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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056170
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】吊りボルトへの取着具
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/20 20060101AFI20220401BHJP
   F21V 21/03 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
F16B2/20 D
F21V21/03 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164031
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121429
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】西脇 寿幸
【テーマコード(参考)】
3J022
【Fターム(参考)】
3J022DA11
3J022DA14
3J022EA42
3J022EB14
3J022EC12
3J022EC22
3J022FB00
3J022FB04
3J022FB08
3J022FB12
3J022HA02
3J022HA05
(57)【要約】
【課題】吊りボルトに固定体を固定するときに固定体を仮保持するために使用されるものであって、径の異なる吊りボルトに対応して取り付けることができる吊りボルトへの取着具を提供する。
【解決手段】吊りボルト30の対向する両側部を挟持する一対の挟持部10,10を一端側に有し、各挟持部10の先端11が、吊りボルト30を通過可能に開いた開位置と、閉じた閉位置と、に移動可能に軸部3に連結された一対の挟持体2,2と、一対の挟持部10,10を閉位置に向けて付勢するコイルばね4と、を備えた。一対の挟持部10,10は、径の異なる大径吊りボルト31及び小径吊りボルト32に対応すべく、大径吊りボルト用挟持部13と小径吊りボルト用挟持部14とを、吊りボルト30の受け入れ方向に並列して設けた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間に配置された吊りボルトの対向する両側部を挟持する一対の挟持部を一端側に有し、前記各挟持部の各先端が、前記吊りボルトを挟持する位置に受け入れるべく通過可能に開いた開位置と、閉じた閉位置と、に移動可能に軸部に連結された一対の挟持体と、
前記一対の挟持部を前記閉位置に向けて付勢する付勢手段と、
を備え、
前記一対の挟持部は、径の異なる二つの前記吊りボルトに対応すべく、大径吊りボルト用挟持部と小径吊りボルト用挟持部とが、前記吊りボルトの受け入れ方向に並列して設けられていることを特徴とする吊りボルトへの取着具。
【請求項2】
前記大径吊りボルト用挟持部は、前記小径吊りボルト用挟持部よりも前記一端側に設けられ、
前記挟持部の先端を最大に離間させた状態において、大径の前記吊りボルトが前記小径吊りボルト用挟持部に配置できないよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の吊りボルトへの取着具。
【請求項3】
前記付勢手段は、コイルばねであり、前記一対の挟持部の先端は、閉じた状態で相互に交差するように設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吊りボルトへの取着具。
【請求項4】
前記一対の挟持体における前記吊りボルトの軸方向の少なくとも一方側には、平坦面が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の吊りボルトへの取着具。
【請求項5】
前記一対の挟持体の他端側に、前記挟持部の先端を離間操作するための操作部が設けられ、当該操作部における前記吊りボルトの軸方向の少なくとも一方側には、前記吊りボルトに固定される固定体を載置するための載置面、及び前記固定体を吸着保持するための磁石の両方またはいずれかが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の吊りボルトへの取着具。
