(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056534
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】転落防止装置、及び転落防止方法
(51)【国際特許分類】
A62B 35/00 20060101AFI20220404BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20220404BHJP
E04G 5/14 20060101ALI20220404BHJP
E04G 5/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A62B35/00 H
E04G21/32 D
E04G5/14 302B
E04G5/00 301B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164336
(22)【出願日】2020-09-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】520380255
【氏名又は名称】有限会社山哲
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲史
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184LA03
(57)【要約】
【課題】立柱のない鉄筋の組立現場においても簡単な操作で作業者の安全を確保することを課題とする。
【解決手段】第1締付口11を有した上平板部10と、上平板部を対向させた状態で、上平板部における第1締付口と略同一場所に第2締付口21を有した下平板部20と、上平板部と下平板部とを対向させた状態で、第1締付口と第2締付口とに挿入して上平板部と下平板部との間の間隔を調節可能な締付部30と、底面部43を有し、天面が開放された略円筒形状の単管挿入部40と、を備え、下平板部の一方の端部近傍に雌ねじ部22を有するとともに、下平板部と上平板部とを対向させた状態で、雌ねじ部と略同一場所の上平板部に雄ねじ挿入孔12を有し、単管挿入部の底面部には、頭を上にした雄ねじ部41の一部が固定されているとともに、雄ねじ部の先端が底面部から下方に突き出していることを特徴とする転落防止装置100を用いることとした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築現場において転落を防止する転落防止装置であって、
第1締付口を有した上平板部と、
前記上平板部を対向させた状態で、前記上平板部における前記第1締付口と略同一場所に第2締付口を有した下平板部と、
前記上平板部と前記下平板部とを対向させた状態で、前記第1締付口と前記第2締付口とに挿入して前記上平板部と前記下平板部との間の間隔を調節可能な締付部と、
底面部を有し天面が開放された略円筒形状の単管挿入部と、を備え、
前記下平板部の一方の端部近傍に雌ねじ部を有するとともに、前記下平板部と前記上平板部とを対向させた状態で、前記雌ねじ部と略同一場所の前記上平板部に雄ねじ挿入孔を有し、
前記単管挿入部の前記底面部には、頭を上にした雄ねじ部の一部が固定されているとともに、前記雄ねじ部の先端が前記底面部から下方に突き出していることを特徴とする転落防止装置。
【請求項2】
前記第1締付口及び前記第2締付口はともに長穴であり、
前記締付部は、当該長穴である前記第1締付口及び前記第2締付口に沿って摺動可能であることを特徴とする請求項1に記載の転落防止装置。
【請求項3】
前記雄ねじ部は、前記雄ねじ挿入孔を貫通し前記雌ねじ部に螺合することで前記上平板部及び前記下平板部との間の間隔を調節可能であり、
前記雄ねじ部の前記雌ねじ部に対する螺合を解除することで前記単管挿入部と、前記上平板部及び前記下平板部と、が分離可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の転落防止装置。
【請求項4】
第1締付口を有した上平板部と、前記上平板部を対向させた状態で、前記上平板部における前記第1締付口と略同一場所に第2締付口を有した下平板部と、前記上平板部と前記下平板部とを対向させた状態で、前記第1締付口と前記第2締付口とに挿入して前記上平板部と前記下平板部との間の間隔を調節可能な締付部と、底面部を有し天面が開放された略円筒形状の単管挿入部と、を備え、前記下平板部の一方の端部近傍に雌ねじ部を有するとともに、前記下平板部と前記上平板部とを対向させた状態で、前記雌ねじ部と略同一場所の前記上平板部に雄ねじ挿入孔を有し、前記単管挿入部の前記底面部には、頭を上にした雄ねじ部の一部が固定されているとともに、前記雄ねじ部の先端が前記底面部から下方に突き出している転落防止装置を準備し、
