(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056235
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】水中油型乳化油脂組成物、植物原料含有代替肉加工食品
(51)【国際特許分類】
A23D 7/005 20060101AFI20220401BHJP
A23D 7/00 20060101ALI20220401BHJP
A23L 35/00 20160101ALN20220401BHJP
【FI】
A23D7/005
A23D7/00 504
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164143
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】特許業務法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】大橋 悠文
【テーマコード(参考)】
4B026
4B036
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG04
4B026DK10
4B026DL02
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4B036LK01
4B036LK03
4B036LP01
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ジューシー感があり、風味に優れた植物原料含有代替肉加工食品を提供することであり、また、このような植物原料含有代替肉加工食品を得るための水中油型乳化油脂組成物を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、水中油型乳化油脂組成物であって、以下の成分(A)~(B)及び食用油脂を含む植物原料含有代替肉加工食品用の水中油型乳化油脂組成物を提供する。
(A)寒天
(B)脱アシル型ジェランガム
本発明によれば、ジューシー感があり、風味に優れた植物原料含有代替肉加工食品を提供することができる。また、このような植物原料含有代替肉加工食品を得るための水中油型乳化油脂組成物を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)、(B)及び食用油脂を含む、植物原料含有代替肉加工食品用の水中油型乳化油脂組成物。
(A)寒天
(B)脱アシル型ジェランガム
【請求項2】
請求項1に記載の植物原料含有代替肉加工食品が冷凍工程を含む、水中油型乳化油脂組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の水中油型乳化油脂組成物を含有する、植物原料含有代替肉加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物原料含有代替肉加工食品用の水中油型乳化油脂組成物および植物原料含有代替肉加工食品に関する。より詳しくは、本発明は植物原料含有代替肉加工食品のジューシー感と風味とを向上することができる水中油型乳化油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の健康意識の高まりや、畜産の環境への負荷の問題、世界人口の増加や新興国の所得増加による食肉需要の増加などを背景として、畜肉を使用せずに、大豆蛋白や小麦蛋白、えんどう豆蛋白など、植物由来の蛋白を原料としたハンバーグ等の食品(以下、植物原料含有代替肉加工食品)の需要が高まっている。
しかしながら、植物性蛋白を用いた植物原料含有代替肉加工食品は、畜肉を原料とする一般的な食品と比較して、肉汁が流れ出るようなジューシー感が少ない、味がさっぱりとして物足りない、植物性蛋白由来の風味が違和感となるなどの課題がある。植物原料は畜肉と異なり油脂がほとんど含まれていないため、上記のような課題が生じる。一方、植物原料含有代替肉加工食品に油脂を添加した場合、植物原料の乳化力により油脂が均一に乳化されてしまうため、上記の課題を解決することができない。そこで、これまで植物原料含有代替肉加工食品にジューシー感を付与する方法や、風味を向上させるための様々な方法が提案されてきた。
【0003】
特許文献1には、植物性蛋白素材及び水をベースとするペースト中に、融点が5℃以上の固体状の油脂を分散させる方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、植物原料含有代替肉加工食品に使用した場合、加熱初期に添加した油脂のほとんどはドリップして流出してしまい、十分なジューシー感および風味を得ることができない。
