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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056251
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】制動液圧供給ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/138 20060101AFI20220401BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
B60T13/138 A
B60T8/17 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164166
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(74)【代理人】
【識別番号】100174713
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧川 彰人
(72)【発明者】
【氏名】小野田 真吾
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB01
3D048CC54
3D048HH18
3D048HH26
3D048HH53
3D048PP09
3D246BA02
3D246GA01
3D246LA15B
3D246LA23B
3D246LA57Z
3D246MA15
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上させた制動液圧供給ユニットを提供すること。
【解決手段】制動液圧供給ユニット10は、シリンダ12A内を摺動するピストン12Bが電気モータ11に駆動されて、シリンダ12A内に形成された液圧室12Cに液圧を発生させる液圧発生装置12と、液圧室12Cに接続される液路が形成されたハウジング13と、を備える。そして、制動液圧供給ユニット10は、電気モータ11とシリンダ12Aとは共にハウジング13に取り付けられ、車両に搭載される姿勢で、電気モータ11はシリンダ12Aよりも鉛直方向の上方に位置する。これにより、仮にシリンダ12Aから液体が漏出したとしても、漏出した液体が電気モータ11の内部に侵入することを防止することができる。従って、電気モータ11の作動に異常を来すことなく、制動液圧供給ユニット10の信頼性を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内を摺動するピストンが電気モータに駆動されて、前記シリンダ内に形成された液圧室に液圧を発生させる液圧発生装置と、前記液圧室に接続される液路が形成されたハウジングと、を備える車両用の制動液圧供給ユニットにおいて、
前記電気モータと前記シリンダとは共に前記ハウジングに取り付けられ、
車両に搭載される姿勢で、前記電気モータは前記シリンダよりも鉛直方向の上方に位置する、制動液圧供給ユニット。
【請求項2】
前記電気モータ及び前記シリンダが前記ハウジングに対して同一側に配置された請求項1に記載の制動液圧供給ユニットを備え、
前記電気モータ及び前記シリンダが前記車両の前後方向における前記ハウジングの後部に位置するよう前記制動液圧供給ユニットが搭載された、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動液圧供給ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に開示された制動液圧供給ユニットが知られている。この従来の制動液圧供給ユニットは、電気モータと、電気モータによって駆動される電動シリンダとを備える。そして、従来の制動液圧供給ユニットにおいては、電動シリンダが基体の内部に収容され、且つ、電気モータが基体の外部に配置されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-20783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の制動液圧供給ユニットにおいては、車両に搭載された姿勢において、基体(ハウジング)の内部に収容された電動シリンダが基体の外部に配置された電気モータよりも鉛直方向にて上方になる。