前記上平板部と前記下平板部とで鉄筋を挟むように位置させ、
前記締付部を前記第1締付口と前記第2締付口とに挿入し前記上平板部と前記下平板部との間隔を調節して固定するとともに、前記雄ねじ部を前記雌ねじ部に螺合させて、前記上平板部と前記下平板部との間で前記鉄筋を締め付け、
前記単管挿入部に単管を挿入し、
前記単管に命綱、親綱、又は水平方向の単管を係止することを特徴とする転落防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場における鉄筋上を歩行する際の転落を防止する転落防止装置、及び転落防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物を建築する際に、コンクリート打設する場所に複数の鉄筋からなる組立筋を構築し、その後、型枠を設置してコンクリートを打設する。その組立筋構築時又は型枠設置時に、誤って組立筋上部から下に落下して怪我をする恐れがある。
【0003】
特許文献1には、立柱に狭着した固定部に主支持杆を固定し、主支持杆にロープを係止可能な安全装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:実開昭51-144029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、立柱に固定部を狭着することが必須であるから、立柱のない作業現場では使用できないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決して、立柱のない鉄筋の組立現場においても簡単な操作で作業者の安全を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、建築現場において転落を防止する転落防止装置であって、
第1締付口を有した上平板部と、
前記上平板部を対向させた状態で、前記上平板部における前記第1締付口と略同一場所に第2締付口を有した下平板部と、
前記上平板部と前記下平板部とを対向させた状態で、前記第1締付口と前記第2締付口とに挿入して前記上平板部と前記下平板部との間の間隔を調節可能な締付部と、
底面部を有し天面が開放された略円筒形状の単管挿入部と、を備え、
前記下平板部の一方の端部近傍に雌ねじ部を有するとともに、前記下平板部と前記上平板部とを対向させた状態で、前記雌ねじ部と略同一場所の前記上平板部に雄ねじ挿入孔を有し、
前記単管挿入部の前記底面部には、頭を上にした雄ねじ部の一部が固定されているとともに、前記雄ねじ部の先端が前記底面部から下方に突き出していることを特徴とする転落防止装置を提供するものである。
【0008】
この構成により、立柱のない鉄筋の組立現場においても簡単な操作で作業者の安全を確保することができる。
【0009】
転落防止装置であって、前記第1締付口及び前記第2締付口はともに長穴であり、
前記締付部は、当該長穴である前記第1締付口及び前記第2締付口に沿って摺動可能である構成としてもよい。
【0010】
この構成により、簡単な構成で締付部による締付位置を調整することができる。
【0011】
転落防止装置であって、前記雄ねじ部は、前記雄ねじ挿入孔を貫通し前記雌ねじ部に螺合することで前記上平板部及び前記下平板部との間の間隔を調節可能であり、
前記雄ねじ部の前記雌ねじ部に対する螺合を解除することで前記単管挿入部と、前記上平板部及び前記下平板部と、が分離可能である構成としてもよい。
【0012】
この構成により、簡単な構成で、単管挿入部と上平板部及び下平板部との間の間隔を調節可能とできるとともに、上平板部及び下平板部から雄ねじ部及び単管挿入部を分離して、上平板部及び下平板部を含めたままコンクリートを打設することができる。
【0013】
また、上記課題を解決するために本発明は、第1締付口を有した上平板部と、前記上平板部を対向させた状態で、前記上平板部における前記第1締付口と略同一場所に第2締付口を有した下平板部と、前記上平板部と前記下平板部とを対向させた状態で、前記第1締付口と前記第2締付口とに挿入して前記上平板部と前記下平板部との間の間隔を調節可能な締付部と、底面部を有し天面が開放された略円筒形状の単管挿入部と、を備え、前記下平板部の一方の端部近傍に雌ねじ部を有するとともに、前記下平板部と前記上平板部とを対向させた状態で、前記雌ねじ部と略同一場所の前記上平板部に雄ねじ挿入孔を有し、前記単管挿入部の前記底面部には、頭を上にした雄ねじ部の一部が固定されているとともに、前記雄ねじ部の先端が前記底面部から下方に突き出している転落防止装置を準備し、
