(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056668
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】発泡成形容器
(51)【国際特許分類】
B29C 44/00 20060101AFI20220404BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20220404BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
B29C44/00 D
B29C45/00
B29C33/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164535
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田窪 陽子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 寛
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
4F214
【Fターム(参考)】
4F202AB02
4F202AH55
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK17
4F202CK19
4F206AB02
4F206AH55
4F206JA07
4F206JN25
4F206JN33
4F206JQ81
4F214AB02
4F214AH55
4F214UA08
4F214UB01
4F214UL33
4F214UM81
(57)【要約】
【課題】発泡成形容器において、糸尻部の近傍での耐衝撃性を向上させる。
【解決手段】発泡成形容器101は、収容空間10の外周を取り囲む側壁部2と、側壁部2の下端に連なって下方に延在する糸尻部3と、側壁部2の下端に連なり、糸尻部3の内側において、収容空間10の下端を規定する底板部4とを備える。底板部4は、糸尻部3の内側に接して糸尻部3に沿うように局所的に厚くなっている厚肉部5を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間の外周を取り囲む側壁部と、
前記側壁部の下端に連なって下方に延在する糸尻部と、
前記側壁部の下端に連なり、前記糸尻部の内側において、前記収容空間の下端を規定する底板部とを備え、
前記底板部は、前記糸尻部の内側に接して前記糸尻部に沿うように局所的に厚くなっている厚肉部を含む、発泡成形容器。
【請求項2】
前記厚肉部の内部の少なくとも一部では、泡の延び方が一方向に揃っていない、請求項1に記載の発泡成形容器。
【請求項3】
前記厚肉部の前記収容空間を向く側の表面に比べて、前記収容空間とは反対側を向く表面は平滑度が低くなっている、請求項1または2に記載の発泡成形容器。
【請求項4】
下方から見たとき、前記厚肉部は、前記糸尻部の全区間に沿って設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の発泡成形容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2003-340861号公報(特許文献1)には、発泡成形品の成型方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発泡成形された容器においては、発泡層を含むという構造上、耐衝撃性が低下するという問題があった。成形時の流動性を上げ、かつ、剛性を上げるために外壁面に断面形状が略三角形であるリブを設けたリブ付き容器も提案されている。リブ付き容器の場合、部分的に厚肉部となるリブの効果により、座屈強度などは担保されるが、きわめて薄肉である外壁面と、やや厚肉となる底面と、糸尻部との交差点となる部分では、落下衝撃の影響を受けやすく、依然として割れやすいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、糸尻部の近傍での耐衝撃性を向上させることができる発泡成形容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に基づく発泡成形容器は、収容空間の外周を取り囲む側壁部と、上記側壁部の下端に連なって下方に延在する糸尻部と、上記側壁部の下端に連なり、上記糸尻部の内側において、上記収容空間の下端を規定する底板部とを備える。上記底板部は、上記糸尻部の内側に接して上記糸尻部に沿うように局所的に厚くなっている厚肉部を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、底板部は、糸尻部の内側に接して厚肉部を含んでいるので、耐衝撃性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に基づく実施の形態1における発泡成形容器の斜視図である。
【
図2】本発明に基づく実施の形態1における発泡成形容器の側面図である。
【
図3】本発明に基づく実施の形態1における発泡成形容器の断面図である。
【
図5】本発明に基づく実施の形態1における発泡成形容器の下面図である。
【
図6】本発明に基づく実施の形態1における発泡成形容器の製造方法の説明図である。
【
図7】本発明に基づく実施の形態1における発泡成形容器を得るために用意される金型内の空間の説明図である。
【
図9】本発明に基づく実施の形態2における発泡成形容器の斜視図である。
【
図10】本発明に基づく実施の形態2における発泡成形容器の部分断面図である。
【
図11】本発明に基づく実施の形態3における発泡成形容器の部分断面図である。
【
図12】本発明に基づく実施の形態3における発泡成形容器を得るために用意される金型内の空間の説明図である。
【
