(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056366
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】レンズモジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20220401BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20220401BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20220401BHJP
G02B 3/14 20060101ALI20220401BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220401BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20220401BHJP
G03B 15/00 20210101ALN20220401BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G02B7/02 F
G03B17/02
G02B7/02 E
G03B30/00
G02B3/14
H04N5/225 400
G02B7/04 E
G03B15/00 T
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021137122
(22)【出願日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】10 2020 125 369.9
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス プフレングレ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ ブルガー
【テーマコード(参考)】
2H044
2H100
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AA15
2H044AA18
2H044AE06
2H044AH01
2H044BF00
2H100BB11
2H100EE00
5C122EA59
5C122FB03
5C122FB17
5C122GE05
5C122GE11
5C122HA81
(57)【要約】 (修正有)
【課題】適応レンズの組み込みを改善すること。
【解決手段】底面(44)及び側壁(46)を有するモジュールケース(42)と、該モジュールケース(44)内にある、焦点距離が可変の適応レンズ(40)と、該適応レンズ(40)を前記モジュールケース(42)内で保持するための押圧要素(48)とを備えるレンズモジュール(38)において、前記押圧要素が波形ばね(48)を備えることを特徴とするレンズモジュール(38)。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面(44)及び側壁(46)を有するモジュールケース(42)と、該モジュールケース(44)内にある、焦点距離が可変の適応レンズ(40)と、該適応レンズ(40)を前記モジュールケース(42)内で保持するための押圧要素(48)とを備えるレンズモジュール(38)において、
前記押圧要素が波形ばね(48)を備えることを特徴とするレンズモジュール(38)。
【請求項2】
前記適応レンズ(40)がゲルレンズ又は液体レンズである、請求項1に記載のレンズモジュール(38)。
【請求項3】
前記適応レンズ(40)が少なくとも1つの電極(54a~b)を備え、前記レンズモジュール(38)が前記電極(54a~b)に前記モジュールケース(42)の外側から接触するための接続配線(56)、特にフレキシブル配線を備えている、請求項1又は2に記載のレンズモジュール(38)。
【請求項4】
温度感知器(20、58)を備え、特に該温度感知器が前記接続配線(56)上の抵抗器(58)として構成されている、請求項1~3のいずれかに記載のレンズモジュール(38)。
【請求項5】
前記適応レンズ(40)と前記波形ばね(48)との間に絶縁要素(52)を備え、該絶縁要素(52)が特に前記適応レンズ(40)を前記モジュールケース(42)内に入れるための取り付け要素を兼ねるように構成されている、請求項1~4のいずれかに記載のレンズモジュール(38)。
【請求項6】