前記上平板部と前記下平板部とで鉄筋を挟むように位置させ、
前記締付部を前記第1締付口と前記第2締付口とに挿入し前記上平板部と前記下平板部との間隔を調節して固定するとともに、前記雄ねじ部を前記雌ねじ部に螺合させて、前記上平板部と前記下平板部との間で前記鉄筋を締め付け、
前記単管挿入部に単管を挿入し、
前記単管に命綱、親綱、又は水平方向の単管を係止することを特徴とする転落防止方法を提供するものである。
【0014】
この構成により、立柱のない鉄筋の組立現場においても簡単な操作で作業者の安全を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の転落防止装置、及び転落防止方法により、立柱のない鉄筋の組立現場においても簡単な操作で作業者の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1における転落防止装置を説明する図である。
【
図2】本発明の実施例1における(a)上平板部、(b)締付部座金、(c)単管挿入部の底面部を説明する図である。
【
図3】本発明の実施例1における締付部を説明する図である。
【
図4】本発明の実施例1における転落防止装置を鉄筋に取付けた事例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0017】
本発明の実施例1について、
図1~
図4を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1における転落防止装置を説明する図である。
図2は、本発明の実施例1における(a)上平板部、(b)締付部座金、(c)単管挿入部の底面部を説明する図である。
図3は、本発明の実施例1における締付部を説明する図である。
図4は、本発明の実施例1における転落防止装置を鉄筋に取付けた事例を説明する図である。
【0018】
(転落防止装置)
実施例1における転落防止装置100は、第1締付口11を有した上平板部10と、上平板部10と対向させた状態で、上平板部10における第1締付口11と略同一場所に第2締付口21を有した下平板部20とを備えている。また、上平板部10と下平板部20とを対向させた状態で、第1締付口11と第2締付口21とに挿入して、上平板部10と下平板部20との間の間隔を調節可能な締付部30と、底面が閉じられて底面部43を有し、天面が開放された略円筒形状の単管挿入部40と、を備えている。
【0019】
ここで、実施例1においては、第1締付口11及び第2締付口21はともに、長穴であり、締付部30は長穴である第1締付口11及び第2締付口21に沿って摺動可能としている。これにより、締付部30を上平板部10と下平板部20とに挿入して上平板部10と下平板部20との間隔を調節する位置を建築現場の鉄筋に邪魔されないように調整可能としている。
【0020】
上平板部10及び下平板部20はともに一方に長い平板形状の鋼材からなり、およそ400mm×60mmの大きさを有している。第1締付口11及び第2締付口21はともに、上平板部10及び下平板部20の他方の端部近傍からおよそ210mmの長さを有して形成され、第1締付口11の幅は13.5mmであり、第2締付口21の幅は21.5mmである。また、第1締付口11の両端部は、円弧形状を有しているが、第2締付口21の両端部は凸状形状を有している。第2締付口21の両端部の凸状形状は、後述する締付部30の嵌合ロングナット32が係合する形状となっている。第1締付口11の両端部の円弧形状は、締付部30のボルト31の雄ねじ部分が係合する形状となっている。そのため、第2締付口21の両端部までの全長は、第1締付口11の両端部までの全長よりわずかに長い。さらに、第2締付口21の幅は、W1/2サイズ六角形の嵌合ロングナット32が摺動するため、ボルト31の雄ねじ部分が摺動する第1締付口11の幅よりも広くなっている。嵌合ロングナット32は、
図3に示すように、下平板部20の上面から下面まで第2締付口21を貫通するように長いロングナットである。
【0021】
