面温度、日射量、飽差をそれぞれベースとした3種類のCO2吸収量を求め、その中の最小値を推定値とする。このため、単一の環境因子(例えば日射量)に基づいてCO2吸収量を推定する場合と比較して、より高精度にCO2吸収量を推定することが可能となる。
【0028】
ドイツの化学者ユーストゥス・フォン・リービッヒは、植物の生長速度や収量は、必要とされる栄養素のうち、与えられた量のもっとも少ないものにのみ影響されると提唱した(リービッヒの最小律)。本発明は、リービッヒの最小律をCO2吸収量の推定に応用したものである。
【0029】
即ち、本発明では、植物のCO2吸収量に大きな影響を与える、互いに異なる第1、第2、…第n因子(nは2以上の自然数)のn個の因子に着目する。第1因子に係る測定値が測定値M1、第2因子に係る測定値が測定値M2、…、第n因子に係る測定値が測定値Mnであり、測定値M1に基づくCO2吸収量の推定値が推定値P1、測定値M2に基づくCO2吸収量の推定値が推定値P2、…、測定値Mnに基づくCO2吸収量の推定値が推定値Pnであるとする。このとき、本発明では、推定値P1、P2、…、Pnにリービッヒの最小律を適用し、最小値を有するものを推定値として採用する。
【0030】
単一の因子に基づいてCO2吸収量を推定する場合、実際には他の因子の影響によって達成できないような推定値が得られるおそれがある。これに対し、上述のように、算出根拠とする因子が互いに異なる複数の推定値のうち、最小値を推定値として採用する場合、その時点におけるその植物のCO2吸収量に対し、決定的な影響を及ぼしている因子に基づく推定値を得られる可能性が高まる。その結果、より精度の高い推定値を得ることができる。本願では、CO2吸収量を推定する際に着目する因子の組み合わせの一例として、上述の地表面温度、日射量、飽差の組み合わせを挙げる。
【0031】
また、センサ端末2による測定毎に、サーバ5によるCO2吸収量の推定を行うことにより、例えば10分から30分程度の短い時間間隔でCO2吸収量を推定することが可能となる。このため、例えば農研機構が提供するメッシュ農業気象データ(https://amu.rd.naro.go.jp/)のように1日毎に得られる推定値に基づいてCO2吸収量を推定する場合と比較して、圃場の実際の環境の変化に即した推定値を得ることができる。
【0032】
1.2.センサ端末2の構成
図2は、センサ端末2の概略構成の一例を示す図である。
【0033】
センサ端末2は、測定された環境因子を示す環境情報の取得、環境情報の送信等を行う。そのために、センサ端末2は、センサ端末通信部21と、GPS(Global Positioning System)部22と、センサ接続部23と、センサ部24と、センサ端末処理部25と、センサ端末記憶部26とを備える。
【0034】
センサ端末通信部21は、主に2.4GHz帯、5GHz帯等を感受帯域とするアンテナを含む、通信インターフェース回路を有し、無線LAN(Local Area Network)の基地局6との間でIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)802.11規格の無線通信方式に基づいて無線通信を行う。センサ端末通信部21の周波数帯域は、上記した周波数帯域に限定されない。センサ端末通信部21は、センサ端末処理部25から供給された環境情報を基地局6に送信する。
【0035】
GPS部22は、主に1.5GHz帯を感受帯域とするアンテナを含む、GPS回路を有し、不図示のGPS衛星からGPS信号を受信する。GPS部22は、そのGPS信号をデコードし、時刻情報等を取得する。次に、GPS部22は、その時刻情報等に基づいてGPS衛星からセンサ端末2までの擬似距離を計算し、その擬似距離を代入して得られる連立方程式を解くことにより、センサ端末2が存在する位置(緯度、経度、高度等)を検出する。そして、GPS部22は、検出した位置を示す位置情報と取得した時刻情報とを関連付けて定期的にセンサ端末処理部25に出力する。
【0036】
センサ接続部23は、センサ部24と接続するセンサ端子を含み、1又は複数の種類の環境因子を測定するためのセンサ部24と接続する。
【0037】
センサ部24は、気温を測定するための気温センサ、相対湿度を測定するための相対湿度センサ、地表面温度を測定するための地表面温度センサ、日射量を測定するための日射センサを有する。気温は、センサ端末2が設置された圃場における、地上1.25~2.0mの大気の温度であり、単位は摂氏(℃)である。相対湿度は、センサ端末2が設置された圃場における、水蒸気量とそのときの気温における飽和水蒸気量との比を百分率で表したものである。地表面温度は、センサ端末2が設置された圃場における地表面の温度であり、単位は摂氏(℃)である。日射量は、センサ端末2が設置された圃場における日射量であり、単位はワット毎平方メートル(W/m2)である。
【0038】
センサ端末処理部25は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。センサ端末処理部25は、センサ端末2の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。センサ端末処理部25は、センサ端末2の各種処理がセンサ端末記憶部26に記憶されているプログラム等に応じて適切な手順で実行されるように、センサ端末通信部21、GPS部22、センサ部24等の動作を制御する。センサ端末処理部25は、センサ端末記憶部26に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム等)に基づいて処理を実行する。
