(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056269
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】測定方法、測定プログラム及び測定装置
(51)【国際特許分類】
F01M 11/10 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
F01M11/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164193
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】593035571
【氏名又は名称】日本油化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 哲也
(72)【発明者】
【氏名】竹田 充志
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015EA29
3G015FC10
(57)【要約】
【課題】
車両用エンジンオイルの交換が必要であるか否かを簡便に判断することができるエンジンオイルの劣化度の測定方法、測定プログラム及び測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下する工程と、滴下した車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材を撮像する工程と、画像を解析することで車両用エンジンオイルの劣化度を測定する機能を実行することが可能なコンピュータ装置により、撮像した画像について車両用エンジンオイルの劣化度を測定する測定工程とを有する、測定方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下する工程と、
滴下した車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材を撮像する工程と、
画像を解析することで車両用エンジンオイルの劣化度を測定する機能を実行することが可能なコンピュータ装置により、撮像した画像について車両用エンジンオイルの劣化度を測定する測定工程と
を有する、測定方法。
【請求項2】
ペーパークロマトグラフ材がろ紙である、請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
画像を解析することで車両用エンジンオイルの劣化度を測定することができるプログラムであって、
コンピュータ装置を、
車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材の画像データをもとに、ペーパークロマトグラフ材に分散した車両用エンジンオイルの外輪を特定する外輪特定手段と、
前記画像データをもとに、前記外輪の内側に存在する、ペーパークロマトグラフ材に分散した車両用エンジンオイルの内輪を特定する内輪特定手段と、
特定した外輪の輝度、及び、特定した内輪の輝度をもとに、車両用エンジンオイルの劣化度を算出する劣化度算出手段
として機能させる、測定プログラム。
【請求項4】
画像を解析することで車両用エンジンオイルの劣化度を測定することができる測定装置であって、
車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材の画像データをもとに、ペーパークロマトグラフ材に分散した車両用エンジンオイルの外輪を特定する外輪特定手段と、
前記画像データをもとに、前記外輪の内側に存在する、ペーパークロマトグラフ材に分散した車両用エンジンオイルの内輪を特定する内輪特定手段と、
特定した外輪の輝度、及び、特定した内輪の輝度をもとに、車両用エンジンオイルの劣化度を算出する劣化度算出手段と
を有する、測定装置。
【請求項5】
車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下する工程と、
滴下した車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材を撮像する工程と、
請求項4に記載の測定装置により、撮像した画像について車両用エンジンオイルの劣化度を測定する測定工程と
を有する、測定方法。
【請求項6】
車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下する工程と、
滴下した車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材をもとに、車両用エンジンオイルの劣化度を測定する測定工程と
を有する、測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エンジンオイルの劣化度を測定する測定方法、測定プログラム及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用エンジンについて、機械部品の摩耗を防ぐためにエンジンオイルが利用される。車両に使用されたエンジンオイルは、オイル成分が酸化し、或いは、添加物が減耗するなどの理由により劣化が進むものであり、走行距離や使用期間等に応じて交換することが必要である。