特許文献2には、豆腐及び/又は粉末状植物原料質素材、及び細断されたコンニャクを原料とする方法が記載されている。しかしながら、コンニャクは水分を保持するため、喫食時に流出する液体は水分であり、植物原料含有代替肉加工食品に使用した場合、風味が水っぽくなってしまう。また、コンニャクの食感は畜肉のそれとは大きく異なり違和感が生じる。
特許文献3には、グルタチオン含有酵母エキスなど含硫化合物を多く含む酵母エキスを大豆蛋白と混合する方法が記載されている。しかしながら、酵母エキスの添加による方法では旨味の付与にとどまり、植物原料含有代替肉加工食品に油脂によるコクやジューシー感を付与することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-139684号公報
【特許文献2】特開2019-176759号公報
【特許文献3】特開2008-61592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ジューシー感があり、風味に優れた植物原料含有代替肉加工食品を提供することであり、また、このような植物原料含有代替肉加工食品を得るための水中油型乳化油脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、寒天、および脱アシル型ジェランガムを配合した水中油型乳化油脂組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は以下の[1]~[3]である。
[1]
以下の成分(A)、(B)及び食用油脂を含む、植物原料含有代替肉加工食品用の水中油型乳化油脂組成物。
(A)寒天
(B)脱アシル型ジェランガム
[2]
請求項1に記載の植物原料含有代替肉加工食品が冷凍工程を含む、水中油型乳化油脂組成物。
[3]
前記[1]または[2]に記載の水中油型乳化油脂組成物を含有する、植物原料含有代替肉加工食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ジューシー感があり、風味に優れた植物原料含有代替肉加工食品を提供することができる。また、このような植物原料含有代替肉加工食品を得るための水中油型乳化油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の水中油型乳化油脂組成物は(A)寒天、(B)脱アシル型ジェランガムを含有する。本発明の水中油型乳化油脂組成物によれば、(A)寒天によって硬さが付与され、さらに(B)脱アシル型ジェランガムを含有することで寒天によるゲルに耐熱性を付与することができる。本発明の水中油型乳化油脂組成物は、通常の油脂や乳化油脂と異なり植物原料含有代替肉加工食品の製造時に植物原料のゲル中に均一に乳化されず、粒子状態で局在化する。さらに、本発明の水中油型乳化油脂組成物はゲル状であり生地の成形性を低下させないため、通常の油脂や乳化油脂よりも多量の油脂を生地中に配合することが可能である。また、耐熱性があるため、多量に添加した場合でも、油脂が溶けて流れ出ることがない。以上の効果から、本発明の水中油型乳化油脂組成物を使用することで植物原料含有代替肉加工食品のジューシー感を向上させることができる。また、本発明の水中油型乳化油脂組成物を含む植物原料含有代替肉加工食品では、加熱後に冷凍し、再度加熱した際に水中油型乳化油脂組成物のゲル及び乳化が破壊され、水分と油分とが放出される。そのため、冷凍工程を含む植物原料含有代替肉加工食品では、喫食時に、局所的に肉汁が放出され、ジューシー感の向上効果がより顕著である。また、本発明の水中油型乳化油脂組成物を使用した植物原料含有代替肉加工食品では生地中に油分が供給されることで、植物性蛋白由来の風味が低下し、畜肉様のコク味が付与され、風味の点で好ましいものとなる。また、ジューシー感の向上と同様に冷凍工程を含む植物原料含有代替肉加工食品では、効果がより顕著である。
【0009】
<植物原料含有代替肉加工食品>
本発明における植物原料含有代替肉加工食品は植物原料含有代替肉、および前記の水中油型乳化油脂組成物を含有する。本発明における植物原料含有代替肉加工食品は、植物原料含有代替肉に含まれる畜肉を含む原料のうち、畜肉が50質量%より少なく、植物原料を含む原料を50質量%以上含むものである。
