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特開2022-56327水蒸気流制御パネル及びこれを用いた乾燥装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056327
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】水蒸気流制御パネル及びこれを用いた乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 25/12 20060101AFI20220401BHJP
   F26B 3/04 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
F26B25/12 A
F26B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065127
(22)【出願日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2020163351
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520378344
【氏名又は名称】荒井 康芳
(71)【出願人】
【識別番号】515342125
【氏名又は名称】有限会社荒井家具製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】荒井 康芳
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AA06
3L113AB02
3L113AC08
3L113AC16
3L113AC23
3L113AC25
3L113AC67
3L113AC68
3L113AC73
3L113BA39
3L113CB15
3L113CB24
3L113DA02
(57)【要約】
【課題】より高い透湿性及びより高い断熱性を有する水蒸気流制御パネル及びこれを用いた低消費電力かつ低製造コストの乾燥装置を提供する。
【解決手段】水蒸気流制御パネル1はシート状をなしており、2つの透湿性シート11、12と、透湿性シート11、12によって挟まれたたとえば木製のフレーム13aによって形成された空気室13とによって構成される。空気流発生手段2はたとえばファンであり、水蒸気流制御パネル1の一表面にエアカーテンのごとき空気流Aを発生させるものである。気体水分子は透湿性シート11、12を通過すると共に、空気室13の内部では、気体水分子はブラウン運動による対流によって拡散される。各透湿性シート11、12の一表面で液化した水分子は各透湿性シート11、12の毛細管現象によって各透湿性シート11、12の他の表面に輸送される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2の透湿性シートと、
前記第1、第2の透湿性シートによって挟まれたフレームによって形成された空気室と
を具備する水蒸気流制御パネル。
【請求項2】
前記各第1、第2の透湿性シートはポリエステルシートである請求項1に記載の水蒸気流制御パネル。
【請求項3】
前記ポリエステルシートはポリエステル平織又はポリエステル編み物である請求項2に記載の水蒸気流制御パネル。
【請求項4】
前記ポリエステルシートは抗菌性成分を含有する請求項2に記載の水蒸気流制御パネル。
【請求項5】
前記抗菌性成分は抗菌性ナノ粒子(商標)である請求項4に記載の水蒸気流制御パネル。
【請求項6】
前記フレームは枠状又は格子状である請求項1に記載の水蒸気流制御パネル。
【請求項7】
さらに、前記透湿性シートを固定するメッシュ部材を具備する請求項1に記載の水蒸気流制御パネル。
【請求項8】
前記空気室内に通気性断熱部材を含有せしめた請求項1に記載の水蒸気流制御パネル。
【請求項9】
前記通気性断熱部材はグラスウール、メッシュ生地、ロックウール、エアロゲル又はセルロースナノファイバである請求項8に記載の水蒸気流制御パネル。
【請求項10】
主乾燥室と、
前記主乾燥室内に設けられた熱源と、
前記主乾燥室内に設けられ、被乾燥物を設置するための被乾燥物乾燥室と
を具備し、
前記主乾燥室の天井、壁、床、開閉扉の少なくとも一部は請求項1~9のいずれかに記載の水蒸気流制御パネルによって構成され、