【0003】
しかし、多くの場合、交換が必要であるか否かの判断は、客観的な指標もなくユーザ等の主観に委ねられており、適切に交換が行われないことがある。具体的には、まだ劣化しておらず、十分に使用が可能であるにもかかわらず、不必要に交換をしてしまう、或いは、交換が必要な時期が過ぎているにもかかわらず、劣化したエンジンオイルの使用を続けてしまう、という問題がある。劣化したエンジンオイルを継続して使用していると、エンジントラブルに発展する可能性がある。
【0004】
このような問題を解決するために、使用中のエンジオイルの交換時期を判定する方法が種々開発されているが(例えば、特許文献1参照)、簡便に、エンジンオイルの交換が必要であるか否かを判断する方法は、存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために、なされたものである。すなわち、本発明は、車両用エンジンオイルの交換が必要であるか否かを簡便に判断することができるエンジンオイルの劣化度の測定方法、測定プログラム及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記目的は、
[1]車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下する工程と、滴下した車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材を撮像する工程と、画像を解析することで車両用エンジンオイルの劣化度を測定する機能を実行することが可能なコンピュータ装置により、撮像した画像について車両用エンジンオイルの劣化度を測定する測定工程とを有する、測定方法;
[2]ペーパークロマトグラフ材がろ紙である、前記[1]に記載の測定方法;
[3]画像を解析することで車両用エンジンオイルの劣化度を測定することができるプログラムであって、コンピュータ装置を、車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材の画像データをもとに、ペーパークロマトグラフ材に分散した車両用エンジンオイルの外輪を特定する外輪特定手段と、前記画像データをもとに、前記外輪の内側に存在する、ペーパークロマトグラフ材に分散した車両用エンジンオイルの内輪を特定する内輪特定手段と、外輪の輝度及び内輪の輝度をもとに、車両用エンジンオイルの劣化度を算出する劣化度算出手段として機能させる、測定プログラム;
[4]画像を解析することで車両用エンジンオイルの劣化度を測定することができる測定装置であって、車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材の画像データをもとに、ペーパークロマトグラフ材に分散した車両用エンジンオイルの外輪を特定する外輪特定手段と、前記画像データをもとに、前記外輪の内側に存在する、ペーパークロマトグラフ材に分散した車両用エンジンオイルの内輪を特定する内輪特定手段と、外輪の輝度及び内輪の輝度をもとに、車両用エンジンオイルの劣化度を算出する劣化度算出手段とを有する、測定装置;
[5]車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下する工程と、滴下した車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材を撮像する工程と、前記[4]に記載の測定装置により、撮像した画像について車両用エンジンオイルの劣化度を測定する測定工程とを有する、測定方法;
[6]車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下する工程と、滴下した車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材をもとに、車両用エンジンオイルの劣化度を測定する測定工程とを有する、測定方法;
により達成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両用エンジンオイルの交換が必要であるか否かを簡便に判断することができるエンジンオイルの劣化度の測定方法、測定プログラム及び測定装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態において、車両用エンジンオイルがペーパークロマトグラフ材に分散した状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態にかかるユーザ端末の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる画像解析処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明をするが、本発明の趣旨に反しない限り、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0011】