上記の植物原料含有代替肉を使用した植物原料含有代替肉加工食品としては、ハンバーグ、ミートボール、餃子、小籠包、肉まん、シューマイ、メンチカツ、ロールキャベツ、つみれなどが挙げられる。また、水中油型乳化油脂組成物は、上記植物原料含有代替肉加工食品に、例えば、0.01~50質量%程度を練り込むことにより特に優れた効果を発揮することができる。また、植物原料含有代替肉加工食品に対する水中油型乳化油脂組成物の含有量は、好ましくは1~40質量%であり、より好ましくは5~30質量%である。
植物原料含有代替肉加工食品に水中油型乳化油脂組成物を練りこむ際には、予めチョッパーで挽く、または刻むなどしてから練り込むか、あるいは練りこむ際に攪拌する等によって、植物原料含有代替肉加工食品中に水中油型乳化油脂組成物が粒子状に細かく分散されることが望ましい。
本発明の植物原料含有代替肉加工食品は、加熱後、そのまま喫食するか、あるいは、弁当容器などに入れ室温保管後に喫食することができ、または加熱後に冷凍し、喫食時に再度加熱を行い、再度の加熱直後、あるいは、弁当容器などに入れ室温保管後、喫食することができる。
【0010】
以下に、水中油型乳化油脂組成物の各成分等について詳細に説明する。
[(A)寒天]
寒天は、テングサ属やオゴノリ属などの紅藻海藻を主原料とし抽出された、アガロースとアガロペクチンを含有する多糖類である。本発明で使用できる寒天は、通常市販されているものを用いることができる。本発明の水中油型乳化油脂組成物における寒天の含有量は寒天のゼリー強度により異なる。例えば、後述の日寒水式測定法により測定したゼリー強度がa(g/cm2)である場合、本発明の水中油型乳化油脂組成物における寒天の含有量は、例えば、a×(-4.0)×10-4+0.8~a×(-4.0)×10-4+2.8質量%であり、好ましくは、a×(-4.0)×10-4+0.9~a×(-4.0)×10-4+2.3質量%、より好ましくは、a×(-4.0)×10-4+1~a×(-4.0)×10-4+1.8質量%である。例えばゼリー強度が、高強度である1800g/cm2の場合、本発明の水中油型乳化油脂組成物における寒天の含有量は、例えば0.1~2.1質量%であり、好ましくは0.2~1.6質量%、より好ましくは0.3~1.1質量%である。高強度の寒天としては、例えば超高強度寒天カリコリカン(ゼリー強度:1800g/cm2、伊那食品工業(株))等が挙げられる。中強度の寒天としては、例えば伊那寒天UP-37(ゼリー強度:700g/cm2、伊那食品工業(株))等が挙げられる。低強度の寒天としては、例えばウルトラ即溶性寒天UX-200(ゼリー強度:200g/cm2、伊那食品工業(株))等が挙げられる。
【0011】
本発明における寒天のゼリー強度は、日寒水式測定法により、寒天1.5%水溶液を20℃で15時間放置し、凝固させたゲルの硬さを測定し、寒天ゲルの表面1cm2あたり20秒間耐える最大重量(g)である。
なお、本明細書において、高強度の寒天とは、ゼリー強度が1200g/cm2以上の寒天であり、中強度の寒天とは、ゼリー強度が300g/cm2以上、1200g/cm2未満の寒天であり、低強度の寒天とは、ゼリー強度が300g/cm2未満の寒天である。
【0012】
本発明において、寒天は水中油型乳化油脂組成物に硬さを付与する目的で用いられる。寒天により硬さが付与された水中油型乳化油脂組成物は、植物原料含有代替肉加工食品の製造時に植物原料のゲル中に均一に乳化されず、粒子状態で局在化するため、ジューシー感が低下しない。一方、寒天のみを使用した場合では、加熱時に溶解してドリップするため、効果を得ることができない。
【0013】
[(B)脱アシル型ジェランガム]
ジェランガムは、Sphingomonas elodeaが産生する多糖類であり、グルコース、グルクロン酸、グルコース、ラムノースの4つの糖分子を構成単位とする直鎖状の高分子である。ジェランガムには、脱アシル型ジェランガムとネイティブ型ジェランガムとがあり、ネイティブ型ジェランガムは構成するグルコースにアセチル基とグリセリル基が存在しており、これらアシル基(アセチル基とグリセリル基)を除去したものが脱アシル型ジェランガムである。両者のジェランガムは、アシル基の有無により全く異なる物性を有しており,脱アシル型ジェランガムは、それを用いて製造したゲルが耐熱性を有するという特徴がある。
本発明で使用できる脱アシル型ジェランガムは通常市販されているものを用いることができる。脱アシル型ジェランガムの含有量は、例えば0.1~1質量%であり、好ましくは0.12~0.5質量%、より好ましくは0.15~0.3質量%である。脱アシル型ジェランガムとしては、例えばケルコゲル(三栄源エフ・エフ・アイ(株))、ゲルアップK-S(三栄源エフ・エフ・アイ(株))等が挙げられる。
【0014】