【0039】
センサ端末記憶部26は、例えば、半導体メモリを有する。センサ端末記憶部26は、センサ端末2を識別するための識別情報であるセンサID、センサ端末処理部25での処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、データ等を記憶する。例えば、センサ端末記憶部26は、ドライバプログラムとして、センサ端末通信部21を制御する無線通信デバイスドライバプログラム、GPS部22を制御するGPSドライバプログラム、センサ部24を制御するセンサドライバプログラム等を記憶する。また、センサ端末記憶部26は、オペレーティングシステムプログラムとして、IEEE802.11規格の無線通信方式に基づいて無線通信等を実行する無線制御プログラム等を記憶する。また、センサ端末記憶部26は、データとして、センサ部24によって測定された環境因子を示す環境情報を記憶する。
【0040】
1.3.表示端末4の構成
図3は、表示端末4の概略構成の一例を示す図である。
【0041】
表示端末4は、推定値に関する情報を表示する表示部を有する出力装置の一例である。表示端末4は、デジタルサイネージとして機能する端末であり、サーバ5が生成した画面表示データを表示する。そのために、表示端末4は、表示端末通信部41と、操作部42と、表示部43と、表示端末処理部44と、表示端末記憶部45とを備える。
【0042】
表示端末通信部41は、主に2.4GHz帯、5GHz帯等を感受帯域とするアンテナを含む、通信インターフェース回路を有し、図示しない無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイントとの間でIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)802.11規格の無線通信方式に基づいて無線通信を行う。表示端末通信部41の周波数帯域は、上記した周波数帯域に限定されない。表示端末通信部41は、基地局6から受信したデータを表示端末処理部44に供給し、表示端末処理部44から供給されたデータを基地局6に送信する。
【0043】
操作部42は、表示端末4の操作が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネル式の入力装置、キーパッド等である。表示端末4の管理者は、このデバイスを用いて、文字、数字等を入力することができる。操作部42は、管理者により操作されると、その操作に対応する信号を発生する。発生した信号は、表示端末4の管理者の指示として、表示端末処理部44に入力される。
【0044】
表示部43は、推定値に関する情報を表示する表示部の一例である。表示部43は、動画像、静止画像等の出力が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネル式の表示装置、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等である。表示部43は、表示端末処理部44から供給される動画像データに応じた動画像、静止画像データに応じた静止画像等を表示する。
【0045】
表示端末処理部44は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。表示端末処理部44は、表示端末4の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)を有する。表示端末処理部44は、表示端末4の各種処理が表示端末記憶部45に記憶されているプログラム及び操作部42の操作からの出力等に応じて適切な手順で実行されるように、表示端末通信部41、表示部43等の動作を制御する。表示端末処理部44は、表示端末記憶部45に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、表示端末処理部44は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。
【0046】
表示端末記憶部45は、例えば、半導体メモリを有する。表示端末記憶部45は、表示端末処理部44での処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、表示端末記憶部45は、ドライバプログラムとして、表示端末通信部41を制御する無線LAN通信デバイスドライバプログラム、操作部42を制御する入力デバイスドライバプログラム、表示部43を制御する出力デバイスドライバプログラム等を記憶する。また、表示端末記憶部45は、オペレーティングシステムプログラムとして、IEEE802.11規格の無線通信方式を実行する接続制御プログラム等を記憶する。また、表示端末記憶部45は、サーバ5から受信した画面表示データを表示部43に表示させるデジタルサイネージ処理を実行するためのプログラムを記憶する。コンピュータプログラムは、例えばCD-ROM(compact disk read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disk read only memory)等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて表示端末記憶部45にインストールされてもよい。
【0047】
1.4.サーバ5の構成
