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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056202
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】合成石英粉および石英成型体
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20220401BHJP
   C03B 20/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
C03B20/00 K
C03B20/00 F
C03B20/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164087
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229830
【氏名又は名称】株式会社フェローテックホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山内 晃一朗
【テーマコード(参考)】
4G014
4G072
【Fターム(参考)】
4G014AH02
4G014AH04
4G072AA25
4G072BB05
4G072DD02
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH30
4G072JJ11
4G072JJ23
4G072KK03
4G072LL03
4G072MM01
4G072MM26
4G072MM28
4G072MM33
4G072MM36
4G072PP17
4G072RR05
4G072RR12
4G072TT01
4G072TT04
4G072TT20
4G072UU21
(57)【要約】
【課題】従来よりも、石英成型体としたときの気泡の発生を抑えられる合成石英粉およびそのような石英成型体を提供する。
【解決手段】合成石英粉は、粒径400~610μmの粒子が、充填嵩密度1.25~1.31g/cm3で存在してなる。この合成石英粉は、オルトケイ酸テトラメチルを主成分とする原料と純水とを反応させることによりシリカゲルを生成するゲル生成手順と、ゲル生成手順にて生成されたシリカゲルを粉砕することによりシリカゲル粉末を生成する粉末生成手順と、粉末生成手順にて生成されたシリカゲル粉末をアンモニア水に懸濁させてなるスラリーを生成するスラリー生成手順と、スラリー生成手順にて生成されたスラリーからアンモニア水を分離してシリカゲル粉末を得る分離手順と、分離手順により得られたシリカゲル粉末を1000℃以上で焼成することにより石英粉を生成する焼成手順と、を備える製造方法にて製造される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径400~610μmの粒子が、充填嵩密度1.25~1.31g/cm3で存在してなる、
合成石英粉。
【請求項2】
アルカリ金属の含有量が30ppb未満である、
請求項1に記載の合成石英粉。
【請求項3】
アルカリ土類金属の含有量が10ppb未満である、
請求項1または請求項2に記載の合成石英粉。
【請求項4】
オルトケイ酸テトラメチルを主成分とする原料と純水とを反応させることによりシリカゲルを生成するゲル生成手順と、
前記ゲル生成手順にて生成されたシリカゲルを粉砕することによりシリカゲル粉末を生成する粉末生成手順と、
前記粉末生成手順にて生成されたシリカゲル粉末をアンモニア水に懸濁させてなるスラリーを生成するスラリー生成手順と、
前記スラリー生成手順にて生成されたスラリーからアンモニア水を分離してシリカゲル粉末を得る分離手順と、
前記分離手順により得られたシリカゲル粉末を1000℃以上で焼成することにより石英粉を生成する焼成手順と、
を備える合成石英粉の製造方法。
【請求項5】
前記スラリー生成手順では、前記粉末生成手順にて生成された湿潤状態のシリカゲル粉末を、pH10.00~11.00に調整されたアンモニア水に懸濁させることでスラリーを生成する、
請求項4に記載の合成石英粉の製造方法。
【請求項6】
前記ゲル生成手順では、オルトケイ酸テトラメチルと純水とを反応させてなるゾル溶液を生成した後、該ゾル溶液をゲル化させることで、シリカゲルを生成する、
請求項4または請求項5に記載の合成石英粉の製造方法。
【請求項7】
前記ゲル生成手順では、オルトケイ酸テトラメチルに対してモル比で5倍以上となる純水を加えて撹拌することにより、両者を反応させてなるゾル溶液を生成する、
請求項6に記載の合成石英粉の製造方法。
【請求項8】
前記ゲル生成手順では、オルトケイ酸テトラメチルに対してモル比で10倍以上となる純水を加えて撹拌することにより、両者を反応させてなるゾル溶液を生成する、
請求項6または請求項7に記載の合成石英粉の製造方法。
【請求項9】
