(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056285
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】蓋材
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
B65D77/20 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020174259
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000109037
【氏名又は名称】ダイニック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上野 健太
(72)【発明者】
【氏名】三澤 真二
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA01
3E067AA11
3E067AB01
3E067BA01
3E067BA24
3E067BB11
3E067BB14
3E067BB25
3E067BC07
3E067CA24
3E067EA06
3E067EA32
3E067EB27
3E067EE02
3E067GD07
(57)【要約】
【課題】本発明はこの様な状況に鑑みてなされたものであり、少なくともいずれか一層のバイオマス度が10%以上であっても、デラミネーションが発生せず、さらにプラスチック製容器に対しての適切なヒートシール強度を有している蓋材を提供する。
【解決手段】
少なくとも表面保護層7、印刷層6、基材層2、アンカーコート層3、応力緩和層4、ヒートシール層5がこの順に積層されてなり、少なくともいずれか一層が植物由来原料を含有し且つ植物由来原料を含有した層のバイオマス度が10%以上であって、以下の熱板加熱によるヒートシール強度評価試験を行った場合に、ヒートシール強度が5N/15mm巾以上30N/15mm巾以下である蓋材1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面保護層、印刷層、基材層、アンカーコート層、応力緩和層、ヒートシール層がこの順に積層されてなり、少なくともいずれか一層が植物由来原料を含有し且つ植物由来原料を含有した層のバイオマス度が10%以上であって、
以下の熱板加熱によるヒートシール強度評価試験を行った場合に、ヒートシール強度が5N/15mm巾以上30N/15mm巾以下である蓋材。
<熱板加熱によるヒートシール強度評価試験>
長さ100mm、幅15mmの短冊に切り出した試験片の一方の端部20mmをポリスチレンプレートに対して、ヒートシール温度160℃、ヒートシール時間1秒、ヒートシール圧力0.15MPaの条件で熱板加熱によるヒートシールを行なった後、ポリスチレンプレートと、ポリスチレンプレートに端部がヒートシールされた試験片の他端部とを引張試験機にセットし、剥離速度300mm/分で180°で剥離試験を行ってヒートシール強度を測定する。
【請求項2】
応力緩和層が密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来ポリエチレンを含有した層を含む一層以上の層から構成され且つ応力緩和層のバイオマス度が10%以上である請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
植物由来ポリエチレンが植物由来低密度ポリエチレンである請求項2に記載の蓋材。
【請求項4】
応力緩和層がアンカーコート層側から密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来低密度ポリエチレンを含有した第1応力緩和層と石油由来低密度ポリエチレンを含有した第2応力緩和層とが順次積層されてなる請求項3に記載の蓋材。
【請求項5】
応力緩和層がアンカーコート層側から石油由来低密度ポリエチレンを含有した第1応力緩和層と密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来低密度ポリエチレンを含有した第2応力緩和層とが順次積層されてなる請求項3に記載の蓋材。
【請求項6】
応力緩和層がアンカーコート層側から密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来低密度ポリエチレンを含有した第1応力緩和層と密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来低密度ポリエチレンを含有した第2応力緩和層とが順次積層されてなる請求項3に記載の蓋材。
【請求項7】
第1応力緩和層が含有している低密度ポリエチレンの密度よりも第2応力緩和層が含有している低密度ポリエチレンの密度の方が高い請求項4~6のいずれかに記載の蓋材。
【請求項8】
応力緩和層がアンカーコート層側から密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来低密度ポリエチレンを含有した第1応力緩和層と、密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来直鎖状低密度ポリエチレンを含有した第2応力緩和層とが順次積層されてなる請求項3に記載の蓋材。
【請求項9】
応力緩和層がアンカーコート層側から密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来低密度ポリエチレンを含有した第1応力緩和層と、石油由来直鎖状低密度ポリエチレンを含有した第2応力緩和層とが順次積層されてなる請求項3に記載の蓋材。
【請求項10】
植物由来ポリエチレンが植物由来直鎖状低密度ポリエチレンである請求項2に記載の蓋材。
【請求項11】
応力緩和層がアンカーコート層側から石油由来低密度ポリエチレンを含有した第1応力緩和層と、密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来直鎖状低密度ポリエチレンを含有した第2応力緩和層とが順次積層されてなる請求項10に記載の蓋材。
【請求項12】
ヒートシール層が少なくとも植物由来原料を含有し且つヒートシール層のバイオマス度が10%以上50%以下の範囲である請求項1~11のいずれかに記載の蓋材。
【請求項13】
ヒートシール層がホットメルト接着剤層からなり、さらにホットメルト接着剤層が植物由来原料としてロジン系粘着付与樹脂及びテルペン系粘着付与樹脂のうち少なくとも一方を含有する請求項12に記載の蓋材。
【請求項14】
ヒートシール層がシーラント層からなり、さらにシーラント層が密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来低密度ポリエチレンを含有した層を含む一層以上の層から構成されている請求項12に記載の蓋材。
【請求項15】
ヒートシール層がシーラント層からなり、さらにシーラント層が密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来直鎖状低密度ポリエチレンを含有した層を含む一層以上の層から構成されている請求項12に記載の蓋材。
【請求項16】
印刷層が少なくとも植物由来原料を含有し且つ印刷層のバイオマス度が10%以上である請求項1~15のいずれかに記載の蓋材。
【請求項17】
表面保護層が少なくとも植物由来原料を含有し且つ表面保護層のバイオマス度が10%以上である請求項1~16のいずれかに記載の蓋材。
【請求項18】
植物由来原料がセルロース系樹脂である請求項16又は請求項17に記載の蓋材。
【請求項19】
基材層が少なくとも植物由来原料を含有し且つ基材層のバイオマス度が10%以上である請求項1~18のいずれかに記載の蓋材。
【請求項20】
基材層が金属薄膜からなる請求項1~18のいずれかに記載の蓋材。
【請求項21】
蓋材全体のバイオマス度が10%以上である請求項1~20のいずれかに記載の蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨーグルト、乳酸菌飲料などの液状・流動食品、小麦粉などの粉状食品、ハムやチーズなどの固形食品、各種医薬品等を収容するプラスチック製容器の開口部を、ヒートシールによって密封する為の蓋材であって、特に植物由来のバイオマスから作製された原料を使用した蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
温暖化対策の為の二酸化炭素排出量の削減や、資源循環型社会の構築などの観点から、近年バイオマスの活用が再度注目されており、特に買い物袋などに関しては政府主導で従来の石油由来原料の一部を植物由来のバイオマスから作製された原料である植物由来原料に置き換える取り組みが行われている。
【0003】