図4は、サーバ5の概略構成の一例を示す図である。図5(a)は、センサID、センサ位置及び植物種別の対応関係を示す設定テーブルのデータ構造の一例を示す図であり、図5(b)は、測定時刻、センサID、環境情報及び推定値の対応関係を示す環境情報テーブルのデータ構造の一例を示す図であり、図5(c)は、センサIDと予測値の対応関係を示す予報テーブルのデータ構造の一例を示す図である。図6(a)は、植物種別毎の地表面温度とCO2吸収量との対応関係を示すデータの一例であり、図6(b)は、植物種別毎の日射量とCO2吸収量との対応関係を示すデータの一例であり、図6(c)は、植物種別1、2に共通の飽差とCO2吸収量との対応関係を示すデータの一例である。
【0048】
サーバ5は、センサ端末2から環境情報を受信すると、環境情報を蓄積及び管理し、表示端末4に、画面表示データを送信する。サーバ5は、サーバ通信部51と、サーバ記憶部52と、サーバ処理部53とを備える。
【0049】
サーバ通信部51は、サーバ5をインターネット9に接続するための通信インターフェース回路を有する。サーバ通信部51は、センサ端末2から送信されたデータ、及び、表示端末4から送信されたデータを受信し、受信された各データをサーバ処理部53に供給する。
【0050】
サーバ記憶部52は、複数の環境情報について、それぞれの環境情報と二酸化炭素(CO2)吸収量との対応関係を記憶する記憶部の一例である。サーバ記憶部52は、例えば、半導体メモリ、磁気ディスク装置、及び光ディスク装置の内の少なくとも一つを有する。サーバ記憶部52は、サーバ処理部53による処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、サーバ記憶部52は、ドライバプログラムとして、サーバ通信部51を制御する通信デバイスドライバプログラム等を記憶する。コンピュータプログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いてサーバ記憶部52にインストールされてもよい。
【0051】
また、サーバ記憶部52は、データとして、図5(a)に示す設定テーブル521、図5(b)に示す環境情報テーブル522、図5(c)に示す予報テーブル523、図6(a)に示す地表面温度-CO2吸収量対応関係データ524、図6(b)に示す日射量-CO2吸収量対応関係データ525、図6(c)に示す飽差-CO2吸収量対応関係データ526、及び、画面表示に係る様々な画像データ等を記憶する。さらに、サーバ記憶部52は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。
【0052】
設定テーブル521には、センサID、センサ位置及び植物種別が互いに関連付けて記憶される。センサIDは、そのセンサ端末2の識別情報である。センサ位置は、そのセンサ端末2を設置した位置を示す経緯度である。植物種別は、そのセンサ端末2が設置された圃場で栽培されている植物の種別を示す。植物種別が1のとき、そのセンサ端末2が設置された圃場で寒地型芝草(C3植物)が栽培されていることを示す。植物種別が2のとき、そのセンサ端末2が設置された圃場で暖地型芝草(C4植物)が栽培されていることを示す。設定テーブル521の各値は、サーバ5の不図示のキーボード等の入力装置を用いて、サーバ5の管理者等によって予め設定される。
【0053】
環境情報テーブル522には、センサID、測定時刻、気温、相対湿度、地表面温度、日射量及び推定値が互いに関連付けて格納される。測定時刻は、そのセンサ端末2のセンサ部24が環境情報を測定した時刻である。気温、相対湿度、地表面温度、日射量は、そのセンサ端末2のセンサ部24で測定された環境情報である。最小推定値は、対応する植物種別、気温、気温、相対湿度、地表面温度、日射量に基づいて、後述する推定処理を実行して得られた値である。
【0054】
例えば、図5(b)に示す環境情報テーブルの1行目のレコードには、センサID=S001を有するセンサ端末2が、測定時刻t1に測定した、気温、相対湿度、地表面温度、日射量が格納され、更に、これらの値に基づく推定処理によって得られた推定値が格納される。
【0055】
予報テーブル523には、センサID、予報日、気温、相対湿度、日射量及び推定値が互いに関連付けて格納される。予報日は、予測の対象となる日を示す。気温、相対湿度及び日射量は、それぞれの予測値を示す。推定値は、気温、相対湿度及び日射量の予測値に基づく推定処理によって得られた推定値が格納される。
【0056】
地表面温度-CO2吸収量対応関係データ524は、植物種別1の植物(寒冷地型芝草C3)と、植物種別2の植物(暖地型芝草C4)のそれぞれについて、栽培されている圃場の地表面温度Tと、その圃場でその植物が吸収する二酸化炭素の量Prtempとの関係を、過去の実績や実験に基づいて定めたデータである。曲線524aは、植物種別1の対応関係を示し、曲線524bは、植物種別2の対応関係を示す。図6(a)では、地表面温度-CO2吸収量対応関係データ524をグラフ化しているが、サーバ記憶部52にはテーブルとして記憶される。
【0057】
日射量-CO2吸収量対応関係データ525は、植物種別1の植物と、植物種別2の植物のそれぞれについて、栽培されている圃場の日射量Rと、その圃場でその植物が吸収する二酸化炭素の量Prsrとの関係を、過去の実績や実験に基づいて定めたデータである。曲線525aは、植物種別1の対応関係を示し、曲線525bは、植物種別2の対応関係を示す。図6(b)では、日射量-CO2吸収量対応関係データ525をグラフ化しているが、サーバ記憶部52にはテーブルとして記憶される。
【0058】