前記分離手順では、前記スラリー生成手順にて生成されたスラリー中でシリカゲル粉末を沈殿させてから、該スラリーにおける上澄みを除去することでシリカゲル粉末を得る、
請求項4から8のいずれか一項に記載の合成石英粉の製造方法。
【請求項10】
前記分離手順では、前記スラリー生成手順にて生成されたスラリーから上澄みを除去した後、さらに純水を加えた溶液中でシリカゲル粉末を沈殿させてから、該スラリーにおける上澄みを除去することでシリカゲル粉末を得る、
請求項9に記載の合成石英粉の製造方法。
【請求項11】
前記ゲル生成手順では、アルカリ金属の含有量が5ppb未満である液状の原料を用いる、
請求項4から10のいずれか一項に記載の合成石英粉の製造方法。
【請求項12】
前記ゲル生成手順では、アルカリ土類金属の含有量が5ppb未満である液状の原料を用いる、
請求項4から11のいずれか一項に記載の合成石英粉の製造方法。
【請求項13】
請求項1から3のいずれか一項に記載の合成石英粉を溶融して成型されている、
石英成型体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置などに用いられる石英成型体の材料となる合成石英粉に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体単結晶引上装置などの半導体製造装置に用いられる坩堝や治具といった石英成型体は、その材料となる天然石英紛を溶融して成型することにより製造されることが一般的であるが、天然石英粉は地質由来の種々の金属不純物を含有しており、近年の半導体の高純度化に対応できるものではなかった。
【0003】
これに対し、近年では、石英成型体として求められる品質を満たせるような石英粉として、高純度のアルコキシシランを原料とした合成石英粉が注目されており、その品質向上のための種々の技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04-238832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただ、上述した石英成型体では、使用環境における耐性を高めるべく、その内部に発生する気泡を少なくすることが求められるが、これまでの製造方法による合成石英紛では、石英成型体としたときの気泡の発生までを充分に抑制できているとはいえなかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、従来よりも、石英成型体としたときの気泡の発生を抑えられる合成石英粉およびそのような石英成型体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため第1局面は、粒径400~610μmの粒子が、充填嵩密度1.25~1.31g/cm3で存在してなる、合成石英粉である。
【0008】
この局面は以下に示す第2局面のようにしてもよい。
第2局面においては、アルカリ金属の含有量が30ppb未満である。ここでいうアルカリ金属としては、例えば、Li、Na、Kといった元素のことである。
【0009】
また、上記各局面は以下に示す第3局面のようにしてもよい。
第3局面においては、アルカリ土類金属の含有量が10ppb未満である。ここでいうアルカリ土類金属としては、例えば、Mg、Caといった元素のことである。
【0010】
上記各局面のような合成石英粉であれば、後述のように、これを溶融して成型した石英成型体において気泡の発生を抑制することができる。そのため、この合成石英粉は、高純度の合成石英インゴットや、それらを加工して製造される半導体製造装置用の冶具などといった石英成形体の材料として好適である。
【0011】
また、上記課題を解決するため第4局面は、オルトケイ酸テトラメチルを主成分とする原料と純水とを反応させることによりシリカゲルを生成するゲル生成手順と、前記ゲル生成手順にて生成されたシリカゲルを粉砕することによりシリカゲル粉末を生成する粉末生成手順と、前記粉末生成手順にて生成されたシリカゲル粉末をアンモニア水に懸濁させてなるスラリーを生成するスラリー生成手順と、前記スラリー生成手順にて生成されたスラリーからアンモニア水を分離してシリカゲル粉末を得る分離手順と、前記分離手順により得られたシリカゲル粉末を1000℃以上で焼成することにより石英粉を生成する焼成手順と、を備える合成石英粉の製造方法である。
【0012】
この局面の製造方法であれば、後述のように、こうして製造された合成石英粉を溶融して成型した石英成型体において気泡の発生を抑制することができる。
【0013】
この局面は以下に示す第5局面のようにしてもよい。
第5局面において、前記スラリー生成手順では、前記粉末生成手順にて生成された湿潤状態のシリカゲル粉末を、pH10.00~11.00に調整されたアンモニア水に懸濁させることでスラリーを生成する。
【0014】
また、上記第4、第5局面は以下に示す第6局面のようにしてもよい。