本発明において、脱アシル型ジェランガムは主に水中油型乳化油脂組成物に耐熱性を付与する目的で用いられる。脱アシル型ジェランガムのみを使用した場合では、十分な硬さを得ることができず効果が得られないが、(A)寒天と併用することにより、水中油型乳化油脂組成物の硬さを補強するだけでなく、加熱時に溶解しない優れた耐熱性が得られる。また、(A)寒天および(B)脱アシル型ジェランガムを使用した本発明の水中油型乳化油脂組成物は、加熱時に徐々にゲルと乳化とが不安定になり、加熱後、冷凍し再度加熱することによりゲルと乳化とが破壊される。このため、植物原料含有代替肉加工食品に使用した場合、喫食時に本発明の水中油型乳化油脂組成物から水分と油分とが放出されることで、植物原料含有代替肉加工食品にジューシー感を付与し、風味を向上させることができ、特に冷凍工程を含む植物原料含有代替肉加工食品において効果が顕著である。
【0015】
[食用油脂]
本発明の水中油型乳化油脂組成物には食用油脂が用いられる。本発明に使用する食用油脂は、食用に適したものであれば特に制限されないが、具体的にはパーム油、ナタネ油(菜種油)、大豆油、綿実油、コーン油、ヤシ油、パーム核油、等の天然の植物油脂;牛脂、豚脂、魚油、乳脂、等の天然の動物油脂;またはこれら単独あるいは組み合わせの硬化油、極度硬化油、分別油、エステル交換油が挙げられる。これらの油脂は目的に応じて適宜選択され、1種類または2種類以上を任意に組み合わせても良い。好ましくは、植物原料含有代替肉加工食品が冷めても油が固まらなくおいしさが得られることから、融点25℃以下の食用油脂が好ましい。食用油脂の含有量の下限値は、例えば2.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。食用油脂の含有量の上限値は、例えば75質量%以下であり、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは65質量%以下である。
【0016】
[乳化剤]
本発明には水中油型乳化油脂組成物の乳化安定性の制御のために乳化剤を使用することができる。本発明に使用する乳化剤は、水中油型乳化に適するものであれば特に制限されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、カゼインナトリウム等が挙げられ、好ましくはグリセリン脂肪酸エステルである。
【0017】
[塩類]
本発明には、脱アシル型ジェランガムをゲル化させるために、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、またはカリウム塩等のアルカリ金属塩などの塩類が用いられる。
脱アシル型ジェランガムは、カチオンの添加により、脱アシル型ジェランガムに含まれるカルボキシル基の電荷による電気的反発が抑制され、ゲル化する。1価のカチオンを添加した場合、カルボキシル基の電荷を打ち消すことで、脱アシル型ジェランガムの分子鎖が集合してゲル化する。2価のカチオンを添加した場合、カチオンがカルボキシル基同士を架橋させることで強くゲル化する。
本発明に用いられる塩類は、好ましくは、カルシウム塩である。カルシウム塩としては、例えば、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム等が挙げられる。
脱アシル型ジェランガムは、2価のカチオンと反応した場合、品温が約40℃を下回るとゲル化が開始される。ゲル化が開始されてからも攪拌を続けると、ゲルが十分に形成されず、耐熱性が低下する。
【0018】
水中油型乳化油脂組成物における塩類の添加量は、特に制限されないが、例えば、0.01~5質量%であり、好ましくは0.05~1質量%である。
また、脱アシル型ジェランガムの含有量に対する塩類の含有量の比(塩類/脱アシル型ジェランガム)は、好ましくは0.1~2であり、より好ましくは0.2~1である。脱アシル型ジェランガムと塩類との含有量の比を調整することにより、寒天によるゲルの耐熱性を向上しつつ、加熱後又は冷凍解凍後にゲル及び乳化が破壊されるという作用をより一層発揮することができる。また、水中油型乳化油脂組成物の粘度を向上し、乳化状態の保存安定性を高めることができる。
【0019】
本発明には、上記成分のほかにその他の添加剤として糖類、保存料、pH調整剤、色素、フレーバー、油溶性または水溶性エキスなど、水中油型乳化油脂組成物または植物原料含有代替肉加工食品に用いる添加物を含むことができる。
【0020】
<水中油型乳化油脂組成物>
