(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056250
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】ブレーキ液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 13/138 20060101AFI20220401BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20220401BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
B60T13/138 Z
B60T8/17 B
B60T13/138 A
G01B7/00 101H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164165
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(74)【代理人】
【識別番号】100174713
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧川 彰人
(72)【発明者】
【氏名】小野田 真吾
【テーマコード(参考)】
2F063
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063BA05
2F063CA34
2F063GA52
3D048BB59
3D048CC18
3D048CC54
3D048HH18
3D048HH26
3D048HH42
3D048HH50
3D048HH55
3D048HH58
3D048HH66
3D048HH74
3D048KK02
3D246BA05
3D246DA01
3D246GA17
3D246GA25
3D246GB37
3D246GC14
3D246HA03A
3D246LA02Z
3D246LA04A
3D246LA10Z
3D246LA15Z
3D246LA16Z
3D246LA63Z
3D246LA73B
(57)【要約】
【課題】センシング精度の向上とコンパクト化とを両立するブレーキ液圧制御装置を提供すること。
【解決手段】ブレーキ液圧制御装置10において、検知デバイス20を構成する検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)及び被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)の一方である被検知体22は、マスタピストン14に対して一体に固定される。これにより、マスタピストン14と被検知体22とは相対移動することなく、即ち、遊びを設けることなく、マスタピストン14の軸方向位置を検知することができ、検知デバイス20のセンシング精度を向上させることができる。又、被検知体22を保持するためにマスタピストン14とは別体の部材を設ける必要がないため、ブレーキ液圧制御装置10の小型化を実現することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタピストンを有してブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダと、前記マスタピストンの軸方向位置を電気的に検知する検知デバイスと、前記検知デバイスによって検知された前記軸方向位置を表す検知信号に基づきホイルシリンダに供給するブレーキ液圧を制御する液圧制御デバイスと、を統合的にボディに備えたブレーキ液圧制御装置において、
前記検知デバイスを構成する検知体及び被検知体の一方を、前記マスタピストンに対して一体に固定した、ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記ボディには、車両の車室内と車室外とを隔離する隔壁に固定するための取付部が一体的に設けられており、
前記取付部は、
前記マスタピストンの外周面に沿って軸方向に延びていて、前記マスタピストンが前記ボディの内部に向けて挿通される挿通部を有しており、
前記マスタピストンに固定された前記検知体及び前記被検知体の一方は、
前記挿通部の軸方向の領域内に配置される、請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記検知体及び前記被検知体の他方は、前記挿通部において前記ボディ側に設けられる、請求項2に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記挿通部に対して離間して前記ボディに配置される電子基板と電気的に接続され、前記挿通部の軸方向において前記挿通部よりも前記ボディの内部に向けて延在した支持部材を備え、
前記検知体は、
前記支持部材と電気的に接続され、且つ、前記支持部材を介して前記挿通部に設けられる、請求項3に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
前記挿通部は、前記ボディの外方に向けて突出した筒状に形成されており、一部が前記隔壁を前記車室外から前記車室内に向けて貫通する、請求項2-4の何れか一項に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項6】
前記液圧制御デバイスは、電気モータと、前記電気モータによってシリンダ内を摺動するピストンが駆動されて前記シリンダ内に形成された液圧室に液圧を発生させる電動シリンダ装置と、を備え、
前記電気モータと前記電動シリンダ装置とは、各々の軸線が並列になるように前記ボディに配置されており、
前記検知体及び前記被検知体の他方は、前記電気モータと前記シリンダ装置とが前記ボディに配置される配置並び方向において、前記電気モータと前記電動シリンダ装置との間になるように、前記ボディの内部に配置される、請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項7】
前記検知体及び前記被検知体の他方は、前記電気モータ及び前記電動シリンダ装置の各々の前記軸線を結ぶ仮想線と、前記電気モータの軸線及び前記電動シリンダ装置の軸線の少なくとも一方とを含む仮想平面から前記仮想平面の法線方向に離間して配置される、請求項6に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項8】