前記波形ばね(48)を前記適応レンズ(40)に押圧するためのプレス要素(50)を備えている、請求項1~5のいずれかに記載のレンズモジュール(38)。
【請求項7】
前記プレス要素(50)、前記波形ばね(48)、前記絶縁要素(52)、前記適応レンズ(40)及び前記底面(44)がこの順序で上下に配置されている、請求項1から4まで並びに請求項5及び6のいずれかに記載のレンズモジュール(38)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のレンズモジュール(38)を有する対物レンズであって、前記レンズモジュール(38)を対物レンズ(60、62)に押し付ける第2のばね(64)を有する対物レンズ。
【請求項9】
前記第2のばねが多重巻きばねとして構成されている、請求項8に記載の対物レンズ。
【請求項10】
前記レンズモジュール(38)と前記対物レンズ(60、62)の間に前記レンズモジュール(38)の接続配線(56)を正しい位置へ回転させるための遊びばめが設けられている、請求項8又は9に記載の対物レンズ。
【請求項11】
前記第2のばね(64)の上側に配置された外部光フィルタ(68)を備えている、請求項8~10のいずれかに記載の対物レンズ。
【請求項12】
発光器(22)及び/又は受光器(16)と、該発光器(22)及び/又は該受光器(16)の前に配置された請求項8~10のいずれかに記載の対物レンズとを備える光電センサ(10)。
【請求項13】
前記対物レンズが前記第2のばね(64)でセンサ(10)の前面パネル(66)に押し付けられている、請求項12に記載のセンサ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1のプレアンブルに記載の適応レンズを有するレンズモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ほぼ全ての光学センサに発光又は受光光学系が設けられている。しばしばこの光学系は焦点調節装置を用いて特定の距離又は距離範囲に精確に調節される。それは電気機械的又は光学機械的にレンズの位置ひいては発光又は受光光学系の背面焦点距離を例えばステップモータ又は可動コイルで調節することによる。このような解決策には大きな設置スペースが必要である上、実際に予め決めた焦点位置になるように精確な調整ができるようにするための機械的な構成に対する要求が厳しい。
【0003】
代案として、背面焦点距離ではなくレンズ自体の形状そして焦点距離を電圧制御により直接変化させる光学系の使用がある。それには特にゲルレンズ又は液体レンズが用いられる。ゲルレンズの場合、シリコーン状の液体を圧電型又は誘電型アクチュエータで機械的に変形させる。液体レンズでは、例えば、混合不能で、好ましくは濃度が近いものの、屈折率と電気的特性が異なる2つの液体をチャンバ内で重ねて配置することにより、いわゆるエレクトロウェッティング(electrowetting)効果を利用する。制御電圧を印加すると、2つの液体の表面張力に異なる変化が生じ、その結果、液体の内部境界面の湾曲が電圧に応じて変化する。
【0004】
適応レンズは適切な方法で対物レンズに組み込んでから、その対物レンズと一緒にセンサに組み込まなければならない。全体の設計を適応レンズに合わせる必要がないようにするため、標準対物レンズを使用できるようにすべきである。適応レンズを統合するには決まった力で押圧する必要がある。
【0005】
ある従来の解決策ではそのためにゴム又は他の弾性材料から成るOリングを用いる。押圧力が所要の範囲に収まるように、Oリングの特性(コード太さ、ショアー硬度等)を全ての許容差、材料の経年変化及び予想される温度範囲にわたり精密に設定することは、ある程度の数を超えた大量生産では不可能である。その結果、力が弱すぎれば接触に問題が生じ、力が強すぎれば適応レンズが損傷する恐れがある。力をより良く制御するとともに許容差に左右されないようにするため、Oリングをねじリングで追加的に固定することができる。それでも温度範囲を超えて力を一定に保つことはやはり難しい。また、適応レンズには接続配線が必要であるが、これは側方に引き出されており、ねじ固定の際にその位置が変わる。ねじの始点を決めたり、折り畳み技術で接続配線を長くしたりすれば位置ずれを防止又は補償できるが、それにはコストがかかり、満足とは言えない。
【0006】
