(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056570
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】眼科情報解析装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20220404BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61B3/10 100
A61B3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164389
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】山田 祥之
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA25
4C316AA26
4C316AB02
4C316AB12
4C316AB16
4C316FB05
4C316FB06
4C316FB12
4C316FB21
(57)【要約】
【課題】 解析結果の視認性を向上させる眼科情報解析装置を提供する。
【解決手段】 光干渉断層計を用いて撮影された、眼底中心部および眼底周辺部を含むOCTデータを解析するための眼科情報解析装置であって、OCTデータを解析処理した解析データを取得する解析手段と、解析処理により有効な解析結果が得られる眼底中心部を含む第1領域と、眼底周辺部を含む第2領域であって、第1領域の外側に位置する第2領域と、を互いに区別して、解析データの出力に反映させる反映手段と、反映手段の反映結果に基づく解析データを出力する出力手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光干渉断層計を用いて撮影された、眼底中心部および眼底周辺部を含むOCTデータを解析するための眼科情報解析装置であって、
前記OCTデータを解析処理した解析データを取得する解析手段と、
前記解析処理により有効な解析結果が得られる前記眼底中心部を含む第1領域と、前記眼底周辺部を含む第2領域であって、前記第1領域の外側に位置する第2領域と、を互いに区別して、前記解析データの出力に反映させる反映手段と、
前記反映手段の反映結果に基づく前記解析データを出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする、眼科情報解析装置。
【請求項2】
請求項1の眼科情報解析装置において、
前記被検眼の眼軸長を取得する眼軸長取得手段を備え、
前記反映手段は、前記眼軸長取得手段が取得した前記眼軸長に基づいて、前記第1領域と前記第2領域とを互いに区別することを特徴とする、眼科情報解析装置。
【請求項3】
請求項1または2の眼科情報解析装置において、
前記OCTデータを撮影した撮影条件を取得する撮影条件取得手段を備え、
前記反映手段は、前記撮影条件取得手段が取得した前記撮影条件に基づいて、前記第1領域と前記第2領域とを互いに区別することを特徴とする、眼科情報解析装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの眼科情報解析装置において、
前記反映手段は、前記解析データの表示を制御する表示制御手段であって、
前記解析手段は、前記OCTデータにおける前記眼底中心部と前記眼底周辺部をいずれも解析した前記解析データを取得し、
前記表示制御手段は、前記解析手段が取得した前記解析データにおいて、前記第1領域と前記第2領域とを互いに区別するため、前記第2領域にマスク処理を施し、
前記出力手段は、少なくとも前記第1領域を含む前記解析データを出力することを特徴とする、眼科情報解析装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかの眼科情報解析装置において、
前記反映手段は、前記解析手段であって、
前記解析手段は、前記第1領域と前記第2領域とを互いに区別するため、前記OCTデータにおける前記眼底中心部のみを解析して、前記第1領域のみの前記解析データを取得し、
前記出力手段は、前記第1領域を含む前記解析データを出力することを特徴とする、眼科情報解析装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかの眼科情報解析装置において、
前記解析データに含まれる前記第1領域は、眼底の曲率が考慮された円形状の領域であることを特徴とする、眼科情報解析装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかの眼科情報解析装置において、
前記反映手段は、前記第1領域と、有効でない解析結果として得られる前記眼底周辺部を含む前記第2領域と、の境界を区別して、前記解析データの出力に反映させることを特徴とする、眼科情報解析装置。
【請求項8】
請求項7の眼科情報解析装置において、
前記第1領域は、前記OCTデータの実像が前記解析処理によって解析される領域であり、前記第2領域は、前記OCTデータの虚像が前記解析処理によって解析される領域であることを特徴とする、眼科情報解析装置。
【請求項9】
請求項7の眼科情報解析装置において、
前記第1領域は、眼底の厚みが前記解析処理によって有効に検出される領域であり、前記第2領域は、眼底の厚みが前記解析処理によって有効に検出されない領域であることを特徴とする、眼科情報解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼のOCTデータを解析する眼科情報解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT)の構成を備えたOCT装置が知られている(特許文献1)。OCT装置を用いて被検眼の眼底を撮影した場合、正視眼における測定光の走査範囲よりも、長眼軸長眼における測定光の走査範囲のほうが、広い範囲となる。また、OCT装置には、眼底の広域を撮影できるものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-29467号公報