また、下平板部20の一方の端部近傍(実施例1においては、一方の端部から30.25mm)に雌ねじ部22を有するとともに、下平板部20と上平板部10とを対向させた状態で、上平板部10の一方の端部近傍、つまり、上平板部10と下平板部20とを対向させた状態で雌ねじ部22と略同一場所にφ13.5mmの雄ねじ挿入孔12を有している。これは、後述する単管挿入部40の底面部43に有した雄ねじ部41が雄ねじ挿入孔12を貫通し雌ねじ部22に螺合可能とするものである。
【0022】
実施例1における雌ねじ部22は、下平板部20の底面にナットを溶接して溶接部Wを形成している。しかしながらこれに限定するものではなく、適宜変更が可能である。例えば、下平板部20に雌ねじを切ってもよいし、下平板部20の上面にナットを溶接して溶接部Wを形成してもよい。
【0023】
なお、実施例1においては、上平板部10及び下平板部20はともに一方に長い平板形状としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、上平板部10及び下平板部20のいずれか一方又は両方ともが正方形であってもよいし、円形状であってもよく、任意の形状とすることができる。
【0024】
また、実施例1においては、第1締付口11の両端部は、円弧形状を有しており、第2締付口21の両端部は凸状形状を有している構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、第1締付口11の両端部及び第2締付口21の両端部をともに円弧形状としてもよいし、凸状形状としてもよいし、任意の形状として差し支えない。
【0025】
締付部30について、
図2(b)、
図3を参照して説明する。実施例1における締付部30は、ボルト31、嵌合ロングナット32、及び2枚の座金34から構成されている。座金34の中心には、嵌合ロングナット32が嵌合可能な六角形の穴34Aが貫通している。嵌合ロングナット32は、下平板部20の第2締付口21に嵌合させ、回動不能の状態で下平板部20上面側の座金34の穴34Aに嵌合させ溶接して溶接部Wを形成している。また、下平板部20下面側の座金34の穴34Aにおいても嵌合ロングナット32が嵌合され溶接して溶接部Wを形成している。この状態で、上平板部10を下平板部20に対向させて、上平板部10の第1締付口11にボルト31を挿入し、続いて嵌合ロングナット32に螺合させる。これにより、締付部30は、第1締付口11及び第2締付口21に沿って摺動することができるとともに、ボルト31を締め付けることで、摺動方向と直交する方向の長さ、つまり上平板部10と下平板部20との間の間隔を調節可能とすることができる。後述するように、作業者は、ボルト31を挿入しない状態で締付部30を摺動させて鉄筋の隙間を探した後、ボルト31を挿入、螺合させて鉄筋を挟み込んで締め付けることで転落防止装置100を固定できる。
【0026】
次に、単管挿入部40を
図1、
図2(c)を参照して説明する。実施例1における単管挿入部40は、六角形の底面部43を溶接することで底面が閉じられているとともに、天面が開放された略円筒形状であり、およそ160mmの長さを有している。また、単管挿入部40の底面部43には、頭を上にして天面から挿入された雄ねじ部41の一部であるネジ部分の途中が溶接されて溶接部Wが形成されることで固定されている。また、雄ねじ部41のネジ部分の先端は単管挿入部40の底面部43から下方に突き出ている。これにより、単管挿入部40は雄ねじ部41とともに回動して雄ねじ部41のネジ部分の先端を回動させることができる。
【0027】
単管挿入部40の底面部43から下方に突き出たネジ部分の先端は、上平板部10の雄ねじ挿入孔12を貫通し、下平板部20の雌ねじ部22に螺合させることができる。これにより、単管挿入部40を作業者が回すことで、上平板部10と下平板部20との間隔を変更でき、また上平板部10と下平板部20との間に鉄筋Fを挟み込んで締め付けることができる。また、雄ねじ部41の雌ねじ部22に対する螺合を解除することで単管挿入部40と、上平板部10及び下平板部20と、が分離可能である。
【0028】
なお、実施例1においては、底面部43を六角形としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、円形としてもよいし、六角形以外の多角形としてもよい。底面部43によって単管挿入部40の底面が閉じられればよい。
【0029】
また、実施例1においては、底面部43を単管挿入部40の底面に溶接するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、底面部43を単管挿入部40の底面にねじ止めしてもよいし、接着剤で接着してもよい。