さらに、前記主乾燥室内に設けられ、前記水蒸気流制御パネルの一表面に沿って空気流を発生させるための送風手段を具備する乾燥装置。
【請求項11】
主乾燥室と、
前記主乾燥室内に設けられた熱源と、
前記主乾燥室内に設けられ、被乾燥物を設置するためのロータリーキルン式被乾燥物乾燥室と
を具備し、
前記主乾燥室の壁の少なくとも一部は請求項1~9のいずれかに記載の水蒸気流制御パネルによって構成され、
さらに、前記主乾燥室内に設けられ、前記水蒸気流制御パネルの一表面に沿って空気流を発生させるための送風手段を具備する乾燥装置。
【請求項12】
主乾燥室と、
前記主乾燥室内に設けられ、被乾燥物を設置するための被乾燥物減圧乾燥室と、
前記主乾燥室と前記被乾燥物減圧乾燥室との間の近傍に設けられた減圧ファンと
を具備し、
前記主乾燥室の天井、壁、床、開閉扉の少なくとも一部は請求項1~9のいずれかに記載の水蒸気流制御パネルによって構成され、
前記減圧ファンは前記水蒸気流制御パネルの一表面に沿って空気流を発生させるためのものである乾燥装置。
【請求項13】
さらに、前記主乾燥室と前記被乾燥物減圧乾燥室との間の近傍に設けられた循環ファンを具備する請求項12に記載の乾燥装置。
【請求項14】
さらに、前記被乾燥物減圧乾燥室に設けられた熱源を具備する請求項12に記載の乾燥装置。
【請求項15】
前記熱源はヒートパイプである請求項11又は14に記載の乾燥装置。
【請求項16】
前記ヒートパイプはコンダクションチューブ(商標)である請求項15に記載の乾燥装置。
【請求項17】
さらに、
前記主乾燥室を収容する非透湿室と、
前記非透湿室の空気出口及び空気入口に接続されたヒートポンプと
を具備する請求項10又は12に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水蒸気流制御パネル及びこれを用いた乾燥装置たとえば高含水率バイオマスを低温(35°C~60°C)乾燥させるための乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品有機廃棄物、木材等の固有形状の高含有水率バイオマスを対象とする乾燥装置は、箱型である。この種の箱型乾燥装置として、真空方式、減圧方式、ヒートポンプ方式及び熱風方式(参照:非特許文献1)がある。
【0003】
真空方式は真空ポンプを必要とし、また、減圧方式は減圧のための減圧ファン、循環のための循環ファンを必要とし、さらに、ヒートポンプ方式はヒートポンプを必要とし、従って、乾燥装置の製造コスト及び消費電力が大きい。
【0004】
これに対し、熱風方式は、ヒータ及び送風ファンを必要とするが製造コストは低い。しかしながら、熱風方式は、熱風が外部から送り込まれ対象物の水分を蒸発させて外部へ排気される空気非循環式なので、乾燥に使われる熱量は投入熱量の25~40%程度であり、残りの熱量は主に排出熱風によって排出される(参照:非特許文献2)。従って、消費電力は大きい。尚、熱風方式に空気循環方式を導入できるが、この場合には、低温で操作した場合、湿度の増加によって乾燥速度が大きく低下し、さらに、消費電力が大きくなる(参照:非特許文献3)。
【0005】
他方、真空ポンプ、減圧ファン、循環ファン、ヒートポンプ、送風ファン等の機器を用いない第1の従来の乾燥装置においては、乾燥室の天井、壁、床等の躯体を内側板材、中間層及び外側板材とし、中間層に多量の潮解性の吸湿剤を含浸又は塗布した吸湿材料(たとえばダンボール紙)を隙間なく挿入してあり、さらに、乾燥室内に遠赤外線を放出する天然鉱石を設けてある(参照:特許文献1)。従って、内側板材から蒸発する水分を短時間に中間層が吸湿して拡散し、中間層が吸湿した水分を外側板材が排出する。従って、吸湿剤による透湿性及び板材による断熱性の両立を図っている。
【0006】
尚、透湿性とは、3つの性質、つまり内側の水蒸気を吸湿する吸湿性、吸湿された水蒸気を外側へ向って拡散する内部拡散性、及び拡散された水蒸気を外側へ脱湿する脱湿性をいう。
【0007】
しかしながら、上述の第1の従来の乾燥装置は、透湿性及び断熱性の両立を図ることができるも、潮解性の吸湿剤として用いる塩類等が安全上食品を対象とすることができず、しかも、内側板材及び外側板材の二重壁の間に中間層を挿入する三重構造のために製造コストが高い。
【0008】
また、真空ポンプ、減圧ファン、循環ファン、ヒートポンプ等の機器を用いない第2の従来の乾燥装置においては、乾燥室の天井、壁、床等の躯体を板材で構成し、さらに、熱を発生する熱源及び熱源からの熱を乾燥室に送り込む送風手段を設けている(参照:特許文献2)。これにより、内側の水蒸気を外側へ放出する透湿性を確保できる。