【特許文献2】特開2019-25255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長眼軸長眼(例えば、強度近視眼)を撮影する場合や、眼底の広域を撮影する場合には、眼底の中心部とともに周辺部が撮影画像に含まれるようになる。これに伴って、撮影画像においては眼底の中心部のみならず周辺部も解析することが望ましいが、周辺部では有効な解析結果が得られない場合があることを見い出した。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、解析結果の視認性を向上させる眼科情報解析装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
本開示の眼科情報解析装置は、光干渉断層計を用いて撮影された、眼底中心部および眼底周辺部を含むOCTデータを解析するための眼科情報解析装置であって、前記OCTデータを解析処理した解析データを取得する解析手段と、前記解析処理により有効な解析結果が得られる前記眼底中心部を含む第1領域と、前記眼底周辺部を含む第2領域であって、前記第1領域の外側に位置する第2領域と、を互いに区別して、前記解析データの出力に反映させる反映手段と、前記反映手段の反映結果に基づく前記解析データを出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】眼軸長による眼底の走査範囲の変化を示す図である。
【
図4】眼軸長が異なる場合のOCTデータの一例である。
【
図5】撮影モードによる眼底の走査範囲の変化を示す図である。
【
図6】広角眼底撮影モードにて取得されるOCTデータの一例である。
【
図8】網膜マップ画像のマスク処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
本開示に係る眼科情報解析装置の実施形態を説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用され得る。
【0010】
本実施形態の眼科情報解析装置は、光干渉断層計(例えば、OCT装置1)を用いて撮影された、眼底中心部および眼底周辺部を含むOCTデータを解析する。眼科情報解析装置は、光干渉断層計と兼用されてもよい。また、眼科情報解析装置は、光干渉断層計とは別体のコンピュータ等であってもよい。
【0011】
眼科情報解析装置が取得するOCTデータは、信号データであってもよいし、信号データから生成される画像データであってもよい。例えば、被検眼の反射強度特性を示す断層画像であってもよい。また、例えば、被検眼のモーションコントラスト画像であってもよい。また、OCTデータは、実像と虚像を含んでもよい。例えば、高感度・高解像度の画像として得られる実像と、分散補正値の違いにより低解像度の画像として得られる虚像と、を含んでもよい。
【0012】
<解析手段>
本実施形態の眼科情報解析装置は、解析手段(例えば、制御部300)を備えてもよい。解析手段は、OCTデータを解析処理した解析データを取得する。解析手段は、OCTデータに含まれる眼底中心部のみを解析処理した解析データを取得してもよい。また、解析手段は、OCTデータに含まれる眼底中心部と眼底周辺部をいずれも解析処理した解析データを取得してもよい。
【0013】
OCTデータとして断層画像を解析処理した解析データは、眼底の層に関する情報、眼底の厚みに関する情報、2次元解析マップ画像、2次元解析チャート、等の少なくともいずれかであってもよい。例えば、眼底の層に関する情報は、眼底を構成する複数の層の少なくともいずれかを抽出する処理(いわゆるセグメンテーション処理)の結果に関する情報であってもよい。例えば、眼底の厚みに関する情報は、網膜の各々の層、脈絡膜、等の少なくとも1層の厚みに関する情報であってもよい。例えば、2次元解析マップ画像は、眼底の厚みに基づいて生成されるマップであってもよい。一例としては、眼底の各位置での厚みを2次元的に示すマップであってもよい。例えば、2次元解析チャートは、眼底の厚みに基づいて生成されるチャートであってもよい。一例としては、眼底の厚みが解析領域毎に分割され、領域単位での統合値(平均値、中央値、最大値、等)が表示されたチャートであってもよい。
【0014】
また、OCTデータとしてモーションコントラスト画像を解析処理した解析データは、被検眼の血管に関する情報、2次元解析マップ画像、等の少なくともいずれかであってもよい。例えば、被検眼の血管に関する情報は、血管密度、血管面積、血管体積、血管径、血管蛇行度、等に関する情報であってもよい。例えば、2次元解析マップ画像は、血管に関する情報に基づいて生成されるマップであってもよい。一例としては、血管の密度を2次元的に示すマップであってもよい。
【0015】
<眼軸長取得手段>
本実施形態の眼科情報解析装置は、眼軸長取得手段(例えば、制御部300)を備えてもよい。眼軸長取得手段は、被検眼の眼軸長を取得する。眼軸長取得手段は、検者が操作手段(例えば、モニタ104)を操作することで入力される信号に基づいて、眼軸長を取得してもよい。また、眼軸長取得手段は、電子カルテ等から該当のデータを呼び出すことによって、眼軸長を取得してもよい。また、眼軸長取得手段は、眼軸長を測定するための機能を備えた別の装置による測定結果を受信することによって、眼軸長を取得してもよい。
【0016】
<撮影条件取得手段>