【請求項6】
前記一対の挟持体の他端側に、前記挟持部の先端を離間操作するための操作部が設けられ、当該操作部の先端には、この先端に延びる方向と交差する方向に張り出した指掛け部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の吊りボルトへの取着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井等から吊り下げられた吊りボルトに照明器具等の固定体を固定するときに用いられる吊りボルトへの取着具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天井等から吊り下げられた吊りボルトに照明器具あるいはこれを支持するための支持金具等の固定体を取付固定するときは、高所作業となることが多い。高所作業では、脚立、梯子等を使用しての作業となるので、上り下りの回数を減らすべく一度に固定体、取付具など多くの部材等を抱えて上がることがある。その際、多くの部材等を片手で持ちながら他方の手で取り付けを行なうことは作業しにくかったり困難であるので、吊りボルトに仮保持具を取り付け、一時的に部材等の一部を仮保持して固定体の固定作業を行なうことが多い。
【0003】
特許文献1には、吊りボルトを挟持自在な2枚の挟持片を相対向させた一端と、対向する2つの取っ手を有する他端と、から成る仮保持具が開示されている。この仮保持具を用いて吊りボルトに照明器具を取り付けるときは、照明器具の本体の穴に吊りボルトを通してから、照明器具の本体の下面から突出している吊りボルトの下端側に仮保持具を取り付け、照明器具を支持させる。この状態でナットやワッシャーを仮保持具の下に突出している吊りボルトに下方から嵌めることができるので、吊りボルトにナット等を嵌め、ナットを締め付けながら仮保持具を外して照明器具の本体を吊りボルトに本固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3204037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の仮保持具は、特定の径の吊りボルトにしか取り付けることができない。一方で、吊りボルトは固定される固定具等に対応して大きさが異なっているので、サイズの異なる複数種類の仮保持具を用意する必要があった。
【0006】
そこで、本発明は、吊りボルトに固定体を固定するときに固定体を仮保持するのに使用されるものであって、径の異なる吊りボルトに対応して取り付けることができる吊りボルトへの取着具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の吊りボルトへの取着具は、間に配置された吊りボルトの対向する両側部を挟持する一対の挟持部を一端側に有し、前記各挟持部の各先端が、前記吊りボルトを挟持する位置に受け入れるべく通過可能に開いた開位置と、閉じた閉位置と、に移動可能に軸部に連結された一対の挟持体と、
前記一対の挟持部を前記閉位置に向けて付勢する付勢手段と、
を備え、
前記一対の挟持部は、径の異なる二つの前記吊りボルトに対応すべく、大径吊りボルト用挟持部と小径吊りボルト用挟持部とが、前記吊りボルトの受け入れ方向に並列して設けられている。
これにより、一つの取着具を径の異なる吊りボルトに対応して取り付けることができ、かつ、取着具を各吊りボルトに安定して保持させることができる。
【0008】
請求項2の吊りボルトへの取着具は、大径吊りボルト用挟持部が、小径吊りボルト用挟持部よりも一端側に設けられ、挟持部の先端を最大に離間させた状態において、大径吊りボルトが小径吊りボルト用挟持部に配置できないよう構成されている。
これにより、吊りボルトに取着具を当てがって挟持部内に吊りボルトを押し込み、それが止まった箇所が自ずと径の異なる各吊りボルト専用の挟持部となるので、位置合わせすることなく各吊りボルトを対応する挟持部内に収容することができる。
【0009】
請求項3の吊りボルトへの取着具は、付勢手段がコイルばねであり、一対の挟持部の先端は、閉じた状態で相互に交差するように設けられている。