バイオマスの活用を推進する為の事業の一つとして、一般社団法人日本有機資源協会が運用するバイオマスマーク事業等が挙げられる。バイオマスマーク事業とは、バイオマスを利用して生産された商品にバイオマスマークを付すことにより、当該商品へのバイオマスの利用を消費者に情報提供し、これらの商品を普及させる事によりバイオマスの利用を促進して、自然の恵みで持続的に発展可能な社会構築に貢献する事を目的としており、現在少なくとも商品を構成する部材のバイオマス度が10%以上であれば、その商品にバイオマス度を記載したバイオマスマークを付すことが可能となっている。近年これらの取り組みと並行してバイオポリエチレンなどの安定供給が可能となった事などがきっかけとなり、現在様々な商品へのバイオマスマークの展開・普及が実現してきており、特に食品包装材を製造する各メーカー等は、食品包装材に使用している石油由来原料の一部を植物由来原料に置き換える検討を積極的に行っている(特許文献1)。
【0004】
この様な流れの中で、乳酸菌飲料やヨーグルトなどを収容するプラスチック製容器の開口部に使用する蓋材においても従来の石油由来原料から植物由来原料への置換えが検討され始めているが、不用意に石油由来原料と植物由来原料の置換えを行うと、蓋材にとっての必要な各種性能が悪化する恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこの様な状況に鑑みてなされたものであり、少なくともいずれか一層のバイオマス度が10%以上であっても、デラミネーションが発生せず、さらにプラスチック製容器に対しての適切なヒートシール強度を有している蓋材を提供する事が本発明の主たる課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの課題を解決する為に、本発明者が検討を行った結果、少なくとも表面保護層、印刷層、基材層、アンカーコート層、応力緩和層、ヒートシール層がこの順に積層されてなり、少なくともいずれか一層が植物由来原料を含有し且つ植物由来原料を含有した層のバイオマス度が10%以上であって、以下の熱板加熱によるヒートシール強度評価試験を行った場合に、ヒートシール強度が5N/15mm巾以上30N/15mm巾以下であれば、少なくともいずれか層のバイオマス度が10%以上であって、デラミネーションが発生せず、さらにプラスチック製容器に対しての適切なヒートシール強度を有する蓋材が得られる事が分かった。
<熱板加熱によるヒートシール強度評価試験>
長さ100mm、幅15mmの短冊に切り出した試験片の一方の端部20mmをポリスチレンプレートに対して、ヒートシール温度160℃、ヒートシール時間1秒、ヒートシール圧力0.15MPaの条件で熱板加熱によるヒートシールを行なった後、ポリスチレンプレートと、ポリスチレンプレートに端部がヒートシールされた試験片の他端部とを引張試験機にセットし、剥離速度300mm/分で180°で剥離試験を行ってヒートシール強度を測定する。
【0008】
さらに発明者が検討をした結果、応力緩和層が密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来のバイオマスから作製されたポリエチレン(植物由来ポリエチレン)を含有した層を含む一層以上の層から構成され且つ応力緩和層のバイオマス度が10%以上であれば、少なくとも応力緩和層のバイオマス度が10%以上であって、デラミネーションが発生せず、さらにプラスチック製容器に対しての適切なヒートシール強度を有する蓋材が得られる事が分かった。
【0009】
さらに発明者が検討をした結果、ヒートシール層が少なくとも植物由来のバイオマスから作製された原料(植物由来原料)を含有し且つヒートシール層のバイオマス度が10%以上50%以下の範囲であれば、少なくともヒートシール層のバイオマス度が10%以上であって、デラミネーションが発生せず、さらにプラスチック製容器に対しての適切なヒートシール強度を有する蓋材が得られる事が分かった。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蓋材を使用すれば、プラスチック製容器に対する適切なヒートシール強度を維持したままで、デラミネーションが発生せず、さらに少なくともいずれかの層のバイオマス度を10%以上にする事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の蓋材の実施形態の一例を示す模式的断面図。
【
図2】本発明の蓋材の実施形態の一例を示す模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における蓋材1は、基本的に
図1に示すように、少なくとも表面保護層7、印刷層6、基材層2、アンカーコート層3、応力緩和層4、ヒートシール層5がこの順に積層された構造をしている。この際、ヒートシール層5はホットメルト接着剤層であってもよいし、シーラント層であってもよい。また
図2に示すように応力緩和層4はアンカーコート層3に近い側から第1応力緩和層4a、第2応力緩和層4bのように2層からなっていてもよい。表面保護層7は、印刷層6を保護する為のニス層であってもよいし、印刷層6の保護と蓋材1の強度を向上させる為の表面保護フィルム層であってもいい。一般的な飲料用の蓋材として本発明の蓋材1を用いる場合には、ストローなどによって蓋材1を突き刺す必要がある事などから表面保護層7としてニス層を用いる事が多く、ヨーグルトなどの流動食品や固形食品などを容器内に密閉する用途に使用する蓋材に本発明の蓋材1を用いる場合には、蓋材の強度をより向上させる必要性がある為に表面保護層7として表面保護フィルム層を用いる事が多い。
【0013】
<<蓋材>>
本発明の蓋材は、プラスチック製容器の開口部を熱板加熱又は高周波誘導加熱によってヒートシールして、内容物を密閉する為の物である。本発明の蓋材が使用されるプラスチック製容器本体の構成材料としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド等の各種プラスチック、これらのプラスチックで金属薄膜や紙などをライニングした複合積層体等が挙げられるが特にこれらに限定はされないが、紙の表層をポリエチレンでライニングした複合積層体やポリスチレンを用いる事がより好ましい。
【0014】
本発明の蓋材は、熱板加熱によってプラスチック製容器の開口部をヒートシールする為には基材層の構成材料は特に限定されないが、高周波誘導加熱によってプラスチック製容器の開口部をヒートシールする為には基材層が少なくとも金属薄膜層を有している必要がある。高周波誘導加熱が可能であるのは、金属薄膜に高周波を印加すると金属薄膜に渦電流が流れ、その結果として金属薄膜がその抵抗分のジュール熱を発生するからである。
【0015】
本発明の蓋材は、熱板加熱又は高周波誘導加熱の少なくともいずれかの方法によってプラスチック製容器の開口部をヒートシールする事によって内容物をプラスチック製容器内に密閉し、内容物をプラスチック製容器から取り出す際には、主にプラスチック製容器の開口部から蓋材を剥がす事によって容器の開口部からの内容物の取り出しが可能となる。プラスチック製容器の開口部から蓋材を剥がす際には、蓋材のヒートシール層が多層の場合には主にヒートシール層のいずれかの層間において層間剥離もしくはいずれかの層内において凝集剥離が、蓋材のヒートシール層が単層の場合にはヒートシール層内での凝集剥離もしくはヒートシール層とプラスチック製容器の開口部との境界面において界面剥離が行われるが、その際の剥離に必要な力を本発明では蓋材のヒートシール強度と呼ぶ。蓋材のヒートシール強度は弱すぎると蓋材がプラスチック製容器の開口部から容易に取れてしまう事により内容物が漏れ出すといった問題が発生し易くなり、逆に蓋材のヒートシール強度が強すぎるとプラスチック製容器の開口部から蓋材を剥がそうとした時に非常に力が必要になって蓋材が剥がしにくくなったり、ヒートシール層と応力緩和層との層間や、応力緩和層とアンカーコート層との層間や、アンカーコート層と基材層との層間での本来望まない層間剥離(デラミネーション)が発生したりするといった問題が発生し易くなる。
【0016】
上述したような背景から、本発明の蓋材における適切な蓋材のヒートシール強度を発明者が検討した結果、蓋材を長さ100mm、幅15mmの短冊状に切り出して試験片を作製し、試験片の一方の端部20mmをポリスチレンプレートに対して、ヒートシール温度160℃、ヒートシール時間1秒、ヒートシール圧力0.15MPaの条件で熱板加熱によるヒートシールを行なった後、ポリスチレンプレートと、ポリスチレンプレートに端部がヒートシールされた試験片の他端部とを引張試験機にセットし、剥離速度300mm/分で180°で剥離試験を行ってヒートシール強度を測定した時に、蓋材のヒートシール強度が少なくとも5N/15mm巾以上30N/15mm巾以下である事が好ましく、10N/15mm巾以上25N/15mm巾以下である事がより好ましい事が分かった。発明者が検討した結果、蓋材のヒートシール強度が前記範囲内であれば、プラスチック製容器の開口部から蓋材が容易に剥がれる事もないし、蓋材を剥がす際に非常に大きな力が必要とはならず、さらに望まない層間剥離(デラミネーション)が発生する事もない事が分かった。
【0017】