第6局面において、前記ゲル生成手順では、オルトケイ酸テトラメチルと純水とを反応させてなるゾル溶液を生成した後、該ゾル溶液をゲル化させることで、シリカゲルを生成する。
【0015】
この局面は以下に示す第7局面のようにしてもよい。
第7局面において、前記ゲル生成手順では、オルトケイ酸テトラメチルに対してモル比で5倍以上となる純水を加えて撹拌することにより、両者を反応させてなるゾル溶液を生成する。
【0016】
また、上記第6、第7局面は以下に示す第8局面のようにしてもよい。
第8局面において、前記ゲル生成手順では、オルトケイ酸テトラメチルに対してモル比で10倍以上となる純水を加えて撹拌することにより、両者を反応させてなるゾル溶液を生成する。
【0017】
この製造方法であれば、後述のように、こうして製造された合成石英粉を溶融して成型した石英成型体において、気泡の発生を抑制することができる。
【0018】
また、第4から第8いずれかの局面は以下に示す第9局面のようにしてもよい。
第9局面において、前記分離手順では、前記スラリー生成手順にて生成されたスラリー中でシリカゲル粉末を沈殿させてから、該スラリーにおける上澄みを除去することでシリカゲル粉末を得る。
【0019】
この局面は以下に示す第10局面のようにしてもよい。
第10局面において、前記分離手順では、前記スラリー生成手順にて生成されたスラリーから上澄みを除去した後、さらに純水を加えた溶液中でシリカゲル粉末を沈殿させてから、該スラリーにおける上澄みを除去することでシリカゲル粉末を得る。
【0020】
また、第4から第10いずれかの局面は以下に示す第11局面のようにしてもよい。
第11局面において、前記ゲル生成手順では、アルカリ金属の含有量が5ppb未満である液状の原料を用いる。
【0021】
この製造方法であれば、後述のように、アルカリ金属の含有量が30ppb未満となる合成石英粉を製造することができる。
【0022】
また、第4から第11いずれかの局面は以下に示す第12局面のようにしてもよい。
第12局面において、前記ゲル生成手順では、アルカリ土類金属の含有量が5ppb未満である液状の原料を用いる。
【0023】
この製造方法であれば、後述のように、アルカリ土類金属の含有量が10ppb未満となる合成石英粉を製造することができる。
【0024】
また、上記課題を解決するため第13局面は、第1局面から第3局面のいずれかに記載の合成石英粉を溶融して成型されている、石英成型体である。
【0025】
この局面の石英成型体であれば、後述のように、気泡の発生を抑制することができたものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明における合成石英粉の製造方法を示すフローチャート
図2】合成石英砂を評価した結果を示す図
図3】石英成形体を評価した結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1)全体構成
【0028】
石英成型体は、以下に示す合成石英粉を溶融して成型されたインゴットであり、ブロック状の部材である。
【0029】
この合成石英粉は、粒径400~610μmの粒子が、充填嵩密度1.25~1.31g/cm3で存在してなるものである。そして、この合成石英粉において、アルカリ金属の含有量は30ppb未満(本実施形態では、26ppb)であり、アルカリ土類金属の含有量が10ppb未満(本実施形態では、9.5ppb)である。
【0030】
(2)合成石英粉の製造
上述した合成石英粉は、図1に示す手順を経て製造される。
【0031】
・ゲル生成手順(s10)
この手順では、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)を主成分とする原料と純水とを反応させることによりシリカゲルを生成する。具体的には、オルトケイ酸テトラメチルと純水とを反応させてなるゾル溶液を生成した後、このゾル溶液をゲル化させることで、シリカゲルを生成する。
【0032】
ここでは、オルトケイ酸テトラメチルに対してモル比で5倍以上(より好ましくは10倍以上)となる純水を加えて撹拌することにより、両者を反応させてなるゾル溶液が生成される。本実施形態では、純水、オルトケイ酸テトラメチルの順に容器へと投入した後、密閉容器振とうにより撹拌してゾル溶液を生成している。
【0033】
また、オルトケイ酸テトラメチルを主成分とする原料としては、アルカリ金属(本実施形態では、Li、Na、K)の含有量が5ppb未満(本実施形態では3.3ppb)であり、アルカリ土類金属(本実施形態では、Mg、Ca)の含有量が5ppb未満(本実施形態では1.2ppb)である液状のものを用いている。
【0034】
・粉末生成手順(s20)
この手順では、ゲル生成手順にて生成されたシリカゲルを粉砕することによりシリカゲル粉末を生成する。ここでは、湿潤状態のシリカゲル粉末が生成される。本実施形態では、シリカゲルを少なくとも10~20mm程度に粉砕した後、より微細なメッシュ(具体的には目開き850μm)のスクリーンに通すことで粉末化している。