【0030】
このように、単管挿入部40を作業者が回すとともに、締付部30のボルト31を作業者が回すことで、上平板部10と下平板部20を2ヶ所で締め付けることができ、間に挟んだ鉄筋Fに対して強固に固定することができる。また、締付部30は上平板部10及び下平板部20に沿って摺動できるため、鉄筋Fの隙間に合わせることができ、様々な現場に対応することができる。また、雄ねじ部41の雌ねじ部22に対する螺合を解除することで単管挿入部40と、上平板部10及び下平板部20と、が分離可能であることで、単管挿入部40を分離後の上平板部10と下平板部20とを鉄筋Fとともにコンクリートで固めることができる。
【0031】
単管挿入部40には、その天面から任意の長さの単管50を挿入することができる。そして、単管50に設けられたフック部51に図示しない命綱を係合させて作業者の転落を防止することができる。また、2本の単管50におけるフック部51間に図示しない親綱を係止し、当該親綱に命綱を係合させて作業者の転落を防止することができる。又は、2本の単管50の間に図示しない水平方向の別の単管を係止し、この単管に命綱を係合させて作業者の転落を防止することができる。
【0032】
なお、実施例1においては、締付部30を1個としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、締付部30を複数とし、上平板部10と下平板部20との締め付けを複数箇所としてもよい。
【0033】
(転落防止方法)
まず、第1締付口11を有した上平板部10と、前記上平板部10を対向させた状態で、前記上平板部10における前記第1締付口11と略同一場所に第2締付口21を有した下平板部20と、前記上平板部10と前記下平板部20とを対向させた状態で、前記第1締付口11と前記第2締付口21とに挿入して前記上平板部10と前記下平板部20との間の間隔を調節可能な締付部30と、底面部43を有し天面が開放された略円筒形状の単管挿入部40と、を備え、前記下平板部20の一方の端部近傍に雌ねじ部22を有するとともに、前記下平板部20と前記上平板部10とを対向させた状態で、前記雌ねじ部22と略同一場所の前記上平板部10に雄ねじ挿入孔12を有し、前記単管挿入部40の前記底面部43には、頭を上にした雄ねじ部41の一部が固定されているとともに、前記雄ねじ部41の先端が前記底面部43から下方に突き出している転落防止装置100を準備する。
【0034】
次に、上平板部10と下平板部20とで建築現場の水平方向に設置された複数の鉄筋を挟み、締付部30を第1締付口11と第2締付口21とに沿って摺動させて鉄筋Fの隙間を探し、ボルト31を作業者が回して摺動方向と直交する方向の長さ、つまり上平板部10と下平板部20との間の間隔を調節して締め付けるように固定する。
【0035】
そして、雄ねじ部41を上平板部10の雄ねじ挿入孔12を貫通させ、単管挿入部40を作業者が回すことで下平板部20の雌ねじ部22に螺合させて、上平板部10と下平板部20とで鉄筋Fを締め付ける。これにより、上平板部10と下平板部20を2ヶ所で締め付けることができ、間に挟んだ鉄筋Fに対して転落防止装置100を強固に固定することができる(
図4参照)。
【0036】
次に、単管挿入部40の天面から、フック部51を有した単管50(
図1参照)を挿入する。そして、単管50に設けられたフック部51に図示しない命綱を係止させて作業者の転落を防止することができる。また、2本の単管50におけるフック部51間に図示しない親綱を係止し、当該親綱に命綱を係合させて作業者の転落を防止することができる。又は、2本の単管50の間に図示しない水平方向の別の単管を係止し、この単管に命綱を係合させて作業者の転落を防止することができる。
【0037】
このように、実施例1においては、建築現場において転落を防止する転落防止装置であって、
第1締付口を有した上平板部と、
前記上平板部を対向させた状態で、前記上平板部における前記第1締付口と略同一場所に第2締付口を有した下平板部と、
前記上平板部と前記下平板部とを対向させた状態で、前記第1締付口と前記第2締付口とに挿入して前記上平板部と前記下平板部との間の間隔を調節可能な締付部と、
底面部を有し天面が開放された略円筒形状の単管挿入部と、を備え、
前記下平板部の一方の端部近傍に雌ねじ部を有するとともに、前記下平板部と前記上平板部とを対向させた状態で、前記雌ねじ部と略同一場所の前記上平板部に雄ねじ挿入孔を有し、