飽差-CO2吸収量対応関係データ526は、栽培されている圃場の飽差Dと、その圃場でその植物が吸収する二酸化炭素の量Prvpdとの関係を、過去の実績や実験に基づいて予め定めたデータである。地表面温度‐CO2吸収量対応関係データ524、日射量‐CO2吸収量対応関係データ525と異なり、飽差-CO2吸収量対応関係データ526は、植物種別1の植物と、植物種別2の植物の両方に適用される。図6(c)では、飽差-CO2吸収量対応関係データ526をグラフ化しているが、サーバ記憶部52にはテーブルとして記憶される。
【0059】
図4に戻り、サーバ処理部53は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。サーバ処理部53は、サーバ5の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。サーバ処理部53は、サーバ5の各種処理がサーバ記憶部52に記憶されているプログラム等に応じて適切な手順で実行されるように、サーバ通信部51等の動作を制御する。サーバ処理部53は、サーバ記憶部52に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、サーバ処理部53は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
【0060】
サーバ処理部53は、推定処理部531と、予報推定処理部532と、画面作成部533とを有する。推定処理部531は、測定された環境情報毎に対応する対応関係を参照して、複数のCO2吸収量を取得するCO2吸収量取得部の一例である。また、推定処理部531は、取得された複数のCO2吸収量を互いに比較して、最小値を推定値として選択する最小値選択部の一例である。また、推定処理部531は、気温及び相対湿度に基づいて飽差を算出する飽差算出部の一例である。また、画面作成部533は、予め定められた期間内に選択された推定値を積算する積算部の一例である。サーバ処理部53が有するこれらの各部は、サーバ処理部53が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、サーバ処理部53が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとしてサーバ5に実装されてもよい。
【0061】
1.5.二酸化炭素吸収量推定システム1の動作
センサ端末2において、センサ端末処理部25は、センサ部24を用いて、センサ端末2が設置された圃場の気温、相対湿度、地表面温度及び日射量を一定時間(例えば10分)毎に測定すると共に、GPS部22を用いて、それら測定がなされた時刻を測定時刻として取得する。センサ端末処理部25は、センサ端末記憶部26から読み出したセンサIDと、測定された気温、相対湿度、地表面温度及び日射量を含む環境情報と、環境情報を測定した測定時刻とを互いに関連付けて、センサ端末通信部21を用いて基地局6、インターネット9を介してサーバ5に送信する。
【0062】
図7は、推定処理部531による推定処理の一例を示すフローチャートである。サーバ5において、サーバ通信部51によって受信された環境情報を受け取る毎に、サーバ処理部53は、以下の推定処理を実行する。
【0063】
推定処理部531は、環境情報を取得(ステップS201)すると、設定テーブル521を参照して、環境情報に含まれるセンサIDに対応する植物種別を取得する(ステップS202)。
【0064】
次に、推定処理部531は、地表面温度-CO2吸収量対応関係データ524のうち、ステップS202で取得した植物種別に対応するデータを参照して、環境情報に含まれる地表面温度に対応する温度ベース推定値Prtempを算出する(ステップS203)。
【0065】
次に、推定処理部531は、日射量-CO2吸収量対応関係データ525のうち、ステップS202で取得した植物種別に対応するデータを参照して、環境情報に含まれる日射量に対応する日射量ベース推定値Prsrを算出する(ステップS204)。
【0066】
次に、推定処理部531は、環境情報に含まれる気温及び相対湿度を次の式(1)に当てはめて飽差Dを求める(ステップS205)。式(1)において、温度Tの単位は摂氏(℃)、相対湿度Rの単位はパーセント(%)、飽差Dの単位はヘクトパスカル(hPa)である。
【数1】
【0067】
次に、推定処理部531は、飽差-CO2吸収量対応関係データ526を参照して、ステップS205で求めた飽差Dに対応する飽差ベース推定値Prvpdを算出する(ステップS206)。尚、ステップS203及びS204と異なり、ステップS206では、飽差ベース推定値Prvpdを算出する際、植物種別1、2のどちらについても同じ飽差-CO2吸収量対応関係データ526を用いる。
【0068】
次に、推定処理部531は、温度ベース推定値Prtemp、日射量ベース推定値Prsr、及び、飽差ベース推定値Prvpdを比較して、3つの推定値の中で最小の値を推定値として選択し、環境情報テーブル522の推定値の該当する欄に格納する(ステップS207)。
【0069】
図8は、予報推定処理部532が実行する予報推定処理の一例を示すフローチャートである。予報推定処理部532は、例えば、各センサ端末2について各月の初日(1日)に実行されて、そのセンサ端末が設置された圃場におけるCO2吸収量について、例えばこの先4か月の予想値を月毎に求める。
【0070】
予報推定処理部532は、設定テーブル521からひとつのセンサIDを選択し、選択したセンサIDに対応するセンサ位置を読み出す(ステップS301)。