これにより、取着具の非使用時の初期姿勢から使用時の挟持姿勢に至るコイルばねの変形量を大きくすることができるため、吊りボルトへの保持力を高めることができる。
【0010】
請求項4の吊りボルトへの取着具は、一対の挟持体における吊りボルトの軸方向の少なくとも一方側に、平坦面が形成されている。
これにより、照明器具の本体等の固定体を吊りボルトに固定する作業において、固定体を一時的に取着具で保持し、挟持体の上面を支持面として利用するときに、固定体を挟持体の上面に安定して支持させることができる。
【0011】
請求項5の吊りボルトへの取着具は、一対の挟持体の他端側に、挟持部の先端を離間操作するための操作部が設けられ、操作部における吊りボルトの軸方向の少なくとも一方側には、吊りボルトに固定される固定体を載置するための載置面、及び固定体を吸着保持するための磁石の両方またはいずれかが設けられている。
これにより、固定体を一時的に取着具で保持するときに、操作部の載置面に支持させて、また、磁石により吸着させて、固定体を挟持体の上面に安定して保持させることができる。
【0012】
請求項6の吊りボルトへの取着具は、一対の挟持体の他端側に、挟持部の先端を離間操作するための操作部が設けられ、操作部の先端には、この先端に延びる方向と交差する方向に張り出した指掛け部が設けられている。
これにより、操作部を操作して取着具を吊りボルトに取着するときに、指掛け部に指を掛けて摘まむように操作できる。そして、特に、非使用時に操作部が大きく広がっていると、操作部を握りにくいが、指掛け部が設けられていることにより片手でも操作し易い。また、操作部を操作し易いことにより、非使用時にはコイルばね等の付勢手段に大きな負荷がかからないよう操作部を広げた解放状態にしておくことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、一つの取着具を径の異なる吊りボルトに対応して取り付けることができる。そして、一対の挟持部は、大小二つの挟持部が吊りボルトの受け入れ方向に並列して設けられており、各挟持部は、内部空間を共有せず、それぞれ独立して形成され、径の異なるそれぞれの吊りボルトに対応して専用に設けられているので、いずれの吊りボルトに対しても周縁が吊りボルトの外面に全体的に当接し、取着具を吊りボルトに安定して保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の取着具を示し、(a)は挟持部側から見た斜視図、(b)は操作部側から見た斜視図である。
図2図1の取着具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図3図1の取着具の挟持体を示し、(a)は一方の挟持体の斜視図、(b)は他方の挟持体の斜視図である。
図4図1の非使用時の取着具を示し、(a)は平面図、(b)は斜視図、(c)は正面図、(d)は(c)のA-A切断線による断面図である。
図5図1の取着具を吊りボルトに取り付けるときの状態を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
図6図1の取着具を使用して支持金具を吊りボルトに固定する方法を示す説明図である。
図7】同じく、支持金具を吊りボルトに固定する方法を示す説明図である。
図8図6(b)の状態を別方向から示し、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
図9図7(e)の状態を上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の吊りボルトへの取着具を図に基づいて説明する。
取着具は、天井等から吊り下げられた吊りボルトに取着されて、吊りボルトに固定される照明器具等の固定体を固定するときに用いられ、固定体を一時的に仮保持するものである。
【0016】
図1乃至図3において、取着具1は、一端側に、間に配置された吊りボルト30の対向する両側部を挟持する一対の挟持部10,10を有し、他端側に、各一対の挟持部10,10の先端11,11を離間操作するための操作部20,20が設けられた一対の挟持体2,2と、一対の挟持部10,10を一定方向に付勢する付勢手段と、を備えている。一対の挟持体2,2は、一対の挟持部10,10の各先端11が、吊りボルト30を挟持する位置に受け入れるべく通過可能に開いた開位置と、閉じた閉位置と、に移動可能に軸部3に連結されている。付勢手段は、コイルばね4からなり、一対の挟持部10,10を閉位置に向けて付勢している。一対の挟持部10,10は、大径吊りボルト31と小径吊りボルト32との二つの径の異なる吊りボルト30に対応すべく、大径吊りボルト用挟持部13と小径吊りボルト用挟持部14とが、吊りボルト30の受け入れ方向に並列して設けられている。