本発明の蓋材は、基材層に金属薄膜を用いれば高周波誘導加熱によるヒートシールを行う事が可能であるが、熱板加熱によるヒートシールを行った際の蓋材のヒートシール強度が上述した範囲内であれば、高周波誘導加熱によるヒートシールを行った場合においても同様に適切な蓋材のヒートシール強度が得られる事が経験上分かっている。より具体的に説明すると、外径38mmの円状にカットして作製した蓋材の試験片を、開口部外径24mm、開口部内径20mmで瓶型の形状をした容積65mLのポリスチレン製容器に装着し、仕事率125W、ヒートシール圧力0.05MPa、ヒートシール時間1.4秒で高周波誘導加熱によるヒートシールを行った後、蓋材の端部を300mm/分の速度で蓋材をヒートシールした容器開口部に対して45°方向で剥離した時の剥離力を測定し、剥離力の最大値をヒートシール強度とした時に、蓋材のヒートシール強度が少なくとも7N以上15N以下である事が好ましい事が分かっている。
【0018】
本発明の蓋材の総厚みは特に限定はされないが、30~300μmの範囲であればよいが、蓋材の強度やヒートシール時の熱伝導性の観点から40~150μmの範囲である事がより好ましく、同様に蓋材の総重量は30~400g/m2の範囲である事が好ましく、40~200g/m2の範囲である事がより好ましい。
【0019】
本発明の蓋材は、本発明の課題の通り、バイオマスの活用の観点から、蓋材のいずれか1層に植物由来原料を使用する事によってバイオマス度を10%以上にする事が少なくとも求められており、望ましくは蓋材全体のバイオマス度も10%以上である事がより好ましい。
【0020】
<<蓋材の各構成体について>>
次に本発明における蓋材の各構成体についての詳細を下記に示す。
【0021】
<基材層>
基材層は、蓋材に初期の機械的強度を付与する主たる層であり、本発明の蓋材に使用する基材の材質は特に限定されず、各種公知の包装用素材を適宜必要に応じて使用する事が可能である。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる樹脂製フィルム、銅、ステンレス、アルミニウム等の金属類又はそれらの合金からなる金属薄膜、紙、合成紙、アルミニウム等の金属や二酸化ケイ素等のセラミックスを蒸着させた紙や樹脂製フィルム、それらの複合材料などが挙げられる。本発明の蓋材と容器の開口部とをヒートシールする際に、熱板加熱によってヒートシールを行う際には基材層の材質は特に限定はされないが、高周波誘導加熱によってヒートシールを行う際には、少なくとも基材層が金属薄膜、もしくは金属薄膜を含む2層以上の層からなる複合材料である事が求められる。本発明の蓋材に使用する基材層の材質としては、上述した中でも、成形性や高周波加熱特性や経済性の観点からアルミニウム箔を使用する事が好ましい。
【0022】
基材層の層厚は、材質の違いや、蓋材の突き刺し強度や引裂き強度といった各種強度の要求品質の違いや、ヒートシール時の熱伝導性の観点から適宜選択して使用されればよく特に限定はされないが、5~200μmの範囲が好ましく、5~50μmの範囲がより好ましい。
【0023】
ここで本発明の蓋材の課題として、基材層に植物由来原料を使用しバイオマス度を10%以上にする事について検討したところ、基材層のバイオマス度が少なくとも10%以上になるように植物由来原料を一部又は全部に使用した各種樹脂製フィルムを、基材層そのものとして使用したり、多層基材の一つの層として使用したりする事が可能である事が分かった。この様な樹脂製フィルムとしては、植物由来ポリエチレンテレフタレート、植物由来ポリアミド、植物由来ポリプロピレン、植物由来ポリエチレンなどの植物由来原料を一部もしくは全部使用した樹脂製フィルムを好適に利用する事が可能である。また基材層の構成体に紙を使用する事によっても蓋材の基材のバイオマス度を向上する事が可能である。
【0024】
本発明の蓋材の基材層のバイオマス度はバイオマス度の向上の観点から、10%以上が好ましく、25%以上がより好ましく、100%であってもよい。しかしながら基材層のバイオマス度を向上すればするほど植物由来原料に含まれる低分子量成分などの影響で基材層中もしくは基材層と他の層間においてデラミネーションの問題が発生し易くなる傾向があり、そのような観点から考えると、基材層のバイオマス度は80%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。
【0025】
<アンカーコート層>
アンカーコート層は、基材層と応力緩和層を密着させる為の層であり、アンカーコート層を主に形成するアンカーコート剤の成分は、基材層や応力緩和層の材質に合わせて選択されて用いられる。なお一般的にこのような層は、応力緩和層を溶融押出しによって基材層に密着させる場合にはアンカーコート層と呼び、フィルムからなる応力緩和層と基材層とを貼り合せる場合にはドライラミネート層と呼ばれることがあるが、本発明においては便宜上アンカーコート層と一本化して表記する事とする。本発明のアンカーコート層に使用するアンカーコート剤の成分としては、塩素又は酸で変性した変性ポリオレフィン系アンカーコート剤、ポリエステル系アンカーコート剤、ポリウレタン系アンカーコート剤などを好ましく用いる事が出来る。なお、アンカーコート層には、基材層と応力緩和層との間の密着性を阻害しない範囲内で、各種フィラー等の添加剤を含有させてもよい。
【0026】
アンカーコート層の層厚は、層厚が薄くなり過ぎると基材層と応力緩和層との間の密着強度の低下を招き、逆に厚くなり過ぎるとアンカーコート層内での凝集破壊が発生し易くなり、結果的にいずれの場合においても、基材と応力緩和層との間で意図しない剥離が発生し易くなる為に、0.05μm以上10.0μm以下の範囲が好ましく、0.1μm以上5.0μm以下の範囲がより好ましい。同様の理由から、アンカーコート層の乾燥後重量は0.05g/m2以上10.0g/m2以下の範囲が好ましく、0.1g/m2以上5.0g/m2以下の範囲がより好ましい。
【0027】
アンカーコート層の形成方法は特に限定はされないが、アンカーコート剤を主成分とする塗料を予め作製し、基材上にグラビアコート法やバーコート法などの各種公知のコーティング方法によって前記塗料を塗布し、熱風乾燥等によって塗料中の溶媒や分散媒を揮発乾燥させる事によって形成する事が出来る。
【0028】
ここで本発明の蓋材の課題として、アンカーコート層のバイオマス度を10%以上にする事について検討したところ、上述したような各種アンカーコート剤を構成する原料の一部に植物由来原料を使用する形か、各種公知のアンカーコート剤に添加剤としてさらに追加する形で植物由来原料を少量添加する事によってアンカーコート層のバイオマス度を少なくとも10%以上にする事が可能である。
【0029】
<応力緩和層>
応力緩和層は、基本的にヒートシール時に蓋材にかかる応力を緩和し(応力緩和性能)、さらにヒートシール層へ伝わる熱量を調整し、蓋材の機械的強度を補強し、基材層とヒートシール層との間の各層の層間を強固に接着させる層としても機能している。この様な応力緩和層の主成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン及び/又はプロピレン及び/又はαオレフィン(1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等)の共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂(EMMA)、エチレン-メチルアクリレート共重合樹脂(EMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)、エチレン-ブチルアクリレート共重合樹脂(EBA)、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、オレフィン系アイオノマー樹脂などのオレフィン系樹脂や、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの各種熱可塑性樹脂成分やそれらの混合物を使用する事が可能であるが、本発明の蓋材の応力緩和層には基材層とヒートシール層との間の接着性と応力緩和性能の観点などからポリエチレンを使用する事が好ましく、さらにポリエチレンの中でも隣接する各層に対する接着性や加工適性等の観点から密度が0.910g/m3以上0.930g/m3以下の範囲であって、且つJIS K7210(2014)に従い試験温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR(190℃/2.16kg))が0.1g/10min以上30.0g/10min以下の範囲であるポリエチレンを主成分として使用する事が特に好ましい。前記のようなポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、酸化ポリエチレン、酸変性ポリエチレン、及びそれらの混合物などが挙げられるが、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンを使用する事がより好ましい。
【0030】