【0035】
・スラリー生成手順(s30)
この手順では、粉末生成手順にて生成されたシリカゲル粉末をアンモニア水に懸濁させてなるスラリーを生成する。具体的には、粉末生成手順にて生成された湿潤状態のシリカゲル粉末を、pH10.00~11.00に調整されたアンモニア水(NHOH)に投入して撹拌することによりスラリーを生成する。本実施形態では、アンモニア水およびシリカゲル粉末が投入された容器に対し、撹拌翼による撹拌を撹拌速度140rpm前後で1時間以上実施している。
【0036】
・分離手順(s40)
この手順では、スラリー生成手順にて生成されたスラリーからアンモニア水を分離してシリカゲル粉末を得る。ここでは、スラリー生成手順にて生成されたスラリーにおける上澄みを除去することによってシリカゲル粉末を得る。本実施形態では、まず、スラリー生成手順にて生成されたスラリーから上澄みを除去し、さらに純水を加えた溶液中でシリカゲル粉末を沈殿させた後、このスラリーにおける上澄みを除去することによってシリカゲル粉末を得ている。なお、純水を加えた溶液中でのシリカゲル粉末の沈殿は、溶液の振とうを経て実現することとしてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、アンモニア水の分離されたシリカゲル粉末を容器内で数分ほど(具体的には1分程度)追加的な振とうを行って追加的にシリカゲル粉末を粉砕する。
【0038】
・焼成手順(s50)
この手順では、分離手順により得られたシリカゲル粉末を乾燥および焼成させることにより石英紛を生成する。ここでは、まず、分離手順により得られたシリカゲル粉末を真空(少なくとも20Pa以下の気圧)かつ140℃前後の雰囲気とした乾燥炉内に12時間おくことで乾燥させる。次に、こうして乾燥させたシリカゲル粉末を、粒径400~610μmの粒子となるようふるいにかけて分級した後で、高純度の合成空気が流れる1200℃以上の雰囲気とした焼成炉内で30時間にわたって焼成(第1焼成)する。そして、この焼成後のシリカゲル粉末を、高純度のヘリウムガスが流れる1200℃以上の雰囲気とした焼成炉内で10時間にわたって焼成(第2焼成)する。
【0039】
(3)合成石英粉および石英成型体の評価
本願出願人は、同じ材料で条件を異ならせて合成石英粉のサンプルを複数製造したうえで、こうして製造した合成石英粉を用いた石英成型体も作製し、それぞれについての評価を実施した(図2図3参照)。
【0040】
合成石英粉のサンプルとしては、上記各手順のうち、ゲル生成手順(s10)におけるオルトケイ酸テトラメチルと純水とのモル比(1:5、1:10)、スラリー生成手順(s30)におけるアンモニア水のpH(11未満、11超)といった条件を異ならせた3種類のもの(サンプルNo.1~3)を製造した。本実施形態において、一部のサンプル(具体的にはNo.1)については、同一条件で製造された複数の群が存在する。
【0041】
なお、各サンプルは、ゲル生成手順において、アルカリ金属の含有量が5ppb未満(より具体的には3.5ppb未満)、アルカリ土類金属の含有量が5ppb未満(より具体的には1.5ppb未満)である液状の原料を用い、その後の手順を経ることにより、アルカリ金属の含有量が30ppb未満、アルカリ土類金属の含有量が10ppb未満となっている石英粉が得られている。
【0042】
そして、これらサンプルそれぞれにつき、所定容積の容器に充填(本実施形態では容積20mlの容器に13~16g程度充填)して焼成してからマイクロスコープにより観察したところ、一部のサンプルに粒子状の異物が少数(10個未満)発生しているだけで、いずれも気泡の発生やそれによる白濁といった大きな不具合が生じておらず、石英成型体の材料として「問題なし(〇)」と評価している。ここでは、各サンプルについて粒径および粒子の充填嵩密度を測定しており、その結果、400~610μmの範囲における特定の値を平均とする粒径の粒子が、充填嵩密度1.25~1.31g/cm3で存在していることが確認されている。
【0043】
ここで、上記粒径は、ガラスシャーレに石英粉のサンプルを粒子同士が接触しないように所定量だけ配置した状態でマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-1000)により測定している。具体的には、マイクロスコープにおいて画像上に任意の直径に調整した真円を重ねることのできる機能を用い、所定数(本実施形態では300)の粒子それぞれに対して面積が等しくなるように調整した真円の直径を当該粒子の粒径として測定し、こうして特定した粒径の平均値を算出している。
【0044】