更に、適応レンズをモジュールに組み込み、その際に止め輪でOリングを適切な位置に保持することが知られている。しかしこれでは先に説明した問題は解決せず、力の分布は一様ではなく、依然として前述の許容差の影響を受ける。更に、適応レンズを対物レンズに十分に近付けて配置し、その光軸に合わせることが難しい。中心合わせには追加のプラスチック射出成形部品を用いることができるが、そうするとそのプラスチック射出成形部品を予定の方法で装着できるように対物レンズを成形しなければならない。その上、構造サイズの直径が大きくなる。
【0007】
また、Oリングの代替物として金属板曲げ部品から成るばねが知られている。これはコストをかけて設計したばねを特別に製造する必要がある。また、取り付けの際に金属板曲げ部品が歪んで力の変化を生じさせる可能性がある。更に、適応レンズを打ち抜き曲げ部品で回路基板上に搭載することが知られている。しかしこれでは、個別の設計及び製造にコストがかかるとともに力が変化する可能性があるという前述の欠点は克服されない。更に、温度の影響で光軸が中心からずれる可能性がある。
【0008】
特許文献1から、多数の他の要素とともに波形ばねを用いた、カメラモジュールのレンズ用の調節装置が知られている。特許文献2ではホルダ内のレンズをねじの回転により往復移動させることができ、そのねじの周囲に波形ばねが設けられている。特許文献3は渦巻きばね、円盤ばね又は波形ばねを有する別の焦点調節装置を開示している。しかしここでは構造上の課題は比較できない。なぜならそれぞれ焦点合わせのためにレンズ全体を動かさなければならないからである。これに対し、適応レンズは位置が固定されており、そのように保持されなければならない。なぜならここでは焦点合わせが焦点距離の変化によるからである。特許文献4は顕微鏡の軸方向に移動可能な集光器内にある波形ばねを開示しているが、ここでは液体レンズとの技術的な違いはより大きくなる。
【0009】
特許文献5は焦点を変更できるメガネに関する。直線運動を作り出すアクチュエータ内に波形ばねが配置されているが、その機能は明確に決められた力で適応レンズをその位置に保持することではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US 2006/0044455 A1
【特許文献2】US 7 616 388 B2
【特許文献3】JP 4419417 B2
【特許文献4】EP 0 098 540 A2
【特許文献5】US 2013/0229617 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
故に本発明の課題は適応レンズの組み込みを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は請求項1に記載のレンズモジュールにより解決される。例えば少なくとも1つの電極に制御信号又は制御電圧を印加することにより焦点距離を変えることができる適応レンズが、底面と側壁を有するモジュールケースに収納される。押圧要素が上から適応レンズに力を作用させ、その力で適応レンズを底面に押し付けることにより該適応レンズをモジュールケース内で保持する。「底面」(即ち下面)や「上から」といった方向の概念は特定の観察に関係するものであり、相対的なものと理解すべきである。なぜなら、レンズモジュールは当然ながら全体として任意に回転させることができるからである。
【0013】
本発明の出発点となる基本思想は押圧要素として波形ばねを用いることにある。このような波形ばねは例えばボールベアリングに用いられる。故にボールベアリングメーカーの精密波形ばねを使用することができる。波形ばねの作用により、許容差、温度効果又は経年変化現象によって変化する明確に決められた押圧力が生じる。
【0014】
先に挙げた部品、即ち適応レンズ、底面と側壁を有するモジュールケース、及び波形ばねは円筒状又は円環状に形成され、以て光軸に関して少なくとも近似的に回転体となっていることが好ましい。これは近似的なものに過ぎない。なぜなら、接続部や凹部、また波形ばねの場合は規定された軸方向の波形が厳密な回転体から外れるからである。この好ましい形態は本発明の任意選択の構成のために以下に紹介する要素のほとんどについても該当する。
【0015】
本発明には、レンズモジュールのおかげで様々な標準対物レンズに適応レンズをモジュール式に統合できるという利点がある。取り付けの複雑さが著しく低減される。要求される押圧力を上回る又は下回ることなく、工場の温度範囲全体にわたって確実な接続と接触が成される。モジュールケース、波形ばね等の様々な要素を金属部品として形成できるから、温度に敏感なプラスチックの使用が避けられる。構造サイズを小さくできる。適応レンズがばねで付勢されているため、衝撃及び振動のある厳しい工場の環境でも、レンズモジュール及び該モジュールから構成された対物レンズ又はセンサを使用できる。