上述した本発明の蓋材の応力緩和層に用いるのに好適なポリエチレンの応力緩和層における含有量は特に限定はされないが、応力緩和層全体の70質量%以上が好ましく、90質量%以上100質量%以下がより好ましい。応力緩和層に添加される主成分であるポリエチレン以外の原料としては、上述した各種熱可塑性樹脂成分などの他に、押出しラミネート時の溶融粘度を下げる為に各種ワックスや各種滑剤を添加しても構わない、また各種無機フィラー及び有機フィラー、各種安定化剤、各種カップリング剤などの各種添加剤を各種機能性向上の為に別途添加する事が可能であるがこれらに限定されない。
【0031】
上述した本発明の蓋材の応力緩和層に用いられるポリエチレンとしては、一般的な石油から作製されたポリエチレン(石油由来ポリエチレン)だけでなく、石油由来ポリエチレンの代わりにサトウキビやトウモロコシなどの植物由来のバイオマスから作製されたポリエチレン(植物由来ポリエチレン)を使用する事も可能であり、当然ながら石油由来ポリエチレンと植物由来ポリエチレンを併用する事も可能である。本発明の蓋材の応力緩和層における植物由来ポリエチレンの含有量は特に限定はされないが、バイオマス度の向上の観点から、応力緩和層における植物由来ポリエチレンの含有量は応力緩和層全体の10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。しかしながら応力緩和層における植物由来ポリエチレンの含有量を多くすればするほど応力緩和層のバイオマス度を向上させる事が出来る一方で、植物由来ポリエチレンに含まれる低分子量成分の影響で応力緩和層と他の層間においてデラミネーションの問題が発生し易くなる傾向があり、そのような観点から考えると、応力緩和層における植物由来ポリエチレンの含有量は応力緩和層全体の80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0032】
本発明の蓋材の課題として、応力緩和層のバイオマス度が10%以上である事を満たす事を検討する上で、応力緩和層における植物由来ポリエチレンの含有量が重要なのではなく、植物由来ポリエチレンを添加後の応力緩和層のバイオマス度が重要である。
【0033】
ここで改めて各層のバイオマス度の計算方法について詳細に説明すると、各層のバイオマス度は、「各層のバイオマス度(%)=(各層に使用したバイオマスの乾燥後重量÷各層の乾燥後重量)×100」という式によって算出が可能であり。「各層に使用したバイオマスの乾燥後重量」は、各層が含有している各原料の乾燥後重量比率と、乾燥後の各原料が重量比換算でどの程度バイオマスから構成されているのかの割合(バイオマス割合)が分かれば算出することが可能である。なお原料のバイオマス割合は、「バイオマス割合(%)=(原料中のバイオマスの乾燥後重量÷原料の乾燥後重量)×100」という式によって算出が可能である。より具体的に説明すると、例えば応力緩和層が、原料A(バイオマス割合100%)を乾燥後重量で60kgと、原料B(バイオマス割合30%)を乾燥後重量で40kgとから構成される場合の応力緩和層のバイオマス度は、「(((60×1.0)+(40×0.3))/100)×100=72%」というように算出する事が出来る。なお、各層が含有している各原料の化学構造と各層が含有している各原料の乾燥後重量比率とが明確であるが、各原料のバイオマス割合が不明である場合には、各原料別にASTMD6866に記載された方法などによって各原料に含まれるバイオマス由来炭素であるC14の量と全炭素量を測定し、そこから各原料のバイオマス割合を「バイオマス割合(%)=(バイオマス由来炭素量/全炭素量)×100という式によって算出した上で各層のバイオマス度を算出する事も可能である。
【0034】
以上のような理由から、応力緩和層に植物由来ポリエチレンを使用する際には、本発明の蓋材の応力緩和層のバイオマス度は、バイオマス度の向上の観点から、10%以上が好ましく、25%以上がより好ましく、100%であってもよい。しかしながら応力緩和層のバイオマス度を向上すればするほど植物由来ポリエチレンに含まれる低分子量成分などの影響で応力緩和層と他の層間においてデラミネーションの問題が発生し易くなる傾向があり、そのような観点から考えると、応力緩和層のバイオマス度は80%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。
【0035】
本発明の蓋材の応力緩和層は1層で構成されていてもいいし、2層以上の多層から構成されていても良い。本発明の蓋材の応力緩和層の形成方法は特に限定はされないが、応力緩和層が一層の場合には、溶融押出機で応力緩和層に使用する原料を溶融し、アンカーコート層の上に溶融した原料をTダイから押出してラミネートする(押出しラミネート加工)事によって応力緩和層を形成する方法や、応力緩和層を構成する原料からなるフィルムである場合には、アンカーコート層に該フィルムをラミネートする(ドライラミネート加工)事によって応力緩和層を形成する方法などが一般的であり、応力緩和層が2層の場合には、溶融押出機を2台使って各応力緩和層に使用する各原料をそれぞれ溶融し、アンカーコート層の上に溶融した各原料をTダイから共押出ししてラミネートする(共押出しラミネート加工)事によって2層の応力緩和層を形成する方法や、溶融押出機によって第1応力緩和層に使用する原料を溶融し、アンカーコート層の上に溶融した原料をTダイから押し出してコーティングし、その上に別に用意した第2応力緩和層を構成する原料からなるフィルムを貼り合せる(サンドイッチラミネート加工)事によって2層の応力緩和層を形成する方法などが一般的である。なお応力緩和層が3層以上の多層になる場合には、上述した方法を組み合わせる事によって3層以上の応力緩和層を形成する事が可能である。
【0036】
上述したように応力緩和層は2層以上の多層から構成されていても良いが、コスト的な面から1層又は2層から構成されることが好ましく、本発明者らが本発明の応力緩和層に植物由来ポリエチレンを使用する事を検討した結果、以下に記載する構成の応力緩和層であれば、応力緩和層に植物由来ポリエチレンを使用してバイオマス度が10%以上になってもデラミネーションの発生などの問題が生じにくく、ヒートシール強度などに悪影響を与えない事を見出した。尚以下に記載する応力緩和層の構成は、応力緩和層に植物由来ポリエチレンを使用する場合において本発明の蓋材に使用可能な応力緩和層の一形態を例示した物に過ぎず、本発明の蓋材に使用可能な応力緩和層の構成はこれらに限定されない。
【0037】
本発明の蓋材に好適に使用できる植物由来ポリエチレン(植物由来PE)を使用した応力緩和層の構成としては、応力緩和層が密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来ポリエチレンを含有した層を含む一層以上の層から構成されている事が好ましい(応力緩和層構成1)。
【0038】
さらに上記応力緩和層構成1において、植物由来ポリエチレンが植物由来低密度ポリエチレン(植物由来LDPE)である事がより好ましい(応力緩和層構成2)。応力緩和層に植物由来低密度ポリエチレンを使用する事によって、隣接する層間の接着強度をより向上させる事が可能となる。
【0039】
また上記応力緩和層構成2において、応力緩和層が2層の場合には、応力緩和層がアンカーコート層側から密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来低密度ポリエチレンを含有した第1応力緩和層と石油由来低密度ポリエチレン(石油由来LDPE)を含有した第2応力緩和層とが順次積層された構成であってもよい(応力緩和層構成3)。応力緩和層を2層にすることによって、蓋材の機械的強度の向上や、応力緩和性能の向上が期待できる。
【0040】
同様に応力緩和層が2層の場合には、応力緩和層がアンカーコート層側から石油由来低密度ポリエチレンを含有した第1応力緩和層と密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来低密度ポリエチレンを含有した第2応力緩和層とが順次積層された構成であってもよい(応力緩和層構成4)。
【0041】
同様に応力緩和層が2層の場合には、応力緩和層がアンカーコート層側から密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来低密度ポリエチレンを含有した第1応力緩和層と密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来低密度ポリエチレンを含有した第2応力緩和層とが順次積層された構成であってもよい(応力緩和層構成5)。
【0042】
さらに上記応力緩和層構成3~5において、第1応力緩和層が含有している低密度ポリエチレン(植物由来低密度ポリエチレン又は石油由来低密度ポリエチレン)の密度よりも第2応力緩和層が含有している低密度ポリエチレン(植物由来低密度ポリエチレン又は石油由来低密度ポリエチレン)の密度の方が高い構成である事がより好ましい。応力緩和層構成3~5において、第1応力緩和層に使用する低密度ポリエチレンの密度よりも第2応力緩和層に使用する低密度ポリエチレンの密度を高くする事によって、蓋材の機械的強度や応力緩和性能をより向上させる事が可能である。
【0043】