前記検知体が複数設けられ、
複数の前記検知体は、前記マスタピストンの軸方向に沿って配置される、請求項1-7の何れか一項に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項9】
前記検知体が複数設けられ、
複数の前記検知体は、前記マスタピストンの周方向に沿って配置される、請求項1-8の何れか一項に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項10】
前記被検知体が複数設けられ、
複数の前記被検知体は、前記マスタピストンの軸方向に沿って並べられて配置される、請求項1-9の何れか一項に記載のブレーキ液圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に開示されたブレーキ液圧制御装置が知られている。この従来のブレーキ液圧制御装置は、液圧ブロックから突出したマスタピストンと、マスタピストンに平行に配置されたロッドとを備える。ロッドは、マスタピストンに装着されたキャップを介してマスタピストンに連結されており、マスタピストンと共に軸方向に移動するようになっている。そして、従来のブレーキ液圧制御装置は、ロッドに永久磁石が組み付けられており、電子制御ユニットに接続されたセンサが永久磁石に向き合うように配置される。これにより、センサは、ロッドと共に永久磁石が移動することによる磁場方向の変化に基づいて、ロッド、即ち、連結されたマスタピストンのストローク量を検知するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のブレーキ液圧制御装置においては、センサによって検知される永久磁石が組み付けられたロッドがキャップを介して連結されたマスタピストンと共に軸方向に移動する。この場合、ロッドとマスタピストンとは、液圧ブロックにおいて各々異なるボアに挿入され支持されているため、ロッドとピストンとの間には、これらロッド及びピストン、或いは、各ボアの寸法公差等に起因して、移動中に相対位置の変動が生じ得る。従って、この相対移動変動を許容するために、キャップとロッドとの間、或いは、キャップとピストンとの間に遊びを設ける必要がある。このため、マスタピストンとロッドとは、設けられた遊びの分だけ、正確に一致して軸方向に移動せず、その結果、センサがロッドに組み付けられた永久磁石の磁場方向の変化を正確に検出しても、検知されるマスタピストンのストローク量のセンシング精度が低下する虞がある。
【0005】
又、上記従来のブレーキ液圧制御装置においては、マスタピストンとロッドとを平行に配置する必要がある。このため、例えば、油圧ブロックに形成される液路や組み付けられる制御弁等を、ロッドの移動方向に形成したり配置したりすることができない。その結果、液圧ブロックの大型化、ひいては、ブレーキ液圧制御装置の大型化が引き起こされる場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、センシング精度の向上とコンパクト化とを両立するブレーキ液圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のブレーキ液圧制御装置は、マスタピストンを有して液圧を発生させるマスタシリンダと、マスタピストンの軸方向位置を電気的に検知する検知デバイスと、検知デバイスによって検知された軸方向位置を表す検知信号に基づきホイルシリンダに供給するブレーキ液圧を制御する液圧制御デバイスと、を統合的にボディに備えたブレーキ液圧制御装置において、検知デバイスを構成する検知体及び被検知体の一方を、マスタピストンに対して一体に固定する。
【発明の効果】
【0008】
これによれば、検知デバイスを構成する検知体及び被検知体の一方をマスタピストンに一体に固定することができる。これにより、マスタピストンと検知体及び被検知体の一方とは相対移動することなく、即ち、遊びを設けることなく、マスタピストンと共に軸方向に移動することができる。従って、検知体は、極めて正確に被検知体の移動即ちマスタピストンの軸方向位置を検知することができ、検知デバイスのセンシング精度を向上させることができる。
【0009】
又、検知体及び被検知体の一方を保持するために、マスタピストンとは別体の部材を設ける必要がない。これにより、別体の部材を配置するためのスペースや、別体の部材を作動させるためのスペースを確保する必要がなく、その結果、ブレーキ液圧制御装置の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るブレーキ液圧制御装置を備えたブレーキシステムの構成を示す図である。
【
図2】ブレーキ液圧制御装置を電気モータ及び電動シリンダ装置が組み付けられた側から見た図である。
【
図3】ブレーキ液圧制御装置を取付部側から見た図である。
【
図4】検知デバイスの構成を説明するための断面図である。
【
図5】マスタピストンが変位した際の検知デバイスによる軸方向位置(ストローク量)の検知を説明するための図である。
【
図6】
図5に示す状態から更にマスタピストンが変位した際の検知デバイスによる軸方向位置(ストローク量)の検知を説明するための図である。
【
図7】第二実施形態に係り、ブレーキ液圧制御装置を電気モータ及び電動シリンダ装置が組み付けられた側から見た図である。
【
図8】第二実施形態に係り、ブレーキ液圧制御装置を取付部側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の各実施形態において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一の符号を付してある。又、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
【0012】
(1.ブレーキ液圧制御装置10の概要)
ブレーキ液圧制御装置10は、
図1に示すように、車両の車室内と車両前後方向にて前方側の車室外とを隔離する隔壁K(ダッシュボード、ダッシュパネル或いはダッシュカウルとも呼ばれる。)に対して、車室外に組み付けられる。尚、車両前後方向にて前方側の車室外には、例えば、内燃機関や、駆動用モータ及びインバータ、燃料電池スタック等が配置されたり、或いは、荷室が配置されたりする。
