(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056272
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】乗物用キャビン及び乗物用放射線防護キャビン
(51)【国際特許分類】
G21F 7/00 20060101AFI20220401BHJP
G21F 1/06 20060101ALI20220401BHJP
G21F 3/00 20060101ALI20220401BHJP
G21F 1/10 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
G21F7/00 Z
G21F1/06
G21F3/00 G
G21F1/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164197
(22)【出願日】2020-09-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】520380060
【氏名又は名称】松村重機建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100199451
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 隆滋
(72)【発明者】
【氏名】松村 芳紀
(72)【発明者】
【氏名】林 泰志
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、製造コストや既存の乗物の改造コストの低減を図りつつも、乗物の作業性や安全性を確保した放射線を遮蔽する乗物用キャビン、およびこれを用いた乗物を提供することである。
【解決手段】乗物用キャビン10は、フロントガラス20を有している。フロントガラス20の内側に放射線遮蔽ガラス11が設けられている。放射線遮蔽ガラス11は、フロントガラス20の内側に設けられた内側窓枠30によって取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラスを有する乗物用キャビンであって、
前記フロントガラスの内側に放射線遮蔽ガラスが設けられている、乗物用キャビン。
【請求項2】
前記フロントガラスの内側に枠部材が設けられ、該枠部材に前記放射線遮蔽ガラスが取り付けられる、請求項1に記載の乗物用キャビン。
【請求項3】
左側ガラス、右側ガラス、及び天井ガラスを有し、
前記左側ガラス、前記右側ガラス、及び前記天井ガラスの外側に放射線遮蔽ガラスが設けられている、請求項1または請求項2に記載の乗物用キャビン。
【請求項4】
乗降口に放射線遮蔽カーテンが設けられる、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の乗物用キャビン。
【請求項5】
前記放射線遮蔽カーテンは、複数枚の短冊状の放射線を遮蔽するゴムシートが連結されてなる、請求項4に記載の乗物用キャビン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用キャビン及び乗物用放射線防護キャビンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力関連施設で事故が発生した際、作業者や人員の安全性を確保することを目的とした放射線を遮蔽する車両用のキャビンが開発されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-253811号公報
【特許文献2】特許第4268162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示す車両のキャビンは、放射線遮蔽部材を用いてキャビンを構成するため、製造コストや既存車両の改造コストが大きくなるという問題がある。また、地表からの放射線を防護することはできても、地表以外の方向から進入してくる放射線を防護することができないという問題がある。
また、特許文献2に示す車両用放射線防護装置は、車体のガラス部の外側を全面的に吸盤やマグネット部材を用いて鉛ガラス等を取り付ける構成であるため、雨風時における車体の作業性や安全性に問題がある
【0005】
本発明の目的は、このようなことに鑑みてなされたものであり、製造コストや既存の乗物の改造コストの低減を図りつつも、乗物の作業性や安全性を確保した放射線を遮蔽する乗物用キャビン、およびこれを用いた乗物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、
フロントガラス(20)を有する乗物用キャビン(10)であって、
前記フロントガラスの内側に放射線遮蔽ガラス(11)が設けられている、乗物用キャビン(10)
によって達成される。
【0007】