【0009】
また、上述の第2の従来の乾燥装置においては、潮解性の吸湿剤を用いていない。しかしながら、板材を薄くすれば高い透湿性が得られるが高い断熱性は得られず、他方、板材を厚くすれば高い断熱性が得られるが高い透湿性は得られない。つまり、透湿性及び断熱性はトレードオフの関係にあり、両立を図れない。
【0010】
さらに、上述の第1、第2の従来の乾燥装置においては、乾燥装置の内外で発生するカビ菌が増殖することを防止する手段がないので、被乾燥物上でカビ菌の繁殖を招くことがある。
【0011】
上述の乾燥装置に用いられる第1の従来の水蒸気流制御パネルは、バイオマスを原料として産生された抗菌性成分を含む溶液に含浸させて乾燥させた炭化物粒子層と、炭化物粒子層を挟んだ第1、第2の透湿性シートとを備え、第1、第2の透湿性シートの孔の直径は炭化物粒子層の炭化物粒子の直径より小さくしたものである。これにより、炭化物粒子層の炭化物粒子は第1、第2の透湿性シートによって漏れずに保持される(参照:特許文献3)。
【0012】
第1の従来の水蒸気流制御パネルによれば、水分子が移動して拡散する透湿性シートによって挟まれた炭化物粒子層は高い透湿性及び高い断熱性を有する。従って、これを用いた乾燥装置の消費電力を低減できる。
【0013】
第2の従来の水蒸気流制御パネルはポリエステルシートよりなる固形透湿構造よりなる(参照:特許文献4)。
【0014】
上述の第2の従来の水蒸気流制御パネルによれば、水分子が移動して拡散するポリエステルシートは高い透湿性及び高い断熱性を有する。従って、これを用いた乾燥装置の消費電力を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006-132911号公報
【特許文献2】特開2011-217628号公報
【特許文献3】特許第5963101号公報
【特許文献4】特許第6099179号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】中村ら、“はじめての乾燥技術”、日刊工業新聞社、p.102(2011)
【非特許文献2】中村ら、“はじめての乾燥技術”、日刊工業新聞社、p.130(2011)
【非特許文献3】中村ら、“はじめての乾燥技術”、日刊工業新聞社、p.132(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述の第1の従来の水蒸気流制御パネルにおいては、炭化物粒子層の炭化物粒子の通過を抑えるために、透湿性シートは炭化物粒子の直径より小さいたとえば0.4nm以上2μm以下の小孔を有しなければならず、この結果、製造コストが上昇するという課題がある。
【0018】
また、上述の第2の従来の水蒸気流制御パネルにおいては、比較的厚いポリエステルシートよりなる固形透湿構造が大きいので、やはり、製造コストが上昇するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述の課題を解決するために、本発明に係る水蒸気流制御パネルは、第1、第2の透湿性シートと、第1、第2の透湿性シートによって挟まれたフレームによって形成された空気室とを具備するものである。
【0020】
上述の第1、第2の透湿性シートには抗菌性成分を含有させることができる。これにより、カビ菌の増殖を防止する。
【0021】
また、本発明に係る乾燥装置は、主乾燥室と、主乾燥室内に設けられた熱源と、主乾燥室内に設けられ、被乾燥物を設置するための被乾燥物設置室とを具備し、主乾燥室の天井、壁、床、開閉扉の少なくとも一部は上述の水蒸気流制御パネルによって構成され、さらに、主乾燥室内に設けられ、水蒸気流制御パネルの一表面に沿って空気流を発生させるための送風手段を具備するものである。
【0022】
さらに、本発明に係る乾燥装置は、主乾燥室と、主乾燥室内に設けられ、被乾燥物を設置するための減圧乾燥室と、主乾燥室と減圧乾燥室との間の近傍に設けられた減圧ファンとを具備し、主乾燥室の天井、壁、床、開閉扉の少なくとも一部は上述の水蒸気流制御パネルによって構成され、減圧ファンは水蒸気流制御パネルの一表面に沿って空気流を発生させるためのものである。
【0023】