【0013】
本実施形態のブレーキ液圧制御装置10は、車室内に配置されて運転者によるブレーキペダルBP等のブレーキ操作部材の操作量に応じたブレーキ液圧を発生させて、車両の前後左右に配置された4つのホイルシリンダWにブレーキ液圧を供給する。このため、ブレーキ液圧制御装置10は、液圧制御デバイスを構成する電気モータ11及び電気モータ11によって駆動されてブレーキ液圧を発生させる電動シリンダ装置12と、電動シリンダ装置12に接続される液路が形成されると共に各種制御弁等が収容されたボディ13と、を主に備える。更に、ブレーキ液圧制御装置10は、ボディ13に収容され、マスタピストン14を有してブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ15を備える。
【0014】
本実施形態のマスタシリンダ15は、マスタピストン14とブレーキペダルBPとがプッシュロッドPRを介して連結される。そして、ブレーキ液圧制御装置10は、運転者によるブレーキペダルBPの操作量として、マスタピストン14の軸方向位置として原位置からのストローク量に基づき、制御装置16が電気モータ11の作動を制御することにより電動シリンダ装置12がブレーキ液圧を発生させる。
【0015】
このため、本実施形態のブレーキ液圧制御装置10は、マスタピストン14の軸方向位置を検知する検知デバイス20を備える。本実施形態の検知デバイス20は、検知体21及び被検知体22の一方として被検知体22がマスタピストン14に一体に固定される(
図2等を参照)。そして、検知デバイス20は、ボディ13側に取り付けられた検知体21がマスタピストン14に一体に固定された被検知体22の移動に伴って変化する物理量を検知し、検知した物理量の変化に応じた検知信号を制御装置16に出力する。ここで、検知体21が検知する物理量としては、マスタピストン14即ち被検知体22が移動することによって変化する磁場方向の変化やインピーダンスの変化等を例示することができる。これにより、制御装置16は、マスタピストン14の軸方向位置であるストローク量を把握し、ストローク量に応じて電気モータ11の作動を制御する。尚、検知デバイス20の構成の詳細については、後に詳述する。
【0016】
ここで、本実施形態のブレーキ液圧制御装置10は、
図1に示すように、車両のブレーキシステムSを構成する。ブレーキシステムSは、ブレーキ液圧制御装置10を含む上流ユニットU1と、各ホイルシリンダWに接続される下流ユニットU2を備える。尚、下流ユニットU2は、ホイルシリンダWを加圧及び減圧可能な例えばESCアクチュエータである。
【0017】
上流ユニットU1は、ブレーキ液圧制御装置10を含め、液路T1と、液路T2と、連通路T3と、ブレーキ液供給路T41,T42と、連通制御弁V1と、マスタカット弁V2と、を備えている。
【0018】
ブレーキ液圧制御装置10のボディ13に設けられたマスタシリンダ15は、リザーバRに接続されており、ブレーキペダルBPの操作量に応じて機械的に下流ユニットU2にブレーキ液圧を供給可能に構成されている。マスタシリンダ15には、ストロークシミュレータSS及びシミュレータカット弁V3が接続される。ストロークシミュレータSSは、ブレーキペダルBPの操作に対して反力(負荷)を発生させる。シミュレータカット弁V3は、ノーマルクローズ型の電磁弁である。尚、シミュレータカット弁V3の作動は、図示省略のブレーキ作動制御装置によって制御される。
【0019】
液路T1は、マスタシリンダ15と下流ユニットU2の第一系統U2Aとを接続している。液路T2は、ブレーキ液圧制御装置10と下流ユニットU2の第二系統U2Bとを接続している。ここで、第一系統U2Aは、2つのホイルシリンダW(例えば、左前輪FLのホイルシリンダWと右前輪FRのホイルシリンダW)の加圧及び減圧を制御する。又、第二系統U2Bは、2つのホイルシリンダW(例えば、右後輪RRのホイルシリンダWと左後輪RLのホイルシリンダW)の加圧及び減圧を制御する。連通路T3は、液路T1と液路T2とを接続している。ブレーキ液供給路T41は、リザーバRとブレーキ液圧制御装置10の電動シリンダ装置12とを接続する。ブレーキ液供給路T42は、リザーバRとマスタシリンダ15とを接続する。電動シリンダ装置12は、電動シリンダ装置12のピストンが初期位置にある場合にリザーバRと連通し、ピストンが初期位置から所定量前進した場合にリザーバRと遮断される。マスタシリンダ15は、マスタピストン14が初期位置にある場合にリザーバRと連通し、マスタピストン14が初期位置から所定量前進した場合にリザーバRとの連通が遮断される。尚、リザーバRは、ブレーキ液を貯留し、内部の圧力は大気圧に保たれる。
【0020】
連通制御弁V1は、連通路T3に設けられたノーマルクローズ型の電磁弁である。連通制御弁V1は、通電状態に応じて連通路T3の連通、遮断状態を切り替える。マスタカット弁V2は、液路T1のうち、液路T1と連通路T3との接続部分とマスタシリンダ15との間に設けられたノーマルオープン型の電磁弁である。マスタカット弁V2は、通電状態に応じてマスタシリンダ15と下流ユニットU2との連通、遮断状態を切り替える。
【0021】
ブレーキシステムSは、図示省略のブレーキ作動制御装置により作動が制御される。具体的に、ブレーキ作動制御装置は、車両のイグニッションがオン(電気自動車においては車両の起動時)されると、上流ユニットU1をバイワイヤモードに切り替える。バイワイヤモードでは、連通制御弁V1が開弁され、マスタカット弁V2が閉弁され、且つ、シミュレータカット弁V3が開弁される。
【0022】
即ち、バイワイヤモードにおいては、下流ユニットU2の第一系統U2A及び第二系統U2Bを介して、各ホイルシリンダWにブレーキ液圧制御装置10から調圧されたブレーキ液圧が供給される。このため、バイワイヤモードにおいては、ブレーキ液圧制御装置10は、運転者によるブレーキペダルBPの操作量、即ち、マスタピストン14の軸方向位置としてストローク量を検知する検知デバイス20の検知信号に基づいて決定される目標制動力に応じたブレーキ液圧を供給する。
【0023】