また、上記目的は、
前記フロントガラス(20)の内側に枠部材(30)が設けられ、該枠部材に前記放射線遮蔽ガラス(11)が取り付けられる、上記の乗物用キャビン(10)
によっても達成される。
【0008】
また、上記目的は、
左側ガラス、右側ガラス(22a~c)、及び天井ガラス(23)を有し、
前記左側ガラス、前記右側ガラス、及び前記天井ガラスの外側に放射線遮蔽ガラス(21a~c、24)が設けられている、上記の乗物用キャビン(10)
によっても達成される。
【0009】
また、上記目的は、
乗降口に放射線遮蔽カーテン(100)が設けられる、上記の乗物用キャビン(10)
によっても達成される。
【0010】
また、上記目的は、
前記放射線遮蔽カーテンは、複数枚の短冊状の放射線を遮蔽するゴムシート(102)が連結されてなる、上記の乗物用キャビン
によっても達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造コストや既存の乗物の改造コストの低減を図りつつも、乗物の作業性や安全性を確保した放射線を遮蔽する乗物用キャビン、およびこれを用いた乗物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態によるキャビン10の略示正面図である。
【
図2】本発明の実施形態によるキャビン10を用いたクレーン車1の略示右側面図である。
【
図3】本発明の実施形態によるキャビン10に用いられる放射線遮蔽カーテン100が開いた状態の正面図である。
【
図4】本発明の実施形態によるキャビン10に用いられる放射線遮蔽カーテン100が閉じた状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図4を用いて、本発明の実施形態によるキャビン10を説明する。なお、以下の全ての図面においては、理解を容易にするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせて図示している。
【0014】
図1は、本発明の実施形態によるキャビン10の略示正面図であり、
図2は、本実施形態のキャビン10をクレーン車1に用いた実施例を示している。
図2に示すように、キャビン10は、クレーン車のキャビンとして用いるのが好適であるが、例えば、普通自動車、トラック、タンクローリー、ダンプ車、コンクリートミキサー車、ショベル車、ブルドーザー、ホイールローダー車、ロードカッター車等の様々な乗物に対しても好適である。また、キャビン10は、船舶、飛行機の他、装甲車、戦車等においても用いることが可能であり、原子力施設で使用される特殊車両において特に有用である。
【0015】
図1及び
図2に示すように、キャビン10は、フロントボディ40、右サイドボディ50、左サイドボディ、ルーフボディ60、バックボディ80、ボトムボディ90で構成されたキャビンである。フロントボディ40には開口部が設けられこの開口部にフロントガラス20が取り付けられる。フロントガラス20の内側には、枠状の内側窓枠30が設けられ、内側窓枠30に放射線遮蔽ガラス11が取り付けられる。右サイドボディ50には3つの開口部が設けられ、一つの開口部にスライドドア51が取り付けられ、他の二つの開口部に、右サイドガラス22a、22cがそれぞれ取り付けられる。左サイドボディには、開口部が設けられ、この開口部に引き違いの窓ガラス(不図示)が取り付けられる。この引き違いの窓ガラスの前方窓ガラスの外側と後方窓ガラスの内側のそれぞれに放射線遮蔽ガラス(不図示)が透明な接着剤を用いて貼着される。スライドドア51に開口部が設けられこの開口部に右サイドガラス22bが取り付けられる。右サイドガラス22a、22b、22cの外側に放射線遮蔽ガラス21a、21b、21cが透明な接着剤を用いて貼着される。ルーフボディ60には開口部が設けられこの開口部にルーフガラス24が取り付けられ、ルーフガラス24の外側に放射線遮蔽ガラス23が透明な接着剤を用いて貼着される。放射線遮蔽ガラス11、21a~21c、23は、ガラスの主成分に酸化鉛を添加して製造されるガラスであり、鉛含有率が通常のガラスよりも高くなるように構成される。また、酸化鉛に加えて、酸化バリウムも添加するのも好適である。また、放射線遮蔽ガラス11の鉛当料は、2.0mmpb以上が好ましいが、2.0mmpbよりも小さい場合があってもよい。また、放射線遮蔽ガラス11は、鉛を含有しない場合、例えば、ストロンチウムやバリウムなどが含有される場合があってもよいし、これら以外のものが用いられる場合があってもよい。
【0016】
ボンネット41の裏側に放射線遮蔽ゴムシートの塗布加工を行う。また、