(第一の実施の形態)
本発明の測定方法は、車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下し、滴下した車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材を撮像して、得られた画像を解析することにより行われる。
【0012】
ペーパークロマトグラフ材とは、吸油性を有し、車両用エンジンオイルを滴下した際に、時間の経過とともに、車両用エンジンオイルの各成分が滴下した点から分散することを確認することができるものであれば、特に限定されない。ペーパークロマトグラフ材は、白色又は白色に近いものであることが好ましい。ペーパークロマトグラフ材としては、例えば、ろ紙があげられる。ろ紙の形状は特に限定されないが、例えば、シート状で、平面が円形のものを用いることができる。
【0013】
また、測定の対象となる車両用エンジンオイルも特に限定されない。車両用エンジンオイルのベースオイルとしては特に限定されないが、例えば、鉱物油系オイル、合成油系オイルなどを用いることができる。また、車両用エンジンオイルの添加剤としては、酸化防止剤、摩耗防止剤、防錆剤、清浄分散剤、消泡剤などが含まれていてもよい。
【0014】
車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下する際の環境としては、常温、常圧であることが好ましい。また、車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下した後、カメラ機能により撮像するまでの時間は、適宜設定することができる。複数の異なる車両用エンジンオイルについて比較検討をし、または、車両用エンジンオイルの経時的な劣化を観察するには、車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下した後に撮像するまでの時間は、いずれの車両用エンジンオイルについても所定の時間に固定をして測定をすることが好ましい。車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下した後に撮像するまでの時間は、例えば、3分以上であることが好ましく、5分以下であることが好ましい。
【0015】
車両用エンジンオイルのペーパークロマトグラフ材への滴下量は特に限定されない。車両用エンジンオイルの滴下量は0.5ml以上であることが好ましい。また、該滴下量は2ml以下であることが好ましい。複数の異なる車両用エンジンオイルについて比較検討をし、または、車両用エンジンオイルの経時的な劣化を観察するには、車両用エンジンオイルの滴下量は、いずれの車両用エンジンオイルに測定する場合でも、所定の滴下量に固定をして測定をすることが好ましい。
【0016】
車両用エンジンオイルの滴下は、ろ紙の平面が、水平面に平行となるように設置した状態で行われる。また、車両用エンジンオイルを滴下した後、撮像が行われるまでの間、ろ紙の平面が、水平面に平行である状態を維持する。
【0017】
次に、滴下された車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材について説明をする。
図1は、本発明の実施の形態において、車両用エンジンオイルがペーパークロマトグラフ材に分散した状態を示す図である。
図1(a)は、最も劣化していない車両用エンジンオイルが分散した状態を表すもので、
図1(b)、
図1(c)、
図1(d)、
図1(e)、
図1(f)となるにつれ、劣化が進んだ車両用エンジンオイルが分散したものとなる。
図1(f)は、最も劣化が進んだ車両用エンジンオイルが分散した状態を表す。
【0018】
図1(a)では、白色のろ紙21内に、例えば、赤褐色の車両用エンジンオイル22が円形状で拡がっている。車両用エンジンオイル22が広がることで形成される円は、必ずしも真円ではなく、目視にて円形であることが確認できる程度のものである。車両用エンジンオイル22は均一に分散しており、円内で色の大きな違いは見られない。
【0019】
図1(b)では、白色のろ紙21内に、赤褐色の車両用エンジンオイル22が円形状で拡がっている。車両用エンジンオイル22はほぼ均一に分散しているが、白色のろ紙21との境界線である外輪23の内側に、不完全な内輪24aが発生している。
【0020】
図1(c)では、白色のろ紙21内に、赤褐色の車両用エンジンオイル22が円形状で拡がっている。車両用エンジンオイル22はほぼ均一に分散しているが、白色のろ紙21との境界線である外輪23の内側に、完全な内輪24bが発生している。外輪23内においては、内輪24bの内側と外側で、色の大きな違いは見られない。
【0021】