本発明の水中油型乳化油脂組成物は、一般的な水中油型乳化油脂組成物を製造する要領で行うことができる。すなわち水相部の調製、油層部の調製、乳化、殺菌または滅菌、均質化、冷却といった製造工程である。殺菌方法は、バッチ殺菌またはUHT等による殺菌等が挙げられる。均質化する機械はホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、カッターミキサー等が挙げられる。均質化後、冷却工程によりゲル化させることで本発明の水中油型乳化油脂組成物を得ることができる。
【0021】
乳化工程では、水相部に(A)寒天及び(B)脱アシル型ジェランガムを添加し、さらに塩類を添加する。塩類を添加するタイミングは、乳化後又は乳化前のいずれでもよい。(B)脱アシル型ジェランガムと塩類とを混合した後に撹拌する場合には、40℃以上で撹拌することが好ましい。これにより、良好なゲルが形成され、耐熱性が向上する。
【0022】
<植物原料>
本発明の植物原料含有代替肉加工食品に含まれる植物原料には、大豆、小麦、えんどう豆、コーン等の由来の原料が用いられる。植物原料の形態としては、粉末状、粒状、繊維状などが挙げられる。粉末状植物原料は、一般的に、水や油脂等と混合し生地のつなぎとして用いられる。粒状植物原料や繊維状植物原料は、一般的に水等と混合し、膨潤させて用い、植物原料含有代替肉加工食品に肉粒感を付与することができる。
本発明の植物原料含有代替肉加工食品は、植物原料含有代替肉に含まれる畜肉を含む原料のうち、畜肉が50質量%より少なく、植物原料を含む原料を50質量%以上含むものであり、好ましくは70質量%以上であり、100質量%でもよい。
【0023】
<畜肉原料>
本発明の植物原料含有代替肉加工食品には、畜肉原料を使用することができる。植物原料含有代替肉における畜肉の配合率は、50質量%より少なく、好ましくは30質量%以下であり、0質量%でもよい。畜肉原料としては、一般的な牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉等が挙げられ、これらを一種類又は二種類以上併用しても良い。上記畜肉原料は、チョッパーなどを用いてミンチ状にして使用することが好ましい。
【実施例0024】
次に実施例をあげて本発明を具体的に説明する。
[水中油型乳化油脂組成物の製造]
(実施例1)
表1の配合組成(質量%)で以下の方法により水中油型乳化油脂組成物を製造した。すなわち、水相部として、水970gに(A)寒天8g、(B)脱アシル型ジェランガム4g、乳化剤20gを加え、原料が均一になるようにプロペラ攪拌機で混合しながら85℃まで昇温し、乳酸カルシウムを2g加えた。次に70℃に調温した菜種油1000gを加え、攪拌を続けた後、ホモジナイザーによって均質化圧5MPaで処理することで、本発明の水中油型乳化油脂組成物を得た。
【0025】
なお、寒天は、「超高強度寒天カリコリカン」(伊那食品工業(株)製、ゼリー強度1800g/m2)、脱アシル型ジェランガムは、「ケルコゲル」(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)を使用した。また、乳化剤は、モノステアリン酸ペンタグリセリン「サンソフトA-181E」(太陽化学(株)製)又はカゼインナトリウム「Sodium Caseinate180」(フォンテラジャパン(株)製)を使用した。
【0026】
(実施例2~11、比較例1~5)
実施例2~11および比較例1~5は表1および表2に示した配合で、実施例1に準じて水中油型乳化油脂組成物を製造した。
【0027】
【0028】
【0029】
表中に略記した原料の詳細は以下の通りである。
「寒天」:「超高強度寒天カリコリカン」(伊那食品工業(株))
「脱アシル型ジェランガム」:「ケルコゲル」(三栄源エフ・エフ・アイ(株))
「菜種油」:「菜種油」(日油(株)製)
「牛脂」:「牛脂」(日油(株)製)
「パーム油」:「パーム油」(日油(株)製)
「モノステアリン酸ペンタグリセリン」:「サンソフトA-181E」(太陽化学製)
「カゼインNa」:「Sodium Caseinate180」(フォンテラジャパン(株)製)
「乳酸カルシウム」:「乳酸カルシウム」(白石カルシウム(株))
「塩化カルシウム」:「塩化カルシウム」(富田製薬(株))
「カラギニン」:「カラギニンCSK-1」(三栄源エフ・エフ・アイ(株))
「ネイティブ型ジェランガム」:「ケルコゲルLT-100」(三栄源エフ・エフ・アイ(株))
【0030】
[冷凍植物原料含有代替肉加工食品(ハンバーグ)の製造]