一方、ブレーキ作動制御装置は、非常時等においてはバイワイヤモードを解除する。即ち、ブレーキ作動制御装置は、非常時等において、連通制御弁V1を閉弁し、マスタカット弁V2を開弁し、且つ、シミュレータカット弁V3を閉弁する。これにより、下流ユニットU2の第一系統U2Aに対して、マスタシリンダ15からブレーキ液圧が供給される。
【0024】
(2.ブレーキ液圧制御装置10の構成の詳細)
次に、本実施形態のブレーキ液圧制御装置10の構成を詳細に説明する。ブレーキ液圧制御装置10は、
図2及び
図3に示すように、液圧制御デバイスを構成する電気モータ11及び電動シリンダ装置12と、電気モータ11及び電動シリンダ装置12を統合的に備えて液圧制御デバイスの一部を構成するボディ13を備える。又、ブレーキ液圧制御装置10は、マスタピストン14を有して、ボディ13に収容されたマスタシリンダ15を備える。更に、ブレーキ液圧制御装置10は、電気モータ11の作動を制御する制御装置16を備える。
【0025】
又、ブレーキ液圧制御装置10は、マスタピストン14の軸方向への変位量即ち軸方向位置を表す原位置からのストローク量を検出する検知デバイス20を備える。ここで、本実施形態においては、
図2及び
図3に示すように、検知デバイス20の検知体21は、ボディ13の外部に組み付けられた取付部Hに取り付けられる。取付部Hは、ブレーキ液圧制御装置10を隔壁Kに固定するための複数(本実施形態においては、4本)のスタッドボルトBと、マスタピストン14(又は、プッシュロッドPR)を挿通させる挿通部H1を有する。
【0026】
本実施形態の検知体21は、取付部Hに取り付けられることによってボディ13の外部に配置される。そして、本実施形態の被検知体22は、マスタピストン14に一体に固定される。これにより、本実施形態の検知体21は、取付部Hに設けられた筒状(円筒状)の挿通部H1の内周にて、マスタピストン14の外周に一体に固定された被検知体22に対向するように取り付けられる。
【0027】
電気モータ11は、回転駆動力を発生し、発生した回転駆動力を電動シリンダ装置12に供給する。電動シリンダ装置12は、図示省略のシリンダ、ピストン、直動変換機構等を主に備える。電動シリンダ装置12は、直動変換機構が電気モータ11の回転軸の回転運動を直動部の直線運動に変換することにより、ピストンをシリンダ内で摺動させる。尚、直動変換機構は、例えば、ボールねじ及びボールねじナットや、ローラねじ及びローラねじナット等を主要構成部品とし、ボールねじやローラねじが直動部として直線運動する。そして、電動シリンダ装置12は、直動部の移動に伴ってピストンがシリンダ内に形成された液圧室のブレーキ液を圧縮することによってブレーキ液圧を発生させる。
【0028】
ボディ13は、電動シリンダ装置12の液圧室に接続される図示省略の液路が形成されると共に液路に配置された各種制御弁等を備える。又、ボディ13の内部には、電動シリンダ装置12の直動変換機構に対して電気モータ11の回転運動を伝達する動力伝達機構が収容される。尚、動力伝達機構は、例えば、電気モータ11の回転軸に固定された駆動ギヤを含む複数のギヤから構成される。そして、ボディ13は、各種制御弁等によって電動シリンダ装置12から供給された液圧を調圧し、調圧された液圧即ちブレーキ液圧を車両の各ホイルシリンダWに供給する。又、ボディ13には、ブレーキ液圧制御装置10と外部とを電気的に接続するためのコネクタCが組み付けられる。
【0029】
マスタピストン14は、ブレーキペダルBPとプッシュロッドPRを介して連結されており(
図1を参照)、
図2に示すように、ボディ13の外部に組み付けられた取付部Hの挿通部H1を挿通する。マスタシリンダ15は、ブレーキペダルBPの操作に応じてマスタピストン14が軸方向に移動することによって液圧(マスタシリンダ圧)を発生させる。バイワイヤモードにおいて、マスタシリンダ15は、ストロークシミュレータSSに接続される(
図1を参照)。これにより、運転者は、ブレーキペダルBPの操作に対して反力を受ける。
【0030】
制御装置16は、マイクロコンピュータを主要構成部品とする電子基板である。制御装置16は、
図3に示すように、ボディ13に対して、電気モータ11及び電動シリンダ装置12とは反対側に配置される。制御装置16は、検知デバイス20によって検知されたマスタピストン14のストローク量に対応するブレーキ液圧を発生させるために、電気モータ11の回転駆動を制御する。尚、制御装置16は、ブレーキ液圧制御装置10の出力圧(ブレーキ液圧)の目標値を、ストローク量とマスタシリンダ圧(反力圧)とに基づいて設定しても良い。ここで、制御装置16は、ボディ13に形成された収容部131に収容された状態で蓋によって密封される。
【0031】
(2-1.検知デバイス20の詳細な構成)
本実施形態の検知デバイス20は、
図4に示すように、マスタピストン14のストローク量(軸方向位置)に対応して変化する物理量を検知する(センシングする)検知体21と、検知体21によって物理量が検知される被検知体22と、検知体21と電気モータ11の作動を制御する制御装置16とを電気的に接続する接続体23とを備える。検知体21と被検知体22とは、互いに対向するように配置される。本実施形態においては、被検知体22がマスタピストン14に対して相対移動不能となるように、マスタピストン14に一体に固定される。そして、本実施形態においては、検知体21がボディ13の外部である取付部H(より詳細には、挿通部H1)に固定される。
【0032】
ここで、検知体21としては、例えば、物理量として磁場方向の変化を検出するホール式・MR式或いはコイル式を採用したセンサ(例えば、ホール素子やMR素子、コイルを備えたセンサ)を例示することができる。又、検知体21としては、例えば、物理量として検知体21自身が発生した高周波磁界により金属の被検知体22に生じた渦電流に起因するインピーダンスの変化をストローク量として検出する渦電流式を採用したセンサを例示することもできる。尚、以下に説明する本実施形態においては、検知体21がMR素子を備えたMRセンサであり、被検知体22が永久磁石である場合を例示して説明する。
【0033】
接続体23は、検知体21と制御装置16とを電気的に接続する。接続体23としては、例えば、バスバーやフレキシブルワイヤ等を用いることができる。本実施形態においては、接続体23としてバスバーを用いる場合を例示する。接続体23は、検知体21と電気的に直接接続しても良いし、検知体21を支持する支持部材24を介して、検知体21と電気的に接続しても良い。