【0071】
次に、予報推定処理部532は、サーバ通信部51を用いて、環境予報情報データベース12にアクセスし、読み出したセンサ位置における、環境予報情報を要求し、取得する(ステップS302、S303)。環境予報情報は、センサ位置における、日射量、気温、相対湿度の予報値を含む。地表面温度、日射量、気温、相対湿度の各予報値は、1か月後、2か月後、3か月後及び4か月後の1か月間における平均の予報値である。例えば、現在が3月1日の場合、1か月後の1か月間における平均の予報値とは、4月1日から4月31日までの地表面温度、日射量、気温及び相対湿度の各平均値である。予報推定処理部532は、取得した環境予報情報を、予報テーブル523に格納する。尚、予報月のm1、m2、m3及びm4は、それぞれ、1か月後、2か月後、3か月後及び4か月後の1か月間を示す。
【0072】
次に、予報推定処理部532は、設定テーブル521を参照して、ステップS301で選択したセンサIDに対応する植物種別を読み出す(ステップS304)。
【0073】
次に、予報推定処理部532は、地表面温度-CO2吸収量対応関係データ524のうち、ステップS304で取得した植物種別に対応するデータを参照して、環境予報情報に含まれる気温に対応する温度ベース推定値Prtempを算出する(ステップS305)。尚、本ステップは、推定処理部531が実行する推定処理のステップS203に対応し、ステップS203では、地表面温度に基づいて温度ベース推定値Prtempを算出するが、ステップS305では、地表面温度の代わりに気温に基づいて温度ベース推定値Prtempを算出する。
【0074】
次に、予報推定処理部532は、日射量-CO2吸収量対応関係データ525のうち、ステップS304で取得した植物種別に対応するデータを参照して、環境情報に含まれる日射量に対応する日射量ベース推定値Prsrを算出する(ステップS306)。
【0075】
次に、予報推定処理部532は、環境情報に含まれる気温及び相対湿度を上述の式(1)に当てはめて飽差Dを求める(ステップS307)。
【0076】
次に、予報推定処理部532は、飽差-CO2吸収量対応関係データ526を参照して、ステップS305で求めた飽差Dに対応する飽差ベース推定値Prvpdを算出する(ステップS308)。尚、ステップS305及びS306と異なり、ステップS308では、飽差ベース推定値Prvpdを算出する際、植物種別1、2のどちらについても同じ飽差-CO2吸収量対応関係データ526を用いる。
【0077】
次に、予報推定処理部532は、算出した温度ベース推定値Prtemp、日射量ベース推定値Prsr、及び、飽差ベース推定値Prvpdを比較して、3つの推定値の中で最小の値を推定値として選択し、予報テーブル523の推定値の該当する欄に格納する(ステップS309)。
【0078】
図9は、表示端末4で表示される画面表示データ533aの一例を示す図である。尚、図中に記載の数値は、画面表示データ533aの画面レイアウトを説明するために記載した数値であり、実際のCO2吸収量とは必ずしも一致していない。図4に戻って、画面作成部533は、設定テーブル521、環境情報テーブル522及び予報テーブル523に基づいて画面表示データ533aを作成する。
【0079】
グラフ533bは、予報推定処理で求めた1か月後、2か月後、3か月後及び4か月後の各月の推定値をグラフ化したものである。画面作成部533は、設定テーブル521に基づいて、植物種別が1であるセンサIDを読み出し、予報テーブル523において、その読み出したセンサIDであり、予報月m1である推定値を抽出し、その推定値の合計値を算出する。この算出した値は、植物種別が1である植物が、1か月後の1か月間に吸収すると予想されるCO2吸収量の予想値である。予報月m2、m3、m4について推定値の合計値を同様に算出して、2か月後、3か月後及び4か月後の1か月間それぞれについて予想値を算出する。これら算出した予想値をプロットすることにより、画面作成部533は、グラフ533bの植物種別=1の折れ線グラフを描画する。植物種別=2の折れ線グラフについても同様である。
【0080】
CO2吸収量(C3)533dは、画面作成部533が、設定テーブル521から植物種別が1(芝草C3)であるセンサIDを読み出し、環境情報テーブル522に格納されている、その読み出したセンサIDに係る、その日の午前0時以後に最初に求めた推定値から、直近に求めた推定値までを積算した値である。
【0081】
CO2吸収量(C4)533eは、画面作成部533が、設定テーブル521から植物種別が2(芝草C4)であるセンサIDを読み出し、環境情報テーブル522に格納されている、その読み出したセンサIDに係る、その日の午前0時以後に最初に求めた推定値から、直近に求めた推定値までを積算した値である。
【0082】
合計CO2吸収量533cは、画面作成部533がCO2吸収量(C3)533d、CO2吸収量(C4)533eを合計した値である。
【0083】
指標値533lは、サーバ記憶部52に予め記憶された、一般的な自動車が1km走行する際に排出するCO2の量を画面作成部533が読み出して、合計CO2吸収量533cを除算して求めた値である。
【0084】
指標値533mは、サーバ記憶部52に予め記憶された、一般的なテレビ受像機を1時間作動させるために必要な電力を、電力会社が供給する際に排出するCO2の量を画面作成部533が読み出して、合計CO2吸収量533cを除算して求めた値である。
【0085】
