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  • 特開-クッション 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056728
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】クッション
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/12 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
A61G5/12 707
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164632
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】502327953
【氏名又は名称】三貴ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 永佳
(57)【要約】
【課題】クッション部材と表面部材との接着部分の剥離が発生することを抑制できるクッションを提供する。
【解決手段】クッション1は、クッション本体部材10の上面部11及び下面部と接着されている表面部材30と、クッション本体部材10の側周面部15と表面部材30との間に形成されてなる側周空間部と、表面部材30によって気密状に被覆された内側の空気量を制御可能な弁体40と、を備え、クッション本体部材10の側周面部15には、所定の切込み深さを有する切込み部21が当該クッション本体部材10における横方向に沿って設けられており、切込み部21によって区画された上側側周面部25及び下側側周面部26が離間可能とされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有しており、座面を構成する上面部、底面を構成する下面部、及び前記上面部と下面部とに連続する側周面部を備えたクッション本体部材と、
非通気性のシート材からなり、前記クッション本体部材を気密状に被覆するとともに、前記クッション本体部材の前記上面部及び前記下面部に接着され、かつ当該クッション本体部材の前記側周面部には接着されていない表面部材と、
前記表面部材によって気密状に被覆された内空部の空気量を制御可能な弁体と、
を具備し、
前記座面に荷重が加えられて前記クッション本体部材が変形した状態で前記弁体により前記内空部の空気量が一定に保持されると当該クッション本体部材の変形状態が維持されて形状が保持されるクッションにおいて、
前記クッション本体部材の側周面部には、所定の深さを有する切込み部が当該クッション本体部材における横方向に沿って点状又は線状に設けられており、前記変形状態で前記切込み部が拡開することで当該切込み部によって区画された当該クッション本体部材における上側側周面部及び下側側周面部が互いに離間可能とされてなる
ことを特徴とするクッション。
【請求項2】
前記切込み部が、前記クッション本体部材の側周面部の全周にわたって設けられており、前記上側側周面部と前記下側側周面部とが、前記クッション本体部材の側周面部の全周にわたって配されてなる
請求項1に記載のクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車いすの座部に用いられるクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているエアーセルクッションのように、着座者の姿勢を傾き難くしたり、クッション性を良くしたりするべく、着座状態におけるクッションの沈み込み具合を維持するものはすでに知られている。具体的にこれらのクッションは、通気性のクッション部材を非通気性の表面部材によって被覆し、内部の空気量を弁体によって制御する構造からなり、クッション部材が所定形状に圧縮された状態を維持することでクッションの形状を保持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-17841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のクッションにおいては、通気性のクッション部材と非通気性の表面部材とが部分的に熱溶着されており、クッション内において空気の流通が十分に確保された内部構造になっているところ、図3に示すクッション100のように、繰り返しクッション本体部材101が圧縮・解放されて変形を繰り返すと、クッション本体部材101と表面部材102との接着部位の外縁から剥離が生じてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、クッション部材と表面部材との間で剥離が発生しにくい耐久性のあるクッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、通気性を有しており、座面を構成する上面部、底面を構成する下面部、及び前記上面部と下面部とに連続する側周面部を備えたクッション本体部材と、非通気性のシート材からなり、前記クッション本体部材を気密状に被覆するとともに、前記クッション本体部材の前記上面部及び前記下面部に接着され、かつ当該クッション本体部材の前記側周面部には接着されていない表面部材と、前記表面部材によって気密状に被覆された内空部の空気量を制御可能な弁体と、を具備し、前記座面に荷重が加えられて前記クッション本体部材が変形した状態で前記弁体により前記内空部の空気量が一定に保持されると当該クッション本体部材の変形状態が維持されて形状が保持されるクッションにおいて、前記クッション本体部材の側周面部には、所定の深さを有する切込み部が当該クッション本体部材における横方向に沿って点状又は線状に設けられており、前記変形状態で前記切込み部が拡開することで当該切込み部によって区画された当該クッション本体部材における上側側周面部及び下側側周面部が互いに離間可能とされてなることを特徴とするクッションである。
【0007】
かかる構成にあっては、前記変形状態となった際に、クッション本体部材と表面部材とが上面又は下面において互いに接着されて拘束されているが故に、接着部位の端縁で引張力が発生するものの、上述のように切込み部が設けられて上側側周面部及び下側側周面部が上下方向に離間可能となっているため、接着部位で発生する引張力が低減され、クッション本体部材と表面部材との接着部分において剥離してしまうことが抑制される。
【0008】
なお、本発明における切込み部は、クッション本体部材を上下に分断するものではない。このため、通常の使用状態でクッション本体部材の剛性は適性に確保されるものであり、例えばクッション本体部材が表面部材に対して相対的に横方向に位置ずれして使用感を損なうようなことはない。
【0009】
また、前記切込み部が、前記クッション本体部材の側周面部の全周にわたって設けられており、前記上側側周面部と前記下側側周面部とが、前記クッション本体部材の側周面部の全周にわたって配されてなる構成が提案される。