さらにまた、上述の乾燥装置は、主乾燥室を収容する非透湿室と、非透湿室の空気出口からの空気を冷却して蒸発成分を凝縮する凝縮手段と、蒸発成分を除去した乾燥空気を加熱する加熱手段と、非透湿室の空気入口へ戻すための送風手段とを具備する。特にこれらを実現する手段としてヒートポンプ又は吸着冷凍機が望ましい。また、乾燥装置は、凝縮した蒸発成分を蓄積するドレーンユニットを具備する。この乾燥装置は特に薬草の乾燥に適する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、気体水分子は各透湿性シートを通過すると共に、水蒸気流制御パネルの空気室の内部では、気体水分子はブラウン運動による対流によって拡散される。他方、空気室の各透湿性シートの一表面で液化した水分子は各透湿性シートの毛細管現象によって空気室の各透湿性シートの他の表面に輸送される。従って、空気流の存在の基で空気室はより高い透湿性を有すると共に、より高い断熱性を有する。また、該水蒸気流制御パネルを用いた乾燥装置の消費電力を低減できる。さらに、空気室の存在のために透湿性シートを薄くできるので、該水蒸気流制御パネルを用いた乾燥装置の製造コストも低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る水蒸気流制御パネルの実施の形態を示す断面図である。
図2図1の水蒸気流制御パネルの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図3図1の水蒸気流制御パネルの変更例を示す斜視図である。
図4図1の水蒸気流制御パネルを用いた乾燥装置の第1の例を示す概略図である。
図5】市販乾燥装置を示す概観図である。
図6図4の乾燥装置の実例を示し、(A)は概観図、(B)、(C)はフレームを示す図である。
図7図5図4図6)の乾燥装置のトレーを示す図である。
図8図5図4図6)の乾燥装置の比較試験結果を説明する表であり、(A)は市販乾燥装置の乾燥処理データを示し、(B)は図4図6)の乾燥装置の乾燥処理データを示す。
図9図1の水蒸気流制御パネルを用いた乾燥装置の第2の例を示す概略図である。
図10図4図9)の乾燥装置の変更例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は本発明に係る水蒸気流制御パネルの実施の形態を示す断面図である。
【0027】
図1において、水蒸気流制御パネル1は、シート状をなしている、2つの透湿性シート11、12と、透湿性シート11、12によって挟まれたたとえば木製のフレーム13aによって形成された空気室13とによって構成される。空気流発生手段2はたとえばファンであり、水蒸気流制御パネル1の一表面にエアカーテンのごとき空気流Aを発生させるものである。尚、フレーム13aは枠状とすることも、格子状とすることもできる。
【0028】
図1においては、透湿性シート11、12はポリエステルシートよりなる。ポリエステルシート自体は固形を維持できるが、さらに固形を維持できるように、ポリエステルシートを好ましくはポリエステル平織又はポリエステル編み物で構成する。ポリエステルシートは直径0.1~100μm程度以上の孔を有する。つまり、気体水分子の長手方向サイズ(0.4nm)より大きい隙間を有する。従って、直径(長手方向サイズ)0.4nm程度の水蒸気Vはポリエステルシートを通過できる。また、気体水分子は透湿性シート11、12を通過すると共に、空気室13の内部では、気体水分子がブラウン運動による対流によって拡散される。他方、空気室13の各透湿性シート11、12の一表面で液化した水分子は透湿性シート11、12の毛細管現象によって空気室13の各透湿性シート11、12の他の表面に輸送される。この結果、透湿性シート11、12のポリエステルシート及びフレーム13aの各厚さを適切にすることにより空気流Aの存在の基でより高い透湿性及びより高い断熱性を発揮する。たとえば、水蒸気流制御パネル1の厚さtは、
t=10~30mm
である。
【0029】
尚、ポリエステルシートの孔の直径は、好ましくは、0.1~2μmとすることもできる。これにより、ポリエステルシートはすべての胞子(2μmより大)より小さい隙間を有する。従って、菌糸と胞子よりなるカビ等の有害微生物の移動を防止できる。
【0030】
以下に、図1の水蒸気流制御パネル1の製造方法について図2を参照して説明する。
【0031】
始めに、ポリエステルシート準備工程201において、ポリエステルシートとしてポリエステル平織を準備する。
【0032】