本実施形態の眼科情報解析装置は、撮影条件取得手段(例えば、制御部300)を備えてもよい。撮影条件取得手段は、OCTデータを撮影した撮影条件を取得する。撮影条件取得手段は、検者が操作手段(例えば、モニタ104)を操作することで入力される信号に基づいて、撮影条件を取得してもよい。また、撮影条件取得手段は、電子カルテ等から該当のデータを呼び出すことによって、撮影条件を取得してもよい。また、撮影条件取得手段は、光干渉断層計にて得られたOCTデータに基づいて、OCTデータを撮影した撮影条件を取得してもよい。一例としては、光干渉断層計から、撮影条件が対応付けられたOCTデータを受信してもよい。
【0017】
なお、撮影条件は、光干渉断層計にてOCTデータを得るために設定された、被検眼の撮影モード、測定光の走査条件、等であってもよい。例えば、被検眼の撮影モードは、被検眼の眼底を通常の走査範囲にて撮影する通常撮影モード、被検眼の眼底を広角の走査範囲にて撮影する通常撮影モード、等でもよい。また、例えば、測定光の走査条件は、測定光の走査パターン、走査範囲、走査位置、走査角、等でもよい。もちろん、これらとは異なる条件を含んでもよい。
【0018】
<反映手段>
本実施形態の眼科情報解析装置は、反映手段(例えば、制御部300)を備えてもよい。反映手段は、解析手段の解析処理によって、OCTデータに対する有効な解析結果が得られる眼底中心部を含む第1領域と、眼底周辺部を含む第2領域であって、第1領域の外側に位置する第2領域と、を互いに区別して、解析データの出力に反映させる。これによって、解析データの視認性が向上される。
【0019】
反映手段は、眼軸長取得手段が取得した眼軸長に基づいて、OCTデータの眼底中心部を含む第1領域と、OCTデータの眼底周辺部を含む第2領域とを互いに区別し、解析データの出力に反映させてもよい。例えば、長眼軸長眼では、光干渉断層計による測定光の走査範囲に、眼底中心部とともに眼底周辺部が含まれるようになる。OCTデータにおいて、眼底中心部は高感度・高解像度の実像として検出され、有効な解析結果として得られる。しかし、眼底周辺部は低解像度の虚像として検出されやすく、有効な解析結果として得られないことがある。つまり、眼軸長によっては、OCTデータに眼底周辺部が虚像として含まれるようになり、虚像を解析処理しても、有効な解析結果は得られないことがある。しかし、眼軸長の情報を利用することで、OCTデータに現れる虚像の位置を推測し、有効な解析結果を含む第1領域と、第1領域の外側に位置する第2領域と、を容易に区別できる。
【0020】
反映手段は、撮影条件取得手段が取得した撮影条件に基づいて、OCTデータの眼底中心部を含む第1領域と、OCTデータの眼底周辺部を含む第2領域とを互いに区別し、解析データの出力に反映させてもよい。例えば、OCTデータの撮影条件として、測定光の走査条件(一例として、測定光の走査パターン、走査範囲、走査位置、走査角、等の少なくともいずれか)が変更されると、OCTデータに眼底周辺部が含まれる程度が変化する。また、OCTデータの撮影条件として、測定光の走査条件が対応付けられた任意の撮影モード(一例として、眼底を所定の画角で撮影する通常撮影モード、眼底を所定の画角よりも広い画角で撮影する広角撮影モード、等)が設定されると、OCTデータに眼底周辺部が含まれる程度が変化する。なお、例えば、測定光を広域の走査範囲にて走査させる場合や、広角撮影モードを設定する場合には、OCTデータに眼底周辺部が多く含まれるようになる。
【0021】
ここで、眼底に対する測定光の照射方向が略垂直となる眼底中心部では、眼底の厚みが適切に検出されるが、眼底に対する測定光の照射方向が略垂直とならない眼底周辺部では、眼底の厚みが実際よりも厚く検出され得る。また、眼底中心部に対して眼底周辺部の厚みは薄く、網膜の各層が最小検出画素よりも少ない画素で表現され得る。このために、眼底周辺部の厚みは検出が難しく、有効な解析結果が得られないことがある。しかし、撮影条件に関する情報を利用することで、眼底周辺部が含まれる程度を推測し、有効な解析結果を含む第1領域と、第1領域の外側に位置する第2領域と、を容易に区別できる。
【0022】
反映手段は、有効な解析結果が得られる眼底中心部を含む第1領域と、有効でない解析結果が得られる眼底周辺部を含む第2領域と、の境界を区別して、これを解析データの出力に反映させてもよい。例えば、本実施形態では、OCTデータの実像が解析処理によって解析される領域を第1領域として、OCTデータの虚像が解析処理によって解析される領域を第2領域として、それぞれの境界を区別してもよい。また、例えば、本実施形態では、眼底の厚みが解析処理によって有効に検出される領域を第1領域として、眼底の厚みが解析処理によって有効に検出されない領域を第2領域として、それぞれの境界を区別してもよい。
【0023】
なお、OCTデータの眼底中心部を含む第1領域は、眼底の曲率が考慮された円形状の領域として、第2領域とは区別されてもよい。円形状は、正円形状、楕円形上、一部が弓型に欠けた欠円形状、等を含んでもよい。眼底が曲率をもつことにより、眼底中心部から同心円状に離れるほど、虚像や測定光に対する眼底面の位置が影響し、有効な解析結果を得られない可能性が大きくなる。第1領域を円形状とすることで、有効な解析結果を無駄なく活用できる。
【0024】
本実施形態において、反映手段は、表示制御手段(例えば、制御部300)であってもよい。表示制御手段は、OCTデータを解析処理した解析データの表示を制御する。この場合、表示制御手段は、解析手段が取得した解析データにおいて、眼底中心部を含む第1領域と眼底周辺部を含む第2領域とを互いに区別するため、第2領域にマスク処理を施してもよい。なお、第1領域と第2領域の区別には、眼軸長や撮影条件が用いられてもよい。すなわち、第1領域と第2両機の境界が、眼軸長や撮影条件に基づいて設定されてもよい。解析データにおいて、有効な解析結果として得られない眼底周辺部(第2領域)にマスク処理を施すことで、有効な解析結果として得られる眼底中心部(第1領域)を容易に観察できる。
【0025】