【0010】
かかる構成とすることにより、クッション本体部材の側周面部の全周にわたってクッション本体部材と表面部材との接着部分の剥離が発生することを好適に抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクッションは、クッション本体部材と表面部材との接着部分が剥離してしまうことを好適に抑制することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例にかかるクッションの斜視図である。
図2】実施例にかかるクッションの縦断面図であり、(a)は形状が保持されていない状態を示し、(b)は形状を保持された状態を示す。
図3】従来のクッションの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のクッションを具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0014】
図1図2に示すように、クッション1は、例えば発泡性のウレタン素材からなる通気性を有するクッション本体部材10と、非通気性の樹脂製シート材からなる表面部材30と、を備えている。また、クッション1には、クッション1内の空気量を制御可能な弁体40が配設されている。
【0015】
まず、クッション本体部材10について、以下に詳述する。
クッション本体部材10は、座面を構成する上面部11と、底面を構成する下面部12と、上面部11と下面部12とに連続する側周面部15と、を備えたほぼ直方体形状を有している。また、側周面部15には、当該側周面部15に対して交わる方向(例えば直交方向)を深さ方向とする所定深さの切込み部21が設けられている。そして、図1に示すように、クッション本体部材10の側周面部15において、線状の切込み部21が横方向に沿って当該側周面部15の全周にわたって設けられている。なお、クッション本体部材10の側部は、当該切込み部21によって上側側周面部25及び下側側周面部26に区画されている。
【0016】
一例としてクッション本体部材10の寸法は、横方向が各400mmであり、上下(厚み)方向が35mmであり、また切込み部21の切込み深さは約30mmである。なお、これらの寸法は適宜変更可能である。
【0017】
次に、表面部材30について説明する。
表面部材30は、クッション本体部材10を気密状に被覆する袋形状となっている。具体的に表面部材30は、上側シート31aと下側シート31bとを外縁部で貼り合わせてなり、上側シート31aが、クッション本体部材10の上面部11に対して接着剤層32を介して熱溶着され、下側シート31bが、下面部12に対して接着剤層32を介して熱溶着されている。一方、表面部材30は、クッション本体部材10の側周面部15とは非接着であり、表面部材30と側周面部15との間には、側周空間部S1が形成されている。また、図1に示すように、表面部材30には、側周空間部S1と連通する弁体40が配設されている。かかる弁体40は公知のものが好適に採用され、弁体40の先端部を正逆に回転させて、空気の流通を遮断したり許容したりすることが可能となっている。
【0018】
次に、クッション1の使用形態について説明する。
クッション1は、例えば車いすの座部に配置されて使用可能である。そして、弁体40を通気状態した上で、着座者がクッション1上に着座すると、着座者の体重でクッション1が着座者の臀部の形状に合わせて変形する。そして、このクッション1が変形した状態で弁体40を非通気状態とすると、クッション1の内外で空気の流通が阻止され、クッション本体部材10の形状がその形で保持される。このように形状を保持してクッション1を使用することにより、その着座者に適した座面形状のまま車いすを使用することが可能となる。
【0019】
ところで、クッション1の形状が保持された状態で弁体40を通気状態とすると、クッション1内に外気が導入され、クッション本体部材10の外観形状が元の形状に復帰する。このように、クッション本体部材10が繰り返し圧縮されたり元の形状に復帰したりして繰り返し変形すると、クッション本体部材10と表面部材30との接着部位を剥がそうとする引張力が作用する。
【0020】
しかしながら、クッション1にあっては、図2(b)に示すように、変形状態が維持されたクッション本体部材10の側周面部15において切込み部21が上下方向に拡開し、これに伴い上側側周面部25と下側側周面部26とが互いに離間するように変形可能となっている。このため、クッション本体部材10の上面部11と上側シート31aとの剥離が抑制されると共に、クッション本体部材10の下面部12と下側シート31bとの剥離が抑制される。
【0021】
上記実施例において各部の寸法形状は適宜自由に選択可能である。
【0022】
また、切込み部21の切込み深さは適宜変更可能であるが、切込み深さが浅すぎると上側側周面部25と下側側周面部26との離間可能距離が短くなってしまい、接着剤層32の剥離が生じやすくなってしまう。一方、切込み部21の切込み深さが深すぎるとクッション本体部材10の剛性が低下してしまい、クッション1全体の形状保持性能を損なうおそれがある。
【0023】
なお、切込み部21は、クッション本体部材10の横方向に沿って1本である必要はなく、上下に複数本が並設されていてもよい。また、切込み部21は、側周面部15において横方向に長い線状の切込み要素が間隔をおいて断続的に複数配置されて全体として破線状となっていてもよいし、側周面部15において点状の切込み要素が間隔をおいて複数配置されて全体として点線状となっていてもよい。さらに、切込み部21は、横方向に直線状である必要はなく、例えば側周面部15において傾斜したり湾曲したり屈曲したりしていても構わない。
【0024】
また、クッション本体部材10は、一種の素材からなる必要はなく、例えば相対的に柔軟な部位と硬質な部位とからなるものであっても構わない。なお、クッション本体部材10が軟質部分と硬質部分とからなる場合に、例えば硬質部分に設けられた切込み部21の切込み深さは、軟質部分に設けられた切込み部21の切込み深さよりも深いものとし、硬質部分における上側側周面部25と下側側周面部26とが、より一層互いに離間し易いようにするようにしてもよい。また、切込み部21は、上述のように、単体のクッション本体部材10の側周面部を所定の切込み深さで刃物を入れ込んで切込み形状を構成するようにしてもよいし、他の手法によって切込み形状を構成するようにしてもよい。例えば、互いに材料が異なる2種のクッション本体部材を上下方向に積層して上側を軟質層とし、かつ下側を硬質層とした上で、クッション本体部材の外周部を非接着状態として見た目が切込み状の切込み部21を構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 クッション
10 クッション本体部材
11 上面部(座面)
12 下面部(底面)
15 側周面部
21 切込み部
25 上側側周面部
26 下側側周面部
30 表面部材
31a 上側シート
31b 下側シート
32 接着剤層
40 弁体
S1 側周空間部
図1
図2
図3