このため、仮に電動シリンダからブレーキ液等の液体が漏出する状況が生じた場合、漏出した液体が基体を伝わり鉛直方向にて下方の電気モータに掛かる可能性があり、その結果、電気モータの作動に影響を及ぼす虞がある。従って、制動液圧供給ユニットの信頼性を向上させる点で、改善が望まれる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、信頼性を向上させた制動液圧供給ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用の制動液圧供給ユニットは、シリンダ内を摺動するピストンが電気モータに駆動されて、シリンダ内に形成された液圧室に液圧を発生させる液圧発生装置と、液圧室に接続される液路が形成されたハウジングと、を備え、電気モータとシリンダとは共にハウジングに取り付けられ、車両に搭載される姿勢で、電気モータはシリンダよりも鉛直方向の上方に位置する。
【0007】
又、本発明の車両は、電気モータ及びシリンダがハウジングに対して同一側に配置された上記の車両用の制動液圧供給ユニットを備え、電気モータ及びシリンダが車両の前後方向におけるハウジングの後部に位置するよう制動液圧供給ユニットが搭載される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の制動液圧供給ユニットによれば、車両搭載姿勢において、シリンダよりも鉛直方向の上方に電気モータをハウジングに取り付けることができる。これにより、仮にシリンダから液体が漏出したとしても、漏出した液体が電気モータの内部に侵入することを防止することができる。従って、制動液圧供給ユニットの信頼性を向上させることができる。
【0009】
又、本発明の車両によれば、車両に搭載した状態で、電気モータ及びシリンダを車両の前後方向の後方に位置させる、或いは、車両の前後方向の後方に寄せることができる。これにより、車両の前後方向にて前方からの衝撃に対して電気モータ及びシリンダの衝撃耐性を向上させることができる。又、補機類等の配置が比較的少ない車両の前後方向の後方に電気モータ及びシリンダを位置させる(寄せる)ことができるため、スペースを有効利用することができると共に、他の機器や補機類等の設置スペースを十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る制動液圧供給ユニットを備えたブレーキシステムの構成を示す図である。
図2】制動液圧供給ユニットの車両に搭載された姿勢において、制動液圧供給ユニットを車両の前後方向にて前方から見た図である。
図3】制動液圧供給ユニットの車両に搭載された姿勢において、制動液圧供給ユニットを車両の左右方向にて電気モータ及びシリンダが組み付けられた側から見た図である。
図4】制動液圧供給ユニットの車両に搭載された姿勢において、制動液圧供給ユニットを車両の前後方向にて後方から見た図である。
図5】実施形態の変形例に係り、制動液圧供給ユニットの車両に搭載された姿勢において、制動液圧供給ユニットを車両の左右方向にて電気モータ及びシリンダが組み付けられた側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態及び変形例の相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一の符号を付してある。又、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
【0012】
(1.制動液圧供給ユニット10の概要)
車両用の制動液圧供給ユニット10は、図1に示すように、車両の車室内と車両前後方向にて前方側の車室外とを隔離する隔壁K(ダッシュボード、ダッシュパネル或いはダッシュカウルとも呼ばれる。)に対して、車室外に組み付けられる。尚、車両前後方向にて前方側の車室外には、例えば、内燃機関や、駆動用モータ及びインバータ、燃料電池スタック等が配置されたり、或いは、荷室が配置されたりする。
【0013】
本実施形態において例示する制動液圧供給ユニット10は、車室内に配置されて運転者によるブレーキペダルBP等のブレーキ操作部材の操作量に応じた制動液圧を発生させて、車両の前後左右に配置された4つのホイルシリンダWに制動液圧を供給する。このため、制動液圧供給ユニット10は、電気モータ11と、電気モータ11によって駆動されて制動液圧を発生させる液圧発生装置12と、液圧発生装置12に接続される液路が形成されたハウジング13と、を主に備える。