【0017】
一対の挟持体2,2は、図3に示すように形成され、略左右対称形をなしている。各挟持体2の挟持部10は、吊りボルト30の軸方向に間隔をあけて、図3(a)に示す一方の挟持体2では3層の挟持片12が形成され、図3(b)に示す他方の挟持体2では4層の挟持片12が形成されている。左右の挟持体2の各挟持片12は、一対の挟持部10,10の先端11,11を閉じたとき、図4(b)に示すように、互いに相手の挟持片12の間の空間に嵌り込んで交差するようになっている。各挟持片12には大小2つの半円状に切欠された切欠孔が上下に貫通する同じ位置に形成されており、これにより、各一対の挟持部10,10には、大径吊りボルト用挟持部13と小径吊りボルト用挟持部14とが所定距離離間して独立に設けられている。大径吊りボルト用挟持部13は大径吊りボルト31の外径と同一の内径を有し、小径吊りボルト用挟持部14は小径吊りボルト32の外径と同一の内径を有していて、大小各吊りボルト30の外面は大小各挟持部10,10の内壁面に全面的に当接するようになっている。
【0018】
一対の挟持部10,10において、大径吊りボルト31を挟持する大径吊りボルト用挟持部13は、小径吊りボルト32を挟持する小径吊りボルト用挟持部14よりも挟持体2の一端側である、一対の挟持部10,10の各先端11側に設けられている。そして、大径吊りボルト用挟持部13と小径吊りボルト用挟持部14との間には、一対の挟持部10,10の間に突出して一対の挟持部10,10の間隔を狭くする配置阻害部15が対向して一対形成されている。これにより、一対の挟持部10,10の先端11,11を最大に離間させた状態において、大径吊りボルト31を小径吊りボルト用挟持部14に配置できないようになっている。すなわち、対向する一対の配置阻害部15,15の間は、小径吊りボルト32の外径より大きく、大径吊りボルト31の外径より小さい間隔に形成されており、大径吊りボルト31は、一対の挟持部10,10間の受け入れ方向に移動させた際に大径吊りボルト用挟持部13の位置より奥には移動させることができないようになっている。
【0019】
一対の挟持体2,2における吊りボルト30の軸方向の両側である上面5及び下面6は、後述する指掛け部24を除く一端側から他端側にかけた全面が平坦面に形成されている。この平坦面は、照明器具、器具の本体、器具の支持金具などの固定体40を一時的に仮支持する支持面、後述する載置面21として利用することができる。
【0020】
一対の挟持体2,2の他端側には、一対の挟持部10,10の先端11,11を離間操作するための操作部20がそれぞれ設けられていて、各操作部20における吊りボルト30の軸方向の両側である上面及び下面には、吊りボルト30に固定される固定体40を載置し、これを仮保持するための載置面21が形成されている。
【0021】
加えて、挟持体2の上面5及び下面6には、図3に示すように、固定体40を吸着保持する磁石22が埋め込まれている。磁石22は挟持体2の上面5及び下面6に埋め込まれた後、外面がカバー23で覆われており、カバー23の外面は上面5及び下面6と同一面に形成されている。
【0022】
更に、操作部20の先端には、操作部20の先端に延びる方向と交差する方向に張り出した指掛け部24が設けられている。指掛け部24は、操作部20の先端の開口部周縁全体に所定長さ外方に板状に突出していて、ここに指を掛けて摘まんで操作部20を閉じる方向に操作することができる。指掛け部24のうち、挟持体2の上面5及び下面6より張り出した箇所は、上面あるいは下面の載置面21に載置した固定体40の落下防止としても作用する。
【0023】
付勢手段であるコイルばね4は、図4に示すように、挟持体2の軸部3に取り付けられ、コイル両端の直線状の線材が一対の操作部20,20の各側壁7の内壁面の中間高さ部分を弾性的に押圧し、常時操作部20を拡開方向に付勢している。
【0024】