また上記応力緩和層構成2において、応力緩和層が2層の場合には、応力緩和層がアンカーコート層側から密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来低密度ポリエチレンを含有した第1応力緩和層と、植物由来直鎖状低密度ポリエチレン(植物由来LLDPE)を含有した第2応力緩和層とが順次積層されてなる構成である事がより好ましい(応力緩和層構成6)。第2応力緩和層に植物由来直鎖状低密度ポリエチレンを使用する事によって、蓋材の機械的強度や応力緩和性能をより向上させる事が可能である。
【0044】
同様に応力緩和層が2層の場合には、応力緩和層がアンカーコート層側から密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来低密度ポリエチレンを含有した第1応力緩和層と、石油由来直鎖状低密度ポリエチレン(石油由来LLDPE)を含有した第2応力緩和層とが順次積層されてなる構成である事がより好ましい(応力緩和層構成7)。上記応力緩和層構成5と同様に、第2応力緩和層に石油由来直鎖状低密度ポリエチレンを使用する事によって、蓋材の機械的強度や応力緩和性能をより向上させる事が可能である。
【0045】
さらに上記応力緩和層の構成(応力緩和層構成1)において、応力緩和層が密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来直鎖状低密度ポリエチレンを含有した層を含む一層以上の層から構成されている事がより好ましい(応力緩和層構成8)。応力緩和層に植物由来直鎖状低密度ポリエチレンを使用する事によって、蓋材の機械的強度や応力緩和性能をより向上させる事が可能である。
【0046】
また上記応力緩和層構成8において、応力緩和層が2層の場合には、応力緩和層がアンカーコート層側から石油由来低密度ポリエチレンを含有した第1応力緩和層と、密度0.910g/m3以上0.930g/m3以下で且つMFR(190℃/2.16kg)0.1g/10min以上30.0g/10min以下の植物由来直鎖状低密度ポリエチレンを含有した第2応力緩和層とが順次積層されてなる構成である事がより好ましい(応力緩和層構成9)。第1応力緩和層に石油由来低密度ポリエチレンを使用する事によって、隣接する層間(具体的にはアンカーコート層と第2応力緩和層との層間)の接着強度をより向上する事が可能である。また上記応力緩和層構成8と同様に応力緩和層に植物由来直鎖状低密度ポリエチレンを使用する事によって、蓋材の機械的強度や応力緩和性能をより向上させる事が可能である。
【0047】
上述した応力緩和層の構成は、応力緩和層に植物由来ポリエチレンを使用する場合に好ましい構成を示したものであり、応力緩和層に植物由来ポリエチレンを使用しない場合には、上記構成に示される植物由来ポリエチレンを石油由来ポリエチレンに、植物由来低密度ポリエチレンを石油由来低密度ポリエチレンに、植物由来直鎖状低密度ポリエチレンを石油由来直鎖状低密度ポリエチレンにそれぞれ置き換えた構成であってもよく、それぞれの応力緩和層構成によって期待される性能向上についても、同様の性能向上が期待できる。
【0048】
応力緩和層の層厚は、特に限定はされないが、10μm以上100μm以下の範囲が好ましく、20μm以上80μm以下の範囲であることがより好ましい。また応力緩和層が1層の場合には10μm以上60μm以下である事が好ましく、応力緩和層が2層の場合には、20μm以上100μm以下の範囲である事が好ましい。応力緩和層の厚みが薄くなると、コスト的なメリットが有り、ヒートシール層に熱が伝わりやすくなるので生産性が向上するものの、蓋材の機械的強度や応力緩和性能が低下する傾向がある。逆に応力緩和層の厚みが厚くなると、蓋材の機械的強度や応力緩和性能が向上するものの、コスト的メリットが損なわれ、ヒートシール層に熱が伝わりにくくなるので生産性が低下する傾向がある。同様の理由から応力緩和層の重量は、10g/m2以上100g/m2以下の範囲が好ましく、20g/m2以上80g/m2以下の範囲がより好ましい。
【0049】
<ヒートシール層>
ヒートシール層は、本発明の蓋材によってプラスチック製容器の開口部を熱板加熱又は高周波誘導加熱によってヒートシールする際に機能し、プラスチック製容器に対するヒートシール性を有した層であり、またプラスチック製容器に充填された内容物に直接触れる層でもある。本発明の蓋材に用いられるヒートシール層としては、主に接着性樹脂と粘着付与樹脂とワックス等からなり低温ヒートシール性に優れた特徴を有するホットメルト接着剤層や、主にオレフィン系樹脂からなりヒートシール強度に優れた特徴を有するシーラント層を用いる事が出来る。
【0050】
(ホットメルト接着剤層)
本発明の蓋材のヒートシール層の一形態として使用可能なホットメルト接着剤層は、主に接着性樹脂と粘着付与樹脂とワックスから構成され、各原料を熱で融かして混合調整した塗料をグラビアロールなどによって応力緩和層の上に直接ホットメルトコーティングする事などによって形成される。
【0051】
本発明の蓋材に使用されるホットメルト接着剤層は、1層から構成され、使用するホットメルト接着剤の配合を調整する事によって、ヒートシール強度やヒートシール温度などのヒートシール条件を自由にコントロールする事が可能であり、後述するシーラント層と比較して、低温ヒートシール性に優れているという特徴を有している。またグラビアロールなどで塗布する事により、ホットメルト接着剤層の塗膜に凹凸をつける事が可能であり、その凹凸によってブロッキングなどを防止したり、さばき性を向上させたりする事も可能である。
【0052】
本発明の蓋材のホットメルト接着剤層に用いる事が可能な接着性樹脂は特に限定されず各種公知の接着性樹脂を使用する事が可能であるが、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂(EMMA)、エチレン-メチルアクリレート共重合樹脂(EMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)、エチレン-ブチルアクリレート共重合樹脂(EBA)などを使う事が好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を使用する事がより好ましい。接着性樹脂は基本的なヒートシール強度を担保する為にホットメルト接着剤層に添加される。
【0053】
本発明の蓋材のホットメルト接着剤層における接着性樹脂の含有量は特に限定されず、要求品質やヒートシール対象であるプラスチック製容器の材質によって適宜含有量を決定すれば良いが、ホットメルト接着剤層全体の15質量%以上60質量%以下の範囲である事が好ましく、20質量%以上50質量%以下の範囲である事がより好ましい。ホットメルト接着剤層における接着性樹脂の含有量が前記範囲の下限を下回ると充分なヒートシール強度が得られなくなるといった問題が発生する傾向があり、逆にホットメルト接着剤層における接着性樹脂の含有量が前記範囲の上限を超えると、ヒートシール強度が強くなり過ぎた事が原因で蓋材をプラスチック製容器の開口部から剥離する際に剥離に必要な力が非常に大きくなったり、ホットメルト接着剤層の箔切れが悪くなる事などが原因で蓋材をプラスチック製容器の開口部から剥離する際に蓋材の剥離がスムーズに行う事が出来なくなったり、隣接する層との間でデラミネーションが発生したりする傾向がある。
【0054】
本発明の蓋材のホットメルト接着剤層に用いられる粘着付与樹脂は特に限定されず各種公知の粘着付与樹脂を使用する事が可能であり、例えば、石油系粘着付与樹脂としては、脂肪族系粘着付与樹脂(C5)、芳香族系粘着付与樹脂(C9)、C5/C9共重合型粘着付与樹脂(C5/C9)、脂環族系粘着付与樹脂(DCPD)、及びそれらの水添物、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂などが挙げられ、石炭系粘着付与樹脂としては、クマロンインデン樹脂が挙げられ、天然系粘着付与樹脂としては、ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、不均化ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂といったロジン系粘着付与樹脂、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂といったテルペン系粘着付与樹脂などが挙げられ、いずれも要求品質に応じて適宜選択して使用する事が可能である。粘着付与樹剤は、ホットメルト接着剤の溶融粘度の調整と、ヒートシール強度の調整の為にホットメルト接着剤層に添加される。
【0055】
本発明の蓋材のホットメルト接着剤層における粘着付与樹脂の含有量は特に限定はされず、要求品質やヒートシール対象であるプラスチック製容器の材質によって適宜含有量を決定すれば良いが、ホットメルト接着剤層全体の5質量%以上50質量%以下の範囲である事が好ましく、10質量%以上40質量%以下の範囲である事がより好ましい。ホットメルト接着剤層における粘着付与樹脂の含有量が前記範囲の下限を下回ると、ホットメルト接着剤の溶融粘度が高くなり過ぎる事や粘着性不足が原因で蓋材をヒートシールする際に適切なヒートシールが出来なくなったり、ホットメルト接着剤層の箔切れが悪くなる事などが原因で蓋材をプラスチック製容器の開口部から剥離する際に蓋材の剥離がスムーズに行う事が出来なくなったりするといった問題が発生する傾向があり、逆にホットメルト接着剤層における粘着付与樹脂の含有量が前記範囲の上限を上回ると、ホットメルト接着剤層自体の機械的強度不足の為にヒートシール後の蓋材が意図せず容易にプラスチック製容器の開口部から剥離してしまうといった問題が発生する傾向がある。