【0034】
次に、本実施形態の検知デバイス20を具体的に説明する。検知デバイス20の検知体21は、
図4に示すように、取付部Hの挿通部H1の内周に取り付けられる。本実施形態の検知体21は、一例として、2個一対のMRセンサ21A及びMRセンサ21Bから形成される。各々のMRセンサ21A,21B(検知体21)は、挿通部H1の周方向にて互いに離間して、例えば、周方向に180度離間して配置される。更に、各々のMRセンサ21A,21B(検知体21)は、マスタピストン14の軸方向にて互いにずれるように取り付けられる。
【0035】
検知体21は、樹脂製の絶縁部材からなる円筒状の支持部材24を介して、挿通部H1に設けられる。支持部材24は、
図4に示すように、挿通部H1から、該挿通部H1の軸方向において、該挿通部H1よりもボディ13の内部に向けて延在する(突出する)ように形成される。支持部材24の内部には、検知体21と電気的に接続された配線が上述の延在部分に至るように設けられており、検知体21は、周囲が樹脂製の絶縁部材によって覆われた接続体23を介して、収容部131に収容された制御装置16(電子基板)と電気的に接続される。接続体23及び該接続体23を覆う上述の絶縁部材は、支持部材24の上述の延在部分と電子基板(制御装置16)との間でこれらに対して起立した姿勢で設けられる接続柱を構成する。
【0036】
このように、本実施形態では、接続体23としてバスバーを用いているため、例えば、電子基板(制御装置16)と検知体との前記接続作業の前の段階で予め電子基板(制御装置16)又は支持部材24に接続体23を起立した姿勢で固定しておくことができる。従って、例えば、電子基板(制御装置16)をボディ13に組み付ける際等において、電子基板(制御装置16)と検知体21との電気接続作業が、起立状態にある接続体23によって容易になる。バスバーを覆う絶縁部材は、バスバーに対して絶縁効果を与えると共に、接続柱としての剛性を更に高くすることに寄与する。尚、接続体23として、上述のバスバーに代えて、バスバーよりも剛性の小さい、例えば、フレキシブルワイヤを用いた場合であっても、フレキシブルワイヤの周囲を樹脂製の絶縁部材によって覆う等して剛性の高い接続柱を構成することにより、上述と同様の効果を得ることができる。
【0037】
尚、本実施形態においては、
図4に示すように、接続体23と支持部材24とを別体として構成し、支持部材24が検知体21(MRセンサ)と電気的に接続して支持した状態で、支持部材24と接続体23とを電気的に接続する。しかし、接続体23と支持部材24とを一体的に構成するようにしても良い。
【0038】
検知デバイス20の被検知体22は、
図4に示すように、マスタピストン14の外周に対して相対移動不能に(一体に)固定される。本実施形態の被検知体22は、2個一対の環状の永久磁石22A及び永久磁石22Bと、マスタピストン14の軸方向に沿って離間した永久磁石22A,22Bの間に配置された絶縁体22Cとから形成される。即ち、本実施形態の被検知体22は、2つの永久磁石22A,22Bが絶縁体22Cを介して、マスタピストン14の軸方向に沿って並べて配置される。
【0039】
(2-2.検知デバイス20によるストローク量の検知)
ブレーキ液圧制御装置10においては、上述したように、ブレーキ液圧を供給するために、検知デバイス20によってマスタピストン14の軸方向位置即ちストローク量Lが正確に検知される。又、本実施形態においては、検知体21が2つのMRセンサ21A,21Bから形成され、且つ、被検知体22が2つの永久磁石22A,22Bから形成されることにより、マスタピストン14の軸方向への変位方向をも正確に検知することができる。
【0040】
具体的に、
図4に示す状態を、運転者によってブレーキペダルBPが操作されていない状態であって、マスタピストン14がマスタシリンダ15に対して前進していない状態、即ち、マスタピストン14が原位置にある状態とする。そして、運転者によってブレーキペダルBPが操作されて、プッシュロッドPRを介してマスタピストン14が原位置から押されて前進した
図5の状態においては、挿通部H1においてボディ13から軸方向にて離間した位置に配置された検知体21のMRセンサ21Aは、マスタピストン14においてボディ13に軸方向にて近接した位置に配置された被検知体22の永久磁石22Aにおける磁場方向の変化を検知する。
【0041】
MRセンサ21Aによって検知された磁場方向の変化を表す検知信号LSは、支持部材24及び接続体23を介して、制御装置16に出力される。尚、
図5の状態においては、挿通部H1においてボディ13に対して軸方向にて近接した位置に配置された検知体21のMRセンサ21Bは、磁場方向の変化を表す検知信号LSを未だ出力していない。制御装置16においては、MRセンサ21Aから取得した検知信号LSに応じたマスタピストン14のストローク量Lを決定する。この場合、制御装置16においては、MRセンサ21Bから検知信号LSを取得していないことに基づき、マスタピストン14が原位置から前進していることを把握する。
【0042】
更に、プッシュロッドPRを介してマスタピストン14が押されて前進すると、
図5に示す状態から
図6に示す状態になる。
図6に示す状態においては、検知体21のMRセンサ21Bが被検知体22の永久磁石22Aにおける磁場方向の変化を検知する。加えて、
図6に示す状態においては、検知体21のMRセンサ21Aがマスタピストン14においてボディ13から軸方向にて離間した位置に配置された被検知体22の永久磁石22Bにおける磁場方向の変化を検知する。
【0043】
MRセンサ21A及びMRセンサ21Bによって検知された磁場方向の変化を表す各々の検知信号LSは、接続体23を介して、制御装置16に出力される。制御装置16においては、MRセンサ21A及びMRセンサ21Bの各々から取得した検知信号LSに応じたマスタピストン14のストローク量Lを決定する。そして、この場合、制御装置16においては、MRセンサ21A及びMRセンサ21Bの各々から検知信号LSを取得していることに基づき、マスタピストン14が原位置からより前進していることを正確に把握する。
【0044】
そして、運転者によるブレーキペダルBPの操作が解除される状況では、
図6に示す状態から
図5に示す状態を経て、