次に、分散工程202において、ポリエステル平織を溶媒に分散して型に入れる。この場合、調質材として炭化物粒子を溶媒に分散させることもできる。さらに、天然又はバイオマスを原料として産生された抗菌性成分を分散させることもできる。たとえば、溶媒は水又はフルボ酸液及び/又は酢液とする。溶媒をフルボ酸液及び/又は酢液とした場合、フルボ酸液及び/又は酢液成分は抗菌性成分となる。さらに、抗菌性成分としては、株式会社ナノカム製の抗菌性ナノ粒子(商標)を分散させてもよい。
【0033】
次に、乾燥工程203にて溶媒を蒸発させてポリエステル平織を乾燥させる。
【0034】
最後に、切断工程204において、ポリエステル平織を型から取出して所望の大きさに切断してユニット化する。
【0035】
尚、切断されたポリエステル平織自身が固形性つまり機械的強度を維持するので、固形性を維持するための手段は不要である。しかし、 図3に示すごとく、水蒸気流制御パネル1の機械的強度をさらに保持するために、透湿性シート11、12上にたとえばメラミン焼き付け塗装した直径2.5mmの鉄丸棒を交叉させたメッシュ状部材14-1、14-2を設けて固定してもよい。また、ポリエステル平織の代りに、ポリエステル編み物を用いてもよい。
【0036】
図4図1の水蒸気流制御パネル1を用いた乾燥装置の第1の例を示す概略図である。
【0037】
図4において、乾燥装置は、天井31、壁32、床33及び開閉扉(図示せず)よりなる主乾燥室3、被乾燥物を設置するための3段のトレー41、42、43を含む被乾燥物乾燥室4、ヒータ5、送風ファン61、62、主乾燥室3の温度Tを検出する温度センサ7、及び温度センサ7の温度Tに基づいてヒータ5及び送風ファン61、62を制御する制御ユニット(マイクロコンピュータ)8よりなる。
【0038】
図4において、主乾燥室3の天井31、壁32、床33及び開閉扉(図示せず)は図1の水蒸気流制御パネル1によって構成されている。また、天井31、壁32、床33及び開閉扉(図示せず)の内側表面には空気流発生手段としての送風ファン61、62による空気流が存在する。さらに、主乾燥室3が断熱されているので、被乾燥物乾燥室4は断熱する必要がない。その分、製造コストを低減できる。
【0039】
図4の乾燥装置の動作を以下に説明する。
【0040】
始めに、被乾燥物たとえば野菜、薬草等を被乾燥物乾燥室4のトレー41、42、43に設置する。次に、所定の温度Tたとえば40℃を設定し、ヒータ5及び送風ファン61、62を起動する。制御ユニット8は温度センサ7の温度Tが所定の温度Tとなるようにヒータ5をオンオフ制御する。この結果、ヒータ5によって加温された空気は、太線矢印に示すごとく、トレー41、42、43内を通過して被乾燥物を乾燥させ、天井31、壁32に沿って下降して循環する。このとき、乾燥を終えた空気の水蒸気圧は上昇し、その空気に含まれる水蒸気は、細線矢印に示すごとく、天井31、壁32、床33及び開閉扉(図示せず)を構成する水蒸気流制御パネル1によって乾燥装置の内側から外側へ排出される。
【0041】
天井31、壁32、床33及び開閉扉(図示せず)の水蒸気流制御パネル1の内部は循環式となり、乾燥に要した熱以外の熱は水蒸気流制御パネル1の断熱性によって漏出することなく、又は漏出されてもその熱は小さく、循環式の乾燥装置内で循環される。一方、水蒸気は水蒸気流制御パネル1によって排出されるので、循環される空気の水蒸気圧は低くなり、被乾燥物を乾燥できる。
【0042】
図5に示す市販乾燥装置(東明テック(株)製、製造名:プチマレンギ、モデル名:TTM-4355T)と図4に示す乾燥装置との比較実験を行った。図4に示す乾燥装置の全体斜視図を図6の(A)に示すと、図5の市販乾燥装置の6枚の天井、壁、床を図1の水蒸気流制御パネル1に置換することによって実現できる。また、図6の(B)、(C)は図6の(A)の空気室13(図示せず)を形成するためのフレーム13aの例を示し、木製の格子である。ここでは、フレーム13aにポリエステルシート11(12)(マスダ(株)、BK966_ブライトキング(東レフィールドセンサー(R)丸織))を一般木工用耐熱スプレー接着剤(アイカ工業(株)、RQ-NVN2)で接着する。また、トレー41、42、43は図5の市販乾燥装置及び図6の(A)の乾燥装置で共通であり、図7の(A)に示す厚さ28mmのトレー41(42、43)を上に4段、図7の(B)に示す厚さ42mmのトレー41(42、43)を下に2段、合計6段とする。図7の(A)、(B)における被乾燥試料はたとえば桧板片701である。