また、上記充填嵩密度は、次に示す手順にて測定している。ここでは、まず、容器として10ml(=10cm3)の樹脂製メスシリンダーを用意し、これを小数点3桁以上まで測定可能な電子天秤に乗せて0点補正した後、この容器に石英粉のサンプルを充填して嵩の変化がなくなるまで容器をタップする(具体的には、容器を指等でタップしたり、容器を一定の高さから一定の速度で繰り返し落下させるなど)。このタップは、容器に石英粉が所定容積に達するまで(本実施形態では10mlの目盛りに到達するまで)、石英砂を追加的に充填しながら繰り返す。そして、容器に充填された石英粉の質量(g)を測定し、この質量と容器に充填した容積(ml=cm3)とに基づいて充填嵩密度(g/cm3)を算出する。
充填嵩密度(g/cm3)=石英砂の質量(g)/石英砂の容積(cm3)
【0045】
その後、本願出願人は、「問題なし(〇)」と評価した各サンプルを用い、所定量(本実施形態では5.6g)の合成石英粉を同一条件で溶融して成型したインゴットそれぞれを石英成型体として作製した。ここでは、石英粉のサンプルを充填した円筒状の坩堝を所定の環境下におく(本実施形態では1800℃で5分間保持した)ことにより円柱状の石英成型体を作成している。
【0046】
また、本願出願人は、比較用のサンプル(比較用サンプル)として、上記各手順のうち、アンモニア水を用いることなく(つまりスラリー生成手順および分離手順を実施することなく)製造された比較用のものを1種類製造した。
【0047】
この比較用サンプルについても、上記と同様にマイクロスコープにより観察したところ、異物の発生は認められなかったものの、気泡の発生やそれによる白濁といった大きな不具合が生じており、これが石英成形体を作製した際の大きな気泡の発生原因となりうるため、石英成型体の材料として「問題あり(×)」と評価した。この比較用サンプルについては、上記と同様に測定した結果、500μm前後とする粒径の粒子が、充填嵩密度1g/cm3前後(具体的には1.07g/cm3)で存在していることが確認されている。
【0048】
このように、上記各手順を経て製造された合成石英粉であれば、気泡の発生やそれによる白濁といった大きな不具合が生じず、石英成型体の材料として適したものであることが明らかになった。
【0049】
続いて、「問題なし(〇)」と評価した各サンプルから作製した石英成型体につき、円柱状の石英成型体につき、円柱の一端から他端に向けて縦割りで分割(本実施形態では3分割)した断面をマイクロスコープにより観察したところ、一部のサンプルにおいて直径1mm以上の気泡(粗大気泡)が数多く存在(具体的には5つ存在)しており、この気泡の発生を充分に抑えられておらず、石英成型体として「問題あり(×)」と評価した。換言すれば、所定の条件を満たす石英紛で作製された石英成型体については、気泡の発生を抑えられており、「問題なし(〇)」と評価することができる。なお、各石英成型体からは、粒子状の異物が少数発生しているサンプルそれぞれを用いて作製されたものであるかを問わず、同様の異物は確認されていない。
【0050】
ここでいう所定の条件とは、スラリー生成手順(s30)におけるアンモニア水のpHが11未満というものであり、pHが11未満の場合に気泡の発生が充分に抑えられている一方、pHが11超の場合に気泡の発生が充分に抑えられていないということができる。
【0051】
なお、各石英成型体につき、いわゆるアルキメデス法を用いて石英紛の密度(見かけ密度)を測定したところ、「問題あり(×)」と評価されているものは、最も密度の低いサンプル(サンプルNo.3)であり、多数の気泡が発生していることを裏付けている。
【0052】
(4)作用効果
上記実施形態の石英成形体であれば、気泡の発生を抑制されたものとなっている。
【0053】
また、上記実施形態における合成石英粉であれば、これを溶融して成型した石英成型体において気泡の発生を抑制することができる。そのため、この合成石英粉は、高純度の合成石英インゴットや、それらを加工して製造される半導体製造装置用の冶具などといった石英成形体の材料として好適である。
【0054】
また、上記実施形態における製造方法であれば、こうして製造された合成石英粉を溶融して成型した石英成型体において気泡の発生を抑制することができる。
【0055】
また、上記実施形態の製造方法であれば、ゲル生成手順において、アルカリ金属の含有量が5ppb未満、アルカリ土類金属の含有量が5ppb未満である液状の原料を用いることにより、その後の手順を経てアルカリ金属の含有量が30ppb未満、アルカリ土類金属の含有量が10ppb未満となっている石英粉を得ることができる。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-12-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径400~483μmの粒子が、充填嵩密度1.25g/cm3で存在してなる、
合成石英粉。
【請求項2】
アルカリ金属の含有量が30ppb未満である、
請求項1に記載の合成石英粉。
【請求項3】
アルカリ土類金属の含有量が10ppb未満である、
請求項1または請求項2に記載の合成石英粉。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の合成石英粉を材料とする、
石英成型体。