図4に示すように、マスタピストン14が原位置に位置する状態になる。又、ホイルシリンダWにおけるブレーキ力を調整するために運転者によってブレーキペダルBPの操作が少し戻される状況では、例えば、
図6に示す状態から
図5に示す状態になる。
【0045】
このような状況においては、検知体21のMRセンサ21Bは、被検知体22の永久磁石22Aの磁場方向の変化を検知している状態から磁場方向の変化を検知しない状態に変化する。即ち、制御装置16においては、接続体23を介して、MRセンサ21Bから検知信号LSを取得している状態から検知信号LSを取得していない状態に変化する。この状態の変化に基づき、制御装置16においては、マスタピストン14が前進した位置から原位置の方向に変位していることを正確に把握することができる。
【0046】
以上の説明からも理解できるように、ブレーキ液圧制御装置10は、マスタピストン14を有してブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ15と、マスタピストン14の軸方向位置であるストローク量Lを電気的に検知する検知デバイス20と、検知デバイス20によって検知されたストローク量Lを表す検知信号LSに基づきホイルシリンダWに供給するブレーキ液圧を制御する液圧制御デバイスを構成する電気モータ11及び電動シリンダ装置12と、を統合的にボディ13に備える。そして、本実施形態のブレーキ液圧制御装置10においては、検知デバイス20を構成する検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)及び被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)の一方である被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)がマスタピストン14に対して一体に固定される。
【0047】
これによれば、検知デバイス20を構成する検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)及び被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)の一方である被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)をマスタピストン14に一体に固定することができる。これにより、マスタピストン14と被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)とは相対移動することなく、即ち、遊びを設けることなく、マスタピストン14と共に軸方向に移動することができる。従って、検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)は、極めて正確に被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)即ちマスタピストン14の軸方向位置を検知することができ、検知デバイス20のセンシング精度を向上させることができる。
【0048】
又、検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)及び被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)の一方である被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)を保持するために、マスタピストン14とは別体の部材を設ける必要がない。これにより、別体の部材を配置するためのスペースや、別体の部材を作動させるためのスペースを確保する必要がなく、その結果、ブレーキ液圧制御装置10の小型化を実現することができる。
【0049】
この場合、ボディ13には、車両の車室内と車室外とを隔離する隔壁Kに固定するための取付部Hが一体的に設けられており、取付部Hは、マスタピストン14の外周面に沿って軸方向に延びていて、マスタピストン14がボディ13の内部に向けて挿通される挿通部H1を有しており、マスタピストン14に固定された検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)及び被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)の一方である被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)は、挿通部H1の軸方向の領域内に配置される。この場合、本実施形態においては、検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)及び被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)の他方である検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)は、挿通部H1においてボディ13側に設けられる。尚、この場合、挿通部H1は、ボディ13の外方に向けて突出した筒状に形成されており、一部が隔壁Kを車室外から車室内に向けて貫通するように形成される。
【0050】
これらによれば、隔壁Kを貫通してマスタピストン14及びプッシュロッドPRを挿通させる以外の主たる機能を有さない筒状の挿通部H1の軸方向の領域内に検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)を設けることができる。これにより、車両におけるデッドスペースを有効に利用することができる。
【0051】
又、この場合、挿通部H1に対して離間してボディ13に配置される電子基板(制御装置16)と接続体23を介して電気的に接続され、挿通部H1の軸方向において挿通部H1よりもボディ13の内部に向けて延在した支持部材24を備え、検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)は、支持部材24と電気的に接続され、且つ、支持部材24を介して挿通部H1に設けられる。
【0052】