指標値533nは、サーバ記憶部52に予め記憶された、一般的な空調機を1時間作動させるために必要な電力を、電力会社が供給する際に排出するCO2の量を画面作成部533が読み出して、合計CO2吸収量533cを除算して求めた値である。
【0086】
CO2吸収量(C3)533gは、画面作成部533が、設定テーブル521から植物種別が1(芝草C3)であるセンサIDを読み出し、環境情報テーブル522において、その読み出したセンサIDに係る、午前0時以後に最初に求めた推定値から、その翌日の午前0時の直前に求めた推定値までを積算した一日あたりのCO2吸収量を、過去30日分算出した後、その30日分の一日あたりのCO2吸収量を平均して求めた値である。
【0087】
CO2吸収量(C4)533hは、画面作成部533が、設定テーブル521から植物種別が2(芝草C4)であるセンサIDを読み出し、環境情報テーブル522において、その読み出したセンサIDに係る、午前0時以後に最初に求めた推定値から、その翌日の午前0時の直前に求めた推定値までを積算した一日あたりのCO2吸収量を、過去30日分算出した後、その30日分の一日あたりのCO2吸収量を平均して求めた値である。
【0088】
合計CO2吸収量533fは、画面作成部533がCO2吸収量(C3)533g、CO2吸収量(C4)533hを合計した値である。
【0089】
指標値533oは、サーバ記憶部52に予め記憶された、一般的な一本の杉の木が生長の過程で吸収するCO2の量を画面作成部533が読み出して、合計CO2吸収量533fを除算して求めた値である。
【0090】
指標値533pは、サーバ記憶部52に予め記憶された、一般的な飛行機が1km飛行する際に排出するCO2の量を画面作成部533が読み出して、合計CO2吸収量533fを除算して求めた値である。
【0091】
指標値533qは、サーバ記憶部52に予め記憶された、一般的なビニール袋を1枚焼却する際に発生するCO2の量を画面作成部533が読み出して、合計CO2吸収量533fを除算して求めた値である。
【0092】
CO2吸収量(C3)533jは、画面作成部533が、設定テーブル521から植物種別が1(芝草C3)であるセンサIDを読み出し、環境情報テーブル522において、その読み出したセンサIDに係る、午前0時以後に最初に求めた推定値から、その翌日の午前0時の直前に求めた推定値までを積算した一日あたりのCO2吸収量を、過去365日分算出した後、その365日分の一日あたりのCO2吸収量を平均して求めた値である。
【0093】
CO2吸収量(C4)533kは、画面作成部533が、設定テーブル521から植物種別が2(芝草C4)であるセンサIDを読み出し、環境情報テーブル522において、その読み出したセンサIDに係る、午前0時以後に最初に求めた推定値から、その翌日の午前0時の直前に求めた推定値までを積算した一日あたりのCO2吸収量を、過去365日分算出した後、その365日分の一日あたりのCO2吸収量を平均して求めた値である。
【0094】
合計CO2吸収量533iは、画面作成部533がCO2吸収量(C3)533j、CO2吸収量(C4)533kを合計した値である。
【0095】
指標値533rは、サーバ記憶部52に予め記憶された、一般的な一本の杉の木が生長の過程で吸収するCO2の量を画面作成部533が読み出して、合計CO2吸収量533iを除算して求めた値である。
【0096】
指標値533sは、サーバ記憶部52に予め記憶された、常温、一気圧で一般的な25mプールを満たすCO2の量を画面作成部533が読み出して、合計CO2吸収量533iを除算して求めた値である。
【0097】
指標値533tは、サーバ記憶部52に予め記憶された、平均的な日本人が1年間の生活で排出するCO2の量を画面作成部533が読み出して、合計CO2吸収量533iを除算して求めた値である。
【0098】
本実施の形態によれば、圃場の環境情報に基づいて、その圃場で栽培されている植物が吸収する二酸化炭素の量を、環境情報の測定と同じ頻度で推定することができる。また、推定値を求める際、地表面温度、日射量、飽差に基づく推定値をそれぞれ求め、その中で最小の値を推定値として採用することによって、リービッヒの最小律にならって推定値を求めることができる。このため、環境情報を測定した時点で支配的な影響を及ぼしている環境情報に基づいてCO2吸収量を推定するので、単一の環境情報に基づいて推定する手法と比較して精度の高い推定値を得ることができる。
【0099】
2.二酸化炭素吸収量推定システム30
図10は、他の二酸化炭素吸収量推定システム30の概略を説明するための模式図である。前述した二酸化炭素吸収量推定システム1と比較すると、センサ端末31の構成、及び、サーバ5の動作が一部異なる。以下、二酸化炭素吸収量推定システム1との相違点について説明する。
【0100】
二酸化炭素吸収量推定システム30では、各圃場に設置されたセンサ端末31によって一定時間ごとに環境情報を測定し、そのセンサ端末31が設置された圃場で栽培されている植物が、その一定時間内に吸収する二酸化炭素の推定値を算出する。
【0101】
図11は、センサ端末31の概略構成の一例を示す図である。上述のセンサ端末2と比較すると、センサ端末31は、センサ端末処理部310の構成が異なる。センサ端末処理部310は、推定処理部311、センサ端末記憶部312を有する。推定処理部311は、サーバ5の推定処理部531に対応する。センサ端末記憶部312は、複数の環境情報について、それぞれの環境情報と二酸化炭素(CO2)吸収量との対応関係を記憶する記憶部の一例である。推定処理部311は、測定された環境情報毎に対応する対応関係を参照して、複数のCO2吸収量を取得するCO2吸収量取得部の一例である。また、推定処理部311は、取得された複数のCO2吸収量を互いに比較して、最小値を推定値として選択する最小値選択部の一例である。また、推定処理部311は、気温及び相対湿度に基づいて飽差を算出する飽差算出部の一例である。
