(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056408
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】冷却システム付き電力モジュール
(51)【国際特許分類】
B61C 17/00 20060101AFI20220401BHJP
B61C 17/12 20060101ALI20220401BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20220401BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
B61C17/00 A
B61C17/12 A
H01L23/46 B
H05K7/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021157955
(22)【出願日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】2009878
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】521423898
【氏名又は名称】カルヨス
(71)【出願人】
【識別番号】313011906
【氏名又は名称】アルストム トランスポート テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジル・ヴァル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・デュポン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ジャルビー
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・ニコラウ
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA11
5E322AB11
5E322DB06
5E322EA10
5E322FA01
5E322FA04
5F136CA15
5F136CC12
5F136CC16
5F136CC22
5F136DA27
(57)【要約】
【課題】冷却システムに変更を加えることで、システムの性能を低下させることなく、従来技術の不都合を是正すること。
【解決手段】本発明は、鉄道車両のための電力モジュール(12)であって、電流変換機器(20)と、二相の伝熱流体(30)の閉回路(28)と、前記伝熱流体の熱を空気流に移転できる第1の熱交換器(25)と、発熱性機器の熱を伝熱流体に移転できる第2の熱交換器(26)とを備える電力モジュール(12)に関する。
伝熱流体の回路は主ループ(32)と二次分岐(34)を備え、二次分岐の入口(40)と出口(42)は第1の熱交換器から離れて主ループに連結され、前記入口は前記出口の下流側に配置され、第2の熱交換器(26)は前記二次分岐に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)、特に鉄道車両のための電力モジュール(12)であって、
- 電流の変換に寄与するものである発熱性機器(20)と、
- 二相の伝熱流体(30)の閉回路(28)と、
- 前記伝熱流体の熱を空気流に移転できる第1の熱交換器(25)と、
- 前記発熱性機器の熱を前記伝熱流体に移転できる第2の熱交換器(26)と
を備える電力モジュール(12)において、
前記伝熱流体(30)の回路(28)が主ループ(32)と二次分岐(34)を備え、前記主ループが互いに接続された第1の部位(36)と第2の部位(37)を備え、前記第1の熱交換器(25)が前記第1の部位に配置され、
前記二次分岐の入口(40)と出口(42)が前記主ループの前記第2の部位に連結され、前記入口が、前記第2の部位において前記主ループ内の前記伝熱流体の循環方向に沿って前記出口の下流側に配置され、
前記第2の熱交換器(26)が前記二次分岐に配置されることを特徴とする、電力モジュール(12)。
【請求項2】
前記第2の熱交換器(26)が、二相の前記伝熱流体(30)が通る少なくとも1つの毛細管蒸発器(54)を備え、前記伝熱流体が、前記または各々の毛細管蒸発器内の気液界面のレベルで発生する圧力の作用で前記閉回路内を循環する、請求項1に記載の電力モジュール(12)。
【請求項3】
前記または各々の毛細管蒸発器(54)が、前記第2の熱交換器の入口(50)から液体の状態で受け取る前記伝熱流体(30)を完全に気化させる毛細管芯(58)であって、前記伝熱流体すべてを気体の状態で前記第2の熱交換器の出口(52)へ送り出すことができる毛細管芯を備える、請求項2に記載の電力モジュール(12)。