図1(d)では、白色のろ紙21内に、赤褐色の車両用エンジンオイル22が円形状で拡がっている。外輪23の内側に、完全な内輪24bが発生しており、内輪24bの内側は、その外側と比べて、より濃い色を呈している。また、内輪24bの内側の色は不均一であり、より中央部分になるほど、色が薄くなる傾向にある。
【0022】
図1(e)では、白色のろ紙21内に、赤褐色の車両用エンジンオイル22が円形状で拡がっている。外輪23の内側に、完全な内輪24bが発生しており、内輪24bの内側は、その外側と比べて、より濃い色を呈している。また、内輪24bの内側の色は不均一である。
図1(e)では、
図1(d)と比べて、内輪24bの内側における濃い色を呈している面積が大きくなっている。
【0023】
図1(f)では、白色のろ紙21内に、赤褐色の車両用エンジンオイル22が円形状で拡がっている。外輪23の内側に、完全な内輪24bが発生しており、内輪24bの内側は、その外側と比べて、より濃い色を呈している。また、内輪24bの内側の色は均一である。
図1(f)では、
図1(e)と比べて、内輪24bの内側における濃い色を呈している面積が大きくなっている。また、内輪24bの内側は、高さ方向に盛り上がっている。
【0024】
なお、ここでは、車両用エンジンオイルの劣化の度合いを6段階で評価しているが、6段階である必要はなく、複数の段階に適宜設計することができる。
【0025】
次に、車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材の画像の解析について説明をする。
図2は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、ユーザ端末の構成を示すブロック図である。ユーザ端末1を操作するユーザとしては、例えば、測定の対象である車両用エンジンオイルを使用している車両の所有者があげられるが、所有者とは異なる第三者であってもよい。ユーザ端末1は、制御部11、RAM12、表示部13、ストレージ部14、センサ部15、通信インタフェース16、撮像部17、及びレンズ18を少なくとも備え、それぞれ内部バスにより接続されている。ユーザ端末1は、通信インタフェース16により通信ネットワークと接続している。
【0026】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)を含み、ストレージ部14等の記憶装置に格納されたプログラムやデータを参照し、実行する。また、制御部11は計時機能を有する。RAM12は、制御部11のワークエリアである。
【0027】
表示部13は、情報を表示する表示画面13aを有する。また、表示部13の上面にはタッチ入力部13bが設けられている。スタイラスや指等でタッチ入力部13bを押圧する、あるいはタッチ入力部13b上でスタイラス等を移動させることで、その座標位置の変化等を検出するものである。
【0028】
ストレージ部14は、プログラムやデータを保存するための記憶領域として用いられるものである。
【0029】
センサ部15は各種センサを備えている。各種センサとは、指紋認証センサ、近接センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、磁力センサ、又は、輝度センサ等のセンサを指すが、これに限られるものではなく、GPSセンサや、気圧センサ等を含むものであってもよい。
【0030】
表示部13に備えられたタッチ入力部13b又はセンサ部15に対するユーザによる操作は、入力情報としてRAM12に格納される。制御部11は入力情報をもとに各種の演算処理を実行する。
【0031】
撮像部17は、レンズ18を介して撮影した画像を表示部13へ出力する。出力された画像は、ストレージ部14に記憶することができるが、通信ネットワークを介して、他のコンピュータ装置へ送信することもできる。
【0032】
図3は、本発明の実施の形態にかかる画像解析処理のフローチャートを示す図である。まず、車両用エンジンオイルを滴下してから所定の時間が経過したペーパークロマトグラフ材を撮像する(ステップS1)。撮像は、コンピュータ装置が有する撮像部17により実行される。例えば、スマートフォンやタブレット端末のカメラ機能などを有効に活用することができる。
【0033】
解析の対象となる画像データは、コンピュータ装置が有する撮像部17で撮像されたものだけでなく、他の装置で撮像したものを活用することもできる。例えば、デジタルカメラ等で撮像した画像データを、記憶媒体から読み込む、又は、他の携帯型の端末で撮像した画像データを、通信により受信する等をして、解析の対象とすることができる。
【0034】
次に、撮像された画像データを白黒画像に変換する(ステップS2)。変換された白黒画像の画素情報は、0~255の256段階の輝度で表すことができる。輝度が「0」の場合は「黒」である。輝度の数値が大きくなるほど明るくなり、輝度が「255」の場合は「白」である。
【0035】