取着具1が一時的に仮取着される吊りボルト30は、天井から吊り下げられ、本実施形態では、大径吊りボルト31は四分ボルトであり、小径ボルトは三分ボルトである。吊りボルト30は、少なくとも固定体40を上下から挟んで固定するためのナットが螺着される部分は外面に雄ネジが形成されている。
【0025】
次に、上記のように構成された取着具1を用いて、固定体40である照明器具を支持する支持金具41を吊りボルト30に固定する方法を説明する。支持金具41は図6及び図7に示す手順に従って固定する。支持金具41は、図8に示すように、断面略コ字状をなす左右一対の側板42,42と底板43とからなる板部材で形成され、底板43に照明器具を取り付けるための貫通孔44が複数設けられている。支持金具41は、2本の吊りボルト30に跨って固定される。
【0026】
まず、作業者は、支持金具41、取着具1などを持ち、支持金具41を吊りボルト30に固定するためのナット、必要に応じてワッシャーをポケットに入れるなどして脚立あるいは梯子に上る。一度にこれらを持って上がれば上り下りする回数を減らすことができる。脚立等に上がったら、図6(a)に示すように、2本の吊りボルト30のそれぞれに同一高さで取着具1を取り付ける。
【0027】
次に、図6(b)に示すように、2つの取着具1に跨ってそれらの載置面21に支持金具41を載置し支持させる。支持金具41が取着具1に支持された状態を図8にも示す。支持金具41を支持させたとき、取着具1の載置面21は指掛け部24を除いて全体が平坦面に形成されているとともに、載置面21には磁石22が埋設されており、また、操作部20の先端の周縁に外方に突出する指掛け部24が設けられているので、支持金具41は取着具1から容易に落下することがなく載置面21に安定して仮保持される。続いて、図6(c)に示すように、上側ナット50を吊りボルト30に下端から螺着し最終固定位置まで上方に移動させる。
【0028】
次に、仮保持されている支持金具41を取着具1から取り外し、上下反転させて底板43が上向きとなる姿勢で、貫通孔44に吊りボルト30の下端を差し込み、図6(d)に示すように、支持金具41を底板43が上側ナット50の下面に当接するまで持ち上げる。次いで、支持金具41を片手で保持しつつ、取着具1を片方ずつ吊りボルト30から取り外し、吊りボルト30の側方から支持金具41の下側位置に取り付ける。この状態において、支持金具41は側方及び下方に開口しており、取着具1は、図7(e)に示すように、支持金具41の側方端部の開口から挟持部10が水平方向に差し込まれて吊りボルト30に取り付けられ、載置面に支持金具41の底板43が載置されこれを下方から支持する。これを上方から見た状態を図9にも示す。
【0029】
続いて、挟み込む下側ナット51を吊りボルト30の下端から螺着し、図7(f)に示すように、取着具1の下側まで移動させる。このとき、支持金具41は2つの取着具1で仮支持されているので、作業者は支持金具41を片手で保持している必要はなく下側ナット51の取り付けのみに専念してこれを回し所定高さまで移動させることができるので作業し易い。次に、図7(g)に示すように、片方ずつ取着具1を取り外し、下側ナット51を更に上方に螺進させる。そして、両方の下側ナット51を、既に最終固定位置に取り付けられている上側ナット50とで挟んで締め付ければ、支持金具41は、図7(h)に示すように、吊りボルト30に固定される。
【0030】
なお、図6(c)の段階で、上側ナット50は吊りボルト30に下方から螺着して最終固定位置より少し上方の位置に配置しておき、図7(f)の段階で、下側ナット51を吊りボルト30に螺着し、最終固定位置に移動させて配置した後、図7(g)の段階で片方ずつ取着具1を取り外し、支持金具41を底板43が下側ナット51の上面に当接するまで下げ、更に、上側ナット50を下方に移動させて、図7(h)に示すように、最終固定位置に取り付けられている下側ナット51とで締め付けることによって、支持金具41を吊りボルト30に固定することもできる。
【0031】