本実施形態において、反映手段は、前述の解析手段であってもよい。この場合、解析手段は、OCTデータにおける眼底中心部のみを解析して、OCTデータに対する有効な解析結果が得られる第1領域のみを含む解析データを取得してもよい。例えば、詳細には、光干渉断層計において、測定光は眼底中心部と眼底周辺部をいずれも含む所定の走査範囲にて走査され(言い換えると、所定の走査範囲から眼底周辺部を除外することなく走査され)、眼底中心部と眼底周辺部をともに含むOCTデータが取得される。解析手段は、このようなOCTデータに対して、眼底中心部を含む第1領域と眼底周辺部を含む第2領域とを互いに区別し、第1領域のみを解析した解析データを取得してもよい。解析データとして、有効な解析結果として得られる眼底中心部は含むが、有効な解析結果として得られない眼底周辺部は含まないようにすることで、眼底中心部(第1領域)を容易に観察でき、眼底周辺部(第2領域)の誤認を抑制できる。
【0026】
<出力手段>
本実施形態の眼科情報解析装置は、出力手段(例えば、制御部300)を備える。出力手段は、反映手段の反映結果に基づいた解析データを出力する。出力手段は、少なくとも、有効な解析結果が得られる眼底中心部に対応する第1領域を含む解析データを出力してもよい。例えば、第1領域のみを含む解析データを出力してもよい。また、例えば、第1領域と、第1領域の外側に位置する第2領域と、を含む解析データを出力してもよい。
【0027】
出力手段は、反映手段の反映結果に基づいた解析データを表示手段(例えば、モニタ104)へ出力し、その解析データを表示させてもよい。また、出力手段は、反映手段の反映結果に基づいた解析データを印刷手段(プリンタ等)へ出力し、その解析データを印刷させてもよい。また、出力手段は、反映手段の反映結果に基づいた解析データを記憶手段(例えば、記憶部301、サーバ、クラウド、等)へ出力し、その解析データを記憶させてもよい。なお、出力手段は、このような、表示、印刷、記憶、等の少なくともいずれかによって、解析データを出力してもよい。
【0028】
<実施例>
本実施形態における眼科情報解析装置の一実施例について説明する。
【0029】
以下では、光干渉断層計の構成を備えたOCT装置が、眼科情報解析装置の機能を兼ねる場合を例に挙げる。OCT装置は、タイムドメインOCTを基本構成としてもよい。また、OCT装置は、フーリエドメインOCTを基本構成としてもよい。なお、フーリエドメインOCTは、スペクトルドメインOCT、波長掃引式OCT、等であってもよい。
【0030】
図1は、OCT装置1の外観図である。OCT装置1は、基台101、移動台102、操作部103、モニタ104、駆動部105、検出部106、顔支持部110、撮影部200、制御部300、等を備える。
【0031】
操作部103は、撮影部200を操作するための信号を入力する。例えば、操作部103を傾倒させると、基台101に対して移動台102を左右方向(X方向)および前後方向(Z方向)の少なくともいずれかの方向へ移動させるための移動信号が入力される。また、例えば、操作部103の図示なきノブを回転させると、基台101に対して撮影部200を上下方向(Y方向)へ移動させるための移動信号が入力される。
【0032】
モニタ104は、被検眼EのOCTデータ、OCTデータの解析結果、等を画面に表示する。また、モニタ104は、操作部103を兼ねたタッチパネルとして機能する。つまり、モニタ104の操作によっても、撮影部200を移動させるための移動信号が入力される。
【0033】
駆動部105は、撮影部200を左右方向、上下方向、および前後方向へ移動させる。例えば、駆動部105は、スライド機構である。一例として、スライド機構は、モータ、ギヤ、ガイドレール、等を有してもよい。
【0034】
検出部106は、撮影部200の位置を検出する。例えば、検出部106は、可変抵抗器である。もちろん、検出部106は、可変抵抗器に限らず、光センサ、位置センサ、距離センサ、等の少なくともいずれかであってもよい。検出部106の検出結果は、制御部300へと出力される。
【0035】
顔支持部110は、被検者の顔を支持する。顔支持部110は、額当て111と、顎台112と、を有する。額当て111には、被検者の額が当接される。顎台112には、被検者の顎が載置される。顎台112には、検出器113が設けられる。
【0036】
検出器113は、被検者の顎が顎台112に載置されたか否かを検出する。例えば、検出器113は荷重センサである。もちろん、検出器113は、荷重センサに限らず、光センサ、圧力センサ、超音波センサ、等の少なくともいずれかであってもよい。検出器113の検出結果は、制御部300へと出力される。
【0037】
<撮影部>
図2は、撮影部200における内部の概略図である。撮影部200の内部には、アライメント指標投影光学系210、前眼部撮影光学系220、OCT光学系230、観察光学系240、固視誘導光学系250、顔撮影光学系260、等が収納される。
【0038】
<アライメント指標投影光学系>
アライメント指標投影光学系210は、被検眼Eの角膜に向けてアライメント指標を投影する。アライメント指標投影光学系210は、第1投影光学系210aおよび第2投影光学系210bを備える。第1投影光学系210aは、被検眼Eの角膜に向けて、無限遠のアライメント指標を投影する。第1投影光学系210aは、光源211、コリメータレンズ212、等を備える。例えば、光源211は、近赤外光を発する。例えば、光源211は、撮影光軸を中心としてリング状に配置される。例えば、コリメータレンズ212は、光源211からの光を平行光束にする。第2投影光学系210bは、被検眼Eの角膜に向けて、有限遠のアライメント指標を投影する。第2投影光学系210bは、光源213等を備える。例えば、光源213は、近赤外光を発する。例えば、光源213は、撮影光軸を中心に、光源211とは異なる位置で、リング状に配置される。なお、第2投影光学系210bによる光は、被検眼Eに対して撮影部をアライメントするためのアライメント光として用いられるとともに、被検眼Eの前眼部を照明するための前眼部照明光としても用いられる。