【請求項4】
前記閉回路(28)が、前記伝熱流体の循環のための機械式ポンプを持たない毛細管圧送ループである、請求項2または3に記載の電力モジュール(12)。
【請求項5】
前記第2の熱交換器(26)が傾斜面上に配置され、前記第2の熱交換器の入口(50)が前記第2の熱交換器の出口(52)より上方に配置される、請求項2から4のいずれか一項に記載の電力モジュール(12)。
【請求項6】
前記第2の熱交換器(26)の前記入口(50)が、前記二次分岐(34)の前記入口(40)よりも低い位置にある、請求項5に記載の電力モジュール(12)。
【請求項7】
前記伝熱流体(30)が、フッ素を含まない化合物、好ましくはアセトンである、請求項1から6のいずれか一項に記載の電力モジュール(12)。
【請求項8】
前記主ループ(32)の前記第1の部位(36)が、前記第1の部位の各々の端部に配置された分流器(44)および合流器(46)によって複数の第2の部位(37)に接続され、伝熱流体の前記回路(28)が複数の二次分岐(34)を備え、前記分岐の各々が前記第2の部位(37)のいずれか1つに接続される、請求項1から7のいずれか一項に記載の電力モジュール(12)であって、複数の第2の熱交換器(26)を備え、前記交換器の各々が前記二次分岐(34)のいずれか1つに配置される、電力モジュール(12)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電力モジュール(12)を備える鉄道車両用駆動ボックス(14)。
【請求項10】
電動機と、請求項9に記載の駆動ボックス(14)とを具備する駆動ラインを備える鉄道車両(10)であって、前記駆動ボックスが好ましくは前記車両の屋根に位置する、鉄道車両(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に鉄道車両のための電力モジュールであって、電流の変換に寄与するものである発熱性機器と、二相の伝熱流体の閉回路と、前記伝熱流体の熱を空気流に移転できる第1の熱交換器と、発熱性機器の熱を伝熱流体に移転できる第2の熱交換器とを備えるタイプの電力モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
このような冷却システム付き電力モジュールについては、特に文献EP2291067に記載がある。冷却システムは、第2の熱交換器への供給用として、外部制御型加熱冷却手段を装備した二相の伝熱流体のタンクを特に備える。
【0003】
この装置は、電力モジュールから放出される熱に応じて冷却システムの性能を変化させるために、回路内の伝熱流体の圧送流量を調節することができる。
【0004】
そのような電力モジュールでは、回路内の伝熱流体の循環は、第2の熱交換器内における流体の気化などによって行われる。しかし、ポンプの作動温度は80℃近くにもなり、それでは電力モジュールの電子機器には高すぎるものとなる可能性がある。
【0005】
また、このような冷却システムには、潜熱が大きい伝熱流体を使用する必要がある。そうした制約があるため、メタノールのような有毒な流体が使用されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、冷却システムに変更を加えることで、システムの性能を低下させることなく、それらの不都合を是正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため、本発明は、前述のタイプの電力モジュールであって、伝熱流体の回路が主ループと二次分岐を備え、主ループが互いに接続された第1の部位と第2の部位を備え、第1の熱交換器が前記第1の部位に配置され、二次分岐の入口と出口が主ループの第2の部位に連結され、前記入口が、前記第2の部位において主ループ内の伝熱流体の循環方向に沿って前記出口の下流側に配置され、第2の熱交換器が前記二次分岐に配置される、電力モジュールを対象とする。
【0009】
本発明のその他の有利な態様によれば、電力モジュールは、以下のいずれか1つまたは複数の特徴を単独または技術的に可能なあらゆる組合せで取り上げたものを含む。
- 第2の熱交換器は、二相の伝熱流体が通る少なくとも1つの毛細管蒸発器を備え、前記伝熱流体は、そのまたは各々の毛細管蒸発器内の気液界面のレベルで発生する圧力の作用で閉回路内を循環する。
- そのまたは各々の毛細管蒸発器は、第2の熱交換器の入口から液体の状態で受け取る伝熱流体を完全に気化させる毛細管芯であって、前記伝熱流体すべてを気体の状態で前記第2の熱交換器の出口へ送り出すことができる毛細管芯を備える。