【0014】
ここで、本実施形態の制動液圧供給ユニット10においては、図1に示すように、車両に搭載された姿勢において、電気モータ11及び液圧発生装置12は、ハウジング13に対して、電気モータ11が液圧発生装置12よりも車両上下方向(即ち鉛直方向)にて上方に配置される。即ち、電気モータ11は、ハウジング13に対して、液体(例えば、ブレーキ液等)が供給される液圧発生装置12よりも車両上下方向(鉛直方向)にて上方に配置される。
【0015】
又、本実施形態の制動液圧供給ユニット10においては、図1に示すように、電気モータ11及び液圧発生装置12は、ハウジング13に対して、同一側(例えば、車両左右方向にて右側又は左側)に配置される。換言すると、電気モータ11及び液圧発生装置12は、ハウジング13の同一面に組み付けられている。更に、制動液圧供給ユニット10においては、電気モータ11及び液圧発生装置12は、ハウジング13に対して、車両前後方向にて後方に向けて、即ち、車両前後方向にて車室外の後方側であって隔壁Kに沿って(又は、隔壁Kに寄せて)配置される。
【0016】
本実施形態の制動液圧供給ユニット10は、ハウジング13に収容されて、車室内側に配置されて運転者によって操作されるブレーキペダルBPとプッシュロッドPRを介して連結されたマスタシリンダ14を備える。但し、制動液圧供給ユニット10は、必ずしもマスタシリンダ14を備える必要はなく、例えば、自動運転が可能な車両においてはマスタシリンダ14を適宜省略することも可能である。
【0017】
ここで、本実施形態の制動液圧供給ユニット10は、図1に示すように、車両のブレーキシステムSを構成する。ブレーキシステムSは、制動液圧供給ユニット10を含む上流ユニットU1と、各ホイルシリンダWに接続される下流ユニットU2を備える。尚、下流ユニットU2は、ホイルシリンダWを加圧及び減圧可能な例えばESCアクチュエータである。
【0018】
上流ユニットU1は、制動液圧供給ユニット10を含め、液路T1と、液路T2と、連通路T3と、ブレーキ液供給路T41,T42と、連通制御弁V1と、マスタカット弁V2と、を備えている。
【0019】
制動液圧供給ユニット10に設けられたマスタシリンダ14は、リザーバRに接続されており、ブレーキペダルBPの操作量に応じて機械的に下流ユニットU2に制動液圧を供給可能に構成されている。マスタシリンダ14には、ストロークシミュレータSS及びシミュレータカット弁V3が接続される。ストロークシミュレータSSは、ブレーキペダルBPの操作に対して反力(負荷)を発生させる。シミュレータカット弁V3は、ノーマルクローズ型の電磁弁である。尚、シミュレータカット弁V3の作動は、図示省略のブレーキ制御装置によって制御される。
【0020】
液路T1は、マスタシリンダ14と下流ユニットU2の第一系統U2Aとを接続している。液路T2は、制動液圧供給ユニット10と下流ユニットU2の第二系統U2Bとを接続している。ここで、第一系統U2Aは、2つのホイルシリンダW(例えば、左前輪FLのホイルシリンダWと右前輪FRのホイルシリンダW)の加圧及び減圧を制御する。又、第二系統U2Bは、2つのホイルシリンダW(例えば、右後輪RRのホイルシリンダWと左後輪RLのホイルシリンダW)の加圧及び減圧を制御する。連通路T3は、液路T1と液路T2とを接続している。ブレーキ液供給路T41は、リザーバRと制動液圧供給ユニット10の液圧発生装置12とを接続する。ブレーキ液供給路T42は、リザーバRとマスタシリンダ14とを接続する。液圧発生装置12は、液圧発生装置12のピストンが初期位置にある場合にリザーバRと連通し、ピストンが初期位置から所定量前進した場合にリザーバRと遮断される。マスタシリンダ14は、マスタピストン14Aが初期位置にある場合にリザーバRと連通し、マスタピストン14Aが初期位置から所定量前進した場合にリザーバRとの連通が遮断される。尚、リザーバRは、ブレーキ液を貯留し、内部の圧力は大気圧に保たれる。
【0021】