【0039】
<前眼部撮影光学系>
前眼部撮影光学系220は、被検眼Eの前眼部を撮像する。前眼部撮影光学系220は、撮像素子221等を備える。例えば、撮像素子221は、光源213によって照明された前眼部を撮像する。なお、撮像素子221は、角膜に投影されたアライメント指標を検出するための撮像素子を兼ねており、前眼部とともにアライメント指標を撮像する。
【0040】
<OCT光学系>
OCT光学系230は、被検眼Eに照射された測定光と参照光による干渉信号を検出する。OCT光学系230は、カップラー231、光源232、測定光学系233、光スキャナ234、対物光学系235、検出器236、参照光学系237、等を備える。カップラー231には、光源232、測定光学系233、検出器236、および参照光学系237が、光ファイバで接続されている。
【0041】
OCT光学系230は、カップラー231によって、光源232から出射した光を、測定光と参照光に分割する。例えば、測定光は、光ファイバを通過した後に空気中へ出射され、測定光学系233、光スキャナ234、および対物光学系235を介して、眼底に導かれる。また、例えば、測定光は、眼底にて反射されると、同様の経路を経て光ファイバに戻される。例えば、参照光は、光ファイバを通過して、参照光学系237に導かれる。また、例えば、参照光は、参照光学系237が有する図示なき参照ミラーに反射されると、同様の経路を経て光ファイバに戻される。OCT光学系230は、測定光と参照光の合成による干渉信号(干渉光)を、検出器236に受光させる。検出器236が検出した干渉信号は、制御部300に送信される。
【0042】
<観察光学系>
観察光学系240は、走査型共焦点光学系(SLO光学系)を有し、眼底のSLO正面画像を取得する。なお、観察光学系240は、眼底カメラ光学系を有し、眼底の赤外正面画像、カラー正面画像、蛍光正面画像、等を取得してもよい。
【0043】
<固視誘導光学系>
固視誘導光学系250は、被検眼Eの視線方向を誘導する。固視誘導光学系250は、被検眼Eに呈示する固視灯を有する。例えば、固視灯は、測定光軸L上と、測定光軸Lを中心とした同一円周上と、に配置される。固視灯の呈示位置を二次元的に変更させることで、被検眼Eの視線が複数の方向に誘導され、結果的に、被検眼Eの撮影部位が変更される。
【0044】
<制御部>
制御部300は、各部の制御処理と、演算処理と、を行う電子回路を有する処理装置(プロセッサ)である。制御部300は、一般的なCPU(Central Processing Unit)、RAM、ROM、等を備える。例えば、CPUは、OCT装置1における各部材の制御を司る。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、OCT装置1の動作を制御するための各種プログラムが記憶される。なお、制御部300は、便宜上、OCT装置1にて得られた各種画像の画像処理を行うものとする。換言すれば、制御部300が画像処理部を兼用する。
【0045】
制御部300は、検出器236に検出された干渉信号を処理し、被検眼の眼底のOCTデータとして、OCT断層画像、3次元OCT断層画像(3次元OCTデータ)、3次元OCT断層画像に基づいたOCT正面画像(OCT正面データ)、等を取得することができる。
【0046】
また、制御部300は、OCTデータを解析した解析結果として、網膜厚情報、網膜厚情報に基づいて生成される網膜厚マップ画像、網膜厚情報に基づいて算出される2次元解析チャート、等を含む解析データを取得することができる。例えば、3次元OCT断層画像を画像処理することで、眼底の網膜厚情報を得てもよい。網膜厚情報としては、網膜の各層の厚み(具体的には、視神経線維層の厚み、神経線維層~網膜色素上皮層までの厚み、等)が得られる。また、例えば、網膜厚情報に基づいた2次元的な網膜厚マップ画像を取得してもよい。もちろん、例えば、3次元OCT断層画像を画像処理することで眼底の脈絡膜情報を得てもよく、また、脈絡膜情報に基づいた2次元的な脈絡膜厚マップ画像を得てもよい。
【0047】
制御部300には、操作部103、モニタ104、駆動部105、検出部106、各々の光学系が備える光源や撮像素子、記憶部301、等が電気的に接続される。記憶部301は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる、非一過性の記憶媒体であってもよい。例えば、記憶部301は、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等でもよい。例えば、記憶部301は、OCTデータを得るための設定に係る情報、OCTデータ、解析データ、等を記憶してもよい。
【0048】
<OCTデータの解析>
OCT装置1を用いて被検眼Eを撮影することで得られたOCTデータを解析処理すると、場合によっては、有効な解析結果を得られないことがある。例えば、被検眼Eの眼軸長や、被検眼Eを撮影する撮影条件(ここでは、撮影モード)が影響し、特に眼底の周辺部においては、このような状況になりやすい。これについて、順に説明する。
【0049】
<眼軸長の影響>
図3は、被検眼Eの眼軸長による眼底の走査範囲の変化を示す図である。
図3(a)は、被検眼Eが正視眼である場合を表す。
図3(b)は、被検眼Eが長眼軸長眼である場合を表す。なお、
図3(a)と
図3(b)は、いずれも、後述の通常眼底撮影モードを適用した状態である。
【0050】