【0102】
図12(a)は、センサID、センサ位置及び植物種別の対応関係を示す設定テーブルのデータ構造の一例を示す図であり、図12(b)は、測定時刻、環境情報及び推定値の対応関係を示す環境情報テーブルのデータ構造の一例を示す図である。センサ端末記憶部312は、設定テーブル313、環境情報テーブル314、地表面温度‐CO2吸収量対応関係データ315、日射量‐CO2吸収量対応関係データ316、飽差‐CO2吸収量対応関係データ317を記憶する。設定テーブル313は、サーバ5の設定テーブル521に対応する。環境情報テーブル522は、サーバ5の環境情報テーブル522に対応する。地表面温度‐CO2吸収量対応関係データ315、日射量‐CO2吸収量対応関係データ316、及び、飽差‐CO2吸収量対応関係データ317は、それぞれ、図6の地表面温度‐CO2吸収量対応関係データ524、日射量‐CO2吸収量対応関係データ525、及び、飽差‐CO2吸収量対応関係データ526と同じため、図示を省略する。
【0103】
まず、センサ端末31に接続されたセンサ部24は、そのセンサ端末31が設置された圃場における、気温、相対湿度、地表面温度、日射量を含む環境情報を所定の周期で測定する。センサ端末処理部310は、得られた各環境情報を環境情報テーブル314に格納する。
【0104】
次に、推定処理部311は、設定テーブル313及び環境情報テーブル314に基づいて図7のステップS201~S207を実行し、推定値を算出する。
【0105】
次に、センサ端末処理部310は、算出した推定値と、その推定値を算出する際に用いた環境情報と、その環境情報の測定時刻と、そのセンサ端末31のセンサIDとを関連付けて、基地局6、インターネット9を介してサーバ5に送信する。
【0106】
サーバ通信部51が、推定値、測定時刻、環境情報及びセンサIDを受信すると、サーバ処理部53は、環境情報テーブル522に受信した各値を格納する。以後の動作は上述の二酸化炭素吸収量推定システム1と同じため説明を省略する。尚、二酸化炭素吸収量推定システム1では、センサ端末31が推定処理部531を有するため、サーバ5の推定処理部531を省略してもよい。
【0107】
二酸化炭素吸収量推定システム30によれば、二酸化炭素吸収量推定システム1と同様に、圃場の環境情報に基づいて、その圃場で栽培されている植物が吸収する二酸化炭素の量を、環境情報の測定と同じ頻度で推定することができる。また、単一の環境情報に基づいて推定する手法と比較して精度の高い推定値を得ることができる。
【0108】
3.変形例について
環境情報は、更に、土壌水分量、土壌電気伝導度、土壌pH、風向及び風速、飽差、露点温度、水位、水温、及びCO2等の環境因子を示すデータを含んでもよい。
【0109】
表示端末の代わりに、多機能携帯電話(所謂「スマートフォン」)、携帯情報端末(Personal Digital Assistant, PDA)、携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤ、タブレットPC、携帯電話(所謂「フィーチャーフォン」)等の携帯端末を用いてもよい。また、表示端末の代わりに、デスクトップコンピュータ、ワークステーション等の据置型の情報処理装置を用いてもよい。
【0110】
センサ端末2及び31が環境情報を測定する測定周期は、10分よりも短くても長くてもよいが、30分以下が好ましい。
【0111】
図6(a)~(c)では、地表面温度-CO2吸収量対応関係データ、日射量-CO2吸収量対応関係データ、飽差-CO2吸収量対応関係データをそれぞれテーブルとしてサーバ記憶部52またはセンサ端末記憶部312に記憶するとしたが、これらの対応関係データの一部または全部は、地表面温度/日射量/飽差と、CO2吸収量との関数として記憶されてもよい。
【0112】
推定処理部531及び推定処理部311は、飽差ベース推定値Prvpdを算出する際、植物種別1、2に共通の飽差-CO2吸収量対応関係データを用いたが、温度ベース推定値Prtemp及び日射量ベース推定値Prsrを算出する際と同様に、植物種別毎に異なる飽差-CO2吸収量対応関係データを用意して、飽差ベース推定値Prvpdを算出してもよい。逆に、地表面温度-CO2吸収量対応関係データ、日射量-CO2吸収量対応関係データを、植物の全種別に共通にひとつだけ用意して、温度ベース推定値Prtemp、日射量ベース推定値Prsrを算出してもよい。
【0113】
環境予報情報は、温度ベース推定値、日射量ベース推定値及び飽差ベース推定値を算出可能な予報値の組み合わせを含むものであればよい。例えば、環境予報情報データベース12が、飽差の予報値を提供している場合、気温及び相対湿度の予報値の代わりに、飽差の予報値を環境予報情報データベース12から取得して、取得した飽差をそのまま飽差‐CO2吸収量対応関係データ526に当てはめて、飽差ベース推定値を算出してもよい。
【符号の説明】
【0114】
1、30 二酸化炭素吸収量推定システム
2、31 センサ端末
4 表示端末
5 サーバ
9 インターネット
12 環境予報情報データベース
311、531 推定処理部
315、524 地表面温度‐CO2吸収量対応関係データ
316、525 日射量‐CO2吸収量対応関係データ