連通制御弁V1は、連通路T3に設けられたノーマルクローズ型の電磁弁である。連通制御弁V1は、通電状態に応じて連通路T3の連通、遮断状態を切り替える。マスタカット弁V2は、液路T1のうち、液路T1と連通路T3との接続部分とマスタシリンダ14との間に設けられたノーマルオープン型の電磁弁である。マスタカット弁V2は、通電状態に応じてマスタシリンダ14と下流ユニットU2との連通、遮断状態を切り替える。
【0022】
ブレーキシステムSは、図示省略のブレーキ制御装置により作動が制御される。具体的に、ブレーキ制御装置は、車両のイグニッションがオン(電気自動車においては車両の起動時)されると、上流ユニットU1をバイワイヤモードに切り替える。バイワイヤモードでは、連通制御弁V1が開弁され、マスタカット弁V2が閉弁され、且つ、シミュレータカット弁V3が開弁される。
【0023】
即ち、バイワイヤモードにおいては、下流ユニットU2の第一系統U2A及び第二系統U2Bを介して、各ホイルシリンダWに制動液圧供給ユニット10からの制動液圧が供給される。このため、バイワイヤモードにおいては、制動液圧供給ユニット10は、運転者によるブレーキペダルBPの操作量としてストローク量を検出する図示省略のストロークセンサの検出値に基づいて決定される目標制動力に応じた制動液圧を供給する。
【0024】
一方、ブレーキ制御装置は、非常時等においてはバイワイヤモードを解除する。即ち、ブレーキ制御装置は、非常時等において、連通制御弁V1を閉弁し、マスタカット弁V2を開弁し、且つ、シミュレータカット弁V3を閉弁する。これにより、下流ユニットU2の第一系統U2Aに対して、マスタシリンダ14から制動液圧が供給される。
【0025】
(2.制動液圧供給ユニット10の構成の詳細)
次に、本実施形態の制動液圧供給ユニット10の構成を詳細に説明する。制動液圧供給ユニット10は、図2図3及び図4に示すように、電気モータ11、液圧発生装置12、ハウジング13を備える。又、本実施形態の制動液圧供給ユニット10は、図4に示すように、ハウジング13に収容され、ブレーキペダルBPとプッシュロッドPRを介して連結されるマスタシリンダ14を備える。尚、上述したように、制動液圧供給ユニット10とブレーキペダルBPとの連結を省略する場合には、マスタシリンダ14を省略可能であることは言うまでもない。
【0026】
電気モータ11は、ハウジング13に対して、車両上下方向(例えば、鉛直方向)にて上方となるように組み付けられる。電気モータ11は、回転駆動力を発生し、発生した回転駆動力を液圧発生装置12に供給する。
【0027】
液圧発生装置12は、図3に示すように、シリンダ12Aと、シリンダ12A内を摺動するピストン12Bと、を主に備える。そして、シリンダ12Aは、ハウジング13に対して、電気モータ11よりも車両上下方向(例えば、鉛直方向)にて下方になるように組み付けられる。液圧発生装置12は、図示を省略する直動変換機構が電気モータ11の回転軸の回転運動を直動部の直線運動に変換することにより、ピストン12Bをシリンダ12A内で摺動(移動)させる。これにより、液圧発生装置12は、ピストン12Bがシリンダ12A内に形成された液圧室12C内のブレーキ液を圧縮することによって液圧を発生させる。尚、電気モータ11及び液圧発生装置12は、電動シリンダを構成している。
【0028】
ハウジング13には、液圧発生装置12の液圧室12Cに接続される液路やマスタシリンダ14に接続される液路等が形成されている。又、ハウジング13には、制動液圧供給ユニット10と外部とを電気的に接続するためのコネクタCが組み付けられる。
【0029】
マスタシリンダ14は、図3及び図4に示すように、プッシュロッドPRに連結されるマスタピストン14Aを有し、ブレーキペダルBPの操作に応じてマスタピストン14Aが軸方向に移動することによってマスタシリンダ圧を発生させる。バイワイヤモードにおいて、マスタシリンダ14は、ストロークシミュレータSSに接続される(図1を参照)。これにより、運転者は、ブレーキペダルBPの操作に対して反力を受ける。尚、液圧発生装置12の出力圧の目標値は、マスタピストン14Aのストローク量とマスタシリンダ圧(反力圧)とに基づいて設定されても良い。
【0030】