また、器具あるいはこの支持金具41等の固定体40の吊りボルト30への固定高さ、固定体40や取着具1の大きさ、手による把持のし易さ、吊りボルト30の間隔などの条件によっては、上記手順のうち、図6(a)~(d)に示した、吊りボルト30における上側ナット50の上方において一時的に支持金具41を配置しこれを取着具1で仮保持する手順を省くこともできる。この場合、最初に、上側ナット50を吊りボルト30の所定位置に取り付けるとともに、図7(e)に示すように、上側ナット50の下側に支持金具41及び取着具1を配置した後、以下、図7(f)~(h)に示したと同様の手順で、吊りボルト30に下側ナット51を螺着し所定高さまで移動させて上側ナット50と下側ナット51とで支持金具41を挟んで締め付けることにより、支持金具41を吊りボルト30の所定位置に固定することもできる。この場合も、取着具1は、下側ナット51を吊りボルト30に螺着し所定位置まで移動させる間、支持金具41を仮支持するので、片手で支持金具41を保持している手間を省くことができる手段として機能する。
【0032】
次に、本実施形態の取着具1の作用を説明する。
取着具1は、固定体40を仮保持できるので、上側ナット50、下側ナット51を吊りボルト30に螺着して所定位置まで移動させる間、固定体40を保持している必要がなく、ナットの取付作業に専念できるので、固定体40を保持している煩わしさから解放され、作業性が向上する。なお、このように取着具1によって固定体40を仮保持できることにより、脚立や梯子に上り下りする回数を減らすことができる。
【0033】
そして、特に、取着具1は、一対の挟持部10,10に、大径吊りボルト用挟持部13と小径吊りボルト用挟持部14とが吊りボルト30の受け入れ方向に並列して設けられているので、径の異なる大径吊りボルト31及び小径吊りボルト32に対応して取り付けることができる。
加えて、大小二つの一対の挟持部10,10が吊りボルト30の受け入れ方向に並列して設けられており、各一対の挟持部10,10は、内部空間を共有せず、それぞれ独立して形成され、径の異なる大径吊りボルト31及び小径吊りボルト32に対応した専用のものであるので、いずれの吊りボルト30に対しても周縁が吊りボルト30の外面に全体的に当接し、取着具1を吊りボルト30に安定して保持させることができる。
【0034】
更に、一対の挟持部10,10の先端11,11は、閉じた状態で相互に交差するように設けられているので、取着具1の非使用時の初期姿勢から使用時の挟持姿勢に至るコイルばね4の変形量を大きくすることができる。このため、吊りボルト30への保持力を高めることができる。
【0035】
更に、操作部20の先端に指掛け部24が設けられているので、取着具1を吊りボルト30に取着するとき、指掛け部24に指を掛けて摘まむようにして操作でき、作業し易い。特に、非使用時には操作部20は大きく広がっているので使用時には操作部20を握りにくいが、指掛け部24が設けられていることにより片手でも操作し易い。また、操作部20を操作し易いことにより、操作部20を広げたフリー状態にしておくことができ、非使用時に付勢手段であるコイルばね4に大きな負荷がかからないようにしておくことができる。
【0036】
ところで、上記実施形態の一対の挟持部10,10は、大径吊りボルト用挟持部13が、小径吊りボルト用挟持部14よりも一端側すなわち挟持部10の先端11側に設けられているが、逆に、小径吊りボルト用挟持部14が、大径吊りボルト用挟持部13よりも一端側に設けられたものであってもよい。
また、一対の挟持部10,10は、先端11,11が最大に離間させた状態において、大径吊りボルト31が小径吊りボルト用挟持部14に配置できないよう構成されているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、大径吊りボルト31が小径吊りボルト用挟持部14に移動可能なものであってもよい。
【0037】
更に、上記実施形態の挟持部10は、大径吊りボルト用挟持部13と小径吊りボルト用挟持部14との二つが設けられているが、大きさの異なる挟持部を三つ以上設けてもよい。
【0038】
なお、上記実施形態の一対の挟持部10,10は、大径吊りボルト用挟持部13と小径吊りボルト用挟持部14とが吊りボルト30の受け入れ方向に並列して設けられ、これらの一対の挟持部10,10は、内部空間を共有せず、それぞれ独立したものであるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、挟持部10は、一対で挟持することにより吊りボルト30に取着できるものであり、径の違いはある程度吸収できるので、本発明は、挟持部10が、独立した内部空間を有せず、大小の吊りボルト30に対して兼用できるものである場合にも適用することは可能である。