317、526 飽差‐CO2吸収量対応関係データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2021-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ端末と、サーバと、出力装置とを有する二酸化炭素吸収量推定システムであって、
前記センサ端末は、
設置された圃場に関して互いに異なる複数の環境情報であって、地表面温度、日射量、気温及び相対湿度を含む環境情報を測定するセンサを有し、
前記サーバは、
前記複数の環境情報について、それぞれの環境情報と二酸化炭素(CO2)吸収量との対応関係を記憶する記憶部と、
測定された環境情報毎に対応する前記対応関係を参照して、複数のCO2吸収量を取得するCO2吸収量取得部と、
取得された前記複数のCO2吸収量を互いに比較して、最小値を推定値として選択する最小値選択部と、
前記環境情報を前記センサ端末から受信し、前記推定値に関する情報を前記出力装置へ送信する送受信部と、
を有し、
前記出力装置は、前記推定値に関する情報を表示する表示部を有する、
ことを特徴とする二酸化炭素吸収量推定システム。
【請求項2】
センサ端末と、サーバと、出力装置とを有する二酸化炭素吸収量推定システムであって、
前記センサ端末は、
設置された圃場に関して互いに異なる複数の環境情報であって、地表面温度、日射量、気温及び相対湿度を含む環境情報を測定するセンサと、
前記複数の環境情報について、それぞれの環境情報と二酸化炭素(CO2)吸収量との対応関係を記憶する記憶部と、
測定された環境情報毎に対応する前記対応関係を参照して、複数のCO2吸収量を取得するCO2吸収量取得部と、
取得された前記複数のCO2吸収量を互いに比較して、最小値を推定値として選択する最小値選択部と、を有し、
前記サーバは、前記推定値に関する情報を前記センサ端末から受信し、前記推定値に関する情報を前記出力装置へ送信する送受信部と、
を有し、
前記出力装置は、前記推定値に関する情報を表示する表示部を有する、
ことを特徴とする二酸化炭素吸収量推定システム。
【請求項3】
記センサ端末及び前記サーバの少なくとも一方は、気温及び相対湿度に基づいて飽差を算出する飽差算出部を有し、
前記記憶部は、地表面温度とCO2吸収量との地表面温度-CO2吸収量対応関係と、日射量とCO2吸収量との日射量-CO2吸収量対応関係と、飽差とCO2吸収量との飽差-CO2吸収量対応関係とを、前記対応関係として記憶し、
前記CO2吸収量取得部は、測定された前記地表面温度と、前記地表面温度-CO2吸収量対応関係とに基づく温度ベース推定値と、測定された前記日射量と前記日射量-CO2吸収量対応関係とに基づく日射量ベース推定値と、前記飽差と前記飽差-CO2吸収量対応関係とに基づく飽差ベース推定値とを、前記複数のCO2吸収量として取得し、
前記最小値選択部は、前記温度ベース推定値、前記日射量ベース推定値、及び、前記飽差ベース推定値の中で値が最小のものを前記推定値として選択する、
請求項1又は2に記載の二酸化炭素吸収量推定システム。
【請求項4】
前記記憶部は、前記地表面温度-CO2吸収量対応関係、及び、前記日射量-CO2吸収量対応関係について、植物の種類毎に定められた対応関係を記憶し、
前記CO2吸収量取得部は、前記センサが設置された圃場で栽培されている植物に応じた前記対応関係を参照する、
請求項3に記載の二酸化炭素吸収量推定システム。
【請求項5】
前記センサは、所定の時間間隔毎に前記複数の環境情報を測定し、
前記CO2吸収量取得部は、前記複数の環境情報を測定する毎に前記複数のCO2吸収量を取得し、
前記最小値選択部は、前記複数のCO2吸収量を取得する毎に前記推定値を選択する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸収量推定システム。
【請求項6】
予め定められた期間内に選択された前記推定値を積算する積算部を更に有する、請求項5に記載の二酸化炭素吸収量推定システム。
【請求項7】
センサ端末が設置された圃場に関して互いに異なる複数の環境情報であって、地表面温度、日射量、気温及び相対湿度を含む環境情報を、前記センサ端末が、センサを用いて測定する段階と、
サーバが、前記センサ端末から前記複数の環境情報を受信する段階と、
前記サーバが、記憶装置に予め記憶された、前記複数の環境情報のそれぞれと二酸化炭素(CO2)吸収量との対応関係を、受信した前記環境情報毎に参照して、複数のCO2吸収量を取得する段階と、
前記サーバが、取得された複数のCO2吸収量を互いに比較して、最小値を推定値として選択する段階と、
前記サーバが、前記推定値に関する情報を出力装置へ送信する段階と、
前記出力装置が、前記推定値に関する情報を表示する段階と、
を含むことを特徴とする、二酸化炭素吸収量推定方法。
【請求項8】
圃場に照射された日射量に関する日射情報、前記圃場の温度に関する温度情報、前記圃場の湿度に関する湿度情報を取得する段階と、
前記温度情報及び前記湿度情報に基づいて、前記圃場の飽差情報を算出する段階と、
前記圃場における単位時間当たりの二酸化炭素の吸収量の推定値であって、前記温度情報に基づく温度ベース推定値と、前記日射情報に基づく日射量ベース推定値と、前記飽差情報に基づく飽差ベース推定値とをそれぞれ算出する段階と、
前記温度ベース推定値、前記日射量ベース推定値、及び、前記飽差ベース推定値を互いに比較したときの最小値を、前記圃場における二酸化炭素の吸収量の推定値として選択する段階と、
を含む、二酸化炭素吸収量推定方法。