- 閉回路は、伝熱流体の循環のための機械式ポンプを持たない毛細管圧送ループである。
- 第2の熱交換器は傾斜面上に配置され、前記第2の熱交換器の入口は前記第2の熱交換器の出口より上方に配置される。
- 第2の熱交換器の入口は、二次分岐の入口よりも低い位置にある。
- 伝熱流体は、フッ素を含まない化合物、好ましくはアセトンである。
- 主ループの第1の部位は、前記第1の部位の各々の端部に配置された分流器および合流器によって複数の第2の部位に接続され、伝熱流体の回路は複数の二次分岐を備え、前記分岐の各々は前記第2の部位のいずれか1つに接続され、電力モジュールは複数の第2の熱交換器を備え、前記交換器の各々は前記二次分岐のいずれか1つに配置される。
【0010】
本発明はさらに、上述のような電力モジュールを備える駆動ボックスにも関する。
【0011】
本発明はさらに、電動機と、上述のような駆動ボックスとを具備する駆動ラインを備える鉄道車両であって、前記駆動ボックスが好ましくは前記車両の屋根に位置する鉄道車両にも関する。
【0012】
本発明は、図面を参照しながら、もっぱら限定的でない例としてのみ示す以下の説明を読むことによってよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による冷却装置付き電力モジュールを備える鉄道車両を、正面から見た断面による部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、電力モジュール12、すなわち電力変換器、を備える鉄道車両10を示している。鉄道車両10は、たとえば、客車または貨車からなる列車の動力車両である。鉄道車両10は、電力モジュール12によって電力の供給を受ける、駆動ラインの電動機(図示せず)を備える。
【0015】
鉄道車両10は、
図1に示すように前記車両の屋根に位置する駆動ボックス14を特に備える。
【0016】
Z方向が鉛直線、X方向が鉄道車両10の移動の長手方向、Y方向が水平な横断方向に相当する正規直交基底(X、Y、Z)を考える。
【0017】
駆動ボックス14の外側面は、ほぼ平面(X、Y)内に配置された中央パネル16と、中央パネル16の両側に位置する側方パネル17とによって画定される。側方パネル17は鉄道車両10の正中面(X、Y)に関して互いにほぼ対称形をなす。
図1には1つのみの側方パネル17が示されている。
【0018】
各々の側方パネル17は傾斜しており、中央パネル16と接する端部は反対側の端部よりも高い。そのため、駆動ボックス14の形状は従来からの凸形となる。参考として、側方パネルは、水平に対して20°から60°の角度で傾斜する。
【0019】
また、駆動ボックス14は、側方パネル17とほぼ平行な少なくとも1つの傾斜面18であって、前記側方パネルの下に配置された傾斜面を有する内部構造を備える。前記側方パネル17と前記傾斜面18との間にある空間は、駆動ボックス14の内部区画19を形成する。
【0020】
電力モジュール12は、発熱し得る少なくとも1つの変換ユニット20と、その少なくとも1つのユニット20の冷却装置22とを備える。好ましくは、電力モジュール12は、ほぼ同一の複数の変換ユニット20を備え、冷却装置22は、前記ユニットの各々を冷却することができる。
【0021】
好ましくは、電力モジュール12は、そのまたは複数の変換ユニット20に電気的に接続された少なくとも1つのフィルタコンデンサ24をさらに備える。
【0022】
変換ユニット20は、接続装置によって接続されたトランジスタ型の複数の半導体装置を特に備える。好ましくは、半導体装置は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)である。IGBTは、変換ユニット20では特にスイッチ機能を有する。
【0023】
その変換ユニット20または少なくとも1つの変換ユニット20は、駆動ボックス14の内部区画19内に配置されることが好ましい。
【0024】
図2に模式的に示した冷却装置22は、第1の熱交換器25および少なくとも1つの第2の熱交換器26と、前記第1の交換器25と第2の交換器26をつなぐ閉じた流体回路28とを備える。前記流体回路28内を二相の伝熱流体30が循環する。
【0025】
伝熱流体30は、フッ素を含まない化合物であることが好ましく、より好ましくはアセトンである。メタノールを使用することもできる。ハイドロフルオロオレフィン(HFO)系のフッ素化気体であるR-1233zd(E)ガスおよびR-1336mzz(Z)ガスを使用することもできる。
【0026】