図13】本発明に基づく実施の形態4における発泡成形容器の部分断面図である。
【
図14】本発明に基づく実施の形態4における発泡成形容器を得るために用意される金型内の空間の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面において示す寸法比は、必ずしも忠実に現実のとおりを表しているとは限らず、説明の便宜のために寸法比を誇張して示している場合がある。以下の説明において、上または下の概念に言及する際には、絶対的な上または下を意味するとは限らず、図示された姿勢の中での相対的な上または下を意味する場合がある。
【0010】
(実施の形態1)
(構成)
図1~
図5を参照して、本発明に基づく実施の形態1における発泡成形容器について説明する。本実施の形態における発泡成形容器101の斜視図を
図1に示す。発泡成形容器101の側面図を
図2に示す。発泡成形容器101の断面図を
図3に示す。
図3におけるZ1部を拡大したところを
図4に示す。
【0011】
本実施の形態における発泡成形容器101は、収容空間10の外周を取り囲む側壁部2と、側壁部2の下端に連なって下方に延在する糸尻部3と、側壁部2の下端に連なり、糸尻部3の内側において、収容空間10の下端を規定する底板部4とを備える。底板部4は、糸尻部3の内側に接して糸尻部3に沿うように局所的に厚くなっている厚肉部5を含む。底板部4は、厚肉部5と薄肉部6とを含む。厚肉部5の内部の少なくとも一部では、泡の延び方が一方向に揃っていない。厚肉部5の収容空間10を向く側の表面5aに比べて、収容空間10とは反対側を向く表面5bは平滑度が低くなっている。厚肉部5の厚みAは、0.9mm以上1.8mm以下である。発泡成形容器101は、上端の外縁にはフランジ部8を備える。
【0012】
発泡成形容器101を下方から見たところを
図5に示す。下方から見たとき、糸尻部3は環状となっている。厚肉部5も環状となっている。
【0013】
(作用・効果)
本実施の形態における発泡成形容器101では、底板部4は、糸尻部3の内側に接して厚肉部5を含んでいるので、耐衝撃性を向上させることができる。
【0014】
本実施の形態で示したように、厚肉部5の内部では、泡の延び方が一方向に揃っていない構成であれば、後述する製造方法を採用することができる。したがって、迅速に効率良く成形することができる。
【0015】
また、本実施の形態で示したように、厚肉部5の収容空間10を向く側の表面5aに比べて、収容空間10とは反対側を向く表面5bは平滑度が低くなっている構成であれば、後述する製造方法を採用することができ、迅速に効率良く成形することができる。
【0016】
なお、本実施の形態で示したように、発泡成形容器においては、下方から見たとき、糸尻部3は環状となっていることが好ましい。環状であるとは、途中で途切れずに完全に一周していることを意味する。この構成を採用することにより、糸尻部3の剛性を高めることができるからである。本実施の形態では、糸尻部3が環状である例を示したが、本発明に基づく発泡成形容器としては、糸尻部が環状であるものに限らない。糸尻部が容器の底面の外縁部のうちの一部にのみ設けられている構成であってもよい。糸尻部が容器の底面の外縁部に沿って断続的に設けられている構成であってもよい。
【0017】
本実施の形態で示したように、発泡成形容器においては、下方から見たとき、厚肉部5は、糸尻部3の全区間に沿って設けられていることが好ましい。この構成を採用することにより、糸尻部3の全区間に渡って、耐衝撃性を高めることができるからである。本実施の形態では、厚肉部5が糸尻部3の全区間に沿って設けられている例を示したが、本発明に基づく発泡成形容器としては、このような構成に限らない。厚肉部5が糸尻部3のうち一部の区間に沿ってのみ設けられている構成であっても、一定の効果を得ることはできる。
【0018】
(製造方法)
本実施の形態における発泡成形容器101の製造方法について説明する。この製造方法で用いる金型の組合せを
図6に示す。金型51,52,53の組合せによって形成された空間50に対して材料が射出されて成形がなされる。射出される材料は、CO
2、N
2などを超臨界状態にして、溶融させた樹脂に混錬させたものである。
【0019】
図6に示した空間50のみを表現すると、
図7のようになる。これは、発泡成形容器101の形状と似ているが、わずかに異なる。
図7におけるZ2部を拡大したところを
図8に示す。
図7および
図8は、金型同士の隙間の空間50を示しているが、ここでは、説明の便宜のため、空間50の各部の名称および符号については、発泡成形容器101の対応する各部の名称および符号と同じものを用いている。
図8に示すように、金型51,52,53の組合せによって生じる空間50は、側壁部2、糸尻部3、底板部4を含む。底板部4は厚肉準備部15と薄肉部6とを含む。厚肉準備部15の厚みBは、0.5mm以上0.8mm以下である。厚みBは、厚みAより小さい。
【0020】
金型51,52,53の組合せによって形成された空間50に材料が射出された後、側壁部2では少なくとも金型に触れている表層部でスキン層が形成され、スキン層は先行して固化する。あるいは、側壁部2は薄い形状であるので、射出とほぼ同時に側壁部2の全体が既に固化しているかもしれない。一方、厚肉準備部15では厚みがあるので、内部まで固化するには、わずかではあるが余分に時間がかかる。したがって、側壁部2のスキン層では材料は固化を終えているが厚肉準備部15ではまだ完全に固化していない状態が存在する。側壁部2のスキン層では材料は固化を終えているが厚肉準備部15ではまだ完全に固化していない状態である時点で、金型52,53の位置は変えずに金型51を引き離す。こうすることによって、底板部4の下面は開放される。この状態のとき、底板部4のうち薄肉部6においては既に固化しているので、下面が開放されても寸法はほとんど変化しない。しかし、厚肉準備部15においては、まだ完全に固化していないので、下面が開放された後も発泡が継続し、下方に向かって膨らんでいく。厚肉準備部15にあった材料は、金型51を引き離した後もある程度膨らみ、その後、固化する。その結果、