【0043】
図5の市販乾燥装置及び図6の乾燥装置の比較実験条件は次の通りである。
設定乾燥温度:38℃(市販乾燥装置)、35℃(図4図6)の乾燥装置)
乾燥時間:99時間
被乾燥試料(1個当り)の桧板片701:4020mm(長さ)、119mm(幅)、16mm(幅)
乾燥装置の寸法:横535mm、奥行き415mm、縦355mm
【0044】
市販乾燥装置については、図8の(A)に示す結果が得られ、図4図6)の乾燥装置については、図8の(B)に示す結果が得られた。すなわち、水分減少量は、市販乾燥装置については、926.7gであり、図4図6)の乾燥装置については、914.0gであった。従って、乾燥速度はほとんど変わらなかった。他方、乾燥に要した消費電力量は、市販乾燥装置については、4.37kWhであり、図4図6)の乾燥装置については、2.29kWhであった。従って、大きな消費電力低減効果が認められた。
【0045】
尚、上述の図4図6)に示す乾燥装置においては、天井31、壁32、床33及び開閉扉を図1の水蒸気流制御パネル1によって構成しているが、天井31、壁32、床33及び開閉扉の少なくとも一部を図1の水蒸気流制御パネル1によって構成すればよい。
【0046】
また、上述の図4図6)に示す乾燥装置においては、送風ファン61、62を設けずに空気の流れは自然対流としてもよい。この場合、空気流発生手段は被乾燥物乾燥室4自体である。
【0047】
さらに、上述の図4図6)に示す乾燥装置においては、熱交換器よりなるヒータ5は通常高い電力を必要とする。従って、ヒータ5の代りにヒートパイプたとえばコンダクションチューブ(商標)を用いて外部より100℃以下の低熱を利用してもよい。
【0048】
通常の熱交換器に比べ、ヒートパイプは媒体の気化及び液化によって熱を伝達するので、伝熱速度が大きく与熱媒体と吸熱媒体との温度差が小さくても熱を伝達できる。特に、ヒートパイプの中でも、コンダクションチューブ(商標)においては、外側のチャンバと内側のコアパイプとからなる二重管構造の減圧密閉チャンバ内に蒸発性作動流体を封入し、蒸発性作動流体の気化及び液化により、コアパイプを流れる流体とチャンバ外部の流体との間の熱交換を行う。従って、気化した媒体が管の内部に液化する際に超音波や遠赤外線を発生するので、被乾燥物の内部に熱を伝えることができ、乾燥速度の上昇、乾燥の均一性を実現できる。
【0049】
さらに、上述の図4図6)に示す乾燥装置は被乾燥物乾燥室4の代りにロータリーキルン式被乾燥物乾燥室を有する乾燥装置にも適用できる。ロータリーキルン式被乾燥物乾燥室は横向き円筒形をなしており、おから等の乾燥に適する。この場合にも、主乾燥室の壁の少なくとも一部を図1の水蒸気流制御パネル1によって構成する。
【0050】
図9図1の水蒸気流制御パネル1を用いた乾燥装置の第2の例を示す概略図である。
【0051】
図9において、図4の被乾燥物設置室4の代りに被乾燥物減圧乾燥室4’を設け、被乾燥物減圧乾燥室4’には、主乾燥室3との境界近傍に設けられた減圧ファン9及び循環ファン10、被乾燥物減圧乾燥室4’の温度T及び圧力Pを検出する温度センサ7及び圧力センサ7’が設けられている。
【0052】
制御ユニット8は温度センサ7の温度T及び圧力センサ7’の圧力Pに基づいて減圧ファン9及び循環ファン10を制御する。
【0053】
図9において、主乾燥室3の天井31、壁32、床33及び開閉扉(図示せず)の内側表面には空気流発生手段としての減圧ファン9による空気流が存在する。また、主乾燥室3が断熱されているので、被乾燥物減圧乾燥室4’は断熱する必要がない。
【0054】
被乾燥物減圧乾燥室4’においては、減圧ファン9及び循環ファン10のオンオフ動作により被乾燥物減圧乾燥室4’内の空気は主乾燥室3内に排気され、被乾燥物減圧乾燥室4’内の圧力は減圧される。このとき、減圧ファン9及び循環ファン10から発生する熱により主乾燥室3から被乾燥物減圧乾燥室4’内に吸入される空気の温度は上昇する。このようにして、減圧下での乾燥が行われる。尚、熱源として、熱交換器又はヒートパイプ特にコンダクションチューブ(商標)を被乾燥物減圧乾燥室4’に設けてもよい。
【0055】
図9の乾燥装置の動作を以下に説明する。
【0056】