第1の熱交換器25は、流体回路28の伝熱流体30と外部の空気、特に鉄道車両10の移動によって発生する空気流との間で熱交換を行うことができる。これを混合対流という。変形形態では、流体回路28の伝熱流体30と外部の空気との熱交換は、(勾配現象による)自然対流か、または(流体の人為的な循環による)強制対流によって行われる。
【0027】
第1の熱交換器25は、たとえばフィン付き放熱器である。前記第1の熱交換器は、横断方向Yに沿って駆動ボックス14の中央に、すなわち中央パネル16の下に配置されることが好ましい。
【0028】
第2の熱交換器26は、変換ユニット20と流体回路28の伝熱流体30との間の熱交換を行うことができる。そこで、第2の熱交換器26は、変換ユニット20と熱的に接触するように配置される。好ましくは、前記変換ユニットのIGBTは、第2の熱交換器26と熱的に接触する。
【0029】
IGBTと第2の熱交換器26との間の効果的な熱的接触は、乾式界面タイプなどの、とりわけグラファイト製の、熱伝導性界面を通して実現される。
【0030】
第2の熱交換器26は、駆動ボックス14の内部区画19に、たとえば傾斜面18に当接する形で、配置されることが好ましい。第2の熱交換器26の好ましい構造についてはこの先で詳述する。
【0031】
流体回路28は、主ループ32と二次分岐34を特に備える。主ループ32は、互いに接続された第1の部位36と第2の部位37を備える。
【0032】
第1の熱交換器25は、主ループ32の第1の部位36に配置され、入口38と出口39を備える。好ましくは、出口39は、鉛直線を基準として入口38よりも低い位置になる。
【0033】
二次分岐34は、主ループ32のうち、インゼクタとも呼ばれる第2の部位37に接続される。より詳細には、二次分岐の入口40と出口42はインゼクタ37に接続され、前記入口40は、主ループ32内の伝熱流体の循環方向に沿って前記出口42の下流側に配置される。
【0034】
第2の熱交換器26は、二次分岐34に配置される。
【0035】
二次分岐34の出口42は、鉛直線を基準として入口40よりも低いことが好ましい。二次分岐34の入口40の位置は、鉛直線を基準として合流器46と比べて、かつ/または第1の熱交換器25の入口38と比べて、低いことが好ましい。
【0036】
好ましくは、主ループ32の第1の部位36は、前記第1の部位36の各々の端部に配置された分流器44および合流器46によってインゼクタ37と接続される。より好ましくは、流体回路28は、分流器44および合流器46によって第1の部位36に接続された複数のインゼクタ37と、各々がインゼクタ37に接続された複数の二次分岐34とを備え、冷却装置22は、各々が前記二次分岐34のいずれか1つに配置された複数の第2の熱交換器26を備える。第2の熱交換器26の各々は、電力モジュール12の変換ユニット20と熱的に接触した状態で配置される。
【0037】
図3にさらに詳しく示した第2の熱交換器26について、以下にさらに詳しく説明する。電力モジュール12が複数の第2の熱交換器26を備える場合、それらはほぼ同一であるとみなす。
【0038】
第2の熱交換器26は、入口50と、出口52と、それら入口50と出口52との間に配置された少なくとも1つの毛細管蒸発器54とを備える。
【0039】
好ましくは、入口50は、鉛直線沿いに出口52よりも高い位置になる。
図1に示す実施形態では、第2の熱交換器26は、特に傾斜面18上に配置される。
【0040】
より好ましくは、二次分岐34の入口40、第2の熱交換器26の入口50および出口52、二次分岐34の出口42は、この順で上から下に配置される。
【0041】
図3に示された実施形態では、入口50および出口52は、それぞれ分流管および合流管によって形成され、第2の熱交換器26は、並列に配置された複数の毛細管蒸発器54を備える。第2の熱交換器26の毛細管蒸発器の数は、1から3であることが好ましい。
【0042】
図3に示された実施形態では、第2の熱交換器26は、毛細管蒸発器54を支える外装55をさらに備える。
【0043】
各々の毛細管蒸発器54は、正方形の断面を持ち、ほぼ軸56に沿って延びる細長い形状をなし、外枠57と、前記外枠内に収められた毛細管芯58と、毛細管芯58によって境界が与えられる内室60とを備える。図示した実施形態では、軸56は、ほぼ(Y、Z)平面内に配置され、鉛直線に対して傾斜している。
【0044】
内室60の第1の軸方向端部は、第2の熱交換器26の入口50を形成する分流管に接続される。第1の端部よりも低い位置にある前記内室の第2の軸方向端部は、毛細管芯58によって閉じられる。
【0045】
外枠57の第1の軸方向端部は、毛細管芯58によって閉じられる。第1の端部よりも低い位置にある枠の第2の端部は、第2の熱交換器26の出口52を形成する合流管に接続される。