【0016】
適応レンズは好ましくは液体レンズ又はゲルレンズであり、特に2つの混合不能な媒質を有し、それらの双方の境界面が電圧の印加により該電圧に応じた湾曲を呈することが好ましい。このようなレンズは焦点位置を所望の通り調節することができ、また非常に小型で安価である。
【0017】
好ましくは、適応レンズが少なくとも1つの電極を備え、レンズモジュールが前記電極にモジュールケースの外側から接触するための接続配線、特にフレキシブル配線を備えている。少なくとも1つの電極を通じて適応レンズが制御されることでその焦点距離が適合化される。接続配線がモジュールケースの外部への接続を作り出す。接続配線は好ましくはフレキシブル配線として構成されている。
【0018】
好ましくは、レンズモジュールが温度感知器を備え、特に該温度感知器が前記接続配線上の抵抗器として構成されている。温度が分かればそれを例えば焦点距離を調整するための制御信号の温度補償に利用できる。接続配線上の抵抗器としての構成は非常にコンパクトで簡単である。
【0019】
レンズモジュールが適応レンズと波形ばねとの間に絶縁要素を備え、該絶縁要素が特に適応レンズをモジュールケース内に入れるための取り付け要素を兼ねるように構成されていることが好ましい。Oリングを用いる従来の解決策では絶縁は必要ない。しかし金属製で導電性のある波形ばねは適応レンズの電極間又は該電極と接続配線との間に短絡を生じさせる可能性がある。絶縁要素には取り付けの際に適応レンズが正しい位置にくるようにする追加の機能を持たせることができる。
【0020】
レンズモジュールは波形ばねを適応レンズに押圧するためのプレス要素を備えていることが好ましい。例えばプレスリングとして構成されたプレス要素が波形ばねを押すことで、ばねが緊張状態となり、所望の弾性力を適応レンズに及ぼす。プレス要素の方は、例えばレンズモジュールが対物レンズと一緒に組み込まれた状態で押圧され、その力を波形ばねへ伝える。
【0021】
プレス要素、波形ばね、絶縁要素、適応レンズ及び底面はこの順序で上下に配置されていることが好ましい。既に述べたように、「上下に」のような方向概念は、モジュールケースの底面が下を向いていると想定した場合の相対的なものと理解すべきである。いくつかの実施形態において前記要素のいずれかが欠けた場合でも、残りの要素は前記と同じ順序を保っていることが好ましい。
【0022】
好ましい発展形態では、対物レンズに本発明に係るレンズモジュールが設けられ、第2のばねでレンズモジュールが対物レンズ又はその接続部分(鏡胴)に押し付けられる。モジュール式の構造ゆえに、本レンズモジュールは様々な対物レンズの変型に使用することができる。取り付けは非常に簡単に、好ましくは工具なしで行われる。また、コンパクトな構造になる。
【0023】
第2のばねは多重巻きばねとして構成されていることが好ましい。これにより第2のばねはレンズモジュールと第2のばねの反対側の保持体(例えば前面パネル)とを様々な間隔で仲介することができる。従って、同じ第2のばねを用いて同じレンズモジュールを少なくとも一定の範囲内で異なるサイズの対物レンズに使用することができ、異なる間隔で異なる対物レンズ焦点距離を得ることができる。間隔が大きすぎる場合は別の第2のばねを用いることが必要になる可能性がある。
【0024】
レンズモジュールと対物レンズ又はその接続部分若しくは鏡胴との間にはレンズモジュールの接続配線を正しい位置へ回転させるための遊びばめが設けられていることが好まし。側面での接続配線の向きを遊びばめで非常に簡単に設定及び修正できる。
【0025】
対物レンズは第2のばねの上側に配置された外部光フィルタを備えていることが好ましい。「上側に」もまた、レンズモジュールの底面を下に向け、該底面を対物レンズ又はその接続部分の上に置いた場合の相対的なものと理解すべきである。従って外部光フィルタは第2のばねの、レンズモジュール及び対物レンズとは反対側にあり、配列の順序は下から対物レンズ、レンズモジュール、第2のばね及び外部光フィルタとなる。
【0026】
好ましい発展形態では、発光器及び/又は受光器を有する光電センサが、該発光器及び/又は受光器の前に配置された本発明に係る対物レンズを備えている。レンズモジュールが光軸上での適応レンズの正確な位置決めを可能にする。この光電センサは、例えば、受光器としての画像センサとその前に配置された本発明に係る対物レンズとを備えるカメラ、あるいは本発明に係る対物レンズを通じて読み取り光線を形成するバーコードスキャナである。