【0056】
本発明の蓋材のホットメルト接着剤層に用いられるワックスは特に限定されず各種公知のワックスを使用する事が可能である、例えば、合成系ワックスとしては、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、及びそれらの酸化物や変性物などが挙げられ、石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられ、鉱物系ワックスとしては、モンタンワックス、セレシン、オゾケライトなどが挙げられ、植物系ワックスとしては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、サトウキビロウなどが挙げられ、動物系ワックスとしては、蜜蝋などが挙げられ、いずれも要求品質に応じて適宜選択して使用する事が可能であるが、性状が安定していて取り扱いが容易であるという観点や、ヒートシール層がプラスチック製容器の内容物(主に飲料や食品)と直接接する為に食品安全性の観点などから、合成系ワックス、石油系ワックス、精製された植物系ワックスを使用する事が好ましく、合成系ワックス又は石油系ワックスを使用する事がより好ましい。ワックスは、ホットメルト接着剤層及びその塗料の溶融粘度の調整と、ヒートシール強度の調整の為にホットメルト接着剤層に添加される。
【0057】
本発明の蓋材のホットメルト接着剤層におけるワックスの含有量は特に限定はされず、要求品質やヒートシール対象であるプラスチック製容器の材質によって適宜含有量を決定すれば良いが、ホットメルト接着剤層全体の10質量%以上60質量%以下の範囲である事が好ましく、20質量%以上50質量%以下の範囲である事がより好ましい。ホットメルト接着剤層におけるワックスの含有量が前記範囲の下限を下回ると、ヒートシール強度が強くなり過ぎた事が原因で蓋材をプラスチック製容器の開口部から剥離する際に剥離に必要な力が非常に大きくなったり、ホットメルト接着剤層の箔切れが悪くなる事などが原因で蓋材をプラスチック製容器の開口部から剥離する際に蓋材の剥離がスムーズに行う事が出来なくなったり、ヒートシール時のホットメルト接着剤層の溶融粘度が高くなることが原因でヒートシール加工工程の生産性が低下したりするといった問題が発生する傾向があり、逆にホットメルト接着剤層におけるワックスの含有量が前記範囲の上限を上回ると、ホットメルト接着剤層自体の機械的強度不足やヒートシール強度の低下などが原因で、ヒートシール後の蓋材が意図せず容易にプラスチック製容器の開口部から剥離してしまうといった問題が発生する傾向がある。
【0058】
本発明の蓋材のホットメルト接着剤層には上述した原料の他に、機械的強度や表面状態の改質やヒートシール強度やヒートシール適性やヒートシール温度特性等を調整する為に、シリカやタルクなどの各種無機フィラー、各種有機フィラー、各種滑剤、各種剥離剤、各種カップリング剤などの添加剤等を必要に応じて別途添加しても構わないし、各種性能を調整する為に他の各種熱可塑性樹脂や各種熱可塑性エラストマーを少量添加しても構わず、これらに限定されない。
【0059】
ホットメルト接着剤層の厚みについては特に限定はされないが、5μm以上80μm以下の範囲である事が好ましく、10μm以上70μm以下の範囲である事がより好ましい。ホットメルト接着剤層の厚みが前記範囲の下限を下回るとヒートシールが適切に行われなくなるといった問題が発生する傾向があり、前記範囲の上限を上回るとコスト的な問題の他に、ヒートシール加工時に必要な熱量が多くなり過ぎて生産性が低下したり、ホットメルト接着剤層の箔切れが悪くなる事などが原因で蓋材をプラスチック製容器の開口部から剥離する際に蓋材の剥離がスムーズに行う事が出来なくなったりするといった問題が発生する傾向がある。同様の理由から、ホットメルト接着剤層の塗布重量は、3g/m2以上50/m2以下の範囲である事が好ましく、5g/m2以上30g/m2以下の範囲である事がより好ましい。
【0060】
ここで本発明の蓋材の課題として、ホットメルト接着剤層のバイオマス度を10%以上にする事について本発明者が検討した結果、次のような知見が得られた。本発明の蓋材のホットメルト接着剤層のバイオマス度は、バイオマス度向上の観点から10%以上が好ましく、25%以上がより好ましい。しかしながらホットメルト接着剤層のバイオマス度が大きくなればなる程、ホットメルト接着剤層に含有させた植物由来原料の性状の影響や、植物由来原料に含まれる低分子量成分や不純物の影響でヒートシール強度が大きくなり過ぎたり不足したりするなどして好適なヒートシール性能が得られなくなったり、ヒートシール強度が経時的に不安定になったり、応力緩和層などとの層間においてデラミネーションの問題が発生し易くなったりする傾向があった。そのような観点から本発明の蓋材のホットメルト接着剤層のバイオマス度は50%以下である事が好ましく、40%以下である事がより好ましい。
【0061】
本発明の蓋材のホットメルト接着剤層に使用可能な植物由来原料については特に限定はされず、接着性樹脂、粘着付与樹脂、ワックスのそれぞれで植物由来原料を適宜使用する事が可能であり、当然ながら石油由来原料と植物由来原料を併用する事も可能である。発明者が検討を重ねた結果、最も石油由来原料から植物由来原料への転換が容易であるのは粘着付与樹脂であり、次に容易であるのはワックスである事が判明した。
【0062】
本発明の蓋材のホットメルト接着剤層のバイオマス度向上の為に、本発明者が検討を重ねた結果、ホットメルト接着剤層へ好ましく添加する事が出来る植物由来の粘着付与樹脂としては、ロジン系粘着付与樹脂とテルペン系粘着付与樹脂が挙げられる。ロジン系粘着付与樹脂もテルペン系粘着付与樹脂も重合前のモノマーが植物由来のバイオマスから作製されており、また従前から粘着剤やホットメルト接着剤に添加されて好適に使用されている事などから、そのまま本発明のホットメルト接着剤層の原料として石油系粘着付与樹脂などと置き換えて使用するだけでバイオマス度を向上させる事が出来るだけでなく、大きな不具合もなく好適にする事が可能である。ホットメルト接着剤層のバイオマス度を10%以上にする観点から、ホットメルト接着剤層に使用する植物由来粘着付与樹脂としては、ロジン系粘着付与樹脂及びテルペン系粘着付与樹脂の少なくともいずれか一方を使用する事が好ましく、ホットメルト接着剤層に使用する粘着付与樹脂の全量をロジン系粘着付与樹脂及びテルペン系粘着付与樹脂の少なくともいずれか一方に置き換えても、大きな不具合が発生する事もなく好適に使用する事が可能である。
【0063】
同様に、本発明の蓋材のホットメルト接着剤層のバイオマス度向上の為に、本発明者が検討を重ねた結果、ホットメルト接着剤層へ好ましく添加する事が出来る植物由来のバイオマスから作製されたワックス(植物由来ワックス)としては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ひまわりワックスなどの精製された植物系ワックスや、その他としてサトウキビなどの植物由来のバイオマスから作製されたモノマーを使用して重合又は合成されて作製されたポリエチレンワックスなどの植物由来オレフィン系ワックスなどが挙げられる。しかしながら上述した粘着付与樹脂の場合とは異なり、蓋材のホットメルト接着剤層に好適に用いられているような合成系ワックスや石油系ワックスなどと比較して、植物系ワックスは、臭気があり、また融点が比較的低く溶融特性が異なる事や精製の際に完全に取り除けなかった低分子量成分や不純物などの影響で好適なヒートシール強度が得られなかったり、ヒートシール強度が不安定になったり、応力緩和層などとの層間においてデラミネーションの問題が発生し易くなったりするといった懸念があった。同様に植物由来オレフィン系ワックスなども残留低分子量成分によってヒートシール強度の低下や不安定化といった懸念事項があった。以上のような理由から、ホットメルト接着剤層に植物由来ワックスを使用する場合には、蓋材のホットメルト接着剤層に求められる要求品質に応じて前記懸念点を考慮した上で、使用ワックスの選択や添加量を検討する必要性がある為に、ホットメルト接着剤層に添加するのに適切なワックスや、その適切な添加量はケースバイケースであり特に限定は出来ない。本発明の蓋材の要求品質に照らし合わせ、特に蓋材のヒートシール強度について留意しながら、ホットメルト接着剤層に対する植物由来ワックスの使用や植物由来ワックスの選択や添加量の検討をする必要がある。
【0064】
(シーラント層)
本発明の蓋材のヒートシール層の一形態として使用可能なシーラント層は、主にオレフィン系樹脂からなり、原料を溶融して単層又は多層押出しラミネートによって応力緩和層の上に直接設けたり、応力緩和層と同時に多層押出しラミネートによって設けたり、専用のシーラントフィルムをドライラミネートによって応力緩和層と貼り合せたり、応力緩和層を押出しラミネートしながら専用のシーラントフィルムを貼り合せる所謂サンドラミネートする事などによって形成される。