OCT光学系230から照射される測定光の走査範囲は、被検眼Eの眼軸長によって変化する。正視眼の眼軸長は、眼軸長A1で示される。正視眼では、測定光を横断方向に所定の走査角αで走査させると、走査範囲D1が撮影される。一方、長眼軸長眼の眼軸長は、正視眼の眼軸長A1よりも長い、眼軸長A2で示される。眼軸長が伸びるほど眼底の曲率は大きくなるため、長眼軸長眼では、測定光を走査角αで走査させると走査範囲D2が撮影される。正視眼における走査範囲D1に対し、長眼軸長眼における走査範囲D2は、広い範囲となる。このため、正視眼では眼底の中心部Cのみが撮影され、長眼軸長眼では中心部Cとともに周辺部Pが撮影されるようになる。
【0051】
図4は、被検眼Eの眼軸長が異なる場合のOCTデータの一例である。
図4(a)は、正視眼におけるOCTデータを示す。
図4(b)は、長眼軸長眼におけるOCTデータを示す。なお、
図4(a)および
図4(b)は、被検眼Eの眼底を、OCT光学系230における測定光の光路長と参照光の光路長が一致する深さ位置(すなわち、ゼロディレイ位置)とした状態である。
【0052】
OCTデータは、第1画像領域G1と第2画像領域G2によって形成される。第1画像領域G1はゼロディレイ位置Sの奥側に対応し、第2画像領域G2はゼロディレイ位置Sの手前側に対応し、各々の領域はゼロディレイ位置に関して対称である。また、OCTデータは、分散補正値の違いにより低解像度の画像として得られる虚像(ミラーイメージ)Mと、高感度・高解像度の画像として得られる実像Rと、を含む。
【0053】
例えば、正視眼では、中心部Cの実像Rが第1画像領域G1に現れる。中心部Cの虚像Mは第2画像領域G2に現れる。しかし、例えば、長眼軸長眼では、走査範囲D2が広いために、中心部Cの実像Rが第1画像領域G1に現れるとともに、周辺部Pの実像Rが第2画像領域G2に現れるようになる。このとき、中心部Cの虚像Mは第2画像領域G2に現れ、周辺部Pの虚像Mは第1画像領域G1に現れる。つまり、正視眼は虚像Mを第1画像領域G1に含まないが、長眼軸長眼は虚像Mを第1画像領域G1に含むようになる。
【0054】
例えば、制御部300は、実像Rを多く検出できる第1画像領域G1を解析の対象として、解析データを取得する。長眼軸長眼では、周辺部Pが低解像度の虚像Mを用いて解析されるため、有効な解析結果が得られない場合がある。
【0055】
<撮影条件の影響>
図5は、撮影モードによる眼底の走査範囲の変化を示す図である。
図5(a)は、眼底の中心部Cを含む通常の走査範囲を撮影する通常眼底撮影モードを適用した場合を示す。
図5(b)は、通常の走査範囲よりも広い、中心部Cと周辺部Pを含む広角の走査範囲を撮影する広角眼底撮影モードを適用した場合を示す。なお、
図5(a)と
図5(b)における被検眼Eは、いずれも正視眼である。
【0056】
OCT光学系230から照射される測定光の走査範囲は、撮影モードによって適宜変更される。通常眼底撮影モードでは、測定光が走査角αで走査された走査範囲D1が撮影される。一方、広角眼底撮影モードでは、測定光が走査角αよりも大きな走査角βで走査され、走査範囲D1よりも広い走査範囲D3が撮影される。これによって、例えば、通常眼底撮影モードでは中心部Cのみが撮影され、広角眼底撮影モードでは中心部Cとともに周辺部Pが撮影されるようになる。
【0057】
図6は、広角眼底撮影モードにて取得されるOCTデータの一例である。なお、通常眼底撮影モードにて取得されるOCTデータの一例は、
図4(a)と同一である。通常眼底撮影モードにおいては、測定光の照射方向と網膜とが中心部Cにて略垂直になるため、中心部Cの網膜が適切な厚みT1で検出される。しかし、広角眼底撮影モードにおいては、測定光の照射方向と網膜とが中心部Cでは略垂直になるが、周辺部Pでは略垂直にならない。このため、第1画像領域G1に現れる実像Rのうち、周辺部Pの網膜の厚みT2は、実際の網膜の厚みT3よりも厚く検出され得る。広角眼底撮影モードでは、このために、周辺部Pの有効な解析結果が得られない場合がある。
【0058】
なお、被検眼Eの眼底は、中心部Cでの網膜の厚みT1よりも、周辺部Pでの網膜の厚みT2が小さい。このため、長眼軸長であるか否か、あるいは広角眼底撮影モードであるか否かに関わらず、中心部Cの厚みT1に対し、周辺部Pの厚みT2は薄く検出される。例えば、網膜神経線維層(NFL)を例に挙げると、中心部Cでは、NFLの厚みが約200μmで検出されるのに対し、周辺部Pでは、NFLの厚みが約10μmで検出される。
【0059】
OCTデータにおいて、第1画像領域G1は、1画素あたり約5μmで構成される。すなわち、検出器236の分解能は約5μmである。このため、周辺部Pは2画素程度でしか表現することができず、検出器236の最小検出画素(一例として、3画素、等)に満たない。これによっても、周辺部Pでは有効な解析結果が得られない場合がある。
【0060】
上述のように、眼底の周辺部Pでは有効な解析結果が得られない場合があるため、OCTデータを解析処理した解析データにおいても、眼底の周辺部Pは適切な値の算出や色分けがなされないことがある(詳細は後述する)。そこで、本実施例では、OCTデータを解析し、有効な解析結果として得られた中心部Cを含む第1領域と、周辺部Pを含み第1領域の外側に位置する第2領域と、を互いに区別させた状態の解析データを出力する。これによって、検者が解析データを確認した際の視認性を向上させ、周辺部Pに異常があると誤認する可能性を低減させることができる。
【0061】
<制御動作>
OCT装置1の制御動作を説明する。ここでは、長眼軸長眼を通常眼底撮影モードで撮影する場合を例に挙げる。
【0062】
<眼軸長の取得>
検者は、眼軸長測定装置(例えば、特開2008-188047号公報参照)等を利用して、被検眼Eの眼軸長を予め測定し、測定結果をOCT装置1へと送信させる。OCT装置1の制御部300は、測定結果を受信して、記憶部301に記憶させる。なお、制御部300は、電子カルテ等から該当するデータを呼び出してもよい。
【0063】
<撮影モードと走査条件の設定>