図4に示した厚肉部5が形成される。
【0021】
発泡継続によって体積が拡大したので、厚肉部5の厚みAは厚肉準備部15の厚みBに比べて厚いものとなる。厚肉部5は、金型53によって上側だけ規定され、下側の金型51がない状態で発泡を継続したものであるので、発泡は自由な向きに展開している。したがって、厚肉部5の内部では、泡の延び方が一方向に揃っていない。厚肉部5の表面5bは金型51に接していない状態で発泡によって膨らんだ後で固化したものであるので、表面5bは表面5aに比べて平滑度が低くなっている。
【0022】
たとえば製造時に、最初から厚肉部5の形状に対応した金型を用いる場合には、厚肉部5では厚みが大きい分だけ材料の量が多くなり、材料が冷えるのに時間がかかってしまうが、本実施の形態では、上述したように厚肉準備部15において片面だけ金型が引き離された状態で膨らみつつ冷えていくので、材料の量は少なく済み、材料が冷えるまでにあまり時間がかからず、きわめて短時間で発泡成形容器101を成形することができる。
【0023】
(実施の形態2)
(構成)
図9~
図10を参照して、本発明に基づく実施の形態2における発泡成形容器について説明する。本実施の形態における発泡成形容器102の斜視図を
図9に示す。発泡成形容器102の部分断面図を
図10に示す。
【0024】
発泡成形容器102は、側壁部2の外周面に、上下方向に延在する複数のリブ7を備える。その他の構成は、実施の形態1で説明したのと同様である。
【0025】
(作用・効果)
本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、側壁部2の外周面に複数のリブ7が設けてあることにより、座屈強度を向上させることができる。
【0026】
(実施の形態3)
(構成)
図11~
図12を参照して、本発明に基づく実施の形態3における発泡成形容器について説明する。本実施の形態における発泡成形容器103の部分断面図を
図11に示す。
図11では、糸尻部3およびその近傍が拡大表示されている。
【0027】
発泡成形容器103においては、底板部4は、厚肉部5iと薄肉部6とを含む。底板部4は、糸尻部3の内側に接して糸尻部3に沿うように局所的に厚くなっている厚肉部5iを含む。断面形状に関していえば、実施の形態1で示した厚肉部5(
図4参照)は、薄肉部6から短い区間の間に急激に厚みを増して、薄肉部4よりも厚い一定の厚さを有する板状の部分として存在していた。しかし、本実施の形態における厚肉部5iは、薄肉部4からある程度長い区間にわたって厚みを徐々に増していき、その後、薄肉部4よりも厚い一定の厚さを有する部分として存在している。
【0028】
このような構成の発泡成形容器103は、
図12に示すような形状の空間50を有する金型を用いて得ることができる。この場合も、射出成形において、側壁部2のスキン層では材料は固化を終えているが厚肉準備部15iではまだ完全に固化していない状態である時点で、金型52,53の位置は変えずに金型51を引き離す(
図6参照)。こうすることによって、
図11に示した形状を得ることができる。
【0029】
(作用・効果)
本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0030】
(実施の形態4)
(構成)
図13~
図14を参照して、本発明に基づく実施の形態4における発泡成形容器について説明する。本実施の形態における発泡成形容器104の部分断面図を
図13に示す。
図13では、糸尻部3およびその近傍が拡大表示されている。
【0031】
発泡成形容器104においては、底板部4は、厚肉部5jと薄肉部6とを含む。発泡成形容器104は、いわゆる丸底型となっている。すなわち、底板部4の外縁と側壁部2の下端とが接する箇所においては、垂直に交わるのではなく、緩やかで連続的な曲面を形成している。したがって、厚肉部5jの収容空間10を向く側の表面5aは、底板部4と側壁部2とを連続的につなぐ曲面となっている。本実施の形態における厚肉部5jは、薄肉部4のすぐ外側から曲面を形成する部分として存在し、丸底の曲面を形成しつつ、厚みを徐々に増している。
【0032】
このような構成の発泡成形容器104は、
図14に示すような形状の空間50を有する金型を用いて得ることができる。この場合も、射出成形において、側壁部2のスキン層では材料は固化を終えているが厚肉準備部15jではまだ完全に固化していない状態である時点で、金型52,53の位置は変えずに金型51を引き離す(
図6参照)。こうすることによって、
図13に示した形状を得ることができる。
【0033】
(作用・効果)
本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0034】
ここまで、本発明の適用対象として、超臨界発泡による発泡成形容器の例を示したが、超臨界発泡に代えて化学発泡による発泡成形容器であってもよい。また、ここまでの実施の形態では、底板部4が円形であって、側壁部2を水平な面で切ったときの形状が円形であるような形状の発泡成形容器を例に説明してきたが、底板部4の形状は円形以外であってもよい。側壁部2を水平な面で切ったときの形状が円形以外であるような形状の発泡成形容器であってもよい。
【0035】
なお、上記実施の形態のうち複数を適宜組み合わせて採用してもよい。
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0036】
2 側壁部、3 糸尻部、4 底板部、5,5i,5j 厚肉部、6 薄肉部、7 リブ、8 フランジ部、10 収容空間、15,15i,15j 厚肉準備部、50 (材料が射出される)空間、101,102,103,104 発泡成形容器。