【0027】
対物レンズは第2のばねでセンサの前面パネルに押し付けられていることが好ましい。これにより、対物レンズ、(接続部分又は鏡胴)、レンズモジュール、第2のばね、前面パネルという配列順序になり、任意選択の外部光フィルタは前面パネルの前に配置される。前面パネルが第2のばねを押すことにより所要の弾性力が生じ、これがプレス要素と波形ばねを介して最終的に適応レンズを明確に決められ且つ持続的に所望の範囲に収まった力でモジュールケースの底面上に保持する。
【0028】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】受光光学系内に適応レンズを有する光電センサの概略断面図。
【
図2】発光光学系内に適応レンズを有する光電センサの概略断面図。
【
図5】
図4のレンズモジュールの切開した3次元図。
【
図7】対物レンズと一緒に取り付けられた
図4~6のレンズモジュールの3次元図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は監視領域12から物体情報を取得するための光電センサ10の概略断面図である。受光光学系14を通じて画像センサ16(例えばCCDチップ又はCMOSチップ)が監視領域12の画像を撮影する。撮影画像のデータは制御及び評価ユニット18へ転送される。
【0031】
受光光学系14は制御及び評価ユニット18の電子制御により焦点距離を変更できる適応レンズを備えている。
図1では破線で模範的に代替の焦点距離調節を示している。適応レンズについて考えられる構造の機能原理については後で
図3を参照して詳しく説明する。温度感知器20が制御及び評価ユニットと接続されており、適応レンズと少なくとも間接的に熱的に接続した状態になるように配置されている。
【0032】
図2は光電センサ10の別の実施形態を示している。この実施形態は発光光学系24を有する発光器22があることで
図1に示した実施形態と相違している。即ち、今度は適応レンズが発光光学系24の一部であり、受光光学系14の焦点位置は固定されている。
図1と同様の温度感知器20を
図2の実施形態でも発光光学系24の適応レンズのために設けることができる。更に、受光光学系14と発光光学系24が適応レンズを備えていたり、適応レンズを有する共通の光学系が画像センサ16と発光器22のために設けられたりした、
図1と
図2の実施形態の混成も考えられる。ここでも適応レンズに温度感知器20を設けることができる。また、
図1においても、例えば監視領域12を照明するため、又は光信号を生成して距離測定のためにその光伝播時間を測定するために、適応レンズのない発光光学系を有する発光器22を追加することもできる。
【0033】
つまり
図1及び2は多数のセンサを代表する原理図である。例えば、
図1に示したセンサ10は可変焦点カメラであって、物体の検査及び測定を行うための多様な用途に特に適しており、好ましくは、監視領域12を通過するように物体を移動させる搬送設備の近くに静的に取り付けられる。コードを読み取るためのそれ自体は公知の信号処理又は画像処理を用いればバーコードスキャナ又はカメラベースのコードリーダが得られる。画像センサ16はライン状又は行列状に配列された画素を備えることができる。更に別の実施形態では画像センサ16の代わりに例えばフォトダイオードやAPD(アバランシェフォトダイオード)といった別の受光器が用いられる。後者は例えば特に距離測定用の光センサ又はレーザスキャナに用いられる。
【0034】
発光器22も様々な機能を果たすことができる。例えば発光光学系24を用いて特定の明るく照らされた監視領域12が設定され、鮮明なコントラストパターン、撮影領域又は読み取り領域を見分けやすくするための鮮明な標的パターン、あるいは鮮明な光スポットが一定の距離に投影される。これにより、カメラベースのコードリーダ、コードスキャナ又は3次元カメラ等、非常に様々なセンサ10が考えられる。
【0035】
図3は、エレクトロウェッティング効果による液体レンズ26としての模範的な実施形態における受光光学系14又は発光光学系24の適応レンズを示している。ここで重要なのは機能原理のみであり、具体的な構成及び構造形態は図から離れてもよい。機能の仕方をこの液体レンズ26に基づいて説明するが、本発明は、例えば液体チャンバとそれを覆う隔壁とを有し、その湾曲が液体への圧力により変化するものや、光を通すゲル状の材料を有し、それがアクチュエータにより機械的に変形されるレンズ等、他の適応レンズも含む。
【0036】