図2に示すように、キャビン10の乗降口、右後ろ、及び後部(不図示)に放射線遮蔽カーテン100、150が設けられる。放射線遮蔽カーテン100、150は、複数枚の短冊状の放射線遮蔽ゴムシートを連結することで構成される。放射線遮蔽ゴムシートには、中性子遮蔽材やγ線遮蔽材の両方、またはいずれか一方が用いられる。中性子遮蔽材としては、樹脂にガドリニウムやホウ素やカドミウムを添加したものが好適であるがこれら以外の材料が添加される場合があってもよい。γ線遮蔽材としては、樹脂に鉛やタングステンやストロンチウムやバリウムを添加したものが好適であるがこれら以外の材料が添加される場合があってもよい。本実施形態では、放射線遮蔽ゴムシートとして樹脂に硫酸バリウムを配合したゴムシートが用いられる。また、放射線遮蔽ゴムシートの鉛当料は、0.39mmpb以上が好ましいが、0.39mmpbよりも小さい場合があってもよい。
【0017】
図3は、放射線遮蔽カーテン100が開いた状態の正面図であり、
図4は、放射線遮蔽カーテン100が閉じた状態の正面図である。放射線遮蔽カーテン100は、カーテンレール101、複数枚の短冊状の放射線遮蔽シート102、カーテンレール101のレールを移動可能な取付具120、放射線遮蔽シート102同士を連結させるヒンジ100~112で構成される。
図3に示すように、ヒンジ100~112を配設することで、複数枚の放射線遮蔽シート102を蛇腹状にコンパクトに折りたたむことが可能となる。
【0018】
このように、本実施形態によるキャビン10は、フロントガラス20の内側に放射線遮蔽ガラス11を貼着する構成であるため、ワイパー装置の改造が不要となる。また、放射線遮蔽ガラス11が外部に露出しないため、雨風によって放射線遮蔽ガラス11が破損したりする危険性も排除されるため、雨風時における乗物の作業性や安全性が確保される。
【0019】
また、本実施形態によるキャビン10は、フロントガラス以外のガラスにおいては、ガラスの外側に放射線遮蔽ガラスを接着剤で貼着する構成であるため、放射線遮蔽ガラスの取り付けコストを低くすることが可能であり、特に既存のキャビンを改造する上で有用である。なお、放射線遮蔽カーテンが取り付けられた位置にある右サイドガラス22b、22cの外側に放射線遮蔽ガラスを貼着しない場合があってもよい。
【0020】
また、本実施形態によるキャビン10は、乗降口等に放射線遮蔽カーテン100を設ける構成であるため、作業員の乗降がスムーズに行われることと作業員の作業時の被爆の低減が実現可能となる。また、放射線遮蔽カーテン100は容易に開閉可能な構成であるため、作業時における視認性の確保も容易に行うことが可能である。
【0021】
また、フロントガラス20や右サイドガラス22a~22cや左サイドガラス(不図示)やルーフガラス24や放射線遮蔽ガラス11、21a~21c、23に、放射線遮蔽ゴムをストライプ状に貼り付ける場合があってもよい。放射線遮蔽ゴムをストライプ状に配置することで、視認性を確保しつつも放射線の遮蔽性をさらに上げることが可能となる。
【0022】
上述の実施形態は、本発明の好適な一例であるので、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上述の説明によって不当に限定されるものではない。また、上述の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須の構成要件ではない。また、上述の実施形態で説明される構成は相互に付け足したり組み合わせたりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、乗物用のキャビンにおいて広く利用可能であり、特に、原子力関連施設において使用される特殊車両のキャビンにおいて広く利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 クレーン車
10 キャビン
11、21a~21c、23 放射線遮蔽ガラス
20 フロントガラス
22a~22c 右サイドガラス
24 ルーフガラス
30 内側窓枠
40 フロントボディ
41 ボンネット
50 右サイドボディ
51 スライドドア
70 ルーフボディ
80 バックボディ
90 ボトムボディ
100、150 放射線遮蔽カーテン
【手続補正書】
【提出日】2020-11-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラス、左側ガラス、右側ガラス、及び天井ガラスを有する乗物用キャビンであって、
前記フロントガラスの内側に放射線遮蔽ガラスが設けられ、
前記フロントガラスの内側に枠部材が設けられ、該枠部材に前記放射線遮蔽ガラスが取
り付けられ、
前記左側ガラス、前記右側ガラス、及び前記天井ガラスの外側に放射線遮蔽ガラスが設
けられている、乗物用キャビン。
【請求項2】
乗降口に放射線遮蔽カーテンが設けられる、請求項1に記載の乗物用キャビン。
【請求項3】
前記放射線遮蔽カーテンは、複数枚の短冊状の放射線を遮蔽するゴムシートが連結され
てなる、請求項2に記載の乗物用キャビン。