これによれば、接続体23により、検知体21と制御装置16との間の配線の案内を良好に行いつつ、検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)と制御装置16(電子基板)とをマスタピストン14の径方向にて離間させることができる。これにより、例えば、取付部H、より詳しくは、挿通部H1をマスタピストン14に近接させて配置するように、取付部H(挿通部H1)を小径に形成することができる等、取付部Hの設計自由度を向上させることができる。又、接続体23としてバスバーを用いた場合には、ボディ13自体に対して貫通孔等の配線案内部分を形成したり、配線案内のための専用部材を追加したりすることが不要となる。これにより、ボディ13の小型化を実現することができると共に、ボディ13の製造コストを低減することができる。
【0053】
又、検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)が複数設けられ、複数の検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)を、マスタピストン14の軸方向に沿って配置することができる。又、検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)が複数設けられ、複数の検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)を、マスタピストン14の周方向に沿って配置することができる。更に、被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)が複数設けられ、複数の被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)を、マスタピストン14の軸方向に沿って並べられて配置することができる。
【0054】
このように、複数の検知体21(MRセンサ21A及びMRセンサ21B)及び複数の被検知体22(永久磁石22A及び永久磁石22B)を、マスタピストン14に対して配置することができる。これにより、検知デバイス20のセンシング精度を向上させたり、軸方向の占有長さを減らしたりすることができる。
【0055】
(3、第二実施形態)
上述した第一実施形態においては、検知デバイス20の検知体21を、ボディ13の外部に組み付けられた取付部H、より詳しくは、取付部Hの挿通部H1に設けるようにした。即ち、上述した第一実施形態においては、検知体21をボディ13の外部に設けて、マスタピストン14の軸方向位置即ち原位置からのストローク量を検知するようにした。
【0056】
ところで、
図7及び
図8に示すように、特に、電気モータ11の軸線と電動シリンダ装置12の軸線とが並列(例えば、並列且つ平行)となるようにボディ13に組み付けられ、且つ、マスタシリンダ15が電気モータ11及び電動シリンダ装置12の各々の軸線J1及び軸線J2に交差するように(本実施形態においては、軸線J1,J2に直交するように)ボディ13に収容された場合には、検知デバイス20の検知体25をボディ13の内部に配置することが可能である。この場合、検知デバイス20の検知体25は、ボディ13の内部において、電気モータ11と電動シリンダ装置12の配置並び方向(本実施形態においては鉛直方向)で電気モータ11と電動シリンダ装置12との間となるように配置される。
【0057】
より詳細には、例えば、ブレーキ液圧制御装置10が車両に搭載された状態で、鉛直の投影面(
図7及び
図8の紙面に相当)を想定し、投影面に対して電気モータ11、電動シリンダ装置12、ボディ13及び検知体25を投影した場合、検知体25は、投影面上において、電気モータ11と電動シリンダ装置12の配置並び方向で電気モータ11と電動シリンダ装置12との間に配置される。又、本実施形態において、検知体25は、ボディ13の内部における電気モータ11の軸線J1上の任意の点を通る仮想水平面(鉛直方向に延びる直線に直交する平面)と、同じく電動シリンダ装置12の軸線J2上の任意の点を通る仮想水平面との間に配置されている。
【0058】
又、検知体25は、
図7に示すように、仮想平面Fを想定した場合、仮想平面Fから仮想平面Fの法線方向に離間して配置される。ここで、仮想平面Fは、
図7及び
図8にて二点鎖線で示すように、電気モータ11及び電動シリンダ装置12の各々の軸線J1,J2(より詳細には、ボディ13の内部における軸線J1上の任意の点と、同じく軸線J2上の任意の点)を結ぶ仮想線J3を想定した場合、
図7に示すように、軸線J1及び軸線J2の少なくとも一方と仮想線J3とを含む平面として定義される。尚、第二実施形態においては、電気モータ11の軸線J1と電動シリンダ装置12の軸線J2とが平行である場合を例示するため、仮想平面Fは、
図7に示すように、電気モータ11の軸線J1、電動シリンダ装置12の軸線J2及び仮想線J3を含む平面となる。又、上述した投影面として、仮想平面Fに平行な平面及び仮想平面Fに直交する平面を想定しても良い。
【0059】
第二実施形態においては、
図7及び
図8にて破線により示すように、検知デバイス20の検知体25は、例えば、略円柱状に形成される。第二実施形態の検知体25は、マスタピストン14に一体に固定された被検知体22(例えば、永久磁石22A)に対向するように、円筒状に形成された支持部材24の先端側に配置された検知体21(MRセンサ21A)と支持部材24の内部に延設されて後端側にて制御装置16の電子基板に電気的に接続される接続体23とを備える。尚、第二実施形態の検知体25は、例えば、アルミ製のボディ13に形成された収容孔に収容されて、ボディ13の内部に組み付けられる。
【0060】
このように、第二実施形態のブレーキ液圧制御装置10においては、電気モータ11と電動シリンダ装置12とは、各々の軸線が並列になるようにボディ13に配置されており、検知体25(MRセンサ21A)及び被検知体22(永久磁石22A)の一方である被検知体22はマスタピストン14に一体に固定され、他方である検知体25は、電気モータ11と電動シリンダ装置12とがボディ13に配置される配置並び方向において、電気モータ11と電動シリンダ装置12との間になるように、ボディ13の内部に配置される。この場合、検知体25及び被検知体22の他方である検知体25は、電気モータ11及び電動シリンダ装置12の各々の軸線J1及び軸線J2を結ぶ仮想線J3と、電気モータ11の軸線J2及び電動シリンダ12の軸線J2の少なくとも一方(第二実施形態においては、軸線J1及び軸線J2が平行であるため、これらの両方)と、を含む仮想平面Fから該仮想平面Fの法線方向に離間して配置される。