能動的に調節可能な液体レンズ26は、屈折率が異なり、密度が等しい、透明で混合不能な2つの液体28、30を有している。2つの液体28、30の間の液体境界層32の形状が光学的な機能のために利用される。その作動は、表面張力又は境界面張力が印加電場への依存性を示すというエレクトロウェッティングの原理に基づいている。それ故、適宜の電圧を電極36に印加するための接続部34における電気的な制御により、境界層32の形状、ひいては液体レンズ26の光学的特性を変化させることができる。焦点距離の調節の他に傾きの調節も考えられる。その場合は少なくとももう1つの電極が液体レンズ26に設けられる。
【0037】
図4~6は適応レンズ40を有するレンズモジュール38を断面図、切開した3次元図及び外側から見た3次元図で示している。適応レンズ40は
図3で説明したように液体レンズとしてもよいし、焦点距離を調節するための別の原理を用いてもよい。適応レンズ40は底面44及び側壁46を有するモジュールケース42に収容されている。波形ばね48が適応レンズ40を底面44に向けて下方へ押し付けている。波形ばね48の方はプレスリング50により上から押圧されている。波形ばね48と適応レンズ40の間に絶縁要素52が配置されている。
【0038】
特に
図5及び6の3次元図を見れば分かるように、前記の各部品は円筒状に又はリングとして形成されており、いずれにせよ近似的に光軸を中心とする回転体となっている。
【0039】
適応レンズ40の電極54a~bにはフレキシブル配線として構成された接続配線56が接触しているため、電極54a~bはレンズモジュール38の外から側面で制御することができる。
図5にはまた温度感知器として用いられる任意選択の抵抗器58が接続配線56上に示されている。
【0040】
本発明によれば、このように適応レンズ40が波形ばね48により付勢される、即ち、決まった力で底面44に押し付けられる。こうして、このばねが許容差の厳しい従来のOリングに置き換わり、Oリングと結びついた欠点が回避される。波形ばね48は好ましくは金属から成り、例えばボールベアリングメーカーの精密波形ばねである。その利点は、波形ばね48の特性曲線がほぼ直線になり、それが及ぼす力が工場の温度範囲全体にわたってほとんど変動しないことにある。金属製であり、従来のOリングと違って導電性のある波形ばね48のために、適応レンズ40の電極54a~bの間の電気的絶縁が必要になる。この役割を絶縁要素52が果たす。これはリング状に形成され、同時に取り付け補助具としても利用できる。プレスリング50は、レンズモジュールの取り付けの際にその前面がブロックされてモジュールケース42へと押され、それにより適応レンズに対する波形ばね48の力が正しい力(典型的には10N未満)に自動的に調節されるように、その厚さが設計されていることが好ましい。
【0041】
図7は対物レンズに取り付けられたレンズモジュール38を3次元図で示している。レンズモジュール38は対物レンズ60又はその接続部分62(鏡胴)上に配置されている。対物レンズ60という呼び方はやや不正確である。なぜなら、対物レンズ60とレンズモジュール38の組み合わせも1つの対物レンズと解釈できるからである。ここではそれをもう区別しないが、対物レンズ60はいずれにせよ一又は複数のレンズを備え、それらがレンズモジュール38の適応レンズ40とともに1つの対物レンズのように作用する。
【0042】
モジュールを統合するため、レンズモジュール38は接続部分62に装着され、多重巻きばね64を通じて押圧されて適切な位置に保持される。反対側では多重巻きばね64が例えば光電センサ10の前面パネル66、又は前面パネル66の代わりに別の要素に押し付けられて緊張状態になる。更に、その間に任意選択の外部光遮蔽体又は外部光フィルタ68を配置することができる。
【0043】
多重巻きばね64は、様々な対物レンズの間隔又は対物レンズ60に適合して、それぞれ適応レンズ40に対する弾性力を所望の範囲で生じさせるように設計することができる。対物レンズ60又は接続部分62とレンズモジュール38のモジュールケース42との間の遊びばめを通じて、適応レンズ40が対物レンズ60の光軸に正確に位置合わせされる。対物レンズ60へのレンズモジュール38の取り付けは工具なしで行うことができる。適応レンズ40の電極54a~bには接続配線56が接触している。レンズモジュール38が嵌められた後、まず多重巻きばね64、それから前面パネル66と外部光フィルタ68を持つセンサ10の蓋が被せられる。接続配線56は取り付けの際に遊びばめを通じて正しい位置へ回される。
【外国語明細書】