【0065】
本発明の蓋材に使用するシーラント層は、1層以上の層から構成する事が可能であり、主に原料がオレフィン系樹脂から構成されている事などから、ホットメルト接着剤層と比較してヒートシール強度に優れており、またシーラント層自体の塗膜強度もホットメルト接着剤層と比較して強い為に、蓋材全体の機械的強度や応力緩和性能を向上する事が可能である。シーラント層は、1層で構成される場合には、使用するオレフィン系樹脂の選択や配合の調整を行う事により、2層以上の層構成の場合には、それぞれの層に使用する原料配合や各層厚を調整する事などによって、ヒートシール強度や、層間剥離や界面剥離や凝集剥離などの剥離部位や、箔切れ性等の調整をする事が可能であり、また特定の層に機械的強度を向上させる層を設けたり、リシール性を持たせる層を設けたりする事などによって、各種機能を別途付与する事にも適している。
【0066】
本発明の蓋材のシーラント層の主原料であるオレフィン系樹脂は特に限定はされないが、広範な材質に対するヒートシール適性に優れるという観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン、エチレン及び/又はプロピレン及び/又はαオレフィンの共重合樹脂、及びそれらの酸化物及び酸変性物といった各種ポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂(EMMA)、エチレン-メチルアクリレート共重合樹脂(EMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)、エチレン-ブチルアクリレート共重合樹脂(EBA)といった接着性を有した各種エチレン系共重合樹脂などを適宜選択して使用する事が好ましい。上述したシーラント層に使用するオレフィン系樹脂は、シーラント層の要求品質(ヒートシール温度、ヒートシール強度等)やヒートシール対象であるプラスチック製容器の材質に応じて(ヒートシール適性)、単独で使用しても良いし、2種類以上を任意の割合で混合して使用しても構わない。
【0067】
本発明の蓋材のシーラント層におけるオレフィン系樹脂の含有量は特に限定はされず、蓋材に求められる要求品質やヒートシール対象であるプラスチック製容器の材質によって適宜調整すればよいが、シーラント層全体の70質量%以上である事が好ましく、80質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0068】
本発明の蓋材のシーラント層には主原料であるオレフィン系樹脂の他に、ヒートシール温度やヒートシール適性やヒートシール強度の調整の為に他の副原料を添加しても構わない。例えば、石油系粘着付与樹脂やロジン系粘着付与樹脂やテルペン系粘着付与樹脂などの各種粘着付与樹脂や、ポリエチレンワックスやフィッシャートロプシュワックスなどの合成系ワックスやパラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックスやカルナバワックスなどの植物系ワックスなどの各種ワックスなどがシーラント層の副原料として好適に使用する事が可能である。
【0069】
本発明の蓋材のシーラント層には上述した原料の他に、機械的強度や表面状態の改質やヒートシール強度やヒートシール適性やヒートシール温度特性等を調整する為に、シリカやタルクなどの各種無機フィラー、各種有機フィラー、各種滑剤、各種剥離剤、各種カップリング剤などの添加剤等を必要に応じて別途添加しても構わないし、各種性能を調整する為に上述した以外の他の各種熱可塑性樹脂や各種熱可塑性エラストマーを添加しても構わず、これらに限定されない。
【0070】
シーラント層の厚みについては特に限定はされないが、5μm以上60μm以下の範囲である事が好ましく、10μm以上40μm以下の範囲である事がより好ましい。シーラント層の厚みが前記範囲の下限を下回ると充分なヒートシール強度が得られなくなるといった問題が発生する傾向があり、前記範囲の上限を上回るとコスト的な問題の他に、ヒートシール加工時に必要な熱量が多くなり過ぎて生産性が低下したり、シーラント層の箔切れが悪くなる事などが原因で蓋材をプラスチック製容器の開口部から剥離する際に蓋材の剥離がスムーズに行う事が出来なくなったりするといった問題が発生する傾向がある。同様の理由から、シーラント層の重量は、5g/m2以上90g/m2以下の範囲である事が好ましく、10g/m2以上60g/m2以下の範囲である事がより好ましい。
【0071】
ここで本発明の蓋材の課題として、シーラント層のバイオマス度を10%以上にする事について本発明者が検討した結果、以下のような知見が得られた。本発明の蓋材のシーラント層のバイオマス度は、バイオマス度向上の観点から10%以上が好ましく、25%以上がより好ましい。しかしながらシーラント層のバイオマス度が大きくなればなる程一部の植物由来原料に含まれる低分子量成分などの影響でヒートシール強度が大きくなり過ぎたり不足したりするなどして好適なヒートシール性能が得られなくなったり、ヒートシール強度が経時的に不安定になったり、応力緩和層などとの層間においてデラミネーションの問題が発生し易くなったりする傾向があった。そのような観点から本発明の蓋材のシーラント層のバイオマス度は50%以下である事が好ましく、40%以下である事がより好ましい。
【0072】
本発明の蓋材のシーラント層に使用可能な植物由来原料については特に限定はされず、主原料である各種オレフィン系樹脂や、副原料である粘着付与樹脂やワックスなどのそれぞれで植物由来原料を適宜使用する事が可能であり、当然ながら石油由来原料と植物由来原料を併用する事も可能である。なお副原料である粘着付与樹脂やワックスに植物由来原料を適用する場合における注意事項に関しては、前述したホットメルト接着剤層の際に述べた通りであり、要求品質に応じて適宜使用する事が可能である。
【0073】
本発明者が主原料である各種オレフィン系樹脂に植物由来原料を使用する事を検討した結果、特に石油由来ポリエチレンや石油由来ポリプロピレンに替えて植物由来ポリエチレンや植物由来ポリプロピレンを使用することが好ましく、さらには植物由来低密度ポリエチレンや植物由来直鎖状低密度ポリエチレンを使用する事が特に好ましい事が分かった。シーラント層に使用するのに適した植物由来ポリエチレンとしては、シーラント強度などのシーラント適性や加工適性等の観点から密度が0.910g/m3以上0.930g/m3以下の範囲であって、且つJIS K7210(2014)に従い試験温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR(190℃/2.16kg))が0.1g/10min以上30.0g/10min以下の範囲である植物由来ポリエチレンを使用する事が特に好ましい。
【0074】
シーラント層に含有させる植物由来低密度ポリエチレン及び植物由来直鎖状低密度ポリエチレンの量は特に限定はされないが、バイオマス度向上の観点からシーラント層全体の10質量%以上である事が好ましく、30質量%以上である事がより好ましい。しかしながらシーラント層における植物由来ポリエチレンの含有量を多くすればするほどシーラント層のバイオマス度を向上させる事が出来る一方で、植物由来ポリエチレンに含まれる低分子量成分の影響でヒートシール強度が低下したり、ヒートシール強度が経時的に不安定になったり、応力緩和層などとの層間においてデラミネーションの問題が発生し易くなったりする傾向があり、そのような観点から考えると、シーラント層における植物由来ポリエチレンの含有量はシーラント層全体の60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0075】
上述したように、ヒートシール層がホットメルト接着剤層であっても、シーラント層であっても、ヒートシール層におけるバイオマス度は、バイオマス度向上の観点から10%以上が好ましく、25%以上がより好ましい。また一部の植物由来原料に含まれる低分子量成分などの影響でヒートシール強度が大きくなり過ぎたり不足したりするなどして好適なヒートシール性能が得られなくなったり、ヒートシール強度が経時的に不安定になったり、応力緩和層などとの層間においてデラミネーションの問題が発生し易くなったりする傾向があり、そのような観点から本発明の蓋材のシーラント層のバイオマス度は50%以下である事が好ましく、40%以下である事がより好ましい。
【0076】
<印刷層>
本発明の蓋材には、基材層のアンカーコート層を設けた面の他方の面側(
図1の6の位置)に、印刷層を設けてもよい。印刷層は、基材層上に各種公知の印刷方法で印刷する事によって直接設けても良いし、後述する表面保護層として使用される表面保護フィルム上に各種公知の印刷方法で印刷し、さらに基材層と表面保護フィルムの間に印刷層を挟む形で、基材層と表面保護フィルムをドライラミネートする事によって設けてもよい。また印刷層と、基材層もしくは表面保護フィルムとの間の密着性が不足する場合には、必要に応じてプライマー層やアンカーコート層などの密着性付与層を別途設けても構わない。