【0061】
従って、第二実施形態のブレーキ液圧制御装置10においても、上述した第一実施形態と同様に、検知デバイス20の検知体25は、マスタピストン14のストローク量を高いセンシング精度によって検知することができる。又、検知体25を電気モータ11及び電動シリンダ装置12の各々の軸線を含む仮想平面Fから仮想平面Fの法線方向に離間して電気モータ11と電動シリンダ装置12との間に配置することにより、ボディ13の内部において電気モータ11と電動シリンダ装置12との間に生じるデッドスペースのうち仮想平面Fと重なる比較的狭くなりがちな領域を避けつつスペースを有効に利用することができ、ブレーキ液圧制御装置10の小型化を実現することができる。
【0062】
(4.変形例)
上述した各実施形態のブレーキ液圧制御装置10は、マスタピストン14に被検知体22即ち永久磁石22A、永久磁石22B及び絶縁体22Cを一体に固定するようにした。しかし、マスタピストン14に検知体21即ちMRセンサ21A及びMRセンサ21Bを一体に固定し、取付部Hの挿通部H1に被検知体22即ち永久磁石22A、永久磁石22B及び絶縁体22Cを設けることも可能である。この場合においても、センシング精度を向上させることができると共にブレーキ液圧制御装置10の小型化を実現することができ、上述した各実施形態と同様の効果が得られる。尚、この場合、検知体21と制御装置16とを電気的に接続する接続体23としては、マスタピストン14の移動を考慮して、例えば、フレキシブルワイヤを用いることができる。これにより、検知体21からの検知信号LSを制御装置16に出力して伝達することができる。
【0063】
又、上述した各実施形態のブレーキ液圧制御装置10は、ボディ13において、電気モータ11が電動シリンダ装置12よりも車両上下方向(鉛直方向)にて上方になるように配置するようにした。これにより、仮に電動シリンダ装置12から液体(ブレーキ液)が漏出したとしても、漏出した液体が電気モータ11の内部に侵入することを防止することができる。従って、電気モータ11の内部への液体の侵入を防止するためのシール構造等を簡素化又は配置することができる。
【0064】
しかしながら、ボディ13に電気モータ11及び電動シリンダ装置12が配置される場合、電気モータ11及び電動シリンダ装置12の車両の上下方向における配置については、限定されない。即ち、ボディ13において電動シリンダ装置12が電気モータ11よりも車両上下方向(鉛直方向)にて上方となるように配置することも可能である。この場合においても、上述した各実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
又、上述した各実施形態においては、ボディ13の同一側に電気モータ11と電動シリンダ装置12とを配置するようにした。しかし、ボディ13に対する電気モータ11と電動シリンダ装置12との配置については、ボディ13の同一側に配置することに限定されるものではない。例えば、ボディ13を挟んで電気モータ11と電動シリンダ装置12とを配置することも可能である。この場合においても、例えば、ボディ13において電気モータ11と電動シリンダ装置12とを一部重ねるように配置することにより、ブレーキ液圧制御装置10を小型化することができる。
【0066】
又、上述した第一実施形態においては、検知デバイス20の検知体21を2つのMRセンサ21A及びMRセンサ21Bから構成し、検知デバイス20の被検知体22を2つの永久磁石22A及び永久磁石22Bから構成するようにした。又、上述した第二実施形態においては検知デバイス20の検知体25を1つのMRセンサ21Aから構成し、検知デバイス20の被検知体22を1つの永久磁石22Aから構成するようにした。
【0067】
しかし、検知デバイス20の検知体21及び検知体25と、被検知体22とについては、設ける数についての限定はない。例えば、検知デバイス20の検知体21を1つのMRセンサ21Aから構成し、検知デバイス20の被検知体22を2つの永久磁石22A及び永久磁石22Bから構成したり、検知体21を2つのMRセンサ21A及びMRセンサ21Bから構成し、被検知体22を1つの永久磁石22Aから構成したりすることも可能である。これらの場合であっても、遊びを設けることなく、マスタピストン14の軸方向位置即ちストローク量を正確に検知することができる。
【0068】
更に、上述した各実施形態においては、取付部Hの挿通部H1が筒状で且つ隔壁Kを挿通するように突出するように形成した。しかし、挿通部H1の形状については、筒状で且つ隔壁Kを挿通するように突出している必要はなく、マスタピストン14(又は、プッシュロッドPR)を挿通可能であれば、取付部Hに設けた貫通孔であっても良い。この場合においても、検知体21及び被検知体22の一方を、貫通孔である挿通部H1に設けることができ、上述した各実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0069】
10…ブレーキ液圧制御装置、11…電気モータ(液圧制御デバイス)、12…電動シリンダ装置(液圧制御デバイス)、13…ボディ、14…マスタピストン、15…マスタシリンダ、16…制御装置、20…検知デバイス、21…検知体、21A…MRセンサ、21B…MRセンサ、22…被検知体、22A…永久磁石、22B…永久磁石、22C…絶縁体、23…接続体、24…支持部材、25…検知体、K…隔壁、BP…ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)、PR…プッシュロッド、H…取付部、H1…挿通部、B…スタッドボルト、L…ストローク量(軸方向位置)、LS…検知信号、J1…(電気モータの)軸線、J2…(電動シリンダ装置の)軸線、J3…仮想線、F…仮想平面、S…ブレーキシステム、U1…上流ユニット、U2…下流ユニット、U2A…第一系統、U2B…第二系統、SS…ストロークシミュレータ、W…ホイルシリンダ、R…リザーバ、T1…配管、T2…配管、T3…連通路、T41,T42…ブレーキ液供給路、V1…連通制御弁、V2…マスタカット弁、V3…シミュレータカット弁