【0039】
そして、上記実施形態の付勢手段は、コイルばね4であり、一対の挟持部10,10の先端11,11は、閉じた状態で相互に交差するように設けられているが、付勢手段はコイルばね4でなくてもよく、また、一対の挟持部10,10の先端11,11は、閉じた状態で交差しないものであってもよい。
【0040】
加えて、一対の挟持体2,2は、上面5及び下面6に平坦面が形成されいるが、上面5及び下面6のいずれか一方に平坦面が形成されていてもよい。また、挟持体2の上面5及び下面6のいずれも、平坦面が形成されていないものであってもよい。
【0041】
また、操作部20における吊りボルト30の軸方向の両側には、吊りボルト30に固定される固定体40を載置するための載置面21、及び固定体40を吸着保持するための磁石22が設けられているが、載置面21及び磁石22は、吊りボルト30の軸方向のいずれか一方側のみに設けてもよい。あるいは、操作部20の上面及び下面の少なくとも一方は、載置面21、磁石22のいずれかのみを設けてもよく、更には、載置面21、磁石22のいずれをも設けないものとしてもよい。
【0042】
加えて、操作部20の先端の指掛け部24は、操作部20の先端の開口部周縁全体に設けられているが、その一部のみに設けてもよい。また、指掛け部24は、所定長さ外方に板状に突出して形成されているが、指を掛けられるものであれば、表面に凹凸が形成された平面的なものであってもよい。更には、指掛け部24を設けないものとしてもよい。
【0043】
ところで、上記実施形態からは、以下の技術的思想を把握することも可能である。
(1)間に配置された吊りボルト30の対向する両側部を挟持する一対の挟持部10,10を一端側に有し、各一対の挟持部10,10の先端11,11が、吊りボルト30を挟持する位置に受け入れるべく通過可能に開いた開位置と、閉じた閉位置と、に移動可能に軸部3に連結された一対の挟持体2,2と、
一対の挟持部10,10を前記閉位置に向けて付勢する付勢手段と、
を備え、
一対の挟持部10,10には、径の異なる複数の吊りボルト30に対応すべく、複数の吊りボルト30に対応して大きさの異なる複数の一対の挟持部10,10が設けられ、
一対の挟持部10,10の先端11,11は、閉じた状態で相互に交差するように設けられていることを特徴とする吊りボルトへの取着具。
【0044】
(2)一対の挟持体2,2の他端側に、一対の挟持部10,10の先端11,11を離間操作するための操作部20が設けられ、操作部20の先端には、操作部20の先端に延びる方向と交差する方向に張り出した指掛け部24が設けられていることを特徴とする(1)に記載の吊りボルトへの取着具。
【0045】
これらの技術的思想によれば、一対の挟持部10,10の先端11,11は、閉じた状態で相互に交差するように設けられているので、一対の挟持部10,10に設けられている複数の一対の挟持部10,10がそれぞれ独立して形成されていないものである場合にも、取着具1の非使用時の初期姿勢から使用時の挟持姿勢に至るコイルばね4の変形量を大きくすることができる。これにより、吊りボルト30の保持力を高めることができる、という効果が得られる。
また、(1)において、操作部20を操作して取着具1を吊りボルト30に取着するときに、非使用時に操作部20が大きく広がっている場合には操作部20は握りにくいが、上記(2)の取着具1によれば、操作部20に指掛け部24が設けられているので、指掛け部24に指を掛けて摘まむように操作でき、片手でも操作し易い、という効果が得られる。
【符号の説明】
【0046】
1 取着具 20 操作部
2 挟持体 21 載置面
3 軸部 22 磁石
4 コイルばね 24 指掛け部
5 上面 30 吊りボルト
6 下面 31 大径吊りボルト
10 挟持部 32 小径吊りボルト
11 先端 40 固定体
13 大径吊りボルト用挟持部 41 支持金具(固定体)
14 小径吊りボルト用挟持部
図1
図2
図3
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図9