前記単管挿入部の前記底面部には、頭を上にした雄ねじ部の一部が固定されているとともに、前記雄ねじ部の先端が前記底面部から下方に突き出していることを特徴とする転落防止装置により、立柱のない鉄筋の組立現場においても簡単な操作で作業者の安全を確保することができる。
【0038】
また、転落防止装置であって、前記第1締付口及び前記第2締付口はともに長穴であり、前記締付部は、当該長穴である前記第1締付口及び前記第2締付口に沿って摺動可能である構成により、簡単な構成で締付部による締付位置を調整することができる。
【0039】
さらに、実施例1においては、第1締付口を有した上平板部と、前記上平板部を対向させた状態で、前記上平板部における前記第1締付口と略同一場所に第2締付口を有した下平板部と、前記上平板部と前記下平板部とを対向させた状態で、前記第1締付口と前記第2締付口とに挿入して前記上平板部と前記下平板部との間の間隔を調節可能な締付部と、底面部を有し天面が開放された略円筒形状の単管挿入部と、を備え、前記下平板部の一方の端部近傍に雌ねじ部を有するとともに、前記下平板部と前記上平板部とを対向させた状態で、前記雌ねじ部と略同一場所の前記上平板部に雄ねじ挿入孔を有し、前記単管挿入部の前記底面部には、頭を上にした雄ねじ部の一部が固定されているとともに、前記雄ねじ部の先端が前記底面部から下方に突き出している転落防止装置を準備し、
前記上平板部と前記下平板部とで鉄筋を挟むように位置させ、
前記締付部を前記第1締付口と前記第2締付口とに挿入し前記上平板部と前記下平板部との間隔を調節して固定するとともに、前記雄ねじ部を前記雌ねじ部に螺合させて、前記上平板部と前記下平板部との間で前記鉄筋を締め付け、
前記単管挿入部に単管を挿入し、
前記単管に命綱、親綱、又は水平方向の単管を係止することを特徴とする転落防止方法により、立柱のない鉄筋の組立現場においても簡単な操作で作業者の安全を確保することができる。
実施例2における第1締付口及び第2締付口は予め締付部による締付が可能な位置に設けられた穴である。したがって、締付部は第1締付口及び第2締付口に沿って摺動することはなく、第1締付口及び第2締付口に挿入して締め付けて上平板部10と下平板部20との間の間隔を調節する。これにより、より低コストで上平板部10と下平板部20との間の間隔を調節することができる。
なお、第1締付口及び第2締付口は、それぞれ1個でなくてもよく、複数の第1締付口及び第2締付口を設けて、最適な位置の第1締付口及び第2締付口に実施例1と同様の締付部30を挿入して締め付けて上平板部10と下平板部20との間の間隔を調節すればよい。
さらに、複数の第1締付口及び第2締付口を設けた場合、締付部30は1個でなくてもよく、複数の締付部を複数の第1締付口及び第2締付口に挿入して締め付けて上平板部10と下平板部20との間の間隔を調節するように構成してもよい。
なお、実施例2においては、締付部を実施例1と同様の締付部30としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、ボルトとナットを1個ずつ用いた締付部としてもよい。
また、実施例2においても、第1締付口を有した上平板部と、前記上平板部を対向させた状態で、前記上平板部における前記第1締付口と略同一場所に第2締付口を有した下平板部と、前記上平板部と前記下平板部とを対向させた状態で、前記第1締付口と前記第2締付口とに挿入して前記上平板部と前記下平板部との間の間隔を調節可能な締付部と、底面部を有し天面が開放された略円筒形状の単管挿入部と、を備え、前記下平板部の一方の端部近傍に雌ねじ部を有するとともに、前記下平板部と前記上平板部とを対向させた状態で、前記雌ねじ部と略同一場所の前記上平板部に雄ねじ挿入孔を有し、前記単管挿入部の前記底面部には、頭を上にした雄ねじ部の一部が固定されているとともに、前記雄ねじ部の先端が前記底面部から下方に突き出している転落防止装置を準備し、
前記上平板部と前記下平板部とで鉄筋を挟むように位置させ、
前記締付部を前記第1締付口と前記第2締付口とに挿入し前記上平板部と前記下平板部との間隔を調節して固定するとともに、前記雄ねじ部を前記雌ねじ部に螺合させて、前記上平板部と前記下平板部との間で前記鉄筋を締め付け、
前記単管挿入部に単管を挿入し、
前記単管に命綱、親綱、又は水平方向の単管を係止することを特徴とする転落防止方法により、立柱のない鉄筋の組立現場においても簡単な操作で作業者の安全を確保することができる。