検者は、被検眼Eの撮影モードおよび測定光の走査条件を設定する。検者は、モニタ104を操作し、通常眼底撮影モードを選択するための選択スイッチを操作する。制御部300は、通常眼底撮影モードに応じた測定光の走査条件を設定する。例えば、所定の走査パターン(一例として、ラスタースキャン)、所定の走査範囲(例えば、縦6mm×横6mm領域)で、黄斑部を含む領域を走査するように、走査条件が設定される。
【0064】
<OCTデータの取得>
検者は、被検眼Eの撮影を開始する。検者は、モニタ104を操作し、撮影を開始するための開始スイッチを操作する。制御部300は、被検者の顔が顎台112に載置されたことを検出し、被検眼Eと撮影部200とのアライメント調整を自動的に行う。また、制御部300は、被検眼Eの眼底をOCT光学系によって前述の走査条件で撮影する。なお、このとき、被検眼Eの眼底はSLO光学系によっても撮影される。これによって、被検眼Eの3次元OCT断層画像とSLO正面画像が取得される。なお、被検眼Eは長眼軸長眼であるため、3次元OCT断層画像の第1画像領域G1において、周辺部Pが虚像Mで現れる(
図4(b)参照)。
【0065】
制御部300は、被検眼Eの撮影条件(例えば、撮影モード、測定光の走査条件、干渉信号の検出条件、等)を、3次元OCT断層画像に紐付けて記憶部301に記憶させる。例えば、撮影モードは、通常眼底撮影モードあるいは広角眼底撮影モードのいずれかである。例えば、測定光の走査条件は、走査パターン、走査範囲、走査位置、等でもよい。例えば、干検信号の検出条件は、検出器の露光時間、等でもよい。
【0066】
<解析データの取得>
制御部300は、3次元OCT断層画像の第1画像領域G1を解析し、解析データを取得する。ここでは、3次元OCT断層画像に基づいて作成される網膜マップ画像400を、解析データとして取得する。詳細には、3次元OCT断層画像に基づいて網膜の各層の厚みを算出し、その厚みを2次元的に色分けすることによって、網膜マップ画像400が得られる。
【0067】
図7は、網膜マップ画像400の一例である。3次元OCT断層画像における眼底の中心部Cは、高解像度の実像Rを用いた解析結果に基づく厚みの算出および色分けがなされる。このため、3次元OCT断層画像の中心部Cに対応する、網膜マップ画像400の第1領域B1は、色分けが正常に表示される。しかし、3次元OCT断層画像における眼底の周辺部Pは、低解像度の虚像Mを用いた解析結果に基づく厚みの算出および色分けがなされる。このため、3次元OCT断層画像の周辺部Pに対応する、網膜マップ画像400の第2領域B2は、色分けが崩れて表示される。
【0068】
<周辺部のマスク処理>
図8は、網膜マップ画像400のマスク処理を説明する図である。
図8(a)は、マスク処理を施さない表示領域Q1とマスク処理を施す非表示領域Q2を示す。
図8(b)は、マスク処理後の網膜マップ画像400の一例である。制御部300は、被検眼Eの眼軸長に基づいて第1領域B1と第2領域B2との境界を設定することによって、各々の領域を互いに区別する。すなわち、第1領域B1としてデータを表示する表示領域Q1と、第2領域B2としてデータを非表示にする非表示領域Q2と、を設定することによって、各々の領域を互いに区別する。
【0069】
例えば、眼軸長と、3次元OCT断層画像において実像Rおよび虚像Mが現れる位置は、実験やシミュレーションに基づいて対応付けることができる。このため、眼軸長と、網膜マップ画像400における表示領域Q1の大きさ(一例として、測定光の走査範囲の中央を基準とした大きさ)と、を対応付けることができる。もちろん、眼軸長と、網膜マップ画像400における非表示領域Q2の大きさと、を対応付けることもできる。例えば、記憶部301には、眼軸長と、表示領域Q1および非表示領域Q2の少なくともいずれかの大きさと、を対応付けたテーブルが記憶されている。
【0070】
本実施例では、網膜マップ画像400に設定する表示領域Q1の形状が、円形状とされる。もちろん、
図8のような、一部が弓型に欠けた欠円形状でもよい。これは、眼底が曲率をもつために、測定光の走査範囲の中央から同心円状に離れるほど、3次元OCT断層画像を有効に解析できない可能性が高いからである。その結果として、色分けが崩れた表示は画像の四隅に現れる。例えば、表示領域Q1を四角形状とした場合は、表示領域Q1の大きさによって、データを有効に活用することが難しくなる。詳細には、有効な解析結果であるにもかかわらず非表示とされる部分や、有効でない解析結果であるにもかかわらず表示される部分ができてしまう。このため、表示領域Q1は円形状にするとよい。なお、非表示領域Q2を設定する場合にも、眼底の曲率を考慮した形状にするとよい。
【0071】
制御部300は、眼軸長から表示領域Q1または非表示領域Q2の大きさを照合し、表示領域Q1と非表示領域Q2の境界を設定する。また、制御部300は、非表示領域Q2にマスク処理を施す。一例として、斜線の重畳表示、ウォッシュアウト等の透かし処理、等を行う。これによって、3次元OCT断層画像の有効な解析結果に基づく第1領域B1にはマスク処理を施さず、3次元OCT断層画像の有効でない解析結果に基づく第2領域B2にはマスク処理を施した、網膜マップ画像410が得られる。
【0072】
制御部300は、このように、第1領域B1と第2領域B2とを互いに区別できるように反映させた網膜マップ画像410を、SLO正面画像500の位置関係に対応付ける。また、制御部300は、網膜マップ画像410をSLO正面画像500に重畳させて、モニタ104に表示させる。
【0073】
以上、説明したように、例えば、本実施例における眼科情報解析装置は、OCTデータの解析処理によって有効な解析結果が得られる眼底中心部を含む第1領域と、眼底周辺部を含む第2領域であって、第1領域の外側に位置する第2領域と、を互いに区別して、解析データの出力に反映させる。これによって、検者は、眼底中心部の解析結果を確認するとともに、眼底周辺部の解析結果が適切か否かを判断でき、解析結果の視認性が向上される。