本実施形態の制動液圧供給ユニット10は、隔壁Kに固定するための取付部Hに固定された複数(本実施形態においては、4本)のスタッドボルトB及びナットにより、隔壁Kに固定される。そして、隔壁Kに固定された状態即ち車両に搭載された姿勢において、制動液圧供給ユニット10では、電気モータ11は、液圧発生装置12のシリンダ12Aよりも、車両上下方向(鉛直方向)にて上方に位置する。これにより、仮にシリンダ12Aから液漏れが生じた場合であっても、漏れ出した液体が電気モータ11に掛かることがなく、電気モータ11の作動を損なうことを防止することができる。従って、制動液圧供給ユニット10の信頼性を十分に確保することができる。
【0031】
又、隔壁Kに固定された制動液圧供給ユニット10において、電気モータ11と液圧発生装置12のシリンダ12Aは、ハウジング13の同一側、例えば、図4に示すように、車室側から見て車両左右方向にて左側(一方の側面)に配置される。即ち、例えば、右ハンドルの車両の運転席前方にて車室外に配置される制動液圧供給ユニット10において、車室内側から見て車両左右方向の右側には、体格の大きな電気モータ11及び液圧発生装置12のシリンダ12Aが配置されない。これにより、車両に搭載された制動液圧供給ユニット10は、制動液圧供給ユニット10よりも車室側から見て車両左右方向の右側に配置される機器や装置、例えば、車両のサスペンション装置等を設置するための設置スペースを侵食しない。
【0032】
更に、制動液圧供給ユニット10においては、図3に示すように、体格の大きな電気モータ11及び液圧発生装置12のシリンダ12Aは、制動液圧供給ユニット10が車両に搭載された姿勢において、車両の前後方向におけるハウジング13の後部に搭載される。ハウジング13の後部とは、制動液圧供給ユニット10が車両に搭載された姿勢で、ハウジング13の中央よりも車両の後方側の部分のことである。ここで、「電気モータ11及びシリンダ12Aが車両の前後方向におけるハウジング13の後部に位置する」とは、ハウジング13から突出した電気モータ11の一端部の中心位置及びシリンダ12Aの一端部の中心位置が車両の前後方向においてハウジング13の後部に位置するように、車両に搭載されているということである。電気モータ11の一端部の中心位置とは、図2及び図3に示すように、軸線J1と電気モータ11の突出側の端面との交点である。シリンダ12Aの一端部の中心位置とは、軸線J2とシリンダ12Aの突出側の端面との交点である。これにより、体格の大きな電気モータ11及びシリンダ12Aが車両前後方向の後方にあるため、車両前方の空間を確保でき、制動液圧供給ユニット10が搭載された車両の衝突時の安全性が向上する。更に、車両前後方向にて前方からの衝撃に対して電気モータ11及びシリンダ12Aの衝撃耐性を向上させることができる。
【0033】
以上の説明からも理解できるように、本実施形態の制動液圧供給ユニット10は、シリンダ12A内を摺動するピストン12Bが電気モータ11に駆動されて、シリンダ12A内に形成された液圧室12Cに液圧を発生させる液圧発生装置12と、液圧室12Cに接続される液路が形成されたハウジング13と、を備える。そして、制動液圧供給ユニット10は、電気モータ11とシリンダ12Aとは共にハウジング13に取り付けられ、車両に搭載される姿勢で、電気モータ11はシリンダ12Aよりも鉛直方向の上方に位置する。
【0034】
これによれば、車両搭載姿勢において、電気モータ11がシリンダ12Aよりも鉛直方向の上方(車両上下方向にて上方)に取り付けることができる。これにより、仮にシリンダ12Aからブレーキ液が漏出したとしても、漏出したブレーキ液が電気モータ11の内部に侵入することを防止することができる。従って、電気モータ11の作動に異常を来すことなく、制動液圧供給ユニット10の信頼性を向上させることができる。
【0035】
更に、本実施形態の制動液圧供給ユニット10では、重量物である電気モータ11及び液圧発生装置12のシリンダ12Aを取付部H即ち隔壁Kに近づけて配置することができる。このため、例えば、電気モータ11の作動に伴って発生する振動によって、制動液圧供給ユニット10の全体が振動することを抑制することができる。
【0036】
又、本実施形態の車両は、電気モータ11及びシリンダ12Aがハウジング13に対して同一側に配置された制動液圧供給ユニット10を備え、電気モータ11及びシリンダ12Aが車両の前後方向におけるハウジング13の後部に位置するよう制動液圧供給ユニット10が搭載される。
【0037】