【0046】
毛細管芯58は、多孔質の材料、より詳細には前記内室60と外枠57をつなぐメニスカス(図示せず)を含む材料によって形成される。
【0047】
この先で説明するように、そのまたは複数の毛細管蒸発器54は、閉じた流体回路28内で流体30を循環させるものである。好ましくは、前記流体回路28は、その一方で伝熱流体30循環用の機械式ポンプを備えず、前記循環は、そのまたは複数の毛細管蒸発器54によってのみ果たされる。
【0048】
以下では、電力モジュール12の動作について説明する。
【0049】
上に説明した鉄道車両の駆動ラインの電動機は、前記鉄道車両の移動のために運転される。さらに、電力モジュール12の少なくとも1つの変換ユニット20も運転される。そのため、前記変換ユニットの構成機器、特にIGBTは熱を放出し、その熱は、第2の熱交換器26の外装55を通して伝導によって毛細管蒸発器54の外枠57まで拡散する。すると、前記外枠のレベルで伝熱流体30が気化することにより、毛細管蒸発器によって形成されるポンプが作動し始める。この自己加圧によって熱サイホンの開始温度を下げることができる。
【0050】
それにより、伝熱流体30は、入口50のレベルでは液体の状態で第2の熱交換器26内に入り、毛細管芯58を通り抜ける間に気化し、前記交換器の出口52のレベルでは蒸気の状態となって出る。それにより、伝熱流体30は、変換ユニット20から出された熱を第2の熱交換器26を通して吸収する。
【0051】
そこで生じた蒸気は、続いて、流体回路28の下部に位置する二次分岐34の出口42に合流する。それにより、インゼクタ37内では、主ループ32内を循環する液体の伝熱流体30に気泡62が混じり合う。前記泡62の存在は、合流器46に向けて下から上昇する前記流体の循環を助ける。また、泡62によって運ばれる熱は、液体の伝熱流体30を温めるため、それもまたその上方への移動には有利に作用する。
【0052】
その後、二相の伝熱流体30は、流体回路28の第1の部位36に入り込み、第1の熱交換器25の入口38へと至る。前記第1の交換器のレベルで、伝熱流体30は、鉄道車両の移動などによって生じる空気流に熱を移転する。前記伝熱流体30内の気体濃度は低下する。また、前記流体の温度も下がるため、第1の熱交換器25の出口39に向けて下降するその移動には有利となる。
【0053】
冷却された伝熱流体30は、分流器44のレベルでインゼクタ37に合流し、さらに上述の二次分岐34の出口42のレベルへと至ることで、回路28内の前記流体30の循環サイクルが維持される。
【0054】
こうして、流体回路28の主ループ32は、熱サイホンの原理に従って動作するが、流体30の速度は、二次分岐34の出口42で気泡62が注入されることによって増す。
【0055】
文献EP2291067に記されているような既知の毛細管圧送システムと比較すると、この流体速度の増大によって、より小さな潜熱の伝熱流体を、冷却装置の性能低下を来すことなく使用することが可能となる。そのため、メタノールよりも毒性の低いアセトンの類の流体を伝熱流体30として使用することが可能となる。
【0056】
二次分岐34の入口40のレベルでは、流体30の第1の部分はインゼクタ37内に残り、前記流体の第2の部分は、第2の熱交換器26の方へ移動する。第2の熱交換器26の位置が傾斜しているため、気泡62は前記第2の熱交換器26に入りづらい。そのため、伝熱流体30は、各々の毛細管蒸発器54の内室60内に液体の状態で入り、その後、毛細管芯58の中で気化する。
【0057】
文献EP2291067に記されている毛細管蒸発器の場合とは異なり、毛細管芯58における伝熱流体30の気化温度は一定ではなく、前記温度は、第1の交換器25における熱交換条件に応じた範囲内で変わり得る。
【0058】
このような装置は、文献EP2291067に記されている流体タンクを、さらには前記タンクの熱制御手段の駆動を不要とすることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 車両
12 電力モジュール
14 駆動ボックス
16 中央パネル
17 側方パネル
18 傾斜面
19 内部区画
20 変換ユニット、発熱性機器
22 冷却装置
24 フィルタコンデンサ
25 第1の熱交換器
26 第2の熱交換器
28 閉回路
30 伝熱流体
32 主ループ
34 二次分岐
36 第1の部位
37 第2の部位、インゼクタ
38 入口
39 出口
40 入口
42 出口
44 分流器、分流管
46 合流器、合流管
50 入口
52 出口
54 毛細管蒸発器
55 外装
56 軸
57 外枠
58 毛細管芯
62 気泡
【外国語明細書】