白黒画像から輪郭を抽出するために二値化処理を行い(ステップS3)、外輪23を特定する(ステップS4)。二値化は、白黒の画像データの各画素について、輝度が閾値より小さい場合、画素情報を「0」、つまり輝度を「0」とし、輝度が閾値より大きい場合、画素情報を「255」、つまり輝度を「255」とする。閾値は、0~255の間の数値を任意に定めることができるが、判別分析法(discriminant analysis method、いわゆる大津方式)により求めることができる。判別分析法は、クラス内分散に対するクラス間分散の比から求められる分離度が最大となる閾値を求める方法である。二値化処理を行うことで、車両用エンジンオイルが分散することで形成される外輪23の輪郭を特定することができる。
【0036】
白黒画像について、ステップS5~S7までの処理を、閾値を「0」からステップS3にて用いた閾値の値となるまで(例えば、前記判別分析法により求めた値となるまで)、繰り返し実行する。ステップS5では、それぞれの閾値にて二値化処理を行い、ステップS6では、それぞれの閾値における輪郭を抽出する。次に、抽出された輪郭のうち、ステップS4にて特定された外輪23と所定の関係にある輪郭を特定する(ステップS7)。ステップS7において、複数の輪郭が特定される場合は、その中でも最大の面積を有する輪郭を特定する。なお、ステップS7における所定の関係にある輪郭とは、外輪23の面積に対して所定の大きさの面積を有する輪郭をいう。例えば、外輪23と等価円の半径をRと定義すると、輪郭の面積Sが以下の式:
π×(α×R)2≦S≦π×(β×R)2
を満たす場合に、所定の関係にあると定義することができる。なお、ここで、αとβは、0<α<β<1を満たす係数である。
【0037】
ステップS5~S7を、閾値の値を変化させて繰り返し実行することで、複数の内輪候補となる輪郭が特定される。これらの内輪候補となる輪郭のうち、最も真円度の高い輪郭を内輪24として特定する(ステップS8)。
【0038】
次に、白黒画像における、外輪23の内側で、且つ、内輪24の外側の輝度に関する情報(例えば、平均の輝度OM)を特定し(ステップS9)、白黒画像における、内輪24の内側の輝度に関する情報(例えば、平均の輝度IM)を特定する(ステップS10)。そして、ステップS9にて特定した外輪23の内側の輝度OMと、ステップS10にて特定した内輪24の内側の輝度IMから、評価値を求める(ステップS11)。評価値は、例えば、以下の式:
評価値=(1-IM/OM)×10
により算出することができる。評価値は、0~10までの値をとることができ、値が大きくなるほど、車両用エンジンオイルの劣化度が大きいことを表す。なお、算出した評価値は、外輪又は内輪の真円度に応じて、補正をすることも可能である。
【0039】
算出された評価値は、表示画面13aに表示される(ステップS12)。ステップS1~S12により一連の処理は、終了する。例えば、車両用エンジンオイルの交換に必要な閾値をあらかじめ定めておき、使用中の車両用エンジンオイルの評価値が、閾値よりも大きい場合に、新しい車両用エンジンオイルと交換をすることができる。
【0040】
(第二の実施の形態)
第二の実施の形態では、車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下し、滴下した車両用エンジンオイルが分散したペーパークロマトグラフ材を目視により確認することで、車両用エンジンオイルの劣化度を測定することができる。
【0041】
測定に用いられるペーパークロマトグラフ材、測定の対象となる車両用エンジンオイル、車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下する際の環境、車両用エンジンオイルの滴下量、滴下方法は、第一の実施の形態で説明したものと同様とすることができる。また、車両用エンジンオイルをペーパークロマトグラフ材に滴下した後に、視認で確認するまでの時間は、例えば、3分以上であることが好ましく、5分以下であることが好ましい。
【0042】
なお、上の実施の形態では、本発明の測定方法は、車両用エンジンオイルに用いられることを説明したが、他の用途のオイルの測定に用いることも可能である。
【実施例0043】
常温、常圧の状況下において、シリンジを用いて、1mlの自動車用エンジンオイル(コスモ石油株式会社製、商品名:コスモエコロード0W-20)を、ろ紙(東洋濾紙株式会社製、商品名:定量濾紙 No.5B、径:55mm)に滴下し、3分間放置した。ろ紙に滴下された自動車用エンジンオイルは、ろ紙に滴下した点を中心に、おおよそ円形状に分散した。自動車用エンジンオイルとしては、その自動車エンジンオイルを使用してからの自動車の走行距離が2177km、3483km、7207kmのものをそれぞれ用いた。それぞれの自動車用エンジンオイルを滴下したろ紙について、
図2の構成を有し、且つ、
図3に示すフローチャートで画像解析処理を実行するコンピュータ装置にて、測定を行ったところ、自動車の走行距離が2177kmのものは評価「1.3」、自動車の走行距離が3483kmのものは評価「2.1」、自動車の走行距離が7207kmのものは評価「3.4」となった。