始めに、被乾燥物たとえば野菜、薬草等をトレー41、42、43に載せる。次に、所定の温度T及び圧力Pを設定し、減圧ファン9及び循環ファン10を起動する。制御ユニット8は温度センサ7の温度Tが所定の温度Tとなるようにかつ圧力センサ7’の圧力Pが所定圧力Pとなるように減圧ファン9及び循環ファン10をオンオフ制御する。この結果、主乾燥室3から吸入された空気は、太線矢印に示すごとく、トレー41、42、43内を通過して被乾燥物を乾燥させ、天井31、壁32に沿って下降して循環する。このとき、乾燥を終えた空気の水蒸気圧は上昇し、その空気に含まれる水蒸気は、細線矢印に示すごとく、天井31、壁32、床33及び開閉扉(図示せず)を構成する水蒸気流制御パネル1によって主乾燥室3の内側から外側へ排出される。
【0057】
このように、図9に示す乾燥装置においては、被乾燥物減圧乾燥室4’の断熱が不要となった分、製造コストを低減できる。また、吸気と排気との間の熱変換が不要となった分、消費電力を低くできる。
【0058】
尚、上述の図9に示す乾燥装置においては、減圧ファン9のみで被乾燥物減圧乾燥室4’の圧力及び温度を制御できれば、循環ファン10は不要となる。
【0059】
図10図4図9の乾燥装置の変更例を示すブロック図である。
【0060】
図10においては、図4図9)の水蒸気流制御パネル1の主乾燥室3を非透湿室に収容している。非透湿室50は断熱性、非断熱性のいずれでもよく、たとえばナノセルロース及び/又はナノファイバを含む。非透湿室50はヒートポンプ51の1次側、2次側に接続された空気出口50-1、空気入口50-2を有する。ヒートポンプ51の1次側では、非透湿室50の空気出口50-1からの空気を冷却して蒸発成分を凝縮してドレーンユニット52に排出する。他方、蒸発成分が排出された乾燥空気はヒートポンプ51の2次側で加熱され、非透湿室50の空気入口50-2に戻される。非透湿室50の温度は自由にたとえば20℃に設定できる。図10の乾燥装置は、特に、薬草の乾燥に用いた場合に有効であり、薬草の成分をドレーンユニット52に回収できる。
【0061】
尚、上述の実施の形態において、空気室13内に通気性断熱部材たとえばグラスウール、メッシュ生地、ロックウール、エアロゲル、セルロースナノファイバ等を含有せしめてもほぼ同一効果が得られた。この場合、空気室13の堅固性が向上する。
【0062】
また、上述の実施の形態においては、透湿性シートはシート状をなしているたとえばポリエステルシートであるが、本発明の透湿性シートは壁状をなしている壁状部材をも含むものとする。
【0063】
また、図4において、送風ファン62の代りに、他の送風手段を設けてもよい。たとえば被乾燥室4から空気を抜いて圧縮しその圧縮した空気を被乾燥室4に戻す空気圧縮機を用い、コアンダ効果による空気流を発生するものでもよい。つまり、送風ファン62又は空気圧縮機を空気流を発生するための送風手段とすることができる。
【0064】
また、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲内でのいかなる変更にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る水蒸気流制御パネルを用いた乾燥装置は、野菜、薬草等の乾燥装置の外、木材の乾燥装置、防水装置等に利用できる。
【符号の説明】
【0066】
1:水蒸気流制御パネル
11、12:透湿性シート
11a、12a:孔
13:空気室
13a:フレーム
14-1、14-2:メッシュ状部材
2:空気流発生手段
3:主乾燥室
31:天井
32:壁
33:床
4:被乾燥物乾燥室
4’:被乾燥物減圧乾燥室
41、42、43:トレー
5:ヒータ
61、62:送風ファン
7:温度センサ
7’:圧力センサ
8:制御ユニット
9:減圧ファン
10:循環ファン
50:非透湿室
50-1:空気出口
50-2:空気入口
51:ヒートポンプ
52:ドレーンユニット
701:桧板片

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-01-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
最後に、切断工程204において、ポリエステル平織を型から取出して所望の大きさに切断しフレーム13a(図1)を用いてユニット化する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
さらに、前記透湿性シートを固定するメッシュ部材を具備する請求項1に記載の水蒸気流制御パネル。