【0074】
また、例えば、本実施例における眼科情報解析装置は、被検眼の眼軸長を取得し、眼軸長に基づいて、眼底中心部(第1領域)と眼底周辺部(第2領域)とを互いに区別する。例えば、眼軸長によっては、OCTデータに眼底周辺部が虚像として含まれるようになる。眼軸長の情報を利用することで、有効な解析結果が得られない領域が容易に区別される。
【0075】
また、例えば、本実施例における眼科情報解析装置は、OCTデータにおける眼底中心部と眼底周辺部をいずれも解析した解析データを取得し、解析データの眼底周辺部(第2領域)にマスク処理を施す。これによって、検者は、有効な解析結果として得られる眼底中心部を容易に観察できる。
【0076】
<変容例>
本実施例では、3次元OCT断層画像の有効な解析結果に基づいた第1領域B1(表示領域Q1)と、有効でない解析結果に基づいた第2領域B2(非表示領域Q2)と、を互いに区別できるような処理を反映させた網膜マップ画像400が出力(表示)されればよい。この場合、3次元OCT断層画像を解析した網膜マップ画像400の表示が制御されてもよい。例えば、第1領域B1と第2領域B2の境界に線等を重畳させてもよい。また、例えば、第2領域B2をマスク処理等で非表示としてもよい。また、この場合、3次元OCT断層画像を解析する解析領域が限定されてもよい。例えば、3次元OCT断層画像に含まれる中心部Cのみを解析することによって、中心部Cに対応する第1領域B1を含み、周辺部Pに対応する第2領域B2は含まない網膜マップ画像400を得てもよい。中心部Cの有効な解析結果(解析データ)は得るが、周辺部Pの有効でない解析結果(解析データ)は得ないことで、第2領域B2の表示により生じる誤認等を抑制できる。なお、いずれの場合であっても、被検眼Eの眼軸長、被検眼Eを撮影する撮影モード、等に基づいて、網膜マップ画像400の表示や3次元OCT断層画像の解析領域が設定されてもよい。
【0077】
例えば、詳細には、被検眼Eの眼軸長に基づき、3次元OCT断層画像における第1画像領域G1のいずれの位置に像を配置するかを調整することで、3次元OCT断層画像の解析領域を設定してもよい。眼軸長の情報を利用することで、撮影時に第1画像領域G1に虚像Mが現れないように調整し、有効な解析結果が得られる中心部Cのみを解析する構成としてもよい。
【0078】
本実施例では、被検眼Eの眼軸長に基づいて、網膜マップ画像400の第2領域B2(非表示領域Q2)にマスク処理を施す構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、3次元OCT断層画像または網膜マップ画像400を画像処理することによって、網膜マップ画像400の第2領域B2にマスク処理を施す構成としてもよい。例えば、制御部300は、3次元OCT断層画像の輝度情報を利用して虚像Mの位置を検出することで、網膜マップ画像400の虚像Mに対応する位置(第2領域B2に相当する位置)にマスク処理を施してもよい。また、例えば、制御部300は、網膜マップ画像400において、網膜の各層の厚みが最小検出画素を満たす検出によって算出されたものであるか、等に基づき、最小検出画素を満たさない位置(第2領域B2に相当する位置)にマスク処理を施してもよい。
【0079】
また、本実施例では、被検眼Eを撮影する撮影モードに基づいて、網膜マップ画像400の第2領域B2(非表示領域Q2)にマスク処理を施す構成としてもよい。詳細には、制御部300は、網膜マップ画像400における第1領域B1と第2領域B2の境界を撮影モードに合わせて設定し、第2領域B2にマスク処理を施してもよい。この場合、通常眼底撮影モードと、広角眼底撮影モードと、のそれぞれに対して、第1領域B1(表示領域Q1)および第2領域B2(非表示領域Q2)の少なくともいずれかの大きさが、予め対応付けられていてもよい。例えば、通常眼底撮影モードと広角眼底撮影モードでは、3次元OCT断層画像に眼底周辺部がどの程度含まれるか、等が変化する。撮影モード等の撮影条件に関する情報を利用することで、有効な解析結果が得られない領域が容易に区別される。
【0080】
本実施例では、3次元OCT断層画像を解析した解析データとして、網膜マップ画像400を取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、解析データとして、解析チャートを取得する構成としてもよい。もちろん、解析データとして、網膜マップ画像400と解析チャートをいずれも取得する構成としてもよい。制御部300は、3次元OCT断層画像に基づいて網膜の各層の厚みを算出し、その厚みの2次元分布を領域毎に平均化することによって、解析チャートを取得できる。例えば、制御部300は、網膜の厚みの2次元的分布を領域に分けた際、有効でない解析結果に基づいた第2領域B2のデータを含む場合は、解析チャートの値を参考値として算出してもよい。また、例えば、制御部300は、解析チャートの値が参考値であることを検者が認識できるように、表示形態を変更する等してもよい。
【0081】
本実施例では、網膜マップ画像400をモニタ104に表示する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、網膜マップ画像400とともに、3次元OCT断層画像をモニタ104に表示する構成であってもよい。この場合、制御部300は、3次元OCT断層画像についても、中心部Cと周辺部Pとを互いに区別できるように表示してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 眼科情報解析装置
104 モニタ
200 撮影部
230 OCT光学系
300 制御部
301 記憶部
400 網膜マップ画像
500 SLO正面画像