【0077】
印刷層の厚みは特に限定はされないが、隠蔽力やコストの観点から、0.1μm以上3.0μm以下の範囲である事が好ましく、0.1μm以上2.0μm以下の範囲である事がより好ましい。同様の理由から、印刷層の乾燥後重量は0.1g/m2以上4、5g/m2以下の範囲である事が好ましく、0.1g/m2以上3.5g/m2以下の範囲である事がより好ましい。
【0078】
印刷層は主に顔料や染料などの着色成分とバインダー樹脂成分からなり、印刷層のバインダー樹脂成分については各種公知の原料を任意に使用する事が可能であり、特に限定はされないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂などの各種公知の合成樹脂を印刷層のバインダー成分として任意に使用する事が可能である。
【0079】
ここで本発明の蓋材の課題として、印刷層のバイオマス度を10%以上にする事を本発明者が検討したところ、印刷層を形成するための印刷インキのバインダー樹脂成分として、植物由来原料であるニトロセルロース樹脂、アセチルセルロース樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂及びそれらの誘導体などのセルロース系樹脂を好適に使用する事が可能である事を見出した。
【0080】
印刷層に含有させるセルロース系樹脂の量は特に限定はされないが、バインダー樹脂成分の全量をセルロース系樹脂に置き換えても印刷層に特に顕著な不具合がみられず、少なくとも印刷層のバイオマス度が10%程度になるように含有させる範疇においては、印刷層としての品質的な不具合は特に発生しなかった。
【0081】
印刷層のバイオマス度は、本発明の課題を達成する為に少なくとも10%以上である事が好ましく、25%以上である事がバイオマス度向上の観点からより好ましい。印刷層においては、バインダー樹脂成分の他に、着色成分などの他に、各種分散剤、各種架橋剤、各種安定化剤、各種UV吸収散乱剤、各種無機フィラーや各種有機フィラー、各種滑剤などが適宜添加されることが想定され、その配合比率も要求品質に応じて任意に変動する事などから、印刷層のバイオマス度の上限は特に限定は出来ないが、80%以下であってもよく、50%以下であってもよい。
【0082】
<表面保護層>
本発明の蓋材には、印刷層の基材層の印刷層を設けた面側の最外層に、蓋材の表面や印刷層を保護する為に透明な表面保護層を設けても良い。本発明の表面保護層としては、基材層の上に設けられた印刷層の上に各種公知の印刷又は塗装方法によって印刷又は塗布されることによって設けられる透明なニス層のようなものであってもよいし、基材層とドライラミネーションによって貼り合せる事によって設けられる透明な表面保護フィルム層であっても良い。
【0083】
本発明の表面保護層において、表面保護層がニス層である場合には、ニス層の主成分である樹脂成分として各種合成樹脂を使用する事が好ましく、例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂などの各種公知の合成樹脂をニス層の樹脂成分として要求品質に応じて任意に選択して使用する事が可能である。ニス層の厚みは特に限定はされないが、保護機能やコストの観点から、0.1μm以上3.0μm以下の範囲である事が好ましく、0.1μ以上2.0μm以下の範囲である事がより好ましい。同様の理由から、ニス層の乾燥後重量は0.1g/m2以上4.5g/m2以下の範囲である事が好ましく、0.1g/m2以上3.5g/m2以下の範囲である事がより好ましい。
【0084】
また、本発明の表面保護層において、表面保護層が表面保護フィルム層である場合には、表面保護フィルムとして透明なポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを要求品質に応じて任意に選択して使用する事が可能である。表面保護フィルム層の厚みは特に限定はされないが、保護機能や強度やコストの観点から、4.0μm以上30.0μm以下の範囲である事が好ましく、6.0μm以上20.0μm以下の範囲である事がより好ましい。同様の理由から表面保護フィルムの重量は4.0g/m2以上45.0g/m2以下の範囲である事が好ましく、6.0g/m2以上30.0g/m2以下の範囲である事がより好ましい。
【0085】
ここで本発明の蓋材の課題として、表面保護層のバイオマス度を10%以上にする事を本発明者が検討した結果、表面保護層がニス層である場合には、上述した印刷層と同様に植物由来原料であるニトロセルロース樹脂、アセチルセルロース樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂及びそれらの誘導体などのセルロース系樹脂をニス層の樹脂成分として好適に使用する事が可能である事を見出した。ニス層に含有させるセルロース系樹脂の量は特に限定はされないが、ニス層の樹脂成分の全量をセルロース系樹脂に置き換えてもニス層に特に顕著な不具合がみられず、少なくともニス層のバイオマス度が10%程度になるように含有させる範疇においては特に不具合は発生しなかった。
【0086】
また表面保護層が表面保護フィルム層である場合には、上述した基材層と同様に、表面保護フィルム層のバイオマス度が少なくとも10%以上となるように表面保護フィルム層の樹脂成分として、植物由来ポリエチレンテレフタレート、植物由来ポリアミド、植物由来ポリプロピレン、植物由来ポリエチレンなどの植物由来原料を一部もしくは全部に使用した樹脂製フィルムを要求品質に応じて適宜選択して利用する事が可能である。
【0087】
表面保護層のバイオマス度は、本発明の課題を達成する為に少なくとも10%以上である事が好ましく、バイオマス度向上の観点から25%以上である事がバイオマス度向上の観点からより好ましい。しかしながら表面保護層においては、主成分である原料の他に、各種無機フィラーや各種有機フィラー、各種架橋剤、各種滑剤、各種安定化剤、各種UV吸収散乱剤、などが適宜少量添加されることがある為に、表面保護層のバイオマス度の上限は特に限定は出来ないが、表面保護層が表面保護フィルム層である場合に、植物由来原料に含まれる低分子成分の影響によって印刷層との間でデラミネーション発生の懸念があるなどの観点から、表面保護層のバイオマス度は80%以下である事が好ましく、50%以下である事がより好ましい。
【実施例0088】
本発明の実施例及び比較例で使用する各蓋材の形成方法について具体的に説明する。下記に示す蓋材の各層に使用する各種塗料の作製方法や、各層の形成方法は一例でありこれに限定されず、各種公知の方法が使用である。なお下記に示す配合等の数値は特に記載のない限り質量比率に基づく数値である。
【0089】
(参考例1)
最初に、基準となる植物由来原料を全く使用していない一般的な蓋材の作成方法の一例について説明する。基材層として厚み25.0μmで重量67.5g/m2のアルミニウム箔を使用し、その一方の面に着色顔料とバインダー樹脂を主成分とし、バインダー樹脂の主成分に塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を使用した市販の印刷用インキをオフセット印刷機によって乾燥後重量が0.8g/m2となるように印刷する事により印刷層1を設け、さらにその上層に塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を主成分とするニス剤をオフセット印刷機によって乾燥後重量が0.8g/m2となるようにベタ印刷する事によりニス層1(表面保護層)を設けた。なお前記印刷層1とニス層1のバイオマス度は共に0%である。
【0090】
さらに上記基材の印刷層1を設けた面の他方の面に、ポリウレタン系樹脂を主成分とするアンカーコート剤をグラビアコートによって乾燥後重量が0.5g/m2となるように塗布する事によってアンカーコート層を設け、続けてその上層に密度0.918g/m3でMFR(190℃/2.16kg)7.0g/10minの石油由来低密度ポリエチレンを溶融してTダイから押出してラミネートする事によって厚み25.0μmで重量23.0g/m2の応力緩和層1を設けた。なお前記アンカーコート層と応力緩和層1のバイオマス度は共に0%である。
【0091】
続けてさらに上記応力緩和層1の上層に、下記に示す配合からなるホットメルト接着剤層用塗料1をホットメルトグラビラビアコートによって、塗布量が15.0g/m2となるように塗布する事によってホットメルト接着剤層1(ヒートシール層)を設けた。以上の方法で作成した蓋材を参考例1の蓋材とした。なお前記ホットメルト接着剤層1のバイオマス度は0%である。
<ホットメルト接着剤用塗料1>
・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(酢酸ビニル含有量28%、MFR18g/10min(190℃/2.16kg)、軟化点40℃)・・・・・・・・・・・・ 35質量%
・マイクロクリスタリンワックス(融点80℃)・・・・・・・・・・・・ 30質量%
・水添脂肪族系粘着付与樹脂(軟化点90℃)・・・・・・・・・・・・ 35質量%