表3に示した配合にて、大豆蛋白、水、たまねぎソテー、パン粉、食塩を混合し、さらに水中油型乳化油脂組成物を加えて混合して、ハンバーグの生地を製造した。80gの円形に成型し、230℃のオーブンにて8分間加熱(一次加熱)した後、急速冷凍機を用いて凍結し、-20℃で7日間冷凍保管した。冷凍されたハンバーグを500Wの電子レンジで2分間加熱(二次加熱)して、評価に用いた。評価項目は、「加熱直後のジューシー感の評価(目視評価)」、「風味の評価(官能評価)」、とし、評価結果は、表1~表2に示した。
【0031】
【0032】
<加熱直後のジューシー感の評価(目視評価)>
二次加熱したハンバーグを半分に切り、レオメーターにてφ30mmの円形平板冶具で50Nの荷重をかけたときに断面から流れ出る肉汁の量について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、一次加熱のみ(冷凍なし)したものを2点とし、それよりも肉汁が多ければ3点、少なければ1点とした。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上3.0点を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
【0033】
<風味の評価(官能評価)>
二次加熱したハンバーグを試食し、風味について、8名のパネラーで、以下の評価基準で官能評価した。官能評価においては、植物性蛋白の風味が弱いものを3点、植物性蛋白の風味が感じられるものを2点、植物性蛋白の風味が強いものを1点として評価した。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
【0034】
表1に示すように、本発明の水中油型乳化油脂組成物を冷凍ハンバーグに含有すると、二次加熱直後のハンバーグにおけるジューシー感、風味に優れるという効果が認められた。
【0035】
表2に示すように、寒天を含有しない場合には、二次加熱後のジューシー感が劣り、さらに風味が劣る結果となった(比較例1、4)。
脱アシル型ジェランガムを含有しない場合には、一次加熱時に肉汁が流出してしまい、二次加熱後のジューシー感が劣る結果となった(比較例2、5)。
油脂を含有しない場合には、ハンバーグの断面から流れ出る肉汁の量が低下した(比較例3)。
【0036】
[処方例1:ハンバーグ]
表4に示した配合にて、実施例12においては、大豆蛋白、水、たまねぎソテー、パン粉、食塩を混合し、さらに実施例3の水中油型乳化油脂組成物を加えて混合して、ハンバーグの生地を調製した。実施例13においては、大豆蛋白、水、豚挽肉、たまねぎソテー、パン粉、食塩を混合し、さらに実施例3の水中油型乳化油脂組成物を加えて混合して、ハンバーグの生地を調製した。次いで、いずれのハンバーグの生地も80gの円形に成型し、230℃のオーブンにて8分間加熱することでハンバーグを得た。
【0037】
【0038】
表4を見ると、本発明の水中油型乳化油脂組成物を使用したハンバーグは、実施例1~11の水中油型乳化油脂組成物を配合した冷凍植物原料含有代替肉加工食品(ハンバーグ)と同様にジューシー感が強く、風味が良好であった。
【0039】
[処方例2:中華まん]
表5に示した配合にて、大豆蛋白と、水、たまねぎ、茹で筍、椎茸、醤油、オイスターソース、砂糖、食塩、片栗粉を混合し、さらに実施例3の水中油型乳化油脂組成物を加えて混合して、中華まんの具を調製した。次いで、得られた中華まんの具を皮で包み、蒸し器で加熱することで中華まんを得た。
【0040】
【0041】
表5を見ると、本発明の水中油型乳化油脂組成物を使用した中華まんは、ハンバーグと同様にジューシー感が強く、風味が良好であった。
【0042】
[処方例3:メンチカツ]
表6に示した配合にて、大豆蛋白と、水、たまねぎソテー、パン粉、食塩、胡椒を混合し、さらに実施例8の水中油型乳化油脂組成物を加えて混合して、メンチカツの具を調製した。次いで、このメンチカツの具に、バッター液、パン粉を付けて、約180℃の油で油ちょうし、メンチカツを得た。
【0043】
【0044】
表6を見ると、本発明の水中油型乳化油脂組成物を使用したメンチカツは、ハンバーグと同様にジューシー感が強く、風味が良好であった。
【0045】
[処方例4:ロールキャベツ]
表7に示した配合にて、大豆蛋白と水、たまねぎソテー、パン粉、固形コンソメ、食塩、胡椒を混合し、さらに実施例7の水中油型乳化油脂組成物を加えて混合して、ロールキャベツの具を得た。この調製した具を、キャベツで包み、コンソメスープで煮込むことでロールキャベツを得た。
【0046】
【0047】
表7を見ると、本発明の水中油型乳化油脂組成物を使用したロールキャベツは、ハンバーグと同様にジューシー感が強く、風味が良好であった。