これによれば、車両に搭載した状態で、電気モータ11及びシリンダ12Aが車両前後方向の後方に位置させる、或いは、車両前後方向の後方に寄せることができる。これにより、体格の大きな電気モータ11及びシリンダ12Aが車両前後方向の後方にあるため、車両前方の空間を確保でき、制動液圧供給ユニット10が搭載された車両の衝突時の安全性が向上する。更に、車両前後方向にて前方からの衝撃に対して電気モータ11及びシリンダ12Aの衝撃耐性を向上させることができる。
【0038】
(3.変形例)
上述した実施形態の制動液圧供給ユニット10は、ハウジング13の同一側にて、電気モータ11が液圧発生装置12のシリンダ12Aよりも車両上下方向(鉛直方向)にて上方になるように配置するようにした。しかしながら、ハウジング13の同一側に電気モータ11及び液圧発生装置12のシリンダ12Aが配置される場合、電気モータ11及び液圧発生装置12のシリンダ12Aの車両上下方向における配置については、限定されない。
【0039】
例えば、図5に示すように、ハウジング13の同一側にて車両の前後方向におけるハウジング13の後部に位置するよう電気モータ11と液圧発生装置12のシリンダ12Aとを配置する場合、シリンダ12Aが電気モータ11よりも車両上下方向(鉛直方向)にて上方となるように配置することも可能である。上記実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
シリンダ12A内を摺動するピストン12Bが電気モータ11に駆動されて、シリンダ12A内に形成された液圧室12Cに液圧を発生させる液圧発生装置12と、液圧室12Cに接続される液路が形成されたハウジング13と、を含み、電気モータ11及びシリンダ12Aがハウジング13に対して同一側に並べて配置された制動液圧供給ユニット10を備え、
電気モータ11及びシリンダ12Aが車両の前後方向におけるハウジング13の後部に位置するよう制動液圧供給ユニット10が搭載された、車両。
【0040】
この場合においても、体格の大きな電気モータ11及びシリンダ12Aが車両前後方向の後方にあるため、車両前方の空間を確保でき、制動液圧供給ユニット10が搭載された車両の衝突時の安全性が向上する。又、電気モータ11の回転軸とシリンダ12Aの軸(液圧発生装置12の長軸)とを同軸に配置する、即ち、電気モータ11と液圧発生装置12とを直列に配置するとハウジング13から突出する部分が長くなり、その結果、車両への搭載性が損なわれる可能性がある。これに対して、制動液圧供給ユニット10においては、電気モータ11の回転軸と液圧発生装置12の長軸(シリンダ12Aの軸)とが並列、即ち、ハウジング13の同一側にて電気モータ11と液圧発生装置12のシリンダ12Aとを車両上下方向(鉛直方向)にて並べて配置することにより、ハウジング13に対して突出する部分を相対的に短くすることができる。その結果、上述した実施形態と同様に、省スペース化を実現することができ、車両への良好な搭載性を確保することができる。
【0041】
(4.その他の変形例)
上述した実施形態においては、ハウジング13の同一側に電気モータ11と液圧発生装置12とを配置するようにした。しかし、ハウジング13に対する電気モータ11と液圧発生装置12との配置については、ハウジング13の同一側に配置することに限定されるものではない。例えば、ハウジング13を挟んで電気モータ11と液圧発生装置12とが同軸とならないように配置することも可能である。この場合においても、例えば、ハウジング13において電気モータ11と液圧発生装置12とを一部重ねるように配置することにより、制動液圧供給ユニット10を小型化することができる。
【符号の説明】
【0042】
10…制動液圧供給ユニット、11…電気モータ、12…液圧発生装置、12A…シリンダ、12B…ピストン、12C…液圧室、13…ハウジング、14…マスタシリンダ、14A…マスタピストン、K…隔壁、BP…ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)、PR…プッシュロッド、H…取付部、B…スタッドボルト、C…コネクタ、J1…(電気モータの)軸線、J2…(シリンダの)軸線、S…ブレーキシステム、U1…上流ユニット、U2…下流ユニット、U2A…第一系統、U2B…第二系統、SS…ストロークシミュレータ、W…ホイルシリンダ、R…リザーバ、T1…液路、T2…液路、T3…連通路、T41,T42…ブレーキ液供給路、V1…連通制御弁、V2…マスタカット弁、V3…シミュレータカット弁
図1
図2
図3
図4
図5